(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102824
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
H01G4/30 516
H01G4/30 201D
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023221251
(22)【出願日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】10-2023-0008272
(32)【優先日】2023-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0015116
(32)【優先日】2023-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュン オー
(72)【発明者】
【氏名】リー、スン フワン
(72)【発明者】
【氏名】クワク、ノ ジュン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE23
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
(57)【要約】
【課題】信頼性に優れ、静電容量が向上し、高温負荷の寿命に優れ、内部電極凝集現象及び内部電極切れ現象を抑制し、用量及び結晶粒大きさの散布を改善し、絶縁抵抗の散布を改善する。
【解決手段】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、複数の誘電体層、及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される複数の内部電極を含む本体と、上記本体に配置される外部電極と、を含み、上記複数の内部電極はNi及びInを含み、上記複数の内部電極のうち一つ以上は、上記誘電体層との界面から10nm離隔した地点のうち、In/(Ni+In)のモル比が0.002以上の地点の割合が70%以上であり、上記第1方向の中央部の地点のうち、In/(Ni+In)のモル比が0.002以上の地点の割合が35%以下であることができる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層、及び前記複数の誘電体層と第1方向に交互に配置される複数の内部電極を含む本体と、
前記本体に配置される外部電極と、を含み、
前記複数の内部電極はNi及びInを含み、
前記複数の内部電極のうち一つ以上は、
前記誘電体層との界面から10nm離隔した地点のうち、In/(Ni+In)のモル比が0.002以上の地点の割合が70%以上であり、前記第1方向の中央部の地点のうち、In/(Ni+In)のモル比が0.002以上の地点の割合が35%以下である、積層型電子部品。
【請求項2】
前記複数の内部電極のうち一つ以上は、
前記誘電体層との界面から10nm離隔した地点のうち、In/(Ni+In)のモル比が0.002以上の地点の割合が70%以上90%以下であり、前記第1方向の中央領域のうち、In/(Ni+In)のモル比が0.002以上の地点の割合が20%以上35%以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記複数の内部電極のうち一つ以上は、
前記誘電体層との界面から2nm離隔した地点のIn/(Ni+In)のモル比の平均値をX、前記誘電体層との界面から10nm離隔した地点のIn/(Ni+In)のモル比の平均値をYとするとき、X-Yは0.0041以上である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記Xは0.0139以下である、請求項3に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記Xは0.0046以上0.0139以下であり、
前記Yは0.0005以上0.0041以下である、請求項4に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記本体は、前記第1方向に向かい合う第1面及び第2面、前記第1面及び前記第2面と連結され、第2方向に向かい合う第3面及び第4面、前記第1面~前記第4面と連結され、第3方向に向かい合う第5面及び第6面を含み、
前記複数の内部電極を含む容量形成部、及び前記容量形成部の第1方向の両端面上に配置されるカバー部、及び前記容量形成部の第3方向の両端面上に配置されるマージン部を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記カバー部に含まれた誘電体結晶粒の平均粒径をGc、
前記容量形成部の誘電体層に含まれた誘電体結晶粒の平均粒径をGa、
前記マージン部に含まれた誘電体結晶粒の平均粒径をGmとするとき、
1<Gc/Ga及び1<Gm/Gaを満たす、請求項6に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記Ga及びGcは、1<Gc/Ga≦1.28を満たす、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記Ga及びGmは、1<Gm/Ga≦1.07を満たす、請求項8に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記内部電極に含まれたInの少なくとも一部は、Niと合金の形態で存在する、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記誘電体層は、Ba(Ti1-zInz)O3(0<z<1)を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記複数の内部電極の少なくとも一つ以上はセラミック粒子を含み、前記セラミック粒子はInを含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記セラミック粒子の表面におけるIn含有量は0.4at%以上である、請求項12に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記内部電極は、複数の導電部及び隣接した導電部の間に配置された切れ部を含み、前記内部電極の全体長さに対する複数の導電部の長さの合計の割合である内部電極の連結性が85%以上である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項15】
前記内部電極の平均厚さをte、前記内部電極の厚さの標準偏差をσteとするとき、σte/teは0.2以下である、請求項1から14のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項16】
複数の誘電体層、及び前記複数の誘電体層と第1方向に交互に配置される複数の内部電極を含む本体と、
前記本体に配置される外部電極と、を含み、
前記複数の内部電極はNi及びInを含み、
前記複数の内部電極のうち一つ以上は、
前記誘電体層との界面から2nm離隔した地点のIn/(Ni+In)のモル比の平均値をX、前記誘電体層との界面から10nm離隔した領域のIn/(Ni+In)のモル比の平均値をYとするとき、X-Yは0.0041以上である、積層型電子部品。
【請求項17】
前記Xは0.0139以下である、請求項16に記載の積層型電子部品。
【請求項18】
前記Xは0.0046以上0.0139以下であり、
前記Yは0.0005以上0.0041以下である、請求項16に記載の積層型電子部品。
【請求項19】
前記内部電極に含まれたInの少なくとも一部は、Niと合金の形態で存在する、請求項16から18のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項20】
前記複数の内部電極のうち一つ以上はセラミック粒子を含み、前記セラミック粒子はInを含む、請求項19に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話などの様々な電子製品のプリント回路基板に装着されて電気を充電または放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサである。
【0003】
積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として用いられることができ、コンピュータ、モバイル機器など、各種電子機器が小型化、高出力化され、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化の要求が増大している。
【0004】
このような積層セラミックキャパシタの小型化及び高容量化の傾向に伴い、積層セラミックキャパシタの単位体積当たりの容量を増加させることに対する重要性が高まっている。積層セラミックキャパシタの小型化及び高容量化を達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させる必要がある。また、積層セラミックキャパシタの信頼性を向上させるためには、内部電極の連結性が高く、内部電極の厚さが均一である必要がある。
