(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010284
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】容器の回収方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/06 20060101AFI20240117BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
C08J11/06 ZAB
B08B3/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111527
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 幸子
(72)【発明者】
【氏名】常門 加奈
(72)【発明者】
【氏名】前川 政貴
【テーマコード(参考)】
3B201
4F401
【Fターム(参考)】
3B201AA02
3B201AA21
3B201AB03
3B201AB44
3B201BB24
3B201BB62
3B201BB82
3B201BB88
3B201BB92
3B201BB98
3B201CB12
3B201CC12
4F401AA11
4F401AC10
4F401AD20
4F401BA13
4F401CB09
(57)【要約】
【課題】容器の保管スペースの低減及び洗浄後の容器の衛生品質を高めることができる、容器の回収方法を提供する。
【解決手段】容器の回収方法は、融点もしくはガラス転移点で相転移性を有する熱可塑性形状記憶樹脂シートを、前記融点もしくは前記ガラス転移点以上の温度で成型した容器の回収方法Mcであって、洗浄装置によって、前記容器に前記融点もしくは前記ガラス転移点以上の温度の洗浄液を接触させ、前記容器をシート状に変形させる洗浄工程S6と、シート状に変形された前記容器から前記洗浄液を除去する洗浄液除去工程S7と、前記洗浄液が除去された前記容器を集積する集積工程S8と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点もしくはガラス転移点で相転移性を有する熱可塑性形状記憶樹脂シートを、前記融点もしくは前記ガラス転移点以上の温度で成型した容器の回収方法であって、
洗浄装置によって、前記容器に前記融点もしくは前記ガラス転移点以上の温度の洗浄液を接触させ、前記容器をシート状に変形させる洗浄工程と、
シート状に変形された前記容器から前記洗浄液を除去する洗浄液除去工程と、
前記洗浄液が除去された前記容器を集積する集積工程と、
を有する、容器の回収方法。
【請求項2】
前記熱可塑性形状記憶樹脂シートが相転移性を有する前記融点もしくは前記ガラス転移点は60℃以上、かつ、100℃以下であり、
前記洗浄液は水である、請求項1に記載の容器の回収方法。
【請求項3】
前記洗浄装置は、前記容器に前記洗浄液を接触させる洗浄ノズルと、前記シート状に変形された前記容器に乾燥エアーを供給するエアーノズルと、を有し、
前記洗浄装置によって、前記洗浄液除去工程を行う、請求項1または2に記載の容器の回収方法。
【請求項4】
前記容器は、食品用容器である、請求項1に記載の容器の回収方法。
【請求項5】
集積された前記容器をペレット化するペレット化工程をさらに含む、請求項1に記載の容器の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境意識の高まりから、樹脂製の容器等のリサイクル率を高めることが要求されている。そのため、店舗等で使用済み容器を回収して、該使用済み容器をリサイクルするリサイクルシステムが導入されている。
【0003】
