(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102951
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】VR空間表示システム、VR空間表示制御システム、VR空間表示制御方法、VR空間表示制御プログラム、VR空間表示制御方法およびVR空間表示制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20240725BHJP
H04N 13/117 20180101ALI20240725BHJP
H04N 13/344 20180101ALI20240725BHJP
H04N 13/122 20180101ALI20240725BHJP
G06F 3/04815 20220101ALI20240725BHJP
G06T 19/00 20110101ALI20240725BHJP
【FI】
G06F3/01 510
H04N13/117
H04N13/344
H04N13/122
G06F3/04815
G06T19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007049
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】523023454
【氏名又は名称】株式会社MATRIX
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(72)【発明者】
【氏名】米倉 豪志
【テーマコード(参考)】
5B050
5C061
5E555
【Fターム(参考)】
5B050AA10
5B050BA09
5B050BA11
5B050CA07
5B050EA09
5B050EA12
5B050EA13
5B050EA27
5B050FA05
5C061AA01
5C061AB12
5C061AB18
5C061AB20
5E555AA27
5E555AA64
5E555BA02
5E555BB02
5E555BC08
5E555BC18
5E555BE17
5E555CA24
5E555DA08
5E555DA11
5E555DB53
5E555DB57
5E555DC25
5E555DC43
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】新たなVR空間表示システム、VR空間表示制御システム、VR空間表示制御方法、VR空間表示制御プログラム、VR空間表示制御方法およびVR空間表示制御プログラムを提供する。
【解決手段】2次元映像から、前記2次元映像の深さ情報を含む3次元VR空間表示データを生成する3次元VR空間表示データ生成部と、ディスプレイと、前記3次元VR空間表示データに基づいて、前記2次元映像に対応する、所定の視点から見た3次元VR空間を前記ディスプレイに表示させる3次元VR空間表示制御部と、コントローラと、前記コントローラに対するユーザからの視点変更指示に応じて前記所定の視点を変更する視点制御部と、を備える、VR空間表示システムが提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元映像から、前記2次元映像の深さ情報と、前記2次元映像に含まれるオブジェクトに対応するオブジェクト情報と、前記オブジェクトが大きさ調整を要するオブジェクトであるか否かを示す情報と、を含む3次元VR空間表示データを生成する3次元VR空間表示データ生成部と、
ディスプレイと、
前記3次元VR空間表示データに基づいて、前記2次元映像に対応する、所定の視点から見た3次元VR空間を前記ディスプレイに表示させる3次元VR空間表示制御部と、
コントローラと、
前記コントローラに対するユーザからの視点変更指示に応じて前記所定の視点を変更する視点制御部と、を備え、
前記3次元VR空間表示制御部は、前記視点変更指示に応じて、前記大きさ調整を要するオブジェクトに前記所定の視点が近づいた場合でも、前記大きさ調整を要するオブジェクトから前記所定の視点が離れた場合でも、前記大きさ調整を要するオブジェクトが許容大きさで表示されるよう、前記3次元VR空間を前記ディスプレイに表示させ、
前記3次元VR空間は、複数の仮想平面に囲まれた概略直方体形状であり、
前記複数の仮想平面の少なくとも一部は、立体感を出すための複数の仮想ラインを含み、
前記複数の仮想ラインの一部は、前記3次元VR空間における奥行き方向に延び、
前記複数の仮想ラインの一部は、前記3次元VR空間における奥行き方向と直交する方向に延びる、VR空間表示システム。
【請求項2】