【0005】
しかしながら、内部電極の厚さを薄くするために、従来より微粒の金属粉末を用いる場合、焼結収縮開始温度が低くなり、誘電体層との収縮挙動の不一致が大きくなって、内部電極凝集現象及び内部電極切れ現象が発生することがある。
【0006】
また、自動車用電装部品などに対する適用が増加するにつれて、様々な環境での高信頼性が求められている。高信頼性を確保するためには、内部電極の連結性及び厚さ均一性を向上させて、電界の集中を分散させることが重要である。また、様々な環境で高信頼性を確保するために優れた高温負荷の寿命が求められている。
【0007】
一方、内部電極ペーストにSnを添加して誘電体層と内部電極の間の界面にSn含有量が高い領域を配置して上述の問題点を解決しようとする試みがあった。しかしながら、この場合、容量低下、容量の散布増加、絶縁抵抗の散布増加などの問題点が発生することがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の解決しようとする課題の一つは、信頼性に優れた積層型電子部品を提供することである。
【0009】
本発明の解決しようとする課題の一つは、静電容量が向上した積層型電子部品を提供することである。
【0010】
本発明の解決しようとする課題の一つは、高温負荷の寿命に優れた積層型電子部品を提供することである。
【0011】
本発明の解決しようとする課題の一つは、内部電極凝集現象及び内部電極切れ現象を抑制することである。
【0012】
本発明の解決しようとする課題の一つは、用量及び結晶粒大きさの散布を改善することである。
【0013】
本発明の解決しようとする課題の一つは、絶縁抵抗の散布を改善するためである。
【0014】
但し、本発明の解決しようとする課題は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、複数の誘電体層、及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される複数の内部電極を含む本体と、上記本体に配置される外部電極と、を含み、上記複数の内部電極はNi及びInを含み、上記複数の内部電極のうち一つ以上は、上記誘電体層との界面から10nm離隔した地点のうち、In/(Ni+In)のモル比が0.002以上の地点の割合が70%以上であり、上記第1方向の中央部の地点のうち、In/(Ni+In)のモル比が0.002以上の地点の割合が35%以下であることができる。
【0016】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、複数の誘電体層、及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される複数の内部電極を含む本体と、上記本体に配置される外部電極と、を含み、上記複数の内部電極はNi及びInを含み、上記複数の内部電極のうち一つ以上は、上記誘電体層との界面から2nm離隔した地点のIn/(Ni+In)のモル比の平均値をX、上記誘電体層との界面から10nm離隔した領域のIn/(Ni+In)のモル比の平均値をYとするとき、X-Yは0.0041以上であることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の様々な効果の一つの効果として、内部電極内の位置別のIn含有量を制御することにより、積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0018】
本発明の様々な効果の一つの効果として、積層型電子部品の静電容量及び高温負荷の寿命を向上させることができる。
【0019】
本発明の様々な効果の一つの効果として、内部電極の連結性を向上させることができ、内部電極の厚さ偏差を減らすことができる。
【0020】
本発明の様々な効果の一つの効果として、用量及び結晶粒大きさの散布を抑制することができる。
【0021】
本発明の様々な効果の一つの効果として、絶縁抵抗の散布を抑制することができる。
【0022】
但し、本発明の多様でありながらも有意義な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものである。
【
図2】
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
【
図3】
図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
【
図4】
図1のII-II'線に沿った断面図として、本発明の測定領域を説明するための図面である。
【
図5】
図1の本体を分解して示した分解斜視図である。
【
図9】本発明の一実施形態による内部電極と誘電体層の界面をSTEM-EDSで分析したイメージであり、(a)は、STEM-EDSでNi元素をマッピング(mapping)したイメージであり、(b)は、STEM-EDSでTi元素をマッピング(mapping)したイメージであり、(c)は、STEM-EDSでIn元素をマッピング(mapping)したイメージである。
【
図10】
図9の(c)に示されたL1に沿ってSTEM-EDSでラインプロファイル(line profile)した結果である。(b)は、(a)の一部を拡大したグラフである。
【
図11】絶縁抵抗を測定したグラフとして、(a)は比較例1、(b)は比較例2、(c)は発明例に対する絶縁抵抗を測定したグラフである。
【
図12】比較例1の誘電体結晶粒を観察したイメージであり、(a)は、カバー部の誘電体結晶粒を観察したイメージであり、(b)は、容量形成部の誘電体結晶粒を観察したイメージである。
【
図13】発明例の誘電体結晶粒を観察したイメージであり、(a)は、カバー部の誘電体結晶粒を観察したイメージであり、(b)は、容量形成部の誘電体結晶粒を観察したイメージである。
【
図14】本発明の一実施形態による内部電極と誘電体層の界面をSTEM-EDSで分析したイメージであり、(a)は、STEM-EDSでNi元素をマッピング(mapping)したイメージであり、(b)は、STEM-EDSでTi元素をマッピング(mapping)したイメージであり、(c)は、STEM-EDSでIn元素をマッピング(mapping)したイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上に同一符号で示される要素は同一要素である。
【0025】
尚、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、図示した各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜のために任意で示したものであるため、本発明は必ずしも図示により限定されない。また、同一の思想の範囲内の機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を用いて説明することができる。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0026】
図面において、第1方向は積層方向または厚さ(T)方向、第2方向は長さ(L)方向、第3方向は幅(W)方向と定義することができる。
【0027】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものであり、
図2は、
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示したものであり、
図3は、
図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示したものであり、
図4は、
図1のII-II'線に沿った断面図として本発明の測定領域を説明するための図面であり、
図5は、
図1の本体を分解して示した分解斜視図であり、
図6は、
図3のP1領域を拡大した図面であり、
図7は、
図6のP2領域を拡大した図であり、
図8は、
図6のP3領域を拡大した図である。
【0028】
以下、
図1~
図8を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品100について詳細に説明する。また、積層型電子部品の一例として、積層セラミックキャパシタ(Multi-layered Ceramic Capacitor、以下「MLCC」という)について説明するが、本発明がこれに限定されるものではなく、セラミック材料を用いる様々な積層型電子部品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタなどにも適用されることができる。
