(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102864
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】両面粘着部材およびその分離方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/29 20180101AFI20240725BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240725BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C09J7/29
C09J7/38
C09J133/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006920
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000145079
【氏名又は名称】株式会社寺岡製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】笠原 萌恵
(72)【発明者】
【氏名】坪内 一誠
(72)【発明者】
【氏名】土屋 靖史
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA06
4J004CB04
4J004CC03
4J004DB02
4J004EA01
4J004EA05
4J004FA01
4J004FA08
4J040DF001
4J040JA09
4J040JB09
4J040MA02
4J040MA05
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA17
4J040NA19
4J040PA23
(57)【要約】
【課題】重量物を保持することのできる高い保持力を備える一方で、部材の解体の際に容易に破壊することのできる易解体性、および解体時の低発塵性を兼ね備えた両面粘着部材が求められている。
【解決手段】
発泡体を備える発泡体層と、一の面が発泡体層の一の面に固着された第1樹脂フィルムと、一の面が発泡体層の他の面に固着された第2樹脂フィルムと、を備える中間層と、第1樹脂フィルムの他の面に形成された第1粘着剤層と、第2樹脂フィルムの他の面に形成された第2粘着剤層と、を備える両面粘着部材により解決する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体を備える発泡体層と、
一の面が前記発泡体層の一の面に固着された第1樹脂フィルムと、
一の面が前記発泡体層の他の面に固着された第2樹脂フィルムと、を備える中間層と、
前記第1樹脂フィルムの他の面に形成された第1粘着剤層と、
前記第2樹脂フィルムの他の面に形成された第2粘着剤層と、を備える両面粘着部材であって、
前記発泡体は連続気泡を有し、
前記第1樹脂フィルムと前記発泡体層との固着力および前記第2樹脂フィルムと前記発泡体層との固着力は、前記第1粘着剤層および前記第2粘着剤層のそれぞれの粘着力より大きい両面粘着部材。
【請求項2】
請求項1に記載の両面粘着部材であって、
前記発泡体はポリウレタンである両面粘着部材。
【請求項3】
請求項1に記載の両面粘着部材であって、
前記発泡体層の面方向に前記連続気泡に亀裂が生じて前記第1粘着剤層と前記第2粘着剤層との側に前記発泡体層を2つに分離するために必要な破壊強度は、前記第1樹脂フィルムと前記発泡体層との前記固着力および前記第2樹脂フィルムと前記発泡体層との前記固着力のいずれよりも小さい両面粘着部材。
【請求項4】
請求項3に記載の両面粘着部材であって、
前記発泡体の密度は1立方センチメートルあたり0.2グラム以下であって、前記破壊強度は1ミリメートル幅当たり1ニュートン以下である両面粘着部材。
【請求項5】
請求項1に記載の両面粘着部材であって、
前記第1樹脂フィルムは前記第2樹脂フィルムより伸び率が大きいエラストマーフィルムである両面粘着部材。
【請求項6】
請求項5に記載の両面粘着部材であって、
