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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102959
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】カッターシステム
(51)【国際特許分類】
   B65B 69/00 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
B65B69/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007057
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】591280485
【氏名又は名称】ソフトバンクグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139066
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】孫 正義
【テーマコード(参考)】
3E058
【Fターム(参考)】
3E058AA02
3E058CA03
3E058FA01
3E058GA05
(57)【要約】
【課題】より適切な切断が可能なカッターシステムを提供する。
【解決手段】カッターシステム1は、刃30に付勢力を付与することにより刃30を変位させるアクチュエータ40と、対象物に対する刃30の状態を検出する状態センサ50と、アクチュエータ40を制御する制御部70と、刃の電動駆動及び手動操作を選択することが可能な操作選択スイッチ61と、を備える。制御部70は、操作選択スイッチ61において電動駆動が選択されている場合、アクチュエータ40の制御を実行し、操作選択スイッチ61において手動操作が選択されている場合、アクチュエータ40の制御を実行しない。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を切断するための刃と、
前記刃に付勢力を付与することにより前記刃を変位させる付勢部と、
前記対象物に対する前記刃の状態を検出する検出部と、
前記検出部により検出される前記刃の状態に基づいて前記付勢部を制御する制御部と、
前記刃の電動駆動及び手動操作を選択することが可能な選択部と、を備え、
前記制御部は、前記選択部において前記電動駆動が選択されている場合、前記付勢部の制御を実行し、前記選択部において前記手動操作が選択されている場合、前記付勢部の制御を実行しない
カッターシステム。
【請求項2】
複数の前記対象物のそれぞれに対応した前記付勢部の付勢力の設定値が複数記憶された記憶部を更に備え、
前記制御部は、複数の前記付勢力の設定値のうちのいずれかを読み込み、読み込んだ前記付勢力の設定値に基づいて前記付勢部を制御する
請求項1に記載のカッターシステム。
【請求項3】
複数の前記対象物のうちのいずれを切断するかを選択することが可能な対象物選択部を更に備え、
前記制御部は、前記対象物選択部において選択されている前記対象物の選択情報を取得し、取得した前記対象物の選択情報に対応した前記付勢力の設定値を前記記憶部から読み込み、読み込んだ前記付勢力の設定値に基づいて前記付勢部を制御する
請求項2に記載のカッターシステム。
【請求項4】
複数の前記対象物には、段ボール、及びテープが含まれている
請求項3に記載のカッターシステム。
【請求項5】
前記制御部は、前記刃が振動するように前記付勢部を制御する
請求項1に記載のカッターシステム。
【請求項6】
前記制御部は、前記付勢部の制御を開始した後、前記検出部により前記刃の先端部が前記対象物に接触したことを検出したとき、前記刃が振動するように前記付勢部を制御する
請求項5に記載のカッターシステム。
【請求項7】
前記刃を手動で変位させることが可能な手動操作部を更に備える
請求項1に記載のカッターシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッターシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロジスティクスの高度化・自動化が進んでいる。例えば、特許文献1には、容器入りケースの開梱作業およびケースと容器との分別作業を自動化および高速化することができるケース開梱分別装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-128136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
