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特開2024-102860エポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物、及び炭素繊維強化複合材料
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  • 特開-エポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物、及び炭素繊維強化複合材料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102860
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物、及び炭素繊維強化複合材料
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/10 20060101AFI20240725BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C08G59/10
C08J5/04 CFC
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006907
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今井 嵩
(72)【発明者】
【氏名】中西 政隆
(72)【発明者】
【氏名】鎗田 正人
【テーマコード(参考)】
4F072
4J036
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AD31
4F072AE01
4F072AF14
4F072AF19
4F072AF28
4F072AL01
4J036AA01
4J036AH07
4J036AJ03
4J036AJ15
4J036AJ17
4J036DA01
4J036DB06
4J036DB15
4J036DB20
4J036DB21
4J036DB22
4J036DC02
4J036DC03
4J036DC05
4J036DC10
4J036DC13
4J036DC14
4J036DC16
4J036DC21
4J036DC31
4J036DC48
4J036FB07
4J036FB13
4J036HA12
4J036JA11
4J036JA15
(57)【要約】
【課題】
本発明は、低吸水性、ハンドリング性に優れ、吸水後の特性変化の少ないエポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物及びその硬化物を提供する。
【解決手段】
下記式(1)で表されるエポキシ樹脂。
【化1】
(式(1)中、nは繰り返し数であり、nの平均値naveは、0<nave<10である。)
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるエポキシ樹脂。
【化1】
(式(1)中、nは繰り返し数であり、nの平均値naveは、0<nave<10である。)
【請求項2】
エポキシ当量が124g/eq.以上160g/eq.以下である請求項1に記載のエポキシ樹脂。
【請求項3】
50℃における粘度が2Pa・s以上20Pa・s以下である請求項1に記載のエポキシ樹脂。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂と、硬化剤とを有する硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項6】
請求項4に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる炭素繊維強化複合材料。
【請求項7】
エピハロヒドリンと3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンを40℃以上140℃以下で0.5時間以上100時間以下反応させた後、アルカリ金属水酸化物と反応させて得られる下記式(1)で表されるエポキシ樹脂の製造方法。
【化2】
(式(1)中、nは繰り返し数であり、nの平均値naveは、0<nave<10である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維強化複合材料に好適なエポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物、およびこれらを硬化した炭素繊維強化複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。エポキシ樹脂および硬化剤をマトリックス樹脂として強化繊維に含浸、硬化させた炭素繊維強化複合材料(CFRP)は、軽量化・高強度化といった特性を付与できることから、近年、航空機構造用部材、風車の羽根、自動車外板およびICトレイやノートパソコンの筐体(ハウジング)などのコンピュータ用途等に広く展開され、その需要は増加しつつある。特に、その成型体の軽量且つ高強度という特性をいかし、航空機用途のマトリックスレジンに使用されている。
【0003】
CFRP等のマトリックスレジンに使用される樹脂として使用されるエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂硬化物は一般的にもろく、航空宇宙用や車両などの構造材料に適応する場合は高い機械的強度が必要になる。この熱硬化性樹脂の低い曲げ強度、靭性、接着性等を補うために熱硬化性樹脂マトリックスに強靭性の高い熱可塑性樹脂を添加する方法が広く知られている(特許文献1~3)。具体的にはポリエーテルスルホンやポリエーテルイミド、ポリアミド等の熱可塑性樹脂の粒子を熱硬化性樹脂マトリックス樹脂に組み合わせることでプリプレグの曲げ強度や靭性を向上させている。
【0004】
近年、CFRPに対する要求特性は厳しくなっており、航空宇宙用途や車両などの構造材料に適用する場合は180℃以上の耐熱性が必要となっている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60-243113号公報
【特許文献2】特開平09-100358号公報
【特許文献3】特開2013-155330号公報
【特許文献4】国際公開第2010/204173号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
耐熱性の高いエポキシ樹脂としてはグリシジルアミン系の材料が挙げられるが、グリシジルアミン系材料は高い耐熱性を有するものの、吸水率が高く、吸水後の特性悪化の課題がある。