前記エラストマーフィルムはポリウレタンフィルムであり、
前記第2樹脂フィルムはポリエステルフィルムである両面粘着部材。
【請求項7】
請求項5に記載の両面粘着部材であって、
前記両面粘着部材は前記エラストマーフィルムが前記第2樹脂フィルムよりも内側になるようにロール化されたシートまたはテープの態様をとる両面粘着部材。
【請求項8】
請求項6に記載の両面粘着部材であって、
前記両面粘着部材は前記エラストマーフィルムが前記第2樹脂フィルムよりも内側になるようにロール化されたシートまたはテープの態様をとる両面粘着部材。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の両面粘着部材であって、
前記第1粘着剤層に含まれる粘着剤と前記第2粘着剤層に含まれる粘着剤との少なくとも一方はアクリル系粘着剤である両面粘着部材。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の両面粘着部材であって、
前記両面粘着部材は第1被着体と第2被着体とを接合するものであって、
前記第1粘着剤層と前記第2粘着剤層との一方は、前記第1被着体と前記第2被着体との一方に取り付けられ、
前記第1粘着剤層と前記第2粘着剤層との他方は、前記第1被着体と前記第2被着体との他方に取り付けられている両面粘着部材。
【請求項11】
請求項10に記載の両面粘着部材であって、
前記第1被着体と前記第2被着体とは、液晶材料または有機EL材料を備えるディスプレイパネルを構成する部材である両面粘着部材。
【請求項12】
両面粘着部材により接合された第1被着体と第2被着体とを分離する分離方法であって、
前記両面粘着部材は、
発泡体を備える発泡体層と、
一の面が前記発泡体層の一の面に固着される第1樹脂フィルムと、
一の面が前記発泡体層の他の面に固着される第2樹脂フィルムと、を備える中間層と、
前記第1樹脂フィルムの他の面に固着された第1粘着剤層と、
前記第2樹脂フィルムの他の面に固着された第2粘着剤層と、を備え、
前記発泡体は連続気泡を有し、
前記第1樹脂フィルムと前記発泡体層との固着力および前記第2樹脂フィルムと前記発泡体層との固着力は、前記第1粘着剤層および前記第2粘着剤層のそれぞれの粘着力より大きく、
前記第1粘着剤層と前記第2粘着剤層との一方が前記第1被着体と前記第2被着体との一方に、前記第1粘着剤層と前記第2粘着剤層との他方が前記第1被着体と前記第2被着体との他方に、それぞれ取り付けられていて、
前記分離方法は、
前記発泡体層の面方向に前記連続気泡に亀裂を与えて、前記第1粘着剤層と前記第2粘着剤層との側に前記発泡体層を第1分離発泡体と第2分離発泡体とに分離して前記第1被着体と前記第2被着体とをそれぞれ分離する分離工程と、
前記分離工程の後に、前記第1被着体から前記第1粘着剤層を、前記第2被着体から前記第2粘着剤層を、それぞれ剥離する剥離工程と、を備える分離方法。
【請求項13】
請求項12に記載の分離方法であって、
前記発泡体はポリウレタンである分離方法。
【請求項14】
請求項12に記載の分離方法であって、
前記発泡体層の面方向に前記連続気泡に亀裂が生じて前記第1粘着剤層と前記第2粘着剤層との側に前記発泡体層を2つに分離するために必要な破壊強度は、前記第1樹脂フィルムと前記発泡体層との前記固着力および前記第2樹脂フィルムと前記発泡体層との前記固着力のいずれよりも小さい分離方法。
【請求項15】
請求項12に記載の分離方法であって、
前記第1樹脂フィルムは前記第2樹脂フィルムより伸び率が大きいエラストマーフィルムである分離方法。
【請求項16】
請求項15に記載の分離方法であって、
前記エラストマーフィルムはポリウレタンフィルムであり、
前記第2樹脂フィルムはポリエステルフィルムである分離方法。
【請求項17】
請求項12から16のいずれか一項に記載の分離方法であって、
前記第1粘着剤層に含まれる粘着剤と前記第2粘着剤層に含まれる粘着剤との少なくとも一方はアクリル系粘着剤である分離方法。
【請求項18】
請求項12から16のいずれか一項に記載の分離方法であって、
