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特開2024-102870鉄道車両の脱線検知装置及び脱線検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102870
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】鉄道車両の脱線検知装置及び脱線検知方法
(51)【国際特許分類】
   B61K 13/00 20060101AFI20240725BHJP
   B61L 25/02 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B61K13/00 A
B61L25/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006933
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(72)【発明者】
【氏名】間々田 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】太田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】中橋 順一
(72)【発明者】
【氏名】小杉 一斗
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161BB20
5H161DD01
5H161FF07
(57)【要約】
【課題】車軸の落下防止枠の上面に設置されたセンサが車軸の落下を検知するようにして、簡素な構成で、低コストでありながら、鉄道車両の脱線を確実に検知することができるようにする。
【解決手段】鉄道車両の台車に設置されたセンサと、該センサの出力信号に基づいて脱線を判定する判定装置とを備える鉄道車両の脱線検知装置であって、前記センサは、前記台車における車軸の落下防止枠の上面に設置され、前記車軸の落下を検知する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の台車に設置されたセンサと、該センサの出力信号に基づいて脱線を判定する判定装置とを備える鉄道車両の脱線検知装置であって、
前記センサは、前記台車における車軸の落下防止枠の上面に設置され、前記車軸の落下を検知することを特徴とする鉄道車両の脱線検知装置。
【請求項2】
前記車軸の落下防止枠は、前記台車における軸箱もりの下端近傍に配設された軸箱もり控えである請求項1に記載の鉄道車両の脱線検知装置。
【請求項3】
前記車軸の両端近傍は軸箱によって支持され、該軸箱は前記軸箱もりに沿って上下方向にスライド可能である請求項2に記載の鉄道車両の脱線検知装置。
【請求項4】
前記センサは、前記軸箱の軸箱体の下面との接触を検知する請求項3に記載の鉄道車両の脱線検知装置。
【請求項5】
前記判定装置は、判定結果を前記鉄道車両の乗務員に通知する請求項1~4のいずれか1項に記載の鉄道車両の脱線検知装置。
【請求項6】
鉄道車両の台車における車軸の落下防止枠の上面に設置されたセンサが、前記車軸の落下を検知する工程と、
判定装置が、前記センサの出力信号に基づいて脱線を判定する工程と、を含むことを特徴とする鉄道車両の脱線検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄道車両の脱線検知装置及び脱線検知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両では、脱線に気付かずに走行を続けてしまうことがあり、このような場合、軌道部分に大きな損傷を与え、復旧に多大なコストと時間とを要することになる。
【0003】
そこで、脱線を早期に検知する技術が提案されている(例えば、非特許文献1、並びに、特許文献1及び2参照。)。
【0004】
非特許文献1や特許文献1には、加速度センサ、変位センサ、傾斜センサ等のセンサを台車に取り付け、脱線したときに台車自体に発生する著大な振動加速度、変位、傾斜角等を検知する技術が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、車軸軸受を封入する軸箱に逸脱防止ガイドを設置し、脱線時にレールと接触することによって、逸脱防止ガイドに敷設した伝送線、電導塗料、ブレーキ信号の引き通し線、温度検出器の配線、振動加速度計、温度センサ等が破壊されることを検知する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】今井一富、「コンテナ貨車状態監視装置の開発」、一般社団法人日本鉄道車両機械技術協会発行、2014年協会誌「R&m」6月号、第19~24頁
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-038538号公報
