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特開2024-102942二次電池の充電制御装置、蓄電デバイス、二次電池の満充電検出方法およびプログラム
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  • 特開-二次電池の充電制御装置、蓄電デバイス、二次電池の満充電検出方法およびプログラム 図1
  • 特開-二次電池の充電制御装置、蓄電デバイス、二次電池の満充電検出方法およびプログラム 図2
  • 特開-二次電池の充電制御装置、蓄電デバイス、二次電池の満充電検出方法およびプログラム 図3
  • 特開-二次電池の充電制御装置、蓄電デバイス、二次電池の満充電検出方法およびプログラム 図4
  • 特開-二次電池の充電制御装置、蓄電デバイス、二次電池の満充電検出方法およびプログラム 図5
  • 特開-二次電池の充電制御装置、蓄電デバイス、二次電池の満充電検出方法およびプログラム 図6
  • 特開-二次電池の充電制御装置、蓄電デバイス、二次電池の満充電検出方法およびプログラム 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102942
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】二次電池の充電制御装置、蓄電デバイス、二次電池の満充電検出方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20240725BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20240725BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H02J7/04 L
H02J7/04 A
H02J7/35 B
H01M10/48 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007033
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 一裕
(72)【発明者】
【氏名】花川 健二
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB11
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】不安定な充電電流が供給される場合でも、満充電状態を適切に検出することができる二次電池の充電制御装置、蓄電デバイス、二次電池の満充電検出方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】二次電池の充電制御装置は、二次電池の状態を示す物理量として、電池温度、充電電流および電池電圧をそれぞれ取得する取得部と、二次電池の状態に応じて変動する二次電池の最大電池電圧を、電池温度および充電電流に基づき取得し、電池電圧と最大電池電圧とに基づき、二次電池の満充電状態を検出する制御部とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の状態を示す物理量として、電池温度、充電電流および電池電圧をそれぞれ取得する取得部と、
前記二次電池の状態に応じて変動する前記二次電池の最大電池電圧を、前記電池温度および前記充電電流に基づき取得し、前記電池電圧と前記最大電池電圧とに基づき、前記二次電池の満充電状態を検出する制御部と
を備える二次電池の充電制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記電池電圧と前記最大電池電圧とを比較し、前記電池電圧が前記最大電池電圧に到達した場合に、前記二次電池が満充電状態であると判断する
請求項1に記載の二次電池の充電制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記電池温度、前記充電電流および前記最大電池電圧をパラメータとする関係式を参照して、前記電池温度および前記充電電流に基づき前記最大電池電圧を算出する
請求項1に記載の二次電池の充電制御装置。
【請求項4】
前記関係式を記憶する記憶部
をさらに備える
請求項3に記載の二次電池の充電制御装置。
【請求項5】
ニッケル水素二次電池である二次電池と、
請求項1に記載の二次電池の充電制御装置と
を備える蓄電デバイス。
【請求項6】
太陽光パネルに接続され、前記充電電流を、前記太陽光パネルを用いて得る
請求項5に記載の蓄電デバイス。
【請求項7】
二次電池の状態を示す物理量として、電池温度、充電電流および電池電圧をそれぞれ取得し、
前記二次電池の状態に応じて変動する前記二次電池の最大電池電圧を、前記電池温度および前記充電電流に基づき取得し、
前記電池電圧と前記最大電池電圧とに基づき、前記二次電池の満充電状態を検出する
二次電池の満充電検出方法。
【請求項8】
請求項7に記載の満充電検出方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池の充電制御装置、蓄電デバイス、二次電池の満充電検出方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の機器等を動作させるための電源として、ニッケル水素二次電池またはリチウムイオン二次電池等の充放電可能な二次電池が普及している。二次電池は、充電および放電を繰り返し行うことができるが、充電の際に過充電状態となると、高温および高圧の不安定な状態となって劣化する可能性がある。そのため、二次電池では、通常、完全に充電されたことを示す満充電状態を検出する満充電検出処理が行われている。