前記第1被着体と前記第2被着体とは、液晶材料または有機EL材料を備えるディスプレイパネルを構成する部材である分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は両面粘着部材に関し、より特には、両面が接着対象物に固着された後に中間層が容易に破壊可能な両面粘着部材およびその分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
両面粘着部材では、部材の固定のために、2つの部材を十分に保持するための保持力が求められる。たとえば、両面粘着部材として、特許文献1および特許文献2には、一方の被着体と他方の被着体とを互いに接合させる易解体型両面粘着シートが開示されている。特に、特許文献1では、主に小型の携帯電子機器用の小型の液晶ディスプレイパネルや有機ELディスプレイパネルなど軽量部材の保持に使用される両面テープが開示されている。しかし、大型のディスプレイなど重量が大きい部材に使用される両面粘着部材では、1平方センチメートルあたり240グラム以上の大きな保持力が必要となる。特許文献1に開示される両面テープでは、重量の大きな部材の保持が実現できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2018-511669号公報
【特許文献2】特開2015-34265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、構成する部材の再利用のために、貼り直しや取り外しが容易であることが両面粘着部材に求められる場合がある。たとえば、ディスプレイの分野では、薄型化や高機能化により、構成する部材が高価になり、構成する部材の再利用のために、易解体性が両面粘着部材に求められている。
【0005】
一般に、両面粘着部材において十分な保持力と易解体性は相反する性能であって、特に、大型のディスプレイなど、大きな保持力が求められる両面粘着部材での易解体性は実現が困難となる。
【0006】
これについて、両面粘着部材が2つの部材の貼り合せに使用されている状態で、部材の解体の際に、両面粘着部材の基材を破壊する方法が知られている。しかし、基材としてポリオレフィン発泡体が使用されている両面粘着部材では、基材が高強度を有するため、基材である発泡体を破壊することが困難であった。
【0007】
また、特許文献1で開示される両面テープは、小型の液晶ディスプレイなど軽量部材の保持に使用されるものであるため大きな保持力が不要であるので、発泡体の層間での破壊は容易であるものの、層間強度が弱すぎるので、大型のディスプレイパネルの保持のためには適用ができない問題がある。
【0008】
すなわち、大型のディスプレイなど、重量物を保持することのできる高い保持力を備える一方で、部材の解体の際に容易に破壊することのできる易解体性、および解体時の低発塵性を兼ね備えた両面粘着部材が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発泡体を備える発泡体層と、一の面が前記発泡体層の一の面に固着された第1樹脂フィルムと、一の面が前記発泡体層の他の面に固着された第2樹脂フィルムと、を備える中間層と、前記第1樹脂フィルムの他の面に形成された第1粘着剤層と、前記第2樹脂フィルムの他の面に形成された第2粘着剤層と、を備える両面粘着部材であって、前記発泡体は連続気泡を有し、前記第1樹脂フィルムと前記発泡体層との固着力および前記第2樹脂フィルムと前記発泡体層との固着力は、前記第1粘着剤層および前記第2粘着剤層のそれぞれの粘着力より大きい両面粘着部材により解決する。
【0010】
両面粘着部材により接合された第1被着体と第2被着体とを分離する分離方法であって、前記両面粘着部材は、発泡体を備える発泡体層と、一の面が前記発泡体層の一の面に固着される第1樹脂フィルムと、一の面が前記発泡体層の他の面に固着される第2樹脂フィルムと、を備える中間層と、前記第1樹脂フィルムの他の面に固着された第1粘着剤層と、前記第2樹脂フィルムの他の面に固着された第2粘着剤層と、を備え、前記発泡体は連続気泡を有し、前記第1樹脂フィルムと前記発泡体層との固着力および前記第2樹脂フィルムと前記発泡体層との固着力は、前記第1粘着剤層および前記第2粘着剤層のそれぞれの粘着力より大きく、前