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特開2024-102836SIDMピエゾアクチュエータ駆動装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102836
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】SIDMピエゾアクチュエータ駆動装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/06 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
H02N2/06
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024004494
(22)【出願日】2024-01-16
(31)【優先権主張番号】10-2023-0007716
(32)【優先日】2023-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0164925
(32)【優先日】2023-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】524021165
【氏名又は名称】クレパス テクノロジーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュ、スン チュン
(72)【発明者】
【氏名】オ、チャン チュン
【テーマコード(参考)】
5H681
【Fターム(参考)】
5H681AA06
5H681BB01
5H681BC01
5H681DD23
5H681FF25
5H681FF31
5H681FF32
5H681FF38
(57)【要約】      (修正有)
【課題】突入電流を除去して熱発生と電力消耗を減らし、振動速度を向上させるSIDMピエゾアクチュエータ駆動装置を提供する。
【解決手段】ピエゾアクチュエータ駆動装置100は、第1電圧と前記第2電圧との間に直列連結され、接点がインダクターLRの一端に連結された第1メインスイッチMT1及び第2メインスイッチMT2と、第1電圧と第2電圧との間に直列連結され、接点が前記インダクターの他端に連結された第3メインスイッチMT3及び第4メインスイッチとMT4、インダクターの一端と他端との間に直列連結された第1共振スイッチRT1、ピエゾアクチュエータ及び第2共振スイッチRT2と、を含み、第1共振スイッチと第2共振スイッチがターンオンされる共振期間にピエゾアクチュエータとインダクターの連結による共振ループを形成し、インダクターにあらかじめ充電されたエネルギーをピエゾアクチュエータに提供できる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピエゾアクチュエータ駆動装置であって、
前記第1電圧と前記第2電圧との間に直列連結され、接点がインダクターの一端に連結された第1メインスイッチ及び第2メインスイッチ;
前記第1電圧と第2電圧との間に直列連結され、接点が前記インダクターの他端に連結された第3メインスイッチ及び第4メインスイッチ;及び
前記インダクターの一端と他端との間に直列連結された第1共振スイッチ、前記ピエゾアクチュエータ及び第2共振スイッチを含み、
前記第1共振スイッチと前記第2共振スイッチがターンオンされる共振期間に前記ピエゾアクチュエータと前記インダクターの連結による共振ループを形成し、前記インダクターにあらかじめ充電されたエネルギーを前記ピエゾアクチュエータに提供するピエゾアクチュエータ駆動装置。
【請求項2】
前記ピエゾアクチュエータに対する正方向駆動と負方向駆動との間に又は前記負方向駆動と前記正方向駆動との間に、
前記共振期間において前記共振ループの形成前に、
MOSEFETからなる前記第1共振スイッチの第1寄生ダイオード及びMOSEFETからなる前記第2共振スイッチの第2寄生ダイオードのうち、前記インダクターに流れる電流方向の寄生ダイオード及び他側の共振スイッチのターンオンによる事前ループを形成し、続く前記共振ループ瞬間に前記インダクターに流れる電流の不連続をなくすように駆動する、請求項1に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置。
【請求項3】
前記ピエゾアクチュエータに対する正方向駆動と負方向駆動との間に又は前記負方向駆動と前記正方向駆動との間に、
前記共振ループの形成期間が過ぎた後に、
MOSEFETからなる前記第1共振スイッチの第1寄生ダイオード及びMOSEFETからなる前記第2共振スイッチの第2寄生ダイオードのうち、前記インダクターに流れる電流方向の寄生ダイオード及び他側の共振スイッチのターンオンによる事後ループを形成し、前記インダクターから前記ピエゾアクチュエータへの残留電流の放電がなされるようにした後、前記第1共振スイッチと前記第2共振スイッチがターンオフされるように駆動する、請求項1に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置。
【請求項4】
前記ピエゾアクチュエータは、ピエゾ素子に結合している駆動ロッドと前記駆動ロッドに挿入されるスライダーを含み、駆動信号によって前記ピエゾ素子を駆動して前記駆動ロッドの振動を駆動することによって、前記スライダーのスティック-スリップ駆動による前進と後進によって前記スライダーの位置変位を制御する、請求項1に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置。
【請求項5】
前記第1電圧は、ソース電圧に連結された順方向ダイオードの出力側の電圧である、請求項1に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置。
【請求項6】
前記ピエゾアクチュエータの両端に駆動信号が矩形波で入力され、前記矩形波の駆動周波数の1周期内のハイ区間の和及びロー区間の和の大きさによって前記ピエゾアクチュエータ振動の前進又は後進が決定され、
前記駆動周波数の1周期内のロー区間の中間時点に、高調波発生のために挿入された追加パルスを含む、請求項1に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置。
【請求項7】
駆動信号によってピエゾ素子を駆動して前記ピエゾ素子に結合している駆動ロッドの振動を駆動することによって、前記駆動ロッドに挿入されたスライダーの位置変位を制御するためのピエゾアクチュエータ駆動方法であって、