【0029】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111、及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極121、122を含む本体110と、上記本体上に配置される外部電極131、132と、を含み、上記複数の内部電極121、122のうち一つ以上は、上記誘電体層との界面IFから10nm離隔した地点のうち、In/(Ni+In)のモル比が0.002以上の地点の割合が70%以上であり、上記第1方向の中央部の地点のうち、In/(Ni+In)のモル比が0.002以上の地点の割合が35%以下であることができる。
【0030】
本発明の一実施形態によると、複数の内部電極121、122のうち一つ以上が誘電体層との界面IFから10nm離隔した地点(▲)のうち、In/(Ni+In)のモル比が0.002以上の地点の割合が70%以上、第1方向の中央部の地点(●)のうち、In/(Ni+In)のモル比が0.002以上の地点の割合が35%以下を満たすことにより、内部電極の切れ及び凝集現象を抑制することができ、積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0031】
以下、積層型電子部品100の各構成について詳細に説明する。
【0032】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されていることができる。
【0033】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、示されたように本体110は六面体状やこれと類似した形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体状ではなく、実質的に六面体状を有することができる。
【0034】
本体110は、第1方向に向かい合う第1面1及び第2面2、上記第1面1及び第2面2と連結され、第2方向に向かい合う第3面3及び第4面4、第1面1及び第2面2と連結され、第3面3及び第4面4と連結され、第3方向に向かい合う第5面5及び第6面6を有することができる。
【0035】
誘電体層111上に内部電極121、122が配置されていないマージン領域が重なることによって、内部電極121、122の厚さによる段差が発生して、第1面と第3面~第5面を連結するコーナー及び/または第2面と第3面~第5面を連結するコーナーは、第1面または第2面を基準として見るとき、本体110の第1方向の中央側に収縮した形態を有することができる。または、本体の焼結過程での収縮挙動によって、第1面1と第3面3~第6面6を連結するコーナー及び/または第2面2と第3面3~第6面6を連結するコーナーは、第1面または第2面を基準として見るとき、本体110の第1方向の中央側に収縮した形態を有することができる。または、チッピング不良などを防止するために本体110の各面を連結するエッジを別途の工程を行ってラウンド処理することによって第1面と第3面~第6面を連結するコーナー及び/または第2面と第3面~第6面を連結するコーナーは、ラウンド形態を有することができる。
【0036】
一方、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後に内部電極が本体の第5面5及び第6面6に露出するように切断した後、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に第3方向(幅方向)に積層してマージン部114、115を形成する場合には、第1面と第5面及び第6面を連結する部分及び第2面と第5面及び第6面を連結する部分が収縮した形態を有さないこともできる。
【0037】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であり、隣接した誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。誘電体層の積層数は特に制限する必要はなく、積層型電子部品のサイズを考慮して決定することができる。例えば、誘電体層を400層以上積層して本体を形成することができる。
【0038】
誘電体層111は、セラミック粉末、有機溶剤及びバインダーを含むセラミックスラリーを製造し、上記スラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥してセラミックグリーンシートを設けた後、上記セラミックグリーンシートを焼成することで、形成することができる。セラミック粉末は十分な静電容量が得られる限り特に制限されないが、例えば、セラミック粉末としてチタン酸バリウム系(BaTiO3)系粉末を用いることができる。より具体的な例として、セラミック粉末は、BaTiO3、(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)及びBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)のうち一つ以上であることができる。
【0039】
一実施形態において、誘電体層111は、Ba(Ti1-zInz)O3(0<z<1)を含むことができる。+3価のInが誘電体層の主成分であるBaTiO3のTi siteに置換されることができ、Tiサイトに置換される場合、アクセプタ(acceptor)として作用して積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。但し、誘電体層111の主成分は、BaTiO3、(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)及びBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)のうち一つ以上であり、Inが誘電体層111に拡散して上記主成分のうち一部のTi siteに置換されるものとして、Ba(Ti1-zInz)O3(0<z<1)を主成分として含むものではないことがある。
【0040】
一実施形態において、誘電体層111はSnを含むことができる。また、誘電体層111は、内部電極121、122との界面IFから2nm離隔した領域におけるTiに対するSnの平均含有量は0.02at%以上0.42at%以下であることができる。Snは融点が低く、Inが界面IFに容易に拡散するようにする役割を果たすことができ、Inが界面IFに容易にトラップできるようにする役割を果たすことができるため、静電容量及び高温負荷の寿命をより容易に向上させる役割を果たすことができる。但し、誘電体層111は、内部電極121、122との界面IFから2nm離隔した領域におけるTiに対するSnの平均含有量が0.02at%未満の場合には上述した効果が不十分であることがあり、0.42at%超過である場合には、却ってInの拡散を過度にして界面にトラップされるIn含有量が減少するおそれがある。
【0041】
一実施形態において、誘電体層111はDyを含むことができる。Dyは、高温負荷の寿命及び誘電率を向上させる役割を果たすことができる。また、誘電体層111は、内部電極121、122との界面IFから2nm離隔した領域におけるTiに対するDyの平均含有量は3at%以上7at%以下であることができる。これにより、高温負荷の寿命をより容易に向上させることができ、誘電率を向上させることができる。
【0042】
一方、誘電体層111は、上述した元素の他に様々な元素をさらに含むことができ、例えば、誘電体層111は、Ca、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、Zn、Mg、Si、希土類元素(RE、Rare earth Element)のうち一つ以上をさらに含むことができる。
【0043】
本発明によると、複数の誘電体層111の厚さが薄い場合にも信頼性が低下することを防止することができ、誘電体層の厚さが厚い場合には信頼性をより向上させることができるため、誘電体層111の平均厚さtdは特に限定する必要はなく、誘電体層111の平均厚さtdは、所望の特性や用途に応じて任意に設定することができる。具体的な例として、誘電体層111の平均厚さtdは、300nm以上10μm以下であることができる。また、複数の誘電体層111の少なくとも一つ以上の平均厚さtdが300nm以上10μm以下であることができる。
【0044】
ここで、誘電体層111の平均厚さtdは、内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の第1方向の平均大きさを意味することができる。誘電体層111の平均厚さは、本体110の第1方向及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)を用いてスキャンして測定することができる。より具体的には、一つの誘電体層111の多数の地点、例えば第2方向に等間隔の30の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔の30の地点は後述する容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値測定を10つの誘電体層111に拡張して平均値を測定すると、誘電体層111の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0045】