記第1粘着剤層と前記第2粘着剤層との一方が前記第1被着体と前記第2被着体との一方に、前記第1粘着剤層と前記第2粘着剤層との他方が前記第1被着体と前記第2被着体との他方に、それぞれ取り付けられていて、前記分離方法は、前記発泡体層の面方向に前記連続気泡に亀裂を与えて、前記第1粘着剤層と前記第2粘着剤層との側に前記発泡体層を第1分離発泡体と第2分離発泡体とに分離して前記第1被着体と前記第2被着体とをそれぞれ分離する分離工程と、前記分離工程の後に、前記第1被着体から前記第1粘着剤層を、前記第2被着体から前記第2粘着剤層を、それぞれ剥離する剥離工程と、を備える分離方法により解決する。
【発明の効果】
【0011】
高い保持力と容易に破壊することのできる易解体性を兼ね備えた両面粘着部材が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本願発明の第1の実施の形態である両面粘着部材の断面図である。
【
図2】本願発明の第1の実施の形態である両面粘着部材の発泡体の内部を概念的に拡大した断面図である。
【
図3】本願発明の第1の実施の形態である両面粘着部材の適用における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1および
図2を参照して、本発明の実施の形態としての両面粘着部材について説明する。
図1は本願発明の第1の実施の形態である両面粘着部材の断面図である。
図2は両面粘着部材の発泡体の内部を概念的に拡大した断面図である。
【0014】
両面粘着部材は、シート状である両面粘着シートまたはテープ状である両面テープの態様をとることができる。以下、両面粘着部材につき、両面テープ1を代表例として説明する。両面テープは一例であって、テープの幅方向を広げることによりシート形状とすることが可能であって、両面粘着シートも両面テープと全く同様に適用できる。両面粘着部材たる両面テープ1は、中間層2と、第1粘着剤層3と、第2粘着剤層4とを備える。
【0015】
中間層2は、発泡体層21と、第1樹脂フィルム22と、第2樹脂フィルム23と、を備える。発泡体層21と、第1樹脂フィルム22と、第2樹脂フィルム23と、のそれぞれは、2つの面を有する形状を形成している。
【0016】
第1樹脂フィルム22の一方の面22aは発泡体層21の一方の面21aに固着され、第2樹脂フィルム23の一方の面23aは発泡体層21の他方の面21bに固着されている。具体的には、発泡体層21と、第1樹脂フィルム22と、第2樹脂フィルム23とは、代表的には、ラミネート成型で一体化するように形成されている。
【0017】
発泡体層21は、一部または全部が、発泡体211で形成される。発泡体211は、内部に、気泡がつながっている連続気泡211aを有している。連続気泡211aは、発泡体211の内の空洞が連結している態様をいう。発泡体の気泡が連続気泡である場合には、アルキメデス法により発泡体の空隙率が画定できる。アルキメデス法は気泡に水を吸収しきった飽水重量を使用して画定されるものであるので、連続気泡でなければ画定が困難である。アルキメデス法による空隙率Pは、P=(飽水状態にある発泡体重量-発泡体の乾燥重量)/(飽水状態にある発泡体重量-発泡体の水中重量)で画定される。本願発明では、発泡体211の空隙率は45パーセント以上である。45パーセントという高い空隙率は連続気泡である態様の証明といえる。発泡体211の連続気泡は易解体性と十分な保持力とを両立させる点で大きく貢献する。
【0018】
連続気泡211aにより、発泡体層21の面方向に連続気泡211aの亀裂21cを生させることが容易になる。発泡体層21の面方向に連続気泡211aに生じる亀裂21cで第1粘着剤層3と第2粘着剤層4との側に発泡体層21が2つに分離するために要する破壊強度は、第1樹脂フィルム22と発泡体層21との固着力および第2樹脂フィルム23と発泡体層21との固着力のいずれよりも小さくすることができる。
【0019】
