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特開2024-10289スライド式切換弁及び冷凍サイクルシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010289
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】スライド式切換弁及び冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/065 20060101AFI20240117BHJP
   F25B 41/26 20210101ALI20240117BHJP
【FI】
F16K11/065 Z
F25B41/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111536
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100213757
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 詩人
(72)【発明者】
【氏名】三留 陵
(72)【発明者】
【氏名】村田 雅弘
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA15
3H067CC33
3H067CC35
3H067DD05
3H067DD13
3H067DD33
3H067EA05
3H067FF11
3H067GG24
(57)【要約】
【課題】密封性を確保しつつ作業性を向上させることができるスライド式切換弁及び該スライド式切換弁を備えた冷凍サイクルシステムを提供する。
【解決手段】弁座部材19に形成された貫通孔191が、筒部192と、外側に向かうにしたがって拡径される傾斜面部193と、を有する。開放面19B側から貫通孔191に管部材14~16を挿通し、ねじ29を雌ねじ部194に固定することにより、管部材14~16を弁本体11及び弁座部材19に対して固定することができ、作業性を向上させることができる。貫通孔191が傾斜面部193を有することで、Oリング27を圧縮することができ、管部材14~16と貫通孔191との間の密封性を確保することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の弁本体と、前記弁本体内に設けられる弁座面を有する弁座部材と、前記弁座面に摺接する摺接面を有するとともに前記弁本体に収容される弁体と、を備えたスライド式切換弁であって、
前記弁本体の側面部には、前記弁座部材が配置される開口部が形成されており、
前記弁座部材は、前記弁座面と、その反対側に形成されるとともに前記弁本体の外側に開放された開放面と、を有するとともに、前記弁座面から前記開放面に亘る貫通孔が形成され、
前記貫通孔は、筒部と、該筒部よりも前記弁本体の外側に設けられるともに外側に向かうにしたがって拡径される傾斜面部と、を有し、
前記開放面には、所定の固定部を固定可能な被固定部が設けられていることを特徴とするスライド式切換弁。
【請求項2】
前記開放面は、前記弁本体の側面部よりも外側に配置され、
前記弁座部材は、前記開口部を貫通する貫通部を有することを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項3】
前記弁座部材は、複数の前記貫通孔を有するとともに、該複数の貫通孔よりも少ない数の前記被固定部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスライド式切換弁。
【請求項4】
前記弁座部材には、前記貫通孔の数以上の前記被固定部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスライド式切換弁。
【請求項5】
前記弁本体の側面部には、第2の開口部がさらに形成され、
前記第2の開口部には、取付部が設けられ、
前記取付部は、前記弁本体の内外を連通する第2の貫通孔と、前記弁本体の外側に開放された面に設けられるとともに所定の固定部を固定可能な第2の被固定部と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のスライド式切換弁。
【請求項6】
前記弁座部材は、前記筒部に管部材が挿入され、前記被固定部が雌ねじ部であって、ねじ止めによって前記管部材が固定されるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスライド式切換弁。
【請求項7】
