(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102958
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】検査管理システム、検査管理装置、判定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H05K 13/08 20060101AFI20240725BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20240725BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
H05K13/08 D
G01N21/956 B
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007056
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 弘之
(72)【発明者】
【氏名】中島 克起
(72)【発明者】
【氏名】田中 真由子
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 翔
【テーマコード(参考)】
2G051
3C100
5E353
【Fターム(参考)】
2G051AA61
2G051AA65
2G051AB14
3C100AA70
3C100BB27
3C100BB34
3C100CC02
3C100EE07
5E353AA02
5E353CC01
5E353CC04
5E353CC13
5E353CC14
5E353EE07
5E353EE41
5E353EE62
5E353EE63
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5E353EE90
5E353KK01
5E353KK13
5E353KK30
5E353LL03
5E353LL04
5E353MM04
5E353MM08
5E353QQ01
(57)【要約】
【課題】部品実装基板の生産ラインにおいて、中間検査の検査結果に関わらず、後の工程に中間品を流すことの当否を適切に判定することが可能な技術を提供する。
【解決手段】複数の製造工程を有し、前記複数の工程に対応する複数の製造装置及び検査装置を有する部品実装基板の生産ラインにおいて用いられる検査管理システムであって、一の中間製造工程が実施された後の基板に対する検査である中間検査において取得される第1検査時実績値と、リフロー工程の後に行われる一以上の検査において取得される第2検査時実績値と、を少なくとも用いて決定される判定基準に基づいて、前記中間検査が実施された前記基板に対して該検査の結果に関わらずその後の製造工程を実施するか否かを判定する判定手段を有する、ことを特徴とする、検査管理装置。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の製造工程を有し、前記複数の工程に対応する複数の製造装置及び検査装置を有する部品実装基板の生産ラインにおいて用いられる検査管理システムであって、
一の中間製造工程が実施された後の基板に対する検査である中間検査において取得される第1検査時実績値と、リフロー工程の後に行われる一以上の検査において取得される第2検査時実績値と、を少なくとも用いて決定される判定基準に基づいて、前記中間検査が実施された前記基板に対して該検査の結果に関わらずその後の製造工程を実施するか否かを判定する判定手段を有する、
ことを特徴とする、検査管理システム。
【請求項2】
前記中間検査は、はんだ印刷後検査またはマウント後検査である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の検査管理システム。
【請求項3】
前記判定基準は、同一の前記基板に対する前記第1実績値及び前記第2実績値に加え、それ以外の中間工程検査の実績値を用いて決定される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の検査管理システム。
【請求項4】
前記第1検査時実績値には複数の検査箇所又は複数の部品の実装状態を対象として得られる指標を含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の検査管理システム。
【請求項5】
前記判定の結果とともに、該判定の根拠となった情報を表示する表示手段をさらに有する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の検査管理システム。
【請求項6】
前記判定の結果が「否」であった場合に、前記基板のリペアを補助するための情報を表示する表示手段をさらに有する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の検査管理システム。
【請求項7】
前記中間検査の後に前記基板にリペアが行われた場合に、少なくとも該基板にリペアを行ったことを含むリペア情報の入力を受け付ける入力手段をさらに有しており、
前記判定基準は、前記リペア情報も用いて決定される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の検査管理システム。
【請求項8】
複数の製造工程を有し、前記複数の工程に対応する複数の製造装置及び検査装置を有する部品実装基板の生産ラインにおいて用いられる検査管理装置であって、
一の中間製造工程が実施された後の基板に対する検査である中間検査において取得される第1検査時実績値と、リフロー工程の後に行われる一以上の検査において取得される第2検査時実績値と、を少なくとも用いて決定される判定基準に基づいて、前記中間検査が実施された前記基板に対して該検査の結果に関わらずその後の製造工程を実施するか否かを判定する処理部を有する、
ことを特徴とする、検査管理装置。
【請求項9】
複数の製造工程を有し、前記複数の工程に対応する複数の製造装置及び検査装置を有する部品実装基板の生産ラインにおいて用いられるコンピュータに実行させる判定方法であって、
一の中間製造工程が実施された後の基板に対する検査である中間検査において取得される第1検査時実績値と、リフロー工程の後に行われる一以上の検査において取得される第2検査時実績値と、を少なくとも用いて決定される判定基準に基づいて、前記中間検査が
実施された前記基板に対して該検査の結果に関わらずその後の製造工程を実施するか否かを判定する、
ことを特徴とする、判定方法。
【請求項10】
コンピュータに請求項9に記載の判定方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装基板の生産ラインにおいて用いられる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の生産ラインでは、ラインの中間工程や最終工程に製品の検査装置を配置し、不良の検出や不良品の仕分けなどが行われている。例えば、部品実装基板の生産ラインにおいては一般的に、プリント配線基板にクリームはんだを印刷する工程(印刷工程)、クリームはんだが印刷された基板に部品を実装する工程(マウント工程)、部品実装後の基板を加熱して部品を基板にはんだ付けするする工程(リフロー工程)が含まれ、各工程後に検査を行うことが公知となっている(例えば、特許文献1~3など)。
【0003】
このような検査に当たっては、良・不良判定のための検査基準を設定し、検査装置が参照可能な状態で保持しておく必要があるが、当該検査基準が適切なもので無ければ、実際には良品であるものを検査において不良品としてしまう見過ぎや、実際には不良品であるものを良品としてしまう見逃しが発生する。