【0003】
また、二次電池に対する充電方式として、例えば、二次電池がニッケル水素二次電池の場合、一定の充電電流で充電する定電流充電方式が用いられている。定電流充電方式による充電の場合、二次電池の満充電状態は、一般に、以下の方法によって検出できることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
第1の検出方法は、二次電池の内部抵抗の変化に起因した電池温度の上昇量、または単位時間あたりの電池温度上昇率により、二次電池の充電状態を検出するものである。第1の検出方法では、電池温度の上昇量または上昇率が所定の値に到達した時点で、二次電池が満充電状態であると判断することができる。
【0005】
第2の検出方法は、電池電圧が最大電圧に到達した後の電圧低下量により、二次電池の充電状態を検出するものである。第2の検出方法では、電池電圧の低下量が所定の値に到達した時点で、二次電池が満充電状態であると判断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-253468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、太陽光発電または風力発電等の再生可能エネルギーを用いた発電方式によって発電された電力を蓄電する技術が実用化されている。しかしながら、このような発電方式は、発電量が天候等の環境条件に左右されるので、二次電池を充電する場合に、充電電流が不安定となる。そのため、上述した電池温度または電池電圧に基づく満充電検出が困難であるという問題があった。
【0008】
本開示は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、不安定な充電電流が供給される場合でも、満充電状態を適切に検出することができる二次電池の充電制御装置、蓄電デバイス、二次電池の満充電検出方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る二次電池の充電制御装置は、
二次電池の状態を示す物理量として、電池温度、充電電流および電池電圧をそれぞれ取得する取得部と、
前記二次電池の状態に応じて変動する前記二次電池の最大電池電圧を、前記電池温度および前記充電電流に基づき取得し、前記電池電圧と前記最大電池電圧とに基づき、前記二次電池の満充電状態を検出する制御部と
を備える。
【0010】
また、本開示に係る蓄電デバイスは、
ニッケル水素二次電池である二次電池と、
上記の二次電池の充電制御装置と
を備える。
【0011】
さらに、本開示に係る二次電池の満充電検出方法は、
二次電池の状態を示す物理量として、電池温度、充電電流および電池電圧をそれぞれ取得し、
前記二次電池の状態に応じて変動する前記二次電池の最大電池電圧を、前記電池温度および前記充電電流に基づき取得し、
前記電池電圧と前記最大電池電圧とに基づき、前記二次電池の満充電状態を検出する。
【0012】
さらにまた、本開示に係るプログラムは、上記の二次電池の満充電検出方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、不安定な充電電流が供給される場合でも、満充電状態を適切に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態に係る蓄電システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2図1のBBUの構成の一例を示す回路図である。
図3図2の制御部の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図4】定電流充電方式による充電の際の二次電池の状態の一例を示すグラフである。
図5】不安定な充電電流で充電した場合の二次電池の状態の一例を示すグラフである。
図6】二次電池の電池温度、最大電池電圧および充電電流の関係について説明するためのグラフである。
図7】本実施の形態に係る蓄電システムによる満充電検出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して説明する。本開示は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一のまたはこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。
【0016】
[蓄電システム100の構成]
図1は、本実施の形態に係る蓄電システム100の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、蓄電システム100は、蓄電デバイスであるBBU(Battery Backup Unit)1と、外部電源である発電装置2と、電力供給対象である負荷3とを含んで構成されている。
【0017】
発電装置2は、電力を発電し、発電した電力をBBU1に供給する。本実施の形態において、発電装置2は、例えば、太陽光発電に用いられる太陽電池パネル、あるいは、風力発電に用いられる風車等であり、再生可能エネルギーを利用して発電する。
【0018】
