(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102917
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】巻取速度制御機構、巻取速度制御機構付き遮蔽体巻取装置、開閉部材
(51)【国際特許分類】
E06B 9/80 20060101AFI20240725BHJP
E06B 9/42 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
E06B9/80 E
E06B9/42 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006989
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】592021113
【氏名又は名称】株式会社共栄舎
(72)【発明者】
【氏名】明石 眞佐臣
(72)【発明者】
【氏名】境 悠希
【テーマコード(参考)】
2E042
【Fターム(参考)】
2E042AA06
2E042BA02
2E042CA02
2E042CB05
2E042CB06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】スクリーンの最上位置の手前位置から最上位置までの巻取り速度を減速させる。
【解決手段】巻取筒軸内において、起動コマ、位置調整コマ、ナット、ダンパー接続部材、位置リセット用ばねがねじ溝付き軸部材に取付けられている。
起動コマには、ねじ軸部に螺嵌するねじ孔が設けられている。起動コマの外周面は巻取筒軸の内壁に沿う凹凸形状を有する。起動コマは、ねじ軸部上にあるとき、巻取筒軸の回転に合わせて直線方向に移動する。スクリーンが最上位置の手前位置の高さまで巻き取られると、起動コマが位置調整コマと噛み合ってねじ溝付き軸部材を回転させ、この回転はダンパー接続部を介してロータリーダンパーで減速される。このため、スクリーンはゆっくりと巻き上げられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮蔽体巻取装置に取り付けて、遮蔽体を最上位置の手前位置からゆっくりと巻き取る巻取速度制御機構であり、
巻取筒軸内において、起動コマ、ナット、位置調整コマ、位置リセット用ばね、ダンパー接続部材が、ねじ溝付き軸部材に取付けられて構成されており、
回転に負荷を与えるダンパーは、前記ダンパー接続部材に接続可能であり、
前記ねじ溝付き軸部材は、ねじ軸部と非ねじ軸部とがあり、
前記遮蔽体を引き出す際に、前記起動コマが前記巻取筒軸の回転に伴って前記ねじ軸部上を螺嵌状態で前記位置調整コマから離れる方向に直線移動し、前記非ねじ軸部上に位置すると、空回り状態になり、前記位置リセット用ばねによってこの位置が維持され、
前記遮蔽体を巻き取る際は、前記起動コマが前記巻取筒軸の回転に伴って前記位置調整コマに近づく方向に直線移動し、
該起動コマの直線移動が更に続いて、前記位置調整コマに噛み合うと、該位置調整コマを介して前記ねじ溝付き軸部材を回転させ、この回転は、前記ダンパー接続部材を介した前記ダンパーの作動によって低速回転になるため、前記遮蔽体は最上位置の手前位置からゆっくりと巻き取られる、巻取速度制御機構。
【請求項2】
前記ダンパーは、ロータリーダンパー、ディスクダンパー、渦巻きコイルばね、捻りコイルばね、のいずれかである、請求項1に記載の巻取速度制御機構。
【請求項3】
請求項1に記載の遮蔽体巻取装置に請求項1又は2に記載の巻取速度制御機構を装備した、巻取速度制御機構付き遮蔽体巻取装置。
【請求項4】
請求項3記載の巻取速度制御機構付き遮蔽体巻取装置を備えた開閉部材であり、
該開閉部材は、冷蔵ショーケースのナイトスクリーン、窓用カーテン、電車やバスの窓用日除けスクリーン、室内空間を仕切る仕切り材、巻取式シャッターのいずれかである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、巻取速度制御機構、巻取速度制御機構付き遮蔽体巻取装置、開閉部材に関し、該開閉部材は、冷蔵ショーケース用のナイトスクリーン(ナイトカーテン)、窓用カーテン、電車やバスの窓用日除けスクリーン、室内空間の仕切り等が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
前記遮蔽体は、ロールスクリーン、巻上げ式カーテン、窓用ブラインド、シャッター等が該当する。