【特許文献2】国際公開第2017/154573号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の技術、例えば、非特許文献1に記載された技術では、センサによって得られたデータに基づいて脱線と判定するために、あらかじめ判定用の閾値を設定する必要があるが、適切な閾値を見出すことが困難であり、継目の通過等によって発生する振動等と脱線とを区別しにくかった。また、特許文献1に記載された技術では、複数のセンサによって得られたデータを組み合わせるので、センサ数が多くなり、検知ロジックも複雑になってしまう。さらに、特許文献2に記載された技術では、逸脱防止ガイドがレールと接触しない場合に脱線を検知することができず、逸脱防止ガイドがレールと接触しても、逸脱防止ガイドに敷設した線等が確実に切断されたり破壊されない場合には脱線を検知することができないという問題がある。また、走行中の飛来物と逸脱防止ガイドとの接触やガイド自体の落失も懸念される。
【0009】
ここでは、前記従来の技術の問題点を解決して、車軸の落下防止枠の上面に設置されたセンサが車軸の落下を検知するようにして、簡素な構成で、低コストでありながら、鉄道車両の脱線を確実に検知することができる鉄道車両の脱線検知装置及び脱線検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのために、鉄道車両の脱線検知装置においては、鉄道車両の台車に設置されたセンサと、該センサの出力信号に基づいて脱線を判定する判定装置とを備える鉄道車両の脱線検知装置であって、前記センサは、前記台車における車軸の落下防止枠の上面に設置され、前記車軸の落下を検知する。
【0011】
他の鉄道車両の脱線検知装置においては、さらに、前記車軸の落下防止枠は、前記台車における軸箱もりの下端近傍に配設された軸箱もり控えである。
【0012】
更に他の鉄道車両の脱線検知装置においては、さらに、前記車軸の両端近傍は軸箱によって支持され、該軸箱は前記軸箱もりに沿って上下方向にスライド可能である。
【0013】
更に他の鉄道車両の脱線検知装置においては、さらに、前記センサは、前記軸箱の軸箱体の下面との接触を検知する。
【0014】
更に他の鉄道車両の脱線検知装置においては、さらに、前記判定装置は、判定結果を前記鉄道車両の乗務員に通知する。
【0015】
鉄道車両の脱線検知方法においては、鉄道車両の台車における車軸の落下防止枠の上面に設置されたセンサが、前記車軸の落下を検知する工程と、判定装置が、前記センサの出力信号に基づいて脱線を判定する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、簡素な構成で、低コストでありながら、鉄道車両の脱線を確実に検知することができる鉄道車両の脱線検知装置及び脱線検知方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施の形態における鉄道車両の台車全体を斜め上方から撮影した写真である。
図2】本実施の形態における鉄道車両の台車の側面を撮影した写真である。
図3】本実施の形態における鉄道車両の台車の側面を示す模式図である。
図4】本実施の形態における鉄道車両の台車の軸箱支持装置の側面を示す拡大模式図である。
図5】本実施の形態における1軸脱線した鉄道車両の台車の側面を示す模式図である。
図6】本実施の形態における2軸脱線した鉄道車両の台車の側面を示す模式図である。
図7】本実施の形態における鉄道車両の脱線検知装置が表示する信号の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は本実施の形態における鉄道車両の台車全体を斜め上方から撮影した写真、図2は本実施の形態における鉄道車両の台車の側面を撮影した写真、図3は本実施の形態における鉄道車両の台車の側面を示す模式図、図4は本実施の形態における鉄道車両の台車の軸箱支持装置の側面を示す拡大模式図である。
【0020】
図において、10は、本実施の形態における鉄道車両の台車であり、その骨組みとしての台車枠11を有するとともに、輪軸21を保持する。前記台車10は、図示されない鉄道車両の車体の下側に配設され、該車体の重量を輪軸21を介して、軌道、具体的には、図示されない道床上に配設された図示されない複数本のまくらぎの上に敷設されたレール31に伝達することによって、車体を保持する。なお、前記台車10と車体との間には、枕ばね、枕ばり等を含む車体支持装置が配設され、該車体支持装置によって前記台車10と車体とが接続されているが、ここでは、説明の都合上、車体支持装置についての説明を省略する。
【0021】
また、本実施の形態における鉄道車両は、該鉄道車両の脱線を検知する脱線検知装置が搭載されたものであり、例えば、貨車であるが、これに限定されるものでなく、旅客車であってもよいし、機関車であってもよいし、事業用車であってもよいし、いかなる種類のものであってもよい。さらに、ここでは、1つの車体は、2つの台車10によって支持されるものとして説明するが、該台車10の数は必ずしも2つに限定されるものではなく、1つの車体が1つの台車10によって支持されるものであってもよいし、1つの車体が3つ以上の台車10によって支持されるものであってもよい。
