(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102833
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】プリント配線板ならびにこれを含むソケットボードおよびバーンインボード
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20240724BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
H05K1/02 Q
H05K1/02 C
H05K1/02 J
H05K3/46 N
H05K3/46 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003674
(22)【出願日】2024-01-15
(31)【優先権主張番号】P 2023006848
(32)【優先日】2023-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】513168459
【氏名又は名称】OKIサーキットテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山村 明宏
【テーマコード(参考)】
5E316
5E338
【Fターム(参考)】
5E316AA32
5E316AA43
5E316BB20
5E316CC04
5E316CC08
5E316CC32
5E316FF07
5E338AA03
5E338AA16
5E338BB05
5E338BB13
5E338BB14
5E338BB25
5E338BB75
5E338CC08
5E338EE02
(57)【要約】
【課題】放熱性に加えて耐熱性に優れるプリント配線板、ソケットボードまたはバーンインボードを提供。
【解決手段】、プリント配線板(10)は、絶縁材料で形成された1層以上の第1の絶縁層(16)、複数の導体層(28)および1層以上の第2の絶縁層(30)を含み第1の絶縁層から底面にかけて配置されている底方層(20)、ならびに複数の導体層(22)および1層以上の第3の絶縁層(24)を含み第1の絶縁層から頂面にかけて配置されている頂方層(18)を有する積層構造によって構成され、積層構造の積層方向にわたって貫通するように穿設された貫通孔(34a、34b)と、貫通孔の内部に配設された伝熱部材(32)とを有し、貫通孔の孔壁と伝熱部材の間隙は第1の絶縁層(16)から延伸している絶縁材料によって充填されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料で形成された1層以上の第1の絶縁層、複数の導体層および1層以上の第2の絶縁層を含み第1の絶縁層から底面にかけて配置されている底方層、ならびに複数の導体層および1層以上の第3の絶縁層を含み第1の絶縁層から頂面にかけて配置されている頂方層を有する積層構造によって構成され、
該積層構造の積層方向にわたって貫通するように穿設された貫通孔と、
該貫通孔の内部に配設された伝熱部材とを有するプリント配線板であって、
前記貫通孔の孔壁と前記伝熱部材の間隙は、第1の絶縁層から延伸している前記絶縁材料によって充填されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント配線板において、前記貫通孔の孔壁と前記伝熱部材の前記間隙を充填している前記絶縁材料は、第1の絶縁層から一体的に延伸していることを特徴とするプリント配線板。
【請求項3】
請求項1に記載のプリント配線板において、前記伝熱部材の表面部分は該プリント配線板の両側の積層面から露出していることを特徴とするプリント配線板。
【請求項4】
請求項3に記載のプリント配線板において、該プリント配線板の両側の積層面から露出している前記伝熱部材の表面積は互いに異なることを特徴とするプリント配線板。
【請求項5】
請求項1に記載のプリント配線板において、
前記底方層には、前記貫通孔の第1の貫通孔部分が穿設され、
前記頂方層から第1の絶縁層にかけて、第1の貫通孔部分とは孔の形状または寸法が異なる前記貫通孔の第2の貫通孔部分が穿設され、
前記伝熱部材は、第1の貫通孔部分に対応した寸法および形状を採る第1の伝熱体部分と、第2の貫通孔部分に対応した寸法および形状を採る第2の伝熱体部分とから形成されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項6】
請求項5に記載のプリント配線板において、前記伝熱部材の第1または第2の伝熱体部分の形状は円柱体状であることを特徴とするプリント配線板。
【請求項7】
請求項5に記載のプリント配線板において、前記伝熱部材の第1または第2の伝熱体部分の形状は矩形柱体状であることを特徴とするプリント配線板。
【請求項8】
請求項7に記載のプリント配線板において、前記伝熱部材の第1または第2の伝熱体部分の形状に応じて略矩形状に穿設された第1または第2の貫通孔部分の開口隅角部は、該開口隅角部の外側に略部分円を付加した形状に広がっていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項9】
請求項1に記載のプリント配線板において、
前記底方層には、前記貫通孔の第1の貫通孔部分が穿設され、
前記伝熱部材は、第1の貫通孔部分に対応した寸法および形状を採って第1の貫通孔部分の内部に配設されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項10】
請求項9に記載のプリント配線板において、
前記頂方層から第1の絶縁層にかけて前記貫通孔の第2の貫通孔部分が穿設され、
第2の貫通孔部分の内部には、第1の貫通孔部分の内部に配設された前記伝熱部材と伝熱的に接するように、該伝熱部材とは別の伝熱部材が配設されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項11】
請求項1に記載のプリント配線板において、
前記伝熱部材の側面部には溝が設けられ、
該溝は、第1の絶縁層から延伸している前記絶縁材料によって充填されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項12】
請求項11に記載のプリント配線板において、前記溝は、第1の絶縁層の層本体から水平に延伸している前記絶縁材料によって充填されるように形成されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項13】
請求項1に記載のプリント配線板において、
前記伝熱部材の側面部には穴が穿設され、
該穴は、第1の絶縁層から延伸している前記絶縁材料によって充填されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項14】
請求項13に記載のプリント配線板において、前記穴は、第1の絶縁層の層本体から水平に延伸している前記絶縁材料によって充填されるように形成されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項15】
請求項1に記載のプリント配線板において、前記伝熱部材は、前記充填された絶縁材料に接する表面の算術平均粗さが、前記伝熱部材のその他の表面の算術平均粗さよりも大きいことを特徴とするプリント配線板。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれかに記載のプリント配線板を含むことを特徴とするソケットボード。
【請求項17】
請求項1ないし15のいずれかに記載のプリント配線板を含むことを特徴とするバーンインボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板ならびにプリント配線板を含むソケットボードおよびバーンインボードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
絶縁体基板上またはその内部に導体の配線を施したプリント配線板は、集積回路(Integrated Circuit:IC)、コンデンサ、抵抗器など様々な電子部品を実装することにより電子回路として動作する。このような電子回路すなわちプリント回路板は、様々な電子機器に搭載されている。したがって、プリント回路板の不可欠な構成要素となるプリント配線板は、電子機器の主要な構成要素として、電子機器の繰返しの使用に耐え得る耐久性が求められる。特に、電子機器の使用中はプリント配線板に熱が不可避的に発生するため、発生した熱の放熱処理手段が問題となっている。
【0003】