2次元映像から、前記2次元映像の深さ情報を含む3次元VR空間表示データを生成する3次元VR空間表示データ生成部と、
ディスプレイと、
前記3次元VR空間表示データに基づいて、前記2次元映像に対応する、所定の視点から見た3次元VR空間を前記ディスプレイに表示させる3次元VR空間表示制御部と、
コントローラと、
前記コントローラに対するユーザからの視点変更指示に応じて前記所定の視点を変更する視点制御部と、を備える、VR空間表示システム。
【請求項3】
前記3次元VR空間表示制御部は、大きさ調整を要するオブジェクトが許容大きさで表示されるよう、前記3次元VR空間を前記ディスプレイに表示させる、請求項2に記載のVR空間表示システム。
【請求項4】
前記3次元VR空間表示データ生成部は、前記2次元映像に含まれるオブジェクトに対応するオブジェクト情報と、前記オブジェクトが大きさ調整を要するオブジェクトであるか否かを示す情報と、を含む前記3次元VR空間表示データを生成する、請求項3に記載のVR空間表示システム。
【請求項5】
前記3次元VR空間表示データ生成部は、どのオブジェクトが前記大きさ調整を要するオブジェクトであるかの指定をユーザから受け付ける、請求項3に記載のVR空間表示システム。
【請求項6】
前記3次元VR空間は、立体感を出すための複数の仮想ラインを含む、請求項2に記載のVR空間表示システム。
【請求項7】
ディスプレイと、
所定の視点から見た3次元VR空間を前記ディスプレイに表示させる3次元VR空間表示制御部と、を備え、
前記3次元VR空間は、立体感を出すための複数の仮想ラインを含む、VR空間表示システム。
【請求項8】
前記3次元VR空間は、1以上の仮想面に囲まれており、
前記複数の仮想ラインの少なくとも一部は、前記1以上の仮想面の少なくとも一部に含まれる、請求項6または7に記載のVR空間表示システム。
【請求項9】
前記3次元VR空間は、概略長方形である前記仮想面に囲まれた概略直方体形状である、請求項8に記載のVR空間表示システム。
【請求項10】
前記複数の仮想ラインの少なくとも一部は、前記概略長方形である仮想面における対向する2辺と平行に延びている、請求項9に記載のVR空間表示システム。
【請求項11】
前記複数の仮想ラインの少なくとも一部は、前記3次元VR空間における奥行き方向に延びている、請求項6または7に記載のVR空間表示システム。
【請求項12】
前記複数の仮想ラインの少なくとも一部は、前記3次元VR空間における奥行き方向と直交する方向に延びている、請求項6または7に記載のVR空間表示システム。
【請求項13】
ディスプレイと、
2次元映像から生成された、前記2次元映像の深さ情報を含む3次元VR空間表示データに基づいて、前記2次元映像に対応する、所定の視点から見た3次元VR空間を前記ディスプレイに表示させる3次元VR空間表示制御部と、
コントローラと、
前記コントローラに対するユーザからの視点変更指示に応じて前記所定の視点を変更する視点制御部と、を備えるVR空間表示制御システム。
【請求項14】
2次元映像から生成された、前記2次元映像の深さ情報を含む3次元VR空間表示データに基づいて、前記2次元映像に対応する、所定の視点から見た3次元VR空間をディスプレイに表示させるステップと、
コントローラに対するユーザからの視点変更指示に応じて前記所定の視点を変更するステップと、を含むVR空間表示制御方法。
【請求項15】
コンピュータに、
2次元映像から生成された、前記2次元映像の深さ情報を含む3次元VR空間表示データに基づいて、前記2次元映像に対応する、所定の視点から見た3次元VR空間をディスプレイに表示させるステップと、
コントローラに対するユーザからの視点変更指示に応じて前記所定の視点を変更するステップと、を実行させるVR空間表示制御プログラム。
【請求項16】
所定の視点から見た3次元VR空間をディスプレイに表示させるステップを含み、
前記3次元VR空間は、立体感を出すための複数の仮想ラインを含む、VR空間表示制御方法。
【請求項17】
コンピュータに、所定の視点から見た3次元VR空間をディスプレイに表示させるステップを実行させ、
前記3次元VR空間は、立体感を出すための複数の仮想ラインを含む、VR空間表示制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VR空間表示システム、VR空間表示制御システム、VR空間表示制御方法、VR空間表示制御プログラム、VR空間表示制御方法およびVR空間表示制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の3次元VR(仮想現実)空間再生装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、新たなVR空間表示システム、VR空間表示制御システム、VR空間表示制御方法、VR空間表示制御プログラム、VR空間表示制御方法およびVR空間表示制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]