【0022】
図に示される例において、前記台車10は2つの輪軸21を保持する。各輪軸21は、1本の車軸21aと該車軸21aの両端に固定された左右一対の車輪21bとを含んでいる。該車輪21bは、前記レール31上を転動する部材である。各輪軸21は、互いに同様の構成を有するものであるが、ここでは、説明の都合上、進行方向前方(図3において左方)に位置する輪軸21を第1軸21Aとし、進行方向後方(図3において右方)に位置する輪軸21を第2軸21Bとして識別する。図3において、L1は第1軸21Aの車軸21aの中心を通る第1車軸中心線であり、L2は第2軸21Bの車軸21aの中心を通る第2車軸中心線である。図3に示される例において、第1車軸中心線L1と第2車軸中心線L2とは一致している。なお、第1軸21Aと第2軸21Bとを統合的に説明する場合には、輪軸21として説明する。また、ここでは、各台車10は2つの輪軸21を保持するものとして説明するが、該輪軸21の数は必ずしも2つに限定されるものではなく、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0023】
なお、本実施の形態において、鉄道車両の脱線検知装置、台車10、レール31等の各部及びその他の部材の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、鉄道車両の脱線検知装置、台車10、レール31等の各部及びその他の部材が図に示される姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0024】
図4に示されるように、各輪軸21の車軸21aの両端近傍における車輪21bの外側部分は、軸箱22によって支持されている。該軸箱22は、前記車軸21aの両端近傍における車輪21bの外側部分を回転可能に支持する図示されない軸受と、該軸受を内部に収容する軸箱体22aとを含んでいる。そして、前記台車10は、前後(図3における左右)方向に延在する側梁17の両端に接続され、前記軸箱22を台車枠11に対して保持する軸箱支持装置12を含んでいる。該軸箱支持装置12は、軸箱22を台車枠11に対して上下方向に移動可能に保持する装置であって、軸箱体22aの上面と台車枠11との間に配設されたコイルばね等から成る軸ばね14と、軸箱体22aの前後両側に位置する軸箱もり13とを含んでいる。前記軸箱22は、軸箱もり13に沿って上下方向にスライド可能に保持される。
【0025】
なお、前記軸箱もり13は、台車枠11の下面から連続して下方に延在する一対の部材であり、軸箱体22aの前後面とスライド可能に接触するスリ板13aを有する。また、前後一対の軸箱もり13の下端近傍は、前後方向に延在する棒状乃至厚板状の軸箱もり控え15によって接続されている。該軸箱もり控え15は、車軸21aの落下防止枠、又は、車軸21aの保護枠であるとも言える。
【0026】
前記軸ばね14は、軸箱22を台車枠11に対して弾性的に上下方向に変位させる部材であり、圧縮ばねであって、軸箱体22aの上面を下方に付勢する。また、前記軸箱もり控え15は、軸箱22の台車枠11に対する下方への変位量を制限するリミッタとしても機能し、軸箱体22aの下面に対向している。車輪21bがレール31のレール面31a上にあるときは、車体の重量及び車体が運搬する貨物や旅客の重量を受けて、軸ばね14が圧縮されるので、軸箱体22aの下面と軸箱もり控え15の上面とは離間し、その間には、図4に示されるように、隙間が生じている。しかし、後述の図6に示されるように、脱線したときに、車輪21bがレール面31aから外れてレール31の下面にあり、輪軸21が車体の重量及び車体が運搬する貨物や旅客の重量を支えていないときは、軸ばね14が伸張して軸箱体22aが自由落下し、軸ばね14と軸箱体22aの上面とが離れ、軸箱体22aの下面が軸箱もり控え15の上面に当接乃至近接する。
【0027】
なお、前記レール面31aとレール31の下面との距離、すなわち、レール31の高さは、例えば、レール31が50〔kgN〕レールである場合、153〔mm〕である。また、車輪21bの直径は、例えば、鉄道車両が日本鉄道貨物のコキ107形貨車である場合、最大で810〔mm〕である。さらに、軸箱体22aの下面と軸箱もり控え15の上面との隙間は、例えば、鉄道車両が日本鉄道貨物のコキ107形貨車である場合、貨物を積載していない状態で約17〔mm〕である。
【0028】