BBU1は、充電の際に外部から供給された電力を蓄えるとともに、放電の際に蓄えられた電力を外部に出力する。本実施の形態において、BBU1は、外部電源である発電装置2から供給された電力を蓄電するとともに、負荷3に対して蓄電した電力を供給する。
【0019】
また、BBU1は、停電等により外部からの電力が遮断された場合に、蓄えた電力をBBU1の電源として用いる機能も有している。なお、この機能は、本実施の形態との関連性が低いため、ここでは説明を省略する。
【0020】
(BBU1)
図2は、図1のBBU1の構成の一例を示す回路図である。図2に示すように、BBU1は、充電制御ユニット10、二次電池ユニット20、充電端子101、放電端子102および接地端子103を備えている。充電端子101、放電端子102および接地端子103は、それぞれ、外部の装置と接続するために設けられている。充電端子101は、二次電池ユニット20内の二次電池21を充電する際に、発電装置2と接続される。放電端子102は、二次電池21に蓄電された電力を放電する際に、負荷3と接続される。接地端子103は、充電および放電の際に共通に用いられる端子であり、充電の際に発電装置2と接続され、放電の際に負荷3と接続される。
【0021】
二次電池ユニット20は、二次電池21を有している。二次電池21は、1または複数の二次電池セルで構成されている。二次電池21が複数の二次電池セルで構成される場合、二次電池21は、例えば、二次電池セルが直列に接続されて構成される。二次電池21は、例えば、ニッケル水素二次電池である。なお、二次電池21の種類は、この例に限られず、リチウムイオン二次電池等のニッケル水素二次電池以外の二次電池であってもよい。
【0022】
二次電池21は、充電の際に、充電端子101および接地端子103に接続される。また、二次電池21は、放電の際に、放電端子102および接地端子103に接続される。これにより、BBU1には、充電端子101と接地端子103とを接続する充電経路と、放電端子102と接地端子103とを接続する放電経路とが形成されている。
【0023】
なお、この例では、1つの二次電池21が設けられているが、これに限られず、2つ以上の複数の二次電池21が設けられてもよい。二次電池21が複数設けられる場合、複数の二次電池21は、例えば並列に接続される。
【0024】
充電制御ユニット10は、制御部11、充電スイッチ12および取得部としての検出部13を有している。
【0025】
充電スイッチ12は、二次電池21に対応して設けられている。二次電池21が複数設けられる場合、充電スイッチ12は、複数の二次電池21のそれぞれに対応して複数設けられる。充電スイッチ12は、充電経路における充電端子101と二次電池21との間に配置されている。
【0026】
充電スイッチ12は、制御部11による制御に基づき、充電経路の接続および遮断を切り替える。これにより、二次電池21に対する充電および充電の停止が切り替えられる。
【0027】
検出部13は、例えば、各種のセンサで構成されるセンサ群であり、二次電池21に関する物理量を検出し、検出した物理量を制御部11に供給する。本実施の形態において、検出部13は、二次電池21を充電する充電処理の際に、二次電池21の電池温度、充電電流および電池電圧を物理量として検出する。
【0028】
制御部11は、このBBU1全体を制御する。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等を備えている(いずれも図示せず)。CPUは、ROMから処理内容に応じたプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムと協働してBBU1の動作を集中制御する。
【0029】
本実施の形態において、制御部11は、充電端子101および接地端子103に発電装置2が接続された場合に、充電経路が接続されるように充電スイッチ12を制御し、二次電池21に対する充電処理を開始する。また、本実施の形態において、制御部11は、充電処理中に、検出部13で検出された物理量に基づき、二次電池21の満充電状態を検出する満充電検出処理を行う。そして、制御部11は、二次電池21が満充電状態となった場合に、充電スイッチ12を制御し、二次電池21に対する充電処理を終了する。満充電検出処理の詳細については、後述する。
【0030】
なお、放電経路と接続される外部の電流経路上には、放電経路の接続および遮断を切り替える放電スイッチ(図示せず)も設けられている。放電スイッチは、この例に限られず、例えばBBU1の放電経路上に設けられ、制御部11によって放電経路の接続および遮断が制御されてもよい。
【0031】
(制御部11の構成)
図3は、図2の制御部11の構成の一例を示す機能ブロック図である。図3には、制御部11が備える機能のうち、満充電検出処理に関連する機能についての処理部のみが示されている。図3に示すように、制御部11は、物理量取得部111、最大電池電圧取得部112、満充電判断部113、スイッチ制御部114および記憶部115を有している。
【0032】
物理量取得部111は、検出部13で検出された、電池温度、充電電流および電池電圧を二次電池21に関する物理量として取得する。取得された電池温度および充電電流は、最大電池電圧取得部112に供給される。また、取得された電池電圧は、満充電判断部113に供給される。
【0033】
最大電池電圧取得部112は、物理量取得部111から供給された充電電流および電池温度に基づき、記憶部115に記憶された関係式を参照して、二次電池21の最大電池電圧を取得する。取得された最大電池電圧は、満充電判断部113に供給される。