容器のリサイクルシステムとして、特許文献1に記載の化粧用液体包装容器のリサイクルシステムがある。この化粧用液体包装容器のリサイクルシステムは、化粧品店舗において、ユーザーが持参した使用済みの化粧液包装容器を洗浄した後、化粧液を化粧液包装容器に充填して、化粧液包装容器をリユース(再利用)するリサイクルシステムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、弁当や総菜のバリエーションの増加に伴い、食品用容器においては、サイズ、容量、仕切りの有無、及び容器強度を高めるためのリブ構造等が多様化しており、食品用容器の形状のバリエーションが増加している。そのため、店舗等で回収した食品用容器を重ねて保管及び輸送する場合、食品用容器の重量に対する容積が大きくなり易い。したがって、回収した食品用容器を保管するには大きなスペースが必要となり、また、輸送効率を高めることが困難であるため、食品用容器のリサイクルコストを上昇させる要因になっている。
【0006】
また、食品用容器の形状が複雑化しており、各家庭では食品用容器を洗浄し難いため、店頭で回収した食品用容器の保管時における衛生性に対する問題や、リサイクルされる樹脂の品質が低下する等の課題があり、食品用容器のリサイクル率の向上を妨げる大きな要因となっている。
【0007】
特許文献1に記載のリサイクルシステムは、容器のリユースを行うため、容器の形状及び内容物に制約が生じる。したがって、容器の形状および内容物のバリエーションが増加している食品用容器では、同様のリサイクルシステムによってリサイクルを行うことが困難である。
また、特許文献1に記載のリサイクルシステムでは、店頭で使用済み容器の回収及び洗浄を行うため、店頭での保管スペースの制約によって、形状が異なる容器のリサイクルに対応することが困難であった。
さらに、特許文献1に記載のリサイクルシステムでは、使用済み容器が複雑な形状である場合、使用済み容器を十分に洗浄することが困難であるため、洗浄後の容器の衛生品質に悪影響が出やすく、容器形状に制約が生じる。したがって、形状が複雑化している食品用容器に対してはリサイクルを行うことが困難であった。
【0008】
上記事情を踏まえ、本発明は、容器の保管スペースの低減及び洗浄後の容器の衛生性を高めることができる、容器の回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の食品の使用済み容器の回収方法は、融点もしくはガラス転移点で相転移性を有する熱可塑性形状記憶樹脂シートを、前記融点もしくは前記ガラス転移点以上の温度で成型した容器の回収方法であって、洗浄装置によって、前記容器に前記融点もしくは前記ガラス転移点以上の温度の洗浄液を接触させ、前記容器をシート状に変形させる洗浄工程と、シート状に変形された前記容器から前記洗浄液を除去する洗浄液除去工程と、前記洗浄液が除去された前記容器を集積する集積工程と、を有する。
【0010】
上記容器の回収方法では、前記熱可塑性形状記憶樹脂シートが相転移性を有する前記融点もしくは前記ガラス転移点は60℃以上、かつ、100℃以下であることが好ましい。
【0011】
上記容器の回収方法では、前記洗浄装置は、前記容器に前記洗浄液を接触させる洗浄ノズルと、前記シート状に変形された前記容器に乾燥エアーを供給するエアーノズルと、を有し、前記洗浄装置によって、前記洗浄液除去工程を行ってもよい。
【0012】
上記容器の回収方法では、前記容器は、食品用容器であってもよい。
【0013】
上記容器の回収方法では、集積された容器をペレット化するペレット化工程をさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0014】
容器の保管スペースの低減及び洗浄後の容器の衛生性を高めることができる、容器の回収方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る容器のライフサイクルを示すフローチャートである。
【
図2】本実施形態に係る熱可塑性形状記憶樹脂シートの一例を示す斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る食品用容器の一例を示す斜視図である。
【
図4】本実施形態に係る洗浄装置を示す概略図である。
【
図5】本実施形態に係る洗浄装置を示す他の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態について、