他方で、例えば段ボール箱を開梱する際は、カッターナイフを用いて人手で開梱することがある。このとき、カッターナイフの力加減を誤ると、段ボール箱の内部に収容された物を損傷するおそれがある。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より適切な切断が可能なカッターシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するカッターシステムは、対象物を切断するための刃と、刃に付勢力を付与することにより刃を変位させる付勢部と、対象物に対する刃の状態を検出する検出部と、検出部により検出される刃の状態に基づいて付勢部を制御する制御部と、刃の電動駆動及び手動操作を選択することが可能な選択部と、を備える。制御部は、選択部において電動駆動が選択されている場合、付勢部の制御を実行し、選択部において手動操作が選択されている場合、付勢部の制御を実行しない。
【0006】
この構成によれば、ユーザが選択部において電動駆動を選択した場合には、対象物に対する刃の状態に応じて刃の変位が自動で制御されるため、対象物を適切に切断することができる。また、ユーザが選択部において手動操作を選択した場合には、刃を手動で変位させることができるため、ユーザ自身が望んだ刃の変位量を実現することもできる。このように、上記構成によれば、その都度の状況に応じてユーザが電動駆動と手動操作とを任意に選択することが可能であるため、より適切な切断が可能となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のカッターシステムによれば、より適切な切断が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態のカッターシステムのシステム構成を示す断面図。
図2】第1実施形態の操作部の正面構造を示す正面図。
図3】第1実施形態のカッターシステムの制御系の構成を示すブロック図。
図4】第1実施形態の制御部のメモリに記憶されているパターンデータの一例を模式的に示す図。
図5】第1実施形態の制御部により実行される処理の手順を示すフローチャート。
図6】第1実施形態の制御部により実行される切断制御の処理手順を示すフローチャート。
図7】第1実施形態の切断制御が開始されたときのカッターシステム及び切断対象物のそれぞれの断面構造を示す断面図。
図8】第1実施形態の刃の先端部が切断対象物の内部に位置しているときのカッターシステム及び切断対象物のそれぞれの断面構造を示す断面図。
図9】第1実施形態の刃の先端部が切断対象物をちょうど貫通したときのカッターシステム及び切断対象物のそれぞれの断面構造を示す断面図。
図10】第1実施形態の刃の先端部が切断対象物を超えたときのカッターシステム及び切断対象物のそれぞれの断面構造を示す断面図。
図11】第2実施形態の制御部により実行される処理の手順を示すフローチャート。
図12】第2実施形態の変形例の制御部により実行される切断制御の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、カッターシステムの実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係るカッターシステム1のシステム構成の一例を示す図である。本実施形態のカッターシステム1は、主に梱包材である段ボール箱の切断を目的として使用されるものである。図1に示されるカッターシステム1は、筐体10と、抑え部20と、刃30と、アクチュエータ40と、状態センサ50と、操作部60と、制御部70とを備えている。また、図示しないが、カッターシステム1は、制御部70等を駆動するための電源を更に備えている。
【0010】
筐体10は、カッターシステム1を構成する刃30と、制御部70と、状態センサ50と、アクチュエータ40等を収容するためのケースである。
抑え部20は、カッターシステム1を用いて対象物を切断する際に、対象物に押し当てられる部分である。抑え部20の一部には、刃30を通すことのできる孔21が空いている。当該孔21を介して刃30の先端部を、抑え部20よりもカッターシステム1の本体からみて外側(図1では下側)に出すことができるようになっている。
【0011】
刃30は、対象物を切断するためのものであり、対象物を切断することのできる形状及び材質で構成されている。例えば、刃30は、カッターナイフの刃と同様の形状及び材質を有していてもよい。本実施形態において、刃30は、間に隙間を有する2枚刃構造のものであるが、これに限らず、1枚刃であってもよい。
【0012】
アクチュエータ40は、刃30を付勢するための装置である。制御部70の制御により、アクチュエータ40は、刃30をカッターシステム1の外側方向(図1では下側方向)及び内側方向(図1では上側方向)に付勢し、これにより、刃30を外側方向及び内側方向に変位させることができる。また、制御部70の制御により、アクチュエータ40は、刃30への付勢を停止し、所定の位置で刃30を保持することができる。本実施形態では、アクチュエータ40が付勢部に相当する。
【0013】
状態センサ50は、対象物に対する刃30の先端部の状態を検知するためのセンサである。状態センサ50は、光、電磁波又は画像を利用したセンサであってもよく、例えば、レーザーセンサ、光センサ、及び画像処理ユニット(MoPU:Motion Processing Unit)のいずれかであってもよい。画像処理ユニットは、毎秒1000フレームの画像をキャプチャできる高速画像処理ユニットを用いることが好適である。本実施形態では、状態センサ50が検出部に相当する。