本発明の一態様によれば、
2次元映像から、前記2次元映像の深さ情報と、前記2次元映像に含まれるオブジェクトに対応するオブジェクト情報と、前記オブジェクトが大きさ調整を要するオブジェクトであるか否かを示す情報と、を含む3次元VR空間表示データを生成する3次元VR空間表示データ生成部と、
ディスプレイと、
前記3次元VR空間表示データに基づいて、前記2次元映像に対応する、所定の視点から見た3次元VR空間を前記ディスプレイに表示させる3次元VR空間表示制御部と、
コントローラと、
前記コントローラに対するユーザからの視点変更指示に応じて前記所定の視点を変更する視点制御部と、を備え、
前記3次元VR空間表示制御部は、前記視点変更指示に応じて、前記大きさ調整を要するオブジェクトに前記所定の視点が近づいた場合でも、前記大きさ調整を要するオブジェクトから前記所定の視点が離れた場合でも、前記大きさ調整を要するオブジェクトが許容大きさで表示されるよう、前記3次元VR空間を前記ディスプレイに表示させ、
前記3次元VR空間は、複数の仮想平面に囲まれた概略直方体形状であり、
前記複数の仮想平面の少なくとも一部は、立体感を出すための複数の仮想ラインを含み、
前記複数の仮想ラインの一部は、前記3次元VR空間における奥行き方向に延び、
前記複数の仮想ラインの一部は、前記3次元VR空間における奥行き方向と直交する方向に延びる、VR空間表示システムが提供される。
【0006】
[2]
本発明の一態様によれば、
2次元映像から、前記2次元映像の深さ情報を含む3次元VR空間表示データを生成する3次元VR空間表示データ生成部と、
ディスプレイと、
前記3次元VR空間表示データに基づいて、前記2次元映像に対応する、所定の視点から見た3次元VR空間を前記ディスプレイに表示させる3次元VR空間表示制御部と、
コントローラと、
前記コントローラに対するユーザからの視点変更指示に応じて前記所定の視点を変更する視点制御部と、を備える、VR空間表示システムが提供される。
【0007】
これによれば、3次元VR空間表示データ生成部が2次元映像から3次元VR空間表示データを生成するため、任意の2次元映像を3次元VR空間として表示できる。そして、コントローラを用いて視点を変更できる。これにより、3次元VR空間への没入感が高まる。
【0008】
[3]
[2]において、
前記3次元VR空間表示制御部は、大きさ調整を要するオブジェクトが許容大きさで表示されるよう、前記3次元VR空間を前記ディスプレイに表示させてもよい。
これにより、大きさ調整を要するオブジェクトが不自然な大きさで表示されるのを抑制できる。
【0009】
[4]
[3]において、
前記3次元VR空間表示データ生成部は、前記2次元映像に含まれるオブジェクトに対応するオブジェクト情報と、前記オブジェクトが大きさ調整を要するオブジェクトであるか否かを示す情報と、を含む前記3次元VR空間表示データを生成してもよい。
【0010】
[5]
[3]において、
前記3次元VR空間表示データ生成部は、どのオブジェクトが前記大きさ調整を要するオブジェクトであるかの指定をユーザから受け付けてもよい。
【0011】
[6]
[2]乃至[5]のいずれかにおいて、
前記3次元VR空間は、立体感を出すための複数の仮想ラインを含んでもよい。
【0012】
[7]
本発明の一態様によれば、
ディスプレイと、
所定の視点から見た3次元VR空間を前記ディスプレイに表示させる3次元VR空間表示制御部と、を備え、
前記3次元VR空間は、立体感を出すための複数の仮想ラインを含む、VR空間表示システムが提供される。
【0013】
このような構成によれば、表示される映像の各箇所と仮想ラインとの位置関係により遠近感が強調され、3次元表現が引き立つことで立体感が増し、臨場感が大きくなる。
【0014】
[8]
[6]または[7]において、
前記3次元VR空間は、1以上の仮想面に囲まれており、
前記複数の仮想ラインの少なくとも一部は、前記1以上の仮想面の少なくとも一部に含まれてもよい。
【0015】
[9]
[8]において、
前記3次元VR空間は、概略長方形である前記仮想面に囲まれた概略直方体形状であってもよい。
【0016】
[10]
[9]において、
前記複数の仮想ラインの少なくとも一部は、前記概略長方形である仮想面における対向する2辺と平行に延びていてもよい。
【0017】
[11]
[6]乃至[10]のいずれかにおいて、
前記複数の仮想ラインの少なくとも一部は、前記3次元VR空間における奥行き方向に延びていてもよい。