前記ピエゾアクチュエータを駆動するための駆動信号が矩形波で入力され、前記矩形波の駆動周波数の1周期内のハイ区間の和及びロー区間の和の大きさによって前記ピエゾアクチュエータ振動の前進又は後進が決定され、
前記駆動周波数の1周期内のロー区間の中間時点に、高調波発生のために挿入された追加パルスを含むピエゾアクチュエータ駆動方法。
【請求項8】
前記追加パルスは、前記矩形波の駆動周波数の1周期内のハイ区間の和及びロー区間の和の比率が、8.5:1.5~5.5:4.5の範囲で決定されるようにパルス幅が決定される、請求項7に記載のピエゾアクチュエータ駆動方法。
【請求項9】
ピエゾアクチュエータの第1電極と第2電極に第1電圧と第2電圧をそれぞれ印加する正方向駆動、及び反対電圧をそれぞれ印加する負方向駆動を行う駆動装置のピエゾアクチュエータ駆動方法であって、
前記駆動装置は、前記第1電圧と前記第2電圧との間に直列連結され、接点がインダクターの一端に連結された第1メインスイッチ及び第2メインスイッチ;
前記第1電圧と第2電圧との間に直列連結され、接点が前記インダクターの他端に連結された第3メインスイッチ及び第4メインスイッチ;及び
前記インダクターの一端と他端との間に直列連結された第1共振スイッチ、前記ピエゾアクチュエータ及び第2共振スイッチを含み、
(A)前記正方向駆動のために前記第1メインスイッチと前記第4メインスイッチをターンオンさせる段階;
(B)前記負方向駆動のために前記第3メインスイッチと前記第2メインスイッチをターンオンさせる段階;及び
(C)前記正方向駆動と前記負方向駆動との間に前記第1共振スイッチ及び前記第2共振スイッチをターンオンさせる共振段階を含み、
前記共振段階で前記ピエゾアクチュエータと前記インダクターの連結による共振ループを形成し、前記インダクターにあらかじめ充電されたエネルギーを前記ピエゾアクチュエータに提供するピエゾアクチュエータ駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピエゾアクチュエータ駆動装置及び方法に関し、特に、穏やかなピエゾアクチュエータ振動方式の駆動が可能なSIDM(Smooth Impact Drive Mechanism)ピエゾアクチュエータ駆動装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来のピエゾアクチュエータの駆動回路50を示す。
【0003】
図1を参照すると、従来のピエゾアクチュエータ駆動回路50では、ピエゾアクチュエータPの等価キャパシターに、電源10,20間のメインスイッチMT1,MT4を通じて充電しているが、共振スイッチRT1,RT2がターンオンされて共振インダクターLとピエゾアクチュエータPの等価キャパシターとの共振によって前記キャパシターの電圧極性を変え、反対側のメインスイッチMT2,MT3をターンオンしてピエゾアクチュエータPの等価キャパシターに初期突入電流が流入する大きさを減し得るように駆動される。このとき、理論的に、共振回路RT1,RT2,Lに抵抗が0である場合に、前記キャパシターの電圧は、大きさが同一であり、極性が反対である電圧が充電される。この時、共振インダクターLのインダクタンス(L)の最大電流(i)と前記キャパシターのキャパシタンス(C)によって、キャパシタンス(C)に流入する最大電圧(V)は、次の数式のように与えられる。
【0004】
【数1】
【0005】
しかしながら、共振回路スイッチRT1,RT2の内部抵抗とインダクターLの内部抵抗などによってエネルギー損失が起きてしまい、このような損失によって、共振時に前記キャパシターに流入する反対極性の電圧が電源10の電圧の大きさよりも低くなる。前記キャパシターの反対極性の電圧が減るほど、メインスイッチMT1,MT4/MT2,MT3をターンオンする時に前記キャパシターへの突入電流が大きくなり、この電流の大きさは、大きい電力損失の他にもEMIノイズの発生原因になるなど、様々な面においてピエゾアクチュエータPの駆動動作を悪化させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、上述した問題点を解決するために案出されたものであり、本発明の目的は、ピエゾアクチュエータへの突入電流を除去して熱発生と電力消耗を減らし、印加電圧が大きくなって振動速度を向上させるSIDMピエゾアクチュエータ駆動装置及び方法を提供することにある。
【0007】
また、本発明の目的は、ピエゾアクチュエータ駆動に有利なノコギリ波(又は、三角波)の印加のために高調波発生のための追加パルスを挿入することによって正確な変位制御が可能なSIDMピエゾアクチュエータ駆動装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
まず、本発明の特徴を要約すれば、上記の目的を達成するための本発明の一面によるピエゾアクチュエータ駆動装置は、前記第1電圧と前記第2電圧との間に直列連結され、接点がインダクターの一端に連結された第1メインスイッチ及び第2メインスイッチ;前記第1電圧と第2電圧との間に直列連結され、接点が前記インダクターの他端に連結された第3メインスイッチ及び第4メインスイッチ;及び、前記インダクターの一端と他端との間に直列連結された第1共振スイッチ、前記ピエゾアクチュエータ及び第2共振スイッチを含み、前記第1共振スイッチと前記第2共振スイッチがターンオンされる共振期間に前記ピエゾアクチュエータと前記インダクターの連結による共振ループを形成し、前記インダクターにあらかじめ充電されたエネルギーを前記ピエゾアクチュエータに提供することができる。
【0009】
前記ピエゾアクチュエータに対する正方向駆動と負方向駆動との間に又は前記負方向駆動と前記正方向駆動との間に、前記共振期間において前記共振ループの形成前に、MOSEFETからなる前記第1共振スイッチの第1寄生ダイオード及びMOSEFETからなる前記第2共振スイッチの第2寄生ダイオードのうち、前記インダクターに流れる電流方向の寄生ダイオード及び他側の共振スイッチのターンオンによる事前ループを形成し、続く前記共振ループ瞬間に前記インダクターに流れる電流の不連続をなくすように駆動することができる。
【0010】