本体110は本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量が形成される容量形成部Acと、上記容量形成部Acの第1方向の上部及び下部に形成されたカバー部112、113を含むことができる。
【0046】
また、上記容量形成部Acは、キャパシタの容量形成に寄与する部分であり、誘電体層111を挟んで複数の第1内部電極121及び第2内部電極122を繰り返し積層して形成されることができる。
【0047】
カバー部112、113は、上記容量形成部Acの第1方向の上部に配置される上部カバー部112及び上記容量形成部Acの第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0048】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層して形成することができ、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0049】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は内部電極を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。
【0050】
すなわち、上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、セラミック材料を含むことができ、例えばチタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0051】
一方、カバー部112、113の厚さは特に限定する必要はない。例えば、カバー部112、113の厚さtcは10~300μmであることができる。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtcは15μm以下であることができる。
【0052】
カバー部112、113の平均厚さtcは第1方向の大きさを意味することができ、容量形成部Acの上部または下部で等間隔の5の地点で測定したカバー部112、113の第1方向の大きさを平均した値であることができる。
【0053】
また、上記容量形成部Acの側面にはマージン部114、115が配置されることができる。
【0054】
マージン部114、115は、本体110の第5面5に配置された第1マージン部114と、第6面6に配置された第2マージン部115を含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、上記セラミック本体110の幅方向の両端面(end surfaces)に配置されることができる。
【0055】
マージン部114、115は、
図3に示されたように、上記本体110を幅-厚さ(W-T)の方向に切断した断面(cross-section)で第1内部電極121及び第2内部電極122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0056】
マージン部114、115は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0057】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成されるところを除いて導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することで形成されたものであることができる。
【0058】
また、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後、内部電極が本体の第5面5及び第6面6に露出するように切断した後、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に第3方向(幅方向)に積層してマージン部114、115を形成することもできる。
【0059】
一方、マージン部114、115の幅は特に限定する必要はない。例えば、マージン部114、115の幅は5~300μmであることができる。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、マージン部114、115の平均幅は15μm以下であることができる。
【0060】
マージン部114、115の平均幅は、内部電極が第5面から離隔した領域の第3方向の平均大きさ、及び内部電極が第6面から離隔した領域の第3方向の平均大きさを意味することができ、容量形成部Acの側面で等間隔の5の地点で測定したマージン部114、115の第3方向の大きさを平均した値であることができる。
【0061】
したがって、一実施形態において、内部電極121、122が第5面及び第6面から離隔した領域の第3方向の平均大きさはそれぞれ15μm以下であることができる。
【0062】
内部電極121、122は、第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができる。第1内部電極121及び第2内部電極122は、本体110を構成する誘電体層111を挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3面3及び第4面4でそれぞれ露出することができる。
【0063】
第1内部電極121は第4面4から離隔し、第3面3を介して露出し、第2内部電極122は第3面3から離隔し、第4面4を介して露出することができる。本体の第3面3には第1外部電極131が配置され、第1内部電極121と連結され、本体の第4面4には第2外部電極132が配置され、第2内部電極122と連結されることができる。
【0064】
すなわち、第1内部電極121は第2外部電極132とは連結されず、第1外部電極131と連結され、第2内部電極122は第1外部電極131とは連結されず、第2外部電極132と連結される。したがって、第1内部電極121は第4面4で一定距離離隔して形成され、第2内部電極122は第3面3で一定距離離隔して形成されることができる。また、第1内部電極121及び第2内部電極122は、本体110の第5面及び第6面から離隔して配置されることができる。
【0065】
本発明の一実施形態によると、複数の内部電極121、122のうち一つ以上が誘電体層との界面IFから10nm離隔した地点(▲)のうち、In/(Ni+In)のモル比が0.002以上の地点の割合(A)が70%以上、第1方向の中央部の地点(●)のうち、In/(Ni+In)のモル比が0.002以上の地点の割合(B)が35%以下を満たすことができる。このように、内部電極121、122のうち、誘電体層との界面IFに隣接した領域にIn含有量が高い領域を配置することにより、誘電体層と内部電極の間の界面接合力を向上させることができ、In含有量が高い領域が内部電極から誘電体層への、または誘電体層から内部電極への電子移動を妨害する一種の半導体障壁として作用して、静電容量及び高温負荷の寿命を全て向上させることができる。
【0066】
ここで、In/(Ni+In)のモル比は、[Inのmol量/(Niのmol量+Inのmol量)]として計算されることができる。以下、内部電極内で誘電体層との界面IFから10nm離隔した地点(▲)のうち、In/(Ni+In)のモル比が0.002以上の地点の割合を「A」とし、内部電極の第1方向の中央部の地点(●)のうち、In/(Ni+In)のモル比が0.002以上の地点の割合を「B」とする。また、「A」及び「B」は、それぞれ最小20の地点で測定したものであることができる。
【0067】
「A」が0%超過70%未満の場合には、「A」が0%の場合に比べて静電容量は向上することができるが、高温負荷の寿命が低下するおそれがある。したがって、「A」は70%以上であることが好ましく、静電容量及び高温負荷の寿命をより向上させるために「A」は75%以上であることがより好ましい場合がある。一方、「A」の上限は特に限定する必要はなく、好ましい一例として「A」は90%以下であることができる。
【0068】
一方、「B」が35%超過の場合には静電容量が低下したり、高温負荷の寿命が低下するおそれがあるため、「B」は35%以下であることができる。また、「B」の下限は特に限定する必要はないが、「B」が0%超過20%未満の場合には「B」が0%の場合に比べて静電容量は向上することができるが、高温負荷の寿命が低下するおそれがある。したがって、好ましい一例として「B」は20%以上であることができる。
【0069】
「A」及び「B」を測定する方法の一例として
図6~
