(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010291
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】プラットホームドア
(51)【国際特許分類】
B61B 1/02 20060101AFI20240117BHJP
E05F 15/41 20150101ALI20240117BHJP
【FI】
B61B1/02
E05F15/41
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111539
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】青木 優介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 了輔
(72)【発明者】
【氏名】増田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】井本 清紀
(72)【発明者】
【氏名】山川 弘平
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】古田 幸大
(72)【発明者】
【氏名】榊 源太
(72)【発明者】
【氏名】足利 翔志
(72)【発明者】
【氏名】朴木 豊
【テーマコード(参考)】
2E052
3D101
【Fターム(参考)】
2E052AA02
2E052BA04
2E052CA06
2E052DA03
2E052DB04
2E052GA08
2E052GC06
2E052GD08
2E052HA01
3D101AA12
3D101AA26
3D101AA32
3D101AB07
3D101AB12
3D101AB15
(57)【要約】
【課題】ドアリーフに挟み込まれた障害物を迅速に解除できるプラットホームドアを提供すること。
【解決手段】プラットホームドア1において、ドアリーフDR,DLが障害物を挟み込んだ場合の開放位置方向への移動を速度制御で行われる。よって、ドアリーフDR,DLの位置に依らず、挟み込みを解消する適切なドアリーフDR,DLの速度を設定できるので、挟み込みを迅速に解除できる。更に速度制御において、サーボモータ14の逆転方向、即ちドアリーフDR,DLが閉鎖位置方向へ移動する方向へのトルクの出力が禁止される。よって、ユーザHの手によりドアリーフDR,DLを開いた場合にサーボモータ14から逆転方向(閉鎖位置方向)へトルクが発生しないので、ユーザHの手によってもスムーズにドアリーフDR,DLを開放できる。これによってもドアリーフDR,DLの障害物の挟み込みを迅速に解除できる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホーム上の乗降口を閉鎖または開放するドアリーフと、
前記乗降口を閉鎖する閉鎖位置または前記乗降口を開放する開放位置に前記ドアリーフの位置を移動させるよう、前記ドアリーフを駆動する電動機を制御する制御手段と、
前記ドアリーフによる障害物の挟み込みを検出する検出手段とを備え、
前記制御手段は、
前記ドアリーフの前記閉鎖一方向への中に前記検出手段によって挟み込みを検出した場合に、前記電動機による前記ドアリーフの前記閉鎖位置方向へのトルク指令を無くすと共に、前記電動機の制御を、前記ドアリーフの位置の検出値と目標値とに応じて予め設定された速度になるように制御する位置制御から、前記ドアリーフの速度の検出値と目標値とに応じて予め設定された速度になるように制御する速度制御に変更して、前記ドアリーフを開放位置方向に移動させる反転開制御手段を備えていることを特徴とするプラットホームドア。
【請求項2】
前記反転開制御手段は、前記ドアリーフを前記速度制御によって前記開放位置方向へ所定量移動させた後に、前記位置制御に変更し、前記ドアリーフの前記開放位置方向への移動を継続するものであることを特徴とする請求項1記載のプラットホームドア。
【請求項3】
前記反転開制御手段は、前記速度制御による前記ドアリーフの開放位置方向への移動を、前記ドアリーフの速度の検出値と目標値とに依らず一定速度で行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のプラットホームドア。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記反転開制御手段による前記ドアリーフの前記開放位置方向への移動後に、前記ドアリーフを前記閉鎖位置方向に移動させる再閉鎖手段と、
前記再閉鎖手段によるドアリーフの前記閉鎖位置方向への移動と、前記反転開制御手段によるドアリーフの前記開放位置方向への移動とが連続して所定回数行われた場合に、前記ドアリーフを前記開放位置に移動させた上で、前記ドアリーフの移動を停止させる開放停止手段とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラットホームドア。
【請求項5】
前記検出手段は、前記ドアリーフの現在の速度である現在速度と、前記ドアリーフの前回の速度である前回速度との差分である速度偏差が所定の速度閾値を超えた場合に、障害物の挟み込みを検出するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラットホームドア。
【請求項6】
前記乗降口は、前記プラットホームのホーム側と軌道側とを区画するように立設された固定枠に形成されるものであり、
