IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

特開2024-102875トレッドゴム成形方法及びトレッドゴム
<>
  • 特開-トレッドゴム成形方法及びトレッドゴム 図1
  • 特開-トレッドゴム成形方法及びトレッドゴム 図2
  • 特開-トレッドゴム成形方法及びトレッドゴム 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102875
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】トレッドゴム成形方法及びトレッドゴム
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/16 20190101AFI20240725BHJP
   B29C 48/30 20190101ALI20240725BHJP
   B29C 48/49 20190101ALI20240725BHJP
   B60C 19/08 20060101ALI20240725BHJP
   B29D 30/52 20060101ALI20240725BHJP
   B29K 21/00 20060101ALN20240725BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20240725BHJP
【FI】
B29C48/16
B29C48/30
B29C48/49
B60C19/08
B29D30/52
B29K21:00
B29L30:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006938
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古積 悟
【テーマコード(参考)】
3D131
4F207
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
3D131BC45
3D131EA01V
3D131LA15
3D131LA28
4F207AA45
4F207AG03
4F207AH20
4F207AR09
4F207KA01
4F207KA17
4F207KL65
4F207KM14
4F207KW41
4F215AH20
4F215VA01
4F215VD03
4F215VL32
4F501TA01
4F501TC03
4F501TC04
4F501TD32
4F501TE25
4F501TV01
4F501TV04
(57)【要約】
【課題】生産性の向上を可能にしたトレッドゴム成形方法及びトレッドゴムを提供する。
【解決手段】複数のゴム材料を押出成形ダイ20で一体化して吐出するトレッドゴム成形方法において、押出成形ダイ20には、タイヤ接地面を構成するキャップゴムとなるゴム材料を供給する第1の押出機31と、キャップゴムの内側に積層されるベースゴムとなるゴム材料を供給する第2の押出機32と、キャップゴムを貫通する貫通ゴムとなるゴム材料を供給する第3の押出機33とが接続されており、第1の押出機31から導電性ゴム材料を供給しつつ、第2及び第3の押出機32,33の各々からゴム材料を供給することにより、キャップゴムが導電性ゴム材料により形成されたトレッドゴムを押出成形する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のゴム材料を押出成形ダイで一体化して吐出するトレッドゴム成形方法において、
前記押出成形ダイには、タイヤ接地面を構成するキャップゴムとなるゴム材料を供給する第1の押出機と、前記キャップゴムの内側に積層されるベースゴムとなるゴム材料を供給する第2の押出機と、前記キャップゴムを貫通する貫通ゴムとなるゴム材料を供給する第3の押出機とが接続されており、
前記第1の押出機から導電性ゴム材料を供給しつつ、前記第2及び第3の押出機の各々からゴム材料を供給することにより、前記キャップゴムが導電性ゴム材料により形成されたトレッドゴムを押出成形することを特徴とするトレッドゴム成形方法。
【請求項2】
前記第3の押出機から導電性ゴム材料を供給する、請求項1に記載のトレッドゴム成形方法。
【請求項3】
前記第1の押出機は、前記キャップゴムの外側領域となるゴム材料を供給する外側キャップ用押出機と、前記キャップゴムの内側領域となるゴム材料を供給する内側キャップ用押出機とを含み、
前記第3の押出機のスクリュー回転数を、前記外側キャップ用押出機のスクリュー回転数よりも大きくする、請求項1に記載のトレッドゴム成形方法。
【請求項4】
前記第3の押出機のスクリュー回転数を、前記外側キャップ用押出機のスクリュー回転数の1.5倍以下とする、請求項3に記載のトレッドゴム成形方法。
【請求項5】
