(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102949
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】ウィンチシステム
(51)【国際特許分類】
B66D 1/50 20060101AFI20240725BHJP
B64U 10/14 20230101ALI20240725BHJP
B64U 20/87 20230101ALI20240725BHJP
B66D 1/12 20060101ALI20240725BHJP
B66D 1/54 20060101ALI20240725BHJP
B66D 1/60 20060101ALI20240725BHJP
B66D 5/30 20060101ALI20240725BHJP
B64U 101/70 20230101ALN20240725BHJP
【FI】
B66D1/50 A
B64U10/14
B64U20/87
B66D1/12
B66D1/54 B
B66D1/60 Z
B66D5/30 A
B64U101:70
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007045
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】717007295
【氏名又は名称】株式会社Liberaware
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】倉持 成隆
(72)【発明者】
【氏名】野平 幸佑
(57)【要約】
【課題】ケーブルで吊り下げられる機体の制御と、ケーブルの制御とを容易に行うことが可能なウィンチシステムを提供する。
【解決手段】本開示のウィンチシステムは、推力発生部を備える機体を吊り下げるケーブルに接続される電動ウィンチと、操縦装置からの操縦信号を受信する受信部と、受信部で受信した操縦信号に基づいて、電動ウィンチの動作を指示するウィンチ動作信号を生成する信号生成部と、を備え、操縦信号は、機体に対する上昇指示または下降指示の情報を含み、信号生成部は、上昇指示に基づいて巻き取り指示の情報を含むウィンチ動作信号を生成し、下降指示に基づいて繰り出し指示の情報を含むウィンチ動作信号を生成する、ことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
推力発生部を備える機体を吊り下げるケーブルに接続される電動ウィンチと、
操縦装置からの操縦信号を受信する受信部と、
前記受信部で受信した前記操縦信号に基づいて、前記電動ウィンチの動作を指示するウィンチ動作信号を生成する信号生成部と、を備え、
前記操縦信号は、前記機体に対する上昇指示または下降指示の情報を含み、
前記信号生成部は、前記上昇指示に基づいて巻き取り指示の情報を含む前記ウィンチ動作信号を生成し、前記下降指示に基づいて繰り出し指示の情報を含む前記ウィンチ動作信号を生成する、ことを特徴とするウィンチシステム。
【請求項2】
前記電動ウィンチを支持する支持部と、
前記ケーブルをガイドするガイド部と、を備える、請求項1に記載のウィンチシステム。
【請求項3】
前記操縦信号は、機体の向き制御する情報を含む、請求項1または2に記載のウィンチシステム。
【請求項4】
前記操縦信号は、機体の平行位置を制御する情報を含む、請求項1または2に記載のウィンチシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウィンチシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上方からケーブル等でカメラを吊り下げた状態で、施設内部を点検する方法が知られている。例えば特許文献1には、立坑の上部開口からカメラを吊り下げて立坑内の腐食状態などを確認する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、カメラを備えたドローンをケーブルで吊り下げて施設内で点検することを想定した場合、ドローンの制御と、ケーブルの巻き取り及び繰り出し等の操作を並行して行うことが難しい。
【0005】
そこで、本開示は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ケーブルで吊り下げられる機体の制御と、ケーブルの制御とを容易に行うことが可能なウィンチシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、推力発生部を備える機体を吊り下げるケーブルに接続される電動ウィンチと、