そして、本実施の形態における鉄道車両の脱線検知装置は、図3に示されるように、軸箱もり控え15に設置されたセンサ16を含んでいる。具体的には、第1軸21A及び第2軸21Bの各々に対応する軸箱もり控え15の上面にセンサ16が設置され、該センサ16が軸箱体22aの下面と接触して車軸21aの落下を検知すると、前記脱線検知装置は、鉄道車両が脱線したと判定する。なお、前記センサ16は、すべての台車10のすべての輪軸21のすべての軸箱22に対応する軸箱もり控え15のすべてに設置されることが望ましいが、選択された軸箱もり控え15のみに設置されるようにしてもよい。また、前記軸箱もり控え15の上面とセンサ16との間に図示されないスペーサを挿入することによって、センサ16と軸箱体22aの下面との距離(間隔)を調整することができる。例えば、側梁17がレール31に乗った状態(後述の図6に示されるように2軸脱線した状態)で車輪21bがまくらぎ上にある場合、軸箱もり控え15の上面と軸箱体22aの下面との距離が通常よりも約7〔mm〕縮み、車輪21bがまくらぎの間にある場合にはそれ以上に縮む。したがって、センサ16の高さを、例えば、12〔mm〕に設定すれば、通常におけるセンサ16と軸箱体22aの下面との距離が約5〔mm〕になるので、側梁17がレール31に乗った状態で車輪21bがまくらぎ上にある場合に、軸箱体22aの下面がセンサ16に接触することとなる。そこで、通常におけるセンサ16と軸箱体22aの下面との距離は、5~10〔mm〕程度に設定されることが望ましい。
【0029】
なお、前記脱線検知装置は、前記センサ16の外に、該センサ16が送信するセンサ出力信号を無線又は有線の通信回路を介して受信する図示されない受信装置と、前記脱線検知装置の各部の動作を制御するとともに、前記受信装置が受信した信号の波形を処理して鉄道車両の脱線を判定し、判定結果を運転士等の乗務員に通知する図示されない判定装置としての制御装置と、前記受信装置が受信した信号及び前記制御装置の各種出力信号を画面に表示又は印刷する図示されない表示装置とを含んでいることが望ましい。
【0030】
前記センサ16は、例えば、プローブ等の接触子が被計測物に接触して荷重を受けたことを検知するものであってもよいし、接触子が被計測物に接触して変位したことを検知するものであってもよいし、接触子が被計測物に接触したことを静電気的に検知するものであってもよく、軸箱体22aの下面との機械的な接触を検知することができるセンサであれば、いかなる種類のものであってもよい。さらに、前記センサ16は、該センサ16に対する軸箱体22aの変位を計測する変位計(変位センサ)であって、軸箱体22aとセンサ16との距離がゼロになったことを計測して軸箱体22aの下面との接触を検知するものであってもよい。
【0031】
次に、前記構成の脱線検知装置の動作について説明する。
【0032】
図5は本実施の形態における1軸脱線した鉄道車両の台車の側面を示す模式図、図6は本実施の形態における2軸脱線した鉄道車両の台車の側面を示す模式図、図7は本実施の形態における鉄道車両の脱線検知装置が表示する信号の波形を示す図である。
【0033】
本実施の形態における鉄道車両の脱線検知装置は、鉄道車両が走行している間、センサ16が送信するセンサ出力信号の受信を継続し、鉄道車両の脱線の判断を継続的に実行する。また、前記脱線検知装置の表示装置は、受信装置が受信した信号の波形の経時変化を図7に示されるように、表示する。
【0034】
なお、図7に示される例においては、センサ16が送信するセンサ出力信号の波形とともに、前記センサ16とは別個のセンサである変位センサが送信するセンサ出力信号の波形も示されている。ここで、前記変位センサは、例えば、台車10の軸箱支持装置12に設置された図示されないセンサであって、軸箱体22aの上面と台車枠11との間の距離の変化、すなわち、相対変位を計測するものである。図7における縦軸の目盛は、前記変位センサが計測した相対変位〔mm〕を示している。
【0035】
鉄道車両が正常に走行している場合、台車10は、図3に示されるような状態であって、第1軸21A及び第2軸21Bの車輪21bは、いずれも、レール31のレール面31a上にある。この場合、軸箱体22aの上面と台車枠11との間の距離がほとんど変化しないので、変位センサのセンサ出力信号の波形は、図7における時間0~0.5〔秒〕の範囲に示されるように、ほぼ一定であり、相対変位がほぼ0〔mm〕となっている。また、軸箱体22aの下面がセンサ16に接触していないので、該センサ16の出力信号の波形も、図7における時間0~0.5〔秒〕の範囲に示されるように、一定であって非接触である、すなわち、非検知状態にあることを示している。
【0036】
次に、図5に示されるように、台車10が1軸脱線し、2つの輪軸21の一方(図5に示される例においては、第1軸21A)のみが脱線した場合、脱線した輪軸21である第1軸21Aの車輪21bがレール面31aから外れてまくらぎ面31bにあり、前記車輪21bがまくらぎ面31bの凹凸を拾って上下に変動するので、変位センサのセンサ出力信号の波形は、図7における時間0.5~1.5〔秒〕の範囲に示されるように、上下に変動するものとなる。
【0037】
また、第2軸21Bの車輪21bはレール面31aにあるので、図5に示されるように、台車枠11の側梁17の下面17aはレール面31aから離間した状態となっている。そのため、車体の重量及び車体が運搬する貨物や旅客の重量は、依然として、2つの輪軸21によって支えられているので、軸ばね14が圧縮され、軸箱体22aの下面と軸箱もり控え15の上面とが離間した状態となっている。つまり、軸箱体22aの下面がセンサ16に接触しておらず、該センサ16の出力信号の波形は、図7における時間0.5~1.5〔秒〕の範囲でも非検知状態にあることを示している。
