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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102837
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】送風量調整装置、及び送風システム
(51)【国際特許分類】
   F04D 27/00 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
F04D27/00 101Y
F04D27/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024004526
(22)【出願日】2024-01-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2023006496
(32)【優先日】2023-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 京佑
(72)【発明者】
【氏名】今井 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】村上 千鶴
(72)【発明者】
【氏名】菊池 雄行
【テーマコード(参考)】
3H021
【Fターム(参考)】
3H021AA06
3H021BA08
3H021CA04
3H021DA21
3H021DA27
3H021EA02
3H021EA12
(57)【要約】
【課題】快適性を損なうことなく、自然環境の風を再現する。
【解決手段】遠隔地の風を対象空間(S)に再現するファン(30)の送風量を調整する送風量調整装置であって、ファン(30)の制御値を出力する制御部(C)を備える。制御部(C)は、遠隔地において取得された風に関する風データを取得し、取得した風データに応じた制御値とは異なる制御値を出力する。
【選択図】図20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔地の風を対象空間(S)に再現するファン(30)の送風量を調整する送風量調整装置であって、
前記ファン(30)の制御値を出力する制御部(C)を備え、
前記制御部(C)は、
前記遠隔地において取得された風に関する風データを取得し、
取得した前記風データに応じた前記制御値とは異なる前記制御値を出力する
送風量調整装置。
【請求項2】
前記制御部(C)は、
前記風データを加工した加工データを生成し、
前記加工データに基づいて出力する前記制御値を決定する
請求項1に記載の送風量調整装置。
【請求項3】
前記制御部(C)は、
前記風データに応じた前記制御値を決定し、
決定した前記制御値を補正し、該補正した値を出力する前記制御値として決定する
請求項1に記載の送風量調整装置。
【請求項4】
前記制御部(C)は、前記風データにおける風速の増減傾向と同じ傾向を示す前記制御値を出力する
請求項1に記載の送風量調整装置。
【請求項5】
前記制御部(C)は、前記ファン(30)から吹き出される空気の平均風速がユーザによって任意に設定された平均風速になるような前記制御値を出力する
請求項4に記載の送風量調整装置。
【請求項6】
前記制御部(C)は、前記風データに基づくデータに所定の値を乗じる
請求項4に記載の送風量調整装置。
【請求項7】
前記制御部(C)は、前記風データに基づくデータに対して所定の関数を演算する
請求項4に記載の送風量調整装置。
【請求項8】
前記制御部(C)は、前記風データの風速値が前記ファン(30)の回転数の上限値を超えた状態が所定時間以上続いたときに、取得した前記風データに応じた前記制御値とは異なる前記制御値を出力する
請求項1に記載の送風量調整装置。
【請求項9】
前記制御部(C)は、前記風データの風速値がユーザによって予め任意に設定された上限風速を超えた状態が所定時間以上続いたときに、取得した前記風データに応じた前記制御値とは異なる前記制御値を出力する
請求項1に記載の送風量調整装置。
【請求項10】
前記制御部(C)は、前記風データの風速値が所定の基準値以下の状態が所定時間以上続いたときに、前記風データに基づくデータを増幅させる
請求項1に記載の送風量調整装置。
【請求項11】
前記風データとは異なる風に関する代替データを予め記憶する記憶部(18)を更に備え、
前記制御部(C)は、前記風データの風速値が所定の基準値以下の状態が所定時間以上続いたときに、前記代替データに基づいて出力する前記制御値を決定する
請求項1に記載の送風量調整装置。
【請求項12】
前記制御部(C)は、前記風データに基づくデータに応じて、自然環境を模した音を発生させるための信号を出力する
請求項1に記載の送風量調整装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1つに記載の前記送風量調整装置を備える送風システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送風量調整装置、及び送風システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のプロペラファンを備えた送風装置が開示されている。この送風装置は、遠隔地の屋外に設置されたセンサユニットから通信回線を介して送信された風速データをリアルタイムに受信し、受信した風速データに基づいて複数のプロペラファンを制御している。これにより、送風装置から吹き出される風によって遠隔地の自然風が再現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-143631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の送風装置において遠隔地の自然風を再現する場合、例えば、遠隔地において突風が吹くと、送風装置から瞬間的に強い風が吹き出される。この場合、机上の紙が吹き飛ばされたり、送風装置の風に当たった人の髪が乱れたりする。このように、室内に強い風が再現されると、送風装置の風に当たった人の状況によっては、不快に感じることがあった。また、例えば、遠隔地において無風に近い微風が吹くと、送風装置からも非常に弱い風が吹き出される。この場合、送風装置の風に当たっていた人は、急に風を感じなくなり、送風装置の故障を疑うなどの不安や違和感を感じることがあった。
【0005】
本開示の目的は、快適性を損なうことなく、自然環境の風を再現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、遠隔地の風を対象空間(S)に再現するファン(30)の送風量を調整する送風量調整装置(A)を対象とする。送風量調整装置(A)は、前記ファン(30)の制御値を出力する制御部(C)を備える。前記制御部(C)は、前記遠隔地において取得された風に関する風データを取得し、取得した前記風データに応じた前記制御値とは異なる前記制御値を出力する。
【0007】
第1の態様では、制御部(C)が、取得した風データに応じた制御値とは異なるファン(30)の制御値を出力する。これにより、遠隔地の風を調整した風がファン(30)から吹き出される。そのため、対象空間(S)に居る人の快適性を損なうことなく、自然環境の風を再現できる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記制御部(C)は、前記風データを加工した加工データを生成し、前記加工データに基づいて出力する前記制御値を決定する。
【0009】
第2の態様では、制御部(C)によって、風データを加工した加工データが生成され、該加工データに基づいて出力する制御値が決定される。これにより、ファン(30)から遠隔地の風を調整した風を吹き出すことができる。
【0010】
第3の態様は、第1の態様において、前記制御部(C)は、前記風データに応じた前記制御値を決定し、決定した前記制御値を補正し、該補正した値を出力する前記制御値として決定する。
【0011】
第3の態様では、制御部(C)によって、風データに応じた制御値が決定され、決定された制御値が補正される。制御部(C)は、補正した値を出力する制御値として決定する。これにより、ファン(30)は、遠隔地の風を調整した風を吹き出すことができる。
【0012】
第4の態様は、第1~第3のいずれか1つの態様において、前記制御部(C)は、前記風データにおける風速の増減傾向と同じ傾向を示す前記制御値を出力する。
【0013】
第4の態様では、制御部(C)が出力する制御値は、風データにおける風速の増減傾向と同じ傾向を示す。そのため、遠隔地と同じ揺らぎの風を対象空間(S)に再現できる。
【0014】
第5の態様は、第4の態様において、前記制御部(C)は、前記ファン(30)から吹き出される空気の平均風速がユーザによって任意に設定された平均風速になるような前記制御値を出力する。
【0015】
第5の態様では、制御部(C)が出力する制御値は、ファン(30)から吹き出される空気の平均風速がユーザによって任意に設定された平均風速となるような制御値である。これにより、ユーザが自由に設定した強さであり且つ遠隔地と同じ揺らぎの風が対象空間(S)に再現される。
【0016】
第6の態様は、第4の態様において、前記制御部(C)は、前記風データに基づくデータに所定の値を乗じる。
【0017】
第6の態様では、制御部(C)によって、風データに基づくデータに所定の値が乗じられる。これにより、ファン(30)の制御値が調整されるので、ファン(30)から吹き出される風の強さが調整されて、遠隔値の風に対して強さが変更され且つ遠隔地と同じ揺らぎの風が対象空間(S)に再現される。
【0018】
第7の態様は、第4の態様において、前記制御部(C)は、前記風データに基づくデータに対して所定の関数を演算する。
【0019】
第7の態様では、制御部(C)によって、風データに基づくデータに対して所定の関数が演算される。これにより、ファン(30)の制御値が調整されるので、ファン(30)から吹き出される風の強さが調整されて、遠隔値の風に対して強さが変更され且つ遠隔地と同じ揺らぎの風が対象空間(S)に再現される。
【0020】
第8の態様は、第1~7のいずれか1つの態様において、前記制御部(C)は、前記風データの風速値が前記ファン(30)の回転数の上限値を超えた状態が所定時間以上続いたときに、取得した前記風データに応じた前記制御値とは異なる前記制御値を出力する。
【0021】
取得した風データの風速値がファン(30)の回転数の上限値を超えた状態がある程度続くと、ファン(30)から吹き出される空気の風速がファン(30)の回転数の上限値で一定になり、遠隔地の風の揺らぎが再現されない。そこで、第8の態様では、そのような状態の場合に、取得した風データに応じた制御値とは異なる制御値を出力することにより、対象空間(S)において遠隔地の風の揺らぎを再現できる。
【0022】
第9の態様は、第1~8のいずれか1つの態様において、前記制御部(C)は、前記風データの風速値がユーザによって予め任意に設定された上限風速を超えた状態が所定時間以上続いたときに、取得した前記風データに応じた前記制御値とは異なる前記制御値を出力する。
【0023】
取得した風データの風速値がユーザによって予め任意に設定された上限風速を超えた状態がある程度続くと、ファン(30)から吹き出される空気の風速が設定された上限風速で一定になり、遠隔地の風の揺らぎが再現されない。そこで、第9の態様では、そのような状態の場合に、取得した風データに応じた制御値とは異なる制御値を出力することにより、対象空間(S)において遠隔地の風の揺らぎを再現できる。
【0024】
第10の態様は、第1~9のいずれか1つの態様において、前記制御部(C)は、前記風データの風速値が所定の基準値以下の状態が所定時間以上続いたときに、前記風データに基づくデータを増幅させる。
【0025】
取得した風データの風速値が所定の基準値以下である場合には、遠隔地では非常に弱い風が吹いている。このような弱い風がある程度の時間続くと、ファン(30)から吹き出される風が弱いため、対象空間(S)に居る人が風を感じれなくなる。そこで、第10の態様では、そのような状態の場合に、制御部(C)が風データに基づくデータを増幅させることにより、対象空間(S)に居る人が継続的に遠隔地を再現した風を受けることができる。
【0026】
第11の態様は、第1~10のいずれか1つの態様において、前記風データとは異なる風に関する代替データを予め記憶する記憶部(18)を更に備え、前記制御部(C)は、前記風データの風速値が所定の基準値以下の状態が所定時間以上続いたときに、前記代替データに基づいて出力する前記制御値を決定する。
【0027】
取得した風データの風速値が所定の基準値以下である場合には、遠隔地では非常に弱い風が吹いている。このような弱い風がある程度の時間続くと、ファン(30)から吹き出される風が弱いため、対象空間(S)に居る人が風を感じれなくなる。そこで、第11の態様では、そのような状態の場合に、制御部(C)が代替データに基づいて出力する制御値を決定することにより、対象空間(S)に居る人が継続的に遠隔地を再現した風を受けることができる。
【0028】
第12の態様は、第1~11のいずれか1つの態様において、前記制御部(C)は、前記風データに基づくデータに応じて、自然環境を模した音を発生させるための信号を出力する。
【0029】
第12の態様では、制御部(C)によって、風データに基づくデータに応じた自然環境を模した音を発生させるための信号が出力されるので、音を発生する装置から自然環境を模した音が発せられる。
【0030】
第13の態様は、第1~第12のいずれか1つの態様の前記送風量調整装置を備える送風システムである。
【0031】
第13の態様では、対象空間(S)に居る人の快適性を損なうことなく、自然環境の風を再現できる送風システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、実施形態1の送風システムの概略の構成図である。
図2図2は、送風装置のブロック図である。
図3図3は、送風装置の本体部と仮想面とを示す概略の斜視図である。
図4図4は、送風ファンから吹き出される空気の風速を説明するグラフである。
図5図5は、受信部で受信した風速データの一例を示すグラフである。
図6図6は、第1運転モードを実行した場合の送風ファンの風速を示すグラフである。
図7図7は、第2運転モードを実行した場合の送風ファンの風速を示すグラフである。
図8図8は、第3運転モードを実行した場合の送風ファンの風速を示すグラフである。
図9図9は、第4運転モードを実行した場合の送風ファンの風速を示すグラフである。
図10図10は、運転モードの決定処理を示すフローチャートである。
図11図11は、第1運転モード及び第4運転モードの動作を示すフローチャートである。
図12図12は、第2運転モード及び第3運転モードの動作を示すフローチャートである。