【0034】
関係式は、電池温度、充電電流および最大電池電圧をパラメータとして、電池温度および充電電流から最大電池電圧を取得するための関係式である。最大電池電圧の具体的な取得方法については、後述する。
【0035】
満充電判断部113は、物理量取得部111から供給された電池電圧と、最大電池電圧取得部112から供給された最大電池電圧とに基づき、二次電池21が満充電状態であるか否かを判断する。具体的には、満充電判断部113は、電池電圧と最大電池電圧とを比較し、二次電池21が満充電状態であるか否かを判断する。このとき、満充電判断部113は、電池電圧が最大電池電圧に到達した場合に、二次電池21が満充電状態であると判断する。そして、満充電判断部113は、判断結果を示す情報をスイッチ制御部114に供給する。
【0036】
スイッチ制御部114は、満充電判断部113による判断結果に基づき、充電スイッチ12を制御する。満充電判断部113によって二次電池21が満充電状態であると判断された場合、スイッチ制御部114は、充電スイッチ12に対して充電経路を遮断するための制御信号を出力する。
【0037】
記憶部115は、制御部11で用いられる各種の情報を記憶する。本実施の形態において、記憶部115は、最大電池電圧取得部112で二次電池21の最大電池電圧を取得する際に用いられる関係式を記憶する。
【0038】
[二次電池21に対する満充電検出について]
次に、二次電池21に対する満充電の検出方法について説明する。背景技術の項でも説明したが、二次電池21は、充電の際に過充電状態となると、高温および高圧の不安定な状態となり、劣化する可能性がある。そのため、二次電池21では、通常、満充電状態を検出する満充電検出処理が行われている。
【0039】
例えば、二次電池21がニッケル水素二次電池である場合に、二次電池21を充電するときには、通常、二次電池21に対して一定の充電電流を供給する定電流充電方式が用いられる。定電流充電方式を用いた充電が行われる場合、二次電池21が満充電状態であるか否かは、電池温度または電池電圧の変化に基づき判断することができる。
【0040】
図4は、定電流充電方式による充電の際の二次電池21の状態の一例を示すグラフである。図4に示す例では、ニッケル水素二次電池である二次電池21に対して定電流充電方式による充電を行った場合の二次電池21の状態が示されている。図4において、横軸は時間を示し、縦軸は二次電池21の電池電圧、充電電流、電池温度およびSOC(State Of Charge)を示す。SOCは、二次電池21の充電率を示し、100[%]が満充電状態であり、0[%]が完放電状態であることを示す。
【0041】
図4に示すように、定電流充電方式によって二次電池21を充電する場合には、充電時間が経過するに従って二次電池21の内部抵抗が変化し、電池温度が上昇する。特に、SOCが100[%]に近い状態では、図4において符号Aが付された破線の楕円内に示されるように、電池温度が急激に上昇する。したがって、二次電池21の満充電状態は、電池温度の上昇量(ΔT)、または単位時間あたりの電池温度の上昇率(ΔT/dt)によって検出することができる。
【0042】
また、この場合には、充電時間が経過するに従って電池電圧が上昇する。そして、電池電圧が最大電圧に到達後に、図4において符号Bが付された破線の楕円内に示されるように、電池電圧が低下する。したがって、二次電池21の満充電状態は、最大電池電圧からの電池電圧の低下量(-ΔV)によって検出することもできる。
【0043】
一方、本実施の形態のように、二次電池21に対する充電電流の供給源が再生可能エネルギーを利用して発電する発電装置2である場合には、不安定な電流がBBU1に供給されることになるため、一定の充電電流を二次電池21に供給することは困難である。
【0044】
図5は、不安定な充電電流で充電した場合の二次電池21の状態の一例を示すグラフである。図5に示す例では、ニッケル水素二次電池である二次電池21に対して、太陽光パネル等を用いた際に供給される不安定な充電電流を用いて定電流充電方式と同様の充電を行った場合の二次電池21の状態が示されている。図5において、横軸は時間を示し、縦軸は二次電池21の電池電圧、充電電流、電池温度およびSOCを示す。
【0045】
図5に示すように、不安定な充電電流で二次電池21を充電する場合には、充電電流が安定しないことにより、SOCが100[%]に近い状態となっても、充電電流が集中しないと、図5において符号Xが付された破線の楕円内に示されるように、電池温度が上昇しない。そのため、電池温度の上昇量または上昇率による二次電池21の満充電検出が困難である。
【0046】
また、充電電流が安定しないことにより、図5において符号Yが付された破線の楕円内に示されるように、充電電圧が大きく変動する。そのため、最大電池電圧からの電池電圧の低下量による二次電池21の満充電検出の際には、誤検出する可能性があり、正確な満充電検出が困難である。
【0047】
このように、充電電流が不安定である場合には、二次電池21に対して定電流充電方式と同様に充電したとしても、従来の定電流充電方式での充電の際に行われる方法で二次電池21の満充電を検出することができない。
【0048】
一方、本発明者らは、二次電池21の電池温度、最大電池電圧および充電電流の間には、互いに相関があることを見出した。
【0049】