流体である冷媒を圧縮する圧縮機と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器と、前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段と、請求項1に記載のスライド式切換弁と、を備えたことを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド式切換弁及び冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、冷凍サイクルシステムにおいて流路を切り換えるためのスライド式切換弁が知られている。このようなスライド式切換弁として、弁本体部分がアキュムレータ内に設けられた四方弁が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された四方弁では、ろう付けされた4本の管の位置や姿勢のばらつきが生じやすいところ、3本をアキュムレータとろう付けすることにより、他の管とのつなぎ部の位置精度の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06-050637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スライド式切換弁に対して管をろう付けによって接続すると組立工数が増大しやすかった。また、点検や交換の際に管を取り外すことが困難であった。一方、接続方法を簡便化しようとすると、接続部における密封性が低下してしまう可能性がある。即ち、接続作業性と密封性との両立が困難であった。
【0005】
本発明の目的は、密封性を確保しつつ作業性を向上させることができるスライド式切換弁及び該スライド式切換弁を備えた冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスライド式切換弁は、筒状の弁本体と、前記弁本体内に設けられる弁座面を有する弁座部材と、前記弁座面に摺接する摺接面を有するとともに前記弁本体に収容される弁体と、を備えたスライド式切換弁であって、前記弁本体の側面部には、前記弁座部材が配置される開口部が形成されており、前記弁座部材は、前記弁座面と、その反対側に形成されるとともに前記弁本体の外側に開放された開放面と、を有するとともに、前記弁座面から前記開放面に亘る貫通孔が形成され、前記貫通孔は、筒部と、該筒部よりも前記弁本体の外側に設けられるともに外側に向かうにしたがって拡径される傾斜面部と、を有し、前記開放面には、所定の固定部を固定可能な被固定部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
以上のような本発明によれば、開放面側から貫通孔に管部材を挿通し、固定部を被固定部に固定することにより、管部材を弁本体及び弁座部材に対して固定することができ、作業性を向上させることができる。このとき、貫通孔が傾斜面部を有することで、管部材の外周部にOリング等の密封部材を配置するとともに弁本体の内側に向かって移動させることにより、傾斜面部によってOリングが圧縮され、管部材と貫通孔との間の密封性を確保することができる。
【0008】
この際、本発明のスライド式切換弁では、前記開放面は、前記弁本体の側面部よりも外側に配置され、前記弁座部材は、前記開口部を貫通する貫通部を有することが好ましい。このような構成によれば、開口部の内周縁と貫通部の外周部とを、例えばろう付け等によって全周に亘って接続することができ、弁本体と弁座部材との間の密封性を確保しやすい。
【0009】
また、本発明のスライド式切換弁では、前記弁座部材は、複数の前記貫通孔を有するとともに、該複数の貫通孔よりも少ない数の前記被固定部が設けられていることが好ましい。このような構成によれば、複数の管部材をまとめて弁座部材に接続することにより、接続箇所を減らすことができる。
【0010】
また、本発明のスライド式切換弁では、前記弁座部材には、前記貫通孔の数以上の前記被固定部が設けられていてもよい。このような構成によれば、管部材を個別に接続することができ、作業の自由度を向上させることができる。このとき、貫通孔と被固定部とが同数であり、貫通孔と被固定部との距離が等しくなるような貫通孔と被固定部との対が複数形成されていることがより好ましい。このような構成によれば、各々の対において、固定構造を共通化することができる。
【0011】