前記押出成形ダイには、前記キャップゴムと前記ベースゴムとの積層体の両外側に設けられるウイングゴムとなるゴム材料を供給する第4の押出機が接続されており、
前記第1の押出機から導電性ゴム材料を供給しつつ、前記第2~第4の押出機の各々からゴム材料を供給する、請求項1~4いずれか1項に記載のトレッドゴム成形方法。
【請求項6】
タイヤ接地面を構成するキャップゴムと、前記キャップゴムの内側に積層されたベースゴムと、前記キャップゴムを貫通する貫通ゴムとを備え、
前記キャップゴムは導電性ゴム材料により形成されているトレッドゴム。
【請求項7】
前記貫通ゴムは導電性ゴム材料により形成されている、請求項6に記載のトレッドゴム。
【請求項8】
前記貫通ゴムは前記キャップゴムと前記ベースゴムとの積層体を貫通し、
前記ベースゴムは非導電性ゴム材料により形成されている、請求項7に記載のトレッドゴム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤのトレッドゴムを成形する方法と、そのトレッドゴムに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、トレッドゴムやサイドウォールゴム、インナーライナーゴムなどの複数のゴム部材を貼り合わせてグリーンタイヤを作製し、それを加硫成形することによって製造される。かかるゴム部材の成形方法として、ストリップビルド法(リボン巻き工法)と押出成形法が知られている。前者は、幅や厚みの小さいゴムストリップ(ゴムリボン)を螺旋状に巻き付けて重ねることにより所定の断面形状を有するゴム部材を成形する方法である。後者は、所定の断面形状を有するゴム部材を押出成形ダイを用いて押出成形する方法である。
【0003】
また、近年では、車両の低燃費化と関係が深い転がり抵抗の低減や、濡れた路面での制動性能の向上を目的として、トレッドゴムをシリカ高配合の非導電性ゴム材料により形成することがある。その場合、トレッドゴムには、車体やタイヤで発生した静電気を路面に放出できるようにするための導電経路が設けられる。例えば、タイヤ接地面を構成するキャップゴムを非導電性ゴム材料により形成すると共に、そのキャップゴムを貫通するようにして、カーボンブラック高配合の導電性ゴム材料により導電経路を設けたトレッド構造が公知である(特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1及び2には、それぞれトレッドゴムを押出成形法により成形するための装置が記載されている。特許文献1に記載の装置が備える押出成形ダイには、タイヤ接地面を構成する中間層、その内側に積層されるベース層、及び、両サイドに設けられるサイド層となるゴム材料を供給する3台の押出機が接続されている。それらの各押出機から供給されたゴム材料は押出成形ダイの内部で合流し、一体化されて所定の断面形状で吐出される。かかるトレッドゴムの成形において、更なる生産性の向上が望ましいことは言うまでもない。
【0005】
特許文献2に記載の装置が備える押出成形ダイには、タイヤ接地面を構成するキャップトレッドゴム層、その内側に積層されるアンダートレッドゴム層、両サイドに設けられるウイングチップゴム層、及び、導電経路を構成するアースゴム層となるゴム材料を供給する4台の押出機が接続されている。しかし、これは、タイヤ接地面(を構成するキャップゴム)が非導電性ゴム材料により形成されたトレッドゴムを成形するための装置であり、タイヤ接地面(を構成するキャップゴム)が導電性ゴム材料により形成されている一般的なトレッドゴムの成形に用いられるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-47838号公報
【特許文献2】特開2017-170681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、生産性の向上を可能にしたトレッドゴム成形方法及びトレッドゴムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のトレッドゴム成形方法は、複数のゴム材料を押出成形ダイで一体化して吐出するトレッドゴム成形方法において、
前記押出成形ダイには、タイヤ接地面を構成するキャップゴムとなるゴム材料を供給する第1の押出機と、前記キャップゴムの内側に積層されるベースゴムとなるゴム材料を供給する第2の押出機と、前記キャップゴムを貫通する貫通ゴムとなるゴム材料を供給する第3の押出機とが接続されており、
前記第1の押出機から導電性ゴム材料を供給しつつ、前記第2及び第3の押出機の各々からゴム材料を供給することにより、前記キャップゴムが導電性ゴム材料により形成されたトレッドゴムを押出成形することを特徴とするものである。
【0009】