【0014】
本実施形態では、状態センサ50は、2枚刃構造の刃30の内部(2枚刃の刃と刃との間)に設置され、刃30の先端部をセンシングする。これにより、刃30の先端部、すなわち切断対象部と刃30の接点となる部分の状態を検知する。なお、状態センサ50の設置位置はこれに限られず、刃30の先端部の状態を検知することができれば任意の部位に設置することができる。例えば、刃30の先端部に状態センサ50を埋め込む、あるいは、貼り付けてもよい。また、抑え部20の孔21の周辺を観測できる位置に状態センサ50を設置してもよい。
【0015】
操作部60は、ユーザがカッターシステム1に対する各種操作を行う部分である。図2に示されるように、操作部60には、操作選択スイッチ61と、対象物選択スイッチ62と、駆動スイッチ63と、手動操作部64とが設けられている。
操作選択スイッチ61は、「電動駆動」と「手動操作」とを選択することが可能なスイッチである。操作選択スイッチ61において「電動駆動」が選択されている場合、刃30の付勢がアクチュエータ40により制御される。操作選択スイッチ61において「手動操作」が選択されている場合、ユーザは手動操作部64を操作することで刃を手動で変位させることができる。操作選択スイッチ61において「手動操作」が選択されている場合、アクチュエータ40は停止しているため、ユーザは手動操作部64を自ら操作して刃を変位させる必要がある。本実施形態では、操作選択スイッチ61が選択部に相当する。
【0016】
対象物選択スイッチ62は、電動駆動により刃30で切断する対象を選択するためのスイッチである。梱包材としての段ボール箱をユーザが開梱する場合、ユーザは、段ボールそのものを切断するという行動を取るか、あるいは段ボール箱を封止しているテープを切断するという行動を取るものと考えられる。すなわち、切断する対象物は段ボール又はテープとなる。そのため、本実施形態のカッターシステム1では、対象物選択スイッチ62において選択可能な切断対象物として「段ボール」及び「テープ」が設けられている。対象物選択スイッチ62において「段ボール」が選択されている場合、アクチュエータ40により刃30が付勢される際に、段ボールに適した付勢力で刃30が付勢される。対象物選択スイッチ62において「テープ」が選択されている場合、アクチュエータ40により刃30が付勢される際に、テープに適した付勢力で刃30が付勢される。本実施形態では、対象物選択スイッチ62が対象物選択部に相当する。
【0017】
駆動スイッチ63は、操作選択スイッチ61において電動駆動が選択されている場合にアクチュエータ40を駆動させるか否かを選択するためのスイッチである。駆動スイッチ63では「オン」と「オフ」とを選択可能である。操作選択スイッチ61において電動駆動が選択されている状態でユーザが駆動スイッチ63を「オン」に操作した場合、アクチュエータ40から刃30に対して外側方向の付勢力が付与されて、刃30が筐体10から突出する。その後、操作選択スイッチ61において電動駆動が選択されている状態でユーザが駆動スイッチ63を「オフ」に操作した場合、アクチュエータ40により刃30に対して内側方向の付勢力が付与されて、刃30が筐体10内に収容された後、アクチュエータ40の駆動が停止する。
【0018】
以上のように、対象物選択スイッチ62及び駆動スイッチ63は、操作選択スイッチ61が「電動駆動」に操作されているときのカッターシステム1の動作、換言すれば刃30の付勢がアクチュエータ40により制御されるときのカッターシステム1の動作を切り替えることが可能なスイッチである。
【0019】
手動操作部64は、刃30の変位を手動で操作することが可能な部分である。手動操作部64は回転式のものである。ユーザが手動操作部64を時計回りの方向に操作した場合、刃30がカッターシステム1の外側方向に変位する。ユーザが手動操作部64を反時計回りの方向に操作した場合、刃30がカッターシステム1の内側方向に変位する。
【0020】
図1に示される制御部70は、カッターシステム1全体の動作を制御する。図3に示されるように、制御部70は例えばプロセッサ72とメモリ74とを含んでいる。
プロセッサ72は、カッターシステム1全体の動作を制御する。プロセッサ72としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はマイコン(マイクロコントローラ)等を用いることができる。プロセッサ72は、メモリ74に記憶されたプログラムを実行することによりカッターシステム1全体の動作を制御する制御部として機能する。プロセッサ72は、状態センサ50により検知された情報、並び操作選択スイッチ61、対象物選択スイッチ62、及び駆動スイッチ63のそれぞれの操作状態に基づいてカッターシステム1を制御する。
【0021】