【0018】
[12]
[6]乃至[11]のいずれかにおいて、
前記複数の仮想ラインの少なくとも一部は、前記3次元VR空間における奥行き方向と直交する方向に延びていてもよい。
【0019】
[13]
本発明の一態様によれば、
ディスプレイと、
2次元映像から生成された、前記2次元映像の深さ情報を含む3次元VR空間表示データに基づいて、前記2次元映像に対応する、所定の視点から見た3次元VR空間を前記ディスプレイに表示させる3次元VR空間表示制御部と、
コントローラと、
前記コントローラに対するユーザからの視点変更指示に応じて前記所定の視点を変更する視点制御部と、を備えるVR空間表示制御システムが提供される。
【0020】
[14]
本発明の一態様によれば、
2次元映像から生成された、前記2次元映像の深さ情報を含む3次元VR空間表示データに基づいて、前記2次元映像に対応する、所定の視点から見た3次元VR空間をディスプレイに表示させるステップと、
コントローラに対するユーザからの視点変更指示に応じて前記所定の視点を変更するステップと、を含むVR空間表示制御方法が提供される。
【0021】
[15]
本発明の一態様によれば、
コンピュータに、
2次元映像から生成された、前記2次元映像の深さ情報を含む3次元VR空間表示データに基づいて、前記2次元映像に対応する、所定の視点から見た3次元VR空間をディスプレイに表示させるステップと、
コントローラに対するユーザからの視点変更指示に応じて前記所定の視点を変更するステップと、を実行させるVR空間表示制御プログラムが提供される。
【0022】
[16]
本発明の一態様によれば、
所定の視点から見た3次元VR空間をディスプレイに表示させるステップを含み、
前記3次元VR空間は、立体感を出すための複数の仮想ラインを含む、VR空間表示制御方法が提供される。
【0023】
[17]
本発明の一態様によれば、
コンピュータに、所定の視点から見た3次元VR空間をディスプレイに表示させるステップを実行させ、
前記3次元VR空間は、立体感を出すための複数の仮想ラインを含む、VR空間表示制御プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】一実施形態に係るVR空間表示システムの概略構成を示すブロック図。
【
図2】VR空間表示システムの処理動作の一例を示すフローチャート。
【
図3】2次元映像取得部11によって取得される2次元映像を模式的に示す図。
【
図4A】ディスプレイ21に表示される3次元VR空間の模式図。
【
図4B】ディスプレイ21に表示される3次元VR空間の模式図。
【
図4C】ディスプレイ21に表示される3次元VR空間の模式図。
【
図4D】ディスプレイ21に表示される3次元VR空間の模式図。
【
図5】2次元映像取得部11によって取得される別の2次元映像を模式的に示す図。
【
図6A】ディスプレイ21に表示される3次元VR空間の模式図。
【
図6B】ディスプレイ21に表示される3次元VR空間の模式図。
【
図6C】ディスプレイ21に表示される3次元VR空間の模式図。
【
図7】ディスプレイ21に表示される3次元VR空間の模式図。
【
図9】2次元映像に基づいて表示される3次元VR空間。
【
図10】2次元映像に基づいて表示される3次元VR空間。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0026】
図1は、一実施形態に係るVR空間表示システムの概略構成を示すブロック図である。VR空間表示システムは、VR空間表示データ生成システム1と、VR空間表示制御システム2とを備えており、これらがネットワークを介して通信可能に接続されている。
【0027】
VR空間表示データ生成システム1は、2次元映像取得部11と、3次元VR空間表示データ生成部12と、メモリ13と、通信部14とを有し得る。VR空間表示データ生成システム1は、例えば1台のサーバであってもよいし、2以上の装置から構成されてもよい。
【0028】
2次元映像取得部11は2次元映像を取得する。取得される2次元映像に制限はなく、メモリ13に蓄積されている2次元映像、インターネットを介して取得されるWeb上のコンテンツ、テレビ放送、DVD等などの記録メディアに記録された2次元映像、ネットワーク接続された外部機器から取得される2次元映像、ユーザから提供される2次元映像であってよい。また、2次元映像は、動画に限られず、静止画であってもよいものとする。
【0029】
3次元VR空間表示データ生成部12は、2次元映像取得部11によって取得された2次元映像から、3次元VR空間を表示するためのデータ(以下「3次元VR空間表示データ」という。)を生成する。
【0030】