図8を参照すると、積層型電子部品を第2方向の中央までポリシングして第1方向及び第3方向の断面を露出させた後、一つの内部電極121、122のうち、誘電体層111との界面IFから10nm離隔した20の地点(▲)及び第1方向の中央部の20の地点(●)を選定し、上記選定された地点のそれぞれでSTEM-EDSによるIn及びNiに対する定量分析により、In/(Ni+In)のモル比を測定して「A」及び「B」を求めることができる。このとき、誘電体層111との界面IFから10nm離隔した20の地点(▲)は等間隔を有するように指定することができる。また、第1方向の中央部の20の地点(●)も等間隔を有するように指定することができる。但し、これに制限されるものではなく、内部電極の第1方向の中央部は、内部電極を第1方向に3等分したときに中央に位置した領域を意味することができ、第1方向の中央部の20の地点(●)は、上記内部電極の第1方向の中央部で任意の20の地点を選定したものであることができる。一方、
図4に示したように、本体100の幅及び厚さ方向の中央に位置した中央領域、上部カバー部112に隣接した上部領域、及び下部カバー部113に隣接した下部領域のそれぞれにおいて内部電極を一つずつ選定し、各内部電極で「A」及び「B」を求めた後、それらの平均値を求めることで「A」及び「B」の値をより一般化することもできる。
【0070】
また、誘電体層111と内部電極121、122の間の界面IFは、STEM(走査透過型電子顕微鏡)により界面の両側に現れる線、すなわち、フレネルフリンジ(Fresnel fringes)を観察して、フォーカスを変化させたときにフレネルフリンジのコントラストが両側からほぼ対称に変化する地点を界面とすることができる。
【0071】
一方、「A」及び「B」を制御する方法は、特に限定する必要はない。具体的な例として、導電性ペーストに添加されるNiに対するInの量の調節及び焼成時の酸素分圧条件の調節を介して「A」及び「B」を制御することができる。インジウム(In)はニッケル(Ni)より酸化の傾向が強い元素でInを内部電極の材料として添加した後に焼成すると、一部は酸化されて誘電体層側に拡散してBaTiO3などのTiサイト(site)に置換され、他の一部は、酸化されずに内部電極に残っているNiと合金を形成することができる。また、内部電極から誘電体層側に拡散するInの一部は誘電体層と内部電極の界面にトラップして界面及び界面に隣接した領域においてIn含有量が高い領域が形成されることができる。
【0072】
一実施形態において、複数の内部電極121、122のうち一つ以上は、誘電体層との界面IFから2nm離隔した地点のIn/(Ni+In)のモル比の平均値をX、誘電体層との界面IFから10nm離隔した地点のIn/(Ni+In)のモル比の平均値をYとするとき、X-Yは0.0041以上であることができる。
【0073】
X-Yが0超過0.0041未満の場合には、X-Yが0の場合に比べて静電容量が低下したり、高温負荷の寿命が低下するおそれがあり、静電容量及び高温負荷の寿命を全て向上させ難い場合がある。したがって、X-Yは0.0041以上であることが好ましく、静電容量及び高温負荷の寿命をより向上させるためにX-Yは0.0057以上であることがより好ましいことができる。一方、X-Yの上限は特に限定する必要はなく、好ましい一例として、X-Yは0.0098以下であることができる。
【0074】
X及びYを測定する方法に対する一例として
図7を参照すると、積層型電子部品を第2方向の中央までポリシングして第1方向及び第3方向の断面を露出させた後、内部電極121、122のうち、誘電体層111との界面IFから2nm離隔した20の地点(x)及び10nm離隔した20の地点(▲)を選定して、上記選定された地点のそれぞれにおいてSTEM-EDSによるIn及びNiに対する定量分析によりIn/(Ni+In)のモル比を求めた後、2nm離隔した20の地点(x)で測定されたIn/(Ni+In)のモル比を平均した値をXとし、10nm離隔した20の地点(▲)で測定されたIn/(Ni+In)のモル比を平均した値をYとすることができる。
【0075】
また、誘電体層111と内部電極121、122の間の界面IFはSTEM(走査透過型電子顕微鏡)により界面の両側に現れる線、すなわち、フレネルフリンジ(Fresnel fringes)を観察して、フォーカスを変化させたときにフレネルフリンジのコントラストが両側からほぼ対称に変化する地点を界面とした。
【0076】
一実施形態において、Xは0.0139以下であることができる。Xが0.0139超過である場合には静電容量が低下したり、高温負荷の寿命が低下するおそれがあるため、静電容量及び高温負荷の寿命を全て向上させることが難しい場合がある。
【0077】
一実施形態において、静電容量及び高温負荷の寿命を全て向上させるためには、上記Xは0.0046以上0.0139以下であり、上記Yは0.0005以上0.0041以下であることがより好ましい。また、静電容量及び高温負荷の寿命をより向上させるために、上記Xは0.0067以上0.0139以下であり、上記Yは0.0010以上0.0041以下であることがさらに好ましい。
【0078】
一実施形態において、カバー部112、113に含まれた誘電体結晶粒の平均粒径をGc、容量形成部Acに含まれた誘電体結晶粒の平均粒径をGa、マージン部114、115に含まれた誘電体結晶粒の平均粒径をGmとするとき、1<Gc/Ga及び1<Gm/Gaを満たすことができる。容量形成部Acに含まれた誘電体結晶粒の平均粒径Gaがカバー部112、113及びマージン部114、115に含まれた誘電体結晶粒の平均粒径Gc、Gmより小さく制御することによって、積層型電子部品100の絶縁抵抗が向上することができる。
【0079】
誘電体結晶粒の粒径(Grain size)は、誘電体結晶粒の結晶粒界の一つの地点から他の地点に直線を引いたとき、最も大きい値を有する線を長軸、上記長軸に直交する直線のうち最も大きい値を有することを短縮とし、上記長軸と短軸の平均値を誘電体結晶粒の粒径とすることができる。また、最小100個以上の誘電体結晶粒の粒径を平均した値を誘電体結晶粒の平均粒径とすることができる。
【0080】
Ga、Gc及びGmを測定する方法に対する一例として、積層型電子部品を第2方向の中央までポリシングして第1方向及び第3方向の断面を露出させた後、走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いてスキャンして得られた画像イメージで測定することができる。このとき、倍率は誘電体結晶粒の粒径によって異ならせることができ、最小100個以上の誘電体結晶粒の粒径が測定可能になるように倍率を調節することができる。より具体的には、
図4を参照すると、Gaは、本体100の幅及び厚さ方向の中央に位置した中央領域において最小100個以上の誘電体結晶粒が含まれるようにスキャンした画像イメージで測定することができ、Gcはカバー部112、113の幅及び厚さ方向の中央に位置したカバー部の中央領域において最小100個以上の誘電体結晶粒が含まれるようにスキャンした画像イメージで測定することができ、Gmはマージン部114、115の幅及び厚さ方向の中央に位置したマージン部の中央領域において最小100個以上の誘電体結晶粒が含まれるようにスキャンした画像イメージで測定することができる。
【0081】
一実施形態において、上記Ga及びGcは1<Gc/Ga≦1.28を満たすことができる。Gc/Gaが1.28超過である場合には、容量形成部Acに含まれた誘電体結晶粒の平均粒径Gaが小さすぎて容量が低下するおそれがあり、容量及び/またはDF(Dissipation Factor)のばらつきが大きくなるおそれがある。
【0082】
一実施形態において、上記Ga及びGmは1<Gm/Ga≦1.07を満たすことができる。Gm/Gaが1.07超過である場合には、容量形成部Acに含まれた誘電体結晶粒の平均粒径Gaが小さすぎて容量が低下するおそれがあり、容量及び/またはDF(Dissipation Factor)のばらつきが大きくなるおそれがある。
【0083】
一実施形態において、内部電極121、122はNi及びInを含み、内部電極121、122に含まれたInの少なくとも一部はNiと合金の形態で存在することができる。これにより、Niの結晶粒界(grain boundary)エネルギー及び表面張力を減少させて内部電極の連結性を向上させ、内部電極の厚さ偏差を減らすことができる。NiとInが合金形態で存在するか否かは、XRD(X線回折法)により分析時にNiのピーク位置がシフトしたか否かで確認することができる。具体的な例として、積層型電子部品の内部電極を粉砕して粉末状を得た後、上記粉末をXRD(X線回折法)により分析してNiのピーク位置がシフトしたか否かで確認することができる。
【0084】
一実施形態において、内部電極121、122はSnを含むことができる。Snは融点が低く、Inが界面IFに容易に拡散するようにする役割を果たすことができ、Inが界面IFに容易にトラップできるようにする役割を果たすことができて、静電容量及び高温負荷の寿命をより容易に向上させる役割を果たすことができる。
【0085】
一方、内部電極121、122は、Ni、In、Ni-In、Snの他に他の金属も含むことができる。例えば、内部電極121、122は、Cu、Pd、Ag、Au、Pt、Al、Ti、及びこれらの合金のうち一つ以上をさらに含むことができる。
【0086】