プリント配線板に発生する熱の放熱処理手段として、プリント配線板内部に、銅コインなどの熱伝導率が高い物質からなる伝熱部材を埋め込むことが知られている。プリント配線板に埋め込まれる伝熱部材の配置は、特に発熱量が大きい大規模集積回路(Large Scale Integration:LSI)のような電子部品の実装位置に相応していることが一般的である。さらに、プリント配線板の電子部品実装面と反対側の面に、ヒートシンクなどの放熱部材を配置する。このような構成を採ることにより、電子部品が発する熱は、伝熱部材を介してヒートシンクに伝導され、さらにはヒートシンクから電子機器の外部に放熱されることとなる。
【0004】
例えば、下記特許文献1に開示されているプリント配線板では、伝熱部材として断面がT字型の金属体をプリント配線板の内部に埋め込む構成を採っている。このような配線板によれば、プリント配線板の表面上において、放熱部材の配置面側に設けた伝熱領域を電子部品の実装面側の伝熱領域よりも広くとることができ、これにより放熱性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示されたものをはじめとした従来のプリント配線板は、伝熱部材との固定を、例えば、プリント配線板に埋め込んだ伝熱部材とプリント配線板に設けた穴との間隙をはんだ材またはロウ材で充填すること、伝熱部材とプリント配線板表面にめっきを施すこと、または、伝熱部材とプリント配線板の穴との間隙を接着剤で固定することによって行なっていた。
【0007】
しかしながら、このような手段により伝熱部材をプリント配線板に固定した場合、接着力が不十分で伝熱部材が脱落するおそれがある。また、プリント配線板が実装される電子機器内部の温度変化や湿度変化によりプリント配線板が伸縮することで、接着または固定した部分が剥がれるおそれや亀裂が生じるおそれがある。
【0008】
プリント配線板にこのような損傷が発生した場合、プリント配線板とこれに実装した電子部品との関係で、またはプリント配線板の構成要素同士で、電気的または熱的な接続が損なわれることとなる。さらには、プリント配線板を伝熱部材と接着または固定した部分の剥落または亀裂は、プリント配線板の電気的な絶縁の劣化にもつながる。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑み、放熱性に加えて耐熱性に優れるプリント配線板、ならびにこれを含むソケットボードおよびバーンインボードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上述の課題を解決するために、絶縁材料で形成された1層以上の第1の絶縁層、複数の導体層および1層以上の第2の絶縁層を含み第1の絶縁層から底面にかけて配置されている底方層、ならびに複数の導体層および1層以上の第3の絶縁層を含み第1の絶縁層から頂面にかけて配置されている頂方層を有する積層構造によって構成され、積層構造の積層方向にわたって貫通するように穿設された貫通孔と、貫通孔の内部に配設された伝熱部材とを有するプリント配線板はさらに、第1の絶縁層から延伸している絶縁材料によって貫通孔の孔壁と伝熱部材の間隙が充填されている。
【0011】
また、本発明は上述の課題を解決するために、ソケットボードの構成に上記のプリント配線板を含める。
【0012】
さらに、本発明は上述の課題を解決するために、バーンインボードの構成に上記のプリント配線板を含める。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、放熱性に加えて耐熱性に優れるプリント配線板、ならびにこれを含むソケットボードおよびバーンインボードを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るプリント配線板の一実施形態を示す概略的な断面図である。
【
図2】
図1で示すプリント配線板の実施形態に電子部品を実装することによって構成されるプリント回路板の概略的な分解斜視図である。
【
図3】
図1で示すプリント配線板の実施形態の概略的な分解斜視図である。
【
図4】
図1で示すプリント配線板の実施形態に埋め込まれる伝熱部材の一例の上面図(上側の図)および正面図(下側の図)である。
【
図5】
図1で示すプリント配線板の内部における、
図4で示す伝熱部材の固定例を示す要部斜視断面図である。
【
図6】
図1で示すプリント配線板の実施形態における放熱の流れを概略的に示す図である。
【
図7】
図1で示すプリント配線板の積層構成例を表の形式で示す図である。
【
図8】
図1の実施形態に則して製造したプリント配線板の寸法の例を表の形式で示す図である。
【
図9】
図8で示す寸法に従って製造したプリント配線板の内部構造を示す概略的な断面図である。
【
図10】
図8で示す寸法に従って製造したプリント配線板の内部構造を示す別の概略的な断面図である。
【
図11】本発明の各実施例に対して実行した試験の各種条件を表の形式で示す図である。
【
図12】
図11で示した条件下で実行した試験で測定された値を表の形式で示す図である。
【
図13】
図1で示すプリント配線板の実施形態に埋め込まれる伝熱部材の別の一例の上面図(上側の図)および正面図(下側の図)である。
【
図14】
図1で示すプリント配線板の変形実施形態の概略的な分解斜視図である。
【
図15】
図1で示すプリント配線板の内部における、
図13で示す伝熱部材の固定例を示す要部斜視断面図である。
【
図16】本発明に係るプリント配線板に設けられる貫通孔の形状の例を示す図である。
【
図17】本発明に係るプリント配線板の別の実施形態を示す概略的な断面図である。
【
図18】
図17で示すプリント配線板の実施形態の概略的な分解斜視図である。
【
図19】
図17で示すプリント配線板の実施形態に電子部品を実装することによって構成されるプリント回路板の概略的な分解斜視図である。
【
図20】
図17で示すプリント配線板の積層構成例を表の形式で示す図である。
【
図21】
図17で示すプリント配線板の実施形態における放熱の流れを概略的に示す図である。
【
図22】本発明に係るプリント配線板のさらに別の実施形態を示す概略的な断面図である。
【
図23】
図22で示すプリント配線板の実施形態に埋め込まれる伝熱部材の一例の上面図(上側の図)および正面図(下側の図)である。
【
図24】
図22で示すプリント配線板の内部における、
図23で示す伝熱部材の固定例を示す要部斜視断面図である。
【
図25】
図22で示すプリント配線板の実施形態に埋め込まれる伝熱部材の別の一例の上面図(上側の図)および正面図(下側の図)である。
【
図26】
図22で示すプリント配線板の内部における、
図25で示す伝熱部材の固定例を示す要部斜視断面図である。
【
図27】
図1で示すプリント配線板の実施形態に埋め込まれる伝熱部材のさらに別の一例の上面図(上側の図)および正面図(下側の図)である。
【
図28】本発明に係るプリント配線板の一実施形態を含んで構成されるソケットボードの一例を示す概略的な斜視図である。
【
図29】
図28のソケットボードを分解斜視図として示す概略図である。
【
図30】本発明に係るプリント配線板の一実施形態を含んで構成されたバーンインボードの一例を示す概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に添付図面を参照して本発明によるプリント配線板の実施形態を詳細に説明する。なお、本願添付の断面図において同一の構成要素は、同一の参照符号で示すか、または、ハッチングの間隔および傾斜角度を統一させて描写している。
【0016】
図1を参照すると、本発明によるプリント配線板10の一実施形態は、その頂面にLSI(大規模集積回路)12が実装されている。また、プリント配線板10の底面にはヒートシンク14が、LSI 12で発生した熱を受け取って放熱できるように実装されている。このように、LSI 12、ヒートシンク14、さらに任意の回路部品を実装することにより、プリント配線板10を含むプリント回路板が形成される。
【0017】
なお、以下において、LSI 12が実装される側のプリント配線板10の表面を「頂面」、ヒートシンク14が実装される側のプリント配線板10の表面を「底面」と表記して説明することがある。しかしながら、これは本発明をより平明に説明するための便宜上の表記にすぎず、プリント配線板10の製造時または電子機器への搭載配置時などにおける天地を制限する意図ではないことに留意されたい。
【0018】
プリント配線板10は、その頂面から底面にわたって複数の層が積層された構成を採っている。プリント配線板10の層数は任意でよいが、
図1で示す実施形態では、プリント配線板10は8層の銅箔と、各銅箔層の間に配置された7層の絶縁層とからなる。
【0019】