図1から
図5を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る容器40のライフサイクルを示すフローチャートである。容器40のライフサイクルは、シート製造工程S1、食品用容器成型工程S2、食品充填工程S3、流通工程S4、喫食S5、洗浄工程S6、洗浄液除去工程S7、集積工程S8、及び回収工程S9から成る。上記の容器40のライフサイクルの各工程のうち、本実施形態に係る容器の回収方法Mcは、洗浄工程S6、洗浄液除去工程S7、集積工程S8、回収工程S9、及び前処理工程S10を有する。
【0017】
以下の説明では、「熱可塑性形状記憶樹脂シート」を単に「樹脂シート」と呼ぶ場合があり、「熱可塑性形状記憶樹脂」を単に「樹脂」と呼ぶ場合がある。
容器40のライフサイクルにおいて、容器40の形状は、
図2に示す樹脂シート40bの形状である形状Aと、
図3に示す食品用容器40aの形状である形状Bと、の間で変化する。「樹脂シート40b」及び「食品用容器40a」は、それぞれ、容器40の一つの態様である。
以下の説明では、「樹脂シート40b」を「容器40b」と呼ぶ場合がある。また「食品用容器40a」を「容器40a」と呼ぶ場合がある。
【0018】
本実施形態では、容器40の材料として、熱可塑性形状記憶樹脂を用いる。熱可塑性形状記憶樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂にマクロモノマーを導入及び架橋した樹脂を用いることができる。本実施形態の熱可塑性形状記憶樹脂が相転移性を有するガラス転移点Tgは、60℃以上、且つ、100℃以下に設定される。なお、熱可塑性形状記憶樹脂が相転移性を有する融点Tmが、60℃以上、且つ、100℃以下であってもよい。これにより、熱可塑性形状記憶樹脂の相転移温度Tptを60℃以上、且つ、100℃以下にできる。
【0019】
図2は、本実施形態に係る熱可塑性形状記憶樹脂シート40bの一例を示す斜視図である。
図1に示すシート製造工程S1では、
図2に示す熱可塑性形状記憶樹脂シート40bを製造する。シート製造工程S1では、相転移温度Tpt以上の加熱温度で十分に溶融した、例えば、ペレット状等の熱可塑性形状記憶樹脂を、図示しないシート成型機でシート状に成型して、
図2に示す樹脂シート40bを作製する。これにより、熱可塑性形状記憶樹脂にシート状の形状である樹脂シート40bの形状Aを記憶させる。
なお、シート成型機としては、真空成型、圧空成型等の一般的なシート成型機を用いることができる。
【0020】
図3は、本実施形態に係る食品用容器40aの一例を示す斜視図である。本実施形態において、食品用容器40aは、食品が充填される容器として用いられる。本実施形態の食品用容器40aは、複数の仕切り40d及び食品用容器40aの強度を高めるためのリブ40eが設けられる。そのため食品用容器40aの形状は、複雑な形状となっている。
【0021】
食品用容器成型工程S2は、樹脂シート40bを食品用容器40aに成型する工程である。食品用容器成型工程S2では、まず、上述のシート成型機によって、樹脂シート40bを熱可塑性形状記憶樹脂の相転移温度Tpt以上の温度で可塑化する。次に、常温以上、且つ、相転移温度Tptよりも低い温度で余熱した食品用容器形状を有するキャビティ型に、可塑化した樹脂シート40bを適切なドローダウン条件下で挿入し、そのまま、樹脂シート40bを相転移温度Tpt以下まで冷却して歪みを固定化する。これにより、食品用容器40aを作製できるとともに、熱可塑性形状記憶樹脂に食品用容器40aの形状である形状Bを記憶させることができる。
上述のように、熱可塑性形状記憶樹脂がシート状の形状である樹脂シート40bの形状Aを記憶している。そのため、形状が形状Bである食品用容器40aを相転移温度Tpt以上に加熱することによって、形状がシート状の形状Aである樹脂シート40bに変形させることができる。
【0022】