前記ドアリーフは、前記固定枠に形成された乗降口を閉鎖または開放するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラットホームドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラットホームドアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、ドアリーフの閉動作中に障害物の挟み込みを検出した場合、ドアリーフを減速停止処理させ、その後ドアリーフの開放を行う自動ドアが開示されている。これらの処理は、いずれもドアリーフの位置の検出値と目標値とに応じて予め設定された速度になるように、ドアリーフの移動が制御される「位置制御」により行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の自動ドアにおいてドアリーフが障害物を挟み込んだ場合、上記の減速停止処理およびドアリーフの開放と共に、ユーザが挟み込んだ障害物を素早く取り除くため、駆動中のドアリーフを手で開く場合がある。この場合、ドアリーフは位置制御で制御されているので、ユーザの手で開いたドアリーフの位置の検出値が目標値をオーバーしてしまう。そうすると、ドアリーフの位置をオーバーした目標値に応じた位置に戻そうと、逆にドアリーフが閉じる方向(即ち障害物を挟み込む方向)に動作してしまう。これによって、ユーザはドアリーフを思うように開くことができず、ドアリーフが挟み込んだ障害物を迅速に解除できないという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、ドアリーフに挟み込まれた障害物を迅速に解除できるプラットホームドアを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明のプラットホームドアは、プラットホーム上の乗降口を閉鎖または開放するドアリーフと、前記乗降口を閉鎖する閉鎖位置または前記乗降口を開放する開放位置に前記ドアリーフの位置を移動させるよう、前記ドアリーフを駆動する電動機を制御する制御手段と、前記ドアリーフによる障害物の挟み込みを検出する検出手段とを備え、前記制御手段は、前記ドアリーフの前記閉鎖一方向への中に前記検出手段によって挟み込みを検出した場合に、前記電動機による前記ドアリーフの前記閉鎖位置方向へのトルク指令を無くすと共に、前記電動機の制御を、前記ドアリーフの位置の検出値と目標値とに応じて予め設定された速度になるように制御する位置制御から、前記ドアリーフの速度の検出値と目標値とに応じて予め設定された速度になるように制御する速度制御に変更して、前記ドアリーフを開放位置方向に移動させる反転開制御手段を備えている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載のプラットホームドアによれば、ドアリーフによる障害物の挟み込みが検出された場合に、電動機によるドアリーフの閉鎖位置方向へのトルク指令を無くすと共に、電動機の制御を位置制御から速度制御に変更し、ドアリーフを開放位置方向に移動させる。電動機の制御を速度制御に変更することで、ドアリーフの位置に依らずドアリーフを開放位置方向へ迅速に移動させることができるという効果がある。
【0008】
更にこの速度制御の際に、電動機によるドアリーフの閉鎖位置方向へのトルクの出力が無くされる。よって、障害物を挟み込んだドアリーフをユーザが手によって開放位置方向に開いても、電動機からドアリーフの閉鎖位置方向へのトルクが発生しないので、ユーザの手の力によってもドアリーフをスムーズに開放させることができる。これによってもドアリーフの障害物の挟み込みを迅速に解除することができるという効果もある。
【0009】
請求項2記載のプラットホームドアによれば、請求項1記載のプラットホームドアの奏する効果に加え、速度制御によるドアリーフの開放位置方向への移動を、時間に依らず一定の速度で行うことで、障害物の挟み込みを解除するドアリーフの動作に対するユーザの違和感を抑制できるという効果がある。
【0010】
請求項3記載のプラットホームドアによれば、請求項1又は2に記載のプラットホームドアの奏する効果に加え、速度制御によるドアリーフの開放位置方向への移動を、時間に依らず一定の速度で行うことで、障害物の挟み込みを解除するドアリーフの動作に対するユーザの違和感を抑制できるという効果がある。
【0011】
請求項4記載のプラットホームドアによれば、請求項1又は2に記載のプラットホームドアの奏する効果に加え、反転開制御手段によるドアリーフの開放位置方向への移動後に、ドアリーフを閉鎖位置方向に移動させることで、障害物が除去されたにも関わらず、ドアリーフが開放されている状態を抑制することができるという効果がある。
【0012】
また、再閉鎖手段によるドアリーフの閉鎖位置方向への移動と、反転開制御手段によるドアリーフの開放位置方向への移動とが連続して所定回数行われた場合に、ドアリーフを開放位置に移動させた上で、ドアリーフの移動を停止させる。再閉鎖手段によるドアリーフの閉鎖位置方向への移動と、反転開制御手段によるドアリーフの開放位置方向への移動とが連続して所定回数行われた場合は、ドアリーフが挟み込んだ障害物が素早く除去できず、繰り返しドアリーフによって障害物を挟み込んでいる状況とされる。かかる状況において、ドアリーフを開放位置に移動させた上で、ドアリーフの移動を停止させることで、当該障害物の損傷を抑制しながらも当該障害物を適切に除去できるという効果もある。
【0013】
請求項5記載のプラットホームドアによれば、請求項1又は2に記載のプラットホームドアの奏する効果に加え、ドアリーフの挟み込みがドアリーフの速度偏差に基づいて検出される。これにより、ドアリーフの質量が大きくなっても、ドアリーフの障害物を適切に検出できるという効果がある。
【0014】
