(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102944
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】正極用NCM系活物質、正極および電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20240725BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240725BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007038
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田伏 章浩
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 裕貴
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA06
5H050AA15
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050FA05
5H050FA17
5H050HA05
5H050HA13
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】高い熱安定性と共に向上した低温低SOC出力特性を発揮することができる正極用NCM系活物質を提供すること。
【解決手段】X線回折パターン解析結果から得られる結晶構造におけるc軸の長さに対するa軸の長さの比c/aが4.9625以下である正極用NCM系活物質。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線回折パターン解析結果から得られる結晶構造におけるc軸の長さに対するa軸の長さの比c/aが4.9631以下である、正極用NCM系活物質。
【請求項2】
前記比c/aが4.9622以上である、請求項1に記載の正極用NCM系活物質。
【請求項3】
二次粒子の平均粒子径D50が14μm以上18μm以下である凝集粒子を含む、請求項1に記載の正極用NCM系活物質。
【請求項4】
温度120~600℃及び昇温速度5℃/minでの熱質量分析における重量減少量が12質量%以下である、請求項1に記載の正極用NCM系活物質。
【請求項5】
温度120~600℃及び昇温速度5℃/minでの熱質量分析における毎分あたりの重量減少率が0.40質量%/min以下である、請求項1に記載の正極用NCM系活物質。
【請求項6】
請求項1に記載の正極用NCM系活物質を含む正極。
【請求項7】
請求項6に記載の正極を含む電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極用NCM系活物質(以下、活物質ともいう)、正極及び電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-162790号公報(特許文献1)には、リチウム金属複合酸化物の3bサイトのニッケル原子を添加元素で置換し、酸素原子と遷移金属原子の結合距離を短くした非水系電解質二次電池用正極活物質が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウムニッケル複合酸化物を含む正極は、充放電の際に発熱及び酸素放出が起こり易く、熱安定性が低い傾向にある。熱安定性を向上させることを目的としてニッケル元素を添加元素で置換した場合、添加元素を含む活物質は、添加元素を含まない活物質に比べ低温低SOC出力特性が低くなる傾向にある。
【0005】
本発明の目的は、高い熱安定性と共に向上した低温低SOC出力特性を発揮することができる正極用NCM(ニッケル・コバルト・マンガン)系活物質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の活物質、正極及び電池を提供する。
[1] X線回折パターン解析結果から得られる結晶構造におけるc軸の長さに対するa軸の長さの比c/aが4.9631以下である、正極用NCM系活物質。
[2] 前記比c/aが4.9622以上である、[1]に記載の正極用NCM系活物質。
[3] 二次粒子の直径(D50)が14μm以上18μm以下である凝集粒子を含む、[1]又は[2]に記載の正極用NCM系活物質。
[4] 温度120~600℃及び昇温速度5℃/minでの熱質量分析における重量減少量が12質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の正極用NCM系活物質。
[5] 温度120~600℃及び昇温速度5℃/minでの熱質量分析における毎分あたりの重量減少率が0.40質量%/min以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の正極用NCM系活物質。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の正極用NCM系活物質を含む正極。
[7] [6]に記載の正極を含む電池。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高い熱安定性と共に向上した低温低SOC出力特性を発揮することができる正極用NCM系活物質を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は本実施形態におけるリチウムイオン電池の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は本実施形態における電極体の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は本実施形態における正極を示す概念図である。