【0007】
本発明は、上記状況を鑑みてなされたものであり、低吸水性、ハンドリング性に優れ、吸水後の特性変化の少ないエポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物及びその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、以下の[1]~[7]に示すものである。なお、本発明において「(数値1)~(数値2)」は上下限値を含むことを示す。
[1]
下記式(1)で表されるエポキシ樹脂。
【0009】
【化1】
【0010】
(式(1)中、nは繰り返し数であり、nの平均値naveは、0<nave<10である。)
[2]
エポキシ当量が124g/eq.以上160g/eq.以下である前項[1]に記載のエポキシ樹脂。
[3]
50℃における粘度が2Pa・s以上20Pa・s以下である前項[1]または[2]に記載のエポキシ樹脂。
[4]
前項[1]から[3]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂と、硬化剤とを有する硬化性樹脂組成物。
[5]
前項[4]に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
[6]
前項[4]に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる炭素繊維強化複合材料。
[7]
エピハロヒドリンと3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンを40℃以上140℃以下で0.5時間以上100時間以下反応させた後、アルカリ金属水酸化物と反応させて得られる下記式(1)で表されるエポキシ樹脂の製造方法。
【0011】
【化2】
【0012】
(式(1)中、nは繰り返し数であり、nの平均値naveは、0<nave<10である。)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低吸水性、ハンドリング性に優れ、吸水後の特性変化の少ないエポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物、およびこれらを硬化した炭素繊維強化複合材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1のエポキシ樹脂1のGPCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のエポキシ樹脂は、下記式(1)で表される。
【0016】
【化3】
【0017】
式(1)中、nは繰り返し数であり、0≦n≦20であることが好ましく、0<n<10であることがさらに好ましく、0<n<5であることが特に好ましい。nの平均値naveは、0<nave<10であることが好ましく、さらに好ましくは0<nave<5、特にに好ましくは0.1<nave<3である。nave=0であると結晶性が高く、流動性、ハンドリング性に課題を抱え、nave≧10であると高粘調となるため、ハンドリング性に課題を抱える。一方、0<nave<10の範囲であれば、液状であって流動性、ハンドリング性に優れる。
【0018】
前記式(1)中、nの値はエポキシ樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、検出器:RI)の測定により求められた数平均分子量、あるいは分離したピークの各々の面積比から算出することが出来る。なお、本発明においてゲルパーミエーションクロマトグラフィーは後述の実施例記載の条件にて測定している。
【0019】
本発明のエポキシ樹脂のエポキシ当量は、124g/eq.以上160g/eq.以下であることが好ましく、124g/eq.以上140g/eq.未満であることがより好ましい。エポキシ当量が124g/eq.以上であると結晶化せずに液状でハンドリング性が良くなり、160g/eq.以下であると低粘度でハンドリング性がよくなり、かつ高強度、高耐熱となる。
【0020】
本発明のエポキシ樹脂の50℃における粘度は、2Pa・s以上20Pa・s以下であることが好ましく、5Pa・s以上20Pa・s以下であることが更に好ましく、5Pa・s以上20Pa・s以下であることが特にに好ましい。粘度が2Pa・s以上であると、適切な分子量分布になっている、もしくは溶剤等の残留がないことを意味し、耐熱性が良好となり、硬化不良、成形時のボイドなどの課題を抑制できる、一方、粘度が20Pa・s以下であると流動性が良くハンドリングが良好となる。
【0021】
つづいて、本発明のエポキシ樹脂を得る反応について説明する。
本発明のエポキシ樹脂は、例えば、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンとエピハロヒドリンとを40~140℃で0.5~100時間ハロヒドリン化反応させた後、アルカリ金属水酸化物を添加して20~120℃で1~10時間エポキシ化反応させて得られる。
【0022】
原料アミンである3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンは、例えば、カヤボンドC-200S(日本化薬株式会社製)などが使用できる。エピハロヒドリンは、例えば、エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリンなどが使用できる。エピハロヒドリンの使用量は原料アミンのアミノ基1モルに対し好ましくは4.0~20モル、さらに好ましくは6.0~16.0モル、より好ましくは7.0~12.0モルである。
【0023】
ハロヒドリン化反応を促進するためにメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類を添加してもかまわない。アルコール類の使用量としては原料アミンのアミノ基1モルに対し好ましくは20~100gであり、さらに好ましくは30~70gである。ハロヒドリン化反応の温度は好ましくは40~140℃であり、さらに好ましくは45~80℃である。反応時間は好ましくは0.5~100時間であり、さらに好ましくは3~30時間、特に好ましくは5~20時間である。反応時間が短いと反応が進みきらず、反応時間が長くなると副生成物ができることから好ましくない。
【0024】
エポキシ化反応において、使用しうるアルカリ金属水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、固形物を利用してもよく、その水溶液を使用してもよいが、本発明においては特に、溶解性、ハンドリングの面からフレーク状に成型された固形物の使用が好ましい。アルカリ金属水酸化物の使用量は原料アミンのアミノ基1モルに対して好ましくは1.80~3.0モルであり、さらに好ましくは1.90~2.50モル、より好ましくは1.98~2.30モルである。