一実施形態において、内部電極及び誘電体層のうち、内部電極と誘電体層の間の界面IFから2nm以内の領域は、他の領域よりもIn平均含有量より高いことができる。これにより、誘電体層と内部電極の界面接合力をより向上させることができ、内部電極から誘電体層への電子移動または誘電体層から内部電極への電子移動を妨害する一種の半導体障壁として作用する効果をより向上させ、静電容量及び高温負荷の寿命をより向上させることができる。
【0087】
図9は、一実施形態による内部電極と誘電体層の界面をSTEM-EDSで分析したイメージであり、
図9の(a)は、STEM-EDSでNi元素をマッピング(mapping)したイメージであり、
図9の(b)は、STEM-EDSでTi元素をマッピング(mapping)したイメージであり、
図9の(c)は、STEM-EDSでIn元素をマッピング(mapping)したイメージである。
図9の(a)及び(b)を参照すると、Ni含有量とTi含有量で誘電体層と内部電極を明確に区別できることが確認でき、
図9の(c)を参照すると、誘電体層と内部電極の間の界面にIn含有量が高く示されることを確認することができる。
【0088】
図7及び
図9の(c)の誘電体層と内部電極の間の界面に垂直な方向のラインであるL1に沿ってSTEM-EDSでラインプロファイル(line profile)を行うと、位置による元素含有量の変化をより定量的に分析することができる。
図9の(c)に示されたL1に沿ってSTEM-EDSでラインプロファイル(line profile)した結果である
図10を参照すると、誘電体層と内部電極の間の界面に隣接した領域内でIn、Dy及びSn含有量のピーク値が検出されることを確認することができる。
【0089】
また、Ni含有量が50at%超過90at%以下の領域でIn含有量のピーク値が検出されるが、これは、内部電極用導電性ペーストに含まれたInが誘電体層に拡散することによるものであることができる。したがって、一実施形態において、界面IFに隣接した領域を上記誘電体層と内部電極の界面に垂直な方向にラインプロファイルの分析時に、Ni含有量が50at%超過90at%以下の領域でIn含有量のピーク値が検出されることができる。また、Sn含有量のピーク値も50at%超過90at%以下の領域で検出されることができる。このとき、ラインプロファイル分析は、STEM-EDSを用いて行うことができる。
【0090】
一方、Ni含有量が10at%以上50at%未満の領域でDy含有量のピーク値が検出されるが、これは、セラミックグリーンシートに添加されたDyが内部電極に拡散することによるものであることができる。したがって、一実施形態において、界面IFに隣接した領域を上記誘電体層と内部電極の界面に垂直な方向にラインプロファイルの分析時に、Ni含有量が10at%以上50at%未満の領域でDy含有量のピーク値が検出されることができる。このとき、ラインプロファイル分析は、STEM-EDSを用いて行うことができる。
【0091】
一実施形態において、内部電極121、122はセラミック粒子を含み、上記セラミック粒子はInを含むことができる。
【0092】
内部電極121、122に含まれたセラミック粒子は、誘電体層と内部電極の間の焼結開始温度の差異を減らす役割を果たすことができ、内部電極用導電性ペーストに添加されたセラミック粒子が焼成後の内部電極内にトラップされたものであることができる。また、内部電極用導電性ペーストにInを添加することにより、内部電極121、122に含まれたセラミック粒子はInを含むことができる。
【0093】
このとき、Inは、内部電極と誘電体層の間の界面IFと同様に、セラミック粒子と内部電極の間の界面であるセラミック粒子の表面に主に分布することができる。したがって、セラミック粒子は、表面におけるIn含有量が内部におけるIn含有量より高く、セラミック粒子の表面におけるTiに対するInの平均含有量は0.3at%以上であることができる。また、セラミック粒子の表面におけるTiに対するInの平均含有量は、0.3at%以上3.8at%以下であることができる。
【0094】
図14は、本発明の一実施形態による内部電極と誘電体層の界面をSTEM-EDSで分析したイメージであり、
図14の(a)は、STEM-EDSでNi元素をマッピング(mapping)したイメージであり、
図14の(b)は、STEM-EDSでTi元素をマッピング(mapping)したイメージであり、
図14の(c)は、STEM-EDSでIn元素をマッピング(mapping)したイメージである。
図14の(a)及び(b)を参照すると、内部電極の内部にセラミック粒子がトラップされていることが確認できる。また、
図14の(c)を参照すると、セラミック粒子の表面でIn含有量が高く示されることを確認することができ、セラミック粒子の表面でIn含有量が内部電極と誘電体層の間の界面IFでIn含有量と類似することが確認できる。
【0095】
セラミック粒子の表面におけるTiに対するInの平均含有量を測定する方法の一例として、積層型電子部品を第2方向の中央までポリシングして第1方向及び第3方向の断面を露出させた後、内部電極121、122内にトラップされたセラミック粒子のうち一つが内部電極と成す境界のうち5つのポイントを選定した後、上記5つのポイントでSTEM-EDSによるTi及びInに対する定量分析を進行してTiに対するInの含有量を求めた後、その値の平均値を求めることで測定することができる。また、トラップされたセラミック粒子のうち、互いに異なる4つのセラミック粒子を選定して、各セラミック粒子と内部電極が成す境界ごとに5つの領域を測定して合計20つの測定値の平均値を求めることで、より一般化することができる。
【0096】
一方、内部電極121、122の平均厚さteは特に限定する必要はなく、所望の特性や用途に応じて任意に設定することができる。具体的な例として、内部電極121、122の平均厚さteは、300nm以上3μm以下であることができる。また、複数の内部電極121、122の少なくとも一つの平均厚さteが300nm以上3μm以下であることができる。
【0097】
内部電極121、122の厚さは、内部電極121、122の第1方向の大きさを意味することができる。内部電極の平均厚さteは、本体110の第1方向及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)を用いてスキャンして測定することができる。より具体的には、一つの内部電極121、122の多数の地点、例えば第2方向に等間隔の30の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔の30の地点は容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値測定を10つの内部電極121、122に拡張して平均値を測定すると、内部電極121、122の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0098】
一実施形態において、内部電極121、122の平均厚さをte、内部電極121、122の厚さの標準偏差をσteとするとき、σte/teは0.2以下であることができる。すなわち、内部電極の厚さの変動係数(CV、Coefficient of Variation)は0.2以下であることができ、これは内部電極の厚さ均一性が20%以内であることを意味することができる。また、σte/teは、より好ましくは0.18以下、さらに好ましくは0.17以下であることができる。また、より好ましくは内部電極121、122の厚さの標準偏差σteは±70nm以内であることができる。
【0099】
σte/teが0.2以下の場合、内部電極121、122の厚さの均一性を確保することで、内部電極121、122に応力が不均一に加わる現象及び電界集中を防止することができ、これにより信頼性を向上させることができる。
【0100】
上記内部電極の厚さの標準偏差σteは、内部電極121、122の平均厚さteを測定するための上記第2方向に等間隔の30の地点で測定された各厚さから上記内部電極の平均厚さteを引いた後に二乗をして、この値の平均値を計算することで分散を求めた後、上記分散値を平方根することで測定することができる。
【0101】
一実施形態において、内部電極121、122の連結性は85%以上であることができる。また、より好ましくは内部電極121、122の連結性は90%以上であることができる。
【0102】
図6を参照すると、内部電極IEは複数の導電部EPを含み、隣接した導電部EPの間に切れ部DPを含むことができる。内部電極IEの全体長さをb、複数の導電部EPの長さをそれぞれe1、e2、e3、e4とするとき、内部電極IEの全体長さbに対する複数の導電部EPの長さの合計(e=e1+e2+e3+e4)の割合を内部電極の連結性と定義することができる。
【0103】
内部電極の連結性は、本体110の第1方向及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)を用いてスキャンしたイメージで測定することができる。より具体的には、上記イメージにおいて10つの内部電極121、122についてそれぞれ内部電極の連結性を測定した後、その平均値を内部電極の連結性とすることができる。