プリント配線板10に積層されている絶縁層のうち、略中間の位置に積層されている絶縁層、本実施形態の場合は頂面側から数えて4層目の絶縁層を中間絶縁層16と名付けて以後の説明を行なう。また、中間絶縁層16を基準に、中間絶縁層16から頂面方向に積層されている層を頂方層18、中間絶縁層16から底面方向に積層されている層を底方層20と名付けて以後の説明を行なう。
【0020】
頂方層18は、頂面に露出している導体層のほか、
図1の実施形態では銅箔で形成されている導体層としての内層22と、絶縁層24とで構成されている。また、底方層20は、底面に露出している導体層のほか、
図1の実施形態では銅箔で形成されている導体層としての内層28と、絶縁層30とで構成されている。プリント配線板10内の絶縁層16、24、30は、ガラスクロス繊維を含有する公知の絶縁材料、例えばプリプレグを用いて形成することができる。
【0021】
プリント配線板10は、熱伝導率が高い材料を用いて形成された伝熱部材32を有する。熱伝導率が高い材料としては例えば金属材、特に好適には銅が用いられる。本実施形態では、伝熱部材32としてコイン状に形成された銅、すなわち銅コイン32の少なくとも側部表面がプリント配線板10の内部に埋まって配設されているものとして以後の説明を行なう。
【0022】
さらに、プリント配線板10は、銅コイン32の形状に対応して穿設された貫通孔34を有する。銅コイン32は、貫通孔34に挿入されることによりプリント配線板10の内部に埋設されることとなる。プリント配線板10内に埋設される銅コイン32の配置位置、すなわち貫通孔34の穿設位置は、LSI 12の頂面実装位置の下方かつヒートシンク14の底面実装位置の上方であることが好ましい。かかる配置により、LSI 12からヒートシンク14へのより円滑な放熱が実現される。
【0023】
貫通孔34の形状および寸法は、伝熱部材32の形状および寸法に対応している。以後、頂方層18に穿設された貫通孔部分を貫通孔34a、底方層20に穿設された貫通孔部分を貫通孔34bとして説明を行なう。
【0024】
LSI 12の筐体部分と銅コイン32の頂部は、プリント配線板10の頂面から露出した銅コイン32の頂部に施されるめっき36を介して接続されることとなる。また、銅コイン32の底部とヒートシンク14は、プリント配線板10の露出した銅コイン32の底部に施されるめっき38およびめっき38とヒートシンク14の間に敷設される伝熱シート40を介して接続されることとなる。伝熱シート40は、伝熱性に優れる任意の材料を薄い板状に成形することによって形成することができる。伝熱性に優れる材料としては、アクリル系、シリコン系などの樹脂を用いることができる。
【0025】
プリント配線板10とLSI 12の電気的な接続は、LSI 12に設けられているLSI端子42とプリント配線板10の接続パット44との間を電気的に接続することによって実現される。接続パット44は、プリント配線板10の一方の表面層たる頂面上に露出しているパターンとなる。
【0026】
プリント配線板10には、異なる回路層間を電気的に接続するビアが設けられている。プリント配線板10に設けられるビアには、接続パット44とプリント配線板10の他方の表面層たる底面上に露出したパターン50との間を電気的に接続する、その壁面上にめっきを被覆したスルーホール46が含まれる。その他の種類のビアとして、プリント配線板10には接続パット44と内層22、28の間を接続するブラインドビアおよび内層間を接続する埋込ビアも設けられるが、これらの図示は省略する。
【0027】
プリント配線板10の表面層上、すなわち頂面および底面にはレジスト48が被覆形成されている。
【0028】
図2は、プリント配線板10にLSI 12およびヒートシンク14を実装するときの各構成要素の配置関係を分解斜視図の形式で表したものである。プリント配線板10の頂面上には、実装するLSI 12の端子42の数および配列間隔と適合するように複数の接続パット44が配列されている。LSI端子42と接続パット44の接続は、はんだを用いた接合によって実現することが好適である。プリント配線板10の頂面のうち、接続パット44が露出している部分以外にはレジスト48が被覆され、これによってプリント配線板10の保護が図られる。
【0029】
図2で描かれているめっき36内の円形破線は銅コイン32の円形頂面32aの配置部分に相当する。すなわち、LSI 12、めっき36および銅コイン32の順でプリント配線板10の厚さ方向に沿って直列に配置することによって、LSI 12で発生した熱を、めっき36を介して銅コイン32へと高効率に伝導できるようにしている。
【0030】
図2では、より好適な実施形態として、伝熱シート40およびヒートシンク14もまた、プリント配線板10上におけるLSI 12の実装位置の厚さ方向に沿って直列下方に実装することを示している。このような配置もまた、プリント配線板10の外部に排熱するまでの伝熱効率性に鑑みた結果である。
【0031】
図3では、好適な実施形態である
図2のプリント配線板10を得るために、プリント配線板10において銅コイン32を挿入可能な貫通孔34を穿設する位置、より具体的には銅コイン32の底部を挿入可能な貫通孔34bを穿設する底方層20内の位置を示している。すなわち、底方層20において貫通孔34bは、プリント配線板10の頂方から見てLSI 12、めっき36および銅コイン32の順でプリント配線板10の厚さ方向に沿って直列に配置できるような位置に穿設される。
【0032】
図1で示す実施形態を採るプリント配線板10に埋め込まれる伝熱部材32すなわち銅コイン32の形状の例を、
図4を参照しながらより詳細に説明する。銅コイン32は、径の異なる2つの円柱を積み重ねたような形状を採っている。より具体的に述べると、銅コイン32の形状は、プリント配線板10の頂面側に固着され円形面の直径がDUである頂方円柱体部32Hと、底面側に固着され円形面の直径がDUよりも大きいDLである底方円柱体部32Lとの、2つの伝熱体部分に大別することができる。ただし、頂方円柱体部32Hと底方円柱体部32Lを含む銅コイン32を造り出す際には、各円柱体部を別々に形成してこれらを組み合わせるのではなく、当初から1つの銅コイン32として一体的に形成することが好ましい。
【0033】
なお、図例では、頂方円柱体部32Hの頂面および底方円柱体部32Lの底面をともに、径の長さがDUまたはDLの正円としている。しかしながら、これらの底面の形状は、正方形のみならず長方形など他の矩形であってもよい。端的に言えば、頂方円柱体部32Hの頂面の表面積よりも底方円柱体部32Lの底面の表面積が大きくなる限りにおいて、正円に限らず楕円形などの形状を採用しても構わない。
【0034】
銅コイン32の形状のうち、頂方円柱体部32Hの頂面および側部曲面領域には、それぞれ参照符号32aおよび32bを付して以後の説明を行なう。同様に、底方円柱体部32Lの頂面、側部曲面および底面領域には、それぞれ参照符号32c、32dおよび32eを付して以後の説明を行なう。なお、底方円柱体部32Lの頂面領域32cを形成しているのは、
図4の上面図(
図4上側の図)で示されているように、幅が(DL-DU)/2の値である円環状の領域である。なお、銅コイン32の全高は、プリント配線板10の積層厚さに極めて近似している。さらに、銅コイン32の両面32a、32e上に施されるめっき36、38の厚さを加味すると、めっき厚みの分を加えた銅コイン32の全高は、プリント配線板10の積層厚さと実質的に同一になり得る。
【0035】
図5は、プリント配線板10に
図4の銅コイン32が埋まった状態で配設されている構造を示すものである。この図では、銅コイン32と中間絶縁層16の配置構成を理解しやすくなるように、頂方層18および底方層20については図示を省略している。また、
図5では中間絶縁層16について、矩形のプリント配線板10の隅部を厚さ方向に切り欠いた場合の断面を図示している。
【0036】
上述したとおり、貫通孔34aおよび34bの形状および寸法は伝熱部材32の形状および寸法に対応している。そのため、伝熱部材32としての銅コイン32が
図4に示す形状を採る場合には、貫通孔34aは、プリント配線板10の頂方層18を、銅コイン32の頂方円柱体部32Hの径DUよりも少しだけ大きい孔径(以後、HUと呼ぶ)にして円柱孔の形状にくり抜くことによって形成される。同様に、貫通孔34bは、プリント配線板10の底方層20を、銅コイン32の底方円柱体部32Lの径DLよりも少しだけ大きい孔径(以後、HLと呼ぶ)にして円柱孔の形状にくり抜くことによって形成される。
【0037】