また、本発明のスライド式切換弁では、前記弁本体の側面部には、第2の開口部がさらに形成され、前記第2の開口部には、取付部が設けられ、前記取付部は、前記弁本体の内外を連通する第2の貫通孔と、前記弁本体の外側に開放された面に設けられるとともに所定の固定部を固定可能な第2の被固定部と、を有することが好ましい。このような構成によれば、第2の開口部においても、弁本体の外側から第2の貫通孔に管部材を挿通し、固定部を第2の被固定部に固定することにより、管部材を弁本体に対して固定することができ、作業性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明のスライド式切換弁では、前記弁座部材は、前記筒部に管部材が挿入され、前記被固定部が雌ねじ部であって、ねじ止めによって前記管部材が固定されるように構成されていることが好ましい。このような構成によれば、管部材を弁座部材に対して容易に固定することができる。
【0013】
本発明の冷凍サイクルシステムは、流体である冷媒を圧縮する圧縮機と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器と、前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段と、前記スライド式切換弁と、を備えたことを特徴とする。このような本発明の冷凍サイクルシステムによれば、上記のようにスライド式切換弁において密封性を確保しつつ作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のスライド式切換弁及び冷凍サイクルシステムによれば、密封性を確保しつつ作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一例である実施形態にかかるスライド式切換弁が設けられた冷凍サイクルの概略構成図である。
図2】前記スライド式切換弁を示す断面図である。
図3】前記スライド式切換弁に管部材が接続された様子を示す断面図である。
図4】前記スライド式切換弁を示す側面図である。
図5】前記スライド式切換弁の弁座部材を示す断面図である。
図6】前記スライド式切換弁の弁座部材を示す平面図である。
図7】前記スライド式切換弁に接続される管部材を示す側面図である。
図8】前記スライド式切換弁に管部材を固定するための部材を示す断面図及び平面図である。
図9】前記スライド式切換弁に管部材が接続された様子を示す底面図である。
図10】前記スライド式切換弁を示す平面図である。
図11】前記スライド式切換弁に管部材が接続された様子を示す平面図である。
図12】本発明の変形例に係るスライド式切換弁における弁座部材を示す平面図である。
図13】前記スライド式切換弁に管部材が接続された様子を示す底面図である。
図14】本発明の他の変形例に係るスライド式切換弁を示す平面図である。
図15】前記スライド式切換弁に管部材が接続された様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の四方切換弁(スライド式切換弁)10は、図1に示すように、例えば冷凍サイクル1に設けられるものである。冷凍サイクル1は、カーエアコン等の空気調和機に利用されるものであって、流体としての冷媒を圧縮する圧縮機2と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器としての室外熱交換器3と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器としての室内熱交換器4と、室外熱交換器3と室内熱交換器4との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段としての膨張弁5と、四方切換弁10と、四方切換弁10の流路を切換え制御するパイロット電磁弁6と、を備え、これらが冷媒配管によって連結されている。なお、膨張手段としては、膨張弁5に限らず、キャピラリでもよい。尚、上記のように循環する冷媒には、圧縮機2の動作を潤滑なものにするための潤滑油(冷凍機油)が含まれている。
【0017】
この冷凍サイクル1は、図1に示す冷却モード(冷房運転)において、圧縮機2、四方切換弁10、室外熱交換器3、膨張弁5、室内熱交換器4、四方切換弁10及び圧縮機2の順に冷媒が流れる冷房サイクルを構成する。一方、加温モード(暖房運転)において、圧縮機2、四方切換弁10、室内熱交換器4、膨張弁5、室外熱交換器3、四方切換弁10及び圧縮機2の順に冷媒が流れる暖房サイクルを構成する。この暖房サイクルと冷房サイクルとの切換えは、パイロット電磁弁6による四方切換弁10の切換え動作によって行われる。
【0018】