操縦装置からの操縦信号を受信する受信部と、
前記受信部で受信した前記操縦信号に基づいて、前記電動ウィンチの動作を指示するウィンチ動作信号を生成する信号生成部と、を備え、
前記操縦信号は、前記機体に対する上昇指示または下降指示の情報を含み、
前記信号生成部は、前記上昇指示に基づいて巻き取り指示の情報を含む前記ウィンチ動作信号を生成し、前記下降指示に基づいて繰り出し指示の情報を含む前記ウィンチ動作信号を生成する、ことを特徴とするウィンチシステムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ケーブルで吊り下げられる機体の制御と、ケーブルの制御とを容易に行うことが可能なウィンチシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係るシステムを示す側面図である。
【
図2】同実施形態に係るウィンチシステムのブロック図である。
【
図3】同実施形態に係る機体の構成例を示す斜視図である。
【
図4】同実施形態に係る撓み抑制装置の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0010】
<概要>
図1は、本開示の一実施形態に係る点検システム1(以下、単に「システム」とも称する)の概要図である。本実施形態に係るシステム1は、例えば、煙突、各種製造炉、構造物、設備、配管等に対する種々の検査、修理、または工場等における計器の確認等、様々な用途における作業に用いられ得る。対象施設は、特に限定されないが、上部に開口を有する施設とすることができる。
図1の例では、対象施設の内部空間Aにつり下げられた機体10のカメラで、内壁Wを撮影して点検することができる。
【0011】
図1に示すように、システム1は、機体10と、機体10を上方から吊り下げるケーブル20と、ケーブル20の繰り出し及び巻き取りを行う電動ウィンチ30と、機体10及び電動ウィンチ30を制御するための操縦装置40と、を備える。
【0012】
本例の機体10は、無人飛行体(ドローン)であり、ケーブル20で吊り下げられなくても飛行可能であり、任意の位置、任意の姿勢に制御することができる。機体10は、推力発生部11から得られる推力によって、上昇(浮上)、下降、ホバリング(空中停止)、前後左右等の水平移動、旋回動作が可能である。なお、機体10はケーブル20により支持されるため、上方への推力は推力発生部11から得なくてもよい。機体10は、これに限られず、自力での浮上が不可能な構造であってもよい。
【0013】
機体10は、推力発生部11と、推力発生部11を支持する本体部12とを備える。本体部は、支持構造としてのフレームと、フレーム上に設けられた電子部品を保護するカバーとを有している。本体部を構成するフレームは、特に限定されないが、例えば、炭素繊維樹脂、ガラス繊維樹脂、マグネシウム、マグネシウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄鋼、チタンその他の材料の何れかまたはそれらの組み合わせで構成される。
【0014】
推力発生部11は、例えば、複数の回転翼と、当該回転翼を回転させるモータ、電力を供給するバッテリ等を備える。推力発生部を構成する各回転翼は、上向きの推力を発生させることができ、回転翼の回転方向を変更すれば下向きの推力を発生させることもできる。また、推力発生部は、前後左右方向の平行移動(水平移動)のための推力を発生させることができる。推力発生部は、旋回方向の推力を発生させることも可能である。また、推力発生部は、機体の向き(姿勢)、傾きも変更することができる。回転翼は、本実施形態においては、機体の周囲の4箇所(前側と後側にそれぞれ左右1箇所ずつ)に設けられているが、本発明はかかる例に限定されず、例えば回転翼を機体の周囲6箇所、8箇所に設けてもよい。飛行体1の構造、形状、装備およびサイズ等に応じて、回転翼の設けられる数は適宜変更されうる。
【0015】