前記ピエゾアクチュエータに対する正方向駆動と負方向駆動との間に又は前記負方向駆動と前記正方向駆動との間に、前記共振ループの形成期間が過ぎた後に、MOSEFETからなる前記第1共振スイッチの第1寄生ダイオード及びMOSEFETからなる前記第2共振スイッチの第2寄生ダイオードのうち、前記インダクターに流れる電流方向の寄生ダイオード及び他側の共振スイッチのターンオンによる事後ループを形成し、前記インダクターから前記ピエゾアクチュエータへの残留電流の放電がなされるようにした後、前記第1共振スイッチと前記第2共振スイッチがターンオフされるように駆動することができる。
【0011】
前記ピエゾアクチュエータは、ピエゾ素子に結合している駆動ロッドと前記駆動ロッドに挿入されるスライダーを含み、駆動信号によって前記ピエゾ素子を駆動して前記駆動ロッドの振動を駆動することによって、前記スライダーのスティック-スリップ駆動による前進と後進によって前記スライダーの位置変位を制御することができる。
【0012】
前記第1電圧は、ソース電圧に連結された順方向ダイオードの出力側の電圧であってよい。
【0013】
前記ピエゾアクチュエータの両端に駆動信号が矩形波で入力され、前記矩形波の駆動周波数の1周期内のハイ区間の和及びロー区間の和の大きさによって前記ピエゾアクチュエータ振動の前進又は後進が決定され、前記駆動周波数の1周期内のロー区間の中間時点に、高調波発生のために挿入された追加パルスを含んでよい。
【0014】
また、本発明の他の一面によって、駆動信号によってピエゾ素子を駆動して前記ピエゾ素子に結合している駆動ロッドの振動を駆動することによって、前記駆動ロッドに挿入されたスライダーの位置変位を制御するためのピエゾアクチュエータ駆動方法は、前記ピエゾアクチュエータを駆動するための駆動信号が矩形波で入力され、前記矩形波の駆動周波数の1周期内のハイ区間の和及びロー区間の和の大きさによって前記ピエゾアクチュエータ振動の前進又は後進が決定され、前記駆動周波数の1周期内のロー区間の中間時点に、高調波発生のために挿入された追加パルスを含んでよい。
【0015】
前記追加パルスは、前記矩形波の駆動周波数の1周期内のハイ区間の和及びロー区間の和の比率が8.5:1.5~5.5:4.5の範囲で決定されるようにパルス幅が決定されてよい。
【0016】
そして、本発明のさらに他の一面によるピエゾアクチュエータの第1電極と第2電極に第1電圧と第2電圧をそれぞれ印加する正方向駆動、及び反対電圧をそれぞれ印加する負方向駆動を行う駆動装置のピエゾアクチュエータ駆動方法は、前記第1電圧と前記第2電圧との間に直列連結され、接点がインダクターの一端に連結された第1メインスイッチ及び第2メインスイッチ;前記第1電圧と第2電圧との間に直列連結され、接点が前記インダクターの他端に連結された第3メインスイッチ及び第4メインスイッチ;及び、前記インダクターの一端と他端との間に直列連結された第1共振スイッチ、前記ピエゾアクチュエータ及び第2共振スイッチを含む前記駆動装置を用いて、(A)前記正方向駆動のために前記第1メインスイッチと前記第4メインスイッチをターンオンさせる段階;(B)前記負方向駆動のために前記第3メインスイッチと前記第2メインスイッチをターンオンさせる段階;及び、(C)前記正方向駆動と前記負方向駆動との間に前記第1共振スイッチ及び前記第2共振スイッチをターンオンさせる共振段階を含み、前記共振段階で前記ピエゾアクチュエータと前記インダクターの連結による共振ループを形成し、前記インダクターにあらかじめ充電されたエネルギーを前記ピエゾアクチュエータに提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るピエゾアクチュエータ駆動装置及び方法によれば、インダクターに電流を充電し、十分の電流になった時に共振スイッチをターンオンしてピエゾアクチュエータ等価キャパシターに電圧を印加する構造を有し、初期動作を除く以降の動作は、共振回路で消耗されるエネルギー分だけインダクターに電流を補充することにより、極性が変わったキャパシター両端電圧の不足する電圧を補充する形態で駆動する。
【0018】
これにより、1)エネルギーの観点からすれば、従来発明では、ピエゾアクチュエータ等価キャパシターの極性を変えるために共振回路を駆動した時に消耗されるエネルギーを補充するために、キャパシターに電圧を加えて突入電流を誘発させたのに対し、本発明は、共振回路で消耗されるエネルギー分だけインダクターの電流を補充する方式であるが、インダクターの電流に関する性質によって、インダクターの両端に電圧を加えても電流は0から徐々に増加するので、キャパシターに直接電圧源を加えた時とは違い、ピーク電流が流れないという長所がある。例えば、このようにピエゾアクチュエータへの突入電流を除去して熱発生と電力消耗を減らすことができ、例えば、同一電圧駆動時に既存ドライビング方式の1/10、既存エコドライビング方式の1/3程度まで電力消耗の減少が可能になるであろう。
【0019】
2)また、インダクターに加えられる電流の大きさを調整することによって、ピエゾアクチュエータの等価キャパシター両端に電源電圧よりも高い電圧が印加でき、別途のDC-DCコンバーター無しでピエゾアクチュエータに入力される電圧を最大で2~3倍高く(例えば、電源電圧3.3V->印加8V)得ることができるという長所があり、これにより、ピエゾアクチュエータの振動速度を向上させることができる。
【0020】
3)そして、本発明では、ピエゾアクチュエータの駆動に有利なノコギリ波(又は、三角波)の印加のために、高調波発生のための追加パルスを挿入して正確な変位制御を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明に関する理解を助けるために詳細な説明の一部として含まれる添付の図面は、本発明に関する実施例を提供し、詳細な説明と一緒に本発明の技術的思想を説明する。
図1】従来のピエゾアクチュエータの駆動回路を示す。
図2】本発明のピエゾアクチュエータの構成要素を例示する図である。
図3】本発明の一実施例に係るピエゾアクチュエータ駆動装置を説明するための図である。
図4図3の駆動装置の動作を説明するためのタイミング図である。
図5図3の駆動装置の正方向駆動と負方向駆動の状態を説明するための参照図である。
図6】本発明のピエゾアクチュエータに印加される駆動信号と変位を説明するための図である。
図7】本発明のピエゾアクチュエータの伝達関数に対するボードダイアグラムの例示である。
図8】本発明の駆動信号において駆動周波数の1周期内のロー区間の中間時点に、高調波発生のために挿入された追加パルスを説明するための図である。
図9】本発明の駆動信号に追加パルスが挿入されていない場合にピエゾアクチュエータに実際に印加される信号波形の例示である。