請求項6記載のプラットホームドアによれば、請求項1又は2に記載のプラットホームドアの奏する効果に加え、次の効果を奏する。乗降口が、プラットホームのホーム側と軌道側とを区画する固定枠に形成され、ドアリーフは、その固定枠に形成された乗降口を閉鎖または開放するものとされる。プラットホームにおいてホーム側と軌道側との閉鎖状態または開放状態を切り替えるドアリーフにおいても、挟み込んだ障害物を迅速に解除することができる。これによって、ドアリーフが障害物の解除のために長時間に亘って開放され続けるのを抑制できるので、軌道側における列車の走行による走行風や軌道側におけるゴミ等がホーム側に流入するのを抑制できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】ドアリーフの開閉の様子を表すグラフである。
【
図3】プラットホームドアの電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】(a)は、メイン処理のフローチャートであり、(b)は、ドア閉処理のフローチャートである。
【
図6】(a)は、反転開処理のフローチャートであり、(b)は、開処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は一実施形態におけるプラットホームドア1の正面図である。
図1中の矢印F-B,矢印U-D及び矢印L-Rは、プラットホームドア1の前後方向、上下方向および左右方向をそれぞれ表している。本実施形態では、前後方向は枕木方向に、左右方向はレール方向に、それぞれ対応する。
【0017】
本実施形態のプラットホームドア1は、列車が発着する駅のプラットホームに設置される構造物である。プラットホームドア1には、当該プラットホームにおいて乗客(利用者)が往来するホーム側の空間および列車が走行する軌道側(
図1紙面奥側、矢印B方向側)の空間を区画する固定枠2と、その固定枠2に配設されるドアリーフDL,DRとが設けられる。
【0018】
固定枠2は、プラットホームに立設され、ホーム上に配設される基部3と、その基部3に立設される壁部4と、その壁部4の上方に配設される駆動部5と、壁部4の下方に配設される案内部6とを有している。壁部4には、乗客がホーム側と軌道側とを出入りするための乗降口7が形成される。本実施形態において乗降口7は縦長の長方形に形成される。なお、固定枠2の周囲には、図示しない壁が配設され、その壁と固定枠2とプラットホームドア1にとより、ホーム側の空間と軌道側の空間とが区画される。
【0019】
ドアリーフDL,DRは、左右(矢印L-R方向)にスライド変位する両引き戸として構成され、乗降口7を開放する開放位置(図示せず)と乗降口7を閉鎖する閉鎖位置(
図1に表す位置)との間でスライド変位される。即ちドアリーフDL,DRは、互いに近づく方向および互いに離れる方向にスライド変位される。ドアリーフDL,DRは、戸先に沿って配設される戸先ゴム8L,8Rをそれぞれ有している。
【0020】
駆動部5は、左右方向(矢印L-R方向)に延設されるリニアガイド9と、そのリニアガイド9に案内されて左右方向にスライド変位される一対の移動体10L,10Rと、それら移動体10L,10Rがそれぞれ固着される無端状のベルト11と、そのベルト11が平行掛けされる駆動プーリ12及び従動プーリ13と、駆動プーリ12が固着される駆動軸を正逆回転可能な電動機であるサーボモータ14と、そのサーボモータ14の回転を制御する制御装置15とを有する。移動体10L,10Rの下端がそれぞれドアリーフDL,DRの上端に固定される。
【0021】
ドアリーフDL,DRの下端には、複数の車輪16が設けられる回転可能に軸支される。案内部6は、車輪16の転動方向をドアリーフDL,DRの開閉方向(矢印L-R方向)に規制するガイドレールとして構成される。即ちドアリーフDL,DRは、リニアガイド9及び案内部6によって、左右方向(矢印L-R方向)へのスライド変位のみが許容され、前後方向への変位(製造上の寸法公差を超える変位)は規制される。ベルト11は、駆動プーリ12及び従動プーリ13の間の部分が、リニアガイド9の延設方向と略平行に展張される。移動体10Lと移動体10Rとがそれぞれベルト11に固着される位置は、略半周分だけ位相を異ならせた位置とされる。
【0022】
よって、制御装置15からの指示に応じてサーボモータ14が正転されると、移動体10L,10Rが互いに離間する方向へスライド変位され、ドアリーフDL,DRが開放位置へ向けてスライド変位される。一方、制御装置15からの指示に応じてサーボモータ14が逆転されると、移動体10L,10Rが互いに近接する方向へスライド変位され、ドアリーフDL,DRが閉鎖位置へ向けてスライド変位される。
【0023】
また、プラットホームドア1には、ドアリーフDLが閉鎖位置に位置したことを検出する左ドア閉センサ21Lと、ドアリーフDRが閉鎖位置に位置したことを検出する右ドア閉センサ21Rと、ドアリーフDL,DRが開放位置に位置したことを検出するドア開センサ22とが設けられる。本実施形態において、左ドア閉センサ21L、右ドア閉センサ21R及びドア開センサ22はリミットスイッチで構成されるが、赤外線センサ等の他のセンサやスイッチにより構成されても良い。
【0024】
ドア開センサ22は、ドアリーフDR側にのみ設けられ、ドアリーフDRが開放位置に位置するかが検出される。そして、ドア開センサ22によってドアリーフDRが開放位置に位置した場合に、ドアリーフDL,DRが共に開放位置に位置したと判断される。なお、ドア開センサ22は、ドアリーフDR側にのみ設けるものに限られず、ドアリーフDL側にのみに設けても良いし、ドアリーフDR側およびドアリーフDL側のそれぞれに設けても良い。
【0025】
このように構成されたプラットホームドア1の制御装置15によるドアリーフDR,DLの開閉制御と、ドアリーフDR,DLが障害物(例えば、プラットホームドア1を出入りするユーザHの身体やユーザHの持ち物)が挟み込んだ場合の制御とを、
図2を参照して説明する。
【0026】