図6は、二次電池21の電池温度、最大電池電圧および充電電流の関係について説明するためのグラフである。図6において、横軸は二次電池21の電池温度を示し、縦軸は二次電池21の最大電池電圧を示す。また、この例は、充電電圧(充電レート)毎の電池温度と最大電池電圧との関係を示す。なお、ここでは、充電電流として充電レートを用いているが、充電レートは、電池容量に対する充電電流の比であり、充電電流と比例の関係があるため、充電電流に代えて充電レートを用いて説明する。
【0050】
図6に示すように、二次電池21の最大電池電圧は、充電レート(充電電流)によって異なり、充電レートが大きくなるに従って、最大電池電圧は上昇する。また、最大電池電圧は、電池温度が上昇するに従って低下し、充電レート毎の電池温度と最大電池電圧との間には、比例関係があることがわかる。このことから、充電レート毎の電池温度と最大電池電圧との関係は、一次式で近似できることがわかった。
【0051】
そこで、本実施の形態では、電池温度、最大電池電圧および充電電流をパラメータ化した近似式である関係式を予め記憶し、この関係式に基づいて二次電池21の最大電池電圧を取得する。そして、取得した最大電池電圧と、そのときの電池電圧とを比較することにより、二次電池21が満充電状態であるか否かを判断する満充電検出処理を行う。
【0052】
[満充電検出処理]
図7は、本実施の形態に係る蓄電システム100による満充電検出処理の流れの一例を示すフローチャートである。満充電検出処理は、BBU1に設けられた二次電池21を充電する際に行われるものであり、充電端子101および接地端子103に発電装置2が接続されて充電処理が開始された際に行われる。
【0053】
まず、ステップS1において、制御部11の物理量取得部111は、検出部13で検出された、物理量としての二次電池21の充電電流、電池温度および電池電圧を取得する。物理量取得部111は、充電電流および電池温度を最大電池電圧取得部112に供給するとともに、電池電圧を満充電判断部113に供給する。
【0054】
ステップS2において、最大電池電圧取得部112は、二次電池21の充電電流および電池温度に基づき、記憶部115に記憶された関係式を参照して、二次電池21の最大電池電圧を取得する。最大電池電圧取得部112は、取得した最大電池電圧を満充電判断部113に供給する。
【0055】
ステップS3において、満充電判断部113は、最大電池電圧取得部112から受け取った最大電池電圧と、物理量取得部111から受け取った電池電圧とを比較する。比較の結果、電池電圧が最大電池電圧に到達した場合(ステップS3:YES)、満充電判断部113は、二次電池21が満充電状態であると判断し、二次電池21が満充電状態であることを示す情報をスイッチ制御部114に供給する。
【0056】
ステップS4において、スイッチ制御部114は、満充電判断部113から受け取った情報に基づき、充電スイッチ12を制御する。このとき受け取った情報は、二次電池21が満充電状態であることを示すため、スイッチ制御部114は、ステップS4において、充電スイッチ12をオフとして充電経路を遮断するための制御信号を出力する。これにより、充電スイッチ12がオフとされて充電経路が遮断され、充電処理が終了する。
【0057】
一方、ステップS3において、電池電圧が最大電池電圧に到達していない場合(ステップS3:NO)、満充電判断部113は、二次電池21が満充電状態でないと判断する。そして、処理がステップS1に戻り、ステップS3で二次電池が満充電状態であると判断されるまで、ステップS1~ステップS3の処理が繰り返される。
【0058】
以上のように、本実施の形態に係る蓄電システム100において、充電制御装置である充電制御ユニット10は、二次電池21の状態に応じて変動する二次電池21の最大電池電圧を、電池温度および充電電流に基づき取得する。そして、充電制御ユニット10は、電池電圧と最大電池電圧とに基づき、二次電池の満充電状態を検出する。これにより、検出した時点における二次電池21の最大電池電圧が取得されるため、不安定な充電電流が供給される場合でも、満充電状態を適切に検出することができる。
【0059】
以上、本実施の形態について説明したが、本開示は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。本実施の形態による満充電検出処理は、二次電池21に対する充電電流が不安定な場合に適用するように説明したが、これはこの例に限られない。例えば、定電流充電方式のように、二次電池21に対して一定の充電電流が供給される場合にも、上述した満充電検出処理を適用することができる。
【0060】
また、本実施の形態において、最大電池電圧は、電池温度、最大電池電圧および充電電流の関係を示す関係式を用いて取得するが、これはこの例に限られない。例えば、最大電池電圧は、電池温度、最大電池電圧および充電電流の関係を互いに関連付けたテーブルを用いて最大電池電圧を取得してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 BBU
2 発電装置
10 充電制御ユニット
11 制御部
12 充電スイッチ
13 検出部
20 二次電池ユニット
21 二次電池
100 蓄電システム
111 物理量取得部
112 最大電池電圧取得部
113 満充電判断部
114 スイッチ制御部
115 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7