3次元VR空間表示データ生成部12は、2次元映像に含まれるオブジェクトを抽出し、抽出したオブジェクトに対応するオブジェクト情報を含む3次元VR空間表示データを生成してもよい。
【0031】
また、3次元VR空間表示データ生成部12は、2次元映像に対して深度予測を行い、深さ(depth)情報を含む3次元VR空間表示データを生成してもよい。深さ情報は、オブジェクト毎であってもよいし、2次元映像の画素毎であってもよいし、複数画素毎であってもよい。深さ情報は、オブジェクト等が基準位置に対してどれだけ手前(あるいは奥)に位置するか、を示す値である。以下、深さ情報の基準値を0とし、深さ情報が大きいほど手前に位置することを意味するとする。
【0032】
3次元VR空間表示データ生成部12による処理は公知のものを適用できる。例えば、オブジェクトの抽出や深度予測には、機械学習(AI)に基づく既存の技術を利用してよい。また、3次元VR空間表示データ生成部12は、動的に(例えば、ユーザー等から2次元映像入力に対して自動的に)に3次元VR空間表示データを生成してもよいし、非動的(例えば、バッチ処理)に3次元VR空間表示データを生成してもよい。
【0033】
なお、2次元映像取得部11および3次元VR空間表示データ生成部12の機能の一部または全部は、ハードウェアで実装されてもよいし、ソフトウェアで実現されてもよい。後者の場合、VR空間表示データ生成システム1のプロセッサ(不図示)がメモリ13に記憶された所定のプログラムを実行することにより、そのような機能が実現される。
【0034】
メモリ13は、ROMやRAMなど任意の記憶装置から構成され、所定のプログラムや2次元映像などを記憶する。
【0035】
通信部14は、アンテナや通信用ICなどから構成され、VR空間表示制御システム2など他の装置とデータの送受信を行う。例えば、通信部14は、3次元VR空間表示データ生成部12により生成された3次元VR空間表示データを、VR空間表示制御システム2に送信する。
【0036】
一方、VR空間表示制御システム2は、主としてユーザが用いるものであり、例えばHMDを含むヘッドセットとして構成され得る。VR空間表示制御システム2は3次元VR空間を表示する。VR空間表示制御システム2は3次元VR空間をユーザに提供するともいえる。VR空間表示制御システム2は1以上の装置から構成され、ディスプレイ21、コントローラ22、メモリ23、3次元VR空間表示制御部24、視点制御部25、通信部26などを有し得る。
【0037】
ディスプレイ21は3次元VR空間を表示する。一例として、VR空間表示制御システム2がHMDを含む場合、ディスプレイ21は右眼用ディスプレイおよび左眼用ディスプレイを有している。これら右眼用ディスプレイおよび左眼用ディスプレイに互いに視差を有する映像を表示することにより、3次元VR空間がディスプレイ21に立体的に表示される。
【0038】
コントローラ22はユーザがVR空間表示制御システム2に所望の指示を行うためのインターフェースである。一例として、ユーザは、コントローラ22を介して3次元VR空間の表示を開始させるための指示(以下「表示開始指示」という。)や、3次元VR空間の表示を停止させるための指示(以下「表示停止指示」という。)を行うことができ、これらの指示は3次元VR空間表示制御部24に通知される。また、ユーザは、コントローラ22を介して視点(後述)を所望の位置に変更する指示(以下「視点変更指示」という。)を行うことができ、この指示は視点制御部25に通知される。
【0039】
メモリ23は、ROMやRAMなど任意の記憶装置から構成され、所定のプログラムや3次元VR空間を表示するために必要なデータを記憶する。
【0040】
3次元VR空間表示制御部24は、VR空間表示データ生成システム1から送信される3次元VR空間表示データに基づいて、所定の視点(例えば、3次元VR空間におけるユーザの所在地)から見た3次元VR空間をディスプレイ21に表示させる。この3次元VR空間はVR空間表示データ生成システム1の2次元映像取得部11が取得した2次元映像に対応している。表示される3次元VR空間の詳細は後述する。
【0041】
視点制御部25は、ユーザがコントローラ22を介して視点変更指示がなされた場合に、ディスプレイ21に表示される3次元VR空間の視点を変更する。例えば、視点を別の位置に移動する視点変更指示がなされた場合、視点制御部25は当該視点変更指示に応じた位置に新たな視点を設定する。これにより、3次元VR空間表示制御部24は新たに設定された視点から見た3次元VR空間をディスプレイ21に表示させる。
【0042】