図2は、ドアリーフDR,DLの開閉の様子を表すグラフである。本実施形態では、ドアリーフDR,DLが障害物を挟み込んでいない通常時において、ドアリーフDR,DLの開閉制御は、位置制御によって行われる。位置制御とは、ドアリーフDR,DLの位置の検出値と予め設定されたドアリーフDR,DLの位置の目標値との差の大きさに応じて、ドアリーフDR,DLの速度が予め設定された速度となるように、サーボモータ14の回転を制御する方式である。
【0027】
具体的に、
図2において、ドアリーフDR,DLの移動速度の絶対値をグラフg1に表す。グラフg1において、縦軸が移動速度の絶対値の大きさを、横軸が時刻をそれぞれ表す。位置制御によるドアリーフDR,DLを開放位置から閉鎖位置にする動作(戸閉動作)は、まず、ドアリーフDR,DLの移動速度を所定の速度(例えば0.5m/s)となるように加速させながら閉鎖位置方向に移動させる。
【0028】
その後、ドアリーフDR,DLを所定の速度のまま等速で移動させ、その後、ドアリーフDR,DLを当接させるため、ドアリーフDR,DLの移動速度を減速させる。本実施形態では、ドアリーフDR,DLの移動を加速から定速に切り替える位置がドアリーフDR,DLの閉鎖位置から0.5mの位置とされ、かかる位置が「閉等速位置」とされる。また、ドアリーフDR,DLの移動を定速から減速に切り替える位置が閉等速位置から更に0.2mの位置とされ、かかる位置が「閉減速位置」とされる。
【0029】
ドアリーフDR,DLの開閉を位置制御によって行うことで、ドアリーフDR,DLの位置を詳細に制御できる。これにより、ドアリーフDR,DLが開放位置や閉鎖位置を超えることを抑制できる。
【0030】
このような戸閉動作において、ドアリーフDR,DLが障害物を挟み込んだ場合を説明する。本実施形態において、ドアリーフDR,DLによる障害物の挟み込みは、主にドアリーフDR,DLの移動速度の変化に基づいて検出される。本実施形態においてドアリーフDR,DLの移動速度は、ドアリーフDR,DLを駆動させるサーボモータ14に設けられるエンコーダ(図示せず)の出力値に基づき制御装置15で算出される。なお、ドアリーフDR,DLの移動速度の検出手法はこれに限られず、例えば、ドアリーフDL,DRに速度計を設けその速度計で取得された速度を制御装置15に入力しても良いし、その他の手法でドアリーフDL,DRの移動速度を検出し制御装置15に入力しても良い。
【0031】
ドアリーフDR,DLによる障害物の挟み込みは、具体的に、ドアリーフDR,DLの現在の移動速度である現在速度と、前回の移動速度である前回速度との差分の絶対値である速度偏差を算出し、算出された速度偏差が所定の偏差閾値Dを超えた場合に、ドアリーフDR,DLが障害物を挟み込んだと判断される。偏差閾値Dは、通常のドアリーフDR,DLの開閉において検出される速度偏差よりも十分大きい値が設定され、「0.1m/s」が例示される。
【0032】
図2において、ドアリーフDR,DLの速度の速度偏差をグラフg2に表す。グラフg1において、縦軸が速度偏差の大きさを、横軸が時刻をそれぞれ表す。時刻t1において戸閉動作を開始したドアリーフDR,DLは、時刻t2で障害物を挟み込む。障害物を挟み込むことでドアリーフDR,DLの閉鎖位置への移動が規制され、ドアリーフDR,DLの速度が急減速される。これにより、ドアリーフDR,DLの速度偏差が増大し、その速度偏差が偏差閾値Dを超えた場合にドアリーフDR,DLが障害物を挟み込んだと判断される。
【0033】
従来では、ドアリーフDR,DLによる障害物の挟み込みを、サーボモータ14が出力するトルクの指令値であるトルク指令値のみにより判断していた。しかしながら、ドアリーフDR,DLが駅のプラットホームに設置されるような、比較的質量が大きなものである場合、ドアリーフDR,DLを開閉するために要するサーボモータ14のトルクと、ドアリーフDR,DLが障害物を挟み込んだ際に生じるサーボモータ14のトルクとの差が極めて小さいため、ドアリーフDR,DLによる障害物の挟み込みの検出が遅れたり、挟み込みを検出できないことがあった。
【0034】
ここでドアリーフDR,DLが障害物を挟み込む前とドアリーフDR,DLが障害物を挟み込んだ後との速度偏差は、ドアリーフDR,DLの質量に関わらず略同等とされる。そこで本実施形態において、ドアリーフDR,DLの障害物の挟み込みを速度偏差によって検出することで、ドアリーフDR,DLの質量に関わらずドアリーフDR,DLによる障害物の挟み込みを迅速かつ正確に検出することができる。
【0035】
このように障害物の挟み込みが検出された後、プラットホームドア1は挟み込んだ障害物を解除するため、ドアリーフDR,DLを開放位置方向へ移動させる。この際、制御装置15はドアリーフDR,DLを速度制御により、ドアリーフDR,DLを開放位置方向へ移動させる。速度制御とは、ドアリーフDR,DLの速度の検出値と予め設定されたドアリーフDR,DLの速度の目標値との差の大きさに応じて、ドアリーフDR,DLの速度が予め設定された速度となるように、サーボモータ14の回転を制御する方式である。
【0036】
本実施形態において、速度制御によるドアリーフDR,DLを開放位置方向へ移動が一定の速度(例えば0.4m/s)で行われるようにサーボモータ14の回転が制御される。これにより、ドアリーフDR,DLは、障害物を挟み込んだ直後から開放位置方向への移動を開始できる。
【0037】
このような障害物を挟み込んだ場合のドアリーフDR,DLを開放位置方向へ移動を位置制御により行う場合、ドアリーフDR,DLの位置の目標値がドアリーフDR,DLが障害物を挟み込んだ位置よりも閉鎖位置方向に設定されると、ドアリーフDR,DLが障害物を更に挟み込むように移動してしまうため、ドアリーフDR,DLの開放位置方向への移動が遅れてしまう。
【0038】
そこで、ドアリーフDR,DLが障害物を挟み込んだ場合の開放位置方向への移動を速度制御で行うことで、ドアリーフDR,DLの位置に依らず、挟み込みを解消する適切なドアリーフDR,DLの速度を設定できるので、挟み込みを迅速に解除できると共に、ドアリーフDR,DLの動作に対するユーザHの違和感やドアリーフDR,DLが障害物を巻き込むことを抑制できる。