図10】本発明の駆動信号に追加パルスが挿入される場合にピエゾアクチュエータに実際に印加される信号波形の例示である。
図11図9の追加パルスが挿入されていない場合の駆動信号の部分拡大とピエゾ変位を示す。
図12図10の追加パルスが挿入されている場合の駆動信号の部分拡大とピエゾ変位を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照して本発明について詳しく説明する。このとき、図面中、同一の構成要素には可能な限り同一の符号を付する。また、既に公知された機能及び/又は構成に関する詳細な説明は省略する。以下に開示する内容は、様々な実施例に係る動作を理解する上で必要な部分を重点的に説明し、その説明の要旨を曖昧にし得る要素に関する説明は省略する。また、図面の一部構成要素は、誇張されても、省略されても、又は概略的に示されてもよい。構成要素の大きさは実の大きさを完全に反映するものでなく、したがって、各図に描かれた構成要素の相対的な大きさ又は間隔によって、ここに記載される内容が限定されるものではない。
【0023】
本発明の実施例を説明するとき、本発明と関連した公知技術に関する具体的な説明が本発明の要旨を却って曖昧にし得ると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。そして、後述される用語は、本発明における機能を考慮して定義された用語で、これらは使用者、運用者の意図又は慣例などによって変わってもよい。したがって、その定義は、本明細書全般にわたる内容に基づいて下されるべきであろう。詳細な説明で使われる用語は、単に本発明の実施例を説明するためのもので、決して制限するためのものではない。特に断りのない限り、単数形態の表現は複数形態の意味を含む。この説明において、「含む」又は「備える」と記載された表現は、ある特性、数字、段階、動作、要素、これらの一部又は組合せを示すためのものであり、記載された以外の1つ又はそれ以上の他の特性、数字、段階、動作、要素、これらの一部又は組合せの存在又は可能性を排除するように解釈されてはならない。
【0024】
また、第1、第2などの用語は、様々な構成要素を説明するために使われてよいが、これらの構成要素は前記第1、第2などの用語によって限定されるものではなく、これらの用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的で使われるだけである。
【0025】
図2は、本発明のピエゾアクチュエータ150の構成要素を例示する図である。
【0026】
図2を参照すると、本発明のピエゾアクチュエータ150は、ピエゾ素子10、ピエゾ素子10に結合している駆動ロッド20、及び駆動ロッド20に挿入されたスライダー30を含んでよい。このようなピエゾアクチュエータ150は、PWM駆動信号Vによって駆動ロッド20を振動させてスライダー30の位置変位がなされるように制御できる素子であり、カメラモジュールの焦点調節、自動車燃料噴射など、精密モーション制御のために様々な分野で応用されている。
【0027】
例えば、PWM駆動信号Vをピエゾ素子10に印加すれば、ピエゾ素子10は、前記駆動信号Vによって駆動ロッド20を前進方向又は後進方向に振動させることができる。この時、スライダー30は駆動ロッド20に嵌め付けられて摺動するように結合しているが、駆動ロッド20の前進方向又は後進方向への移動がゆっくりなされるように制御すれば、駆動ロッド20とスライダー30との摩擦力がスライダー30の慣性力よりも大きいため駆動ロッド20とスライダー30とが一つとなって一緒に移動するように構成され(スティック状態という。)、駆動ロッド20の前進方向又は後進方向への移動が閾値よりも速くなるように制御すれば、駆動ロッド20とスライダー30との摩擦力がスライダー30の慣性力よりも小さいためスライダー30は元の位置にあり、駆動ロッド20は滑るように移動(スリップ状態という。)するように構成されてよい。このような方法にって駆動ロッド20の前進方向又は後進方向に振動速度を適切に制御し、スライダー30の相対的な位置変位を制御することが可能になる。
【0028】
図3は、本発明の一実施例に係るピエゾアクチュエータ駆動装置100を説明するための図である。
【0029】
図3を参照すると、本発明の一実施例に係るピエゾアクチュエータ駆動装置100は、ピエゾアクチュエータ150を駆動するために、第1メインスイッチMT1、第2メインスイッチMT2、第3メインスイッチMT3、第4メインスイッチMT4、第1共振スイッチRT1、インダクターL、及び第2共振スイッチRT2を備える回路を含む。ピエゾアクチュエータ駆動装置100は、ソース電圧190と第1電圧110との間に連結された順方向ダイオードBDをさらに含んでよい。
【0030】
前記スイッチ、すなわち、第1メインスイッチMT1、第2メインスイッチMT2、第3メインスイッチMT3、第4メインスイッチMT4、第1共振スイッチRT1、及び第2共振スイッチRT2は、MOSFET(Metal Oxide Silicon Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Transistor)などの素子であってよく、この場合に、同図に示すように、製造上で形成される、第1メインスイッチMT1、第2メインスイッチMT2、第3メインスイッチMT3、第4メインスイッチMT4のそれぞれの寄生ダイオードDと、第1共振スイッチRT1及び第2共振スイッチRT2のそれぞれの寄生ダイオードD1,D2が含まれてよい。
【0031】
また、これらのスイッチは、BJT(Bipolar Junction Transistor)素子で構成されてもよく、この場合に、第1メインスイッチMT1、第2メインスイッチMT2、第3メインスイッチMT3、第4メインスイッチMT4のそれぞれの寄生ダイオードDは含まれず、第1共振スイッチRT1及び第2共振スイッチRT2のそれぞれの寄生ダイオードD1,D2も含まれない。
【0032】
以下に説明するように、特記しない限り、前記スイッチがBJT素子で構成される場合に、上記のように寄生ダイオードD,D1,D2無しで駆動されてもよい。なお、特記しない限り、前記スイッチがIGBT、MOSFET、BJTなどの組合せで構成されてよいことは当然である。
【0033】