また、両面粘着部材の発泡体層21を2つの分離した場合には、発泡体211の断片が粘着剤層とともに残留するので、発泡体211の断片がちぎれることないように、発泡体211を部材から除去する必要がある。発泡体層21の切断時には塵が発生しやすいので、発塵の抑制も必要となる場合が多い。両面粘着部材の破壊時において、発泡体層21の体積減少は50平方センチメートルあたり1ミリグラム未満である必要があり、上記の空隙率であれば、発泡体層21の体積減少をこの範囲にとどめることが可能である。
【0020】
発泡体211は代表的にはポリウレタンで形成される。発泡体層21の厚さは、代表的には0.4ミリメートルから1.2ミリメートルである。
【0021】
発泡体211の密度は代表的には1立方センチメートルあたり0.15以上0.2グラム以下である。発泡体211の密度が1立方センチメートルあたり0.2グラムを超えると、易解体性が低下する。一方、発泡体211の密度が1立方センチメートルあたり0.15グラムに満たないと、保持性が低下する。
【0022】
第1樹脂フィルム22は第2樹脂フィルム23より伸縮可能な素材とすることができる。第1樹脂フィルム22は第2樹脂フィルム23より、特に面方向に伸縮可能な素材とすることができる。たとえば、第1樹脂フィルム22は伸び率が大きいエラストマーフィルムとすることができる。第1樹脂フィルム22は面方向に伸縮可能であって、温度23℃、湿度50パーセントの環境下において、5パーセント伸長させるために引張応力が2.5メガパスカルから4.5メガパスカル程度であり、且つ10パーセント伸長させるために必要な応力が4.0メガパスカルから6.0メガパスカル程度である。
【0023】
両面粘着部材たる両面テープ1をロール化する場合には、特に第1樹脂フィルム22として、第2樹脂フィルム23より面方向に伸び率が大きいエラストマーフィルムを選ぶことができる。すなわち、両面テープ1では、実用において、剥離シート(不図示)を第1粘着剤層3または第2粘着剤層4に配置し、使用時に剥離シートを取り除いて使用する。特に、両面テープ1をロール化する場合には、剥離シートが取り付けられた状態で両面テープ1が湾曲する必要があるが、剥離シートの伸び率が小さく剛性が大きくなるので、剥離シートが配置される側が湾曲しにくい。第1樹脂フィルム22たるエラストマーフィルムが第2樹脂フィルム23よりも内側になるように湾曲しやすくなる。そのため、両面テープ1を湾曲させてローラに巻き取るためには、伸び率の大きなエラストマーフィルムが内側であって、剥離シートが配置される第2樹脂フィルム23側が外側にする必要がある。これにより、両面粘着部材をロール化しやすく、ロール化された両面粘着部材としてシートまたはテープの態様をとりやすくなる。特に第2樹脂フィルム23を伸び率の小さいプラスチック系の樹脂フィルムとして選ぶ場合など、ロール化が容易となる。
【0024】
第1樹脂フィルム22の厚さは、代表的には0.02ミリメートルである。第2樹脂フィルム23の厚さは、代表的には0.05ミリメートルである。十分な強度を確保することが可能な厚さである。代表的には、前記第1樹脂フィルム22は、たとえば、ポリウレタンフィルムであり、第2樹脂フィルム23はポリエチレンフィルムまたはポリエステルフィルムである。耐熱性を考慮する場合にはポリエステルフィルムが好ましい。
【0025】
第1粘着剤層3は、第1樹脂フィルム22の他方の面22bに塗布されて形成され、第2粘着剤層4は、第2樹脂フィルム23の他方の面23bに塗布されて形成されている。第1粘着剤層3に含まれる粘着剤と第2粘着剤層4に含まれる粘着剤との少なくとも一方は、アクリル系ポリマーを主成分として含有するアクリル系粘着剤とすることができる。たとえば、第1粘着剤層3と第2粘着剤層4との厚みは、それぞれ約0.05ミリメートルとすることができる。この厚さにより、最も高い粘着特性を得ることができる。
【0026】
金属,ガラス材,PC板等に対する第1粘着剤層および第2粘着剤層の粘着力に対し、第1樹脂フィルム22と発泡体層21との固着力は第1粘着剤層3の粘着力より大きく、第2樹脂フィルム23と発泡体層21との固着力は第2粘着剤層4の粘着力より大きく設定する。たとえば、上記の構成によれば、ステンレス材などの金属に対しての粘着力は1ミリメートル幅あたり0.9ニュートンから1.7ニュートンの粘着力、ガラス材などに対しての粘着力は1ミリメートル幅あたり0.7ニュートンから1.0ニュートンの粘着力、PC板などに対しての粘着力は1ミリメートル幅あたり0.65ニュートンから1.0ニュートンの粘着力となる。