本開示のトレッドゴムは、タイヤ接地面を構成するキャップゴムと、前記キャップゴムの内側に積層されたベースゴムと、前記キャップゴムを貫通する貫通ゴムとを備え、
前記キャップゴムは導電性ゴム材料により形成されているものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】トレッドゴムの一例を示す断面図
図2】トレッドゴム成形装置の一例を概略的に示す図
図3】押出機の一例を概略的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、後述の成形方法により得られるトレッドゴムの一例を示す断面図である。トレッドゴム10は、タイヤを構成する帯状のゴム部材である。グリーンタイヤを作製する際には、長手方向(図1の紙面に垂直な方向)の端部同士を接続してなる環状のトレッドゴム10がタイヤ外周面に配置される。図1の上方向は、グリーンタイヤ又はそれを加硫成形することにより製造される空気入りタイヤのタイヤ径方向外側に相当する。図1の下方向は、同じくタイヤ径方向内側に相当する。
【0012】
トレッドゴム10は、押出成形法によって得られたものである。そのため、このトレッドゴム10の断面にはゴムストリップ(ゴムリボン)の界面が含まれていない。別の言い方をすると、このトレッドゴム10は、ゴムストリップの界面を含まない断面を有している。これに対して、ストリップビルド法(リボン巻き工法)によって得られたトレッドゴムでは、加硫成形後のタイヤにおいても、その断面においてゴムストリップの界面が薄く観察される。
【0013】
トレッドゴム10は、タイヤ接地面を構成するキャップゴム11と、キャップゴム11の内側(タイヤ径方向内側)に積層されるベースゴム12と、キャップゴム11を貫通する貫通ゴム13とを備え、それらが一体化されている。本実施形態では、トレッドゴム10が、更に、キャップゴム11とベースゴム12との積層体の両外側に設けられるウイングゴム14を備えている。ウイングゴム14は、キャップゴム11とベースゴム12との積層体に一体化されている。一対のウイングゴム14は、それぞれ断面三角形状に形成されている。
【0014】
キャップゴム11は、導電性ゴム材料により形成されている。導電性ゴム材料は、体積抵抗率が1.0×10Ω・cm未満を示すゴム材料である。導電性ゴム材料は、原料ゴムに補強剤としてカーボンブラックを高比率で配合したものが例示される。カーボンブラックは、例えばゴム成分100質量部に対して50質量部以上で配合される。導電性ゴム材料は、カーボンブラック以外にも、カーボンファイバーやグラファイトなどのカーボン系、及び、金属粉、金属酸化物、金属フレーク、金属繊維などの金属系の公知の導電性付与材を配合することでも得られる。
【0015】
これに対して、非導電性ゴム材料は、体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以上を示すゴム材料である。非導電性ゴム材料は、原料ゴムに補強剤としてシリカを高比率で配合したものが例示される。シリカは、例えばゴム成分100質量部に対して30質量部以上で配合される。シリカとしては、湿式シリカが好ましく用いられるが、補強材として汎用されているものは特に制約なく使用可能である。非導電性ゴム材料は、沈降シリカや無水ケイ酸などのシリカ類以外にも、焼成クレーやハードクレー、炭酸カルシウムなどを配合することでも得られる。
【0016】
上述した原料ゴムとしては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)などが挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上混合して使用される。かかる原料ゴムには、加硫剤や加硫促進剤、可塑剤、老化防止剤なども適宜に配合される。
【0017】
本実施形態では、ベースゴム12、貫通ゴム13及びウイングゴム14が、それぞれ導電性ゴム材料により形成されている例を示す。但し、これに限られず、ベースゴム12、貫通ゴム13及びウイングゴム14のうち少なくとも一つが非導電性ゴム材料により形成されていても構わない。それらの何れかがシリカ高配合の非導電性ゴム材料により形成されている場合、特にベースゴム12がシリカ高配合の非導電性ゴム材料により形成されている場合は、転がり抵抗の低減効果が奏される。
【0018】
貫通ゴム13は、キャップゴム11だけでなくベースゴム12をも貫通している。即ち、貫通ゴム13は、キャップゴム11とベースゴム12との積層体を貫通している。これにより、トレッドパターンに影響されず、しかもベースゴム12やウイングゴム14を形成するゴム材料が導電性か非導電性かに関係なく、導電経路を確保できる。但し、これに限られず、例えば、ベースゴム12が導電性ゴム材料により形成されている場合や、キャップゴム11からウイングゴム14を経て導電経路が設けられる場合は、貫通ゴム13がベースゴム12を貫通しない構造でも構わない。