ただし、ピエゾアクチュエータ150を含む本発明の共振ループ回路(RT1,RT2,L,150)の動作方式によって、前記スイッチがBJT素子で構成される場合にも、第1共振スイッチRT1に並列連結されたダイオード(以下、正方向ダイオードという。)D1、第2共振スイッチRT2に並列連結されたダイオード(以下、負方向ダイオードという。)D2が付加される場合があるので、当該動作方式の説明において正方向ダイオードD1、負方向ダイオードD2が付加されて駆動がなされる場合を説明するものとする。
【0034】
上記のように、前記スイッチの素子構造によって、IGBT/MOSFET素子のゲート、ドレイン/ソース端子は、BJT素子のベース、エミッタ/コレクタ(又は、コレクタ/エミッタ)端子に対応し得る。
【0035】
ピエゾアクチュエータ150は、図2に示すように、両端電極に駆動信号Vを印加すれば、駆動信号によって振動する圧電素子であり、カメラモジュールの焦点調節、自動車燃料噴射など、精密モーション制御のために様々な分野で応用されている。ピエゾアクチュエータ150は、機械的構造によって決定される固有な寄生インダクタンス(Lp)と電荷容量(Cp)、機械的負荷に対応する寄生抵抗(Rp)、及び電極や周囲導線などの影響による寄生浮遊容量(Cs)を含む電気的等価回路と解釈されてよい。例えば、インダクタンス(Lp)とキャパシタンス(C=Cp+Cs)によって共振周波数が決定され、機械的負荷が小さければ抵抗(Rp)が減少し、機械的負荷が大きければ抵抗(Rp)が増加する。
【0036】
以下では、ピエゾアクチュエータ150の両端電極、すなわち、第1電極(例えば、図3で左側電極)と第2電極(例えば、図3で右側電極)に第1電圧110(例えば、3.3Volt)と第2電圧120(例えば、接地電圧)をそれぞれ印加するとき、正方向駆動(例えば、図2で右側に振動する駆動)と呼ぶものとする。また、ピエゾアクチュエータ150の両端電極、すなわち、第1電極(例えば、図3で左側電極)と第2電極(例えば、図3で右側電極)に反対電圧、すなわち、第2電圧120(例えば、接地電圧)と第1電圧110(例えば、3.3Volt)をそれぞれ印加するとき、負方向駆動(例えば、図2で左側に振動する駆動)と呼ぶものとする。
【0037】
図3に示すように、第1メインスイッチMT1と第2メインスイッチMT2は、第1電圧110と第2電圧120との間に直列連結され、その接点がインダクターLの一端に連結される。
【0038】
第3メインスイッチMT3と第4メインスイッチMT4は、第1電圧110と第2電圧120との間に直列連結され、その接点がインダクターLの他端に連結される。
【0039】
第1共振スイッチRT1、ピエゾアクチュエータ150及び第2共振スイッチRT2は、ピエゾアクチュエータ150の第1電極と第2電極との間に直列連結される。
【0040】
上にも述べたように、ピエゾアクチュエータ駆動装置100は、ソース電圧190と第1電圧110との間に連結された順方向ダイオードBDをさらに含んでよい。このとき、第1電圧110は、ソース電圧190に連結された順方向ダイオードBDの出力側の電圧である。ダイオードBDが理想的である場合に、第1電圧110とソース電圧190は同一であってよいが、実質的に多少の差(例えば、0.7ボルト)があり得る。ダイオードBDは、インダクターLの両端うちいずれす一方でも第1電圧110より大きい場合に、寄生ダイオードD1/D2の動作と共にインダクターLとソース電圧190とが短絡して電流が漏れないように防止することができる。
【0041】
図4は、図3の駆動装置100の動作を説明するためのタイミング図である。
【0042】
図5は、図3の駆動装置100の正方向駆動と負方向駆動の状態を説明するための参照図である。
【0043】
図4及び図5を参照すると、まず、図4のt1、t2期間に、図5の410のように、それぞれのゲート端子にロジックハイ(logical high voltage)として印加される制御装置(図示せず)の制御信号S(MT1)とS(MT4)によって、第1メインスイッチMT1と第4メインスイッチMT4をターンオンさせ(MT3/MT2/RT1/RT2ターンオフ)、ピエゾアクチュエータ150の正方向駆動(例えば、図2で右側に振動する駆動)が行われてよい。
【0044】
また、t6、t7期間に、図5の430のように、それぞれのゲート端子にロジックハイとして印加される制御装置の制御信号S(MT3)とS(MT2)によって、第3メインスイッチMT3と第2メインスイッチMT2をターンオンさせ(MT1/MT4/RT1/RT2ターンオフ)、ピエゾアクチュエータ150の負方向駆動(例えば、左側に振動する駆動)が行われてよい。
【0045】
本発明では、このような前記正方向駆動(MT1、MT4ターンオン)と前記負方向駆動(MT3、MT2ターンオン)との間に、図4のt3又はt8期間(共振期間)に、図5の420又は440のように、第1共振スイッチRT1及び第2共振スイッチRT2をターンオンさせて共振がなされるようにする。これは、それぞれのゲート端子に印加される制御装置の制御信号S(RT1)とS(RT2)がロジックハイとして印加される時に行われる。すなわち、前記共振期間にピエゾアクチュエータ150とインダクターLの連結による共振ループを形成し、インダクターLにあらかじめ充電されたエネルギーをピエゾアクチュエータ150に提供して駆動できるようにした。また、インダクターLに加えられる電流の大きさを調整することによって、前記共振期間にインダクターLの電圧がピエゾアクチュエータ150に印加され、ピエゾアクチュエータ150の等価キャパシター両端に電源電圧110よりも高い電圧を印加できるため、別途のDC-DCコンバーター無しでピエゾアクチュエータ150に入力される電圧を最大で2~3倍も高く(例えば、電源電圧3.3Vである場合->印加8V)得ることができるという長所があり、これにより、ピエゾアクチュエータ150の振動速度を向上させることができる。
【0046】
本発明において、このように前記正方向駆動(MT1/MT4ターンオン)と前記負方向駆動(MT3/MT2ターンオン)との間に、又は前記負方向駆動(MT3/MT2ターンオン)と前記正方向駆動(MT1/MT4ターンオン)との間に、第1共振スイッチRT1及び第2共振スイッチRT2をターンオンさせる前記共振期間を置くことにより、前記正方向駆動(MT1/MT4ターンオン)前に、及び前記負方向駆動(MT3/MT2ターンオン)前にあらかじめ、閉回路がなされる共振ループ回路(RT1,RT2,L,150)で共振が発生する共振ループが形成されるようにし、ピエゾアクチュエータ150の両端のキャパシタンスの極性方向(図5の430、440参照)を当該駆動方向にあらかじめ充電させることができる。
【0047】