【
図4】
図4は本実施形態における正極の製造方法の概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の全ての図面においては、各構成要素を理解し易くするために縮尺を適宜調整して示しており、図面に示される各構成要素の縮尺と実際の構成要素の縮尺とは必ずしも一致しない。
【0010】
<正極用NCM系活物質>
活物質は、ニッケル、コバルト及びマンガン含有化合物を1種以上含む。活物質中のリチウムを除く金属元素に対するニッケル含有比率はそれぞれ例えば50mol%以上及び60mol%以上であってよく、それぞれ好ましくは60mol%以上及び70mol%以上である。ニッケル、コバルト及びマンガン含有化合物は、好ましくはニッケルコバルトマンガン複合水酸化物、より好ましくはリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を含む。ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物は、例えば共沈法等により得られるものであってよい。ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物は、例えば一般式:NixCoyMnz(OH)2(式中、x+y+z=1)で表される化合物であってよい。リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物は、リチウムとニッケル、コバルト及びマンガンとのモル比Li:(Ni+Co+Mn)が例えば1.0~1.2:1.0であることができる。活物質は、リチウムイオン電池用であることができる。リチウムイオン電池の詳細は後述される。
【0011】
活物質は、例えば第1層状金属酸化物を含んでいてもよい。第1層状金属酸化物は、式(1):
Li1-a1Nix1Me1
1-x1O2 (1)
によって表される。式(1)中、「a1」は、「-0.3≦a1≦0.3」の関係を満たし、「x1」は、0.5≦x1<1.0の関係を満たし、「Me1」は、Co、Mn、Al、Zr、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、B、Mo、Sn、Ge、Nb、及びWからなる群より選択される少なくとも1種を示す。
【0012】
活物質は、例えば第2層状金属酸化物を含んでいてもよい。第2層状金属酸化物は、式(2):
Li1-a2Nix2Me2
1-x2O2 (2)
によって表される。式(2)中、「a2」は、「-0.3≦a2≦0.3」の関係を満たし、「x2」は、0.6≦x2≦1.0の関係を満たし、「Me2」は、Co、Mn、Al、Zr、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、B、Mo、Sn、Ge、Nb、及びWからなる群より選択される少なくとも1種を示す。式(1)及び(2)中、例えば「x1<x2」の関係が満たされていてもよい。
【0013】
活物質は、例えばLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、LiNi0.7Co0.2Mn0.1O2、LiNi0.7Co0.1Mn0.2O2、LiNi0.6Co0.3Mn0.1O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.6Co0.1Mn0.3O2及びLiNi0.55Co0.20Mn0.25O2からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。例えば、後述の一次粒子及び単粒子はLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、LiNi0.7Co0.2Mn0.1O2、LiNi0.7Co0.1Mn0.2O2及びLiNi0.55Co0.20Mn0.25O2からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0014】
活物質は、X線回折パターン解析結果から得られる結晶構造におけるc軸の長さに対するa軸の長さの比c/a(以下、比c/aともいう)が4.9631以下である。比c/aが上記範囲であることにより優れた熱安定性を発揮することができる。X線回折パターン解析は、後述の実施例の欄において説明する方法に従って行うことができる。比c/aは、低温低SOC出力特性の観点から好ましくは4.9622以上である。
【0015】
活物質がリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を含む場合、活物質は、例えばリチウム化合物と遷移金属化合物とを含む第1混合物を焼成する第1焼成工程と、第1焼成工程で得られた焼成物と遷移金属化合物とを含む第2混合物を焼成する第2焼成工程の2段階の焼成工程を経て合成することができる。比c/aは、第1焼成工程及び第2焼成工程での焼成パラメータ(例えば焼成温度及び焼成時間等)の制御により任意に制御することができる。
【0016】
活物質は、二次粒子の平均粒子径D50が14μm以上18μm以下である凝集粒子を含むことができる。平均粒子径D50は、体積基準の粒度分布において小粒径側からの累積粒子体積がそれぞれ全粒子体積の50%になる粒子径を表す。平均粒子径は、レーザ回折・散乱法により測定され得る。
【0017】