中間絶縁層16の一部分は、頂方または底方に延びている。中間絶縁層16から延伸している絶縁材部分のうち、頂方に延びている部分は貫通孔34aの内壁部に沿って形成され、底方に延びている部分は貫通孔34bの内壁部に沿って形成されている。すなわち、中間絶縁層16の層本体からの延伸部分は、貫通孔34の形状に沿ってプリント配線板10の頂方または底方に延伸していることとなる。中間絶縁層16の層本体とそこからの延伸部分は一体的に形成される。
【0038】
銅コイン32の表面のうち、頂方円柱体部32Hの側部曲面32b、ならびに底方円柱体部32Lの頂面32cおよび側部曲面32dは、中間絶縁層16と絶えず面接触した状態で固定的に結合されている。すなわち、銅コイン32の側部曲面32bは、中間絶縁層16の頂方延伸部分を介して頂方層18に対して強固に結合され、円環領域32cは、中間絶縁層16の層本体の下面を介して頂方層18に対して強固に結合されることとなる。また、側部曲面32dは、中間絶縁層16の底方延伸部分を介して底方層20に強固に結合されることとなる。いわば、本実施形態においては、中間絶縁層16は銅コイン32とプリント配線板10の頂方層18および底方層20との間を固く接着する役割を果たしているといえる。
【0039】
プリント配線板10に対して銅コイン32を結合するには、中間絶縁層16の材料として用いるプリプレグまたはこれと同様の特性を有する樹脂材料を貫通孔34と銅コイン32の間の間隙に充填することが特に好適である。充填状態にある樹脂材料によれば、貫通孔34の内壁を構成する絶縁材と銅コイン32の間に隙間をなくすことができる。
【0040】
このように、貫通孔34の内壁を構成する絶縁材と銅コイン32の間における隙間の発生を防げる手段によって銅コイン32をプリント配線板10に対して強固に結合することによって、プリント配線板10の構成部品の剥離や構成部品の配置の変位などの損傷や劣化を防ぐことができる。
【0041】
続いて、
図6を参照しながら、本実施形態に係るプリント配線板10の放熱動作についての説明をする。なお、
図6では、放熱の流れを矢印H1ないしH3で示している。
【0042】
プリント配線板10に実装されたLSI 12の動作は、接続パット44に接続されているLSI端子42から電源電流および信号電流が入出力されることによってなされる。動作に伴ってLSI 12は熱を発生し、発生した熱はめっき36を介して、プリント配線板10に埋設されている銅コインなどで形成された伝熱部材32に伝導される(矢印H1)。
【0043】
伝熱部材32に伝導された熱はさらに、めっき38および伝熱シート40を介してヒートシンク14に伝導される(矢印H2)。そして、ヒートシンク14に伝導された熱は、最終的にヒートシンク14からその外部に放熱される(矢印H3)。
【0044】
上述の実施形態を採るプリント配線板10は、銅箔や絶縁層の層数のみならず、各銅箔層の厚さ、銅箔層間に積層される絶縁層の形成材料やその厚さなどを任意に設計して具現化することができる。
図7は、上述した実施形態をもつプリント配線板10の実施例として、検証試験のために実際に製造したプリント配線板の主な使用材料および局所寸法を表の形式で示したものである。
【0045】
本実施例に係るプリント配線板10は、頂方層18側の内層22である銅箔層として4層(
図7の表におけるL1ないしL4)、底方層20側の内層28である銅箔層として4層(
図7の表におけるL5ないしL8)、すなわち合計8層の銅箔層を有する。
【0046】
本実施例では、プリント配線板10内に設けられた絶縁層16、24、30を形成する材料として、いずれも株式会社レゾナックによって製造された、銅張積層板MCL-I-671またはプリプレグGIA-671N-Tを使用した。
【0047】
本実施例において、中間絶縁層16は銅箔層L4とL5の間に積層されている絶縁層に相当するので、中間絶縁層16はプリプレグGIA-671N-Tを原材料として形成された。
【0048】
伝熱部材として用いる銅コイン32については、特に底方円柱体部32Lの寸法が異なる2種類のものを用意した。第1または第2の実施例として効果検証試験に用いたプリント配線板10の主要な寸法を
図8の表に示す。さらに、同表に示した主要な寸法を図の形式で明確に示した
図9および
図10を添付した。
図8~
図10において記号DU、HU、DL、HLで示す寸法は銅コイン32に関する寸法であり、既に述べたとおりである。
【0049】
図8および
図9において記号WL、CL、Cで示す寸法は、プリント配線板10のパターン設計に関する寸法である。具体的には、記号WLはプリント配線板10の頂面または底面上に設けられた銅コイン32用ランドのアニュラリング幅を指し示す。記号CLは、プリント配線板10の頂面または底面上に露出しているパターン(
図8および9では、参照符号44、50で図示している導体がこれに相当)から銅コイン32用ランドまでのクリアランスを指し示す。そして、記号Cは、銅コイン32の側部曲面32b、32dから内層22、28を構成する導体パターンまでの距離を指し示す。
【0050】
図8および
図10において記号TL、TD、Dで示す寸法は、スルーホール(TH)46に関する寸法である。具体的には、記号TLはスルーホール46周りのランドの径、TDはスルーホール46のめっき被覆前の孔径すなわち孔壁間の径の長さ、Dはスルーホール46の孔壁から銅コイン32の側部曲面32dまでの距離を指し示す。
【0051】
本実施形態に係るプリント配線板10の信頼性を検証するために実行した試験は、リフロー耐熱試験および熱衝撃試験である。
図8で示した実施例1または2の寸法でプリント配線板10を製造して、各実施例に係るプリント配線板10に対して試験を実行した。実行した試験の各種条件は
図11の表に示すとおりである。この表では、リフロー耐熱試験および熱衝撃試験後に測定する導通抵抗および絶縁抵抗の合格値の限度も示している。
【0052】
まずは、リフロー耐熱試験および熱衝撃試験実行後のプリント配線板10の外観を目視した。実施例1、実施例2のプリント配線板10からはともに、プリント配線板10の表層面から露出しているパターン(44、50)の断線、レジスト48の膨れ、プリント配線板10に織り込まれたガラス繊維が剥離するミーズリング、積層した絶縁層16、24、30が剥離するデラミネーション、および銅コイン32の脱離は見つからなかった。
【0053】
リフロー耐熱試験および熱衝撃試験後に、各実施例のパターンの導通抵抗を測定したところ、導通抵抗変化率は10%以下であった。
【0054】
さらに、リフロー耐熱試験および熱衝撃試験後に、各実施例のいくつかの部位について絶縁抵抗値を測定したところ、
図12で示す表のとおりの測定結果を得た。測定により得られた絶縁抵抗値はいずれも、絶縁抵抗値限度の5.0×10
8Ωよりも大きかった。
【0055】
一般に、プリント配線板内の絶縁層を構成するガラスクロス繊維の周囲に隙間すなわちマイクロボイドがあると、プリント配線板が高温に晒されたときにプリント配線板が膨張し、配線板内に積層された各層間の剥離が発生してしまう。しかしながら、今回の試験を行なった本実施例のプリント配線板10では、銅コイン32と貫通孔34の孔壁との間に生じる間隙を、中間絶縁層16の構成樹脂材料であるプリプレグの充填によって塞いでいる。そのため、絶縁層24、30に含有されているガラスクロス繊維の周囲に隙間は生じないことになる。
【0056】
このような構成に起因して、今回試験を行なったプリント配線板10の実施例1、2には、レジスト48の膨れや絶縁層16、24、30の剥離が発生することはなく、試験の前後を通じて絶縁抵抗も維持されたものと考えられる。さらに、このような構成をとるため、実施例1、2では参照符号22、28、44、50で示される要素に相当する回路パターンやスルーホール46を形成する銅箔やめっきには断絶や亀裂は発生せず、導体の抵抗も低下しなかったものと考えられる。
【0057】
ところで、本実施形態に係るプリント配線板10の実施例1、実施例2ではいずれも、伝熱部材32として
図4で示すような平面形状が円柱状である銅コインを使用した。しかしながら、この形状構造はあくまで一例であり、伝熱部材32の形状はこれに限定されないことは、先に述べたとおりである。
【0058】
そこで、伝熱部材32の平面形状を矩形にした銅コインを埋め込んだプリント配線板10を実施例3または4として製作し、これらに対しても実施例1または2のプリント配線板10と同一の試験を行なった。実施例3および4に用いた銅コイン32を正面および上面(平面)から見た形状を
図13に示す。
【0059】