【0004】
ところで、上記の部品実装基板の生産ラインの例の場合、リフロー工程の後に実施される検査は、製品としての最終的な良・不良判定を行うための検査(以下、最終検査ともいう)である一方、それ以前の各中間工程で中間品(製造過程の途中にある未完成の製品)に対して実施される検査(以下、中間検査ともいう)は、工程管理の一環として行われるのが一般的である。即ち、各中間工程の定める品質レベルを満足しない中間品(不良中間品)を発見し、そのような不良中間品が後工程へ流れるのを防ぐことでライン全体の生産効率の改善を図ったり、不良中間品が発見された工程で異常が発生していないかを確認したり、といったことが行われている。
【0005】
このような目的を達成するためには、ユーザーが求める任意の中間品の品質レベルに合わせて各工程の検査基準(中間品の合否を判定するための閾値等)を設定すれば足りる。このため、中間検査においては、検査基準の明確な決定方法が存在せず、ユーザーの好みに応じて緩く設定されていたり、あるいは逆に厳しく設定されていたりするのが、実情である。
【0006】
即ち、中間検査の検査基準の内容によっては、そのまま後工程に流しても最終検査で良品となるような中間品であっても、中間検査において「不良」の判定がなされる場合がある。そして、このような中間品を、すべて不良中間品としてラインから除外してしまったり、そのために逐一ラインの流れを止めたりしていたのでは無駄が大きく、生産効率が悪化してしまう。
【0007】
このため、中間検査において不良判定された「不良中間品」が発生した場合であっても、オペレータが最終検査では良品判定されると判断したものについては、不良と判定された中間品をそのまま後工程に流すといったことが少なからず行われている。しかしながら、オペレータの判断が常に適切であるという保証はなく、このような運用を行う場合には品質のバラつきや生産性の低下が発生するという問題が生じる。具体的には、印刷後に不良を検出しているにも関わらず、検出された不良中間品がラインに戻されて部品を実装したうえでリフロー後の検査で改めて不良品とされるような場合である。
【0008】
このような事態を防止するには、中間検査の検査基準と最終検査の検査基準の整合性が取れていることが重要であり、特許文献1や特許文献2では中間検査において適切に不良
品を検出することを支援するための方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-135425号公報
【特許文献2】特開2022-111659号公報
【特許文献3】特開2021-002573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、工程管理の一環として敢えて厳しい中間検査の検査基準を設けて生産ラインの経時的変化を適時に検出するといった運用が行われることもあり、このような場合には中間検査の検査基準を最終検査に併せて最適化するというアプローチを行うことはできない。また、最終検査と中間検査の整合性を取る場合であっても、複数の検査箇所が影響しあって最終検査で不良になる場合もあり、完全な中間検査の検査基準を設定することは困難である。このため、中間品を後工程に流すことの当否について、中間検査における個々の検査対象に対する判定とは別に、中間品全体に対して適切に判定できることが望ましい。
【0011】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、部品実装基板の生産ラインにおいて、中間検査の検査結果に関わらず、後の工程に中間品を流すことの当否を適切に判定することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。即ち、
複数の製造工程を有し、前記複数の工程に対応する複数の製造装置及び検査装置を有する部品実装基板の生産ラインにおいて用いられる検査管理システムであって、
一の中間製造工程が実施された後の基板に対する検査である中間検査において取得される第1検査時実績値と、リフロー工程の後に行われる一以上の検査において取得される第2検査時実績値と、を少なくとも用いて決定される判定基準に基づいて、前記中間検査が実施された前記基板に対して該検査の結果に関わらずその後の製造工程を実施するか否かを判定する判定手段を有する、
ことを特徴とする、検査管理システム、である。
【0013】
なお、本明細書において、「中間製造工程」とは最終の製造工程以外の製造工程を意味し、最先の製造工程も含む。また「中間検査」は、最終製品未満の中間品に対する検査であり、最先に行われる検査も含む。また、「検査」には、装置による自動検査に限らずオペレータによる目視検査も含む。また、本明細書において単に「基板」という場合には、製造工程の全ての段階における基板を指し、いわゆる生基板も部品実装後の最終製品としての基板も含む意味に用いる。また、「該検査の結果」とは、良否判定に係る所定の検査基準を満たしているか否かの判定結果のことを指し、検査の際に取得したデータ全般の意味とは区別される。なお、以下では、検査基準を満たしているか否かの判定のことをOK/NG判定、「その後の製造工程を実施するか否か」の判定のことをGO/NO判定、ともいう。
【0014】
このような構成の検査システムによると、中間検査の結果、即ち当該検査が行われる製造工程での所定の良品判定基準を満たしているか否か、とは別に、対象の基板を後の工程に流して良いかどうかを決定することができる。
【0015】
また、前記中間検査は、はんだ印刷後検査、またはマウント後検査であり、前記リフロ
ー工程の後に行われる一以上の検査は、リフロー後のあらゆる検査であり、AOIやAXIなど複数の検査装置による検査であってもよいし、目視検査を含んでいてもよい。このような構成によると、ラインの初期の段階でその後の工程に対象基板を流して良いかどうかを判定することができるため、最終的に不良品となる基板がある場合には早期に摘出できるため、損失の発生を最小限に抑えることができる。
【0016】
また前記判定基準は、同一の前記基板に対する前記第1実績値及び前記第2実績値に加え、それ以外の中間工程検査の実績値を用いて決定されるものであってもよい。これによれば、中間検査時の基板の状態と、中間検査の前の製造工程を経る前の検査時の状態、またはさらに後の製造工程を経た後の検査時の状態とに基づいて、後の製造工程で不良となる基板についての先の製造工程の際の状態に係るデータを蓄積することができ、中間検査時においてGO/NO判定を行うための適切な判定基準を設定することができる。
【0017】
また、前記第1検査時実績値には複数の検査箇所又は複数の部品の実装状態を対象として得られる指標を含むようにしてもよい。例えば、基板上において隣接する部品との距離が近い場合には複数の部品(或いはこれに対応するパッド、ランド領域)を1つの対象として特徴量を抽出するようにしておいてもよい。また、部品が一つの場合であっても当該部品に対応するパッドが複数あるような場合についても同様である。このような構成によれば、他の部品やパッド領域におけるはんだの影響によってリフロー後に不良となってしまうような場合であっても、影響が及ぶ範囲を一単位として判定を行うことで、適切にGO/NO判定を行うことができる。
【0018】
また、前記検査管理システムは、前記判定の結果とともに、該判定の根拠となった情報を表示する表示手段をさらに有する、ものであってもよい。このような構成であれば、ユーザの納得感を高めることができ、NOの判定結果であった場合に、オペレータが独自の判断で後の工程に基板を流してしまうような事態を防止することができる。中間検査の結果がNGであるにもかかわらずGOの判定結果となった場合についても同様である。