二次粒子を構成する一次粒子は、粒子のSEM画像において、外観上、粒界が確認できない粒子である。平均一次粒子径は、一次粒子の輪郭線上の最も離れた2点間の距離を示す。一次粒子の平均一次粒子径は、例えば0.05μm以上0.7μm以下又は0.1μm以上0.6μm以下であってよい。1個の凝集粒子のSEM画像から無作為に抽出された10個以上の一次粒子が0.05μmから0.2μmの平均一次粒子径を有する時、該凝集粒子に含まれる一次粒子の全てが0.05μmから0.2μmの平均一次粒子径を有するとみなされる。一次粒子は、例えば0.2μmから0.5μmの平均一次粒子径を有していてもよい。
【0018】
活物質は、単粒子をさらに含むことができる。単粒子の平均粒子径D50は、例えば1μm以上20μm以下であってよく、好ましくは1μm以下10μm以下であり、より好ましくは1μm以上5μm以下であってもよい。単粒子は表面被覆されていてもよい。
【0019】
活物質は、温度120~600℃及び昇温速度5℃/minでの熱質量分析における重量減少量が12質量%以下であることができる。また、活物質は、温度120~600℃及び昇温速度5℃/minでの熱質量分析における毎分あたりの重量減少率が0.40質量%/min以下であることができる。熱質量分析は、後述の実施例の欄において説明する方法に従って行われる。
【0020】
活物質を含む正極は、低温低SOC出力抵抗が例えば4.670Ω以下であってよい。低温低SOC出力抵抗は、後述の実施例の欄において説明する方法に従って行われる。
【0021】
<リチウムイオン電池>
図1は、本実施形態におけるリチウムイオン電池の一例を示す概略図である。
図1に示す電池100は、例えば電動車両の主電源又は動力アシスト用電源等のリチウムイオン電池であってよい。
【0022】
電池100は、外装体90を含む。外装体90は、電極体50及び電解質(不図示)を収納している。電極体50は、正極集電部材81によって正極端子91に接続されている。電極体50は、負極集電部材82によって負極端子92に接続されている。
図2は、本実施形態における電極体の一例を示す概略図である。電極体50は巻回型である。電極体50は、正極20、セパレータ40及び負極30を含む。すなわち電池100は正極20を含む。正極20は、正極活物質層22と正極基材21とを含む。負極30は、負極活物質層32と負極基材31とを含む。
【0023】
<正極>
図3に示すように正極20は、正極活物質層22が正極基材21の片面又は両面に直接的に又は間接的に形成されていてよい。正極基材21は、例えばAl合金箔、純Al箔等からなる導電性シートであってよい。正極活物質層22は活物質11を含む。正極活物質層22は導電材及びバインダ等をさらに含んでいてもよい。活物質11は、上述の正極用NCM系活物質を含む。
【0024】
正極活物質層22は、例えば10μmから200μmの厚さを有していてもよい。正極活物質層22は高密度を有し得る。正極活物質層22の密度は、例えば3.5g/cm3以上であってよく、3.6g/cm3以上又は3.7g/cm3以上であってよい。正極活物質層22は、例えば4.0g/cm3以下の密度を有していてもよい。
【0025】
<正極の製造方法>
本実施形態における正極20の製造方法は、
図4に示すように正極スラリーの調製(A)、塗布(B)及び圧延(C)を含む。正極スラリーの調製(A)において、上述の活物質を含む正極スラリーを調製する。正極スラリーは、活物質が分散媒中に分散されることにより調製される。塗布(B)において、正極スラリーを正極基材11の表面に塗布することにより、正極活物質層12を形成する。圧延(C)において、正極活物質層12と正極基材11とを圧延することにより、正極10を製造する。圧延により正極10の原反が製造される。原反は、電池100の仕様に応じて、所定の平面サイズに切断され得る。
【実施例0026】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記のない限り、質量%及び質量部である。
【0027】
[低温低SOC出力特性評価用正極の作製]
実施例及び比較例で作製した正極活物質1と、後述のとおり作製した正極活物質2とを1:1で混合し、当該混合物が97.5質量部、導電材としてのカーボンブラックが1.5質量部、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)が1.0質量部となるよう混合し、さらにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を適量加えて、正極合材スラリーを調製した。当該スラリーをアルミニウム箔からなる集電体に塗布することにより、正極合材層を形成した。その後、乾燥し、圧延ローラーを用いて正極合材密度が3.55g/cm3となるように圧縮し、所定のサイズに裁断してアルミニウムタブを取り付け、正極とした。
【0028】
[第2正極活物質の合成]
LiOHとでNi0.60Co0.20Mn0.20(OH)2で表される遷移金属化合物を混合し、第1焼成工程と第2焼成工程を経て第2正極活物質(粒子径3~6μmのリチウムニッケル複合酸化物)を得た。第2正極活物質の平均粒子径D50は4.0μmであった。
【0029】
[TG測定用正極の作製]
実施例及び比較例で作製した正極活物質1が89.0質量部、導電材としてのカーボンブラック1.0質量部、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)10質量部となるよう混合し、さらにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を適量加えて、正極合材スラリーを調製した。当該スラリーをアルミニウム箔からなる集電体に塗布することにより、正極合材層を形成した。その後、乾燥し、圧延ローラーを用いて所定の厚さまで圧延し、所定のサイズに裁断してアルミニウムタブを取り付け、正極とした。