図13図13は、第2運転モード及び第3運転モードの課題を説明するグラフである。
図14図14は、第1自動運転モードの切替動作を示すフローチャートである。
図15図15は、第2自動運転モードの切替動作を示すフローチャートである。
図16図16は、実施形態2の送風装置のブロック図である。
図17図17は、受信した風速値と音量との関係を示すグラフである。
図18図18は、実施形態2の変形例1の受信した風速値と音量との関係を示すグラフである。
図19図19は、実施形態2の変形例2の受信した風速値と音量との関係を示すグラフである。
図20図20は、実施形態3における送風システムのブロック図である。
図21図21は、実施形態3における図11に相当するフローチャートである。
図22図22は、実施形態3における図12に相当するフローチャートである。
図23図23は、実施形態3の変形例2における風速値と該風速値に対応する係数が記載されたテーブルである。
図24図24は、実施形態4における図20に相当するブロック図である。
図25図25は、実施形態4における図11に相当するフローチャートである。
図26図26は、実施形態4における図12に相当するフローチャートである。
図27図27は、実施形態5における図20に相当するブロック図である。
図28図28は、実施形態6における図20に相当するブロック図である。
図29図29は、実施形態6における図11に相当するフローチャートである。
図30図30は、実施形態6における図12に相当するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比または数を誇張または簡略化して表す場合がある。
【0034】
《実施形態1》
実施形態1の送風システム(1)について、図1図15を参照しながら説明する。
【0035】
(1)送風システム
送風システム(1)は、遠隔地の自然風を対象空間(S)に再現するシステムである。図1に示すように、送風システム(1)は、一つの送風装置(10)と、一つのセンサユニット(50)を備える。送風装置(10)とセンサユニット(50)とは、互いに遠く離れた場所に設置される。
【0036】
送風装置(10)は、例えば、建物内のオフィスやイベントスペース等の室内空間(対象空間(S))に設置される。送風装置(10)は、対象空間(S)に遠隔地の自然風を模した風を吹き出す。送風装置(10)の詳細については、後述する。
【0037】
センサユニット(50)は、遠隔地の屋外に設置される。センサユニット(50)は、センサ(51)と送信部(52)を有する。
【0038】
センサユニット(50)は、センサ(51)として、風速センサを一つ備える。この風速センサは、センサユニット(50)が設置された屋外の自然環境において吹いている風(自然風)の速度を計測する。センサユニット(50)は、センサ(51)として、風速センサに加えて他のセンサを備えてもよい。例えば、センサ(51)は、センサユニット(50)が設置された屋外の温度を計測する温度センサを含んでもよい。
【0039】
送信部(52)は、インターネット等の通信回線(45)を介して、送風装置(10)と通信可能に接続される。送信部(52)は、センサ(51)の検出値を含む遠隔地の風に関するデータ(以下、風データという)を、通信回線(45)を介して、所定時間毎に送風装置(10)に送信する。風データには、例えば、風速の時系列データ、所定期間における平均風速、所定期間における風速の変動パターン、所定期間における平均温度などのデータが含まれる。
【0040】
本実施形態のセンサユニット(50)では、風速センサによって5秒毎に風速を計測する。センサユニット(50)は、六つの風速値を取得すると、取得した六つの風速値(30秒間分の風速データ)を1セットの風速の時系列データ(以下、風速データという)として送信部(52)から送風装置(10)に送信する。送信部(52)は、1セットの風速データとともに、1セットの風速データの平均風速値を送信する。すなわち、本実施形態では、30秒毎に、風速データ及び平均風速値をまとめて風データとしてセンサユニット(50)から送風装置(10)に送信する。
【0041】
なお、1セットに含まれる風速値の数は単なる一例である。また、センサユニット(50)から送信される風データは、数十秒間の風に関するデータであればよく、30秒間のデータである必要はない。
【0042】
(2)送風装置
送風装置(10)は、センサユニット(50)が設置された遠隔地の風を対象空間(S)に再現する装置である。図2に示すように、送風装置(10)は、送風ファン(30)を含む本体部(15)と、受信部(17)と、記憶部(18)と、制御部(40)と、入力部(19)とを有する。本実施形態の送風装置(10)では、複数の運転モードを実行できる。
【0043】
(2-1)本体部
図3に示すように、本体部(15)は、前後方向の奥行きが比較的短い直方体状に形成される。本体部(15)は、左右方向の幅と上下方向の高さのそれぞれが、概ね1.6m程度である。なお、本体部(15)についての説明で用いる「上」「下」「左」「右」「前」「後」は、図3に示す方向(本体部(15)を正面から見たときの方向)を意味する。
【0044】
本体部(15)には、送風ファン(30)が16個設けられる。各送風ファン(30)は、対象空間(S)に空気を吹き出す。送風ファン(30)は、本開示のファン(30)に対応する。本体部(15)において、16個の送風ファン(30)は、左右方向と上下方向のそれぞれに4個ずつマトリックス状に配置される。
【0045】
各送風ファン(30)は、羽根車(31)とシュラウド(32)とを備えた軸流送風機である。羽根車(31)は、いわゆるプロペラファンである。各送風ファン(30)において、シュラウド(32)は、羽根車(31)の周囲を囲むように配置される。各送風ファン(30)には、羽根車(31)を駆動するファンモータ(図示省略)が設けられる。羽根車(31)は、ファンモータの出力軸に取り付けられる。
【0046】
本体部(15)において、16個の送風ファン(30)は、本体部(15)の前面に面している。本体部(15)の前面は、各送風ファン(30)から吹き出された空気が吹き出される吹出領域(16)を構成する。本実施形態の送風装置(10)において、吹出領域(16)は、左右方向の幅が1.6mで、上下方向の高さが1.6mの正方形状の平面である。
【0047】
(2-2)受信部
受信部(17)は、通信回線(45)を介して、センサユニット(50)の送信部(52)と通信可能に接続される。受信部(17)は、送信部(52)から送信された風データをリアルタイムに受信する。
【0048】
受信部(17)は、過去の第1所定期間における風データを受信する。本実施形態の第1所定期間は、30秒間である。受信部(17)は、データ受信時点直前の30秒間における風データ(1セットの風速データと平均風速値)を受信する。受信部(17)は、データ受信時点の直前に検出された風データではなく、少し前にセンサ(51)で検出された風データを受信してもよい。
【0049】
(2-3)記憶部
記憶部(18)は、受信部(17)で受信した風データを記憶する。記憶部(18)は、HDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)、SSD(Solid State Drive)の少なくとも1つを含む。
【0050】
(2-4)制御部
制御部(40)は、マイクロコンピュータ及びメモリディバイスを含む。メモリディバイスは、マイクロコンピュータを動作させるためのソフトウエアを格納する。
【0051】
制御部(40)は、機能的な要素として、運転モード決定部(41)と、データ加工部(42)と、ファン制御部(43)と、切替部(44)とを有する。言い換えると、制御部(40)は、メモリディバイスに記憶されたプログラムを実行することで、運転モード決定部(41)、データ加工部(42)、ファン制御部(43)、及び切替部(44)として機能する。制御部(40)に記憶されたプログラムは、少なくとも、後述する第1加工データに基づいて送風装置(10)の送風ファン(30)を動作させる処理をコンピュータとしての制御部(40)に実行させる。
【0052】
(2-4-1)運転モード決定部
運転モード決定部(41)は、送風装置(10)を操作するユーザの入力に応じて、複数の運転モードの中から実行する一つの運転モードを決定する。
【0053】
本実施形態の複数の運転モードには、第1運転モード、第2運転モード、第3運転モード、第4運転モード、第1自動運転モード、及び第2自動運転モードが含まれる。各運転モードの詳細及び運転モード決定部(41)が行う運転モードの決定処理については、後述する。
【0054】
(2-4-2)データ加工部
データ加工部(42)は、受信部(17)で受信した風データに含まれる風速データ(以下、元データという)を加工して第1加工データを生成する。第1加工データは、第1運転モードで使用される。データ加工部(42)は、第1運転モードの実行中に受信部(17)で風データを受信すると、随時第1加工データを生成する。
【0055】
本実施形態の第1加工データは、送風ファン(30)から吹き出される空気の平均風速値がユーザによって任意に設定された平均風速値になるように、元データを加工したデータである。本実施形態の平均風速は、30秒間(第1所定期間)における平均風速である。
【0056】
具体的には、第1加工データは、元データの各風速値に一つの所定の係数αを乗じることにより生成される。所定の係数αは、ユーザが任意に設定した平均風速値を、受信部(17)で受信した平均風速値で除することにより算出される。これにより、1セットの元データにおける平均風速がユーザの所望する平均風速に変換される。
【0057】
データ加工部(42)は、元データを加工して第2加工データを生成する。第2加工データは、第4運転モードで使用される。データ加工部(42)は、第4運転モードの実行中に受信部(17)で風データを受信すると、随時第2加工データを生成する。
【0058】
第2加工データは、送風ファン(30)から吹き出される空気の平均風速値がユーザによって任意に設定された平均風速値になるように、元データを加工したデータである。
【0059】
具体的には、本実施形態では、第2加工データは、元データの各風速値に一つの所定の係数βを乗じることにより生成される。所定の係数βは、ユーザが任意に設定した平均風速値を、受信部(17)で受信した平均風速値で除することにより算出される。これにより、1セットの元データにおける平均風速がユーザの所望する平均風速に変換される。
【0060】
(2-4-3)ファン制御部
ファン制御部(43)は、送風ファン(30)を制御する。詳細には、ファン制御部(43)は、風速データに基づいて、本体部(15)に設けられた各送風ファン(30)の羽根車(31)の回転速度(単位時間当たりの回転数)を制御するように構成される。
【0061】
ファン制御部(43)では、実行する運転モードによって、送風ファン(30)の制御に用いる風速データが異なる。具体的には、第1運転モードでは、第1加工データを用いる。第2運転モード及び第3運転モードでは、元データそのままの風速データ(以下、無加工データという)を用いる。第4運転モードでは、第2加工データを用いる。
【0062】
ここで、送風ファン(30)には、機械的な制約により、単位時間当たりの回転数の上限値(最大回転数)が決まっている。送風ファン(30)が最大回転数で動作したときに送風ファン(30)から吹き出される風速は、送風ファン(30)の最大風速となる。
【0063】
例えば、無加工データを用いて送風ファン(30)を動作させる場合、図4(A)に示すように、ファン制御部(43)は、無加工データにおいて送風ファン(30)の回転数の上限値を超える領域では、送風ファン(30)を最大回転数で動作させる。そのため、無加工データにおいて送風ファン(30)の回転数の上限値を超える領域では、一定の強い風が送風ファン(30)から吹き出される。
【0064】
また、本実施形態の送風装置(10)では、ユーザが送風ファン(30)の上限風速を任意に設定できる。この場合には、例えば、図4(B)に示すように、ファン制御部(43)は、無加工データにおいてユーザが設定した任意の上限風速を超える領域では、送風ファン(30)から吹き出される風がユーザの設定した上限風速になるように、送風ファン(30)を動作させる。そのため、無加工データにおいて送風ファン(30)の上限風速を超える領域では、一定の比較的強い風が送風ファン(30)から吹き出される。なお、ユーザが設定する任意の上限風速は、送風ファン(30)の最大風速よりも小さい。
【0065】
(2-4-4)切替部
切替部(44)は、第1自動運転モード又は第2自動運転モードの実行中に、所定の条件を満たすと自動で運転モードを切り替える。切替部(44)は、所定の条件が成立するか否かの判定を行う。これにより、切替部(44)は、自動で運転モードを切り替える。切替部(44)が行う切替動作については後述する。
【0066】
(2―5)入力部
入力部(19)は、ユーザが、送風ファン(30)から吹き出される空気の平均風速及び上限風速、並びに自動切り替えのオン又はオフを入力するものである。また、入力部(19)は、ユーザが、制御部(40)が実行する運転モードを直接入力するためのものである。
【0067】
送風ファン(30)から吹き出される空気の平均風速又は上限風速は、具体的な風速値が入力されてもよく、具体的な風速値以外が入力されてもよい。具体的な風速値以外が入力される場合では、上限風速又は平均風速について、風速の度合い(例えば、「強め」「中程度」「弱め」の3段階)を選択してもよい。この場合、各風速の度合いにおける平均風速値及び上限風速値は、予め設定される。
【0068】
入力部(19)に運転モードを入力する場合には、ユーザは、複数の運転モードの中から実行する運転モードを手動で一つ選択する。この場合、ユーザによって運転モードが選択されると、現在実行中の運転モードが終了し、ユーザが選択した運転モードが実行される。このように送風装置(10)が入力部(19)を有することにより、ユーザは実行する運転モードを自由に選択することができる。
【0069】
入力部(19)は、本体部(15)に設けられた操作ボタンや、送風装置(10)に設けられたリモートコントローラの操作ボタン、送風装置(10)と通信可能な通信端末(例えば、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータなど)のディスプレイ上に表示される操作ボタンなどである。
【0070】
(3)送風装置の動作
本実施形態の送風装置(10)の本体部(15)において、各送風ファン(30)の羽根車(31)は、互いに同じ回転速度で回転する。したがって、本体部(15)にマトリックス状に配置された16個の送風ファン(30)は、それぞれの吹出し風速が互いに概ね一致する。本体部(15)の前面である吹出領域(16)からは、16個の送風ファン(30)が吹き出した空気が、前方へ向かって吹き出される。
【0071】