メモリ74は、プロセッサ72により実行される各種プログラムや各種データを記憶する。メモリ74には、例えば、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の揮発性記憶装置、及びHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置が含まれ得る。各種データとしては、例えば、状態センサ50が検知した情報に基づいてアクチュエータ40を制御するためのパターンデータPDを含む。パターンデータPDには、例えば図4に示されるように、切断対象物と、状態センサ50の検知情報と、アクチュエータ40の付勢力の設定値とを対応付けたデータ等が含まれている。本実施形態では、メモリ74が記憶部に相当する。
【0022】
図5は、制御部70により実行される処理の手順の一例を示すフローチャートである。なお、制御部70は、図5に示される処理を所定の周期で繰り返し実行する。
図5に示されるように、制御部70は、まず、駆動スイッチ63がオン状態であるか否かを判断する(ステップS10)。制御部70は、駆動スイッチ63がオフ状態である場合(ステップS10:NO)、図5に示される処理を一旦終了する。
【0023】
ユーザが駆動スイッチ63をオフ状態からオン状態に切り替えると、制御部70は、駆動スイッチ63がオン状態であると判断する(ステップS10:YES)。この場合、制御部70は、操作選択スイッチ61が「電動駆動」に操作されているか否かを判断して(ステップS11)、操作選択スイッチ61が「手動操作」に操作されている場合(ステップS11:NO)、図5に示される処理を一旦終了する。したがって、制御部70は、駆動スイッチ63がオン操作された場合であっても、操作選択スイッチ61が「電動駆動」に操作されていない場合には、アクチュエータ40を駆動させない。
【0024】
制御部70は、操作選択スイッチ61が「電動駆動」に操作されている場合(ステップS11:YES)、対象物選択スイッチ62の選択状態を読み込んだ後(ステップS12)、読み込んだ選択状態に対応したアクチュエータ40の付勢力の設定値をメモリ74から読み込む(ステップS13)。例えば、対象物選択スイッチ62において「段ボール」が選択されている場合、制御部70は、段ボールに対応したアクチュエータ40の付勢力の設定値をメモリ74から読み込む。続いて、制御部70は切断制御を実行する(ステップS14)。切断制御は、アクチュエータ40を駆動させて刃30を自動的に付勢する制御である。
【0025】
図6は、制御部70により実行される切断制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。ここでは、切断対象物Dが段ボール箱である場合を例に挙げて説明し、カッターシステム1を用いて、段ボール箱を開梱する処理を例に説明する。なお、図6には記載していないが、ユーザは、カッターシステム1の抑え部20を切断対象物Dに押し当てた状態であるものとする。
【0026】
図7は、切断処理を開始したときの一例を示す図である。切断処理を開始したとき、すなわち駆動スイッチ63をオン操作したとき、刃30はカッターシステム1の筐体10の内部に位置している。アクチュエータ40は、この状態から刃30をカッターシステム1の外側方向に付勢させる。これにより刃30が外側方向に変位する。
【0027】
図6に示されるように、制御部70は、まず、刃30の先端部の状態に関するセンシングデータを状態センサ50から取得する(ステップS20)。制御部70は、状態センサ50により取得されたセンシングデータに基づいて、刃30の先端部が切断対象物Dの内部又は手前に位置しているか否かを判断する(ステップS21)。例えば、状態センサ50から得られたセンシングデータが、刃30の先端部に切断対象物Dが存在することを示すとき、刃30の先端部は切断対象物Dの内部に位置しているものと判断することができる。また、状態センサ50から得られたセンシングデータが、刃30の先端部より先に切断対象物Dが存在することを示すとき、刃30の先端部は切断対象物Dの手前に位置しているものと判断することができる。
【0028】
制御部70は、刃30の先端部が切断対象物Dの内部又は手前に位置していると判断したとき(ステップS21:YES)、刃30をカッターシステム1の外側方向に付勢するようにアクチュエータ40を制御する(ステップS22)。この際、制御部70は、アクチュエータ40から刃30に付与される付勢力が、図5に示されるステップS13の処理で取得した付勢力の設定値となるようにアクチュエータ40を制御する。
【0029】
図8は、刃30の先端部が切断対象物Dの内部に位置しているときの一例を示す図である。刃30はアクチュエータ40によりカッターシステム1の外側方向に付勢されて、これにより刃30が外側方向に変位する。
図6に示されるように、制御部70は、状態センサ50により取得されたセンシングデータに基づいて、刃30の先端部が切断対象物Dをちょうど貫通した部分に位置しているか否かを判断する(ステップS23)。例えば、状態センサ50から取得されたセンシングデータの履歴が、それまで刃30の先端部に切断対象物Dが存在することを示していたが、状態センサ50から今回得られたセンシングデータが、刃30の先端部に切断対象物Dが存在しないことを示すとき、刃30の先端部が切断対象物Dをちょうど貫通したと判断することができる。また、例えば、このときの刃30の位置をメモリ74に記憶することで、刃30の先端部が切断対象物Dをちょうど貫通した部分に位置しているか否かを判断してもよい。