【0019】
また、前記検査管理システムは、前記判定の結果が「NO」であった場合に、前記基板のリペアを補助するための情報を表示する表示手段をさらに有していてもよい。ここで、「リペアを補助するための情報」は、基板における該当箇所を示す情報、異常の種類、リペアの可否に関する情報などを含む。このような構成によれば、オペレータは情報を参照したうえでリペアを効率的に実施することができ、作業効率を向上させることができる。
【0020】
また、前記検査管理システムは、前記中間検査の後に前記基板にリペアが行われた場合に、少なくとも該基板にリペアを行ったことを含むリペア情報の入力を受け付ける入力手段をさらに有しており、前記判定基準は、前記リペア情報も用いて決定されるのであってもよい。リペアが行われたうえでリフロー後に良品となった基板については、先の製造工程での検査時の基板の状態との因果関係が途絶えてしまっているため、このような基板の第1検査時実績値とリフロー後検査時の状態に係る特徴量をそのまま用いると、GO/NO判定の判定基準を適切に決定することができなくなってしまう。この点、リペアが行われた基板についてそのことを示すリペア情報を用いることで、リペアが行われた基板に係るデータについては判定基準を算出するためのデータ集合から除外して適正なGO/NO判定基準を算出することができる。
【0021】
また、本発明は次のような検査管理装置としても捉えることができる。即ち、
複数の製造工程を有し、前記複数の工程に対応する複数の製造装置及び検査装置を有する部品実装基板の生産ラインにおいて用いられる検査管理装置であって、
一の中間製造工程が実施された後の基板に対する検査である中間検査において取得される第1検査時実績値と、リフロー工程の後に行われる一以上の検査において取得される第
2検査時実績値と、を少なくとも用いて決定される判定基準に基づいて、前記中間検査が実施された前記基板に対して該検査の結果に関わらずその後の製造工程を実施するか否かを判定する処理部を有する、
ことを特徴とする、検査管理装置、である。
【0022】
また、本発明は、次のような判定方法としても捉えることができる。即ち、
複数の製造工程を有し、前記複数の工程に対応する複数の製造装置及び検査装置を有する部品実装基板の生産ラインにおいて用いられるコンピュータに実行させる判定方法であって、
一の中間製造工程が実施された後の基板に対する検査である中間検査において取得される第1検査時実績値と、リフロー工程の後に行われる一以上の検査において取得される第2検査時実績値と、を少なくとも用いて決定される判定基準に基づいて、前記中間検査が実施された前記基板に対して該検査の結果に関わらずその後の製造工程を実施するか否かを判定する、判定方法、である。
【0023】
また、本発明は、上記の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、そのようなプログラムを非一時的に記録したコンピュータ読取可能な記録媒体として捉えることもできる。また、上記構成および処理の各々は技術的な矛盾が生じない限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、部品実装基板の生産ラインにおいて、中間検査の検査結果に関わらず、後の工程に中間品を流すことの当否を適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、適用例に係る検査管理システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、適用例に係る検査管理装置の機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る検査管理システムの概略構成図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る検査管理装置の機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る所定の判定単位の一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係る判定基準算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7Aは、実施形態1に係る判定基準算出処理の説明に係る第1の表である。
図7Bは、実施形態1に係る判定基準算出処理の説明に係る第2の表である。
図7Cは、実施形態1に係る判定基準算出処理の説明に係る第3の表である。
【
図8】
図8は、実施形態1に係る判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施形態1に係るユーザー確認画面の例を示す第1の図である。
【
図10】
図10は、実施形態1に係るユーザー確認画面の例を示す第2の図である。
【
図11】
図11は、実施形態1に係るユーザー確認画面の例を示す第3の図である。
【
図12】
図12は、実施形態1に係るユーザー確認画面の例を示す第4の図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について説明する。ただし、以下の各例に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0027】
<適用例>
本発明は例えば、
図1に示すような検査管理システム9として適用することができる。
図1は本適用例に係る、プリント基板の部品実装ラインにおける検査管理システム9の概略図である。
図1に示すように、本適用例に係る実装ラインには、上流側から順に、はんだ印刷装置A1、はんだ印刷後検査装置B1、マウンタA2、マウント後検査装置B2、リフロー炉A3、リフロー後検査装置B3が設けられる。
【0028】
はんだ印刷装置A1は、プリント基板上の電極部にはんだを印刷する装置であり、マウンタA2は、基板に実装すべき電子部品をはんだペーストの上に載置するための装置であり、リフロー炉A3は、電子部品を基板上にはんだ接合するための加熱装置である。
【0029】
また、各検査装置B1、B2、B3は各工程の出口で基板の状態を検査し、不良あるいは不良のおそれがあるか否かを判定する。以下では、検査装置B1による検査を印刷後検査、検査装置B2による検査をマウント後検査、検査装置B3による検査をリフロー後検査、という。
【0030】
上述した各製造装置(A1、A2、A3)および各検査装置(B1、B2、B3)は、LAN(Local Area Network)などのネットワークを介して検査管理装置90に接続されている。検査管理装置90は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ、ROMやRAMなどの主記憶装置、補助記憶装置(ストレージデバイスなど)、入力装置(キーボード、マウス、コントローラ、タッチパネルなど)、出力装置(ディスプレイ、プリンタ、スピーカなど)などを具備する汎用的なコンピュータシステムにより構成される。
【0031】
検査管理装置90は後述する各機能部の機能により、工程の中間にある製造工程を終えた基板に対して、当該基板を後の製造工程に流して良いか否かのGO/NO判定を(検査装置によるOK/NG判定とは別に)行う。
図2は、本適用例に係る検査管理装置90の機能構成の概略を示すブロック図である。