食品充填工程S3は、食品用容器40aに食品を充填する工程である。食品を充填した食品用容器40aには、ラップが巻回されてもよく、蓋材が取り付けられてもよい。これにより、食品用容器40aから食品が落下及び漏出することを抑制できる。さらに、食品に埃等が付着することを抑制でき、食品の衛生性を好適に維持できる。なお、上記のラップ及び蓋材は、熱可塑性形状記憶樹脂により成型されていてもよい。この場合、食品用容器40aに加えてラップ及び蓋材も本発明の容器の回収方法によってリサイクルでき、リサイクル率の向上を図ることができる。
【0023】
流通工程S4は、食品が充填された食品用容器40aをスーパーマーケット及びコンビニエンスストア等の店舗等に輸送する工程である。食品が充填された食品用容器40aは、スーパーマーケット及びコンビニエンスストア等の店舗等で販売される。
なお、以下の説明ではスーパーマーケット及びコンビニエンスストア等の店舗等を単に店舗等と呼ぶ。
【0024】
喫食S5では、店舗等において食品が充填された食品用容器40aを購入した消費者が、食品を喫食する。食品が喫食された後の食品用容器40aには、食品の残留物が付着している。
【0025】
図1に示す、洗浄工程S6、洗浄液除去工程S7、及び集積工程S8は、それぞれ、洗浄装置10を用いて行われる工程である。
図4および
図5は、洗浄装置10を示す概略図である。
洗浄装置10は、店舗等の店頭に設置される。洗浄装置10は、シート状の樹脂シート40bへの変形、樹脂シート40bの洗浄、及び樹脂シート40bに付着した洗浄液の除去を行う。また、洗浄装置10には、洗浄及び洗浄液が除去された後の樹脂シート40bが集積される。洗浄装置10は、ケース10aと、洗浄室11と、洗浄部20と、洗浄液Wと、乾燥部30と、集積室35と、を有する。
【0026】
ケース10aは、洗浄装置10の外装である。ケース10aの内部には、洗浄室11、及び集積室35が設けられる。また、ケース10aの内部には、洗浄部20、洗浄液W、乾燥部30が収容される。
【0027】
洗浄室11では、樹脂シート40bへの変形、樹脂シート40bの洗浄、樹脂シート40bに付着した洗浄液の除去を行う。
図4に示すように、洗浄室11は、第1開口部11aを有する。
第1開口部11aは上側に開口する。第1開口部11aに第1蓋部10bが取り付けられると、第1開口部11aが塞がれ、洗浄室11の内部と洗浄装置10の外部とが隔絶される。第1開口部11aから第1蓋部10bが取り外されると、第1開口部11aを介して、洗浄室11の内部は洗浄装置10の外部と繋がる。第1開口部11aから第1蓋部10bが取り外された状態において、洗浄室11の内部に食品用容器40aを搬入すること、及び洗浄室11の内部から洗浄後の樹脂シート40bを搬出することができる。
【0028】
洗浄室11の内部にはラック部12が設けられる。ラック部12には、食品用容器40a又は樹脂シート40bのいずれ一方の形態の容器40が設置される。ラック部12は、複数の仕切り部12aを有する。複数の仕切り部12aは、互いに間隔をあけて配置される。1対の互いに隣り合う仕切り部12aの間に、容器40が設置される。ラック部12の底壁部12bには、複数の孔12cが設けられる。
【0029】
洗浄部20は、ラック部12に設置される食品用容器40aに洗浄液Wを噴霧して、食品用容器40aをシート状の樹脂シート40bに変形させるとともに、樹脂シート40bを洗浄する。洗浄部20は、洗浄ノズル21と、タンク部22と、加熱部23と、ポンプ部24と、第1配管25と、第2配管26と、を有する。なお、本実施形態において洗浄液Wは水である。
【0030】
洗浄ノズル21は、洗浄液Wを噴霧し、洗浄液Wを食品用容器40a及びシート状に変形した樹脂シート40bに接触させる。洗浄ノズル21は、洗浄室11の内部に配置される。本実施形態において、洗浄ノズル21は、ラック部12の下側に配置される。洗浄ノズル21は、ラック部12の上側など他の場所に配置されてもよい。洗浄ノズル21には、複数の洗浄ノズル孔21aが設けられる。
【0031】
タンク部22は、ケース10aの内部に配置される。タンク部22の内部には、洗浄液Wが収容される。