【0104】
外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4に配置されることができる。
【0105】
外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ配置され、第1内部電極121及び第2内部電極122とそれぞれ連結された第1外部電極131及び第2外部電極132を含むことができる。
【0106】
本実施形態では、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0107】
一方、外部電極131、132は、金属などの電気導電性を有するものであれば、どのような物質を用いても形成されることができ、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されることができ、さらに多層構造を有することができる。
【0108】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a及び電極層131a、132a上に形成されためっき層131b、132bを含むことができる。
【0109】
電極層131a、132aに対するより具体的な例として、電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成(firing)電極であるか、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であることができる。
【0110】
また、電極層131a、132aは、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順次形成された形態であることができる。また、電極層131a、132aは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されるか、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであることができる。また、電極層131a、132aは、めっき層で形成されるか、スパッタリング工法、ALD(Atomic layer deposition)などの蒸着方式を用いて形成された層であることもできる。
【0111】
電極層131a、132aに含まれる導電性金属として、電気導電性に優れた材料を用いることができ、特に限定されない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びそれらの合金のうち一つ以上であることができる。
【0112】
めっき層131b、132bは実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層131b、132bの種類は特に限定されず、Ni、Sn、Pd及びこれらの合金のうち一つ以上を含むめっき層であることができ、複数の層で形成されることができる。
【0113】
めっき層131b、132bに対するより具体的な例として、めっき層131b、132bはNiめっき層またはSnめっき層であることができ、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であることができ、Snめっき層、Niめっき層、及びSnめっき層が順次形成された形態であることができる。また、めっき層131b、132bは、複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含むこともできる。また、めっき層131b、132bは、電極層131a、132a上にNiめっき層及びPdめっき層が順次形成された形態であることができる。
【0114】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。本発明によると、小型化及び高容量化に有利であるため、サイズの小さいIT用製品のサイズにも適用することができ、多様な環境で高信頼性を確保することができるため、高信頼性が要求される自動車電装用製品のサイズにも適用することができる。
【0115】
以下、実験例によって本発明をさらに詳細に説明するが、これは発明の具体的な理解を助けるためのものであり、本発明の範囲が実験例によって限定されるものではない。
【0116】
(実験例1)
内部電極ペーストが塗布されたセラミックグリーンシートを積層して切断及び焼成を経て本体を形成した後、本体上に外部電極用ペーストを塗布して焼成してサンプルチップを製作した。
【0117】
このとき、試験番号毎に内部電極用ペーストに含まれたNi粉末に対するIn含有量を変化させてサンプルチップを製作し、試験番号1は内部電極用ペーストにInを添加しなかった。
【0118】
また、セラミックグリーンシートは、チタン酸バリウム(BaTiO3)パウダーに有機溶剤、結合剤、分散剤などを添加して製作し、セラミックグリーンシートにはInを添加しなかった。
【0119】
サンプルチップを第2方向の中央までポリシング(polishing)して第1方向及び第3方向の断面を露出させた後、
図4に示したように幅及び厚さ方向の中央に位置した中央領域、上部カバー部に隣接した上部領域、及び下部カバー部に隣接した下部領域のそれぞれについて、FIBによるマイクロサンプリング加工法を用いて薄片化した試料を用意した。
【0120】
薄片化した試料は、その厚さが60nm以下になるように加工した。一方、FIB加工時に形成された試料表面のダメージ層は、Arイオンミリングによって除去した。
【0121】
上述のようにして製作した薄片化した試料のそれぞれから内部電極を一つずつ選定して、STEM(走査透過型電子顕微鏡)及びEDS(エネルギー分散型X線分析装置)を用いて分析した。また、STEM分析において、走査透過型電子顕微鏡としてARM-200F(JEOL製品)を用い、加速電圧は200kVとした。また、EDS装備としてはoxford EDSを用いた。
【0122】
内部電極内で誘電体層との界面IFから10nm離隔した地点のうち、In/(Ni+In)のモル比が0.002以上の地点の割合である「A」、内部電極の第1方向の中央部の地点のうち、In/(Ni+In)のモル比が0.002以上の地点の割合である「B」を測定し、下記表1に記載した。
図7を参照すると、一つの試験片当たりの内部電極121、122のうち、誘電体層111との界面IFから10nm離隔した20の地点(▲)を観察して、合計60の地点を分析して「A」を求め、
図8を参照すると、一つの試験片当たりの内部電極121、122のうち、第1方向の中央部の20の地点(●)を観察して、合計60の地点を分析して「B」を求めた。
【0123】
また、誘電体層との界面IFから2nm離隔した地点(x)のIn/(Ni+In)のモル比の平均値であるX、誘電体層との界面IFから10nm離隔した地点のIn/(Ni+In)のモル比の平均値であるYを測定して、下記表2に記載した。
図7を参照すると、一つの試験片当たりの内部電極121、122のうち、誘電体層111との界面IFから2nm離隔した20の地点(x)を観察して、合計60の地点を分析してXを求め、一つの試験片当たりの内部電極121、122のうち、誘電体層111との界面IFから10nm離隔した20の地点(▲)を観察して、合計60の地点を分析してYを求めた。
【0124】
また、電子線の測定プローブ直径は約1nmとし、測定時間は30秒とした。一方、得られたEDSスペクトルからの定量補正は、Cliff-Lorimer補正を用いた。
【0125】
誘電体層111と内部電極121、122の間の界面IFは、STEM(走査透過型電子顕微鏡)によって界面の両側に現れる線、すなわち、フレネルフリンジ(Fresnel fringes)を観察して、フォーカスを変化させた時に、フレネルフリンジのコントラストが両側でほぼ対称に変化する地点を界面とした。
【0126】
静電容量は、各試験番号当たりの10つのサンプルチップについて測定し、自動ブリッジ式測定器を用いて、AC電圧1Vrms、1kHzの条件で静電容量を測定して、各試験番号に対する平均値を求めた。試験番号1の静電容量を基準値「1」とし、試験番号2~9は、試験番号1の静電容量に対する相対値を記載した。
【0127】
MTTF(平均故障時間)は、各試験番号当たりの10つのサンプルチップについて測定し、165℃、7.5Vの条件で高温負荷試験を行い、絶縁抵抗が10KΩ以下になった時間を故障時間と判定して、その平均値を求めた。試験番号1のMTTFを基準値「1」とし、試験番号2~9は、試験番号1のMTTFに対する相対値を記載した。
【0128】
内部電極の連結性は、サンプルチップを第2方向の中央までポリシング(polishing)して第1方向及び第3方向の断面を露出させた後、
図4に示したように幅及び厚さ方向の中央に位置した中央領域で10つの内部電極を選定して測定した平均値を記載した。また、内部電極の平均厚さte及び内部電極の厚さの標準偏差σteは、上記中央領域で一つの内部電極を選定した後、上記内部電極の第2方向に等間隔の30の地点でその厚さを測定して平均厚さte及び標準偏差σteを求めた。