なお、3次元VR空間表示制御部24および視点制御部25の機能の一部または全部は、ハードウェアで実装されてもよいし、ソフトウェアで実現されてもよい。後者の場合、VR空間表示制御システム2のプロセッサ(不図示)がメモリ23に記憶された所定のプログラムを実行することにより、そのような機能が実現される。
【0043】
通信部26は、アンテナや通信用ICなどから構成され、VR空間表示データ生成システム1など他の装置とデータの送受信を行う。例えば、通信部26は3次元VR空間表示データ生成システム1からの3次元VR空間表示データを受信する。
【0044】
図2は、VR空間表示システムの処理動作の一例を示すフローチャートである。
VR空間表示データ生成システム1は2次元映像を取得する(ステップS1)。そして、3次元VR空間表示データ生成部12は2次元映像から3次元VR空間表示データを生成する(ステップS2)。生成された3次元VR空間表示データは、通信部14によってVR空間表示制御システム2に送信される。送信のタイミングは任意であり、2次元映像の開始から終了までに対応する3次元VR空間表示データが生成された後に、まとめてVR空間表示制御システム2に送信されてもよい。あるいは、3次元VR空間表示データを生成しつつ、逐次、VR空間表示制御システム2に送信されてもよい。
【0045】
VR空間表示制御システム2の通信部26は、VR空間表示データ生成システム1からの3次元VR表示データを受信する。そして、ユーザからの表示開始指示に応じて、3次元VR空間表示制御部24は所定の視点から見た3次元VR表示データに基づく3次元VR空間をディスプレイ21に表示させる(ステップS3)。視点の初期位置は、例えば3次元VR空間内の予め定めた位置であってもよいし、前回3次元VR空間を表示した際の視点の位置であってもよい。
【0046】
ユーザから視点変更指示があった場合(ステップS4のYES)、視点制御部25は視点変更指示に対応した位置に視点を変更する(ステップS5)。これにより、変更後の視点から見た3次元VR空間がディスプレイ21に表示される。
【0047】
ユーザから表示終了指示があった場合、あるいは、2次元映像の終了に対応して3次元VR表示データが終了する場合(ステップS6のYES)、3次元VR空間の表示は終了する。そうでない場合(ステップS6のNO)、3次元VR空間の表示が継続する。
【0048】
図3は、2次元映像取得部11によって取得される2次元映像を模式的に示す図である。この2次元映像は、撮影地点を基準として、北側に十分離れた山31と、その南西方向にある球32を含んでいるとする。この場合、3次元VR空間表示データ生成部12が生成する3次元VR空間表示データは、オブジェクト情報として山31および球32を含んでいる。そして、山31の深さ情報は0であり、球32の深さ情報は0より大きい所定値である。
【0049】
図4Aは、
図2のステップS3でディスプレイ21に表示される3次元VR空間の模式図である。視点の初期位置が撮影地点であるとすると、
図3の矢印Aで表される視点(つまり南側)から見た3次元VR空間は
図4Aのように表示される。
【0050】
ここで、ユーザが視点を矢印B(
図3および
図4A)で表される位置に変更する視点変更指示を行ったとする。この視点は南西から北東を向いており、視点、球32および山31がこの順で一直線上に並ぶ位置であるとする。この場合、矢印Bで表される視点から見た3次元VR空間は
図4Bのようになる。
【0051】
また、ユーザが視点を矢印C(
図3、
図4Aおよび
図4B)で表される位置に変更する視点変更指示を行ったとする。この視点は南東から北西を向いており、視線の右側に山31があり、左側に球32がある。この場合、矢印Cから表される視点から見た3次元VR空間は
図4Cのようになる。
【0052】
また、
図4Bにおいて、ユーザが視点を前方に変更する視点変更指示を行ったとする。この場合、視点が球32に近づくため、3次元VR空間において
図4Dに示すように球32が大きく表示され、山31の一部が隠れる。
【0053】
図5は、2次元映像取得部11によって取得される別の2次元映像を模式的に示す図である。この2次元映像は、
図3の球32に代えて、人の顔33を含んでいるとする。この場合、3次元VR空間表示データ生成部12が生成する3次元VR空間表示データは、オブジェクト情報として山31および顔33を含んでいる。そして、山31の深さ情報は0であり、顔33の深さ情報は0より大きい所定値である。
【0054】
図6Aは、
図2のステップS3でディスプレイ21に表示される3次元VR空間の模式図である。視点の初期位置が撮影地点であるとすると、
図5の矢印Dで表される視点(つまり南側)から見た3次元VR空間は
図6Aのように表示される。
【0055】
ここで、
図6Aにおいて、ユーザが視点を前方に変更する視点変更指示を行ったとする。この場合、視点が顔33に近づくため、3次元VR空間において