【0019】
貫通ゴム13はタイヤ径方向と略平行に延びているが、これに限られず、例えばタイヤ径方向に対して斜めに延びていてもよい。また、貫通ゴム13は、直線状に延びているが、これに限られず、例えば曲線状や屈曲線状に延びていてもよい。貫通ゴム13は、トレッドゴム10の幅方向(図1の左右方向)の中央部に設けられているが、これに限られるものではない。本実施形態では、トレッドゴム10が1本の貫通ゴム13を備える例を示すが、これに限られず、2本もしくは3本、または4本以上の貫通ゴム13を備えていてもよい。
【0020】
キャップゴム11、ベースゴム12、貫通ゴム13及びウイングゴム14のうち、キャップゴム11の断面積が最も大きく、貫通ゴム13の断面積が最も小さい。したがって、ベースゴム12及びウイングゴム14の断面積は、いずれもキャップゴム11の断面積よりも小さい。ベースゴム12の厚みは、例えば1.5mmである。トレッドゴム10の長手方向に垂直な断面において、タイヤ接地面で測定される貫通ゴム13の幅は、例えば0.5~3.0mmであり、より狭い範囲としては1.0~2.0mmである。
【0021】
トレッドゴム10は、例えば図2に示したトレッドゴム成形装置100を用いて、複数のゴム材料を押出成形ダイ20で一体化して吐出することにより成形される。押出成形ダイ20には、キャップゴム11となるゴム材料を供給する第1の押出機31(以下、単に「押出機31」と呼ぶ)と、ベースゴム12となるゴム材料を供給する第2の押出機32(以下、単に「押出機32」と呼ぶ)と、貫通ゴム13となるゴム材料を供給する第3の押出機33(以下、単に「押出機33」と呼ぶ)とが接続されている。更に、本実施形態では、押出成形ダイ20に、ウイングゴム14となるゴム材料を供給する第4の押出機34(以下、単に「押出機34」と呼ぶ)が接続されている。
【0022】
トレッドゴム成形装置100は、上述した複数の押出機31~34と、それらが接続される押出成形ダイ20と、押出機31~34の作動を制御する制御部40とを備える。押出成形ダイ20は、供給された複数のゴム材料を合流させるプレダイ21と、その複数のゴム材料を一体化してなるゴム部材(即ち、トレッドゴム10)の断面形状を規定する口金22とを含む。図示しないが、プレダイ21の内部には、キャップゴム11となるゴム材料の内側にベースゴム12となるゴム材料を積層し、その積層体を貫通する位置に貫通ゴム13となるゴム材料を導入し、その積層体の両外側にウイングゴム14となるゴム材料を案内するゴム流路が設けられている。
【0023】
押出機33は、図3に例示したようなスクリュータイプの押出機である。押出機33は、筒状のバレル33aと、バレル33aの供給口に接続されたホッパー33bと、ホッパー33bに供給されたゴム材料Rを混練して先端側に送り出すスクリュー33cと、スクリュー33cを回転駆動させる駆動部33dとを備えている。スクリュー33cの回転や停止、回転数(回転速度)は、制御部40(図2参照)によって制御される。ゴム材料Rの吐出量はスクリュー回転数に応じて変化し、スクリュー回転数を速くすると吐出量が多くなり、スクリュー回転数を遅くすると吐出量が少なくなる。
【0024】
図3では、複数の押出機のうち押出機33を取り上げて説明しているが、他の押出機31,32,34も、それぞれ押出機33と同様の構造を有するスクリュータイプの押出機である。スクリューの先端側にギアポンプが設けられた構造の押出機も知られているが、本実施形態で用いられる押出機33は、それに該当せず、ギアポンプの無いスクリュータイプの押出機である。他の押出機31(構成する押出機31a及び押出機31b),32,34においても、やはりギアポンプは設けられていない。
【0025】
本実施形態では、押出機31が、キャップゴム11の外側領域11aとなるゴム材料を供給する外側キャップ用押出機31a(以下、単に「押出機31a」と呼ぶ)と、キャップゴム11の内側領域11bとなるゴム材料を供給する内側キャップ用押出機31b(以下、単に「押出機31b」と呼ぶ)とを含む例を示す。相対的に断面積が大きいキャップゴム11のゴム材料を複数の押出機31a,31b(延いては複数のスクリュー)で供給することにより、成形速度を上げることができる。外側領域11aと内側領域11bとは同一のゴム材料により形成されているが、これに限られない。
【0026】
このようなトレッドゴム成形装置100を用いて、押出機31から導電性ゴム材料を供給しつつ、押出機32及び押出機33の各々からゴム材料を供給することにより、キャップゴム11が導電性ゴム材料により形成されたトレッドゴム10を押出成形する。タイヤ接地面を構成するキャップゴム11が導電性ゴム材料により形成されているため、通常であれば導電経路を設けるための貫通ゴム13は不要であるが、本実施形態では敢えて貫通ゴム13を形成しており、それに伴う押出機の台数(延いてはスクリューの本数)の増加により成形速度を上げることで生産性を向上できる。