【0129】
【0130】
上記表1を参照すると、「A」が0%超過70%未満の場合(試験番号2及び7)には、「A」が0%の場合(試験番号1)に比べて静電容量は向上することができるが、高温負荷の寿命が低下することを確認することができる。また、「B」が35%超過の場合(試験番号7~9)には、静電容量が低下するか、高温負荷の寿命が低下することを確認することができる。
【0131】
一方、「A」が70%以上及び「B」が35%以下を満たす場合(試験番号3~6)の場合、試験番号1に比べて静電容量及びMTTFが全て向上する顕著な効果があることが確認できる。また、試験番号3~6の場合、内部電極の連結性が85%以上であり、内部電極の厚さ偏差σte/teも0.20以下と小さくて、内部電極の平滑性及び厚さ均一性に優れることが確認できる。したがって、「A」が70%以上及び「B」が35%以下を満たすことが好ましいことを確認することができる。
【0132】
また、「A」が75%以上及び「B」が35%以下を満たす場合(試験番号4~6)、試験番号1に比べて静電容量及びMTTFが全て向上するだけでなく、静電容量及びMTTFがそれぞれ15%以上顕著に向上したことが確認できる。したがって、「A」が75%以上及び「B」が35%以下を満たすことがより好ましいことを確認することができる。
【0133】
【0134】
上記表2を参照すると、X-Yが0超過0.0041未満の場合(試験番号2、7~9)には、X-Yが0の場合(試験番号1)に静電容量が低下するか、高温負荷の寿命が低下したことが確認できる。
【0135】
一方、X-Yが0.0041以上を満たす場合(試験番号3~6)の場合、試験番号1に比べて静電容量及びMTTFが全て向上する顕著な効果があることが確認できる。また、試験番号3~6の場合、内部電極の連結性が85%以上であり、内部電極の厚さ偏差σte/teも0.20以下と小さくて、内部電極の平滑性及び厚さ均一性に優れることが確認できる。したがって、X-Yが0.0041を満たすことが好ましいことを確認することができる。
【0136】
また、X-Yが0.0057以上を満たす場合(試験番号4~6)、試験番号1に比べて静電容量及びMTTFが全て向上するだけでなく、静電容量及びMTTFがそれぞれ15%以上顕著に向上したことが確認できる。したがって、X-Yが0.0057以上を満たすことがより好ましいことが確認できる。
【0137】
(実験例2)
誘電体層と内部電極の間の界面にSn含有量またはIn含有量の高い領域が配置されていない場合(比較例1)、誘電体層と内部電極の間の界面にSn含有量が高い領域を配置した場合(比較例2)、誘電体層と内部電極の間の界面にIn含有量が高い領域を配置した場合(発明例)の構造及び効果上の差異を確認するために、追加実験を行った。
【0138】
比較例1は、上記実験例1における試験番号1に該当し、発明例は上記実験例1における試験番号4に該当する。比較例2は、内部電極用ペーストにInを添加せずにSnを添加してサンプルチップを製作し、上記試験番号4の内部電極用ペーストに含まれたNi粉末に対するIn含有量と比較例2の内部電極用ペーストに含まれたNi粉末に対するSn含有量が同一になるようにした。
【0139】
比較例1、比較例2及び発明例のそれぞれ50つのサンプルを用意した後、下記STEP1、STEP2、STEP3の条件を順次適用して測定した絶縁抵抗のグラフを
図11に示した。
図11の(a)は比較例1、
図11の(b)は比較例2、
図11の(c)は発明例に対する絶縁抵抗を測定したグラフである。
STEP1:温度85℃、湿度25%、電圧6.3V、1時間維持
STEP2:温度85℃、湿度25%、電圧7.56V、3.5時間維持
STEP3:温度105℃、湿度25%、電圧7.56V、6時間維持
【0140】
図11を参照すると、Snを添加した比較例2の場合、比較例1に比べて絶縁抵抗は向上するが、絶縁抵抗の散布は改善されていないことが確認できる。一方、発明例の場合、比較例1及び比較例2に比べて絶縁抵抗が向上するだけでなく、絶縁抵抗の散布が顕著に向上したことが確認できる。比較例1の絶縁抵抗の散布(CV値)は15%、比較例2の絶縁抵抗の散布(CV値)は18%、発明例の絶縁抵抗の散布(CV値)は7%と測定された。
【0141】
誘電体層と内部電極の間の界面にSn含有量またはIn含有量が高い領域が配置されていない場合(比較例1)、誘電体層と内部電極の間の界面にIn含有量が高い領域を配置した場合(発明例)の誘電体結晶粒を比較するために、各サンプルチップを第2方向の中央までポリシングして第1方向及び第3方向の断面を露出させた後、走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)で観察した。
【0142】
図4を参照すると、中央領域、カバー部の中央領域、マージン部の中央領域のそれぞれにおいて100つ以上の誘電体結晶粒が含まれるように画像イメージをスキャンした後、容量形成部に含まれた誘電体結晶粒の平均粒径Ga、カバー部に含まれた誘電体結晶粒の平均粒径Gc、マージン部に含まれた誘電体結晶粒の平均粒径Gmを測定してGc/Ga及びGm/Gaを下記表3に記載した。
【0143】
また、比較例1及び発明例のそれぞれ50つのサンプルを用意した後、静電容量及びDF(Dissipation Factor)を測定して、その平均値及びCV値を下記表3に記載した。静電容量及びDF(Dissipation Factor)は、自動ブリッジ式測定器を用いて、AC電圧1Vrms、1kHzの条件で測定した。静電容量は比較例1の静電容量を基準値「1」とし、発明例は比較例1の静電容量に対する相対値を記載した。
【0144】
【0145】
上記表3を参照すると、Inを添加した発明例の静電容量が比較例1より高く、特に静電容量CV値が大きく改善されることが確認できる。また、発明例が比較例1に比べてDFが多少高いが、DF CV値は顕著に低いことが確認できる。
【0146】
誘電体層と内部電極の間の界面にSn含有量またはIn含有量が高い領域が配置されていない場合(比較例1)、誘電体層と内部電極の間の界面にIn含有量が高い領域を配置した場合(発明例)の誘電体結晶粒をSEMを用いてスキャンした画像イメージを
図12及び
図13に示した。
図12は比較例1の誘電体結晶粒を観察したイメージであり、
図12の(a)はカバー部の誘電体結晶粒を観察したイメージであり、
図12の(b)は容量形成部の誘電体結晶粒を観察したイメージである。
図13は発明例の誘電体結晶粒を観察したイメージであり、
図13の(a)はカバー部の誘電体結晶粒を観察したイメージであり、
図13の(b)は容量形成部の誘電体結晶粒を観察したイメージである。
【0147】
上記表1、
図12、
図13を参照すると、比較例1の場合、容量形成部に含まれた誘電体結晶粒の平均粒径Gaがカバー部に含まれた誘電体結晶粒の平均粒径Gc及びマージン部に含まれた誘電体結晶粒の平均粒径Gmに比べて非常に小さいことが確認できる。一方、Inを添加した発明例の場合、容量形成部に含まれた誘電体結晶粒の平均粒径Gaがカバー部に含まれた誘電体結晶粒の平均粒径Gc及びマージン部に含まれた誘電体結晶粒の平均粒径Gmと類似したことが確認できる。
【0148】
総合すると、Inを添加した発明例の場合、静電容量の散布増加、絶縁抵抗の散布増加などの問題点が発生せずに静電容量及びMTTFが全て向上する顕著な効果があることが確認できる。
【0149】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【0150】
また、本開示で用いられた「一実施形態」という表現は、互いに同一の実施形態を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかしながら、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と組み合わせて実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態において説明された事項が他の一実施形態に説明されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対または矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明として理解することができる。
【0151】
本開示で用いられた用語は、単に一実施形態を説明するために用いられたものであり、本開示を限定する意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なるものを意味しない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0152】
100 積層型電子部品
110 本体
111 誘電体層
112、113 カバー部
114、115 マージン部
121、122 内部電極
131、132 外部電極
131a、132a 電極層
131b、132b めっき層