図2が示すように、検査管理装置90は、制御部91、出力部92(例えば液晶ディスプレイ)、通信部93、記憶部94を有しており、制御部91はさらに機能モジュールとして、第1検査実績値取得部911、第2検査実績値取得部912、判定基準算出部913、GO/NO判定部914の各機能部を備えている。各機能部は、例えば、記憶部94に格納されたプログラムをCPUが読み込み実行することにより実現してもよい。
【0032】
第1検査実績値取得部911は、一の中間検査(例えば、はんだ印刷後検査装置B1による検査)時に検査装置が処理した検査データ(第1検査時実績値)を、通信部93を介して取得する。ここで取得する第1検査時実績値は、例えば、パッド単位でのはんだ塗布状態(はんだの位置・量など)の適否(OK/NG)、複数のパッドを含む部品単位でのはんだ塗布状態(パッド間でのはんだ量のバラつきなど)の適否、OK/NG判定に用いる特徴量、などとすることができる。また、特徴量抽出処理の画像処理が行われた画像データそのものを含んでいてもよい。
【0033】
第2検査実績値取得部912は、第1検査実績値取得部911が取得する中間検査よりも後の検査(例えばリフロー後検査装置B3による検査)時のデータ(第2検査時実績値)を、通信部93などを介して取得する。ここで取得する第2検査時実績値は、例えば、各部品の実装状態(例えば、部品品番違いの有無、部品の位置・向き、はんだ濡れの状態など)の適否、OK/NG判定に用いる特徴量、特徴量抽出処理の画像処理が行われた画像データ、などとすることができる。
【0034】
判定基準算出部913は、第1検査時実績値と第2検査時実績値とを用いて、後述のG
O/NO判定部914が行う判定のための判定基準を算出する。具体的には、例えば、ある基板に対する第1検査実績値と第2件時実績値とを紐づけた、検査実績値セットを多数用いて、これらのデータセットから機械学習の手法により判定基準を算出する。例えば、最終製造工程を終えた後に実不良となってしまう基板を第1検査時実績値から推定するのに適した特徴量を求め、シミュレーションを行って当該特徴量について最も見逃し・見過ぎが少なくなるような閾値を決定するようにしてもよい。
【0035】
GO/NO判定部914は、判定基準算出部913が算出した判定基準に基づいて、中間検査が行われた基板に対して、第1検査時実績値を用いたGO/NO判定を行う。なお、GO/NO判定の結果は出力部92を介してオペレータが認識可能な情報として出力するとともに、記憶部94に格納されるようにしてもよい。
【0036】
以上のような検査管理システム9によれば、中間検査のOK/NG判定結果とは別に、対象の基板を後の工程に流して良いかどうかを判定する基準を算出し、当該判定基準に基づくGO/NO判定を行うことで、基板を実際に後工程に流すか否かを適切に決定することが可能になる。
【0037】
<実施形態1>
続けて、この発明を実施するための形態の一例を、さらに詳しく説明する。
【0038】
(システム構成)
図3は、本実施形態に係る検査管理システム100である部品実装ラインの構成例を模式的に示す図である。部品実装ラインは、主として、基板に対するはんだ印刷、部品のマウント、リフロー(はんだの溶着)の三つの工程から構成される。
【0039】
図3に示すように、部品実装ラインでは、製造装置として、上流側から順に、はんだ印刷装置X1、マウンタX2、リフロー炉X3が設けられる。はんだ印刷装置X1は、スクリーン印刷によってプリント基板上の電極部(パッド)にペースト状のはんだを印刷する装置である。マウンタX2は、基板に実装すべき電子部品をピックアップし、該当箇所のはんだペーストの上に部品を載置するための装置であり、チップマウンタとも呼ばれる。リフロー炉X3は、はんだペーストを加熱溶融した後、冷却を行い、電子部品を基板上にはんだ接合するための加熱装置である。基板に実装する電子部品の数や種類が多い場合には、部品実装ラインに複数台のマウンタX2が設けられることもある。
【0040】
また、部品実装ラインには、はんだ印刷、部品のマウント、リフローの各工程の出口で基板の状態を検査し、不良あるいは不良のおそれがあるか否かを判定する検査装置が設置されている。各検査装置は、検査結果やその分析結果に基づき各製造装置の動作にフィードバックする機能(例えば、実装プログラムの変更など)を有していてもよい。
【0041】
はんだ印刷後検査装置Y1は、はんだ印刷装置X1から搬出された基板に対し、はんだペーストの印刷状態を検査するための装置である。はんだ印刷後検査装置Y1では、基板上に印刷されたはんだペーストを2次元ないし3次元的に計測し、その計測結果から各種の検査項目について適正値か否かの判定を行う。検査項目としては、例えば、はんだの体積・面積・高さ・位置ずれ・形状などがある。はんだペーストの2次元計測には、イメージセンサ(カメラ)などを用いることができ、3次元計測には、レーザ変位計や、位相シフト法、空間コード化法、光切断法などを利用することができる。
【0042】
マウント後検査装置Y2は、マウンタX2から搬出された基板に対し、電子部品の配置状態を検査するための装置である。マウント後検査装置Y2では、はんだペーストの上に載置された部品(部品本体、電極など部品の一部でもよい)を2次元ないし3次元的に計
測し、その計測結果から各種の検査項目について適正値か否かの判定を行う。検査項目としては、例えば、部品の位置ずれ、角度(回転)ずれ、欠品(部品が配置されていないこと)、部品違い(異なる部品が配置されていること)、極性違い(部品側と基板側の電極の極性が異なること)、表裏反転(部品が裏向きに配置されていること)、部品高さなどがある。はんだ印刷検査と同様、電子部品の2次元計測には、イメージセンサ(カメラ)などを用いることができ、3次元計測には、レーザ変位計や、位相シフト法、空間コード化法、光切断法などを利用することができる。
【0043】
外観検査装置Y3は、リフロー炉X3から搬出された基板に対し、はんだ付けの品質を検査するための装置である。外観検査装置Y3では、リフロー後のはんだ部分を2次元ないし3次元的に計測し、その計測結果から各種の検査項目について正常値(許容範囲)か否かの判定を行う。検査項目としては、マウント後検査と同じ項目に加え、はんだフィレット形状の良否なども含まれる。はんだの形状計測には、上述したレーザ変位計、位相シフト法、空間コード化法、光切断法などの他、いわゆるカラーハイライト方式(R、G、Bの照明を異なる入射角ではんだ面に当て、各色の反射光を天頂カメラで撮影することで、はんだの3次元形状を2次元の色相情報として検出する方法)を用いることができる。
【0044】
X線検査装置Y4は、X線像を用いて基板のはんだ付けの状態を検査するための装置である。例えば、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)などのパッケージ部品や多層基板の場合には、はんだ接合部が部品や基板の下に隠れているため、外観検査装置Y3では(つまり外観画像では)はんだの状態を検査することができない。X線検査装置Y4は、このような外観検査の弱点を補完するための装置である。X線検査装置Y4の検査項目としては、例えば、部品の位置ずれ、はんだ高さ、はんだ体積、はんだボール径、バックフィレットの長さ、はんだ接合の良否などがある。なお、X線像としては、X線透過画像を用いてもよいし、CT(Computed Tomography)画像を用いてもよい。なお、以下の説明においては外観検査装置Y3及びX線検査装置Y4をまとめて、リフロー後検査装置ということもある。
【0045】
また、本実施形態に係る各検査装置Y1、Y2、Y3、Y4は、それぞれ検査対象基板を目視確認するための表示装置を備えていてもよく、当該目視用の表示装置は各検査装置とは別体の端末として設けられていてもよい。
【0046】