機体10のフレームは、回路基板、フライトコントローラ、ESC(Electric Speed Controller)、センサ、バッテリ等、回転翼の制御および動力に係る部品を積載して支持する。フレームには、フライトコントローラを含む制御回路が実装されてもよい。バッテリからモータ、カメラおよびセンサ類に電力が供給され、フライトコントローラによりモータの回転数等の制御が行われる。フライトコントローラは、例えば、中央演算処理装置(CPU)や、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルプロセッサなど、1つ以上のプロセッサ23bを有することができる。フライトコントローラは、メモリを有しており、当該メモリにアクセス可能である。メモリは、1つ以上のステップを行うためにフライトコントローラが実行可能であるロジック、コード、および/またはプログラム命令を記憶している。メモリ等の記憶部は、たとえば、SDカードやランダムアクセスメモリ(RAM)などの分離可能な媒体または外部の記憶装置を含んでいてもよい。カメラ/センサから取得したデータは、メモリに直接に伝達され記憶されてもよい。たとえば、カメラで撮影した静止画・動画データが内蔵メモリ又は外部メモリに記録される。フライトコントローラは、機体10の状態を制御するように構成された制御モジュールを含んでいる。たとえば、制御モジュールは、6自由度(並進運動x、y及びz、並びに回転運動θx、θy及びθz)を有する機体10の空間的配置、速度、および/または加速度を調整するために、ESCを経由して機体10のモータを制御する。センサは、例えば、慣性センサ(IMU(Inertial Measurement Sensor)等の慣性計測装置)、加速度センサ、ジャイロセンサ、GPSセンサ、風センサ、温度センサ、湿度センサ、気圧センサ、高度センサ、LiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)等の近接センサ、またはカメラ以外のビジョン/イメージセンサ等を含み得る。また、センサは、フライトコントローラに搭載されるものであってもよいし、フライトコントローラの外部に設けられるものであってもよい。また、カメラは、任意のカメラであってもよい。例えば、カメラは、一般的なカメラの他に、赤外線カメラ、ステレオカメラ等であってもよい。カメラは、例えば、自己位置推定に用いるためのカメラと、撮影対象を撮像するためのカメラとがそれぞれ設けられていてもよい。
【0016】
機体10の姿勢は、適宜センサから得られる入力に基づいてフライトコントローラが制御するものであってもよい。また、機体10の姿勢制御は、推力発生部11から得られる推力の調整により行われるものであってもよいし、また、ケーブル20を上下方向や水平方向(前後左右、斜め)に移動させることによって行われてもよいし、その両方であってもよい。具体的には、機体10の水平方向に対する姿勢が0度となるように目標値を定める場合、姿勢のフィードバック制御は、回転翼の各々の回転数を制御するものであってもよいし、また、ケーブル20の水平方向や上下方向の移動を制御するものであってもよい。これにより、風やドリフトの影響により機体10の姿勢が傾いてしまっても、機体10の水平方向の移動を抑制し、姿勢をより確実に維持することが可能となる。なお、推力を発生させる回転翼の数は特に限定されないが、機体10の姿勢をより安定させる点から、回転翼の数は4つ以上であることが好ましい。また、推力発生部としては、回転翼以外の機構により実現されるものであってもよい。
【0017】
また、機体10を水平面に沿って回転(いわゆる水平面に直交するヨー軸まわりの回転)させる場合は、ケーブル20をねじることによって実現してもよいし、回転翼の回転の制御により実現されてもよい。回転翼によるヨー軸まわりの回転制御は、例えば、4つの回転翼のうち、それぞれの回転方向を異ならせることによって、機体10をヨー軸まわりに回転させることが可能である。具体的には、右前側、左後側の2つの回転翼(第1の回転翼)の回転方向を反時計回りとし、左前側、右後側の回転翼(第2の回転翼)の回転方向を時計回りとし、第1の回転翼と第2の回転翼の各々の回転数を異ならせる制御を行うことで、機体10をヨー軸まわりに回転することが可能である。なお、第1の回転翼と第2の回転翼の回転方向はそれぞれ反対であってもよい。
【0018】
機体10は、1つまたは複数のカメラを備え、機体10の周囲を撮影し、画像データ(静止画、動画を含む)を取得することができる。カメラは、機体10の上下、前後、左右、の何れの向きに設けられてもよく、機体10上の位置も特に限定されない。例えば、機体10の前方側に、前向き(撮影方向が機体の前方となる向き)で設置することができる。
【0019】