各送風ファン(30)から吹き出される吹出領域(16)を通過した空気は、互いに拡散し、それぞれの風速が平均化される。その結果、図3に示す仮想面(V)の全体において、風速が概ね均一化される。ここで、仮想面(V)は、図3に長方形A,B,C,Dで示される仮想の平面である。この仮想面(V)は、吹出領域(16)と向かい合う長方形の仮想面である。仮想面(V)は、吹出領域(16)と平行な鉛直面である。仮想面(V)の長辺は、上下方向に沿っている。仮想面(V)の短辺は、左右方向に沿っている。
【0072】
(4)運転動作
(4-1)各運転モードの概要
第1運転モード、第2運転モード、第3運転モード、第4運転モード、第1自動運転モード、及び第2運転モードについて説明する。
【0073】
(4-1-1)第1運転モード
第1運転モードでは、第1加工データに基づいて送風ファン(30)が制御される。本実施形態の第1運転モードでは、送風ファン(30)から吹き出される空気の風速が、ユーザによって任意に設定された平均風速になるように加工された第1加工データに基づいて、送風ファン(30)が制御される。なお、第1運転モードでは、送風ファン(30)から吹き出される空気の上限風速はユーザによって設定されない。
【0074】
ここで、図5に、元データの一例を示す。例えば、図6に示すように、ユーザによって任意に設定された平均風速が図5の元データの平均風速よりも小さい場合、第1運転モードが実行されると、送風ファン(30)から吹き出される空気の風速は、元データをそのまま再現した場合に比べて全体的に弱くなる。一方で、送風ファン(30)から吹き出される空気の揺らぎは、元データの風と同じ揺らぎになる。ここで、揺らぎとは、風速の変動比率のことである。vを現在の風速(m/s)とし、vt―1を1秒前の風速(m/s)としたとき、変動比率は、v/vt―1で表される。
【0075】
このように第1運転モードを実行すると、送風ファン(30)から吹き出される空気の強さを全体的に弱めつつ、遠隔地の風の揺らぎを再現できる。これにより、例えば、遠隔地で強風や突風が検出されても、送風装置(10)において非常に強い風が再現されないので、送風装置(10)の風を受ける人の快適性が損なわれない。
【0076】
なお、ユーザによって任意に設定された平均風速値が図5の元データの平均風速値よりも大きい場合には、第1運転モードが実行されると、送風ファン(30)から吹き出される空気の風速は、元データをそのまま再現した場合に比べて全体的に強くなる。これにより、例えば、遠隔地で無風に近い微風が検出された場合には、ある程度の強さのある風が送風装置(10)から吹き出される。
【0077】
このように、ユーザが任意に設定する平均風速に応じて、遠隔地で吹く風が強い場合には送風ファン(30)から吹き出される空気の風速を弱め、遠隔地で吹く風が弱い場合には送風ファン(30)から吹き出される空気の風速を強めることができる。
【0078】
したがって、第1運転モードを実行することにより、対象空間(S)に居る人が望む強さの風に調節された空気が送風装置(10)から吹き出されるので、快適性を損なうことなく、遠隔地の風を再現できる。また、ユーザが任意に平均風速を設定できるので、ユーザの状況に応じて、ユーザが受ける風の強さを変更できる。これにより、ユーザの使用状況に合わせて、最適な強さの風を再現できる。
【0079】
(4-1-2)第2運転モード
第2運転モードでは、元データそのままの無加工データに基づいて送風ファン(30)が制御される。なお、第2運転モードでは、送風ファン(30)から吹き出される空気の上限風速がユーザによって設定されない。
【0080】
図7に示すように、第2運転モードでは、無加工データに基づいて送風ファン(30)が制御されるので、遠隔地の風の強さ及び風の揺らぎがそのまま対象空間(S)に再現される。
【0081】
(4-1-3)第3運転モード
第3運転モードでは、送風ファン(30)から吹き出される空気の上限風速がユーザによって任意に設定されるとともに、元データそのままの無加工データに基づいて送風ファン(30)が制御される。
【0082】
図8に示すように、第3運転モードでは、無加工データのうちユーザが設定した上限風速以下の領域では、遠隔地の風の強さ及び風の揺らぎがそのまま対象空間(S)に再現される。一方で、無加工データのうちユーザが設定した上限風速を超える領域では、ユーザが設定した上限風速の空気が送風ファン(30)から吹き出される。これにより、ユーザが設定した上限風速を超える強い風は再現されないので、対象空間(S)に居る人が不快に感じにくくなる。その結果、快適性を損なうことなく遠隔地の風を再現できる。
【0083】
(4-1-4)第4運転モード
第4運転モードでは、送風ファン(30)から吹き出される空気の上限風速がユーザによって任意に設定されるとともに、第2加工データに基づいて送風ファン(30)が制御される。本実施形態の第4運転モードでは、送風ファン(30)から吹き出される空気の風速が、ユーザによって任意に設定された平均風速になるように加工された第2加工データに基づいて、送風ファン(30)が制御される。
【0084】
図9では、ユーザによって任意に設定された平均風速が図5に示す元データの平均風速値よりも小さい場合、第4運転モードを実行したときの送風ファン(30)の風速を示す。図9に示すように、第2加工データのうちユーザが設定した上限風速以下の領域では、送風ファン(30)から吹き出される空気の風速は、元データをそのまま再現した場合に比べて全体的に弱くなる。一方で、送風ファン(30)から吹き出される空気の揺らぎは、元データと同じになる。そして、第2加工データのうちユーザが設定した上限風速を超える領域では、ユーザが設定した上限風速の空気が送風ファン(30)から吹き出される。
【0085】
このように第4運転モードを実行すると、ユーザが設定した上限風速を超える強い風は再現されない一方、送風ファン(30)から吹き出される空気の強さを全体的に弱めつつ、遠隔地の風の揺らぎを再現できる。これにより、例えば、遠隔地で強風や突風が検出された場合に、非常に強い風が送風装置(10)から吹き出されない。
【0086】
なお、ユーザによって任意に設定された平均風速値が図5の元データの平均風速値よりも大きい場合には、第4運転モードが実行されると、送風ファン(30)から吹き出される空気の風速は、元データをそのまま再現した場合に比べて全体的に強くなる。これにより、例えば、遠隔地で無風に近い微風が検出された場合でも、ある程度の強さのある風が送風装置(10)から吹き出される。
【0087】
このように、ユーザが設定する平均風速に応じて、遠隔地で吹く風が強い場合には送風ファン(30)から吹き出される空気の風速を弱め、遠隔地で吹く風が弱い場合には送風ファン(30)から吹き出される空気の風速を強めることができる。
【0088】
したがって、第4運転モードを実行することにより、対象空間(S)に居る人が望む強さの風に調節された空気が送風装置(10)から吹き出される。加えて、送風装置(10)から吹き出される空気の上限風速が制限される。その結果、快適性を損なうことなく、遠隔地の風を再現できる。
【0089】
(4-1-5)第1自動運転モード、第2自動運転モード
第1自動運転モードでは、所定の条件を満たすと、上述の第1運転モードと第2運転モードとが自動で切り替わる。第2自動運転モードでは、所定の条件を満たすと、上述の第3運転モードと第4運転モードとが自動で切り替わる。
【0090】
(4-2)運転モードの決定処理
次に、運転モードの決定処理について図10を参照しながら説明する。制御部(40)の運転モード決定部(41)は、複数の運転モードの中から、実行する一つの運転モードを決定する決定処理を行う。送風装置(10)が運転を開始すると、ユーザは入力部(19)に所定の項目を入力する。運転モード決定部(41)は、このユーザの入力に応じて、実行する運転モードを決定する。
【0091】
具体的には、ユーザの操作に基づいて入力部(19)に入力が開始されると、制御部(40)は、ステップST11の動作を行う。ステップST11では、制御部(40)は、入力部(19)に上限風速が入力されたか否かを判定する。入力部(19)に上限風速が入力されなかったと判定された場合(ステップST11のNO)、制御部(40)は、ステップST12を実行する。入力部(19)に上限風速が入力されたと判定された場合(ステップST11のYES)、制御部(40)は、入力された上限風速を記憶部(18)に記憶し、ステップST13が実行される。
【0092】
ステップST12では、制御部(40)は、入力部(19)に平均風速が入力されたか否かを判定する。入力部(19)に平均風速が入力されなかったと判定された場合(ステップST12のNO)、制御部(40)は、実行する運転モードを第2運転モードに決定する。
【0093】
入力部(19)に平均風速が入力されたと判定された場合(ステップST12のYES)、制御部(40)は、入力された平均風速を記憶部(18)に記憶し、ステップST14を実行する。ステップST14では、入力部(19)に自動切り替えのオン又はオフのいずれかが入力されたかを判定する。
【0094】
入力部(19)に自動切り替えのオフが入力された場合(ステップST14のNO)、制御部(40)は、実行する運転モードを第1運転モードに決定する。入力部(19)に自動切り替えのオンが入力された場合(ステップST14のYES)、制御部(40)は、実行する運転モードを第1自動運転モードに決定する。
【0095】
ステップST13では、制御部(40)は、入力部(19)に平均風速が入力されたか否かを判定する。入力部(19)に平均風速が入力されなかったと判定された場合(ステップST13のNO)、制御部(40)は、実行する運転モードを第3運転モードに決定する。
【0096】
入力部(19)に平均風速が入力されたと判定された場合(ステップST13のYES)、制御部(40)は、入力された平均風速を記憶部(18)に記憶し、ステップST15を実行する。ステップST15では、入力部(19)に自動切り替えのオン又はオフのいずれかが入力されたかを判定する。
【0097】
入力部(19)に自動切り替えのオフが入力された場合(ステップST15のNO)、制御部(40)は、実行する運転モードを第4運転モードに決定する。入力部(19)に自動切り替えのオンが入力された場合(ステップST15のYES)、制御部(40)は、実行する運転モードを第2自動運転モードに決定する。
【0098】
(4-3)第1~第4運転モードの動作
次に、第1~第4運転モードの動作について、図11図15を参照しながら説明する。
【0099】
(4-3-1)第1運転モード、第4運転モード
第1運転モード及び第4運転モードでは、制御部(40)は、同じ動作処理を行う。以下では、第1運転モードを例にして説明する。
【0100】
図11に示すように、運転モードの決定処理において、実行する運転モードが第1運転モードに決定されると、制御部(40)は、ステップST21を実行する。ステップST21では、受信部(17)で受信した風データを記憶部(18)に記憶させる。
【0101】
ステップST22では、制御部(40)は、ステップST21で記憶された風データに含まれる風速データに基づいて第1加工データを生成する。これにより、送風ファン(30)から吹き出される空気の平均風速が、ユーザによって任意に設定された平均風速になるように加工された風速データが生成される。
【0102】
ステップST23では、制御部(40)は、ステップST22で生成された第1加工データに基づいて送風ファン(30)を制御する。これにより、遠隔地の風が、ユーザによって任意に設定された平均風速に調節されて再現される。そのため、対象空間(S)に居る人の快適性を損なうことなく、遠隔地の風を再現できる。なお、第1運転モードでは、送風ファン(30)の上限風速は、送風ファン(30)の最大風速である。そのため、第1運転モードにおいて、第1加工データのうち送風ファン(30)の最大風速を超える領域では、送風ファン(30)の最大風速の空気が送風ファン(30)から吹き出される。
【0103】
制御部(40)は、ステップST23が終了すると、第1運転モードを停止する。制御部(40)は、ステップST23が終了した後、再びステップST21を実行してもよい。この場合、制御部(40)は、入力部(19)に送風装置(10)の運転停止又は別の運転モードへの変更が入力されるまで、第1運転モードの動作を実行する。
【0104】
上述のように、第1運転モードにおけるステップST22では第1加工データが生成されるが、第4運転モードにおけるステップST22では、第2加工データが生成される。この場合、送風ファン(30)から吹き出される空気の平均風速が、ユーザによって任意に設定された平均風速になるように加工された風速データが生成される。
【0105】
また、第1運転モードにおけるステップST23では、送風ファン(30)の上限風速は、送風ファン(30)の最大風速であったが、第4運転モードにおけるステップST23では、送風ファン(30)の上限風速は、ユーザが任意に設定した上限風速である。そのため、第4運転モードにおいて、第2加工データのうち設定された上限風速を超える領域では、設定された上限風速の空気が送風ファン(30)から吹き出される。
【0106】
(4-3-2)第2運転モード、第3運転モード
第2運転モード及び第3運転モードでは、制御部(40)は、同じ動作処理を行う。以下では、第2運転モードを例にして説明する。
【0107】
図12に示すように、運転モードの決定処理において、実行する運転モードが第2運転モードに決定されると、制御部(40)は、ステップST31を実行する。ステップST31では、受信部(17)で受信した風データを記憶部(18)に記憶させる。
【0108】
ステップST32では、制御部(40)は、ステップST31で記憶された風データに含まれる風速データそのままのデータである無加工データに基づいて、送風ファン(30)を制御する。これにより、遠隔地の風がそのまま対象空間(S)に再現される。なお、第2運転モードでは、送風ファン(30)の上限風速は、送風ファン(30)の最大風速である。そのため、第2運転モードにおいて、無加工データのうち送風ファン(30)の最大風速を超える領域では、最大風速の空気が送風ファン(30)から吹き出される。
【0109】
制御部(40)は、ステップST32が終了すると、第2運転モードを停止する。制御部(40)は、ステップST32が終了した後、再びステップST31を実行してもよい。この場合、制御部(40)は、入力部(19)に送風装置(10)の運転停止又は別の運転モードへの変更が入力されるまで、第2運転モードの動作を実行する。
【0110】
上述のように、第2運転モードにおけるステップST32では、送風ファン(30)の上限風速は、送風ファン(30)の最大風速であったが、第3運転モードにおけるステップST32では、送風ファン(30)の上限風速は、ユーザが任意に設定した上限風速である。そのため、第3運転モードにおいて、無加工データのうち設定された上限風速を超える領域では、上限風速の空気が送風ファン(30)から吹き出される。