本発明の実施形態に係る四方切換弁10は、図2~4にも示すように、円筒状の弁本体11と、この弁本体11の内部にスライド自在に設けられた弁体12と、を備えている。以下では、弁体12のスライド方向をX方向とし、X方向に直交するとともに互いに直交する2方向をY方向及びZ方向とし、X方向における左右及びZ方向における上下は図2~4を基準とする。四方切換弁10には、後述するように、圧縮機2の吐出口に連通する高圧側の管部材13と、圧縮機2の吸込口に連通する低圧側の管部材14と、室内熱交換器4に連通する室内側の管部材15と、室外熱交換器3に連通する室外側の管部材16と、が接続されるようになっている。
【0019】
円筒状の弁本体11は、その軸方向両端部を塞ぐ栓体17,18と、弁本体11の内部に固定された弁座部材19と、を有し、全体に密閉されたシリンダーとして構成されている。栓体17,18には、それぞれパイロット電磁弁6に連通された導管が接続される。弁座部材19は、後述するように、管部材14~16が接続可能な形状となっている。弁座部材19の上面は、弁体12をスライド案内する案内面、即ち弁座面19Aとなっている。
【0020】
弁本体11には、その側面部111に開口した複数のポート11A,11B,11C,11Dが形成されている。すなわち、高圧側の管部材13が接続されて弁本体11の内部に冷媒を流入させる開口部としての流入ポート11Aと、流入ポート11Aに対して弁本体11の側面部111の径方向反対側にて弁座部材19の弁座面19Aに形成された第一ポート11C、第二ポート11D及び流出ポート11Bと、が設けられている。流出ポート11Bは、X方向略中央に設けられ、第一ポート11Cは、流出ポート11Bに対してX方向左側に隣り合って設けられ、第二ポート11Dは、流出ポート11Bに対してX方向右側に設けられている。即ち、3つのポート11B~11Dは、X方向に沿って直線状に並ぶように設けられている。
【0021】
流出ポート11Bには、低圧側の管部材14が接続され、第一ポート11Cに室内側の管部材15が接続されることで、当該第一ポート11Cが室内側ポートを構成し、第二ポート11Dに室外側の管部材16が接続されることで、当該第二ポート11Dが室外側ポートを構成する。
【0022】
弁体12は、弁本体11の内周面に摺接する左右一対のピストン体21,22と、一対のピストン体21,22を連結してX方向に沿って延びる連結部材23と、連結部材23に支持される椀状の弁部材24と、を有して構成されている。弁本体11の内部空間は、一対のピストン体21,22間に形成される高圧室R1と、一方のピストン体21と栓体17との間に形成される第一作動室R2と、他方のピストン体22と栓体18との間に形成される第二作動室R3と、に仕切られている。
【0023】
連結部材23は、金属板材からなり、弁本体11の軸方向に沿って延び弁座部材19の弁座面19Aと平行に設けられる連結板部23Aと、連結板部23Aの一端部が折り曲げられてピストン体21に固定される固定片部23Bと、連結板部23Aの他端部が折り曲げられてピストン体22に固定される固定片部23Cと、を有して形成されている。連結板部23Aには、弁部材24を保持する保持孔23Dと、冷媒を流通させる2箇所の貫通孔23Eと、が形成されている。
【0024】
弁部材24は、合成樹脂製の一体成形部材であって、弁座部材19に向かって凹状に開口した椀部25と、この椀部25の開口縁から外方に延びるフランジ部26と、を有して形成されている。椀部25は、平面視で長円形状を有したドーム状に形成され、連結部材23の保持孔23Dに挿入されている。椀部25の内部には、流出ポート11Bと第一ポート11Cとを連通させて第二ポート11Dを連通させないか、又は、流出ポート11Bと第二ポート11Dとを連通させて第一ポート11Cを連通させないような連通空間R4が形成されている。
【0025】
フランジ部26は、その下面(弁座部材19の弁座面19Aと対向する面)260に、弁座面19Aに摺接する摺接面26Aと、椀部25の内部に連通する弁開口部25Aと、を有する。このフランジ部26は、弁座部材19と連結部材23との間に配置される。そして、弁部材24に作用する高圧と低圧の圧力差により摺接面26Aが弁座部材19の弁座面19Aに密接され、椀部25の連通空間R4が弁座部材19に対して閉じられるようになっている。
【0026】
以上の四方切換弁10では、パイロット電磁弁6及び導管を介して第二作動室R3に高圧冷媒が導入されると、図2,3に示すように、ピストン体22が押圧されて弁体12がX方向左側にスライドし、第一位置に移動する。また、パイロット電磁弁6及び導管を介して第一作動室R2に圧縮機2から吐出された高圧冷媒が導入されると、ピストン体21が押圧されて弁体12が弁本体11のX方向右側にスライドし、第二位置に移動する。
【0027】