加熱部23は、タンク部22の内部に配置される。加熱部23は、タンク部22の内部に収容される洗浄液Wを加熱する。加熱部23によって、タンク部22の内部に収容される洗浄液Wの温度は、熱可塑性形状記憶樹脂の相転移温度Tpt以上に維持される。
【0032】
第1配管25は、タンク部22とポンプ部24とを繋ぐ。第1配管25の内部には、洗浄液Wが流れる。
第2配管26は、ポンプ部24と洗浄ノズル21とを繋ぐ。第2配管26の内部には、洗浄液Wが流れる。
ポンプ部24は、ケース10aの内部に配置される。ポンプ部24は、タンク部22の内部に収容される洗浄液Wを吸い上げて、洗浄ノズル21に洗浄液Wを供給する。より詳細には、ポンプ部24は、第1配管25を介して、タンク部22の内部に収容される洗浄液Wを吸い上げる。ポンプ部24は、第2配管26を介して、吸い上げた洗浄液Wを洗浄ノズル21に供給する。
【0033】
洗浄装置10が、洗浄部20を動作させると、タンク部22から洗浄ノズル21に供給された洗浄液Wは、複数の洗浄ノズル孔21aを介して、食品用容器40aに向けて噴霧される。食品用容器40aに向けて噴霧される洗浄液Wは、ラック部12の複数の孔12cを通過して、食品用容器40aに接触する。
【0034】
図5に示すように、乾燥部30は、樹脂シート40bに乾燥エアーAdを供給して、樹脂シート40bから洗浄液Wを除去する。乾燥部30は、エアーノズル31と、コンプレッサ32と、第3配管33と、を有する。
【0035】
エアーノズル31は、乾燥エアーAdを樹脂シート40bに供給する。エアーノズル31は、洗浄室11の内部に配置される。本実施形態において、エアーノズル31は、ラック部12の上側に配置される。エアーノズル31は、ラック部12の横側など他の場所に配置されてもよい。エアーノズル31には、複数のエアーノズル孔31aが設けられる。
【0036】
第3配管33は、コンプレッサ32とエアーノズル31とを繋ぐ。
コンプレッサ32は、ケース10aの内部に配置される。コンプレッサ32は、乾燥エアーAdを圧縮するとともに、第3配管33を介して、圧縮した乾燥エアーAdをエアーノズル31に供給する。
【0037】
洗浄装置10が、乾燥部30を動作させると、コンプレッサ32からエアーノズル31に供給された乾燥エアーAdは、複数のエアーノズル孔31aを介して、樹脂シート40bに向けて噴射され、樹脂シート40bと接触する。
【0038】
集積室35は、洗浄及び洗浄液Wが除去された樹脂シート40bを集積する保管スペースである。集積室35は、第2開口部35aを有する。
第2開口部35aは、上側に開口する。第2開口部35aに第2蓋部10cが取り付けられると、第2開口部35aが塞がれ、集積室35の内部と洗浄装置10の外部とが隔絶される。第2開口部35aから第2蓋部10cが取り外されると、第2開口部35aを介して、集積室35の内部は、洗浄装置10の外部と繋がる。第2開口部35aから第2蓋部10cを取り外された状態において、集積室35の内部に樹脂シート40bを搬入すること、及び集積室35の内部から樹脂シート40bを搬出することができる。
なお、洗浄装置10は、集積室35を有していなくてもよい。この場合、樹脂シート40bは店舗に設けられる集積スペースに保管される。
【0039】
集積室35の内部には集積ラック部36が設けられる。集積ラック部36には、洗浄室11において、洗浄及び洗浄液Wが除去された樹脂シート40bが集積される。集積ラック部36には、複数の樹脂シート40bがシート面を鉛直方向に向けて、鉛直方向に積み重ねられて、集積される。複数の樹脂シートは、シート面を水平方向に向けて、水平方向に並んで集積されてもよい。
【0040】
洗浄工程S6では、洗浄装置10により、食品用容器40aを、シート状の樹脂シート40bに変形させるとともに、樹脂シート40bの洗浄を行う。
【0041】
図4に示すように、洗浄工程S6では、まず、食品用容器40aに充填された食品を喫食した消費者が、食品用容器40aを店舗等に持ち運ぶ。その後、消費者は、店舗等に設置された洗浄装置10の第1蓋部10bを第1開口部11aから取り外し、洗浄室11の内部のラック部12に、食品用容器40aを設置する。このとき、ラック部12の互いに隣り合う一対の仕切り部12aの間に、1個の食品用容器40aを設置することが好ましい。これにより、洗浄液Wを食品用容器40aの全体に容易に接触させることができる。なお、ラック部12への食品用容器40aの設置は、店舗等の店員が行ってもよい。