【0111】
(4-4)第1自動運転モード、第2自動運転モードの切替動作
(4-4-1)第2運転モード及び第3運転モードの課題
図13(A)に示すように、送風ファン(30)の最大風速を超えるような非常に大きな風速値であり、且つ、風速値の大きい状態が長時間続くような風速データを受信部(17)で受信した場合、第2運転モードでは、図13(B)に示すように、無加工データのうち送風ファン(30)の最大風速を超える領域では、最大風速で且つ揺らぎのない一定の空気が送風ファン(30)から吹き出される。
【0112】
また、第3運転モードにおいても、図13(A)に示すような風速データを受信した場合、図13(C)に示すように、無加工データのうちユーザが任意に設定した上限風速を超える領域では、上限風速で且つ揺らぎのない一定の空気が送風ファン(30)から吹き出される。
【0113】
(4-4-2)第1自動運転モードの切替動作
上述の第2運転モードの課題に対して、第1自動運転モードを実行することにより、継続して揺らぎのある空気を送風ファン(30)から吹き出させることができる。第1自動運転モードでは、所定の条件を満たすと、上述の第1運転モードと第2運転モードとが自動で切り替わる。この第1自動運転モードの切替動作について説明する。以下の説明では、第1自動運転モードにおいて、送風装置(10)は第2運転モードを行っているとする。
【0114】
図14に示すように、第1自動運転モードでは、第2運転モードの実行中(ステップST41)に、制御部(40)が、ステップST42を実行する。ステップST42では、第1条件が成立するか否かを判定する。第1条件とは、受信部(17)で受信した風速データの風速値が送風ファン(30)の最大風速を超えた状態が所定時間以上続くことである。
【0115】
制御部(40)は、第1条件が成立しないと判定した場合(ステップST42のNO)、ステップST41を実行する。制御部(40)は、第1条件が成立すると判定した場合(ステップST42のNO)、ステップST43を実行する。ステップST43では、制御部(40)は、第1運転モードを実行する。
【0116】
このように、第1条件が成立すると、送風装置(10)の運転が第2運転モードから第1運転モードに自動で切り替わる。これにより、図13(A)に示すような元データを受信した場合、図13(D)に示すように、送風ファン(30)の最大風速を超える領域を減少させられるので、遠隔地の風の揺らぎを継続して再現できる。
【0117】
第1運転モードの実行中(ステップST43)に、制御部(40)は、ステップST44を実行する。ステップST44では、第2条件が成立するか否かを判定する。第2条件とは、受信部(17)で受信した風速データの風速値が送風ファン(30)の最大風速を超えた状態が所定時間未満続くことである。
【0118】
制御部(40)は、第2条件が成立しないと判定した場合(ステップST44のNO)、ステップST43を実行する。制御部(40)は、第2条件が成立すると判定した場合(ステップST44のYES)、第1自動運転モードを終了し、その後再びステップST41を実行する。
【0119】
このように、第2条件が成立すると、送風装置(10)の運転が第1運転モードから第2運転モードに自動で切り替わる。これは、第2条件が成立する場合、第2運転モードを実行しても上述のような課題が生じないからである。これにより、可能な限り遠隔地の風をそのまま再現しつつ、遠隔地の風をそのまま再現できない場合でも遠隔地の風の揺らぎを継続的に再現できる。
【0120】
第1自動運転モードにおいても、制御部(40)は、入力部(19)に送風装置(10)の運転停止又は別の運転モードへの変更が入力されるまで、第1自動運転モードの動作を実行する。
【0121】
(4-4-3)第2自動運転モードの切替動作
上述の第3運転モードの課題に対して、第2自動運転モードを実行することにより、継続して揺らぎのある空気を送風ファン(30)から吹き出させることができる。第2自動運転モードでは、所定の条件を満たすと、上述の第3運転モードと第4運転モードとが自動で切り替わる。この第2自動運転モードの切替動作について説明する。以下の説明では、第2自動運転モードにおいて、送風装置(10)は第3運転モードを行っているとする。
【0122】
図15に示すように、第2自動運転モードでは、第3運転モードの実行中(ステップST51)に、制御部(40)が、ステップST52を実行する。ステップST52では、第3条件が成立するか否かを判定する。第3条件とは、受信部(17)で受信した風速データの風速値が、ユーザが設定した上限風速を超えた状態が所定時間以上続くことである。
【0123】
制御部(40)は、第3条件が成立しないと判定した場合(ステップST52のNO)、ステップST51を実行する。制御部(40)は、第3条件が成立すると判定した場合(ステップST52のNO)、ステップST53を実行する。ステップST53では、制御部(40)は、第4運転モードを実行する。
【0124】
このように、第3条件が成立すると、送風装置(10)の運転が第3運転モードから第4運転モードに自動で切り替わる。これにより、図13(A)に示すような元データを受信した場合、図13(E)に示すように、ユーザが任意に設定した上限風速を超える領域を減少させられるので、遠隔地の風の揺らぎを継続して再現できる。
【0125】
第4運転モードの実行中(ステップST53)に、制御部(40)は、ステップST54を実行する。ステップST54では、第4条件が成立するか否かを判定する。第4条件とは、受信部(17)で受信した風速データの風速値がユーザの設定した上限風速を超えた状態が所定時間未満続くことである。
【0126】
制御部(40)は、第4条件が成立しないと判定した場合(ステップST54のNO)、ステップST53を実行する。制御部(40)は、第4条件が成立すると判定した場合(ステップST54のYES)、第2自動運転モードを終了し、その後再びステップST51を実行する。
【0127】
このように、第4条件が成立すると、送風装置(10)の運転が第4運転モードから第3運転モードに自動で切り替わる。これは、第4条件が成立する場合、第3運転モードを実行しても上述のような課題が生じないからである。これにより、可能な限り遠隔地の風をそのまま再現しつつ、遠隔地の風をそのまま再現できない場合でも遠隔地の風の揺らぎを継続的に再現できる。
【0128】
第2自動運転モードにおいても、制御部(40)は、入力部(19)に送風装置(10)の運転停止又は別の運転モードへの変更が入力されるまで、第2自動運転モードの動作を実行する。
【0129】
(5)特徴
(5-1)
本実施形態の送風装置(10)は、遠隔地の風に関する風データを、通信回線(45)を介して受信する受信部(17)と、対象空間(S)に空気を吹き出すファン(30)と、送風ファン(30)を制御する制御部(40)とを備える。制御部(40)は、受信部(17)で受信した風データを加工した第1加工データに基づいて送風ファン(30)を動作させる第1運転モードを行う。
【0130】
本実施形態の第1運転モードでは、受信部(17)で受信した風データを加工した第1加工データを用いてファン(30)を動作させるので、調節された空気が送風ファン(30)から吹き出される。これにより、対象空間(S)に居る人の快適性を損なうことなく、自然環境の風を再現できる。
【0131】
(5-2)
本実施形態の送風装置(10)において、第1加工データは、送風ファン(30)から吹き出される空気の平均風速がユーザによって任意に設定された平均風速になるように、風データを加工したデータである。
【0132】
これにより、第1運転モードにおいて、ユーザが自由に設定した強さであり且つ遠隔地と同じ揺らぎの風が対象空間(S)に再現される。
【0133】
(5-3)
本実施形態の送風装置(10)において、第1加工データは、風速値の時系列データに所定の係数を乗じることにより生成される。これにより、送風ファン(30)から吹き出される空気の強さを調節しつつ、遠隔地の風の揺らぎを再現できる。
【0134】
(5-4)
本実施形態の送風装置(10)において、受信部(17)は、第1所定期間における風データを受信する。そして、第1加工データを生成する際の平均風速は、第1所定期間における風速の平均である。
【0135】
(5-5)
本実施形態の送風装置(10)において、制御部(40)は、複数の運転モードの中から1つの運転モードを実行する。複数の運転モードは、受信部(17)で受信した風データをそのまま用いて送風ファン(30)を動作させる第2運転モードを含む。
【0136】
そのため、制御部(40)が第2運転モードを実行することにより、対象空間(S)に遠隔地の風をそのまま再現できる。これにより、対象空間(S)に居る人にとって送風装置(10)から吹き出される空気を調節する必要のない状況では、遠隔地の風をそのまま体感できる。
【0137】
(5-6)
本実施形態の送風装置(10)において、複数の運転モードは、第1運転モードと第2運転モードとが自動で切り替わる第1自動運転モードを含む。これにより、制御部(40)が第1自動運転モードを実行することによって、第1運転モードと第2運転モードを自動で切り替えることができる。
【0138】
(5-7)
本実施形態の送風装置(10)において、第1自動運転モードでは、第2運転モードの実行中に、受信した風速値が送風ファン(30)の最大風速を超えた状態が所定時間以上続いた場合に、第1運転モードに切り替わり、第1運転モードの実行中に、受信した風速値が送風ファン(30)の最大風速を超えた状態が所定時間未満続いた場合に、第2運転モードに切り替わる。
【0139】
第2運転モードの実行中に、受信した風速値が送風ファン(30)の最大風速を超えた状態がある程度の時間続くと、送風ファン(30)から吹き出される空気の風速が一定になり、遠隔地の風の揺らぎが再現されない。そこで、本実施形態では、このような場合に第1運転モードに切り替わることにより、対象空間(S)において遠隔地の風の揺らぎを再現できる。
【0140】
一方で、第1運転モードの実行中に、受信した風速値が送風ファン(30)の最大風速を超えた状態が所定時間未満続いた場合、第2運転モードに切り替えても遠隔地の風の揺らぎをある程度再現できる。そのため、この場合には第2運転モードに切り替える。
【0141】
このように本実施形態では、制御部(40)が第1自動運転モードを実行することによって、遠隔地の風の揺らぎを継続的に再現できる。
【0142】
(5-8)
本実施形態の送風装置(10)において、複数の運転モードは、風データをそのまま用いて送風ファン(30)を動作させるとともに、送風ファン(30)から吹き出される空気の上限風速がユーザによって任意に設定される第3運転モードを含む。
【0143】
対象空間(S)に居る人がファン(30)から吹き出される風に当たるとき、強い風を嫌う場合がある。本実施形態では、第3運転モードにおいて、ファン(30)から吹き出される空気の上限風速が任意に設定されるので、人が強い風を嫌うような場合においても、快適感を損なうことなく自然環境の風を再現できる。
【0144】
(5-9)
本実施形態の送風装置(10)において、複数の運転モードは、風データを加工した第2加工データを用いて送風ファン(30)を動作させるとともに、送風ファン(30)から吹き出される空気の上限風速がユーザによって任意に設定される第4運転モードを更に含む。
【0145】
本実施形態では、第4運転モードにおいて、送風ファン(30)から吹き出される空気の上限風速が任意に設定されるので、対象空間(S)に居る人が強い風を嫌うような場合においても、快適性を損ないにくい。加えて、第4運転モードでは、第2加工データを用いてファン(30)を動作させるので、送風ファン(30)からは調節された空気が吹き出される。その結果、対象空間(S)に居る人の快適性を損なうことなく、自然環境の風を再現できる。
【0146】
(5-10)
本実施形態の送風装置(10)において、第2加工データは、送風ファン(30)から吹き出される空気の平均風速がユーザによって任意に設定された平均風速値になるように、風データを加工したデータである。これにより、第4運転モードにおいて、ユーザが自由に設定した強さ且つ遠隔地と同じ揺らぎの風が対象空間(S)に再現される。
【0147】
(5-11)
本実施形態の送風装置(10)において、第2加工データは、風速値の時系列データに所定の係数を乗じることにより生成される。これにより、送風ファン(30)から吹き出される空気の強さを調節しつつ、遠隔地の風の揺らぎを再現できる。
【0148】
(5-12)
本実施形態の送風装置(10)において、受信部(17)は、第1所定期間における風データを受信する。第2加工データを生成する際の平均風速は、第1所定期間における風速の平均である。
【0149】
(5-13)
本実施形態の送風装置(10)において、複数の運転モードは、第3運転モードと第4運転モードとが自動で切り替わる第2自動運転モードを含む。これにより、制御部(40)が第2自動運転モードを実行することにより、第3運転モードと第4運転モードを自動で切り替えることができる。
【0150】
(5-14)
本実施形態の送風装置(10)において、第2自動運転モードでは、第3運転モードの実行中に、受信した風速値が任意に設定した上限風速を超えた状態が所定時間以上続いた場合に、前記第4運転モードに切り替わり、第4運転モードの実行中に、受信した風速値が任意に設定した上限風速を超えた状態が所定時間未満続いた場合に、第3運転モードに切り替わる。
【0151】
第3運転モードの実行中に、受信した風速値が任意に設定した上限風速を超えた状態がある程度の時間続くと、送風ファン(30)から吹き出される空気の風速が一定になり、遠隔地の風の揺らぎが再現されない。そこで、本実施形態では、このような場合に第4運転モードに切り替わることにより、対象空間(S)において遠隔地の風の揺らぎを再現できる。
【0152】
一方で、第4運転モードの実行中に、受信した風速値が任意に設定した上限風速を超えた状態が所定時間未満続いた場合、第3運転モードに切り替えても遠隔地の風の揺らぎをある程度再現できる。そのため、この場合には第3運転モードに切り替える。
【0153】
このように本実施形態では、制御部(40)が第2自動運転モードを実行することで、遠隔地の風の揺らぎを継続的に再現できる。
【0154】
(5-15)
本実施形態の送風装置(10)は、複数の運転モードの中から実行する1つの運転モードを手動で選択するための入力部(19)を更に備える。これにより、ユーザは実行する運転モードを自由に選択することができる。
【0155】
(5-16)
本実施形態の送風装置(10)において、受信部(17)は、第1所定期間における風データを受信する。制御部(40)は、第1所定期間における風データに基づいて送風ファン(30)を制御する。
【0156】
(5-17)