図6Bに示すように顔33が大きく表示される。このような表示とするのも一案である。しかし、表示される顔33が大きすぎたり小さすぎたりすると、不自然である場合もある。そこで、
図6Cに示すように顔33を小さく表示させるのが望ましい。そのようにするための処理は、例えば以下のとおりである。
【0056】
VR空間表示データ生成システム1の3次元VR空間表示データ生成部12は、2次元映像に含まれるオブジェクトを抽出し、オブジェクト情報を含む3次元VR空間表示データを生成する。さらに、3次元VR空間表示データ生成部12は、オブジェクト情報に対応するオブジェクトが大きさ調整を要するオブジェクトであるか否かを判定し、判定結果を示す情報を3次元VR空間表示データに含める。
【0057】
具体例として、どのオブジェクトが大きさ調整を要するかを予めメモリ13に記憶させておくことで、3次元VR空間表示データ生成部12は抽出されたオブジェクトが大きさ調整を要するか否かを判定できる。典型例としては、顔、映像内の特定の建物、工芸品などが大きさ調整を要するオブジェクトとして挙げられる。また、どのオブジェクトが大きさ調整を要するかを示す情報が2次元映像に含まれていてもよい。あるいは、VR空間表示データ生成システム1の管理者が指定してもよい。
【0058】
そして、VR空間表示制御システム2の3次元VR空間表示制御部24は、大きさ調整を要するオブジェクトが所定の許容大きさで表示されるよう、3次元VR空間をディスプレイ21に表示させる。一例として、
図7に示すように、3次元VR空間表示データにおいて、視点の移動に伴ってオブジェクト(顔)の大きさが時系列で変動する場合でも、オブジェクトがリサイズされて基準サイズで表示される。許容大きさとは、例えば大きさの上限閾値および/または下限閾値によって定められる。また、大きさとは、オブジェクトの縦の長さでもよいし、横の長さでもよいし、その両方について上限閾値および/または下限閾値が設定されてもよい。具体的な上限閾値および/または下限閾値は、例えば実空間における顔の大きさに基づいて適宜定めればよい。また、許容大きさを一定値とし、オブジェクトと視点との3次元VR空間上の距離に関わらず、オブジェクトを一定の大きさで表示してもよい。
【0059】
許容大きさは、例えばオブジェクト毎にメモリ13に記憶されていてもよいし、VR空間表示データ生成システム1の管理者が指定してもよいし、3次元VR空間表示データ生成部12あるいは3次元VR空間表示制御部24が任意に設定してもよい。
【0060】
なお、どのオブジェクトが大きさ調整を要するかを、VR空間表示制御システム2のユーザが指定できてもよい。この場合、コントローラ2を介して大きさ調整を要するオブジェクトが指定され、この指定に応じて3次元VR空間表示制御部24が上述の表示制御を行う。この場合の許容大きさは、例えばユーザが指定できてもよい。
【0061】
以上により、視点の位置が大きさ調整を要するオブジェクトに近づいた場合でも、離れた場合でも、そのようなオブジェクトは許容大きさで表示され、自然な表示となる。
【0062】
このように、VR空間表示データ生成システム1が3次元VR空間表示データ生成部12を有するため、任意の2次元映像を3次元VR空間として表示できる。そして、コントローラ22を用いて任意の視点から3次元VR空間を表示させることができる。これにより、3次元VR空間への没入感が高まる。
【0063】
次に、3次元VR空間の表示例を説明する。
図8は、3次元VR空間を模式的に示す図である。3次元VR空間は1以上の仮想面に囲まれていてよい。本実施形態の3次元VR空間は6つの概略長方形の仮想平面に囲まれた概略直方体形状であるとする。仮想平面が概略正方形で、3次元VR空間が概略立方体(キューブ)形状であってもよい。
【0064】
6つの仮想平面のうちの1つが基準面41となる。2次元映像における深さ情報が0(基準値)である箇所(例えばオブジェクトないし画素)が基準面41上にあるように見えるよう表示される。そして、深さ情報が大きい箇所ほど、基準面41と対向する仮想平面(以下「対向面42」という。)側にあるように見えるよう立体表示される。なお、基準面41の全体に2次元映像に対応した映像が表示されてもよいし、一部分のみに表示されてもよい。3次元VR空間を表示する際の視点の初期位置は、例えば対向面42上であってもよく、対向面42の中心であってもよい。
【0065】
そして、本実施形態では、3次元VR空間は複数の仮想ラインから構成されるグリッドを含むのが望ましい。すなわち、3次元VR空間は立体感を出すための複数の仮想ラインを含んでいる。複数の仮想ラインは少なくとも1つの仮想平面(仮想面)に含まれてよい。また、複数の仮想ラインが等間隔に配置されてもよいし、そうでなくてもよい。