図13で示す銅コイン32は、正方形状をした底面の寸法が異なる2つの直方体を積み重ねたような形状を採っている。より具体的に述べると、銅コイン32の形状は、プリント配線板10の頂面側に固着され底面すなわち頂面の一辺の長さがDUである頂方直方体部32Hと、底面側に固着され底面の一辺の長さがDUよりも大きいDLである底方直方体部32Lとの、2つの伝熱体部分に大別することができる。なお、これらの実施例では頂方直方体部32Hおよび底方直方体部32Lの底面をともに、一辺の長さがDUまたはDLの正方形として形成した。しかしながら、これらの底面の形状は、正方形のみならず長方形など他の矩形であってもよい。端的に言えば、頂方直方体部32Hの頂面の表面積よりも底方直方体部32Lの底面の表面積が大きくなる限りにおいて、任意の形状を採用しても構わない。
【0060】
頂方直方体部32Hと底方直方体部32Lを含む実施例の銅コイン32を造り出す際には、当初から1つの銅コイン32として一体的に形成することが好ましい。
【0061】
図4で示す平面円形状の銅コイン32と同様の捉え方から、銅コイン32の形状のうち、頂方直方体部32Hの頂面および側部表面には、それぞれ参照符号32aおよび32bを付している。そして、底方直方体部32Lの外部露出頂面、側部表面および底面には、それぞれ参照符号32c、32dおよび32eを付している。
【0062】
なお、
図13で示す矩形の銅コイン32の全高は、プリント配線板10の積層厚さに極めて近似している。さらに、矩形の銅コイン32の両面32a、32e上に施されるめっき36、38の厚さを加味すると、めっき厚みの分を加えた銅コイン32の全高は、プリント配線板10の積層厚さと実質的に同一になり得る。
【0063】
図14では、
図13の銅コイン32を用いた場合における、プリント配線板10において銅コイン32を挿入可能な形状および寸法の貫通孔34を穿設する位置、より具体的には銅コイン32の底部を挿入可能な貫通孔34bを穿設する底方層20内の位置を示している。すなわち、底方層20において貫通孔34bは、プリント配線板10の頂方から見てLSI 12、めっき36および銅コイン32の順で配線板10の厚さ方向に沿って直列に配置できるような位置に、正方形状の開口部の一辺の長さをDLよりもわずかに大きくして穿設される。
【0064】
図15は、プリント配線板10に
図13の銅コイン32が埋設している構造を示すものである。この図では、銅コイン32と中間絶縁層16の配置構成を理解しやすくなるように、頂方層18および底方層20については図示を省略している。また、
図15では中間絶縁層16について、矩形のプリント配線板10の隅部を厚さ方向に切り欠いた場合の断面を図示している。
【0065】
貫通孔34aおよび34bの形状および寸法は伝熱部材32の形状および寸法に対応している。そのため、伝熱部材32としての銅コイン32が
図13に示す形状を採る場合には、貫通孔34aの開口部の寸法を、プリント配線板10の頂方層18を、銅コイン32の頂方直方体部32Hの頂辺の長さDUよりも少しだけ大きくして開口部から垂直底方にくり抜くことによって形成される。
【0066】
この場合に穿設される矩形貫通孔34aの開口部の一辺の長さは、孔の両端部間の長さという観点でみると、円形の銅コインに対応する円形貫通孔の全径HU(
図9および
図10参照)と意味合いが共通する。したがって、矩形貫通孔34aの開口部の一辺の長さに対しても記号HUを付して以後の説明を行なう。同様の考え方から、矩形貫通孔34bの開口部の一辺の長さに対しては記号HLを付して以後の説明を行なう。
【0067】
プリント配線板10に
図13で示す銅コイン32が埋設している構成の場合も、本質的な構成は
図5の構成を採る場合と同様である。すなわち、中間絶縁層16の一部分は、層本体から頂方または底方に延びていて、中間絶縁層16の層本体からの延伸部分は、貫通孔34の形状に沿ってプリント配線板10の頂方または底方に延伸している構成を採っている。したがって、本構成においても中間絶縁層16の層本体とそこからの延伸部分は一体的に形成されている。
【0068】
銅コイン32の表面と中間絶縁層16の間における絶えず面接触した状態での固定的な結合についても、本質的には銅コイン32の形状を問わず同様である。すなわち、矩形状の銅コイン32の側面32bは、中間絶縁層16の頂方延伸部分を介して頂方層18に対して強固に結合され、露出頂面32cは、中間絶縁層16の層本体の下面を介して頂方層18に対して強固に結合されている。また、側面32dは、中間絶縁層16の底方延伸部分を介して底方層20に強固に結合されている。
【0069】
したがって、プリント配線板10に対して矩形状の銅コイン32を結合する場合であっても、中間絶縁層16の材料として用いるプリプレグまたはこれと同様の特性を有する樹脂材料を、貫通孔34と銅コイン32の間の間隙に充填することが特に好適である。このような樹脂材料の充填によれば、貫通孔34の内壁を構成する絶縁材と銅コイン32の間に隙間をなくし、プリント配線板10の構成部品の剥離や構成部品の配置の変位などの損傷や劣化を防ぐことができる。
【0070】
ところで、伝熱部材32として
図13で示すような平面矩形状のコインを用いる場合には、切削加工などにより貫通孔34a、34bに穿設される開口部の形状は、伝熱部材32の各部32a、32bの平面形状に対応して略矩形状に形成されることとなるであろう。このときに、開口部がその四隅に有する開口隅角部の形状を、矩形からさらに切削加工して形成することが好ましい。貫通孔34aの開口隅角部をさらに切削加工して形成した開口部の形状の一例を
図16で示す。
【0071】
図16で示す貫通孔34aの開口部に関しては、その四隅の形状は、厳密な定義による矩形のように2つの直線が交わって形成された形状をとってはいない。本例における貫通孔34aの開口隅角部34cはそれぞれ、矩形本来の開口隅角部の外側に部分円状の開口領域を付加したような開口形状に形成されている。例えば、
図16で示すように、貫通孔34aは、その開口部の形状が正方形の各頂点の外側に中心角が270°の略扇形すなわち略部分円を付加した形状になるように設けられている。
【0072】
このような形状の開口隅角部34cを有する貫通孔34aの形成は、プリント配線板10、特に頂方層18上の所定の部分を矩形の伝熱部材32の頂面32aに対応した寸法および形状に穿孔した後に、当該穿孔により形成された矩形状の開口部の開口隅角部に対して付加的な切削加工を施すことにより得られる。
【0073】
ところで、
図16および同図を参照しての上記の説明は、伝熱部材32の頂方直方体部32Hに対応した貫通孔34aを形成する場合のものであった。しかしながら、伝熱部材32の底方直方体部32Lに対応した貫通孔34bを形成する場合にも、同様の構成および加工手順を採り得ることは勿論である。
【0074】
このような付加的な切削加工処理を施す利点の例は、矩形の頂点部分に相当する伝熱部材32の稜部32fが、中間絶縁層16から延びている絶縁材部分を介さずに頂方層18または底方層20と直接的に接触することを避ける点にある。
【0075】
一般的な切削工具を用いてプリント配線板10に貫通孔34a、34bを穿設する場合、切削工具の仕様上、矩形開口部の四隅は丸みを帯びた状態で形成されてしまう。すなわち、貫通孔34の開口隅角部34cの形状は、穿設された開口部から挿入すべき矩形の伝熱部材32の稜部32fの形状には相当しないものになってしまう。このような場合、伝熱部材32を貫通孔34内に挿入すると、伝熱部材32の稜部32fが貫通孔34の開口隅角部に直接接触してしまうことになる。このような接触があると、伝熱部材32または貫通孔34の壁部が破損または損耗するおそれが生じる。さらに、そのような接触部分があると、貫通孔34とこれに挿入された伝熱部材32の間の間隙に絶縁性樹脂材料を充填するときに、接触部分間では十分に樹脂材料が充填されなくなるおそれが生じる。これらの理由から、平面矩形状の伝熱部材32をプリント配線板10に用いる場合には、貫通孔34の開口隅角部34cに部分円またはこれに類する図形を付加したような形状に形成しておくことが好ましいといえる。
【0076】
図13に示す形状の伝熱部材32を用いたときのプリント配線板10の放熱動作は、
図4に示す形状の伝熱部材32を用いた場合の放熱動作と同様であり、放熱の流れは
図6で示すとおりとなる。したがって、改めての説明は省略する。
【0077】
図13で示す平面矩形状の銅コイン32を埋設している場合のプリント配線板10の実施例として、平面正方形状の実施例3および実施例4を作成して、これらの実施例について効果検証試験を実行した。検証試験のために実際に作成したプリント配線板10の主な使用材料および局所寸法は、
図7において表の形式で示したものと同一である。その他の実施例3の寸法は
図9を参照して示す
図8の表のとおりであり、実施例4の寸法は
図10を参照して示す