【0003】
巻き取り式のスクリーンやカーテンは、この巻き取りがばね付勢で行われていると上昇速度が速く、最上位置に達したときに衝撃が発生することが知られている。この衝撃の発生を抑えるためには、スクリーンやカーテンが最上位置の手前位置に達したときにブレーキ力を与えて、ゆっくりと上昇させることがよいことも知られている。手動式のシャッターについても、手動で勢い良く開けたときも、大きな衝撃が発生する。
【0004】
特許文献1に開示のロールスクリーンは、小さなばねでカムを支点越えさせて開閉の切替が行われる構造を有する。
しかしながら、小さなばねとカムを組み合わせた構造は、ばねやカムの外れ、破損を招き易い。
この種のロールスクリーンは、クラッチケースを移動させてブレーキピンに係合させるとロールカーテンの巻き取りの減速が行われる機構を有するが、このような微細な構造は係合外れが生じ易く、無理に操作するとロールカーテンの故障を招き易い。
【0005】
特許文献2に開示のロールスクリーン装置は、構造が単純で故障しにくくなっているが、高価なねじり棒を使用する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4074419号公報
【特許文献2】特開2019-56223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、巻取速度制御機構、巻取速度制御機構付き遮蔽体巻取装置、開閉部材を提供することを解決課題とする。該開閉部材は、冷蔵ショーケース用のナイトスクリーン(ナイトカーテン)、窓用カーテン、電車やバスの窓用日除けスクリーン、室内空間の仕切り等が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に対応した態様の巻取速度制御機構は、次の構成を備える。
(1)遮蔽体巻取装置に取り付けて、遮蔽体を最上位置の手前位置からゆっくりと巻き取る巻取速度制御機構である。
(2)該巻取速度制御機構は、前記遮蔽体巻取装置に取り付けられると、遮蔽体を最上位置の手前位置からゆっくりと巻き取る。
(3)巻取筒軸内において、起動コマ、ナット、位置調整コマ、位置リセット用ばね、ダンパー接続部材が、ねじ溝付き軸部材に取付けられて構成されており、回転に負荷を与えるダンパーは、前記ダンパー接続部材に接続可能である。
(4)前記ねじ溝付き軸部材は、ねじ軸部と非ねじ軸部とがある。
(5)前記遮蔽体を引き出す際に、前記起動コマが前記巻取筒軸の回転に伴って前記ねじ軸部上を螺嵌状態で前記位置調整コマから離れる方向に直線移動し、前記非ねじ軸部上に位置すると、空回り状態になり、前記位置リセット用ばねによってこの位置が維持される。
(6)遮蔽体を巻き取る際は、前記起動コマが前記巻取筒軸の回転に伴って前記位置調整コマに近づく方向に直線移動する。
(7)該起動コマの直線移動が更に続いて、前記位置調整コマに噛み合うと、該位置調整コマを介して前記ねじ溝付き軸部材を回転させ、この回転は、該ダンパー接続部材を介した前記ダンパーの作動によって低速回転になるため、前記遮蔽体は最上位置の手前位置からゆっくりと巻き取られるように構成されている。
【0009】
請求項2に対応した態様の巻取速度制御機構は、更に次の構成が加わる。
(1)前記ダンパーは、ロータリーダンパー、ディスクダンパー、渦巻きコイルばね、捻りコイルばね、のいずれかである。
【0010】
請求項3に対応した態様の巻取速度制御機構付き遮蔽体巻取装置は、請求項1に記載の遮蔽体巻取装置に請求項1又は2に記載の巻取速度制御機構を装備されている。
【0011】
請求項3に対応した態様の開閉部材は、次の構成を備える。
(1)請求項3記載の巻取速度制御機構付き遮蔽体巻取装置を備えている。
(2)該開閉部材は、冷蔵ショーケースのナイトスクリーン、窓用カーテン、電車やバスの窓用日除けスクリーン、室内空間を仕切る仕切り材、巻取式シャッターのいずれかであり、スクリーン、ロールスクリーン、カーテン、ブラインド、シャッター板等が遮蔽体になる。
【発明の効果】
【0012】
本願発明に係る巻取速度制御機構は、遮蔽体であるスクリーン、カーテン、ブラインド、シャッター等を巻き取る最上位置の手前位置から最上位置までの区間において、巻き取り速度が減速されて、巻き終わりの衝撃を抑えることができる、