【0025】
また、エポキシ化反応を促進するためにテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加してもかまわない。4級アンモニウム塩の使用量としては原料アミンのアミノ基1モルに対し好ましくは0.1~30gであり、さらに好ましくは0.2~20gである。
【0026】
エポキシ化反応の温度は好ましくは30~80℃であり、さらに好ましくは45~75℃である。反応時間は好ましくは0.5~10時間であり、さらに好ましくは1~8時間、特に好ましくは1~3時間である。反応時間が短いと反応が進みきらず、反応時間が長くなると副生成物ができることから好ましくない。
【0027】
これらのエポキシ化反応の反応物を水洗後、加熱減圧下でエピハロヒドリンや溶媒等を除去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、回収したエポキシ樹脂を炭素数4~7のケトン化合物(たとえば、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。)もしくは炭素数4~8の炭化水素化合物(たとえば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等が挙げられる。)を溶剤として溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて反応を行い、閉環を確実なものにすることも出来る。この場合アルカリ金属水酸化物の使用量はエポキシ化に使用した原料アミンのアミノ基1モルに対して好ましくは0.01~0.6モル、さらに好ましくは0.05~0.4モルである。反応温度は好ましくは50~120℃、反応時間は好ましくは0.5~2時間である。
【0028】
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に加熱減圧下溶剤を留去することにより本発明のエポキシ樹脂が得られる。
【0029】
本発明の硬化性樹脂組成物は本発明のエポキシ樹脂とともに硬化剤を含有する。用い得る硬化剤としては、例えばアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミド系硬化剤、及びフェノール系硬化剤等が挙げられる。
【0030】
本発明の硬化性樹脂組成物においては、樹脂粘度と硬化物の耐熱性をバランス良く両立できるためアミン系硬化剤を用いることが好ましい。アミン系硬化剤としては、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DDS)、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、3,3’-ジイソプロピル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジ-t-ブチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジイソプロピル-5,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジ-t-ブチル-5,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジイソプロピル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジ-t-ブチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトライソプロピル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジ-t-ブチル-5,5’-ジイソプロピル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラ-t-ブチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル(DADPE)、ビスアニリン、ベンジルジメチルアニリン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP-10)、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP-30)、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールの2-エチルヘキサン酸エステル等を使用することができる。また、アニリンノボラック、オルソエチルアニリンノボラック、アニリンとキシリレンクロライドとの反応により得られるアニリン樹脂、アニリンと置換ビフェニル類(4,4’-ビス(クロルメチル)-1,1’-ビフェニル及び4,4’-ビス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル等)、若しくは置換フェニル類(1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン及び1,4-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等)等との重縮合により得られるアニリン樹脂等が挙げられる。
【0031】
酸無水物系硬化剤としては無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0032】
アミド系硬化剤としては、ジシアンジアミド、若しくはリノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0033】