図8の表のとおりである。すなわち、実施例3と4の間では、実施例3ではDL=12.0mm、これに対応するHL=12.3mmであるのに対して、実施例4ではDL=9.0mm、これに対応するHL=9.3mmであるという寸法上の差異がある。
【0078】
実施例3および4に係るプリント配線板10の信頼性を検証するために実行した試験は、実施例1および2に対して実行した試験と同様のリフロー耐熱試験および熱衝撃試験である。実施例3および4に対して実行した試験の各種条件は実施例1および2に対するものと同一であり、すなわち
図11の表に示すとおりである。
【0079】
まずは、リフロー耐熱試験および熱衝撃試験実行後のプリント配線板10の外観を目視した。実施例3、実施例4のプリント配線板10からはともに、プリント配線板10の表層面から露出しているパターン(44、50)の断線、レジスト48の膨れ、プリント配線板10に織り込まれたガラス繊維が剥離するミーズリング、積層した絶縁層16、24、30が剥離するデラミネーション、および銅コイン32の脱離は見つからなかった。
【0080】
リフロー耐熱試験および熱衝撃試験後に、実施例3および4のパターンの導通抵抗を測定したところ、これらの実施例についても導通抵抗変化率は10%以下であった。
【0081】
さらに、リフロー耐熱試験および熱衝撃試験後に、実施例3および4のいくつかの部位について絶縁抵抗値を測定したところ、
図12で示す表のとおりの測定結果を得た。測定により得られた絶縁抵抗値はいずれも、絶縁抵抗値限度の5.0×10
8Ωよりも大きかった。
【0082】
実施例3および4のプリント配線板10においても、実施例1および2の作成過程と同様に、銅コイン32と貫通孔34の間の間隙を、中間絶縁層16の構成樹脂材料であるプリプレグの充填によって塞いだ。そのため、絶縁層24、30に含有されているガラスクロス繊維の周囲に隙間は生じなかった。このような構成に起因して、今回試験を行なったプリント配線板10の実施例3、4でも、レジスト48の膨れや絶縁層16、24、30の剥離が発生することはなく、試験の前後を通じて絶縁抵抗も維持されたものと考えられる。さらに、このような構成をとったため、実施例3、4では参照符号22、28、44、50で示される要素に相当する回路パターンやスルーホール46を形成する銅箔やめっきに断絶や亀裂が発生せず、導体の抵抗も低下しなかったものと考えられる。
【0083】
続いて、
図17ないし
図21を参照して本発明によるプリント配線板の別の実施形態を詳細に説明する。なお、
図1ないし
図16を参照して説明した実施形態が有する構成要素と同一の構成要素は同一の参照符号で示し、重複した説明も省略する。
【0084】
以後説明するプリント配線板10の実施形態とこれまで説明してきた実施形態を比較しての構成上の主たる相違点は、貫通孔34の内部構造の違いにある。本実施形態のプリント配線板10における伝熱部材32としての銅コインは、径が異なる円形または矩形の柱体を積み重ねたような形状を採るのではなく、
図17で示すように、銅コイン32は底方層20に穿設された貫通孔部分34bの孔形状に従って形成された、単独の矩形柱体の形状を採っている。もっとも、本実施形態に用いられる伝熱部材32は、矩形柱体に限定せず単独の円柱体など他の立体形状を採っても構わない。
【0085】
なお、本実施形態における銅コイン32は、一辺の長さがDLである正方形状の底面を有する直方体の立体形状を採り、DLは、貫通孔部分34bの対向する内壁端間の長さHLよりわずかに小さな寸法である。かかる構成によれば、銅コイン32は貫通孔部分34bに挿入可能となるが、挿入後の銅コイン32の側面部と貫通孔34bの内壁との間に生じた間隙には中間絶縁層16の材料が充填され、これによって間隙を塞ぐことができる。また、この実施形態における銅コイン32の厚さは、貫通孔部分34bに収容可能な程度で底方層20の高さとほぼ一致する。
【0086】
図17で示す実施形態の場合、頂方層18に相当する貫通孔部分34aおよび中間絶縁層16の層高さに相当する部分には、伝熱性に優れる材料、例えば高伝熱性樹脂材で形成された伝熱ブロック60が埋設されている。本実施形態では、電子部品(
図17ではLSI 12)もその一部分が貫通孔部分34a内に配設されている。このように、伝熱ブロック60をLSI 12と伝熱部材32の間に介在配置させると、LSI 12から発生した熱をより適切に伝熱部材32に伝導させることができる。
【0087】
もっとも、電子部品(
図17ではLSI 12)は、その一部分のみならずそのすべてを貫通孔部分34a内に配設しても構わない。また、電子部品は、貫通孔部分34a内で伝熱ブロック60を介在させずに銅コインなどである伝熱部材32の頂方に配設しても構わない。
【0088】
図18では、
図17で示すプリント配線板10の実施形態を得るために、プリント配線板10の底方層20で銅コイン32を挿入可能に穿設形成された貫通孔34b、貫通孔34bに挿入される銅コイン32、および、銅コイン32の配設位置の頂方に位置するよう頂方層18に穿設形成される貫通孔34aの相互的な位置関係を、分解斜視図の形式で描写している。
【0089】
図19は、
図18で示す構成で製造されたプリント配線板10にLSI 12、伝熱ブロック60およびヒートシンク14を実装するときの各構成要素の配置関係を分解斜視図の形式で表したものである。伝熱ブロック60は、プリント配線板10の頂面に設けられた貫通孔34aに挿入される。LSI 12の一部分またはすべての部分もまた、貫通孔34aに埋設される。この実施形態でもプリント配線板10の頂面上では貫通孔34aの周囲部分に、貫通孔34aに一部または全部が埋設されるLSI 12の端子42の数および配列間隔と適合するように複数の接続パット44が配列されている。
【0090】
プリント配線板10の層数は、先に説明した実施形態の場合と同様、任意に設定することができる。
図20で示す表は、プリント配線板10が6層の銅箔(層L1~L6)と各銅箔層の間に配置された5層の絶縁層からなる場合に製造し得る一実施例の層構造である。この実施例では表に示すとおり、プリント配線板10内の絶縁層16、24、30を形成する材料として、いずれもパナソニック株式会社によって製造された、銅張積層板R-1766またはプリプレグR-1661(区分GGもしくはGE)を使用する。
【0091】
続いて、
図21を参照しながら、本実施形態に係るプリント配線板10の放熱動作についての説明をする。なお、
図21では、放熱の流れを矢印H11ないしH14で示している。
【0092】
プリント配線板10に実装されたLSI 12の動作に伴ってLSI 12は熱を発生し、発生した熱は、LSI 12の直下に配置された伝熱ブロック60に伝導される(矢印H11)。伝熱ブロック60に伝導された熱はさらに、プリント配線板10の底方層20に埋設されている銅コインまたは同種の部品である伝熱部材32に伝導される(矢印H12)。
【0093】
伝熱部材32に伝導された熱はさらに、めっき38および伝熱シート40を介してヒートシンク14に伝導される(矢印H13)。そして、ヒートシンク14に伝導された熱は、最終的にヒートシンク14からその外部に放熱される(矢印H14)。
【0094】
ここまで述べてきたように、
図17などで示す実施形態のプリント配線板10においては、LSI 12など熱を発する電子部品の少なくとも一部分を貫通孔34aの中に実装することが可能である。したがって、本実施形態に係るプリント配線板10を使用することによって、プリント配線板10を構成要素に含む電子機器を全体としてコンパクトに構成しながらも十分な放熱性を得ることができるようになる。
【0095】
ここからは、
図22ないし
図27を参照しながら、本発明によるプリント配線板のさらに別の実施形態をいくつか詳細に説明する。以下で説明する実施形態はいずれも、プリント配線板の内部における伝熱部材の固定をより強固にする構成を備えるものである。
【0096】
図22の断面図で示すプリント配線板10の一実施形態は、
図1で示した実施形態と多くの部分で構成上共通している。しかしながら、伝熱部材32すなわち銅コイン32の形状および銅コイン32の側部を固定している中間絶縁層16の形状が互いに異なっている。
【0097】
図23には、
図22で示したプリント配線板10に用いられる銅コイン32が上面図および正面図で示されている。本実施形態に用いられる銅コイン32は、径の異なる2つの円柱を積み重ねたような形状を採っている点では、
図4で示す銅コインと共通の構成を採っている。しかしながら、
図22および
図23の銅コイン32は、頂方円柱体部32Hの側部曲面32bの下端部周縁全体にわたり溝32gが設けられている点で
図4の銅コインと構成上相違している。なお、
図22では、中間絶縁層16の本体層の底部層面を参照符号16bで、頂部層面を参照符号16uで示している。