本実施形態においては、はんだ印刷装置X1及びマウンタX2によって処理された基板が中間品であり、リフロー炉X3から搬出された基板が完成品となる。また、はんだ印刷後検査装置Y1及びマウント後検査装置Y2によって行われる検査が中間検査であり、外観検査装置Y3及びX線検査装置Y4による検査が最終検査である。なお、はんだ印刷後検査装置Y1によって行われる検査を印刷後検査、マウント後検査装置Y2によって行われる検査をマウント後検査、外観検査装置Y3及びX線検査装置Y4によって行われる検査をリフロー後検査、ということもある。
【0047】
(検査管理装置)
上述した各製造装置(X1、X2、X3)および各検査装置(Y1、Y2、Y3、Y4)は、通信手段を介して検査管理装置1に接続されている。検査管理装置1は、各製造装置(X1、X2、X3)および各検査装置(Y1、Y2、Y3、Y4)の管理や制御を担うシステムであり、図示しないが、プロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置、入力装置、出力装置などを具備する汎用的なコンピュータシステムにより構成される。後述する検査管理装置1の機能は、補助記憶装置に格納されたプログラムをプロセッサが読み込み実行することにより実現される。
【0048】
なお、検査管理装置1は、1台のコンピュータにより構成してもよいし、複数のコンピ
ュータにより構成してもよい。あるいは、製造装置(X1、X2、X3)や検査装置(Y1、Y2、Y3、Y4)のいずれかの装置が内蔵するコンピュータに、検査管理装置1の機能の全部又は一部を実装することも可能である。あるいは、検査管理装置1の機能の一部を広域ネットワーク上のサーバ(クラウドサーバなど)により実現してもよい。
【0049】
図4に、本実施形態の検査管理装置1についての機能ブロック図を示す。
図4が示すように、検査管理装置1は、制御部10、出力部20、通信部30、記憶部40、入力部50を有している。さらに、制御部10は機能モジュールとして、印刷後検査情報取得部101、マウント後検査情報取得部102、リフロー後検査情報取得部103、リペア情報取得部104、判定基準算出部105、GO/NO判定部106、根拠情報生成部107、リペア補助情報生成部108、の各機能部を備えている。
【0050】
出力部20は、後述する検査内容設定支援画面などの各種情報を出力する手段であり、例えば液晶ディスプレイなどの表示装置を含んで構成される。また、出力部20が表示装置である場合には、出力部20にはユーザーインターフェース画面が出力されてもよい。
【0051】
通信部30は、各製造装置(X1、X2、X3)および各検査装置(Y1、Y2、Y3、Y4)との間で有線又は無線の方式により通信を行い、データの送受信を実行する。通信部30は、例えば、通信IC(Integrated Circuits)などの集積回路を含んで構成される。
【0052】
記憶部40は、主記憶装置、補助記憶装置などを含み、GO/NO判定プログラムの他、後述する印刷後検査情報、マウント後検査情報、リフロー後検査情報、リペア情報、GO/NO判定基準、などの各種の情報が格納される。また、例えばサーバ等の外部記憶装置を含む構成であってもよい。
【0053】
入力部50は、検査管理装置1への各種情報の入力を受け付ける手段であり、例えばキーボード、マウス、コントローラ、タッチパネルなどの入力装置を含んで構成される。
【0054】
続けて、制御部10が備える各機能ブロックについて説明する。印刷後検査情報取得部101は、中間検査時の実績値を取得する第1の機能部であり、はんだ印刷後検査装置Y1による検査時の検査データを取得する。また、マウント後検査情報取得部102は、中間検査時の実績値を取得する第2の機能部であり、マウント後検査装置Y2による検査時の検査データを取得する。
【0055】
また、リフロー後検査情報取得部103は、最終検査時の検査実績値(第2実績値)を取得する機能部であり、外観検査装置Y3、X線検査装置Y4による最終検査時の検査データを取得する。なお、X線検査装置Y4の自動検査の後に目視検査が行われた場合には、該目視検査時の情報もここで取得するデータに含む。
【0056】
リペア情報取得部104は、製造工程のいずれかの段階で基板にリペアが行われた場合には、少なくともそのリペアが実施された基板を識別する情報とこれに紐づけられたリペア実施の事実の情報を含む「リペア情報」を取得する。
【0057】
なお、上述の各データは通信部30を介して各検査装置などから取得するのであってもよいし、入力部50を介して取得するのであってもよい。例えば、リペア情報については、リペアを行ったオペレータが基板を識別するための情報とリペアの事実、さらにはリペア箇所や内容の情報、などを手入力することで、取得できるようになっていてもよい。また、各取得部が取得したデータは記憶部40に記憶される。
【0058】
判定基準算出部105は、GO/NO判定部106が行うGO/NO判定のための判定基準を算出する。判定基準の算出については後に詳述する。また、GO/NO判定部106は、判定基準算出部105が算出した判定基準に基づいて、印刷後検査が行われた基板に対して、当該印刷後検査時のデータを用いたGO/NO判定を行う。具体的には、基板上における所定のGO/NO判定単位(例えば、基板上の1部品、1つの異常原因の対象となり得る一定の領域など)ごとにGO/NO判定基準を設け、それぞれの判定単位に対してGO/NO判定を実施する。なお、GO/NO判定の結果は出力部20を介して出力される。
【0059】
根拠情報生成部107は、GO/NO判定部106の判定結果の根拠をユーザーが知覚可能に示す根拠情報を生成する。また、リペア補助情報生成部108は、NO判定がなされた基板に対して、リペアを補助するための情報を生成する。なおリペアを補助するための情報には、リペアを実施しないことを推奨する情報(例えば、リペアが不可能である旨や、リペア実施が相対的にコスト高になることを示す情報など)を含んでいてもよい。
【0060】
根拠情報生成部107、リペア補助情報生成部108が生成した情報は、出力部20を介してユーザーが知覚可能に出力される。具体的には、例えば液晶ディスプレイなどの表示装置にユーザー確認画面として示すようにしてもよい。なお、ユーザー確認画面については後述する。
【0061】
(判定基準について)
次に、判定基準算出部105によって算出される判定基準及びその算出方法の一例について説明する。本実施形態に係る判定基準は、上述の通り基板上のGO/NO判定単位ごとに算出されるが、ここではその一例として1部品を一つのGO/NO判定単位とした場合について説明する。
図5は、基板上においてある1部品が実装される領域のパッドの模式的な状態を示す説明図である。
図5に示す領域では、対象となる部品の電極とはんだ付けを行うための8つのパッドが設けられている。そして、
図5においては、印刷装置X1によってはんだが塗布された状態の各パッド部P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7、P8が示されている。
【0062】
ここで、はんだ印刷後検査装置Y1による検査では、パッド部ごとに所定の検査基準によるOK/NG判定が行われ、検査基準を満たさないパッド部があればパッド単位でNGの結果が出る。即ち、検査装置によるOK/NG判定では、一つでも検査基準を満たさないパッドがあればNGという結果が出ることになる。ただし、1部品のさらに1電極に対応する一つのパッド部のはんだ印刷状態が検査基準を満たさずにNG判定となったとしても、その基板をそのまま後工程に流した場合に必ず完成品の段階で不良になるとは限らない。
【0063】