本実施形態の送風システム(1)は、送風装置(10)と、遠隔地に設置されるセンサユニット(50)とを備える。センサユニット(50)は、風データを検出するセンサ(51)と、センサ(51)で検出した前記風データを送信する送信部(52)とを有する。これにより、対象空間(S)に居る人の快適性を損なうことなく、自然環境の風を再現できる送風システム(1)を提供できる。
【0157】
(5-18)
本実施形態のプログラムは、遠隔地の風を対象空間(S)に再現する送風装置(10)のファン(30)を制御する処理をコンピュータに実行させるブログラムである。本実施形態のプログラムは、受信部(17)で受信した遠隔地の風に関する風データを加工した第1加工データに基づいて送風ファン(30)を動作させる第1運転モードを行う処理をコンピュータに実行させる。これにより、対象空間(S)に居る人の快適性を損なうことなく、自然環境の風を再現できるプログラムを提供できる。
【0158】
(6)変形例
(6-1)変形例1
上記実施形態の送風装置(10)において、送風ファン(30)の単位時間当たりの回転数の上限値を、送風ファン(30)の仕様上の上限値ではなく、例えば製造時に予め設定した上限値としてもよい。製造時に予め設定した回転数の上限値は、仕様上の回転数の上限値よりも小さい。
【0159】
この場合、制御部(40)におけるファン制御部(43)は、第1運転モードの実行中において、第1加工データのうち予め設定した送風ファン(30)の回転数の上限値を超える領域では、予め設定した回転数の上限値で送風ファン(30)を動作させる。ファン制御部(43)は、第2運転モードの実行中において、無加工データのうち予め設定した送風ファン(30)の回転数の上限値を超える領域では、予め設定した回転数の上限値で送風ファン(30)を動作させる。
【0160】
また、この場合、制御部(40)が第1自動運転モードを行う場合の第1条件は、受信部(17)で受信した風速データの風速値が、予め設定した送風ファン(30)の回転数の上限値を超えた状態が所定時間以上続くことである。そして、第2条件は、受信部(17)で受信した風速データの風速値が予め設定した送風ファン(30)の回転数の上限値を超えた状態が所定時間未満続くことである。
【0161】
このように、送風ファン(30)における回転数の上限値が予め設定されていることにより、遠隔地の極めて強い風が再現されない。これにより、対象空間(S)に居る人の快適性を損なうことなく、自然環境の風を再現できる。
【0162】
(6-2)変形例2
上記実施形態の送風装置(10)では、制御部(40)は、第1運転モードのみを行ってもよい。また、上記実施形態の送風装置(10)では、複数の運転モードとして、第1運転モードと第2運転モードのみを有してもよく、第1~第3運転モードのみを有してもよく、第1運転モードと第3運転モードのみを有してもよく、第1運転モードと第3運転モードと第4運転モードのみを有してもよい。
【0163】
《実施形態2》
実施形態2について説明する。本実施形態の送風装置(10)は、実施形態1の送風装置(10)において、音発生部(20)を追加したものである。ここでは、本実施形態の送風装置(10)について、実施形態1と異なる点を説明する。
【0164】
(1)音発生部
図16に示すように、本実施形態の送風装置(10)は、音発生部(20)を更に備える。音発生部(20)は、例えばスピーカである。音発生部(20)は、自然環境を模した音を発する。自然環境を模した音とは、例えば、風が吹く音、草木が揺れる音、枯葉が舞う音、川のせせらぎ音、小鳥の声などである。本実施形態の音発生部(20)が発する音は、風が吹く音を含む。
【0165】
(2)制御部
制御部(40)は、音発生部(20)から発生する音量を調節する。本実施形態では、制御部(40)は、受信部(17)で受信した風データに含まれる風速データに基づいて、風が吹く音の音量を変更する。
【0166】
図17には、受信した風速値を横軸とし、音量を縦軸としたときの関係を示す。図17に示すように、本実施形態では、制御部(40)は、受信した風速データの風速値が上昇すると、風が吹く音の音量を上げる。制御部(40)は、受信した風速データの風速値が低下すると、風が吹く音の音量を下げる。
【0167】
(3)特徴
(3-1)
本実施形態の送風装置(10)は、自然環境を模した音を発する音発生部(20)を備える。これにより、対象空間(S)に居る人が自然の中にいるような感覚(自然感)を感じることができる。
【0168】
(3-2)
本実施形態の音発生部(20)が発する自然環境を模した音には、風が吹く音が含まれる。そして、制御部(40)が、風に関するデータに基づいて風が吹く音の音量を変更する。これにより、再現された遠隔地における風の強弱を聴覚によって感じることができる。
【0169】
(4)変形例
(4-1)変形例1
上記実施形態では、制御部(40)が、受信部(17)で受信した風速データの風速値が、実行している運転モードにおける送風ファン(30)から吹き出される風速の上限値を超えた場合に、受信した風速値と実行している運転モードにおける風速の上限値との差に応じて、風が吹く音の音量を変更してもよい。
【0170】
図18に示すように、実行している運転モードにおける上限風速を超える風速値を受信すると、受信した風速値と上限風速との差が大きくなるに従って、音発生部(20)から発せられる風が吹く音が大きくなる。上限風速は、第1運転モード及び第2運転モードでは送風ファン(30)の回転数の上限値であり、第3運転モード及び第4運転モードではユーザが任意に設定した上限風速値である。
【0171】
受信した風速値が実行している運転モードにおける風速の上限値を超えた場合には、送風ファン(30)から吹き出される空気が上限風速で吹き出され続けて風速が変化しないため、遠隔地の風の揺らぎが再現されない。これに対し、本変形例では、受信した風速値と実行している運転モードにおける風速の上限値との差に応じて、風が吹く音の音量が変更されるので、遠隔地の風の強さを聴覚によって感じることができる。
【0172】
なお、本変形例において、実行している運転モードにおける上限風速値以下の風速値を受信した場合には、風が吹く音を一定の音量で発してもよく、音量を変化させてもよい。
【0173】
(4-2)変形例2
上記実施形態では、制御部(40)が、風データに含まれる風速データに基づいて、風音及び自然音のそれぞれの音量の割合を変更してもよい。この場合、音発生部(20)から発せられる自然環境を模した音は、風に起因する風音と、風音と種類の異なる自然音とを含む。風に起因する音とは、例えば、風が吹く音、草木が揺れる音、枯葉が舞う音などである。風音と種類の異なる自然音とは、例えば、川のせせらぎ音、小鳥の声などである。
【0174】
図19に示すように、例えば、制御部(40)は、受信した風速値が上昇するに従って、風音が大きくなる一方、自然音は小さくなるように、音量を変更する。制御部(40)は、受信した風速値が低下するに従って、風音が小さくなる一方、自然音は大きくなるように、音量を変更する。
【0175】
このように、制御部(40)が風音及び自然音の音量の割合を変更するので、遠隔地の風の強さに応じて自然音の音量に対する風音の音量が変化する。これにより、遠隔地の風の強さを聴覚によって感じることができる。
【0176】
《実施形態3》
実施形態3について説明する。本実施形の送風システム(1)は、実施形態1の送風システム(1)において、送風装置(10)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態の送風システム(1)について、実施形態1の送風システム(1)と異なる点を説明する。
【0177】
(1)送風システム
図20に示すように、本実施形態の送風システム(1)は、送風量調整装置(A)を備える。送風量調整装置(A)は、ファン(30)の送風量を調整するためのファン(30)の制御値を出力する装置である。ファン(30)は、遠隔地の風を対象空間(S)に再現する。本実施形態の送風量調整装置(A)は、送風装置(10)に備えられる。言い換えると、本実施形態の送風量調整装置(A)は、送風装置(10)の一部を構成する。送風量調整装置(A)は、送風ファン(30)の制御値を出力する制御部(C)を備える。
【0178】
(2)センサユニット
センサユニット(50)は、センサ(51)と、センサ側通信部(52)と、センサ側記憶部(53)と、センサ側制御部(54)とを有する。センサ(51)は、実施形態1と同様のものである。
【0179】
センサ側通信部(52)は、インターネット等の通信回線(45)を介して、送風装置(10)と通信可能に接続される。センサ側通信部(52)は、実施形態1の送信部(52)の機能と、送風装置(10)から送信された信号を受信する受信部としての機能とを有する。
【0180】
センサ側記憶部(53)は、センサ(51)の検出値を記憶する。センサ側記憶部(53)は、実施形態1の記憶部(18)と同様の構成である。センサ側制御部(54)は、実施形態1の制御部(40)と同様の構成である。
【0181】
(3)送風装置
送風装置(10)は、送風ファン(30)を含む本体部(15)と、送風側通信部(17)と、送風側記憶部(18)と、送風側制御部(40)と、入力部(19)とを有する。本実施形態において、送風ファン(30)、本体部(15)及び入力部(19)は、実施形態1と同様のものである。
【0182】
送風側通信部(17)は、インターネット等の通信回線(45)を介して、センサユニット(50)と通信可能に接続される。送風側通信部(17)は、実施形態1の受信部(17)の機能と、送風装置(10)からの信号をセンサユニット(50)に送信する送信部としての機能とを有する。
【0183】
送風側記憶部(18)は、送風側通信部(17)で受信した風データを記憶する。送風側記憶部(18)は、実施形態1の記憶部(18)と同じものである。送風側制御部(40)は、実施形態1の制御部(40)と同様の構成である。
【0184】
送風側制御部(40)は、機能的な要素として、実施形態1のデータ加工部(42)に代えて、取得部(c1)及び出力決定部(c2)を有する。送風側制御部(40)は、メモリディバイスに記憶されたプログラムを実行することで、運転モード決定部(41)、取得部(c1)、出力決定部(c2)、ファン制御部(43)、及び切替部(44)として機能する。
【0185】
ここで、本実施形態の送風側制御部(40)は、本開示の送風量調整装置(A)の制御部(C)に対応する。送風量調整装置(A)の制御部(C)は、風データを取得する機能と、取得した風データに応じた制御値とは異なるファン(30)の制御値を出力する機能とを有する。「取得した風データに応じた制御値」とは、取得した風速データの風がそのまま再現されるような送風ファン(30)の制御値のことである。
【0186】
送風側制御部(40)の取得部(c1)は、送風量調整装置(A)の制御部(C)における風データを取得する機能に対応する。取得部(c1)は、遠隔地において取得された風データを取得する。本実施形態では、取得部(c1)は、送風側記憶部(18)に記憶された風データを取得する。
【0187】
送風側制御部(40)の出力決定部(c2)は、送風量調整装置(A)の制御部(C)において取得した風データに応じた制御値とは異なる送風ファン(30)の制御値を出力する機能に対応する。本実施形態の出力決定部(c2)は、データ加工部(c3)と、制御値決定部(c4)とを有する。
【0188】
データ加工部(c3)は、風データを加工した加工データを生成する。制御値決定部(c4)は、データ加工部(c3)で生成された加工データに基づいて出力する送風ファン(30)の制御値を決定し、決定した制御値を出力する。制御値決定部(c4)から出力される制御値としては、例えば、送風ファン(30)を制御するための電流値が出力される。
【0189】
このように、本実施形態では、制御値決定部(c4)において、風データを加工した加工データに基づいて出力される送風ファン(30)の制御値が決定されるので、取得した風データに応じた制御値とは異なる送風ファン(30)の制御値が出力決定部(c2)から出力される。
【0190】
本実施形態のデータ加工部(c3)は、実施形態1のデータ加工部(c3)と同じものである。よって、本実施形態のデータ加工部(c3)では、実施形態1と同じ第1加工データおよび第2加工データが生成される。
【0191】
第1加工データ及び第2加工データは、送風ファン(30)から吹き出される空気の平均風速値がユーザによって任意に設定された平均風速値になるように加工されたデータであるため、元データにおける風速の増減傾向と同じ傾向を示す。まとめると、第1加工データ及び第2加工データは、元データに対して風の強さは変更されるが、風速の増減傾向は維持されたデータである。制御値決定部(c4)は、このような第1加工データ又は第2加工データに基づいて出力する制御値を決定するので、元データにおける風速の増減傾向と同じ傾向を示す制御値が出力決定部(c2)から出力される。
【0192】
送信側制御部(C)に記憶されたプログラムは、少なくとも、遠隔地において取得された風データを取得する処理と、取得した風データに応じた制御値とは異なる制御値を出力する処理を、コンピュータとしての送信側制御部(C)に実行させる。ファン制御部(43)は、出力決定部(c2)において出力された制御値に基づいて、送風ファン(30)を制御する。
【0193】
(4)運転動作
(4-1)各運転モードの概要
本実施形態の送風システム(1)では、実施形態1と同様に、第1運転モード、第2運転モード、第3運転モード、第4運転モード、第1自動運転モード、及び第2自動運転モードが実行される。各運転モードの内容は、実施形態1と同様である。
【0194】
(4-2)運転モードの決定処理
本実施形態の運転モードの決定処理は、実施形態1の(4-2)において、制御部(C)を送風側制御部(40)と読み替え、記憶部(18)を送風側記憶部(18)と読み替えたものである。
【0195】
(4-3)第1~第4運転モードの動作
本実施形態の第1~第4運転モードの動作について、図21及び図22を参照しながら説明する。
【0196】
(4-3-1)第1運転モード、第4運転モード
第1運転モード及び第4運転モードでは、送風側制御部(40)は、同じ動作処理を行う。以下では、第1運転モードを例にして説明する。
【0197】
図21に示すように、運転モードの決定処理において、実行する運転モードが第1運転モードに決定されると、送風側制御部(40)は、ステップST321を実行する。ステップST321では、送風側通信部(17)において受信した風データを送風側記憶部(18)に記憶させる。
【0198】
次いで、送風側制御部(40)は、ステップST322を実行する。ステップST322では、送風側制御部(40)が送風側記憶部(18)からステップST321で記憶された風データに含まれる風速データを取得する。
【0199】
次いで、送風側制御部(40)は、ステップST323を実行する。ステップST323では、送風側制御部(40)が、取得した風速データに基づいて第1加工データを生成する。
【0200】