【0030】
[負極の作製]
負極活物質と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)と、結着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)とを、それぞれ質量比で98:1:1となるように秤量し、これらを水に分散させて負極合剤スラリーを調製した。この負極合剤スラリーを銅箔からなる集電体に塗布することにより、負極合剤層を形成した。その後、乾燥し、圧延ローラーを用いて所定の厚さまで圧延し、所定のサイズに裁断してニッケルタブを取り付け、負極とした。
【0031】
[非水電解質の調製]
エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)とを、30:30:40の体積比で混合した。当該混合溶媒に対して、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.15モル/リットルの濃度となるように添加した。さらに、この混合溶媒の総質量に対して添加率が1.0質量%となるようにビニレンカーボネート(VC)を添加して、非水電解質を調製した。
【0032】
[比c/aの評価]
第1正極活物質の粉体試料を全自動多目的X線回折装置(Rigaku製SmartLab)の専用フォルダーに充填し、反射法で測定し、X線回折パターンを得た。管球(ターゲット元素)はCuを使用し、管電圧は45kV、管電流は200mAであった。X線回折パターンから得られた結晶ピークデータをリートベルト解析し、結晶(結晶系:三方晶系、空間群:R-3m)中のa軸長、c軸長を算出し、比c/a値を求めた。
【0033】
[低温低SOC出力特性の評価]
以下の手順で低温低SOC出力抵抗を測定した。上記のとおり作製した低温出力特性評価用正極と、負極をポリオレフィン製のセパレータを介して正極と負極を積層し、積層型電極体を作製した。この電極体をアルミラミネートシートで構成される外装体内に収容し、上記非水電解質を注入した後、外装体の開口部を封止して試験セルを得た。上記試験セルについて、25℃の温度条件下で、0.2mA/cm2の電流密度で4.25Vとなるまで定電流充電を行い、更に4.25Vで電流密度が0.04mA/cm2となるまで定電圧充電して、充電容量を求めた。10分間の休止を挟んだ後、0.2mA/cm2の電流密度3.0Vとなるまで定電流放電して、放電容量を求めた。
【0034】
電池測定環境温度をー30℃まで降温させ、上記セルを0.2mA/cm2の電流密度で3.44Vとなるまで定電流充電を行い、更に3.44Vで電流密度が0.04mA/cm2となるまで定電圧充電して充電した後、0.2mA/cm2の電流値で10秒間の定電流放電を行い、10秒経過時点の電圧を測定した。0.4,0.6,0.8,1.0,1.2mA/cm2それぞれの電流密度で測定を行い、電流値と電圧値の傾きから10秒直流抵抗を算出した。
【0035】
[熱安定性の評価]
(試験セルの作製)
上記で作製したTG測定用正極と、金属リチウムをポリオレフィン製のセパレータを介して正極と金属リチウムを巻き、巻回電極体を作製した。この電極体をアルミラミネートシートで構成される外装体内に収容し、上記非水電解質を注入した後、外装体の開口部を封止して試験セルを得た。
【0036】
(TG測定用サンプリングの作成方法)
上記セルを25℃の温度条件下で、0.2mA/cm2の電流密度で4.35Vとなるまで定電流充電を行い、更に4.35Vで電流密度が0.04mA/cm2となるまで定電圧充電した後、電流密度が0.04mA/cm2で2.5V となるまで定電流放電を行った。上記充放電条件を1サイクルした後、0.2mA/cm2の電流密度で4.40Vとなるまで定電流充電を行い、さらに4.40Vで電流密度が0.04mA/cm2となるまで定電圧充電した。該当セルをグローブボックス内で解体し、正極極板を取り出し、DMCで洗浄し、真空乾燥した。該当正極極板から正極合剤層を芯体から削り取り、TG測定用サンプルとした。
【0037】
(TG測定方法)
測定装置(SHIMADZU製 DTG-60AHで測定)のTG用パンに上記サンプルを20mg量り取り、装置にセットした。Ar雰囲気下で昇温速度5℃/min、温度上限600度まで測定した。120℃~600℃の重量減少量及び毎分当りの重量減少率を算出した。
【0038】
<実施例1>
LiOHとでNi0.55Co0.20Mn0.25(OH)2で表される遷移金属化合物を混合し、次いで焼成パラメータを調節しながら第1焼成工程及び第2焼成工程を経て、第1正極活物質を得た。第1正極活物質の平均粒子径D50は16.0μm、結晶格子c軸とa軸の比率c/aは4.9625であった。
<実施例2~7及び比較例1~3>
実施例1において第1及び第2焼成工程の焼成パラメータの制御により表1に示す比c/aとしたこと以外は実施例1と同様にして正極を作製した。結果を表1に示す。
【0039】
【0040】
表1において、低温低SOC出力特性が4.670Ω以下であり、かつ重量減少量が12%以下であり、かつ毎分あたりの重量減少率が0.40%/min以下である場合を○、それ以外は×として判定した。本発明に従う実施例1~7では、高い熱安定性と共に向上した低温低SOC出力特性を両立することができた。
11 正極用NCM系活物質、20 正極、21 正極基材、22 正極活物質層、30 負極、31 負極基材、32 負極活物質層、40 セパレータ、50 電極体、81 正極集電部材、82 負極集電部材、90 外装体、91 正極端子、92 負極端子、100 電池(リチウムイオン電池)。