機体10は、操縦装置40、及び他の外部装置等に対して信号を送受信するための通信部を有する。機体10は、カメラやセンサ等で取得したデータを、操縦装置40を含む外部装置に通信部を介して送信することができる。なお、機体10が取得したデータは機体10に設けた記憶部に記憶してもよいし、外部装置に送信して記憶するようにしてもよい。通信部は、有線通信または無線通信などの任意の適当な通信手段を使用することができる。通信部は、たとえば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、赤外線、無線、WiFi、ポイントツーポイント(P2P)ネットワーク、電気通信ネットワーク、クラウド通信などの任意の通信方式のうちの1つ以上を利用することができる。
【0020】
フライトコントローラは、通信部を介して操縦装置40からの操縦信号を受信して、当該操縦信号に基づいて推力発生部11が制御され、移動、旋回等の動作が制御される。また、操縦装置40からの信号に応じてカメラの操作も可能である。カメラの操作とは、撮影の開始、停止、ズーム操作、カメラの向きの変更等を含む。また、操縦装置40からの制御信号に基づいて、機体10に設けた各種センサやライトの制御も可能である。機体10の重心は、平面視で機体10の略中心に位置することが好ましいが、これに限られるものではない。
【0021】
図3に示すように、ケーブル20に回転ジョイント7を設けてもよい。回転ジョイント7は、回転自在な構成となっており、回転ジョイント7の一方側(例えば
図3の下側)に接続されるケーブル20の回転(捩れ)が、回転ジョイント7の他方側(例えば
図3の上側)に接続されるケーブル20に伝わらないようになっている。このような構成により、例えば機体がヨー軸周りに回転した場合でも、ケーブル20が捩れないので捩れ方向の反力等の影響を受けることがなく、機体の制御が容易となる。回転ジョイント7の位置は特に限定されず任意の位置に設けることができるが、接続部52付近の主部50に設けることが好ましい。
【0022】
また、
図3に示すように、ケーブル20に重り8を設けてもよい。重り8を設けることで、機体及びケーブル20が、気流の影響を受けにくくなり、安定性が向上する。また、重り8を設けた場合でも、ケーブル20によって機体を支持しているため、機体を制御する際のバッテリの消費量にはほとんど影響がない。重り8の位置は、回転ジョイント7の上側でも下側でもよく、回転ジョイント7と一体であってもよい。なお、重り8の位置は特に限定されず、ケーブル20の主部20a、各枝部20b、接続部20c、あるいは機体の何れかの位置に、1つ、もしくは複数の位置にそれぞれ設けてもよい。
【0023】
また、
図3に示すように、機体には光を発するライト9を設けてもよい。ライト9の位置及び向きは特に限定されないが、カメラ6の撮影方向、撮影範囲を照らすように配置されることが好ましい。図示例では機体の前方を撮影するカメラ6に対応して、機体の前方を照らすようにライト9が設けられている。ライト9は、図示例ではカメラ6の上側に位置しているが、カメラ6の下側、左側、右側の何れの位置にあってもよい。
【0024】
ケーブル20は、一端が機体10に接続され、他端が電動ウィンチ30に接続される。ケーブル20は機体10を吊り下げて支持する。ケーブル20は、例えば途中で分岐して機体10の本体部12の上部の4隅に接続されてもよいし、あるいは分岐せずに本体部の中央に接続されてもよい。
【0025】
ケーブル20を構成する素材は特に限定されない。ケーブル20は、例えば、繊維、金属または硬質プラスチック等からなり、部分的に素材が異なっていたり、他の棒材、板材等が一部に設けられたりしてもよい。
【0026】
ケーブル20は、電力を供給可能な電力ケーブル、信号を送受信可能な通信ケーブル等(
図3の符号21参照)を含んでいてもよい。これによれば、電動ウィンチ30側に設けた電源部から機体10に電力を供給したり、機体10への制御信号等のデータを送信したり、逆に機体10から電動ウィンチ30側に設けた情報処理装置に画像データ等の各種データを送信したりすることができる。
【0027】