次いで、送風側制御部(40)は、ステップST324を実行する。ステップST324では、送風側制御部(40)が、送風ファン(30)の制御値を決定する。具体的には、送風側制御部(40)が、第1加工データに基づいて出力する制御値を決定する。これにより、第1加工データに応じた送風ファン(30)の制御値が決定され、出力される。
【0201】
次いで、送風側制御部(40)は、ステップST325を実行する。ステップST325では、送風側制御部(40)が、出力された制御値に基づいて送風ファン(30)を制御する。これにより、遠隔地の風が、ユーザによって任意に設定された平均風速に調節されて再現される。そのため、対象空間(S)に居る人の快適性を損なうことなく、遠隔地の風を再現できる。
【0202】
送風側制御部(40)は、ステップST325が終了すると、第1運転モードを停止する。送風側制御部(40)は、ステップST325が終了した後、再びステップST321を実行してもよい。この場合、送風側制御部(40)は、入力部(19)に送風装置(10)の運転停止又は別の運転モードへの変更が入力されるまで、第1運転モードの動作を実行し続ける。
【0203】
上述のように、第1運転モードにおけるステップST323では第1加工データが生成されるが、第4運転モードにおけるステップST323では、第2加工データが生成される。
【0204】
また、第1運転モードにおけるステップST325では、送風ファン(30)の上限風速は、送風ファン(30)の最大風速であったが、第4運転モードにおけるステップST325では、送風ファン(30)の上限風速は、ユーザが任意に設定した上限風速である。
【0205】
(4-3-2)第2運転モード、第3運転モード
第2運転モード及び第3運転モードでは、送風側制御部(40)は、同じ動作処理を行う。以下では、第2運転モードを例にして説明する。図22に示すように、第2運転モードでは、第1運転モードに対してステップST323が実行されない。
【0206】
具体的には、第2運転モードのステップST331~ステップST334のそれぞれは、第1運転モードのステップST321、ST322、ST324、ST325のそれぞれと同様である。なお、第2運転モードのステップST333では、送風側制御部(40)が、取得した風速データそのままのデータである無加工データに基づいて、出力する制御値を決定する。これにより、無加工データに応じた送風ファン(30)の制御値が決定され、出力される。その結果、第2運転モードでは、遠隔地の風がそのまま対象空間(S)に再現される。
【0207】
第2運転モードにおけるステップST334では、送風ファン(30)の上限風速は、送風ファン(30)の最大風速であったが、第3運転モードにおけるステップST334では、送風ファン(30)の上限風速は、ユーザが任意に設定した上限風速である。そのため、第3運転モードにおいて、無加工データのうち設定された上限風速を超える領域では、上限風速の空気が送風ファン(30)から吹き出される。
【0208】
(4-4)第1自動運転モード、第2自動運転モードの切替動作
本実施形態の第1自動運転モード及び第2自動運転モードの切替動作は、実施形態1の(4-4)において、制御部(C)を送風側制御部(40)と読み替え、受信部(17)を送風側通信部(17)と読み替えたものである。
【0209】
第1自動運転モードでは、送風側制御部(40)が、第1条件が成立するか否かを判定する。その結果、第1条件が成立した場合に、第2運転モードから第1運転モードに切り替わる。ここで、第1条件とは、送風側通信部(17)で受信した風速データの風速値が送風ファン(30)の最大風速を超えた状態が所定時間以上続くことである。つまり、本実施形態では、第1条件が成立したとき、送風側制御部(40)は、第1運転モードを実行するために、第1加工データに基づいて出力する制御値を決定し出力する。言い換えると、第1条件が成立したとき、送風側制御部(40)は、取得部(c1)で取得した風データに応じた制御値とは異なる送風ファン(30)の制御値を出力する。
【0210】
第2自動運転モードでは、送風側制御部(40)が、第3条件が成立するか否かを判定する。その結果、第3条件が成立した場合に、第3運転モードから第4運転モードに切り替わる。ここで、第3条件とは、送風側通信部(17)で受信した風速データの風速値が、ユーザが設定した上限風速を超えた状態が所定時間以上続くことである。つまり、本実施形態では、第3条件が成立したとき、送風側制御部(40)は、第4運転モードを実行するために、第2加工データに基づいて出力する制御値を決定し出力する。言い換えると、第3条件が成立したとき、送風側制御部(40)は、取得部(c1)で取得した風データに応じた制御値とは異なる送風ファン(30)の制御値を出力する。
【0211】
なお、本実施形態では、第1~第4条件の判定処理を送風側制御部(40)が実行したが、センサ側制御部(54)が実行してもよい。この場合、センサ側制御部(54)で行った判定処理の結果の情報を送風装置(10)に送信する。
【0212】
(5)特徴
(5-1)
本実施形態の送風量調整装置(A)は、送風ファン(30)の制御値を出力する制御部(C)を備える。制御部(C)は、遠隔地において取得された風に関する風データを取得し、取得した風データに応じた制御値とは異なる制御値を出力する。
【0213】
本実施形態では、制御部(C)が、取得した風データに応じた制御値とは異なる送風ファン(30)の制御値を出力する。これにより、遠隔地の風を調整した風が送風ファン(30)から吹き出される。そのため、対象空間(S)に居る人の快適性を損なうことなく、自然環境の風を再現できる。
【0214】
(5-2)
本実施形態の制御部(C)は、風データを加工した加工データを生成し、加工データに基づいて出力する制御値を決定する。本実施形態では、制御部(C)によって、風データを加工した加工データが生成され、該加工データに基づいて出力する制御値が決定される。これにより、送風ファン(30)から遠隔地の風を調整した風を吹き出すことができる。
【0215】
(5-3)
本実施形態の制御部(C)は、風データにおける風速の増減傾向と同じ傾向を示す制御値を出力する。本実施形態では、制御部(C)が出力する制御値は、風データにおける風速の増減傾向と同じ傾向を示す。そのため、遠隔地と同じ揺らぎの風を対象空間(S)に再現できる。
【0216】
(5-4)
本実施形態の制御部(C)は、送風ファン(30)から吹き出される空気の平均風速がユーザによって任意に設定された平均風速になるような前記制御値を出力する。本実施形態では、制御部(C)が出力する制御値は、送風ファン(30)から吹き出される空気の平均風速がユーザによって任意に設定された平均風速となるような制御値である。そのため、ユーザが自由に設定した強さであり且つ遠隔地と同じ揺らぎの風が対象空間(S)に再現される。
【0217】
(5-5)
本実施形態の制御部(C)は、風データの風速値が送風ファン(30)の回転数の上限値を超えた状態が所定時間以上続いたときに、取得した風データに応じた制御値とは異なる制御値を出力する。
【0218】
取得した風データの風速値が送風ファン(30)の回転数の上限値を超えた状態がある程度続くと、送風ファン(30)から吹き出される空気の風速がファン(30)の回転数の上限値で一定になり、遠隔地の風の揺らぎが再現されない。そこで、本実施形態では、そのような状態の場合に、取得した風データに応じた制御値とは異なる制御値を出力することにより、対象空間(S)において遠隔地の風の揺らぎを再現できる。
【0219】
(5-6)
本実施形態の制御部(C)は、風データの風速値がユーザによって予め任意に設定された上限風速を超えた状態が所定時間以上続いたときに、取得した風データに応じた制御値とは異なる制御値を出力する。
【0220】
取得した風データの風速値がユーザによって予め任意に設定された上限風速を超えた状態がある程度続くと、送風ファン(30)から吹き出される空気の風速が設定された上限風速で一定になり、遠隔地の風の揺らぎが再現されない。そこで、本実施形態では、そのような状態の場合に、取得した風データに応じた制御値とは異なる制御値を出力することにより、対象空間(S)において遠隔地の風の揺らぎを再現できる。
【0221】
(5-7)
本実施形態の送風システム(1)は、送風量調整装置(A)を備える。そのため、対象空間(S)に居る人の快適性を損なうことなく、自然環境の風を再現できる送風システムを提供できる。
【0222】
(6)変形例
上記実施形態については以下のような変形例としてもよい。なお、以下の説明では、原則として上記実施形態と異なる点について説明する。
【0223】
(6-1)変形例1
上記実施形態の送風量調整装置(A)において、データ加工部(c3)は、風データに基づくデータとしての元データに所定の値を乗じることにより、加工データを生成してもよい。具体的には、本変形例では、第1加工データ及び第2加工データは、元データの各風速値に一つの所定の係数を乗じることにより生成される。
【0224】
この場合、元データよりも強さの弱い風を再現したい場合には、元データに乗じる係数を1よりも小さい値とし、元データよりも強さの強い風を再現したい場合には、元データに乗じる係数を1よりも大きい値とする。
【0225】
このように、第1加工データ及び第2加工データが元データの各風速値に所定の係数を乗じることにより生成されているため、第1加工データ及び第2加工データは、元データにおける風速の増減傾向と同じ傾向を示す。まとめると、第1加工データ及び第2加工データは、元データに対して風の強さは変更されるが、風速の増減傾向は維持されたデータである。制御値決定部(c4)は、このような第1加工データ又は第2加工データに基づいて出力する制御値を決定するので、元データにおける風速の増減傾向と同じ傾向を示す制御値が出力決定部(c2)から出力される。
【0226】
本変形例では、制御部(C)のデータ加工部(c3)によって、元データに所定の値が乗じられることにより送風ファン(30)の制御値が調整されるので、送風ファン(30)から吹き出される風の強さが調整される。よって、遠隔値の風に対して強さが変更され且つ遠隔地と同じ揺らぎの風が対象空間(S)に再現される。ここでの所定の係数は、上記実施形態と異なり、ユーザの所望する平均風速に変換するような係数以外のものを含む。
【0227】
(6-2)変形例2
上記実施形態の送風量調整装置(A)において、データ加工部(c3)は、風データに基づくデータとしての元データに、風速値に応じた所定の値を乗じることにより、加工データを生成してもよい。具体的には、本変形例では、第1加工データ及び第2加工データは、元データの各風速値に、図23に示す表に記載の所定の係数を乗じることにより生成される。所定の係数が記載された表は、送風側記憶部(18)に予め記憶される。
【0228】
図23に示す表は、風速値と該風速値に対応する係数が記載されたテーブルである。図23ように、例えば、風速値がAのとき、風速値に0.7を乗じた値が加工データとして生成され、風速値がBのとき、風速値に1.0を乗じた値が加工データとして生成され、風速値がCのとき、風速値に1.15を乗じた値が加工データとして生成される。なお、このテーブルにおいて、風速値A、B、Cには具体的な数値が記載されている。風速値Aは値が一番大きく、風速値Bは風速値Aよりも小さく、風速値Cは風速値Bよりも小さい(A>B>C)。言い換えると、このテーブルでは、風速が速いほど、対応する係数は小さく設定されている。
【0229】
このテーブルにおいて、風速値A~Cには幅のある値が記載されていてもよい。例えば、このテーブルにおいて、元データの風速値xがa1以上且つa2以下のとき(a1≦x≦a2)、対応する係数が0.7であってもよい。第1加工データを生成するためのテーブルと、第2加工データを生成するためのテーブルは、同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0230】
このように、第1加工データ及び第2加工データが元データの各風速値に所定の係数を乗じることにより生成されているため、第1加工データ及び第2加工データは、元データにおける風速の増減傾向と同じ傾向を示す。まとめると、第1加工データ及び第2加工データは、元データに対して風の強さは変更されるが、風速の増減傾向は維持されたデータである。制御値決定部(c4)は、このような第1加工データ又は第2加工データに基づいて出力する制御値を決定するので、元データにおける風速の増減傾向と同じ傾向を示す制御値が出力決定部(c2)から出力される。
【0231】
本変形例においても、制御部(C)のデータ加工部(c3)によって、元データに所定の値が乗じられることにより送風ファン(30)の制御値が調整されるので、送風ファン(30)から吹き出される風の強さが調整される。よって、遠隔値の風に対して強さが変更され且つ遠隔地と同じ揺らぎの風が対象空間(S)に再現される。
【0232】
(6-3)変形例3
上記実施形態の送風量調整装置(A)において、データ加工部(c3)は、風データに基づくデータとしての元データに対して所定の関数を演算することにより、加工データを生成してもよい。具体的には、本変形例では、所定の関数f(x)に基づいて加工データを生成する。ここで入力する値xは、元データの風速値である。所定の関数f(x)は、送風側記憶部(18)に予め記憶される。第1加工データを生成する関数と、第2加工データを生成する関数は、同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0233】
所定の関数f(x)は、元データにおける風速の増減傾向を維持するような値が算出される関数である。よって、本変形例においても、第1加工データ及び第2加工データは、元データにおける風速の増減傾向と同じ傾向を示す。まとめると、第1加工データ及び第2加工データは、元データに対して風の強さは変更されるが、風速の増減傾向は維持されたデータである。制御値決定部(c4)は、このような第1加工データ又は第2加工データに基づいて出力する制御値を決定するので、元データにおける風速の増減傾向と同じ傾向を示す制御値が出力決定部(c2)から出力される。
【0234】
本変形例では、制御部(C)によって、風データに基づくデータに対して所定の関数が演算される。これにより、送風ファン(30)の制御値が調整されるので、送風ファン(30)から吹き出される風の強さが調整されて、遠隔値の風に対して強さが変更され且つ遠隔地と同じ揺らぎの風が対象空間(S)に再現される。
【0235】
《実施形態4》
実施形態4について説明する。本実施形の送風システム(1)は、実施形態3の送風システム(1)に対して、送風量調整装置(A)が送風装置(10)ではなく、センサユニット(50)に備わっている点で異なる。ここでは、本実施形態の送風システム(1)について、実施形態3の送風システム(1)と異なる点を説明する。
【0236】
(1)送風システム