【0066】
例えば、少なくとも一部の仮想ライン51が3次元VR空間における奥行き方向に延びていてよい。そのような仮想ライン51の一端は深さ情報0に対応し、他端は深さ情報の最大値に対応し得る。具体的には、仮想ライン51は基準面41から対向面42へと延びている。言い換えると、仮想ライン51は基準面41および対向面42と直交する方向に延びている。具体例として、
図8において、基準面41の上辺41aと対向面42の上辺42aとの間の仮想平面において、当該仮想平面における対向する2辺43a,43bと平行に仮想ライン51は延びている。
【0067】
また、少なくとも一部の仮想ライン52が3次元VR空間における奥行き方向と直交する方向に延びていてよい。そのような仮想ライン52は深さ情報の特定の一定値に対応しており、「等深さ情報線」と呼ぶこともできる。具体的には、仮想ライン52は基準面41および対向面42と平行な方向に延びている。具体例として、
図8において、対向面42の上辺42aと対向面42の下辺42bとの間の仮想平面において、これらの2辺42a,42bと平行に仮想ライン53は延びている。
【0068】
また、仮想ラインは、必ずしも仮想平面上になくてもよく、ある仮想平面と、これと対向する仮想平面との間に3次元VR空間内を横切るように表示されてもよい。なお、3次元VR空間は仮想平面でなく仮想曲面に囲まれていてもよく、例えば球状であってもよい。そして、仮想ラインは直線でもよいが、曲線であってもよい。また、3次元VR空間は仮想面によって完全に閉じている必要はなく、一部は開放されていてもよく、そのような場合も含めて「囲まれている」と表現する。実際の表示例として、仮想面は黒で、仮想ラインは白で表示されてよい。
【0069】
図9および
図10に、2次元映像に基づいて表示される3次元VR空間を例示する。
図9は視点が初期位置にある状態である。
図10は視点が右に移動した状態である。
【0070】
仮想ラインがあることで、表示される映像の各箇所と仮想ラインとの位置関係により遠近感が強調され、3次元表現が引き立つことで立体感が増し、臨場感が大きくなる。
【0071】
本明細書で言及したプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に非一時的に記録して頒布されてもよいし、インターネットなどの通信回線(無線通信も含む)を介して頒布されてもよいし、任意の端末にインストールされた状態で頒布されてもよい。
【0072】
本明細書で説明した各発明は、上述した個々の実施形態には限定されるものではなく、適宜、種々の追加、変更、組み合わせおよび部分的削除が可能である。
【0073】
例えば、本明細書において1台の装置として説明されるもの(図面において1台の装置のように描かれているものを含む)を複数の装置によって実現してもよい。逆に、本明細書において複数の装置として説明されるもの(図面において複数の装置のように描かれているものを含む)を1台の装置によって実現してもよい。あるいは、ある装置(例えばサーバ)に含まれるとした手段や機能の一部または全部が、他の装置(例えばユーザ端末)に含まれるようにしてもよい。また、「システム」とは、1台の装置から構成されてもよいし、2以上の装置から構成されてもよい。
【0074】
また、矛盾が生じない範囲で、ある実施形態の一部を他の実施形態に組み込んでもよい。さらに、本明細書に記載された事項の全てが必須の要件というわけではない。特に、本明細書に記載され、特許請求の範囲に記載されていない事項は任意の付加的事項である。
【0075】
なお、本出願人は本明細書の「先行技術文献」欄の文献に記載された文献公知発明を知っているというにすぎず、本明細書に記載された各発明は必ずしも同文献公知発明における課題を解決することを目的とするものではない。特許請求の範囲に記載された発明が解決しようとする課題は本明細書全体を考慮して認定されるべきものである。例えば、本明細書において、特定の構成によって所定の効果を奏する場合(明示の記載がある場合に加え、構成から読み取れる場合も含む)、当該所定の効果の裏返しとなる課題が解決されるということもできる。ただし、必ずしもそのような特定の構成を必須の要件とする趣旨ではない。
【符号の説明】
【0076】
1 VR空間表示データ生成システム
11 2次元映像取得部
12 3次元VR空間表示データ生成部
13 メモリ
14 通信部
2 VR空間表示制御システム
21 ディスプレイ
22 コントローラ
23 メモリ
24 3次元VR空間表示制御部
25 視点制御部
26 通信部
31 山
32 球
33 顔
41 基準面
42 対向面
51,52 仮想ライン