このため、検査基準を緩く設定してしまったり、NG判定の結果を顧みずにオペレータの判断でNG判定された基板をそのまま後工程に流すといったことが行われている。これに対して、判定基準算出部105が算出するGO/NO判定基準は、そのまま基板を流してしまうとリフロー工程後に実不良となってしまう可能性が高い状態の基板についてのみNO判定となるように決定される。
【0064】
例えば、
図5に示す1部品の電極に対応するはんだ印刷後のパッド部8つに対して、検査基準ではNGとなる状態のパッド部の割合を評価値(特徴量)として、評価値とリフロー後の良不良の結果とを紐づけた複数のサンプルデータを用いて判定基準値を算出する。
【0065】
図6に基づいて、判定基準算出の処理について説明する。
図6は、判定基準算出部105によって行われる判定基準算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6に
示すように、先ず判定基準算出部105は、記憶部40に格納されている印刷後検査データの集合から、サンプルとなるデータを取得する(S101)。次にリフロー後検査データの集合から、ステップS101で抽出したのと同一の基板IDの基板についてのリフロー後検査データを取得する(S102)。本実施形態においては、印刷後検査データが第1検査時実績値に相当し、リフロー後検査データが第2検査時実績値に相当する。
【0066】
次に、判定基準算出部105は、ステップS102で取得されたリフロー後検査データに基づいて、対象領域のGO/NO判定正解データを作成する(S103)。具体的には、対象領域のリフロー後検査のOK/NG判定結果を参照し、良品であればGO、実不良であればNOの正解データを作成し、記憶部40に保存する。
図7Aは、リフロー後検査結果と正解データの関係を説明する表である。
【0067】
なお、サンプルとして抽出されたデータに係る基板が、製造工程の途中でリペアを施されてリフロー後検査でOK判定されたものである場合には、当該基板のデータについてはサンプルから除外することが望ましい。印刷後検査時の基板の状態と、リフロー後検査時の基板の状態との関連性が途絶えているため、このようなデータが混ざっていると適切な判断基準を算出できないからである。このため、判定基準算出部105は、リペア情報取得部104が取得して記憶部40に記憶されているリペア情報を参照し、抽出したサンプルの基板IDに紐づけられたリペア実施の事実を示す情報がある場合には、当該基板IDのデータをサンプルから除外する。
【0068】
次に、判定基準算出部105は、取得したサンプル数が既定の数量以上に達したか否かを判断する処理を行う(S104)。ここで、サンプル数が規定数に満たないと判断した場合には、ステップS101に戻って以降の処理を繰り返す。一方、ステップS104でサンプル数が規定数以上であると判断した場合には、ステップS105に進み、パラメータを開始値に設定する処理を行う(S105)。なお、パラメータは判定基準としての特徴量の閾値であり、ここでは8つのパッド部のうち検査基準でNGとなるパッド部の割合である。なお、パラメータの開始値は何であってもよいが、ここでは、例えば10とすることができる。
【0069】
次に、判定基準算出部105は、取得した全サンプルに対してGO/NOのシミュレーション判定を実施する(S106)。ここでは、サンプルの評価値がパラメータの値よりも大きい場合にNO判定とする。
図7Bは、パラメータを40とした場合の各サンプルにおける特徴量の値と、GO/NO判定結果の対応関係を説明する表である。
【0070】
次に、判定基準算出部105は、ステップS103で作成した正解データを用いて、ステップS106で行ったシミュレーション結果のスコアを算出する(S107)。具体的には、シミュレーションで行ったGO/NOの判定結果が正解データと一致するか対比し、一致しないサンプルについてスコアを1カウントする。
図7Cは、各サンプルについての正解データと、GO/NO判定結果と、シミュレーションのスコア、の対応関係を説明する表である。なお、全サンプルのスコアの合計値が現行のパラメータを用いた場合のスコアということになる。
【0071】
続けて、判定基準算出部105は、ステップS107で算出したスコアとパラメータとを記憶部40に保存し(S108)、シミュレーションを行ったパラメータが終了値であるか否かを判断する処理を実行する(S109)。ここで、パラメータの値が未だ終了値でないと判断した場合には、パラメータを次の値に変更したうえで(S110)、ステップS106に戻り、以降の処理を繰り返す。なお、パラメータの終了値は何であってもよいが、ここでは例えば90とすることができる。
【0072】
一方、判定基準算出部105は、ステップS109でパラメータが終了値であると判断した場合には、実施したシミュレーションのうちスコアが最も良かった(スコアの値が低かった)パラメータを判定基準値として決定し(S111)、一連のルーティンを終了する。なお、ステップS111で算出された判定基準値は、記憶部40に保存される。
【0073】
(検査管理装置のGO/NO判定処理の流れ)
次に、
図8に基づいて、検査管理装置1が行う判定に係る処理全体の流れについて説明する。
図8は、検査管理装置1が行うGO/NO判定に係る処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8に示すように、検査管理装置1(制御部10)はまず、対象となる基板について、GO/NO判定基準が未設定であるか、又は判定基準設定後一定期間が経過しているか否かを判断する処理を行う(S201)。
【0074】
ステップS201で、GO/NO判定基準が未設定、又は過去に設定後一定期間経過したと判断した場合には、判定基準算出部105が、判定基準を算出する処理を実行し(S202)、算出された判定基準を記憶部40に保存する(S203)。なお、判定基準算出の処理については上述の通りである。一方、ステップS201でNOと判断された場合には、ステップS202及びS203を省略して、ステップS204へと進む。
【0075】
ステップS204では、GO/NO判定部106が、印刷後検査を終えた後の基板に対して、GO/NO判定を行う。そして、根拠情報生成部107が、GO/NO判定の根拠を示す根拠情報を生成する(S205)。また、ステップS204の判定結果がNOであった場合には、リペア補助情報生成部108が、リペア実施の補助となる情報も生成する。
【0076】
そして、制御部10は、出力部20としての液晶ディスプレイにGO/NO判定結果及び根拠情報(さらにリペア補助情報)を示すユーザー確認画面を表示し(S206)、一連のルーティンを終了する。なお、一連のルーティンは基板毎に行われる。
【0077】
ここで、ユーザー確認画面について説明する。
図9、
図10はそれぞれ、ユーザー確認画面の一例を示す説明図であり、
図9はNO判定となった場合の画面例、
図10はGO判定となった場合の画面例である。本実施形態に係るユーザー確認画面は、
図9及び
図10に示すように、基板GO/NO判定結果表示領域21A、コメント表示領域21B、異常・警告あり回路位置表示領域21C、異常・警告あり回路情報表示領域21D、を含んで構成されている。
【0078】
基板GO/NO判定結果表示領域21Aには、対象基板をそのまま後工程に流して良いか否かのGO/NO判定結果と、基板上で異常ありと判断された回路の数、及び基板上で警告対象となった回路の数が表示される。
【0079】
また、コメント表示領域21Bには、基板ID、検査時間、GO/NO判定の根拠となった根拠情報、対象基板をどのようにすべきかの作業指示情報、が表示される。ここで、