弁体12が第二位置にある状態において、弁部材24の椀部25は、その連通空間R4によって流出ポート11Bと第二ポート11Dとを連通させる。また、椀部25が第一ポート11CよりもX方向右側に位置することから、この第一ポート11Cは、弁本体11の内部(高圧室R1)を介して流入ポート11Aと連通される。すなわち、弁体12が第二位置にある状態は、流入ポート11Aと第一ポート11Cとが連通され、流出ポート11Bと第二ポート11Dとが連通された加温モード(暖房運転)となる。
【0028】
この加温モードでは、圧縮機2から吐出された高圧冷媒Hが高圧側の管部材13及び流入ポート11Aを介して高圧室R1に導入され、この高圧室R1を通過した高圧冷媒Hが第一ポート11C及び室内側の管部材15を介して室内熱交換器4に供給される。また、室外熱交換器3から室外側の管部材16及び第二ポート11Dを介して低圧冷媒Lが椀部25の連通空間R4に導入され、この連通空間R4を通過した低圧冷媒Lが流出ポート11B及び低圧側の管部材14を介して圧縮機2に還流される。
【0029】
一方、弁体12が第一位置にある状態において、弁部材24の椀部25は、その連通空間R4によって流出ポート11Bと第一ポート11Cとを連通させる。また、椀部25が第二ポート11DよりもX方向左側に位置することから、この第二ポート11Dは、弁本体11の内部(高圧室R1)を介して流入ポート11Aと連通される。すなわち、弁体12が第一位置にある状態は、流入ポート11Aと第二ポート11Dとが連通され、流出ポート11Bと第一ポート11Cとが連通された冷却モード(冷房運転)となる。
【0030】
ここで、四方切換弁10に対する管部材13~16の接続構造の詳細について説明する。管部材13~16は、例えば車載された他の機器から延びるものであり、これらの管部材13~16が四方切換弁10に対して直接的に接続されるようになっている。
【0031】
まず、Z方向下側における接続構造について、図5~9も参照しつつ説明する。弁座部材19は、図5,6に示すように、上面である弁座面19Aと、弁座面19Aの反対側に形成された下面である開放面19Bと、を一体的に有する。本実施形態では、弁座部材19は、全体が1種類の材料によって構成されている。開放面19Bは、弁本体11の外側に開放されている。開放面19Bは、弁本体11の外側を向いた面である。弁座面19Aが弁本体11の内側に配置され、且つ、開放面19Bが弁本体11の側面部111よりも外側に配置されていることにより、弁座部材19は、弁本体11の側面部111に形成された開口部112を貫通する。即ち、直方体状の弁座部材19の外周面19Cが貫通部となる。
【0032】
弁座部材19には、弁座面19Aから開放面19Bに亘るとともにZ方向に沿って延びる3つの貫通孔191が形成されている。貫通孔191は、Z方向に沿って延びるとともに内径が略一定の円筒状の筒部192と、筒部192よりも弁本体11の外側に設けられるともに外側に向かうにしたがって拡径される傾斜面部193と、を有する。尚、筒部192の形状は、管部材14~16に対応したものであればよく、円筒状に限定されず、例えば角筒状等であってもよい。また、傾斜面部193は、図示のように断面直線状であってもよいし、凹状又は凸状等の断面曲線状であってもよい。
【0033】
弁座部材19の開放面19Bには、後述するねじ29を固定可能な被固定部としての雌ねじ部194が、2箇所に形成されている。2つの雌ねじ部194は、X方向中央の貫通孔191に対してX方向左側且つY方向一方側の位置と、X方向右側且つY方向他方側の位置と、にそれぞれ配置され、この貫通孔191を、X方向に対して傾斜した方向から挟み込む。即ち、Z方向を軸方向として開放面19Bを仮想的に180°回転させた場合、回転の前後で雌ねじ部194が重ならないようになっている。
【0034】
管部材14~16の先端部には、外周側にOリング(密封部材)27が設けられており、この先端部が下側から貫通孔191に挿通される。図示の例では、管部材14~16がくびれ形状を有することでOリング27が配置可能となっているが、Oリングを配置するための形状はこれに限定されない。Oリング27の外径は、自然状態(貫通孔191に挿通される前の状態)において、筒部192の内径よりも大きく、且つ、傾斜面部193における最大内径(Z方向下端部における内径)よりも小さい。
【0035】
管部材14~16の固定のために、図7,8に示す保持部材28と、2つのねじ29と、が用いられる。保持部材28は、開放面19Bに重なるように板状に形成され、管部材14~16の各々が挿通される3つの開口281と、ねじ29が挿通される2つの開口部282と、を有する。開口部282は、雌ねじ部194に重なる位置に形成されている。
【0036】