すなわち、前記正方向駆動(MT1、MT4ターンオン)してから前記負方向駆動(MT3,MT2ターンオン)する前に、第1共振スイッチRT1及び第2共振スイッチRT2をターンオンさせると、ピエゾアクチュエータ150とインダクターLによる共振ループを形成し、ピエゾアクチュエータ150のキャパシタンス(C)とインダクターLのインダクタンス(L)間に発生する共振(共振周期T=2π(LC)1/2)(例えば、寄生インダクタンス(Lp)を無視する時に)によって、ピエゾアクチュエータ150の両端のキャパシタンスの極性方向を、負方向駆動方向(例えば、-+)にあらかじめ充電させることができる。
【0048】
また、前記負方向駆動(MT3、MT2ターンオン)してから前記正方向駆動(MT1、MT4ターンオン)する前に、第1共振スイッチRT1及び第2共振スイッチRT2をターンオンさせると、ピエゾアクチュエータ150とインダクターLによる共振ループを形成し、ピエゾアクチュエータ150のキャパシタンス(C)とインダクターLのインダクタンス(L)間に発生する共振(共振周期T=2π(LC)1/2)によって、ピエゾアクチュエータ150の両端のキャパシタンスの極性方向を正方向駆動方向(例えば、+-)にあらかじめ充電させることができる。
【0049】
なお、本発明では、前記正方向駆動(MT1、MT4ターンオン)と前記負方向駆動(MT3、MT2ターンオン)後の前記共振期間以外の時間には、制御装置の制御信号S(RT1)とS(RT2)がロジックロー(logical low voltage)として提供され、第1共振スイッチRT1及び第2共振スイッチRT2はターンオフされるが、共振期間前の事前ループ期間と共振期間後の事前ループ期間に第1共振スイッチRT1及び第2共振スイッチRT2のいずれか一つが所定時間の間にターンオンされる期間を有する。
【0050】
すなわち、前記共振期間t3の前に前記正方向駆動(MT1、MT4ターンオン)と一部重なる事前ループ期間t2に、第1共振スイッチRT1があらかじめターンオンされ、前記共振期間t3後に第2共振スイッチRT2はターンオフされたが、所定時間の間に第1共振スイッチRT1のターンオンが維持される事後ループ期間t4が含まれてよい。
【0051】
また、前記負方向駆動(MT3、MT2ターンオン)においても、前記共振期間t8の前に前記負方向駆動(MT3、MT2ターンオン)と一部重なる事前ループ期間t7に、第2共振スイッチRT2があらかじめターンオンされ、前記共振期間t8後に第1共振スイッチRT1はターンオフされたが、所定時間の間に第2共振スイッチRT2のターンオンが維持される事後ループ期間t9が含まれてよい。
【0052】
さらに言うと、このような事前ループ期間t2に第1共振スイッチRT1があらかじめターンオンされることにより、前記共振期間において前記共振ループが形成される前に、インダクターLに流れる電流方向の第2寄生ダイオードD2及び前記共振回路の他側の第1共振スイッチRT1のターンオンによる事前ループを形成し、続く前記共振ループ瞬間にインダクターLに流れる電流の不連続をなくすように駆動することができる。すなわち、MOSEFET又はIGBTなどの寄生ダイオードを有する素子からなる第2共振スイッチRT2が有する第2寄生ダイオードD2を用いて、共振ループ瞬間にインダクターLに流れる電流の不連続をなくすように駆動することができる。
【0053】
また、このような事後ループ期間t4に、所定期間の間に第1共振スイッチRT1がターンオン状態を維持することにより、前記共振ループの形成期間が過ぎた後にも、インダクターLに流れる電流方向の第2寄生ダイオードD2及び前記共振回路の他側の第1共振スイッチRT1のターンオンによる事後ループを形成し、インダクターLからピエゾアクチュエータ150への残留電流の放電がなされるようにした後、第1共振スイッチRT1と第2共振スイッチRT1がターンオフされるように駆動できる。すなわち、MOSEFET又はIGBTなどの寄生ダイオードを有する素子からなる第2共振スイッチRT2が有する第2寄生ダイオードD2を用いて、共振ループ後に、所定時間の間にインダクターLからピエゾアクチュエータ150への残留電流の放電がなされるようにすることができる。
【0054】
同様に、前記事前ループ期間t7に第2共振スイッチRT2があらかじめターンオンされることにより、前記共振期間において前記共振ループが形成される前に、インダクターLに流れる電流方向の第1寄生ダイオードD1及び前記共振回路の他側の第2共振スイッチRT2のターンオンによる事前ループを形成し、続く前記共振ループ瞬間にインダクターLに流れる電流の不連続をなくすように駆動できる。すなわち、MOSEFET又はIGBTなどの寄生ダイオードを有する素子からなる第1共振スイッチRT1が有する第1寄生ダイオードD1を用いて、共振ループ瞬間にインダクターLに流れる電流の不連続をなくすように駆動できる。
【0055】
また、同様に、前記事後ループ期間t9に、所定期間の間に第2共振スイッチRT2がターンオン状態を維持することにより、前記共振ループの形成期間が過ぎた後にも、インダクターLに流れる電流方向の第1寄生ダイオードD1及び前記共振回路の他側の第2共振スイッチRT2のターンオンによる事後ループを形成し、インダクターLからピエゾアクチュエータ150への残留電流の放電がなされるようにした後、第1共振スイッチRT1と第2共振スイッチRT1がターンオフされるように駆動できる。すなわち、MOSEFET又はIGBTなどの寄生ダイオードを有する素子からなる第1共振スイッチRT1が有する第1寄生ダイオードD1を用いて、共振ループ後に、所定時間の間にインダクターLからピエゾアクチュエータ150への残留電流の放電がなされるようにすることができる。
【0056】
一方、図2でも説明したように、ピエゾアクチュエータ150は、ピエゾ素子10に結合している駆動ロッド20と、駆動ロッド20に挿入されるスライダー30を含み、駆動信号Vによってピエゾ素子10を駆動して駆動ロッド20の振動を駆動することにより、スライダー30のスティック-スリップ駆動による前進と後進によってスライダー30の時間による位置変位を制御できる。
【0057】
駆動信号Vは、制御装置(図示せず)の制御信号S(MT1)、S(MT2)、S(MT3)、S(MT4)によってピエゾアクチュエータ150の両端に印加される信号であってよい。ピエゾアクチュエータ150の両端にこのような駆動信号が矩形波で入力され、前記矩形波の駆動周波数の1周期内のハイ区間の和及びロー区間の和の大きさによってピエゾアクチュエータ150の振動の前進又は後進が決定される。後述するように、前記駆動周波数の1周期内のロー区間の中間時点に、高調波発生のために追加パルスを挿入することによって、ピエゾアクチュエータ150の駆動に有利なノコギリ波(又は、三角波)を印加させることができる。