【0039】
更にかかる速度制御において、制御装置15は、ドアリーフDR,DLを開放位置方向へ移動させるためのサーボモータ14の正転方向へのトルク指令値の出力を許可する一方で、サーボモータ14の逆転方向、即ちドアリーフDR,DLが閉鎖位置方向へ移動する方向へのトルク指令値の出力を禁止する(無くす)。これによって、サーボモータ14によるドアリーフDR,DLの閉鎖位置方向へのトルクの出力が無くなる。
【0040】
ドアリーフDR,DLが閉鎖位置方向へ移動する方向へのトルクの出力が無くなることで、速度制御によるドアリーフDR,DLの開放位置方向へ移動に加え、ユーザHの手などによりドアリーフDR,DLを開いた場合にサーボモータ14から逆転方向(閉鎖位置方向)へトルクが発生しないので、ユーザHの手などによってもスムーズにドアリーフDR,DLを開放できる。これによってもドアリーフDR,DLの障害物の挟み込みを迅速に解除できる。
【0041】
また、速度制御におけるドアリーフDR,DLの移動速度は時刻に依らず一定なので、例えば、障害物を挟み込んだドアリーフDR,DLが急加速しながら開放位置に移動するのを抑制できる。これにより、障害物の挟み込みを解除するためのドアリーフDR,DLの動作に対するユーザHの違和感を抑制できると共に、ドアリーフDR,DLに挟み込まれた障害物がドアリーフDR,DLの急速な開放によって損傷するのを抑制できる。
【0042】
制御装置15は、このような速度制御によるドアリーフDR,DLの開放位置方向への移動およびサーボモータ14の逆転方向へのトルクの出力の禁止を、所定時間ΔT(例えば0.5秒間)だけ行った後、位置制御によるドアリーフDR,DLの開放位置方向への移動に切り替える。この際、サーボモータ14の逆転方向へのトルクの出力の禁止も解除される。
【0043】
即ち障害物を挟み込んでから所定時間ΔTの速度制御により、ドアリーフDR,DLから障害物が解除された後の、ドアリーフDR,DLの開放位置方向への移動が位置制御で行われる。これにより、ドアリーフDR,DLの位置を把握した上で開放位置方向へ移動できるので、ドアリーフDR,DLが開放位置を超えて移動し続ける等、ドアリーフDR,DLが不正に移動してしまう事態を抑制できる。
【0044】
このような位置制御によるドアリーフDR,DLの開放位置方向への移動を、ドアリーフDR,DLの開放位置と閉鎖位置との中間位置まで行う。その後、再度ドアリーフDR,DLの閉鎖位置への移動を行う。これにより、ドアリーフDR,DLが挟み込んだ障害物がドアリーフDR,DLを開いた後に乗降口7から除去された後も、ドアリーフDR,DLが開放されている状態を抑制できる。
【0045】
更にかかるドアリーフDR,DLの開放位置方向への移動の際に、ドアリーフDR,DLが障害物を挟み込んだことを検出した場合は、上記した速度制御によるドアリーフDR,DLの中間位置への移動を繰り返す。このようなドアリーフDR,DLが障害物を挟み込みの検出→速度制御によるドアリーフDR,DLの開放位置方向への移動→位置制御によるドアリーフDR,DLの中間位置への移動→ドアリーフDR,DLの閉鎖位置方向への移動を連続して所定回数(例えば3回)繰り返した場合、位置制御によるドアリーフDR,DLの開放位置方向への移動において、ドアリーフDR,DLを開放位置まで移動させた後にドアリーフDR,DLの移動を停止させる。
【0046】
これにより、ドアリーフDR,DLが障害物を繰り返して挟み込むような、障害物を素早く除去できない場合にドアリーフDR,DLが開放位置で停止するので、障害物の損傷を抑制しながらも障害物を適切に除去できる。
【0047】
また、このようなプラットホームドア1がプラットホームにおける固定枠2に設けられる。よって、プラットホームにおいてホーム側と軌道側との閉鎖状態または開放状態を切り替えるドアリーフDR,DLにおいても、挟み込んだ障害物を迅速に解除することができる。これにより、ドアリーフDR,DLが障害物の解除のために長時間に亘って開放され続けるのを抑制できるので、軌道側における車両の走行による走行風や軌道側におけるゴミ等がホーム側に流入するのを抑制できる。
【0048】
次に
図3を参照して、プラットホームドア1の電気的構成を説明する。
図3は、プラットホームドア1の電気的構成を表すブロック図である。
図3に示す通り、プラットホームドア1の制御装置15には、CPU50と、フラッシュROM51と、RAM52とを有し、これらはバスライン53を介して入出力ポート54にそれぞれ接続されている。入出力ポート54には更に、上記したサーボモータ14と、後述の上位制御装置60とが接続される。
【0049】
CPU50は、バスライン53により接続された各部を制御する演算装置である。フラッシュROM51は、書き換え可能な不揮発性のメモリであり、制御プログラム51aが保存される。CPU50によって制御プログラム51aが実行されると、
図4(a)のメイン処理が実行される。
【0050】
RAM52は、CPU50が制御プログラム51aの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリであり、上記したドアリーフDL,DRの前回速度が記憶される前回速度メモリ52aと、検出回数メモリ53bとが記憶される。検出回数メモリ53bには、ドアリーフDL,DRによる障害物の挟み込みを検出した回数が記憶される。本実施形態において、検出回数メモリ53bには、ドアリーフDL,DRによる障害物の挟み込みを連続して検出した場合に、その回数が検出回数メモリ53bに設定され、一度でもドアリーフDL,DRが正常に閉鎖された場合に検出回数メモリ53bに0が設定される。
【0051】