電動ウィンチ30は、操縦装置40からの操縦信号を受信する通信部(受信部)31と、通信部31で受信した操縦信号に基づいて、電動ウィンチ30の動作を指示するウィンチ動作信号を生成する制御部(信号生成部)32と共に、ウィンチシステムSを構成する。ウィンチシステムSは、記憶部等の他の構成を備えてもよい。通信部31は、電動ウィンチ30側からの信号を、操縦装置40、機体10、及び他の外部装置等に送信することができるものであってもよいし、信号の送信はせずに受信のみを行う構成であってもよい。制御部32は、図示しない記憶部に予め記憶された情報を参照しつつ、操縦装置40からの操縦信号に基づいてウィンチ動作信号を生成し、電動ウィンチ30を構成するモータを制御する。ウィンチ動作信号は、当該モータの回転方向、回転速度、回転角度等の情報を含む。ウィンチ動作信号でモータを制御することで、ケーブル20の繰り出し、巻き取りを開始したり、停止したり、速度を変更したりすることができる。電動ウィンチ30は、モータと、モータを回転させるための電源部を備える。電源部は、例えば、外部電源でもよいし、充電可能なバッテリ等でもよい。ウィンチシステムSに設けられる電動ウィンチ30、電子部品、バッテリ等は、それらを覆う防水ケース、防水カバー等によって覆われていることが好ましい。
【0028】
ウィンチシステムSは、電動ウィンチ30を支持する支持部33と、ケーブル20をガイドするガイド部34と、を備える。支持部33は、地面、施設の上面等に載置可能な三脚等のベース部33aと、ベース部33aから延在する支柱部33bと、支柱部33bから延びるアーム部33cと、を備える。支柱部33b、アーム部33cには、ガイド部34としての1以上のガイドローラが設けられている。本例では、支柱部33bとアーム部33cの連結部、及び、アーム部33cの先端部に、ガイドローラが設けられている。ベース部33a、支柱部33b及びアーム部33cは、折り畳むことにより全体としてコンパクトに持ち運ぶことができるようにしてもよい。支柱部33b及びアーム部33cは、それぞれ伸縮したり、回転したり、前後左右上下方向の何れかに傾斜したり、折り曲げたりすることができるようにしてもよい。これにより、ケーブル20及び機体10の平面視での位置を制御することができる。また、支柱部33b及びアーム部33cの動作は、操縦装置40からの操縦信号に基づいて、制御部32によって制御されるようにしてもよいし、手動で伸縮、回転、傾斜、折り曲げ等を行ってもよい。例えば、水平方向に延びるアーム部33cの延在方向にアーム部33cを伸ばすことで、機体10の位置をアーム部33cの延在方向に移動させることができる。その際、機体10の高さが変わらないように、電動ウィンチ30を制御してケーブル20を繰り出すようにしてもよい。
【0029】
支柱部33bには、支持部33の転倒を防止するためのワイヤー、紐等を連結することができる連結部が設けられている。連結部は、例えばリング状、フック状、他の連結構造であってもよい。当該連結部に連結したワイヤーを、アーム部33cと逆側に延在させ、地面や他の重量物に連結することにより、支持部33がアーム部33c及び機体10の重みでアーム部33c側に倒れることを防止することができる。連結部は、支柱部33bの中央部分から上側部分に設けられていることが好ましい。
【0030】
ここで、電動ウィンチ30でケーブル20を巻き取る際に、ケーブル20に撓みが生じると、ケーブル20が電動ウィンチ30で絡まり乱巻き状態となるおそれがある。そのため、本例では、
図4に示すように、電動ウィンチ30でケーブル20を巻き取る際に、ケーブル20に撓みが生じるのを防止するための撓み抑制装置35が支柱部33bに設けられている。撓み抑制装置35は、電動ウィンチ30の上側に位置し、第1ローラ35aと第2ローラ35bとの間にケーブル20を挟み込むことで、電動ウィンチ30と撓み抑制装置35の間のケーブル20のテンションを維持する。これにより、電動ウィンチ30で巻き取るケーブル20の撓みを抑制し、乱巻きを防ぐことができる。本例では、第1ローラ35aは第1支持部35cに対して回転可能に固定されており、第2ローラ35bは第2支持部35dに対して回転可能に固定されている。第2支持部35dは、第1支持部35cに対して回転軸35eを中心として揺動(回転)可能に保持され、第2支持部35dは、ばね等の付勢部材により、第1支持部35cに向けて付勢されている。第1支持部35cから離れる方向に第2支持部35dを開くことで、ケーブル20を第1ローラ35aと第2ローラ35bの間に挟んだり、取り出したりすることができる。第1ローラ35aと第2ローラ35bの少なくとも一方の外表面には、ゴム、エラストマ等の滑り止め部が設けられていることが好ましい。
【0031】