【0027】
貫通ゴムを備えたトレッドゴムを押出成形するための装置が従来公知であったとしても、それは専ら、キャップゴムが非導電性ゴム材料により形成され且つ貫通ゴムが導電経路となるトレッドゴムの成形に使用されるものであり、本実施形態のようなキャップゴム11が導電性ゴム材料により形成されたトレッドゴム10の成形に使用することは知られていなかった。それ故、生産現場で上記のようなトレッド構造の異なる品種に切り替える場合は、押出成形ダイ(特にプレダイ)の交換を伴う段取り替えが必要となるが、本実施形態の手法によれば、そのような段取り替えが不要となり、作業時間を短縮できる。
【0028】
本実施形態では、ウイングゴム14を備えたトレッドゴム10を成形するため、更に押出機34からもゴム材料を供給する。即ち、押出機31から導電性ゴム材料を供給しつつ、押出機32~34の各々からもゴム材料を供給する。既述のようにトレッド構造の観点では貫通ゴム13は不要であるため、通常であれば貫通ゴム用の押出機33を備えていない装置が使用される。しかし、本実施形態では、押出機31a,32a,34,35に敢えて押出機33を加え、スクリューの本数を4本から5本に増やすことにより、成形速度を上げて生産性を向上できるようにしている。
【0029】
本実施形態では、押出機33から導電性ゴム材料を供給する。これにより、キャップゴム11だけでなく、そのキャップゴム11を貫通する貫通ゴム13も導電性ゴム材料により形成されたトレッドゴム10を押出成形する。本実施形態では、押出機32及び押出機34からも導電性ゴム材料を供給している。但し、ベースゴム12、貫通ゴム13及びウイングゴム14となるゴム材料は導電性と非導電性の何れでもよく、押出機32~34が供給するゴム材料も然りである。
【0030】
トレッドゴム10を成形する際、押出機33のスクリュー回転数を、押出機31aのスクリュー回転数よりも大きくすることが好ましい。即ち、押出機33のスクリュー回転数を、押出機31aのスクリュー回転数の1.0倍超えにすることが好ましい。相対的に断面積が小さい貫通ゴム13を形成するための押出機33は、他の押出機よりもコンパクトなサイズでスクリュー径が小さいことが通常なので、押出機33のスクリュー回転数を大きくすることにより、他の押出機でのゴム材料の吐出量とのバランスを良化し、トレッドゴム10を安定的に押出成形できる。
【0031】
また、押出機33のスクリュー回転数を、押出機31aのスクリュー回転数の1.5倍以下とすることが好ましい。これにより、貫通ゴム13の幅が大きく変動することを抑制し、貫通ゴム13及びその周囲のゴム(具体的にはキャップゴム11及びベースゴム12)の寸法安定性が高められる。一例において、押出機32及び押出機34のスクリュー回転数は、それぞれ押出機31aのスクリュー回転数の10~40%である。
【0032】
本実施形態では、5つの押出機のうち押出機33のスクリュー径が最も小さい。また、一例において、各押出機のスクリュー回転数[rpm]を指数で示すと、押出機31aのスクリュー回転数は「100(基準)」、押出機31bのスクリュー回転数は「120」、押出機32のスクリュー回転数は「33」、押出機33のスクリュー回転数は「142」、押出機34のスクリュー回転数は「28」であり、5つの押出機のうち押出機33のスクリュー回転数が最も大きい。
【0033】
[1]
上記の通り、本開示のトレッドゴム成形方法は、複数のゴム材料を押出成形ダイ20で一体化して吐出するトレッドゴム成形方法において、押出成形ダイ20には、タイヤ接地面を構成するキャップゴム11となるゴム材料を供給する第1の押出機31と、キャップゴム11の内側に積層されるベースゴム12となるゴム材料を供給する第2の押出機32と、キャップゴム11を貫通する貫通ゴム13となるゴム材料を供給する第3の押出機33とが接続されており、第1の押出機31から導電性ゴム材料を供給しつつ、第2及び第3の押出機32,33の各々からゴム材料を供給することにより、キャップゴム11が導電性ゴム材料により形成されたトレッドゴム10を押出成形するものである。
【0034】
かかる方法では、キャップゴム11が導電性ゴム材料により形成されているトレッドゴム10の押出成形において、キャップゴム11を形成するための第1の押出機31及びベースゴム12を形成するための第2の押出機32に加え、貫通ゴム13を形成するための第3の押出機33が用いられる。これによってトレッドゴム10の成形速度を上げることが可能となり、生産性を向上できる。
【0035】
[2]