上位制御装置60は、ドアリーフDL,DRを動作させるための動作指令を制御装置15に入力する情報処理装置であり、本実施形態ではPLC(Programmable Logic Controller)により構成される。プラットホームドア1の動作指令としては、ドアリーフDL,DRを閉鎖位置に移動させるドア閉指令や、ドアリーフDL,DRを開放位置に移動させるドア開指令、閉鎖位置へのドアリーフDL,DRの移動を開放位置方向に変更させるドア反転開指令などが設けられる。
【0052】
上位制御装置60には、上記した左ドア閉センサ21L、右ドア閉センサ21R及びドア開センサ22や、プラットホームドア1の乗降口7付近の障害物を検出する障害物センサ(図示せず)が接続される。上位制御装置60は、これら左ドア閉センサ21や右ドア閉センサ21R等のセンサから入力された検出結果や、ユーザHから入力された指示に応じた動作指令を作成する。そして、作成された動作指令が入出力ポート54を介して制御装置15に入力される。制御装置15は、入力された動作指令に応じてドアリーフDL,DRが動作するようにサーボモータ14の回転を制御する。
【0053】
次に、
図4~6を参照して、制御装置15のCPU50で実行されるメイン処理を説明する。
図4(a)は、メイン処理のフローチャートである。メイン処理は、プラットホームドア1の電源投入後に実行される処理である。なお、プラットホームドア1の電源投入後において、サーボモータ14の制御の方式は、位置制御に設定されるものとする。
【0054】
メイン処理はまず、上位制御装置60から上記したドア閉指令が入力されたかを確認する(S1)。S1の処理において、上位制御装置60からドア閉指令が入力された場合は(S1:Yes)、ドア閉処理(S2)を実行する。ここで
図4(b)~6を参照して、ドア閉処理を説明する。
【0055】
図4(a)は、ドア閉処理のフローチャートである。ドア閉処理では、後述のS10~S14によるドアリーフDL,DRを閉鎖する処理と、S15~S17による障害物を検出する処理とが並列に実行される。
【0056】
まず、S10~S14の処理を説明する。S10においては、ドアリーフDL,DRの閉鎖位置への移動における加速制御を行う。なお、S10の処理による加速制御は、
図2で上記したグラフg1におけるドアリーフDL,DRの閉鎖位置への移動における「加速」と「等速」とに対応する制御が含まれる。
【0057】
S10の処理の後、ドアリーフDL,DRの位置が
図2で上記した閉減速位置に到達したかを確認する(S11)。S11の処理において、ドアリーフDL,DRの位置が
図2で上記した閉減速位置に到達していない場合は(S11:No)、S10以下の処理を繰り返す。
【0058】
一方で、S11の処理において、ドアリーフDL,DRの位置が
図2で上記した閉減速位置に到達した場合は(S11:Yes)、ドアリーフDL,DRの閉鎖位置への移動における減速制御を行う(S12)。なお、S12の処理による減速制御は、
図2で上記したグラフg1におけるドアリーフDL,DRの閉鎖位置への移動における「減速」に対応する制御が含まれる。
【0059】
S12の処理の後、ドアリーフDL,DRの位置が閉鎖位置に到達したか、又は、上位制御装置60から左ドア閉センサ21L若しくは右ドア閉センサ21Rがオンになったことが通知されたかを確認する(S13)。S13の処理において、ドアリーフDL,DRの位置が閉鎖位置に到達したか、又は、上位制御装置60から左ドア閉センサ21L若しくは右ドア閉センサ21Rがオンになったことが通知された場合は(S13:Yes)、ドアリーフDL,DRの移動を停止する(S14)。
【0060】
一方でS13の処理において、ドアリーフDL,DRの位置が閉鎖位置に到達していない、並びに、上位制御装置60から左ドア閉センサ21L及び右ドア閉センサ21Rがオンになったことが通知されていない場合は(S13:No)、S12以下の処理を繰り返す。
【0061】
次に、上記したS10~S14の処理と並列して実行されるS15~17の処理を説明する。S15において、障害物検出処理が実行される。ここで、
図5を参照して障害物検出処理を説明する。
【0062】
図5は、障害物検出処理のフローチャートである。障害物検出処理では、後述のS30~S33によるドアリーフDL,DRの速度偏差による障害物の検出処理と、S34~S36によるサーボモータ14のトルク指令値に基づく障害物の検出処理とが並列に実行される。
【0063】
まず、S30~S33の処理を説明する。S30においては、サーボモータ14からドアリーフDL,DRの現在速度を取得する。S30の処理の後、取得された現在速度と、前回速度メモリの前回速度との差分の絶対値である速度偏差を算出し、その速度偏差が上記した偏差閾値D以上かを確認する(S31)。
【0064】
S31の処理において、速度偏差が偏差閾値D以上の場合は(S31:Yes)、ドアリーフDL,DRが障害物を挟み込んだと判断する(S32)。これによってドアリーフDL,DRの速度に基づき障害物の挟み込みが検出される。一方で、速度偏差が偏差閾値Dより小さい場合は(S31:No)、S32の処理をスキップする。S31,S32の処理の後、次回のドアリーフDL,DRの速度偏差による障害物の検出に備えて、前回速度メモリ52aに現在速度を設定する(S33)。
【0065】
次に、S34~S36の処理を説明する。S34においては、現在サーボモータ14のトルク指令値を取得する。S34の処理の後、そのトルク指令値がトルク閾値R以上かを確認する(S35)。ここでトルク閾値Rは、通常のドアリーフDR,DLの開閉において出力されるトルク指令値よりも十分大きい値が設定され、「1.0N・m」が例示される。
【0066】
S35の処理において、トルク指令値がトルク閾値R以上である場合は(S35:Yes)、ドアリーフDL,DRが障害物を挟み込んだと判断する(S36)。一方で、S34の処理において、トルク指令値がトルク閾値Rより小さい場合は(S35:No)、S36の処理をスキップする。