本願発明に係る巻取速度制御機構は、頑強で単純な構造であるため、故障が生じ難く、永年経過の使用に耐える。巻取速度制御機構を備えた遮蔽体巻取装置、開閉部材についても、同様のことがいえる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願発明に係る巻取速度制御機構、巻取速度制御機構付き遮蔽体巻取装置、開閉部材の詳細を図面に沿って説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は、本願発明実施形態である冷蔵ショーケースの側面断面図、(b)は正面断面図であり、ロールスクリーンが最下位置まで引き下げられた状態で示されている。
【
図2】(a)は、本願発明実施形態である冷蔵ショーケースの側面断面図、(b)は正面断面図であり、ロールスクリーンが上昇状態にあるときを示している。
【
図3】(a)は巻取筒軸の断面を含む正面図、(b)は同じく側面断面図、(c)は巻取速度制御機構付き遮蔽体巻取装置の正面断面図。
【
図4】(a)は巻取速度制御機構の正面図、(b)は位置調整コマの斜視図、(c)は固定軸端部の支持構造を示す側面断面図、(d)は起動コマの斜視図、(e)は起動コマ支持構造を示す側面断面図。
【
図5】(a)は巻取速度制御機構の分解斜視図、(b)は巻取筒軸の一部斜視図。
【
図6】(a)は、巻取速度制御機構付き遮蔽体巻取り装置において、遮蔽体であるスクリーンが最上位置にある状態を示している。(b)はスクリーンを最上位置から引き下げ始めたときの状態を示している。
【
図7】(c)はスクリーンの引下げ続行の状態を示している。(d)はスクリーンを80cm引き下げたときの状態を示している。
【
図8】(e)はスクリーンが全閉位置にある状態を示している。
【
図9】(f)はスクリーンの巻き取りが始まったときの状態を示している。
【
図10】(g)はスクリーンの上昇速度が抑えられ始めたときの状態を示している。
【実施例0015】
〔巻取速度制御機構1〕
-概要-
図1、
図2において本願発明実施形態に係る巻取速度制御機構1を備えた 巻取速度制御機構付き遮蔽体巻取装置20を示す。
巻取速度制御機構付き遮蔽体巻取装置20は、スクリーン巻取装置10に巻取速度制御機構1が組み付けられて構成されている。これらの図において、遮蔽体はスクリーンに相当する。
スクリーン巻取装置10は遮蔽体の一形態であるナイトスリーン12用のものである。ナイトスリーン12は巻付状態から下方に引出し自在に取り付けられている。ナイトスリーン12はロールスクリーンと同じものである。
ナイトスクリーン12は、生鮮食料品を販売するスーパーマーケットや量販店において、営業終了後(夜間等)に冷蔵ショーケース50の前面を覆って、冷蔵ショーケース50内の冷気を外に逃がさないために用いられる。
冷気が外に逃げ難くなると、生鮮商品の鮮度が保たれ、電気代の節約になる。
【0016】
図1(a)(b)に示すように、ナイトスクリーン12は、手動操作で100cmまで引き下げられると最下位置に達する。最下位置は、フック掛けなどにより維持される。100cmの寸法は好適とされる例示である。
巻取速度制御機構1は、冷蔵ショーケース50の上下高さに合わせて、100cmを越える位置が最下位置になる調整なども行える。これらの調整の詳細は段落「0025」の欄において説明する。
【0017】
図1(a)(b)に示すように、上述したフック掛けを外すと、ナイトスクリーン12は、ばね付勢力で上昇する。この上昇速度は速く、瞬時に最上位置に達する。ナイトスクリーン12が最上位置に達するとき、ナイトスクリーン12の下端部が跳ね上がって大きな衝撃が発生し易い状態になる。
また衝撃によりナイトスクリーン12端部の部材が破損した破片や上部にある埃などが冷蔵ショーケース50内部に落ちる可能性がある。
【0018】
図2(a)(b)で示すように巻取速度制御機構1は、巻取速度制御機構付き遮蔽体巻取装置20内に装備されて、ナイトスクリーン12が最上位置の手前位置まで巻き取られたときに、ダンパーが動作してナイトスクリーン12の上昇速度(巻取速度)を減速させる。
上昇速度(巻取速度)が減速し始める位置は、例えば最上位置から20cm低い位置である。ナイトスクリーン12は、この20cmの位置から最上位置まで低速で巻き取られる。
【0019】
ナイトスクリーン12の上昇速度(巻取速度)が減速し始める位置は、段落「0016」、及び段落「0025」に記載のように調整可能である。
【0020】
-巻取速度制御機構1とスクリーン巻取装置10との関係―
図3(c)に示すように、巻取速度制御機構1は、巻取速度制御機構付き遮蔽体巻取装置20が備える巻取筒軸11の筒内に配設されている。
【0021】