図9に示すように、判定結果がNOであった場合には、作業指示情報としてリペアの内容を示しリペアの実施を促すリペア補助情報が表示される。なお、上述のように、根拠情報は根拠情報生成部107が生成し、リペア補助情報はリペア補助情報生成部108が生成する。
【0080】
また、異常・警告あり回路位置表示領域21Cには、基板上のどの回路が異常・警告の対象となっているのかが、対象基板の模式図上における対象回路を枠で囲んで示すことにより、視認可能に表示される。
【0081】
異常・警告あり回路情報表示領域21Dには、異常・警告の対象となっている個々の回路について、その画像と詳細な回路情報が表示される。なお、異常・警告あり回路情報表示領域21Dには、UIとして選択ボタンが配置されており、これを操作することにより、表示される回路画像・詳細情報を切り換えることができるようになっている。また、異常・警告あり回路情報表示領域21Dに表示される回路は、例えばNGパッド率の多い順、回路番号順などの適宜の順序でソートされていてもよい。
【0082】
なお、このようなユーザー確認画面は、印刷後検査のたびに表示されるのではなく、検査結果がNGであった場合にのみ表示されるようになっていればよい。
【0083】
以上のような本実施形態に係る検査管理システム100によれば、印刷後検査の実績値と、リフロー後検査の実績値とに基づいて決定される判定基準により、印刷後検査が行われた基板に対して、そのまま後の工程に流すことが適切か否かをオペレータに示すことができる。これにより、中間検査の時点では検査基準をクリアしていないものの、所定の判定基準に基づいて最終的には不良品になる可能性が低いと判定できる基板については、ライン停止、目視確認、リペア作業などを行わずに後工程に流すという運用ができるため、工数削減、生産性向上に資することができる。また、従来はオペレータが独自のノウハウで行っていたこのような判断を明確な基準で自動的に行うことができるため、リフロー後の品質のばらつきを防止することができる。また、良否判定に係る中間検査の検査基準自体を緩和するわけではないため、摘出すべき異常のある基板について見逃しが発生することを防止し、NG数の変動に基づいて製造装置や検査装置の異変を適時に察知したいというニーズを満たすこともできる。
【0084】
<変形例1>
なお、上記の実施形態では、印刷後検査時のデータを対象にして、リフロー後の良否判定の結果を正解データとして、シミュレーションのGO/NO判定の結果が正解データに合致する数の最も多い判定基準を採用していた。しかしながら、GO/NO判定基準については、上記の実施形態の例に限らず、様々な方法で算出することができる。
【0085】
例えば、本変形例においては、上記実施形態1と同様に、NGパッドの割合(以下、NGパッド率)を特徴量とした場合に、予め定めた規定数のサンプル(例えば、100部品分)について、シミュレーション検査を行う。そして、このようにして行われたGO/NO判定の結果について、実施形態1と同様にリフロー後検査データから作成した正解データと照合を行い、シミュレーションによる「見逃し数」(即ち、不正解のGO判定数)と、「過検出数」(即ち、不正解のNO判定数)を算出する。
【0086】
そして、このような処理を、判定基準のパラメータであるNGパッド率を0%から100%までの間で10%ずつ変更させて順次行い、見逃し数と過検出数の合計が最も少なかったNGパッド率を判定基準として決定する。このような変形例によれば、例えば見逃しと過検出とで重みづけを変えることなどもでき、より所望の結果に沿うように判定基準を設定することができる。
【0087】
なお、判定基準の算出に当たっては、正解データとの比較に基づいて算出されるスコアだけでなく、様々な要素を含めることができる。例えば、基板代金、部品代金、工数(人件費)などのコストを勘案して、わずかな不具合でも現時点で止めた方が良い或いは後工程で処理が発生するとしても流してしまった方が良い、という判断を行うこともあるため、このようなコスト計算を反映させて判定基準を設定するようにしてもよい。
【0088】
コストを勘案する場合、部品種や基板の種類、或いは完成品の用途などに応じて判定基準を設定することができる。また、リペアの容易さや部品単価などを勘案して、部品の特
徴と異常の内容の組み合わせに応じて判定基準を設定することもできる。
【0089】
例えば、両面実装を行うような基板については、第1面の実装時には判定基準を厳しめに設定し、第2面(裏面)の実装時には、第1面よりも判定基準を緩くすることも考えられる。第2面の実装時には既に第1面に部品が実装されており、基板のリペアや廃棄が生じた場合には第1面で費やしたコストが上乗せされることになるためである。即ち、多少の不具合であれば流してしまった方が結局はコスト削減できるといったこともあるためである。
【0090】
<変形例2>
また、実施形態1で説明したユーザー確認画面はあくまで一例であり、ユーザー確認画面は、例えば
図11、
図12に示すような構成とすることもできる。
図11はNO判定となった場合のユーザー確認画面の他の例、
図12はGO判定となった場合のユーザー確認画面の他の例である。本変形例に係るユーザー確認画面は、
図11及び
図12に示すように、基板GO/NO判定結果表示領域22A、コメント表示領域22B、異常・警告あり回路情報表示領域22C、リフロー後実不良過去事例表示領域22D、搬出ボタン22Eを含んで構成されている。
【0091】
基板GO/NO判定結果表示領域22Aの表示内容は、基板上で異常ありと判断された回路の数、及び基板上で警告対象となった回路の数が無い他は、実施形態1と同様である。また、コメント表示領域22B、及び異常・警告あり回路情報表示領域22Cの表示内容も実施形態1と同様である。
【0092】
リフロー後実不良過去事例表示領域22Dには、現在対象基板において検出されている異常と同様の異常を有したままリフロー工程を経た後に実不良となった過去の事例が画像とテキストで表示される。このまま後工程に基板を流すとリフロー後にこうなる可能性が高い、というような将来予測のような態様で情報が示されるため、ユーザーの納得感を高めることができる。
【0093】
なお、搬出ボタン22Eは、情報の提示ではなくUIとして配置されるものであり、これを操作することで、基板を検査装置から搬出することができる。
【0094】
<変形例3>
また、上記の各例では、GO/NO判定を行った結果をユーザー確認画面としてオペレータに示すようになっていたが、GO/NO判定部106による判定の結果はこれ以外の態様で用いることもできる。具体的には、図示しないが、はんだ印刷後検査装置Y1の後に仕分けコンベアを設け、NO判定された基板については不良品ストッカ(図示せず)に投入されるように製造ラインを構成してもよい。
【0095】
このようにすることで、検査装置による検査結果がNGであった場合であっても、オペレータが介在することなく、GO/NO判定部106の判定結果に従ってラインを稼働し続けることができる。
【0096】
<変形例4>
また、上記実施形態1ではGO/NO判定を、基板上の1部品が配置される電極パッドの組を一つの単位として行っていた。このように、1つの回路番号に含まれる全電極パッドをGO/NO判定の単位とする他にも、GO/NO判定単位は様々に定めることができる。具体的には、例えば、基板を等間隔で正方形のエリアに分割し、エリアごとに該エリアに含まれるパッド全てをGO/NO判定単位としてもよい。エリアサイズを固定しても良いし、分割数を固定してもよい。また、スキージの移動方向に直交する方向にエリアを
分割するのであってもよい。
【0097】
<その他>