電動ウィンチ30の巻き取り、繰り出しにより、ケーブル20の長さを調整することができる。ケーブル20の長さ(繰り出し量)に応じて、機体10が上下動して、例えば、カメラの撮影高さを変更することができる。なお、電動ウィンチ30の設置位置は特に限定されず、飛行環境の内部であっても外部であってもよい。また、例えば機体10の上方にガイドローラを設置してケーブル20を支持することで、電動ウィンチ30は、機体の下方に配置することも可能である。例えば、電動ウィンチ30の位置は、点検対象施設の外部もしくは内部の地面であってもよい。
【0032】
電動ウィンチ30は、操縦装置40の入力に基づいて巻き取り、繰り出し等の制御が実行されるが、部分的に、プログラム等に従って自律的に制御されるものであってもよい。
【0033】
操縦装置40からの操縦信号は、例えば、機体10に対する上昇指示または下降指示の情報を含む。信号生成部32は、上昇指示に基づいて巻き取り指示の情報を含むウィンチ動作信号を生成し、下降指示に基づいて繰り出し指示の情報を含むウィンチ動作信号を生成する。これにより、例えば操縦者が操縦装置40に設けられた操作スティックを一方に倒す、または、タッチパネルに表示された操作アイコンを一方にスライド操作するなどして、機体10の上昇を指示する操作を行うだけで、自動的に電動ウィンチ30がケーブル20を巻き取り、機体10を上昇させることができる。同様に、操縦者が操縦装置40を手動操作して機体10の下降を指示する操作を行うだけで、自動的に電動ウィンチ30がケーブル20を繰り出し、機体10を下降させることができる。
【0034】
操縦装置40は、機体10の推力発生部11等を制御するための操縦信号を送信するものであり、例えば、通常の無人飛行体を操縦するための送受信機(プロポ)、スマートフォン、タブレット端末等の情報処理装置とすることができるが、これに限られない。
【0035】
操縦装置40は、機体10の推力発生部11及び電動ウィンチ30の動作を制御することができる。操縦装置40は、機体10に設けられた通信部、及び、電動ウィンチ30に接続される受信部31に対して操縦信号(制御指示情報)を送信することができる。操縦信号は、機体10の上昇、下降、停止、前後左右斜めの水平移動、左右の旋回等を指示する情報を含む。つまり、操縦信号は、機体10の向き制御する情報、機体10の平行位置(水平方向の位置)を制御する情報を含むことができる。
【0036】
操縦装置40は、機体10に設けたカメラ、センサ等を制御するための信号も送信可能であり、例えば撮影の開始、停止、ズーム操作、カメラの向きの変更、機体10に設けた各種センサの制御やライトの点灯、消灯等の制御指示信号も送信可能である。
【0037】
操縦装置40は、使用者(オペレータ)による手動操作を受け付ける入力部を有する。入力部は、例えば、左右一対の棒状の操作スティックや、回転ダイヤル、押しボタン、タッチパネルの画面に表示される各種アイコン、あるいは、音声入力のためのマイク等とすることができるが、使用者からの入力を受け付けるものであれば特に限定されない。操縦装置40は、移動経路情報やセンシングによる自律的な飛行プログラム(例えば、GCS(Ground Control Station))に基づいて、操縦信号を送信することができるものであってもよい。
【0038】
本実施形態のシステムにあっては、1台の操縦装置40で、機体10の制御と、電動ウィンチ30の制御を同時に実行可能である。これにより、ケーブル20で吊り下げた機体10の位置や姿勢を制御するための操作が容易となる。また、機体10をケーブル20で吊り下げて作業を行うことで、機体10が墜落することや施設内で回収不能となることを防止することができる。また、ケーブル20で吊り下げることで、機体10の推力発生部11が自重以上の上向きの推力を発生させる必要がなく、バッテリの消耗を低減させて長時間の使用が可能となる。また、機体10を空中停止(ホバリング)させる際の操縦の必要がなく、操縦が容易となる。
【0039】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0040】
上記実施形態では、機体が繋留体により吊り下げられている状態において、推力発生部が機体に生じる重力Gよりも小さい力(推力DF2)を上方に生じさせてケーブル20に掛かる負担を軽減する構成としていたが(
図3参照)、これに限られず、推力発生部が機体に対して下方に力を生じさせる構成としてもよい。なお、推力発生部は、一時的に機体に生じる重力Gよりも大きい力(推力DF2)を上方に生じさせてもよい。
【0041】