管部材14~16は、他の部分よりも大径に形成された大径部141~161を有し、この大径部141~161が、弁座部材19の開放面19Bと保持部材28とによってZ方向から挟み込まれる。さらに、開口部282を通過したねじ29が雌ねじ部194と螺合することによって、保持部材28が弁座部材19に固定され(図9)、管部材14~16が保持されるようになっている。
【0037】
Oリング27が上記のような寸法を有していることで、管部材14~16が貫通孔191に挿通される際、Oリング27は、Z方向上側に向かって傾斜面部193を通過する際に徐々に圧縮されていく。Oリング27は、筒部192に配置されるとともに、その復元力によって管部材14~16の外周面及び筒部192の内周面に密着する。
【0038】
本実施形態では、弁座部材19における貫通孔191の数(即ち管部材14~16の数)よりも少ない数の雌ねじ部194が設けられている。これにより、複数の管部材14~16がまとめて固定されるようになっている。また、上記のように雌ねじ部194が180°回転に対する対称性を有していないことで、左右の管部材15,16が誤った貫通孔191に接続されないようになっている。
【0039】
次に、Z方向上側における接続構造について、図10,11も参照しつつ説明する。弁本体11の側面部111には、上記のように流入ポート11Aが形成されており、この流入ポート11Aが第2の開口部として機能し、側面部111の外側には、流入ポート11Aに対応する位置に取付部30が設けられている。取付部30は、弁本体11とは別体に形成されるとともに、溶接やろう付け等によって弁本体11に固定されている。尚、取付部と弁本体とが一体に形成されていてもよい。
【0040】
取付部30は、流入ポート11Aに連通することで弁本体11の内外を連通する第2の貫通孔301と、弁本体11の外側に開放された面302と、面302に設けられた第2の被固定部としての雌ねじ部303と、を有する。雌ねじ部303は、貫通孔301をX方向から挟み込むように2箇所に設けられている。
【0041】
管部材13の固定のために、保持部材31と、2つのねじ32と、が用いられる。保持部材31は、面302に重なるように板状に形成され、管部材13が挿通される開口311と、ねじ32が挿通される2つの開口部312と、を有する。開口部312は、雌ねじ部303に重なる位置に形成されている。
【0042】
管部材13は、他の部分よりも大径に形成された大径部131を有し、この大径部131が、取付部30の面302と保持部材31とによってZ方向から挟み込まれる。さらに、開口部312を通過したねじ32が雌ねじ部303と螺合することによって保持部材31が取付部30に固定され、管部材13が保持されるようになっている(図11)。
【0043】
Z方向上側における接続構造においても、下側の接続構造と同様に、貫通孔301が筒部301A及び傾斜面部301Bを有し、管部材13の先端部にOリング27が設けられている。即ち、上側の接続構造においても、傾斜面部301BによってOリング27が圧縮されるようになっている。
【0044】
以上の本実施形態によれば、開放面19B側から貫通孔191に管部材14~16を挿通し、ねじ29を雌ねじ部194に固定することにより、管部材14~16を弁本体11及び弁座部材19に対して固定することができ、作業性を向上させることができる。このとき、貫通孔191が傾斜面部193を有することで、Oリング27を圧縮することができ、管部材14~16と貫通孔191との間の密封性を確保することができる。
【0045】
また、上記のような接続構造により、ろう付けや溶接作業が必要なく、これらの作業が可能な管部材を使用する必要がない。即ち、他の機器から直接的に延びる管部材を直接的に接続することができ、部品点数を削減しやすい。
【0046】
また、開放面19Bが弁本体11の側面部111よりも外側に配置され、弁座部材19の外周面19Cが、弁本体11に形成された開口部112を貫通する貫通部となることで、開口部112の内周縁と外周面19Cとを、例えばろう付け等によって全周に亘って接続することができ、弁本体11と弁座部材19との間の密封性を確保しやすい。
【0047】
また、弁座部材19の貫通孔191よりも少ない数の雌ねじ部194が設けられていることで、複数の管部材14~16をまとめて弁座部材19に接続することにより、接続箇所を減らすことができる。
【0048】
また、弁本体11の側面部111に第2の開口部としての流入ポート11Aが形成され、取付部30が設けられていることで、流入ポート11A側においても、弁本体11の外側から管部材13を挿通し、ねじ32を雌ねじ部303に固定することにより、管部材13を弁本体11に対して固定することができ、作業性を向上させることができる。このとき、取付部30の貫通孔301が傾斜面部301Bを有するとともに、管部材13の先端部にOリング27が設けられ、傾斜面部301BによってOリング27が圧縮されることで、管部材13と貫通孔301との間の密封性を確保することができる。