【0027】
発泡体層21の密度を1立方センチメートルあたり0.2グラム以下に設定し発泡体層21を内部に連続気泡が形成される発泡体211とすることで、発泡体層21の面方向に連続気泡211aの亀裂21cが生じて第1粘着剤層3と第2粘着剤層4との側に発泡体層21が2つに分離するに要する破壊強度は、1ミリメートル幅当たり0.35ニュートンから0.65ニュートンの範囲となる。すなわち、破壊強度は1ミリメートル幅当たり1.0ニュートン以下とすることができる。
【0028】
すなわち、第1粘着剤層と第2粘着剤層とのいずれも、前記破壊強度に対して、金属,ガラス材,PC板材のいずれに対しても、最低で1.0倍、概ね1.5倍から2倍程度の粘着力が確保可能である。たとえば、一般的に、両面テープ1の厚みは、0.5ミリメートルから1.3ミリメートル程度に設定することができる。
【0029】
(両面粘着部材の機能)
両面粘着部材たる両面テープ1は、第1被着体71と、第1被着体71に取り付けられるべき第2被着体72と、を備える接着対象物7において、第1被着体71と第2被着体72とを接合するように適用される。
【0030】
すなわち、両面テープ1の第1粘着剤層3と第2粘着剤層4との一方は、第1被着体71と第2被着体72との一方に取り付けられ、第1粘着剤層3と第2粘着剤層4との他方は、第1被着体71と第2被着体72との他方に取り付けられる。
【0031】
接着対象物7は、たとえば、代表的に、液晶材料または有機EL材料を備えるディスプレイパネルを構成する任意の部材である。一般に、大型ディスプレイなどの高重量物の部材を保持するための両面テープ1は、温度60℃湿度90パーセントの環境において1平方センチメートルあたり240グラムの接着対象物7を500時間以上保持することができることが求められるところ、上記の構成によりこの保持力が確保できる。
【0032】
また、両面テープ1は、1ミリメートル幅あたり1ニュートン未満の破壊力で第1被着体71と第2被着体72とのそれぞれに分離できることが求められるところ、上記の構成を有する両面テープ1では、上記の構成により、1ミリメートル幅あたり0.8ニュートンでの破壊が可能である。さらに、このときの、発泡体211の破壊時において、発泡体211の体積減少が50平方センチメートルあたり1ミリグラム未満であった。
【0033】
(両面粘着部材の分離方法)
図3を参照して、接着対象物7に両面テープ1を適用した場合における、接着対象物7からの両面テープ1の分離方法について説明する。
【0034】
接着対象物7の第1被着体71と第2被着体72とに接合した両面テープ1について、発泡体層21の面方向に連続気泡211aに亀裂を与える。亀裂の付与は、細い線材または第1被着体71と第2被着体72とをずらして剪断力を付与することにより、行う。発泡体層21の面方向に連続気泡211aにおいて生じた亀裂により、発泡体層21は、2つに分離される。ここで、発泡体211は、第1被着体71の側の第1分離発泡体2111と、第2被着体72の側の第2分離発泡体2112とに分離されるとする。
【0035】
これにより、両面テープ1により接合されていた接着対象物7の第1被着体71と第2被着体72とが分離される(分離工程)。この段階では、接着対象物7の第1被着体71と第2被着体72とに、両面テープ1の残存部材が残っていることになるので、接着対象物7の第1被着体71から第1粘着剤層3を剥離する。同様に、接着対象物7の第2被着体72から第2粘着剤層4を剥離する(剥離工程)。
【0036】
第1被着体71からの第1粘着剤層3の剥離と、第2被着体72からの第2粘着剤層4の剥離で、同時に第1分離発泡体2111と第2分離発泡体2112とのいずれもが接着対象物7から除去される。
【符号の説明】
【0037】
1 両面テープ
2 中間層
3 第1粘着層
4 第2粘着層
7 接着対象物
21 発泡体層
22 エラストマーフィルム
23 樹脂フィルム
71 第1被着体
72 第2被着体
211 発泡体
2111 第1分離発泡体
2112 第2分離発泡体