なお、上記実施形態においては、自律的な制御を機体のフライトコントローラにより実行するものとして説明したが、本技術はかかる例に限定されない。すなわち、かかる自律飛行制御方法は、機体においてエッジで処理される例に限られず、他の自律制御装置により遠隔で上述した補正処理がなされ、その処理結果を飛行体に送信し、かかる結果をもとに駆動部を制御するようなものであってもよい。つまり、かかる自律飛行制御方法を実行するハードウェアの主体は特に限定されず、上述した機能部は複数のハードウェアにより実行されるものであってもよい。これは、電動ウィンチ30の制御部32も同様である。
【0042】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0043】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(項目1)
推力発生部を備える機体を吊り下げるケーブルに接続される電動ウィンチと、
操縦装置からの操縦信号を受信する受信部と、
前記受信部で受信した前記操縦信号に基づいて、前記電動ウィンチの動作を指示するウィンチ動作信号を生成する信号生成部と、を備え、
前記操縦信号は、前記機体に対する上昇指示または下降指示の情報を含み、
前記信号生成部は、前記上昇指示に基づいて巻き取り指示の情報を含む前記ウィンチ動作信号を生成し、前記下降指示に基づいて繰り出し指示の情報を含む前記ウィンチ動作信号を生成する、ことを特徴とするウィンチシステム。
(項目2)
前記電動ウィンチを支持する支持部と、
前記ケーブルをガイドするガイド部と、を備える、請求項1に記載のウィンチシステム。
(項目3)
前記操縦信号は、機体の向き制御する情報を含む、請求項1または2に記載のウィンチシステム。
(項目4)
前記操縦信号は、機体の平行位置を制御する情報を含む、請求項1または2に記載のウィンチシステム。
【符号の説明】
【0044】
1 ウィンチシステム
10 機体
20 ケーブル
30 電動ウィンチ
31 受信部
32 信号生成部
40 操縦装置
【手続補正書】
【提出日】2024-04-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
推力発生部を備える機体を吊り下げるケーブルに接続される電動ウィンチと、
操縦装置から前記機体の通信部に対して前記ケーブルを介さずに送信される操縦信号を受信する受信部と、
前記受信部で受信した前記操縦信号に基づいて、前記電動ウィンチの動作を指示するウィンチ動作信号を生成する信号生成部と、を備え、
前記操縦信号は、前記機体に対する上昇指示または下降指示の情報を含み、
前記信号生成部は、前記上昇指示に基づいて巻き取り指示の情報を含む前記ウィンチ動作信号を生成し、前記下降指示に基づいて繰り出し指示の情報を含む前記ウィンチ動作信号を生成する、ことを特徴とするウィンチシステム。
【請求項2】
前記電動ウィンチを支持する支持部と、
前記ケーブルをガイドするガイド部と、を備える、請求項1に記載のウィンチシステム。
【請求項3】
前記操縦信号は、機体の向き制御する情報を含む、請求項1または2に記載のウィンチシステム。
【請求項4】
前記操縦信号は、機体の平行位置を制御する情報を含む、請求項1または2に記載のウィンチシステム。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
推力発生部を備える機体を吊り下げて該機体を支持するケーブルに接続される電動ウィンチと、
操縦装置から前記機体の通信部に対して前記ケーブルを介さずに送信される操縦信号を受信する受信部と、
前記受信部で受信した前記操縦信号に基づいて、前記電動ウィンチの動作を指示するウィンチ動作信号を生成する信号生成部と、を備え、
前記操縦信号は、前記機体に対する上昇指示または下降指示の情報を含み、
前記信号生成部は、前記上昇指示に基づいて巻き取り指示の情報を含む前記ウィンチ動作信号を生成し、前記下降指示に基づいて繰り出し指示の情報を含む前記ウィンチ動作信号を生成し、
前記ケーブルは、給電ケーブルではない、ことを特徴とするウィンチシステム。
【請求項2】
前記電動ウィンチを支持する支持部と、
前記ケーブルをガイドするガイド部と、を備える、請求項1に記載のウィンチシステム。
【請求項3】
前記操縦信号は、機体の向き制御する情報を含む、請求項1または2に記載のウィンチシステム。
【請求項4】
前記操縦信号は、機体の平行位置を制御する情報を含む、請求項1または2に記載のウィンチシステム。
【請求項5】
前記電動ウィンチが前記ケーブルを巻き取ることにより前記機体が上昇するよう構成されている、請求項1に記載のウィンチシステム。