以下の説明において、「消費者等」とは、洗浄工程S6、洗浄液除去工程S7及び集積工程S8の各作業を行う消費者および店員を含む。各作業は、消費者のみによって行われてもよいし、店員のみによって行われてもよいし、消費者と店員とによって行われてもよい。
【0042】
次に、消費者等は、第1蓋部10bを第1開口部11aに取り付けた後に、図示しない操作キーを押圧する。これにより、洗浄装置10は、洗浄部20を動作させて、洗浄ノズル21から洗浄液Wを食品用容器40aに向けて噴霧する。これにより、食品用容器40aに洗浄液Wを接触させることができる。
上述のように、タンク部22の内部に収容される洗浄液Wの温度は熱可塑性形状記憶樹脂の相転移温度Tpt以上に維持されている。つまり、洗浄装置10によって、食品用容器40a、すなわち容器40に熱可塑性形状記憶樹脂の融点Tm又はガラス転移点Tg以上の温度の洗浄液Wを接触させる。食品用容器40aが、洗浄液Wによって、熱可塑性形状記憶樹脂の相転移温度Tpt以上に温められると、食品用容器40aは、
図2に示すシート状の形状Aの樹脂シート40bに変形する。
【0043】
洗浄装置10は、食品用容器40aが樹脂シート40bに変形した後も、継続して洗浄部20を動作させる。樹脂シート40bに洗浄液Wが噴射されると、樹脂シート40bの形状は平面状のシート状であるため、樹脂シート40bの表面に付着している食品の残留物を容易に除去でき、樹脂シート40b、すなわち容器40の洗浄効率を高めることができる。したがって、回収した容器40の衛生性を高めることができる。樹脂シート40bの表面に付着している食品の残留物の除去が終了すると、洗浄装置10は、洗浄部20の動作を停止し、洗浄工程S6が終了する。
【0044】
洗浄液除去工程S7では、洗浄装置10は、シート状に変形された樹脂シート40bから洗浄液Wを除去する。洗浄工程S6が終了すると、
図5に示すように、洗浄装置10は、乾燥部30を動作させて、エアーノズル31から乾燥エアーAdを樹脂シート40bに向けて噴射させる。乾燥エアーAdが樹脂シート40bの表面に接触すると、樹脂シート40bの表面に付着している洗浄液Wは乾燥エアーAdによって吹き飛ばされる。これにより、樹脂シート40bから洗浄液Wが除去される。
本実施形態の洗浄装置10では、洗浄工程S6が終了すると、洗浄液除去工程S7が自動的に開始されるが、洗浄装置10の動作はこれに限定されない。例えば、洗浄装置10は洗浄工程S6が終了した後に動作を停止し、消費者等が図示しない操作キーを押圧した後に、洗浄液除去工程S7を開始してもよい。
また、本実施形態において、洗浄液除去工程S7は、洗浄装置10の乾燥部30によって行われるが、洗浄液除去工程S7は、洗浄装置10と別個に設けられる図示しない乾燥装置等によって行われてもよい。この場合、洗浄装置10は、乾燥部30を有しなくてもよい。
【0045】
集積工程S8では、洗浄液Wが除去された樹脂シート40b、すなわち容器40を、集積室35内の集積ラック部36に集積する。本実施形態の集積工程S8において、集積ラック部36への樹脂シート40bの集積は、消費者等の手作業によって行われる。洗浄液除去工程S7が終了すると、消費者等は、第1開口部11aから第1蓋部10bを取り外し、洗浄室11内の樹脂シート40bを取り出す。次に、消費者等は、第2開口部35aから第2蓋部10cを取り外し、樹脂シート40bのシート面を鉛直方向に向けて、集積ラック部36に集積する。全ての樹脂シート40bを集積ラック部36に集積すると、消費者等は、第1蓋部10bを第1開口部11aに取り付け、第2蓋部10cを第2開口部35aに取り付ける。樹脂シート40bが、集積室35内に保管されると、集積工程S8が終了する。
【0046】