【0038】
次に、図6に示されるように、台車10が2軸脱線し、2つの輪軸21の両方が脱線した場合、第1軸21A及び第2軸21Bの車輪21bがレール面31aから外れてまくらぎ面31bにあり、前記車輪21bがまくらぎ面31bの凹凸を拾って上下に変動するので、変位センサのセンサ出力信号の波形は、図7における時間1.5~2.0〔秒〕の範囲に示されるように、上下に変動するものとなる。
【0039】
また、両方の輪軸21の車輪21bがまくらぎ面31bにあるので、図6に示されるように、台車枠11の側梁17の下面17aはレール面31aに接触した状態となっている。そのため、車体の重量及び車体が運搬する貨物や旅客の重量は、側梁17の下面17aを介してレール面31aによって支えられ、2つの輪軸21によって支えられていないので、軸ばね14が伸張して、車軸21aが側梁17に対して相対的に落下し、軸箱体22aの下面が軸箱もり控え15の上面に対して押し付けられる。したがって、軸箱体22aの下面が軸箱もり控え15の上面に設置されたセンサ16に接触し、該センサ16の出力信号の波形は、図7における時間1.5~2.0〔秒〕の範囲に示されるように、ほぼ一定であって接触である、すなわち、検知状態にあることを示している。そして、脱線検知装置の制御装置は、このようなセンサ16の出力信号の波形に基づいて台車10が脱線したと判定し、運転士等の乗務員に判定結果を通知する。
【0040】
このように、本実施の形態においては、台車10が脱線すると、車軸21aが台車10に対して相対的に落下し、軸箱体22aの下面が軸箱もり控え15の上面に設置されたセンサ16に接触し、該センサ16の出力信号の波形が検知状態にあることを示すようになっている。したがって、鉄道車両の脱線を確実に検知して乗務員に通知することができる。
【0041】
また、センサ16が、仮に、台車枠11の下面におけるレール31に近い箇所に設置されている場合、積雪やバラスト等の飛来物、及び、レール31上の落下物等の異物との接触によって誤検知や損傷が発生する可能性がある。しかし、本実施の形態においては、センサ16が軸箱もり控え15の上面に設置されているので、異物との接触によって誤検知や損傷が発生する可能性が低い。
【0042】
さらに、センサ16が、仮に、台車枠11の下面に設置されている場合、落下する危険性がある。しかし、本実施の形態においては、センサ16が軸箱もり控え15の上面に設置されているので、落下する危険性が低い。
【0043】
さらに、センサ16が、仮に、台車枠11の下面に設置されている場合、車輪21bの径の変化(長期間の走行によって車輪21bの径が小さくなる)によってセンサ16の接触条件が変化する可能性がある。しかし、本実施の形態においては、センサ16が軸箱もり控え15の上面に設置されているので、車体が運搬する貨物や旅客の積空によって接触条件が変化するものの、軸箱もり控え15の上面と軸箱体22aの下面との距離が最も大きくなる最大積車状態で接触を検知することができる状態であれば、その他の条件によっては接触条件が変化しにくい。
【0044】
このように、本実施の形態における鉄道車両の脱線検知装置は、鉄道車両の台車10に設置されたセンサ16と、センサ16の出力信号に基づいて脱線を判定する判定装置とを備える。そして、センサ16は、台車10における車軸21aの落下防止枠の上面に設置され、車軸21aの落下を検知する。また、本実施の形態における鉄道車両の脱線検知方法は、鉄道車両の台車10における車軸21aの落下防止枠の上面に設置されたセンサ16が、車軸21aの落下を検知する工程と、判定装置が、センサ16の出力信号に基づいて脱線を判定する工程と、を含んでいる。
【0045】
これにより、簡素な構成で、低コストでありながら、鉄道車両の脱線を確実に検知することができる。
【0046】
また、車軸21aの落下防止枠は、台車10における軸箱もり13の下端近傍に配設された軸箱もり控え15である。さらに、車軸21aの両端近傍は軸箱22によって支持され、軸箱22は軸箱もり13に沿って上下方向にスライド可能である。さらに、センサ16は、軸箱22の軸箱体22aの下面との接触を検知する。さらに、判定装置は、判定結果を鉄道車両の乗務員に通知する。
【0047】
なお、本明細書の開示は、好適で例示的な実施の形態に関する特徴を述べたものである。ここに添付された特許請求の範囲内及びその趣旨内における種々の他の実施の形態、修正及び変形は、当業者であれば、本明細書の開示を総覧することにより、当然に考え付くことである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本開示は、鉄道車両の脱線検知装置及び脱線検知方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 台車
13 軸箱もり
15 軸箱もり控え
16 センサ
21a 車軸
22 軸箱
22a 軸箱体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7