【0067】
即ち本実施形態では、ドアリーフDL,DRの速度偏差による障害物の挟み込みの検出に加え、サーボモータ14へのトルク指令値による障害物の挟み込みの検出も並行して行われる。ここで上記した通り、ドアリーフDL,DRの戸先には、戸先ゴム8L,8Rがそれぞれ設けられている。そのため、障害物の硬さが比較的柔らかい場合に、その障害物を挟み込むとドアリーフDL,DRの現在速度は直ぐには変化せず、ドアリーフDL,DRが柔らかい障害物をある程度挟み込まないと、ドアリーフDL,DRの現在速度が変化しない。
【0068】
一方で、ドアリーフDL,DRで柔らかい障害物を挟み込んだ場合でも、障害物をドアリーフDL,DRが挟み込んだ際の戸先ゴム8L,8Rを介して加わった抵抗力を補うサーボモータ14のトルク指令値が直ぐに出力されるため、これによってトルク指令値も直ぐ変化する。そこで、ドアリーフDL,DRの速度偏差による障害物の検出と、サーボモータ14のトルク指令値による障害物の検出とを併用することで、障害物の硬さに関わらず、ドアリーフDL,DRによる障害物の挟み込みを迅速かつ正確に検出できる。
【0069】
S33,S35,S36の処理の後、障害物検出処理を終了する。なお、障害物検出処理は、S30~S33の処理とS34~S36の処理とを並列に実行するものに限られず、これらを直列に実行しても良い。例えば、S30~S33の処理を実行した後にS34~S36の処理を実行しても良いし、S34~S36の処理を実行した後にS30~S33の処理を実行しても良い。
【0070】
図4(b)に戻る。S15の障害物検出処理の後、その障害物検出処理でドアリーフDL,DRによる障害物の挟み込みが検出されたかを確認する(S16)。S16の処理において、障害物の挟み込みが検出されない場合は(S16:No)、S15以下の処理を繰り返す。一方で、S16の処理において、障害物の挟み込みが検出された場合は(S16:Yes)、反転開処理(S17)を実行する。なお、S17の反転開処理の実行が指示された場合に、上記したS10,S12の処理によるドアリーフDL,DRの閉鎖位置への移動制御が実行されている場合は、その移動制御を停止した上で反転開処理が実行される。ここで
図6(a),(b)を参照して、反転開処理を説明する。
【0071】
図6(a)は、反転開処理のフローチャートである。反転開処理はまず、ドアリーフDL,DRが障害物の挟み込んだ回数が記憶される検出回数メモリ52bに1を加算する(S40)。S40の処理の後、検出回数メモリ52bの値が3以上かを確認する(S41)。
【0072】
検出回数メモリ52bの値が3より小さい場合は(S41:No)、目標位置に、ドアリーフDL,DRの開放位置と閉鎖位置との中間位置を設定する(S42)。目標位置は、
図6(b)で後述する開処理において、ドアリーフDL,DRを移動させる目標となる位置のことである。S42の処理の後、開処理(S43)を実行する。ここで
図6(b)を参照して、開処理を説明する。
【0073】
図6(b)は、開処理のフローチャートである。開処理はまず、サーボモータ14の制御の方式を位置制御から速度制御に変更する(S50)。S50の処理の後、サーボモータ14の逆転方向のトルクの出力を0、即ちサーボモータ14の逆転方向へのトルクの出力を禁止にする(S51)。
【0074】
S51の処理の後、サーボモータ14の正転への回転により、ドアリーフDL,DRを開放位置に移動させるドア反転開制御を行う(S52)。かかるドア反転制御では、S50の処理または後述のS54の処理によって設定される制御の方式(速度制御または位置制御)に基づくサーボモータ14の回転制御が行われる。
【0075】
S52の処理の後、ドア反転開制御を開始してから
図2で上記した所定時間ΔTが経過したかを確認する(S53)。S53の処理において、ドア反転開制御を開始してから所定時間ΔTが経過した場合は(S53:Yes)、制御の方式を速度制御から位置制御に変更する(S54)。S54の処理の後、サーボモータ14の逆転方向へのトルクの出力を許可する(S55)。これにより、サーボモータ14の逆転方向へのトルクの出力が許可される。
【0076】
一方でS53の処理において、ドア反転開制御を開始してから所定時間ΔTが経過していない場合は(S53:No)、S54,S55の処理をスキップする。S53,S55の処理の後、ドアリーフDL,DRの位置が目標位置に到達したかを確認する(S56)。S56の処理において、ドアリーフDL,DRの位置が目標位置に到達していない場合は(S56:No)、S52以下の処理を繰り返し、ドアリーフDL,DRの位置が目標位置に到達した場合は(S56:Yes)、開処理を終了する。
【0077】
図6(a)に戻る。S43の開処理の後、ドアリーフDL,DRの移動を停止させる(S44)。S44の処理の後、ドアリーフDL,DRの移動が停止されてから所定停止時間(例えば15秒)が経過したかを確認する(S45)。S45の処理において、ドアリーフDL,DRの移動が停止されてから所定停止時間が経過していない場合は(S45:No)、S45の処理を繰り返す。一方でS45の処理において、ドアリーフDL,DRの移動が停止されてから所定停止時間が経過した場合は(S45:Yes)、上記したS2のドア閉処理を実行する。
【0078】
S41の処理において、検出回数メモリ52bの値が3以上の場合は(S41:Yes)、目標位置に、ドアリーフDL,DRの開放位置を設定し(S46)、上記したS43の開処理を実行する。S43の開処理の後、ドアリーフDL,DRの移動を停止させると共に、サーボモータ14のトルクの出力を0とし、ドアリーフDL,DRをフリー状態にする(S47)。これにより、ドアリーフDL,DRはユーザHの手によって開閉可能となる。S47の処理の後、検出回数メモリ52bに0を設定する(S48)。