図5に示すように、集積室35には、複数の樹脂シート40bが、シート面を鉛直方向に向けて、鉛直方向に積み上げられて保管される。そのため、互いに形状が異なる複数の食品用容器40aを鉛直方向に積み上げて保管する場合と比較して、集積室35に保管される樹脂シート40b、すなわち容器40の重量に対する容積を低減できる。したがって、店舗等において、容器40を保管するための保管スペースの容積を低減できる。
更に、上述のように、洗浄工程S6では、シート状に変形した樹脂シート40bの表面に付着した食品の残留物を容易に除去できる。また、洗浄液除去工程S7において、樹脂シート40bから洗浄液Wが除去される。これらにより、集積室35内に保管される樹脂シート40b、すなわち容器40の衛生性を高めることができる。
なお、洗浄装置10は、洗浄室11内の樹脂シート40bを、集積室35の集積ラック部36に集積する搬送部を有していてもよい。この場合、集積工程S8は、洗浄液除去工程S7が終了した後に自動的に行われてもよい。
なお、洗浄装置10が集積室35を有さなくてもよい。この場合、樹脂シート40bは店舗に設けられる集積スペース等に保管される。
【0047】
回収工程S9は、集積室35内に保管される樹脂シート40bを、シート製造を行う工場等に輸送する工程である。回収工程S9において、集積室35内に集積された樹脂シート40bは、リサイクル業者等によって回収され、工場等に輸送される。容器40は、シート状の樹脂シート40bであるため、複数の樹脂シート40bそれぞれのシート面を鉛直方向に向けて、鉛直方向に積み上げて輸送できる。これにより、輸送時の容器40の容積を低減できる。したがって、容器40の輸送効率を高めることができ、輸送コストが増大することを抑制できる。リサイクル業者等が、樹脂シート40bを工場等に輸送すると、回収工程S9が終了する。
【0048】
前処理工程S10は、再びシート製造工程において樹脂シート40bを製造する前に、集積及び回収された樹脂シート40bの前処理を行う工程である。前処理工程S10は、粉砕工程Pc、溶融工程Pm、及びペレット化工程Ppを含む。
【0049】
粉砕工程Pcでは、回収した樹脂シート40bを粉砕機によって粉砕する。粉砕機としては、一般的な粉砕機を用いることができる。粉砕工程Pcによって、樹脂シート40bは、1mm以上、且つ、6mm以下の粒度の樹脂に粉砕される。
【0050】
溶融工程Pmでは、粉砕した樹脂を溶融する。粉砕工程Pcにおいて、樹脂は、粒度が1mm以上、且つ、6mm以下に粉砕されているため、樹脂を容易に溶融させることができる。
【0051】
ペレット化工程Ppでは、溶融した樹脂を押出機によってペレット化する。押出機としては、一般的な押出機を用いることができる。ペレット化工程Ppにおいて、3mm以上、且つ、8mm以下の粒度の樹脂ペレットが成形されると、前処理工程S10が終了する。
【0052】
なお、前処理工程S10は、上記の前処理工程S10に限定されず、以下に説明する前処理工程S101であってもよい。前処理工程S101は、殺菌工程Psを含む。
殺菌工程Psでは、回収した樹脂シート40bに殺菌処理を行い、樹脂シート40bの衛生性を高める。殺菌処理としては、オゾン処理、紫外線処理、ガンマ線処理、酸化エチレンガス処理、及び二酸化塩素処理等を行うことができる。殺菌処理の手法は、樹脂の特性等から適宜選択できる。
【0053】
前処理工程S10が終了すると、上述のシート製造工程S1と同様の工程によって、樹脂ペレットから、新たな樹脂シート40bを作製する。このとき、熱可塑性形状記憶樹脂にシート状の形状である樹脂シート40bの形状Aを記憶させる。
【0054】
シート製造工程S1が終了すると、上述の食品用容器成型工程S2と同様の工程によって、食品用容器40aを作製する。このとき、熱可塑性形状記憶樹脂に食品用容器40aの形状である形状Bを記憶させる。
以後は、
図1に示す容器40のライフサイクルの各工程を順次行うことによって、容器40のリサイクルを行うことができる。
【0055】
なお、回収した樹脂シート40bのサイズ及び厚みが統一化されている場合は、前処理工程S10及びシート製造工程S1を行わず、食品用容器成型工程S2を行い、回収した樹脂シート40bから、直接、食品用容器40aを作製することも可能である。この場合、樹脂への着色も統一化されていることが望ましい。