上記[1]の成形方法において、第3の押出機33から導電性ゴム材料を供給することが好ましい。かかる方法によれば、キャップゴム11だけでなく、そのキャップゴム11を貫通する貫通ゴム13も導電性ゴム材料により形成されたトレッドゴム10が得られる。
【0036】
[3]
上記[1]または[2]の成形方法において、第1の押出機31は、キャップゴム11の外側領域11aとなるゴム材料を供給する外側キャップ用押出機31aと、キャップゴム11の内側領域11bとなるゴム材料を供給する内側キャップ用押出機31bとを含み、第3の押出機33のスクリュー回転数を、外側キャップ用押出機31aのスクリュー回転数よりも大きくすることが好ましい。これにより各押出機におけるゴム材料の吐出量とのバランスを良化し、トレッドゴム10を安定的に押出成形できるため、トレッドゴム10の成形速度を上げて生産性を向上するうえで都合が良い。
【0037】
[4]
上記[3]の成形方法において、第3の押出機33のスクリュー回転数を、外側キャップ用押出機31aのスクリュー回転数の1.5倍以下とすることが好ましい。これにより、貫通ゴム13の幅が大きく変動することを抑制し、貫通ゴム13及びその周囲のゴムの寸法安定性が高められる。
【0038】
[5]
上記[1]~[4]いずれか1つの成形方法において、押出成形ダイ20には、キャップゴム11とベースゴム12との積層体の両外側に設けられるウイングゴム14となるゴム材料を供給する第4の押出機34が接続されており、第1の押出機31から導電性ゴム材料を供給しつつ、第2~第4の押出機32,33,34の各々からゴム材料を供給することが好ましい。
【0039】
かかる方法では、第1の押出機31、第2の押出機32、及び、ウイングゴム14を形成するための第4の押出機34に加えて、貫通ゴム13を形成するための第3の押出機33が用いられる。これによってトレッドゴム10の成形速度を更に上げることが可能となり、生産性の向上効果が高められる。
【0040】
[6]
また、本開示のトレッドゴム10は、タイヤ接地面を構成するキャップゴム11と、キャップゴム11の内側に積層されたベースゴム12と、キャップゴム11を貫通する貫通ゴム13とを備え、キャップゴム11は導電性ゴム材料により形成されているものである。キャップゴム11が導電性ゴム材料により形成されたトレッド構造でありながら貫通ゴム13を備えていることにより、上記[1]~[5]いずれか1つの成形方法による製造が可能であり、生産性の向上を図ることができる。
【0041】
[7]
上記[6]のトレッドゴムにおいて、貫通ゴム13は導電性ゴム材料により形成されていることが好ましい。これにより、キャップゴム11だけでなく、そのキャップゴム11を貫通する貫通ゴム13も導電性ゴム材料により形成されたトレッド構造となる。
【0042】
[8]
上記[7]のトレッドゴムにおいて、貫通ゴム13はキャップゴム11とベースゴム12との積層体を貫通し、ベースゴム12は非導電性ゴム材料により形成されているものでもよい。これにより、ベースゴム12を非導電性ゴム材料で形成することによる有利な効果(例えば、転がり抵抗の低減)が得られる。しかも、キャップゴム11及び貫通ゴム13が導電性ゴム材料で形成されていることにより、静電気を路面に放出するための導電経路をトレッドパターンに影響されずに設けることができる。
【0043】
以上、本開示の実施形態について説明したが、具体的な構成は、この実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく、特許請求の範囲によって示され、更には特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0044】
したがって、例えば、前述の実施形態では、キャップゴム11となるゴム材料を2台の押出機31a,31bによって供給する例を示したが、これに限定されず、1台の押出機によって供給してもよい。また、前述の実施形態では、トレッドゴム10が一対のウイングゴム14を備える例を示したが、これに限定されず、ウイングゴムを含まないトレッド構造であっても構わない。
【0045】
本開示のトレッドゴム成形方法及びトレッドゴムは、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。また、上述した実施形態で採用されている各構成を任意に組み合わせて採用することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 トレッドゴム
11 キャップゴム
11a 外側領域
11b 内側領域
12 ベースゴム
13 貫通ゴム
14 ウイングゴム
20 押出成形ダイ
31 第1の押出機
31a 外側キャップ用押出機
31b 内側キャップ用押出機
32 第2の押出機
33 第3の押出機
34 第4の押出機
100 トレッドゴム成形装置
図1
図2
図3