【0079】
S2,S48の処理の後、反転開処理を終了する。
【0080】
図4(b)に戻る。S14,S17の処理の後、ドア閉処理を終了する。なお、ドア閉処理は、S10~S14の処理とS15~S17の処理とを並列に実行するものに限られず、これらを直列に実行しても良い。例えば、S10~S14の処理を実行した後にS15~S17の処理を実行しても良いし、S15~S17の処理を実行した後にS10~S14の処理を実行しても良い。
【0081】
図4(a)に戻る。S2のドア閉処理の後、
図5で上記したS15の障害物検出処理を実行する。S1の処理において、上位制御装置60からドア閉指令が入力されていない場合は(S1:No)、ドアリーフDL,DRによる障害物の挟み込みが検出されたかを確認する(S3)。S3の処理において、障害物の挟み込みが検出されない場合は(S3:No)、
図6(a)で上記したS17の反転開処理を実行する。
【0082】
S15,S17の処理の後、又は、S3の処理で障害物の挟み込みが検出されない場合は(S3:No)、プラットホームドア1のその他の処理(S4)を実行する。なお、S4のその他の処理として、例えば、ユーザHのプラットホームドア1の接近を図示しない人感センサで検出した場合に、閉鎖しているドアリーフDL,DRを開放させることや、ドアリーフDL,DRを上位制御装置60やユーザHの指示に応じた移動方向または移動量で移動させることが挙げられるが、これら以外の処理が含まれても良い。そのS4の処理の後、S1以下の処理を繰り返す。
【0083】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0084】
上記実施形態では、速度制御におけるドアリーフDR,DLの移動速度を時刻に依らず一定としたが、これに限られない。速度制御におけるドアリーフDR,DLの速度を時刻と共に変化させても良い。この場合のドアリーフDR,DLの移動速度の変化として、例えば、速度制御によるドアリーフDR,DLの開放を開始した直後ではドアリーフDR,DLの移動速度を低速(例えば0.1m/s)とし、時刻の経過と共に徐々にドアリーフDR,DLの移動速度を高めていくことが挙げられる。
【0085】
上記実施形態では、ドアリーフDR,DLが障害物を挟み込んだ後に、所定時間ΔTだけサーボモータ14の制御方式を速度制御にし、その後は位置制御にしてドアリーフDR,DLを中間位置または開放位置まで移動したが、これに限られない。例えば、ドアリーフDR,DLが障害物を挟み込んでからドアリーフDR,DLが中間位置または開放位置までのサーボモータ14の制御方式を速度制御としても良い。
【0086】
上記実施形態では、ドアリーフDR,DLが障害物を挟み込みの検出→速度制御によるドアリーフDR,DLの開放位置方向への移動→位置制御によるドアリーフDR,DLの中間位置への移動→ドアリーフDR,DLの閉鎖位置方向への移動を連続して所定回数(例えば3回)繰り返した場合、ドアリーフDR,DLを開放位置まで移動させたが、これに限られない。例えば、ドアリーフDR,DLが障害物の挟み込みを1度でも検出した場合に、ドアリーフDR,DLを開放位置まで移動させても良い。
【0087】
或いは、ドアリーフDR,DLの開放位置まで移動を省略し、ドアリーフDR,DLが障害物を挟み込みの検出→速度制御によるドアリーフDR,DLの開放位置方向への移動→位置制御によるドアリーフDR,DLの中間位置への移動→ドアリーフDR,DLの閉鎖位置方向への移動を、障害物が除去されるまで繰り返しても良い。
【0088】
上記実施形態では、
図5の障害物検出処理において、障害物の挟み込みを速度偏差とトルク指令値とを併用することにより検出した。しかし、これに限られず、障害物の挟み込みを速度偏差のみによって検出しても良いし、トルク指令値のみによって検出しても良い。また、障害物の挟み込みを速度偏差とトルク指令値とによって検出するものに限られず、例えば、ドアリーフDR,DLが障害物を挟み込んだ際の振動や衝撃の検出により、障害物の挟み込みを検出しても良い。
【0089】
また、速度偏差による障害物の挟み込みを検出する際に、速度偏差の絶対値を偏差閾値Dと比較したが、これに限られない。例えば、速度偏差を2乗したものと、2乗した速度偏差に対応する偏差閾値Dとを比較することで障害物の挟み込みを検出しても良い。
【0090】
或いは、速度偏差の正負のそれぞれ対応する偏差閾値Dを設け、正または負の速度偏差と、対応する正または負の偏差閾値Dとを比較することで障害物の挟み込みを検出しても良い。この際、正または負の偏差閾値Dの絶対値の大きさは同一であるものに限られず、正の偏差閾値Dの絶対値の大きさが負の偏差閾値Dの絶対値の大きさよりも大きくても良いし、小さくても良い。
【0091】
上記実施形態では、制御装置15と上位制御装置60とを別々の装置としたが、これに限られない。制御装置15に上位制御装置60の機能を搭載し、上位制御装置60を省略しても良い。この場合、制御装置15に左ドア閉センサ21L、右ドア閉センサ21R、ドア開センサ22及び障害物センサを制御装置15に接続すれば良い。
【0092】
上記実施形態では、プラットホームドア1を駅のプラットホームにおいてホーム側と軌道側とを区画するものとして設置したが、これに限られない。例えば、プラットホームドア1をビルや病院等の建物の出入口において屋内および屋外を区画する自動ドアとして設置しても良いし、建物内部において建物内部の領域を区画する自動ドアとして設置しても良い。
【0093】
上記実施形態に挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 プラットホームドア
7 乗降口
DR,DL ドアリーフ
14 サーボモータ(電動機)
15 制御装置(制御手段)
S15 検出手段
S17 反転開制御手段,再閉鎖手段,開放停止手段