【0056】
本実施形態によれば、融点Tmもしくはガラス転移点Tgで相転移性を有する熱可塑性形状記憶樹脂シート40bを、融点Tmもしくはガラス転移点Tg以上の温度で成型した容器40aの回収方法であって、洗浄装置10によって、容器40aに融点Tmもしくはガラス転移点Tg以上の温度の洗浄液Wを接触させ、容器40aをシート状に変形させる洗浄工程S6と、シート状に変形された容器40bから洗浄液Wを除去する洗浄液除去工程S7と、洗浄液Wが除去された容器40bを集積する集積工程S8と、を有する。よって、複数の容器40aそれぞれの形状が互いに異なる形状であっても、洗浄工程S6において、各容器40aをシート状に変形できるため、シート状の容器40bを重ねて集積して保管できる。そのため、様々な形状の容器40aのリサイクルを行う場合であっても、容器40bの保管スペースの低減、及び容器40bの輸送効率の向上を図ることができ、容器40のリサイクルコストが増大することを抑制できる。
【0057】
本実施形態によれば、複雑な形状の容器40aのリサイクルを行う場合であっても、洗浄工程S6において、シート状に変形した容器40bを洗浄するため、容器40の洗浄効率を高めることができる。よって、集積した容器40bを保管する際における、容器40bの衛生性を高めることができるとともに、熱可塑性形状記憶樹脂の品質が悪化することを抑制できる。したがって、容器40のリサイクル率の向上を図ることができる。
【0058】
本実施形態によれば、熱可塑性形状記憶樹脂シート40bが相転移性を有する融点Tmもしくはガラス転移点Tgは60℃以上、かつ、100℃以下であり、洗浄液Wは水である。よって、常圧下において、水が到達できる温度で、容器40aをシート状に変形させることができる。そのため、洗浄液Wとして水を使用でき、洗浄液Wのコストが増大することを抑制できる。また、洗浄装置10を構成する各部材等として、高い耐熱性能を有する部材を使用する必要が無いため、洗浄装置10の低コスト化を図ることができる。したがって、容器40のリサイクルコストが増大することを抑制できる。
【0059】
本実施形態によれば、洗浄装置10は、容器40aに洗浄液Wを接触させる洗浄ノズル21と、シート状に変形された容器40bに乾燥エアーを供給するエアーノズル31と、を有し、洗浄装置10によって、洗浄液除去工程S7を行う。よって、洗浄工程S6の後に洗浄装置10とは別個の装置で洗浄液除去工程S7を行う場合と比較して、店舗等における装置の設置スペースの低減を図ることができる。したがって、容器40のリサイクルを行うために必要な店舗等を多く設けることができ、容器40のリサイクル率の向上を図ることができる。
また、本実施形態では、洗浄装置10によって、洗浄工程S6が終了した後に、洗浄液除去工程S7が自動的に行われるため、容器40aに洗浄工程S6および洗浄液除去工程S7を行うための、消費者等の労力が増大することを抑制できる。
【0060】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の一実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0061】
熱可塑性形状記憶樹脂の材料は本実施形態に限定されず、様々な材料を選択でき、例えば、ポリカプロラクトン(PCL)を用いることができる。この場合、相転移温度は60℃程度であるため、本実施形態の洗浄装置によって、容器をシート状の樹脂シートに変形させることができる。
【0062】
また、容器の形状は本実施形態の形状に限定されず、様々な形状を採用することができる。容器の形状は、例えば、仕切りが無い形状およびリブが無い形状であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 洗浄装置
21 洗浄ノズル
31 エアーノズル
40 容器
40a 容器(食品用容器)
40b 容器(樹脂シート)
Mc 容器の回収方法
S6 洗浄工程
S7 洗浄液除去工程
S8 集積工程
Pp ペレット化工程
W 洗浄液