-巻取速度制御機構1を構成する各部材と、各部材の組付構造-
図3(c)、
図4(a)、
図5に示す巻取速度制御機構1は、巻取筒軸11内において、起動コマ9、位置調整コマ6、ナット5、ダンパー接続部材4、位置リセット用ばね8等がねじ溝付き軸部材2に取り付けられて構成されている。ロータリーダンパー16は、ダンパー接続部材4を介してねじ溝付き軸部材2に取り付けられている。
【0022】
ねじ溝付き軸部材2は、ねじ軸部2aと、非ねじ軸部2bとを有する。
【0023】
スクリーンを手動で引き下げると、巻取筒軸11が回転し、回転付勢ばね13が絞られ、スクリーンを巻き取る方向の付勢力が発生する。
【0024】
起動コマ9には、ねじ軸部2aに螺嵌するねじ孔9aが設けられている。
また、起動コマ9の外周面は巻取筒軸11内壁に沿う凹凸形状を有する。
このため起動コマ9がねじ軸部2a上にあるときには、巻取筒軸11の回転に合わせて、直線方向に移動する。
【0025】
位置調整コマ6は、ナット5と合わせて、ねじ軸部2aの端部近傍箇所に締結されている。位置調整コマ6とナット5はいわゆるダブルナット状態になってねじ軸部2a上に位置決めされて装着されている。
位置調整コマ6とナット5の締結をいったん緩めて、装着位置をずらすと、スクリーンの長さに対応させた減速し始める位置の調整が行える。
【0026】
位置調整コマ6と起動コマ9の対向面には爪6b,9bが設けられており、起動コマ9が横移動して双方の爪6b,9bが噛み合うと、ねじ溝付き軸部材2が回転し、ダンパー接続部材4を介してロータリーダンパー16を動作させる。
ロータリーダンパー16は、ねじ溝付き軸部材2や巻取筒軸11の回転に抵抗を与えるために用いられている。ロータリーダンパー16は、図示するダンパー軸16aを突出させた構造のものに限られず、例えば、中心部に穴の空いたディスクダンパーなども含まれる。いずれのロータリーダンパー16も市販品が用いられている。
【0027】
〔スクリーン12の巻取り位置と各部材の位置及び動作〕
-スクリーン12が最上位置(最上状態)にあるとき-
図6(a)に示すように、スクリーン12が最上位置(最上状態)にあるとき起動コマ9は位置調整コマ6に噛み合った状態で回転が停止している。
【0028】
-スクリーン12が最上位置から引き下げられ始めたとき-
図6(b)に示すように手動でスクリーン12を引き下げ始めると、巻取筒軸11が回転し、起動コマ9は位置調整コマ6から遠ざかる方向に移動する。
【0029】
-スクリーン12の引き下げが続行中のとき-
図7(c)はスクリーン12を更に引き下げたときの状態を示している。
【0030】
-スクリーン12を80cm引き下げたとき-
図7(d)に示すように、スクリーン12を80cm引き下げると、起動コマ9がねじ溝付き軸部材2の非ねじ軸部2bの位置に移動する。
このとき、起動コマ9はねじ溝付き軸部材2にねじ螺嵌していないため、空回りの状態にある。このため、スクリーン12を80cmより更に引き下げても空回り状態を続け、位置リセット用ばね7でねじ軸部2aに向かって若干押されているため起動コマ9の位置は変わらない
【0031】
-スクリーン12を最上位置から最下位置まで引き下げたとき-
図8に示すように、スクリーン12を最下位置まで巻き下げたときも、起動コマ9の位置は変わらない。
【0032】
-スクリーン12の巻き上げが始まったとき-
図9に示すように、スクリーン12の巻き上げが始まったとき、起動コマ9は位置リセット用ばね7でねじ軸部に向かって若干押された状態にあるため、ねじ軸部2a上に螺嵌し、位置調整コマに近づく方向に移動する。
【0033】
図10に示すように、スクリーン12が最上位置の手前位置に達したとき、起動コマ9が位置調整コマ6に係合して、ねじ溝付き軸部材2を回転させ、この回転はダンパー接続部4を介しロータリーダンパー16に伝わり、回転を減速させる。
【0034】
上述したように、起動コマ9が非ねじ軸部2b上にあるときは空回りする状態にあり、この空回り状態の回転数と、ダンパーによって減速され始めてから、最上位置に達するまでの回転数が同一となる。
【0035】
図示していないが、上述した巻取速度制御機構は、窓用カーテン、電車やバスの窓、室内空間の仕切り等に組み付けることもできる。
また、上述した巻取速度制御機構は、建物の出入口に取り付けられている手動開閉式のシャッターに組み付けることもできる。シャッターに巻取速度制御機構が組み付けていると、シャッターを開け終えたときに発生していた騒音が大幅に抑えられ、シャッターの耐久性も大幅に向上する。