【0058】
図6は、本発明のピエゾアクチュエータ150に印加される駆動信号Vと変位を説明するための図である。
【0059】
図6を参照すると、例えば、矩形波のPWM駆動信号Vをピエゾ素子10に印加すれば、ピエゾ素子10は、前記駆動信号Vによって駆動ロッド20を前進方向又は後進方向に振動させることができる。この時、スライダー30は、駆動ロッド20に嵌め付けられて摺動するように結合しているが、駆動ロッド20の前進方向又は後進方向への移動がゆっくりなされるように制御すれば、駆動ロッド20とスライダー30との摩擦力がスライダー30の慣性力よりも大きいため、駆動ロッド20とスライダー30が一つになって一緒に移動するように構成され(スティック状態という。)、駆動ロッド20の前進方向又は後進方向への移動が閾値よりも速くなるように制御すれば、駆動ロッド20とスライダー30との摩擦力がスライダー30の慣性力よりも小さいため、スライダー30は元の位置にあり、駆動ロッド20は滑るように移動(スリップ状態という。)するよう構成されてよい。このような方法によって駆動ロッド20の前進方向又は後進方向に振動速度を適切に制御し、スライダー30の相対的な位置変位を制御することが可能になる。
【0060】
すなわち、前記駆動信号Vの矩形波の駆動周波数の1周期内のハイ区間の和及びロー区間の和の大きさによって、ピエゾアクチュエータ150の振動の前進又は後進が決定されてよい。図6に示すように、前記駆動信号Vの矩形波の駆動周波数の1周期内のハイ区間の和及びロー区間の和の大きさが7:3である場合を例示しているし、前記駆動信号Vの矩形波のハイ区間に同図のようにピエゾ素子10、すなわち、駆動ロッド20の時間による変位(L)の発生(小さい勾配)によって駆動ロッド20とスライダー30が相対的に遅い速度で前進でき、前記駆動信号Vの矩形波のロー区間に同図のようにピエゾ素子10、すなわち、駆動ロッド20の反対方向への変位(L)の発生(大きい勾配)によって駆動ロッド20が速い速度で後進し、スライダー30の位置は益々前進方向に変位が増加し得る(610)。このようなスライダー30の変位を起こすために、駆動信号Vの矩形波の駆動周波数の1周期内のハイ区間の和及びロー区間の和の大きさ比率が7:3である場合の他にも、8.5:1.5~5.5:4.5の範囲(すなわち、A:Bとして、Aが5.5~8.5の間の実数であるとき、B=10-A)でそのデューティー比が決定されてよい。特に、理論的に、矩形波の駆動周波数の1周期内のハイ区間の和及びロー区間の和の大きさが5:5であれば、スライダー30の変位を起こすことができず、元の位置に位置し得る。
【0061】
このように、概略的に駆動信号Vの矩形波の駆動周波数の1周期内のハイ区間の和及びロー区間の和の大きさが、7:3である場合に前進、及び3:7である場合に後進の変位を得ることになる。駆動信号Vの波形をノコギリ波として発生させてピエゾ素子10に印加してもよいが、この時には数十ボルト以上の大きい電圧が必要であり、電力増加及び追加部品などが要求されるため、一般的には用いられない方式である。
【0062】
図7は、本発明のピエゾアクチュエータ150の伝達関数に対するボードダイアグラムの例示である。
【0063】
図7を参照すると、ピエゾアクチュエータ150に矩形波の駆動信号Vを入力する時の入力と出力間のボード(Bode)ダイアグラムに見られるように、2次システムにおけるように減衰比(Damping ratio)が0に近いシステムのように現れる。このとき、入力波形の周波数(例えば、1MHz)を適切に選択し、3:7、7:3、又はこれと類似のデューティー比を有する矩形波を印加すれば、三角波に妨害を与える4次以上の高次高調波は2次システムフィルターによって減衰され、相対的に2次、3次高調波が大きく現れることになり、ピエゾアクチュエータ150の出力端、すなわち、ピエゾ素子10又は駆動ロッド20の時間による変位(L)を三角波の形態で得ることができる(図6参照)。
【0064】
しかしながら、駆動周波数を調整する際に、2次、3次高調波を大きく得るために周波数をピエゾアクチュエータ150の共振周波数よりも低く駆動すれば、基本波が減って大きい振幅を得ることができない。一方、大きい振幅を得るために共振周波数の近くに周波数を増加すると、2次、3次高調波の減衰が激しくなり、ピエゾアクチュエータ150の出力端で所望の時間による三角波形態の変位を得ることができなくなる。
【0065】
すなわち、図6の駆動信号(V’)の例のように、2次、3次高調波の減衰が激しくなり、共に勾配が緩やかになる矩形波を駆動信号として印加する場合に、すなわち、2次、3次高調波が減った駆動信号(V’)がピエゾアクチュエータ150に印加されると、ピエゾアクチュエータ150の出力端、すなわち、ピエゾ素子10又は駆動ロッド20の変位(L’)を、時間による三角波の形態で得ることができず、サイン波の形態で印加され、スライダー30の変位を起こすことができない(図6参照)。この時にはピエゾ素子10、すなわち、駆動ロッド20の変位速度が必要な分だけ現れず、スライダー30の前進又は後進の変位を起こすことができなくなる(610)。
【0066】
すなわち、矩形波の駆動信号Vは、十分に大きい2次、3次高調波(harmonics)が含まれていないと、満足すべき出力端の三角波が得られないことが分かる。
【0067】
図8は、本発明の駆動信号(V1)において駆動周波数の1周期内のロー区間の中間時点に、高調波発生のために挿入された追加パルス810を説明するための図である。
【0068】
図8を参照すると、ピエゾアクチュエータ150を駆動するための駆動信号が矩形波で入力される場合に、駆動周波数の1周期内(T)のロー区間の中間時点に(2Aの中央)、高調波発生のために挿入された追加パルス810を含む駆動信号(V2)を用いてピエゾアクチュエータ150を駆動することができる。追加パルス810の幅(2B)は、駆動周波数の1周期内(T)のロー区間の中間時点から両側に、前記1周期内(T)のロー区間の半幅(A)よりも小さく(B<A)決定されて適用されてよい。
【0069】
図8では、追加パルス810がない駆動信号(V1)での、矩形波の駆動周波数の1周期内のハイ区間の和及びロー区間の和の比率が3:7である例を示しているが、これに限定されず、その比率が、1.5:8.5~4.5:5.5の範囲で決定されるようにパルス幅が決定されてよい。