図24に示すように、本実施形態の送風システム(1)では、送風量調整装置(A)がセンサユニット(50)に備えられる。言い換えると、本実施形態の送風量調整装置(A)は、センサユニット(50)の一部を構成する。
【0237】
センサユニット(50)のセンサ側制御部(54)は、機能的な要素として、取得部(c1)と、出力決定部(c2)とを有する。言い換えると、センサ側制御部(54)は、メモリディバイスに記憶されたプログラムを実行することで、取得部(c1)及び出力決定部(c2)として機能する。
【0238】
ここで、本実施形態のセンサ側制御部(54)は、本開示の送風量調整装置(A)の制御部(C)に対応する。センサ側制御部(54)の取得部(c1)及び出力決定部(c2)は、実施形態3と同じものである。
【0239】
本実施形態の送風装置(10)は、送風側制御部(40)において、実施形態3の送風側制御部(40)の取得部(c1)及び出力決定部(c2)を除いたものと同一である。
【0240】
(2)運転動作
本実施形態の送風システム(1)では、実施形態3と同様の複数の運転モードが実行される。各運転モードの内容は、実施形態1と同じである。また、本実施形態の「運転モードの決定処理」及び「第1自動運転モードと第2自動運転モードの切替動作」は、実施形態3と同じである。
【0241】
(2-1)第1運転モード、第4運転モードの動作
次に、本実施形態の第1運転モードの動作について説明する。図25に示すように、本実施形態の第1運転モードでは、実施形態3の第1運転モードに対して、送風装置(10)とセンサユニット(50)との通信処理が追加されている。
【0242】
具体的には、運転モードの決定処理において、実行する運転モードが第1運転モードに決定されると、送風側制御部(40)は、ステップST421を実行する。ステップST421では、送風側通信部(17)が、センサユニット(50)に第1運転モードで必要な制御値を要求する信号を送信する。
【0243】
次いで、センサ側通信部(52)がステップST421で送信された信号を受信すると、センサ側制御部(54)は、ステップST422を実行する。ステップST422では、実施形態3のステップST322と同じ処理が実行される。
【0244】
次いで、センサ側制御部(54)は、ステップST423及びステップST424を実行する。ステップST423及びステップST424では、実施形態3のステップST323及びステップST324と同じ処理が実行される。
【0245】
次いで、センサ側制御部(54)は、ステップST425を実行する。ステップST425では、センサ側通信部(52)が、センサ側制御部(54)で出力された制御値を送風装置(10)に送信する。
【0246】
次いで、送風側制御部(40)は、ステップST426を実行する。ステップST426では、実施形態3のステップST325と同じ処理が実行される。これにより、遠隔地の風が、ユーザによって任意に設定された平均風速に調節されて再現される。そのため、対象空間(S)に居る人の快適性を損なうことなく、遠隔地の風を再現できる。
【0247】
送風側制御部(40)は、ステップST426が終了すると、第1運転モードを停止する。送風側制御部(40)は、ステップST426が終了した後、再びステップST421を実行してもよい。この場合、送風側制御部(40)は、入力部(19)に送風装置(10)の運転停止又は別の運転モードへの変更が入力されるまで、第1運転モードの動作を実行し続ける。
【0248】
本実施形態の第4運転モードでは、センサ側制御部(54)及び送風側制御部(40)が、第1運転モードと同じ動作処理を行う。第4運転モードでは、ステップST423において、第2加工データが生成される。
【0249】
(2-2)第2運転モード、第3運転モードの動作
次に、本実施形態の第2運転モードの動作について説明する。図26に示すように、第2運転モードでは、第1運転モードに対してステップST423が実行されない。
【0250】
具体的には、第2運転モードのステップST431~ステップST435のそれぞれは、第1運転モードのステップST421、ST422、ST424~ST426のそれぞれと同様である。なお、第2運転モードのステップST433では、送風側制御部(40)が、取得した無加工データに基づいて出力する制御値を決定する。これにより、無加工データに応じた送風ファン(30)の制御値が決定され、出力される。その結果、第2運転モードでは、遠隔地の風が、ユーザによって任意に設定された平均風速に調節されて再現される。そのため、対象空間(S)に居る人の快適性を損なうことなく、遠隔地の風を再現できる。
【0251】
本実施形態の第3運転モードでは、センサ側制御部(54)及び送風側制御部(40)が、第2運転モードと同じ動作処理を行う。
【0252】
(3)特徴
本実施形態においても、実施形態3と同様の特徴を有する。具体的には、本実施形態では、送風量調整装置(A)の制御部(C)が、取得した風データに応じた制御値とは異なる送風ファン(30)の制御値を出力することにより、遠隔地の風を調整した風が送風ファン(30)から吹き出される。そのため、対象空間(S)に居る人の快適性を損なうことなく、自然環境の風を再現できる。
【0253】
(4)変形例
上記実施形態の送風量調整装置(A)においても、実施形態3の変形例1~3を適用できる。その結果、上記実施形態においても、実施形態3の変形例1~3と同様の作用効果を得ることができる。
【0254】
《実施形態5》
実施形態5について説明する。本実施形の送風システム(1)は、実施形態3の送風システム(1)に対して、送風量調整装置(A)が送風装置(10)ではなく、サーバ装置(60)に備わっている点で異なる。ここでは、本実施形態の送風システム(1)について、実施形態3の送風システム(1)と異なる点を説明する。
【0255】
(1)送風システム
図27に示すように、本実施形態の送風システム(1)は、一つの送風装置(10)と、一つのセンサユニット(50)と、一つのサーバ装置(60)を備える。本実施形態の送風量調整装置(A)は、サーバ装置(60)に備えられる。言い換えると、本実施形態の送風量調整装置(A)は、サーバ装置(60)の一部を構成する。
【0256】
(2)サーバ装置
サーバ装置(60)は、サーバ側通信部(61)と、サーバ側記憶部(62)と、サーバ側制御部(63)とを有する。
【0257】
サーバ側通信部(61)は、インターネット等の通信回線(45)を介して、センサユニット(50)及び送風装置(10)のそれぞれと通信可能に接続される。サーバ側通信部(61)は、信号を送信する送信部としての機能と、信号を受信する受信部としての機能とを有する。
【0258】
サーバ側記憶部(62)は、センサユニット(50)から送信されたセンサ(51)の検出値を記憶する。センサ側記憶部(53)は、実施形態1の記憶部(18)と同様の構成である。サーバ側制御部(63)は、実施形態1の制御部(40)と同様の構成である。サーバ側制御部(63)は、機能的な要素として、取得部(c1)と出力決定部(c2)とを有する。言い換えると、サーバ側制御部(63)は、メモリディバイスに記憶されたプログラムを実行することで、取得部(c1)及び出力決定部(c2)として機能する。
【0259】
ここで、本実施形態のサーバ側制御部(63)は、本開示の送風量調整装置(A)の制御部(C)に対応する。サーバ側制御部(63)の取得部(c1)及び出力決定部(c2)は、実施形態3と同じものである。
【0260】
本実施形態の送風装置(10)は、実施形態4の送風装置(10)と同じものである。本実施形態のセンサユニット(50)は、実施形態3のセンサユニット(50)と同じものである。
【0261】
(2)運転動作
本実施形態の送風システム(1)では、実施形態3と同様の複数の運転モードが実行される。各運転モードの内容は、実施形態1と同じである。また、本実施形態の「運転モードの決定処理」及び「第1自動運転モードと第2自動運転モードの切替動作」は、実施形態3と同じである。
【0262】
本実施形態の第1運転モード及び第4運転モードの動作では、実施形態4の(2-1)において、センサユニット(50)をサーバ装置(60)に読み替え、センサ側通信部(52)をサーバ側通信部(61)と読み替え、センサ側制御部(54)をサーバ側制御部(63)と読み替え、センサ側記憶部(53)をサーバ側制御部(63)と読み替えたものである。また、本実施形態の第2運転モード及び第3運転モードの動作では実施形態4の(2-2)において、上記第1運転モード及び第4運転モードの動作の読み替えと同様の読み替えを行ったものである。
【0263】
(3)特徴
本実施形態においても、実施形態3と同様の特徴を有する。具体的には、本実施形態では、送風量調整装置(A)の制御部(C)が、取得した風データに応じた制御値とは異なる送風ファン(30)の制御値を出力することにより、遠隔地の風を調整した風が送風ファン(30)から吹き出される。そのため、対象空間(S)に居る人の快適性を損なうことなく、自然環境の風を再現できる。
【0264】
(4)変形例
上記実施形態の送風量調整装置(A)においても、実施形態3の変形例1~3を適用できる。その結果、上記実施形態においても、実施形態3の変形例1~3と同様の作用効果を得ることができる。
【0265】
《実施形態6》
実施形態6について説明する。本実施形の送風システム(1)は、実施形態3の送風システム(1)において、送風側制御部(40)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態の送風システム(1)について、実施形態3の送風システム(1)と異なる点を説明する。
【0266】
(1)送風装置
図28に示すように、本実施形態の送風装置(10)において、送風側制御部(40)が機能的な要素として有する出力決定部(c2)が、制御値決定部(c4)と補正部(c5)とを有する。
【0267】
制御値決定部(c4)は、風データに応じた送風ファン(30)の制御値を決定する。本実施形態の制御値決定部(c4)は、元データに応じた制御値を決定する。ここでいう「元データに応じた制御値」とは、取得した風速データの風がそのまま再現されるような送風ファン(30)の制御値のことである。
【0268】
補正部(c5)は、制御値決定部(c4)で決定した制御値を補正する。加えて、補正部(c5)は、補正した制御値を出力する制御値として決定し、出力する。
【0269】
このように、本実施形態では、補正部(c5)によって送風ファン(30)の制御値が補正されるので、取得した風データに応じた制御値とは異なる送風ファン(30)の制御値が出力決定部(c2)から出力される。言い換えると、本実施形態の出力決定部(c2)では、取得した風データを加工することなく、送風ファン(30)の制御値を変更することによって、取得した風データに応じた制御値とは異なる送風ファン(30)の制御値を出力する。
【0270】
補正部(c5)は、送風ファン(30)から吹き出される空気の平均風速値がユーザによって任意に設定された平均風速値になるように、制御値を補正する。具体的には、本実施形態では、制御値決定部(c4)で決定された制御値のデータに所定の係数を乗じることにより、補正データが生成される。制御値決定部(c4)で決定された制御値のデータは、風データに基づくデータである。補正部(c5)では、第1運転モードで用いられる第1補正データと、第4運転モードで用いられる第2補正データとが生成される。
【0271】
第1補正データ及び第2補正データは、送風ファン(30)から吹き出される空気の平均風速値がユーザによって任意に設定された平均風速値になるように補正されたデータである。そのため、元データにおける風速の増減傾向と同じ傾向を示す。まとめると、第1補正データ及び第2補正データは、元データに対して風の強さは変更されるが、風速の増減傾向は維持されたデータである。補正部(c5)は、このような第1補正データ又は第2補正データを出力する制御値として決定し出力するので、元データにおける風速の増減傾向と同じ傾向を示す制御値が出力決定部(c2)から出力される。
【0272】
(4)運転動作
本実施形態の送風システム(1)では、実施形態3と同様の複数の運転モードが実行される。各運転モードの内容は、実施形態1と同じである。また、本実施形態における「運転モードの決定処理」及び「第1自動運転モード、第2自動運転モードの切替動作」は、実施形態3と同じである。
【0273】
(4-1)第1運転モード、第4運転モードの動作
次に、本実施形態の第1運転モードの動作について説明する。図29に示すように、本実施形態の第1運転モードでは、実施形態3の第1運転モードに対して、出力を決定する処理が異なる。
【0274】
具体的には、運転モードの決定処理において、実行する運転モードが第1運転モードに決定されると、送風側制御部(40)は、ステップST621及びステップST622を実行する。ステップST621及びステップST622のそれぞれでは、実施形態3のステップST321およびステップST322のそれぞれと同じ処理が実行される。
【0275】
次いで、送風側制御部(40)は、ステップST623を実行する。ステップST623では、送風側制御部(40)が、元データに応じた送風ファン(30)の制御値を決定する。
【0276】
次いで、送風側制御部(40)は、ステップST624を実行する。ステップST624では、送風側制御部(40)が、制御値決定部(c4)で決定した制御値を補正し、第1補正データを生成する。そして、送風側制御部(40)は、第1補正データを出力する制御値として決定して出力する。具体的には、ステップST624では、ステップST623で決定された制御値のデータに所定の係数γを乗じることにより、第1補正データが生成される。所定の係数γは、送風ファン(30)から吹き出される空気の平均風速が、ユーザによって任意に設定された平均風速になるように、ステップST623で決定された制御値のデータを変換する係数である。
【0277】
次いで、送風側制御部(40)は、ステップST625を実行する。ステップST625では、実施形態3のステップST325と同じ処理が実行される。これにより、遠隔地の風が、ユーザによって任意に設定された平均風速に調節されて再現される。そのため、対象空間(S)に居る人の快適性を損なうことなく、遠隔地の風を再現できる。なお、第1運転モードでは、送風ファン(30)の上限風速は、送風ファン(30)の最大風速である。そのため、第1運転モードにおいて、第1補正データのうち送風ファン(30)の最大風速を超える領域では、送風ファン(30)の最大風速の空気が送風ファン(30)から吹き出される。
【0278】
本実施形態の第4運転モードでは、送風側制御部(40)が、第1運転モードと同じ動作処理を行う。上述のように、第1運転モードにおけるステップST624では第1補正データが生成されるが、第4運転モードにおけるステップST624では、第2補正データが生成される。具体的には、第4運転モードにおけるステップST624では、ステップST623で決定された制御値のデータに所定の係数δを乗じることにより、第2補正データが生成される。所定の係数δは、送風ファン(30)から吹き出される空気の平均風速が、ユーザによって任意に設定された平均風速になるように、ステップST623で決定された制御値のデータを変換する係数である。