フェノール系硬化剤としては、多価フェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’-テトラメチル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン及び1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン等);フェノール類(例えば、フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン及びジヒドロキシナフタレン等)と、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、o-ヒドロキシベンズアルデヒド及びフルフラール等)、ケトン類(p-ヒドロキシアセトフェノン及びo-ヒドロキシアセトフェノン等)、若しくはジエン類(ジシクロペンタジエン及びトリシクロペンタジエン等)との縮合により得られるフェノール樹脂;前記フェノール類と、置換ビフェニル類(4,4’-ビス(クロルメチル)-1,1’-ビフェニル及び4,4’-ビス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル等)、若しくは置換フェニル類(1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン及び1,4-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等)等との重縮合により得られるフェノール樹脂;前記フェノール類及び/又は前記フェノール樹脂の変性物;テトラブロモビスフェノールA及び臭素化フェノール樹脂等のハロゲン化フェノール類が挙げられる。
【0034】
本発明の硬化性樹脂組成物において硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.7~1.2当量が好ましい。エポキシ基1当量に対して0.7当量に満たない場合、或いは1.2当量を越える場合、いずれも硬化が不完全になり、良好な硬化物性が得られない恐れがある。
【0035】
また本発明の硬化性樹脂組成物においては必要に応じて、硬化促進剤を配合しても良い。硬化促進剤を使用することによりゲル化時間を調整することも出来る。使用できる硬化促進剤の例としては2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザ-ビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物が挙げられる。硬化促進剤はエポキシ樹脂100重量部に対して0.01~5.0重量部が必要に応じ用いられる。
【0036】
本発明の硬化性樹脂組成物においては、他のエポキシ樹脂を配合しても良く、具体例としては、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド等)との重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物(ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレン等)との重合物、フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等)との重縮合物、フェノール類と置換ビフェニル類(4,4’-ビス(クロルメチル)-1,1’-ビフェニル及び4,4’-ビス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル等)、若しくは置換フェニル類(1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン及び1,4-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等)等との重縮合により得られるフェノール樹脂、ビスフェノール類と各種アルデヒドの重縮合物、アルコール類等をグリシジル化したグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、4-ビニル-1-シクロヘキセンジエポキシドや3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシラートなどを代表とする脂環式エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)やトリグリシジル-p-アミノフェノールなどを代表とするグリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等が挙げられるが、通常用いられるエポキシ樹脂であればこれらに限定されるものではない。
【0037】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて公知の添加剤を配合することが出来る。用いうる添加剤の具体例としては、ポリブタジエン及びこの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、フッ素樹脂、マレイミド系化合物、シアネートエステル系化合物、シリコーンゲル、シリコーンオイル、並びにシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、石英粉、アルミニウム粉末、グラファイト、タルク、クレー、酸化鉄、酸化チタン、窒化アルミニウム、アスベスト、マイカ、ガラス粉末等の無機充填材、シランカップリング剤のような充填材の表面処理剤、離型剤、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の着色剤が挙げられる。
【0038】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて公知のマレイミド系化合物を配合することができる。用いうるマレイミド化合物の具体例としては、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2’-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビフェニルアラルキル型マレイミドなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。マレイミド系化合物を配合する際は、必要により硬化促進剤を配合するが、前記硬化促進剤や、有機化酸化物、アゾ化合物などのラジカル重合開始剤など使用できる。
【0039】
本発明の硬化性樹脂組成物は、有機溶剤を添加しワニス状の組成物(以下、単にワニスともいう。)とすることができる。用いられる溶剤としては、例えばγ-ブチロラクトン類、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶剤、テトラメチレンスルフォン等のスルフォン類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤が挙げられる。溶剤は、得られたワニス中の溶剤を除く固形分濃度が好ましくは10~80重量%、さらに好ましくは20~70重量%となる範囲で使用する。
【0040】
本発明の硬化性樹脂組成物は、樹脂シート、プリプレグ、炭素繊維複合材料として活用することもできる