【0049】
また、弁座部材19に被固定部としての雌ねじ部194が形成され、ねじ止めによって管部材14~16が固定されることで、管部材14~16を弁座部材19に対して容易に固定することができる。
【0050】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記実施形態では、弁座部材19の貫通孔191よりも少ない数の雌ねじ部194が設けられているものとしたが、図12に示すように、弁座部材190が貫通孔191と等しい数の雌ねじ部194を有していてもよい。このような構成では、図13に示すように、保持部材28Bおよびねじ29を用いて各々の管部材14~16を個別に接続することができ、作業の自由度を向上させることができる。
【0051】
また、図12,13に示す変形例では、各々の管部材14~16に対応した貫通孔191と雌ねじ部194との対が3対形成され、各対における貫通孔191と雌ねじ部194との距離(即ち中心間距離)が等しい。このような構成によれば、各々の対において、固定構造を共通化することができる。
【0052】
尚、上記のような貫通孔と雌ねじ部との各対において、貫通孔と雌ねじ部との距離が互いに異なっていてもよく、このような構成によれば、各々の管部材を正しい位置に取り付けやすくすることができる。また、雌ねじ部の数が貫通孔の数よりも多くてもよく、例えば1つの管部材を取り付けるために複数の雌ねじ部が使用されてもよいし、使用されない雌ねじ部があってもよい。
【0053】
また、前記実施形態では、取付部30が2つの雌ねじ部303を有するものとしたが、取付部に設けられる雌ねじ部(第2の被固定部)の数は2つに限定されず、1つであってもよいし3つ以上であってもよい。即ち、図14,15に示すように、取付部300に1つの雌ねじ部303のみが形成され、管部材14の固定のために1つの雌ねじ部303のみが使用される構成としてもよい。このとき、固定には保持部材31B及びねじ32が用いられている。
【0054】
また、前記実施形態では、弁座部材19の開放面19Bは、弁本体11の側面部111よりも外側に配置されるものとしたが、開放面が側面部よりも内側に配置されてもよい。このような構成によれば、スライド式切換弁の全体を小型化しやすい。
【0055】
また、前記実施形態では、流入ポート11A側においても弁本体11の外側から管部材13が挿通されてねじ32によって固定されるものとしたが、流入ポート11A側においてろう付けや溶接等の他の固定方法が採用されていてもよい。
【0056】
また、前記実施形態では、被固定部としての雌ねじ部194が形成されてねじ止めによる固定方法が採用されるものとしたが、他の固定方式が採用されてもよく、弁座部材には、固定方式に応じた適宜な形態の被固定部が設けられればよい。これは、取付部においても同様である。他の固定方式としては、固定ピンを用いた方式が例示される。
【0057】
また、前記実施形態では、弁座部材19が弁座面19Aと開放面19Bとを一体的に有し、全体が1種類の材料によって構成されているものとしたが、このような構成に限定されない。例えば、弁座部材の基部に対し、摺動性材料によって構成されたシート部材を設けたりコーティングを施したりすることによって弁座面を形成してもよい。「弁座部材が弁座面と開放面とを一体的に有する」とは、そもそも一部品として構成された弁座部材だけでなく、当初は別部品として構成された複数の部品が一体化されることにより、一部品として取り扱い可能に構成された弁座部材も含む。また、上記のように弁座部材がそもそも一部品である場合及び複数部品が一体化された場合のいずれにおいても、弁座部材の各部の材質が同一であってもよいし、各部の材質が異なっていてもよい。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1…冷凍サイクル、2…圧縮機、3…室外熱交換器(第一熱交換器)、4…室内熱交換器(第二熱交換器)、5…膨張弁(膨張手段)10…四方切換弁(スライド式切換弁)、11…弁本体、111…側面部、112…開口部、11A…流入ポート(第2の開口部)、12…弁体、13~16…管部材、19…弁座部材、191…貫通孔、192…筒部、193…傾斜面部、194…雌ねじ部(被固定部)、19A…弁座面、19B…開放面、19C…外周面(貫通部)、26A…摺接面、30…取付部、301…第2の貫通孔、303…雌ねじ部(第2の被固定部)
図1
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