【0279】
また、第1運転モードにおけるステップST625では、送風ファン(30)の上限風速は、送風ファン(30)の最大風速であったが、第4運転モードにおけるステップST625では、送風ファン(30)の上限風速は、ユーザが任意に設定した上限風速である。そのため、第4運転モードにおいて、第2補正データのうち設定された上限風速を超える領域では、設定された上限風速の空気が送風ファン(30)から吹き出される。
【0280】
(4-2)第2運転モード、第3運転モードの動作
次に、本実施形態の第2運転モードの動作について説明する。図30に示すように、第2運転モードでは、第1運転モードに対してステップST624が実行されない。
【0281】
具体的には、第2運転モードのステップST631~ステップST634のそれぞれは、第1運転モードのステップST621~ST323、ST325のそれぞれと同様である。なお、第2運転モードのステップST633では、送風側制御部(40)が、元データに応じた送風ファン(30)の制御値を決定する。具体的には、送風側制御部(40)が、取得した風速データそのままのデータである無加工データに基づいて、出力する制御値を決定する。これにより、無加工データに応じた送風ファン(30)の制御値が決定され、出力される。その結果、第2運転モードでは、遠隔地の風がそのまま対象空間(S)に再現される。
【0282】
本実施形態の第3運転モードでは、送風側制御部(40)が、第2運転モードと同じ動作処理を行う。第2運転モードにおけるステップST634では、送風ファン(30)の上限風速は、送風ファン(30)の最大風速であったが、第3運転モードにおけるステップST634では、送風ファン(30)の上限風速は、ユーザが任意に設定した上限風速である。そのため、第3運転モードにおいて、無加工データのうち設定された上限風速を超える領域では、上限風速の空気が送風ファン(30)から吹き出される。
【0283】
(5)特徴
本実施形態では、送風量調整装置(A)の制御部(C)は、風データに応じた制御値を決定し、決定した制御値を補正し、該補正した値を出力する記制御値として決定する。これにより、送風ファン(30)は、遠隔地の風を調整した風を吹き出すことができる。
【0284】
(6)変形例
上記実施形態の送風量調整装置(A)は、実施形態4及び5のように、センサユニット(50)又はサーバ装置(60)に備えられてもよい。上記実施形態の送風量調整装置(A)においても、実施形態3~5の変形例を適用できる。その結果、上記実施形態においても、実施形態3~5及びこれらの変形例と同様の作用効果を得ることができる。
【0285】
《実施形態7》
実施形態7について説明する。本実施形の送風システム(1)は、実施形態3の送風システム(1)において、送風側制御部(40)に判定部を追加したものである。ここでは、本実施形態の送風システム(1)について、実施形態3の送風システム(1)と異なる点を説明する。
【0286】
(1)送風装置
本実施形態では、送風装置(10)の送風制御部(C)は、実施形態3の送風側制御部(40)に対して、機能的な要素として判定部を追加したものである。判定部は、第5条件が成立するか否かを判定する。第5条件とは、風データの風速値(元データ)が所定の基準値以下の状態が所定時間以上続くことである。ここでの所定の基準値は、非常に小さな風速値である。第5条件が成立する場合、遠隔地は非常に小さな微風が吹いている状態又は無風状態であるといえる。
【0287】
本実施形態では、判定部は、センサユニット(50)から受信した1セットの風データに含まれる平均風速値が、所定の基準値以下の状態が所定時間以上続くか否かを判定する。判定部は、1セットの風データに含まれる風速値の最大値が、所定の基準値以下の状態が所定時間以上続くか否かを判定してもよい。言い換えると、本実施形態では、判定部は、センサユニット(50)から送信される1セットの風データに基づいて判定を行う。
【0288】
本実施形態では、第5条件が成立すると、出力決定部(c2)のデータ加工部(c3)は、元データを加工して、第3加工データを生成する。第3加工データは、風データに基づくデータとしての元データの風速値を増幅させたデータである。データ加工部(c3)は、元データに予め設定された所定の係数を乗じることにより、第3加工データを生成する。データ加工部(c3)は、元データに予め設定された所定の値を加えることにより、第3加工データを生成してもよい。
【0289】
本実施形態では、判定部の判定処理は、複数の運転モードのうち全ての運転モードの実行中において実行される。よって、いずれかの運転モードが実行されている場合であっても、第5条件が成立する場合には、データ加工部(c3)において第3加工データが生成され、第3加工データに基づいて送風ファン(30)が制御される。
【0290】
(2)特徴
本実施形態では、送風量調整装置(A)の制御部(C)が、風データの風速値が所定の基準値以下の状態が所定時間以上続いたときに、風データに基づくデータを増幅させる。制御部(C)が取得した風データの風速値が所定の基準値以下である場合には、遠隔地では非常に弱い風が吹いている。このような弱い風がある程度の時間続くと、送風ファン(30)から吹き出される風が弱いため、対象空間(S)に居る人が風を感じれなくなる。そこで、本実施形態では、そのような状態の場合に、制御部(C)が元データを増幅させることにより、対象空間(S)に居る人が継続的に遠隔地を再現した風を受けることができる。
【0291】
(3)変形例
上記実施形態については以下のような変形例としてもよい。なお、以下の説明では、原則として上記実施形態と異なる点について説明する。
【0292】
(3-1)変形例1
上記実施形態の送風量調整装置(A)において、制御部(C)は、風データの風速値が所定の基準値以下の状態が所定時間以上続いたときに、代替データに基づいて出力する制御値を決定してもよい。
【0293】
具体的には、送風側記憶部(18)は、予め風に関する代替データを記憶する。本変形例では、送風側記憶部(18)が本開示の記憶部に対応する。代替データは、センサユニット(50)からリアルタイムに受信した風データとは異なるデータである。代替データは、過去にセンサユニット(50)から受信し送風側記憶部(18)に記憶された風データであってもよく、送風装置(10)の製造時に送風側記憶部(18)に記憶された風データであってもよい。
【0294】
判定部において第5条件が成立すると判定された場合、送風側制御部(40)の制御値決定部(c4)は、代替データに基づいて出力する送風ファン(30)の制御値を決定する。この場合、出力決定部(c2)からは、取得部(c1)で取得した風データに応じた制御値とは異なる制御値が出力されることになる。
【0295】
本実施形態では、制御部(C)は、風データの風速値が所定の基準値以下の状態が所定時間以上続いたときに、代替データに基づいて出力する制御値を決定する。そのため、遠隔地において微風が吹いている状態又は無風の状態の場合に、代替データに基づいて出力する制御値を決定されることにより、対象空間(S)に居る人が継続的に遠隔地を再現した風を受けることができる。
【0296】
(3-2)変形例2
上記実施形態の送風量調整装置(A)は、実施形態4及び5のように、センサユニット(50)又はサーバ装置(60)に備えられてもよい。上記実施形態の送風量調整装置(A)においても、実施形態3~5の変形例を適用できる。その結果、上記実施形態においても、実施形態3~5及びこれらの変形例と同様の作用効果を得ることができる。
【0297】
また、上記実施形態の送風量調整装置(A)は、実施形態6のような出力決定部(c2)が制御値決定部(c4)と補正部(c5)であってもよい。この場合には、上記実施形態においても、実施形態6及びその変形例と同様の作用効果を得ることができる。
【0298】
(3-3)変形例3
上記実施形態では、送風側制御部(40)が判定部を有し、第5条件の判定処理を送風側制御部(40)が実行したが、判定部は、センサ側制御部(54)又はサーバ側制御部(63)に備わっていてもよい。
【0299】
《実施形態8》
実施形態8について説明する。本実施形の送風システム(1)は、実施形態3の送風システム(1)において、音発生部(20)を追加したものである。ここでは、本実施形態の送風システム(1)について、実施形態3の送風システム(1)と異なる点を説明する。
【0300】
(1)音発生部
本実施形態の送風装置(10)は、音発生部(20)を備える。本実施形態の音発生部(20)は、実施形態2の音発生部(20)と同じものである。本実施形態では、送風側制御部(40)が、風データに基づくデータとしての元データに応じて、自然環境を模した音を発生させるための信号を出力する。具体的には、送風側制御部(40)は、元データに基づいて音発生部(20)から発生する音(例えば、風が吹く音)の音量を調節する。詳細には、実施形態2と同様に、図17に示すように、送風側制御部(40)が音量を変更する。
【0301】
本実施形態では、制御部(C)によって、風データに基づくデータに応じた自然環境を模した音を発生させるための信号が出力されるので、音を発生する装置から自然環境を模した音が発せられる。
【0302】
(2)変形例
上記実施形態の送風量調整装置(A)においても、実施形態2の変形例を適用してもよい。その結果、上記実施形態においても、実施形態2の変形例と同様の作用効果を得ることができる。
【0303】
上記実施形態の送風量調整装置(A)においても、実施形態4~7及びこれらの変形例を適用してもよい。その結果、上記実施形態においても、実施形態4~7及びこれらの変形例と同様の作用効果を得ることができる。
【0304】
《その他の実施形態》
上記実施形態、及びそれらの変形例については、以下のような構成としてもよい。
【0305】
上記各実施形態等の送風装置(10)は、空気調和装置に備えられてもよい。この場合、空気調和装置は、送風装置(10)と、送風装置(10)に吸い込まれる供給空気を熱媒体と熱交換させて供給空気の温度を調節する熱交換器とを備える。空気調和装置は、熱交換器を通過する際に温度調節された供給空気を、送風装置(10)によって吹き出す。
【0306】
上記各実施形態等の送風装置(10)では、いわゆるイオン風素子が本体部(15)に設けられていてもよい。イオン風素子は、放電によってプラズマを発生させ、発生したプラズマによって風を生起させるように構成された素子である。
【0307】
上記各実施形態等の送風システム(1)では、記憶部(18)は、送風装置(10)以外の場所に設けられてもよい。例えば、記憶部(18)は、通信回線(45)に接続されたサーバ装置に設けられてもよい。
【0308】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態に係る要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0309】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0310】
以上説明したように、本開示は、送風量調整装置、及び送風システムについて有用である。
【符号の説明】
【0311】
1 送風システム
18 記憶部(送風側記憶部)
30 送風ファン(ファン)
A 送風量調整装置
C 制御部
S 対象空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
【手続補正書】
【提出日】2024-05-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔地の風を対象空間(S)に再現するファン(30)の送風量を調整する送風量調整装置であって、
前記ファン(30)の制御値を出力する制御部を備え、
前記制御部は
前記遠隔地において取得された風に関する風データを取得し、
取得した前記風データに応じた前記制御値とは異なる前記制御値を出力する第1動作と、取得した前記風データに応じた前記制御値を出力する第2動作とを選択的に行う
送風量調整装置。
【請求項2】
前記制御部は前記第1動作において、
前記風データを加工した加工データを生成し、
前記加工データに基づいて出力する前記制御値を決定する
請求項1に記載の送風量調整装置。
【請求項3】
前記制御部は前記第1動作において、
前記風データに応じた前記制御値を決定し、
決定した前記制御値を補正し、該補正した値を出力する前記制御値として決定する
請求項1に記載の送風量調整装置。
【請求項4】
前記制御部は前記第1動作において、前記風データにおける風速の増減傾向と同じ傾向を示す前記制御値を出力する
請求項1に記載の送風量調整装置。
【請求項5】
前記制御部は前記第1動作において、前記ファン(30)から吹き出される空気の平均風速がユーザによって任意に設定された平均風速になるような前記制御値を出力する
請求項4に記載の送風量調整装置。
【請求項6】
前記制御部は前記第1動作において、前記風データに基づくデータに所定の値を乗じる
請求項4に記載の送風量調整装置。
【請求項7】
前記制御部は前記第1動作において、前記風データに基づくデータに対して所定の関数を演算する
請求項4に記載の送風量調整装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記風データの風速値が前記ファン(30)の回転数の上限値を超えた状態が所定時間以上続いたときに、前記第1動作を行う
請求項1に記載の送風量調整装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記風データの風速値がユーザによって予め任意に設定された上限風速を超えた状態が所定時間以上続いたときに、前記第1動作を行う
請求項1に記載の送風量調整装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記風データの風速値が所定の基準値以下の状態が所定時間以上続いたときに、前記風データに基づくデータを増幅させる
請求項1に記載の送風量調整装置。
【請求項11】
前記風データとは異なる風に関する代替データを予め記憶する記憶部(18)を更に備え、
前記制御部は、前記風データの風速値が所定の基準値以下の状態が所定時間以上続いたときに、前記代替データに基づいて出力する前記制御値を決定する
請求項1に記載の送風量調整装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記風データに基づくデータに応じて、自然環境を模した音を発生させるための信号を出力する
請求項1に記載の送風量調整装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1つに記載の前記送風量調整装置を備える送風システム。