【0070】
また、追加パルス810を含む駆動信号(V2)を用いてピエゾアクチュエータ150を駆動する場合にも、追加パルス810を含めて矩形波の駆動周波数の1周期内のハイ区間の和及びロー区間の和の比率が8.5:1.5~5.5:4.5の範囲で決定されるようにパルス幅が決定されてよく(前進方向変位発生)、追加パルス810を含めて矩形波の駆動周波数の1周期内のハイ区間の和及びロー区間の和の比率が1.5:8.5~4.5:5.5の範囲で決定されるようにパルス幅が決定されてよい(後進方向変位発生)。
【0071】
図8のような駆動方式は、図3の回路に適用されてよい他、図1のような従来回路にも適用可能であり、その他にも、ピエゾアクチュエータ150を駆動するための様々な装置に適用されてよい。すなわち、駆動信号(V2)によってピエゾ素子10を駆動し、ピエゾ素子10に結合している駆動ロッド20の振動を駆動することによって、駆動ロッド20に挿入されたスライダー30のスティック-スリップ駆動による前進と後進によってスライダー30の位置変位を制御するための全てのピエゾアクチュエータ150の駆動方式に適用することができる。
【0072】
図9は、本発明の駆動信号(V1)に追加パルスが挿入されていない場合にピエゾアクチュエータ150に実際に印加される信号波形の例示である。
【0073】
図10は、本発明の駆動信号(V2)に追加パルスが挿入される場合にピエゾアクチュエータ150に実際に印加される信号波形の例示である。
【0074】
図9及び図10を参照すると、追加パルスが挿入されていない駆動信号(V1)に比べて追加パルス810が挿入されている駆動信号(V2)において、周波分析上の共振周波数の周囲の2次、3次高調波領域で遥かに高い値のパワースペクトル(dB)を示すことを確認した。これは、ζ(DAMPING RATIO)=0.02の2次システムを通過させることで確認加能である。
【0075】
図11は、図9の追加パルスが挿入されていない場合の駆動信号(V1)の部分拡大とピエゾ変位(L1)を示す。
【0076】
図12は、図10の追加パルスが挿入されている場合の駆動信号(V2)の部分拡大とピエゾ変位(L2)を示す。
【0077】
図11及び図12を参照すると、追加パルスが挿入されていない駆動信号(V1)に比べて追加パルス810が挿入されている駆動信号(V2)において、ピエゾアクチュエータ150の出力端、すなわち、ピエゾ素子10又は駆動ロッド20の時間による変位(L2)が三角波の形態で得られ、スライダー30の変位を起こすことが可能になる。追加パルスが挿入されていない駆動信号(V1)では、サイン波形態の駆動ロッド20の変位(L1)が発生し、スライダー30の変位を制御することができない。
【0078】
上述したように、本発明で提示する駆動方法は、既存の3:7又はこれと類似のデューティーを有する駆動波形において長いデューティーを有する側の期間において、1/2に該当する中間部分に追加パルス810をさらに置くことにより、2次、3次高調波の大きさを大幅に増加させる方法を利用する。したがって、本発明で提示する駆動方法によれば、共振を用いたSIDM駆動においても十分に大きい比率の三角波又はノコギリ波がピエゾアクチュエータ150の出力端、すなわち、ピエゾ素子10又は駆動ロッド20に適用されることが可能になる。
【0079】
言い換えると、本発明に係るピエゾアクチュエータ駆動装置100によれば、インダクターLに電流を充電し、十分の電流になった時に共振スイッチRT1,RT2をターンオンしてピエゾアクチュエータ150などがキャパシターに電圧を印加する構造を有し、初期動作を除く以降の動作は、共振回路(RT1,RT2,L)で消耗されるエネルギー分だけインダクターLに電流を補充することにより、極性が変わったキャパシター両端電圧の不足する電圧を補充する形態で駆動する。
【0080】
これにより、1)エネルギーの観点からすれば、従来発明では、ピエゾアクチュエータ等価キャパシターの極性を変えるために共振回路を駆動した時に消耗されるエネルギーを補充するために、キャパシターに電圧を加えて突入電流を誘発させたのに対し、本発明は、共振回路(RT1,RT2,L)で消耗されるエネルギー分だけインダクターLの電流を補充する方式であるが、インダクターLの電流に関する性質によって、インダクターLの両端に電圧を加えても電流は0から徐々に増加するので、キャパシターに直接電圧源を加えた時とは違い、ピーク電流が流れないという長所がある。例えば、このようにピエゾアクチュエータ150への突入電流を除去して熱発生と電力消耗を減らすことができ、例えば、同一電圧駆動時に既存ドライビング方式の1/10、既存エコドライビング方式の1/3程度まで電力消耗の減少が可能になるであろう。
【0081】
2)また、インダクターLに加えられる電流の大きさを調整することによって、ピエゾアクチュエータ150の等価キャパシター両端に電源電圧よりも高い電圧が印加でき、別途のDC-DCコンバーター無しでピエゾアクチュエータ150に入力される電圧を最大で2~3倍高く(例えば、電源電圧3.3V->印加8V)得ることができるという長所があり、これにより、ピエゾアクチュエータ150の振動速度を向上させることができる。
【0082】
3)そして、本発明では、ピエゾアクチュエータ150の駆動に有利なノコギリ波(又は、三角波)の印加のために、高調波発生のための追加パルスを挿入して正確な変位制御を可能にする。
【0083】
以上のように、具体的な構成要素などのような特定事項、限定された実施例及び図面によって本発明が説明されたが、これは、本発明のより全般的な理解を助けるために提供されただけで、本発明は上記の実施例に限定されず、本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で様々な修正及び変形が可能であろう。したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定して定められてはならず、後述する特許請求の範囲の他、この特許請求の範囲と均等又は等価の変形があるあるゆる技術思想も、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきであろう。
【符号の説明】
【0084】
150 ピエゾアクチュエータ
110 第1電圧
120 第2電圧
MT1~MT4 メインスイッチ
RT1,RT2 共振スイッチ
インダクター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12