上記の実施形態の説明は、本発明を例示的に説明するものに過ぎず、本発明は上記の具体的な形態には限定されない。本発明は、その技術的思想の範囲内で種々の変形や組み合わせが可能である。例えば、上記の各例では、所定のGO/NO判定単位におけるNGパッド率を特徴量として判定基準を決定していたが、判定基準となる特徴量は勿論これに限られない。例えば、体積・高さなどの計測値の全パッドの平均値、或いはバラツキの程度、などとすることもできる。また、体積・高さなどの計測値に基準値(閾値)を設け、基準値を上回ったパッドの率、とすることもできる。また、パッド間の距離が所定の距離よりも短い隣接する2パッドの組ごとに距離短縮率を計測したうえで、先に述べたような特徴量を適用して判定基準を算出することもできる。
【0098】
また、判定基準の算定においては、マウント後検査データを用いることも当然に可能である。例えば、印刷後検査では問題が無く、マウンタX2での製造工程において異常が発生した基板については、リフロー後不良となった場合であっても、印刷後検査データと実不良については直接的な因果関係がない。このため、マウント後検査データを用いることで、そのような基板については、統計処理のサンプルから除外したり、重みづけを変更したりすることができ、より適切な判定基準を設定することができる。
【0099】
また、判定基準の算定においては、ユーザーからの入力情報を用いることもできる。具体的には、ある状態の基板については、必ずGO(或いはNO)と判定するように、ユーザーが入力部を介して入力した場合には、その情報を反映させるようにしてもよい。このような場合には、判定対象箇所の状態を示す画像などに基づいて特徴量を抽出したうえで、判定基準に反映させるようにしてもよい。
【0100】
また、上記各例でははんだ印刷の工程後にGO/NO判定を行う場合について説明を行ったが、マウントの工程後にGO/NO判定を行うようにしてもよい。この場合には、マウント後検査時データとリフロー後検査時のデータとを統計処理することで判定基準を算出してもよい。
【0101】
また、判定基準算出処理において、各ステップの処理の順序を適宜入れ替えることも可能である。例えば、上記実施形態1のステップS104の処理をステップS101の直後に行うようにしてもよい。即ち、既定のサンプル数を揃えてから、対応するリフロー後検査データを抽出して正解データを作成するようにしてもよい。
【0102】
また、上記実施形態1では、検査管理装置1の出力部20にユーザー確認画面が表示される態様であったが、ユーザー確認画面の表示箇所はこれに限られない。例えば、はんだ印刷後検査装置Y1、図示しない集中目視端末やライン指示端末などの他の装置にユーザー確認画面が表示されるようになっていてもよい。また、画面の表示だけに限らず、検査管理装置1の備える機能部の一部を他の端末が備えるようなシステム構成としてもよい。
【0103】
<付記>
(請求項1)
複数の製造工程を有し、前記複数の工程に対応する複数の製造装置(A1、A2、A3、X1、X2、X3、X4)及び検査装置(B1、B2、B3、Y1、Y2、Y3、Y4)を有する部品実装基板の生産ラインにおいて用いられる検査管理システム(9、100)であって、
一の中間製造工程が実施された後の基板に対する検査である中間検査において取得される第1検査時実績値と、リフロー工程の後に行われる一以上の検査において取得される第
2検査時実績値と、を少なくとも用いて決定される判定基準に基づいて、前記中間検査が実施された前記基板に対して該検査の結果に関わらずその後の製造工程を実施するか否かを判定する判定手段(914、106)を有する、
ことを特徴とする、検査管理システム。
【0104】
(請求項2)
前記中間検査は、はんだ印刷後検査またはマウント後検査である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の検査管理システム。
【0105】
(請求項3)
前記判定基準は、同一の前記基板に対する前記第1実績値及び前記第2実績値に加え、それ以外の中間工程検査の実績値を用いて決定される、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の検査管理システム。
【0106】
(請求項4)
前記第1検査時実績値には複数の検査箇所又は複数の部品の実装状態を対象として得られる指標を含む、
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の検査管理システム。
【0107】
(請求項5)
前記判定の結果とともに、該判定の根拠となった情報を表示する表示手段をさらに有する、
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の検査管理システム。
【0108】
(請求項6)
前記判定の結果が「否」であった場合に、前記基板のリペアを補助するための情報を表示する表示手段をさらに有する、
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の検査管理システム。
【0109】
(請求項7)
前記中間検査の後に前記基板にリペアが行われた場合に、少なくとも該基板にリペアを行ったことを含むリペア情報の入力を受け付ける入力手段をさらに有しており、
前記判定基準は、前記リペア情報も用いて決定される、
ことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の検査管理システム。
【0110】
(請求項8)
複数の製造工程を有し、前記複数の工程に対応する複数の製造装置(A1、A2、A3、X1、X2、X3、X4)及び検査装置(B1、B2、B3、Y1、Y2、Y3、Y4)を有する部品実装基板の生産ラインにおいて用いられる検査管理装置(90、1)であって、
一の中間製造工程が実施された後の基板に対する検査である中間検査において取得される第1検査時実績値と、リフロー工程の後に行われる一以上の検査において取得される第2検査時実績値と、を少なくとも用いて決定される判定基準に基づいて、前記中間検査が実施された前記基板に対して該検査の結果に関わらずその後の製造工程を実施するか否かを判定する処理部(914、106)を有する、
ことを特徴とする、検査管理装置。
【0111】
(請求項9)
複数の製造工程を有し、前記複数の工程に対応する複数の製造装置及び検査装置を有する部品実装基板の生産ラインにおいて用いられるコンピュータに実行させる判定方法であ
って、
一の中間製造工程が実施された後の基板に対する検査である中間検査において取得される第1検査時実績値と、リフロー工程の後に行われる一以上の検査において取得される第2検査時実績値と、を少なくとも用いて決定される判定基準に基づいて、前記中間検査が実施された前記基板に対して該検査の結果に関わらずその後の製造工程を実施するか否かを判定する(S204)、
ことを特徴とする、判定方法。
【0112】
(請求項10)
コンピュータに請求項9に記載の判定方法を実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0113】
A1、X1・・・はんだ印刷装置
A2、X2・・・マウンタ
A3、X3・・・リフロー炉
B1、Y1・・・はんだ印刷後検査装置
B2、Y2・・・マウント後検査装置
B3・・・リフロー後検査装置
Y3・・・外観検査装置
Y4・・・X線検査装置
1、90・・・検査管理装置
9、100・・・検査管理システム
10、91・・・制御部
20、92・・・出力部
30、93・・・通信部
40、94・・・記憶部
50・・・入力部
P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7、P8・・・パッド部