【0098】
図22で示す実施態様のプリント配線板10の場合も、貫通孔34の形状は、
図1で示したものと同様のもので構わない。すなわち、
図22で示す貫通孔34は、プリント配線板10の頂方層18を、銅コイン32の頂方円柱体部32Hの径DUよりも少しだけ大きな孔径HUにして円柱孔の形状にくり抜いた貫通孔34aと、プリント配線板10の底方層20を、銅コイン32の底方円柱体部32Lの径DLよりも少しだけ大きな孔径HLにして円柱孔の形状にくり抜いた貫通孔34bとから形成されている。
【0099】
また、この実施態様の内部における各構成要素の配置関係も、
図3で例示した分解斜視図と同様のものになる。
【0100】
図24は、プリント配線板10に
図23で示した銅コイン32が埋まった状態で配設されている構造を描写するものである。この図では、銅コイン32と中間絶縁層16の配置構成を理解しやすくなるように、頂方層18および底方層20については図示を省略している。また、
図24では中間絶縁層16について、矩形のプリント配線板10の隅部を厚さ方向に切り欠いた場合の断面を図示している。
【0101】
溝32gを有する銅コイン32をプリント配線板10に結合する場合にも、中間絶縁層16の材料として用いるプリプレグまたはこれと同様の特性を有する樹脂材料を貫通孔34と銅コイン32の間の間隙に充填することが特に好適である。充填された樹脂材料は溝32gにも入り込み、固化後は中間絶縁層16の一部分を形成することとなる。すなわち、中間絶縁層16の層本体からの延伸部分は、プリント配線板の頂方および底方に延伸するほか、銅コイン32の内方にも延伸することとなる。このように、中間絶縁層16は銅コイン32の側面全体を固定するばかりか、銅コイン32の溝32gの中にまで入り込むため、銅コイン32の固定はより強固なものとなる。
【0102】
ひとつの好適な実施態様として、溝32gの内部に充填された絶縁材料が中間絶縁層16の層本体から水平に延伸したものとなるよう、溝32gの開口部を、銅コイン32をプリント配線板10に埋設されたときに中間絶縁層16の層本体の厚み断面に対向するような位置および寸法に形成することができる。例えば、
図22は、銅コイン32の表面上に形成する溝32gの溝高さGHを、中間絶縁層16の層本体の層厚すなわち底部層面16bから頂部層面16uまでの厚さと同一の長さに形成しているプリント配線板10の実施形態の断面図といえる。そのため、プリント配線板10の製造の際に貫通孔34と銅コイン32の間の間隙に充填された樹脂材料が固化することにより溝32g内に形成された、中間絶縁層16の層本体からの延伸部分は、その下端部の高さが中間絶縁層16の本体層の底部層面16bの高さと、上端部の高さが頂部層面16uの高さと、それぞれ一致していることとなる。
【0103】
溝32g付きの平面円形銅コイン32を埋設したプリント配線板10(第5または第6の実施例)を製造していくつかの検証試験を行なった。溝32g付きの平面円形銅コイン32に対して行なった試験の内容およびその各種条件は、これまで述べてきた実施態様に対する試験と同一であり、
図11で示す表のとおりである。検証試験のために製造したプリント配線板10の層構造、使用材料および局所寸法は、
図7、8および12で示す表のとおりであり、溝32gの有無を除いては先述した第1または第2の実施例と同一である。第5および第6の実施例はともに、溝32gの高さGHが0.5mmであり、深さGDも0.5mmである。
【0104】
リフロー耐熱試験および熱衝撃試験実行後のプリント配線板10の外観を目視したところ、実施例5、実施例6のプリント配線板10からはともに、プリント配線板10の表層面から露出しているパターン(44、50)の断線、レジスト48の膨れ、プリント配線板10に織り込まれたガラス繊維が剥離するミーズリング、積層した絶縁層16、24、30が剥離するデラミネーション、および銅コイン32の脱離は見つからなかった。実施例5、6に係るプリント配線板10の製造段階においても、リフロー耐熱試験および熱衝撃試験実行後においても、銅コイン32が脱落することはなかった。
【0105】
また、リフロー耐熱試験および熱衝撃試験後に、各実施例のパターンの導通抵抗を測定したところ、導通抵抗変化率は10%以下であった。さらに、リフロー耐熱試験および熱衝撃試験後に測定した実施例5および実施例6の絶縁抵抗値もやはり、実施例1および実施例2と同様に、絶縁抵抗値限度の5.0×108Ωよりも大きかった。
【0106】
ここまで説明してきた溝32g付きのプリント配線板10の実施態様は、平面形状が円形状である銅コイン32に溝32gを設けたものであった。しかしながら、銅コインなど伝熱部材の形状はこの限りではなく、例えば、平面形状が矩形である伝熱部材の頂方直方体部(例えば、
図13で示す頂方直方体部32H)の下側周縁部分に溝を設けても構わない。また、伝熱部材の強固な固定を確保できる限りにおいて、必ずしも伝熱部材の全周にわたって溝を設けなくてもよい。
【0107】
説明した実施態様では、溝32gは頂方円柱体部32Hの側部曲面32b上に設けられていた。しかしながら、伝熱部材32上で溝32gを配置する位置は、底方円柱体部32Lの側部曲面32d上または露出頂面32c上であっても構わない。すなわち、貫通孔34の孔壁と伝熱部材32の間の間隙の一部分となり、中間絶縁層16が充填可能な限りにおいて、溝32gは伝熱部材32の側部表面上の任意の位置に配置可能である。
【0108】
図25で示す銅コイン32は、正方形状をした底面の寸法が異なる2つの直方体を積み重ねたような形状の銅コイン32に、溝ではなく穴32pを穿設した構成を採っている。この構成の銅コイン32は、穴32pの有無を除いては、
図13で示す銅コインと共通の構成を採っている。
図25で示す例では、銅コイン32の穴32pは、頂方直方体部32Hの各側面の幅中心部かつ底部付近に1つずつ穿設されている。ただし、頂方直方体部32Hの各側面上において、穴32pの穿設位置は任意の位置で構わない。また、一部の側面上、例えば対向する2つの側面上にのみ穴32pを穿設しても構わない。
【0109】
図25で示す銅コイン32を用いた実施態様の内部における各構成要素の配置関係もまた、
図12で例示した分解斜視図と同様のものになる。
【0110】
図26は、プリント配線板10に
図25で示した銅コイン32が埋まった状態で配設されている構造を描写するものである。この図では、銅コイン32と中間絶縁層16の配置構成を理解しやすくなるように、頂方層18および底方層20については図示を省略している。また、
図26では中間絶縁層16について、矩形のプリント配線板10の隅部を厚さ方向に切り欠いた場合の断面を図示している。
【0111】
穴32pを有する銅コイン32をプリント配線板10に結合する場合にも、中間絶縁層16の材料として用いるプリプレグまたはこれと同様の特性を有する樹脂材料を貫通孔34と銅コイン32の間の間隙に充填することが特に好適である。充填された樹脂材料は穴32pにも入り込み、固化後は中間絶縁層16の一部分を形成することとなる。すなわち、中間絶縁層16の層本体からの延伸部分は、プリント配線板の頂方および底方に延伸するほか、銅コイン32の内方にも延伸することとなる。このように、中間絶縁層16は銅コイン32の側面全体を固定するばかりか、銅コイン32の穴32pの中にまで入り込むため、銅コイン32の固定はより強固なものとなる。
【0112】
ひとつの好適な実施態様として、穴32pの内部に充填された絶縁材料が中間絶縁層16の層本体から水平に延伸したものとなるよう、穴32pの開口部を、銅コイン32をプリント配線板10に埋設されたときに中間絶縁層16の層本体の厚み断面に対向するような位置および寸法に形成することができる。
【0113】
穴32p付きの平面正方形銅コイン32を埋設したプリント配線板10(第7または第8の実施例)を製造していくつかの検証試験を行なった。穴32p付きの平面正方形銅コイン32に対して行なった試験の内容およびその各種条件は、これまで述べてきた実施態様に対する試験と同一であり、
図11で示す表のとおりである。検証試験のために製造したプリント配線板10の層構造、使用材料および局所寸法は、
図7、8および12で示す表のとおりであり、円形状に穿設した穴32pの有無を除いては先述した第3または第4の実施例と同一である。第7および第8の実施例はともに、穴32pの直径PDが0.5mmであり、深さPPも0.5mmである。
【0114】