本発明の硬化性樹脂組成物を支持基材の片面または両面に塗布し、樹脂シートとして用いてもよい。塗布方法としては、例えば、注型法、ポンプや押し出し機等により樹脂をノズルやダイスから押し出し、ブレードで厚さを調整する方法、ロールによりカレンダー加工して厚さを表製する方法、スプレー等を用いて噴霧する方法等が挙げられる。なお、層を形成する工程においては、硬化性樹脂組成物の熱分解を回避可能な温度範囲で加熱しながら行ってもよい。また、必要に応じて圧延処理、研削処理等を施してもよい。支持基材としては、例えば紙、布、不織布等からなる多孔質基材、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルムあるいはシート、ネット、発泡体、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。支持基材に厚さは特に制限されず、用途に応じて適宜に決定される。
【0041】
本発明の硬化性樹脂組成物および/または樹脂シートを加熱溶融して低粘度化して繊維基材に含浸させることにより本発明のプリプレグを得ることができる。
【0042】
また、ワニス状の硬化性樹脂組成物を、繊維基材に含浸させて加熱乾燥させることにより本発明のプリプレグを得ることもできる。上記のプリプレグを所望の形に裁断、積層後、積層物にプレス成形法やオートクレーブ成形法、シートワインディング成形法などで圧力をかけながら硬化性樹脂組成物を加熱硬化させることにより本発明の炭素繊維強化複合材料を得ることができる。また、プリプレグの積層時に銅箔や有機フィルムを積層することもできる。
【0043】
さらに、本発明の炭素繊維強化複合材料の成形方法は、上記の方法のほかに、公知の方法にて成形して得ることもできる。例えば、炭素繊維基材(通常、炭素繊維織物を使用)を裁断、積層、賦形してプリフォーム(樹脂を含浸する前の予備成形体)を作製、プリフォームを成形型内に配置して型を閉じ、樹脂を注入してプリフォームに含浸、硬化させた後、型を開いて成形品を取り出すレジントランスファー成形技術(RTM法)を用いることもできる。
また、RTM法の一種である、例えば、VaRTM法、SCRIMP(Seeman’s Composite Resin Infusion Molding Process)法、特表2005-527410記載の樹脂供給タンクを大気圧よりも低い圧力まで排気し、循環圧縮を用い、かつ正味の成形圧力を制御することにとよって、樹脂注入プロセス、特にVaRTM法をより適切に制御するCAPRI(Controlled Atmospheric Pressure Resin Infusion)法なども用いることができる。
【0044】
さらに、繊維基材を樹脂シート(フィルム)で挟み込むフィルムスタッキング法や、含浸向上のため強化繊維基材にパウダー状の樹脂を付着させる方法、繊維基材に樹脂を混ぜる過程において流動層あるいは流体スラリー法を用いる成形方法(Powder Impregnated Yarn)、繊維基材に樹脂繊維を混繊させる方法も用いることができる。
【0045】
炭素繊維としては、アクリル系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が挙げられ、なかでも引張強度の高いアクリル系の炭素繊維が好ましく用いられる。炭素繊維の形態としては、有撚糸、解撚糸および無撚糸等を使用することができるが、繊維強化複合材料の成形性と強度特性のバランスが良いため、解撚糸または無撚糸が好ましく用いられる。
【実施例0046】
以下に合成例および実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
以下に実施例で用いた各種分析方法について記載する。
【0047】
各種分析方法について以下の条件で行った。
・エポキシ当量
JIS K-7236に記載された方法で測定し、単位はg/eq.である。
・粘度
E型粘度(50℃)コーンプレート法で測定し、単位はPa・sである。
・GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析
メーカー:Waters
カラム:ガードカラム SHODEX GPC KF-601、KF-602 KF-602.5、KF-603
流速:0.5ml/min.
カラム温度:40℃
使用溶剤:THF(テトラヒドロフラン)
検出器:RI(示差屈折検出器)
【0048】
[実施例1]
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(商品名:カヤボンドC-200S 日本化薬株式会社製)84部に対しエピクロルヒドリン366部、メタノール37部、水11部を仕込み撹拌下で55℃まで昇温して12時間反応させた後、80℃まで昇温して6時間反応させた。次いで、温度を50℃まで下げフレーク状水酸化ナトリウム60部を90分かけて分割添加した。更に50℃で1時間反応させた後、70℃に昇温して1時間反応させた。次いで水を200部加えて水洗を行い、130℃加熱減圧下でエバポレーターを用いて油層から過剰のエピクロルヒドリンを除去した。残留分にトルエン316部を加えて溶解し、70℃で30%水酸化ナトリウム水溶液14部を加えて1時間反応を行った。反応後、水洗を3回行い、精製塩などを除去した。140℃加熱減圧下でトルエンを留去し、前記式(1)で表されるエポキシ樹脂1 155部を得た。得られたエポキシ樹脂は常温において液状であり、エポキシ当量は132g/eq、50℃における粘度は7.2Pa・sであった。得られたエポキシ樹脂のGPCチャートを図1に示す。nの平均値naveは0.2であった。
【0049】
[実施例2、比較例1]
実施例1で得られたエポキシ樹脂1、N,N、N’,N’-テトラグリシジル-4,4-ジアミノジフェニルメタン(略称:TGDDM アルドリッチ社製)、及び4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(略称:DDS、硬化剤)を表1の割合(重量部)で配合し、160℃6時間の硬化条件で硬化させ、硬化物の物性評価(初期)を行った。また、硬化物を80℃の水に14日間浸漬した後にも物性評価(吸水後)を行った。これらの結果は表1に記す。なお、TGDDMは常温において液状であり、エポキシ当量は106g/eq、50℃における粘度は4.5Pa・sであった。
【0050】
物性値の測定は以下の条件で測定した。
<曲げ強度、曲げ弾性率 測定条件>
・JIS K-7074に従い測定した。
<吸水率>
・初期と吸水後の硬化物の重量増加率(%)
【0051】
【表1】
【0052】
表1の結果より、本願のエポキシ樹脂を用いた実施例2は吸水率が低く、吸水後の物性変化が少ないことが確認された。


図1