リフロー耐熱試験および熱衝撃試験実行後のプリント配線板10の外観を目視したところ、実施例7、実施例8のプリント配線板10からはともに、プリント配線板10の表層面から露出しているパターン(44、50)の断線、レジスト48の膨れ、プリント配線板10に織り込まれたガラス繊維が剥離するミーズリング、積層した絶縁層16、24、30が剥離するデラミネーション、および銅コイン32の脱離は見つからなかった。実施例7、8に係るプリント配線板10の製造段階においても、リフロー耐熱試験および熱衝撃試験実行後においても、銅コイン32が脱落することはなかった。
【0115】
また、リフロー耐熱試験および熱衝撃試験後に、各実施例のパターンの導通抵抗を測定したところ、導通抵抗変化率は10%以下であった。さらに、リフロー耐熱試験および熱衝撃試験後に測定した実施例7および実施例8の絶縁抵抗値もやはり、実施例3および実施例4と同様に、絶縁抵抗値限度の5.0×108Ωよりも大きかった。
【0116】
ここまで説明してきた穴32p付きのプリント配線板10の実施態様は、平面形状が矩形状である銅コイン32に穴32pを穿設したものであった。しかしながら、銅コインなど伝熱部材の形状はこの限りではなく、例えば、平面形状が円形である伝熱部材の頂方円柱体部(例えば、
図4で示す頂方円柱体部32H)の側部曲面32b上の任意の箇所に任意の個数の穴を穿設しても構わない。
【0117】
説明した実施態様では、穴32pは頂方直方体部32Hの側部表面32b上に設けられていた。しかしながら、伝熱部材32上で穴32pを穿設する位置は、底方直方体部32Lの側部表面32d上または露出頂面32c上であっても構わない。すなわち、貫通孔34の孔壁と伝熱部材32の間の間隙の一部分となり、中間絶縁層16が充填可能な限りにおいて、穴32pは伝熱部材32の側部表面上の任意の位置に穿設可能である。
【0118】
図27で示す銅コイン32は、形状そのものは
図4で示した径の異なる2つの円柱を積み重ねたような形状と同様である。しかしながら、銅コイン32全体としての側面部を構成している頂方円柱体部32Hの側部曲面32b、底方円柱体部32Lの頂面領域32cおよび底方円柱体部32Lの側部曲面32dの表面粗さが、銅コイン32全体としての頂面部を構成している頂方円柱体部32Hの頂面領域32aおよび銅コイン32全体としての底面部を構成している底方円柱体部32Lの底面領域32eの表面粗さよりも大きくなるよう形成されている。すなわち、中間絶縁層16と面接触するコイン表面(32b、32c、32d)は、それ以外のコイン表面(32a、32e)よりも粗く形成されている。
【0119】
より具体的に述べると、銅コイン32の側部を形成する表面(32b、32c、32d)の算術平均粗さをRA(a)、銅コイン32の頂面または底面を形成する表面(32a、32e)の算術平均粗さをRA(b)とすると、
0<RA(a)<RA(b)
の関係式が成り立つこととなる。なお、算術平均粗さRA(b)は、0.1μm以上とすることが好ましい。
【0120】
側部表面32b、32c、32dが粗く形成されている銅コインなどの伝熱部材32を用いれば、伝熱部材32と貫通孔34の間の間隙に中間絶縁層16の材料を充填したときに、側部表面32b、32c、32dに形成されている多数の凹部にまでくまなく絶縁材料が充填されるため、伝熱部材32と中間絶縁層16の結合がより強固になるという効果が得られる。
【0121】
さらに、中間絶縁層16と接する表面部分の表面粗さを大きくした伝熱部材32を用いてプリント配線板10を製造するならば、伝熱部材32の表面に溝や穴を形成する作業工程を経ることなく、伝熱部材32と中間絶縁層16が強固に結合されたプリント配線板10を製造することが可能となる。
【0122】
上記の関係式において
RA(a)=0.05μm
RA(b)=0.1μm
とし、寸法上の条件は
図7、8および12の表で示すものとした平面円形銅コイン32を作成し、これを用いてプリント配線板10を製造した。さらに、製造したプリント配線板10に電子部品を実装し、また、製造したプリント配線板10を一定時間使用してみた。製造、実装および使用のいずれの過程においても銅コイン32の脱落などが生じることはなく、これまでの実施例1~8に係るプリント配線板10と同様に、伝熱部材32と中間絶縁層16の結合に関して十分な固定強度を得ることができた。
【0123】
なお、ここまで
図22ないし
図27を参照しながら説明してきた、伝熱部材の固定をより強固にする構成を備えた本発明に係るプリント配線板の実施形態はいずれも、
図6の矢印H1ないしH3で示したような流れで高効率の放熱を行なう。
【0124】
続いて、本発明に係るプリント配線板をソケットボード(ICソケットボード)に適用した場合の例について説明する。ICソケットボードとは、ICやLSIなどの電子部品を電子装置や電源装置と電気的に接続する部品であり、ソケットボードに接続する電子部品の電気特性の測定、寿命や故障率の評価をする信頼性評価、またはメモリを搭載した電子部品のメモリ書換えなどに使用される。
【0125】
図28は、プリント配線板10を用いて形成されたICソケットボード100の斜視図である。ICソケットボード100は、被検体を保持可能な筐体102と、測定機などの電子装置または電源装置との接続部となるコネクタ104とを有する。コネクタ104は、プリント配線板10の頂面上に設けられている接続パット44に接続される(
図29参照)。
【0126】
ICソケットボード100はさらに、電子部品と接続可能であり信号や電源電流の入出力を行なう端子106と、電子部品の熱をプリント配線板10に伝導させる伝熱シート108とを有し、これらは筐体102の内部に配設されている。伝熱シート108の形成材料は、プリント配線板10に設けられる伝熱シート40と同様に、伝熱性に優れる任意の材料、例えばアクリル系、シリコン系またはその他の樹脂を薄い板状に成形することによって形成することができる。
【0127】
図28では、被検体である電子部品の一例として、IC 110が図示されている。IC 110は、ICソケットボード100との接続を可能にする端子112を有する。
【0128】
ICソケットボード100は、
図29で示すように、プリント配線板10の頂面上に矩形形状の表面が顕れている伝熱部材32の直上にICソケットボード100の伝熱シート108を配置することによってプリント配線板10の面上に配設される。このような構成を採ることによって、プリント配線板10を備えたICソケットボード100は、被検体である電子部品から発生する熱を効率よく放熱できるようになる。加えて、上述の構成を採るプリント配線板10を備えたICソケットボード100は、被検体の電気特性の測定やメモリの書換えに際しても電子部品を安定して動作させることも可能となる。
【0129】
本発明に係るプリント配線板は、バーンインボードに適用することも可能である。バーンインボードとは、特定の温度環境を保持しながらICやLSIなどの電子部品の電気特性を測定することにより、電子部品の寿命もしくは故障率の評価、または特殊環境下での電気特性の把握を目的として使用される装置である。以下においては、本発明に係るプリント配線板の一実施形態をバーンインボードに適用した場合について、
図30を参照しながら説明する。
【0130】
バーンインボード200は、複数のICソケットボード100をプリント配線板10の頂面上に配設することにより構成される。プリント配線板10においてそれぞれのICソケットボード100の直下方には、
図29を参照して行なった上記の説明のように伝熱部材32が配置されている。
【0131】
このような構成を採ることによって、プリント配線板10を備えたバーンインボード200は、被検体である電子部品を速やかに所望の温度に調整することができるようになる。さらに、本発明の実施形態に係るプリント配線板10を備えたバーンインボード200は、測定時間や評価時間を短縮することができる。加えて、本発明の実施形態に係るプリント配線板10を備えたバーンインボード200によれば、測定または評価中の温度のばらつきを低減して、測定や評価をより正確に実行することが可能となる。
【0132】
ここまで、本発明の実施形態およびその実施例の構成および動作について説明してきたが、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態およびその実施例に限定されるものではない。添付の特許請求の範囲およびその要旨を逸脱することなく、様々な変更、置換が可能であり、または上述の実施形態および実施例の構成と本質的に同等な構成のプリント配線板、ソケットボードまたはバーンインボードが具現化され得ることは、当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0133】
10 プリント配線板
16 中間絶縁層
18 頂方層
20 底方層
32 伝熱部材
32g 溝
32p 穴
34 貫通孔
34c 開口隅角部
60 伝熱ブロック
100 ICソケットボード
200 バーンインボード