【0030】
刃30の先端部が切断対象物Dをちょうど貫通した部分に位置していると判断したとき(ステップS23:YES)、制御部70は、刃30の付勢を停止するようアクチュエータ40を制御する。これにより、刃30の位置が保持される(ステップS24)。
図9は、刃30の先端部が切断対象物Dをちょうど貫通した部分に位置しているときの一例を示す図である。刃30の先端部が切断対象物Dをちょうど貫通したときにアクチュエータ40による刃30の付勢が停止され、これにより刃30が切断対象物Dをちょうど貫通した位置で、すなわち図9に示される位置で刃30が保持される。
【0031】
図6に示されるように、制御部70は、状態センサ50が検知した情報に基づいて、刃30の先端部が切断対象物Dを超えた部分に位置しているか否かを判断する(ステップS25)。例えば、状態センサ50から得られたセンシングデータの履歴が、それまでは刃30の先端部に切断対象物等が存在しないことを示していたが、状態センサ50から今回得られたセンシングデータが、切断対象物Dの内部の収容物を検知したとき、刃30の先端部が切断対象物Dを超えた部分に位置していると判断することができる。
【0032】
刃30の先端部が切断対象物Dを超えた部分に位置していると判断したとき(ステップS25:YES)、刃30がカッターシステム1の内側方向に付勢されるようアクチュエータ40を制御する(ステップS26)。
図10は、刃30の先端部が切断対象物Dを超えた部分に位置しているときの一例を示す図である。刃30はアクチュエータ40によりカッターシステム1の内側方向に付勢され、これにより刃30が内側方向に変位する。
【0033】
図6に示されるように、制御部70は、ステップS22,S24,S26のいずれかの処理を実行した後、図6に示される切断制御を一旦終了して、図5に示される処理に戻る。図5に示されるように、制御部70は、ステップS14に示される切断制御に続いて、駆動スイッチ63がオフ状態になったか否かを判断する(ステップS15)。駆動スイッチ63がオン状態のままである場合、制御部70は、駆動スイッチ63がオフ状態でないと判断して(ステップS15:NO)、ステップS14の切断制御に戻る。よって、駆動スイッチ63がオン状態のままである場合、ステップS14の切断制御が繰り返し実行される。これにより、状態センサ50により検知される刃30の先端部の状態に応じて、図6に示されるステップS22の処理、ステップS24の処理、及びステップS26の処理が順に実行されて、図7図10に示されるように刃30により切断対象物Dが切断される。
【0034】
ユーザが駆動スイッチ63をオン状態からオフ状態に切り替えると、制御部70は、駆動スイッチ63がオフ状態になったと判断して(ステップS15:YES)、アクチュエータ40により刃30に対して内側方向の付勢力を付与して、刃30を筐体10内に収容した後、アクチュエータ40の駆動を停止する。(ステップS16)。
【0035】
以上説明した本実施形態のカッターシステム1によれば、以下のような作用及び効果を得ることができる。
本実施形態のカッターシステム1は、切断対象物Dを切断するための刃30と、刃30に付勢力を付与することにより刃30を変位させるアクチュエータ40と、切断対象物Dに対する刃30の状態を検出する状態センサ50と、状態センサ50により検出される刃30の状態に基づいてアクチュエータ40を制御する制御部70とを備える。また、カッターシステム1は、刃30の電動駆動及び手動操作を選択することが可能な操作選択スイッチ61を更に備える。制御部70は、操作選択スイッチ61において「電動駆動」が選択されている場合、アクチュエータ40の制御を実行し、操作選択スイッチ61において「手動操作」が選択されている場合、アクチュエータ40の制御を実行しない。
【0036】
この構成によれば、ユーザが操作選択スイッチ61において「電動駆動」を選択した場合、切断対象物Dに対する刃30の状態に応じて刃30の変位が自動で制御されるため、切断対象物Dを適切に切断することができる。また、ユーザが操作選択スイッチ61において「手動操作」を選択した場合には、手動操作部64を操作することで刃30を手動で変位させることができるため、ユーザ自身が望んだ刃30の変位量を実現することもできる。このように、本実施形態のカッターシステム1によれば、その都度の状況に応じてユーザが電動駆動と手動操作とを任意に選択することが可能であるため、より適切な切断が可能となる。
【0037】
本実施形態のカッターシステム1では、複数の切断対象物のそれぞれに対応したアクチュエータ40の付勢力の設定値が複数記憶されたメモリ74と、複数の切断対象物のうちのいずれを切断するかを選択することが可能な対象物選択スイッチ62とを備える。制御部70は、対象物選択スイッチ62において選択されている切断対象物の選択情報を取得し、取得した切断対象物の選択情報に対応した付勢力の設定値をメモリ74から読み込み、読み込んだ付勢力の設定値に基づいてアクチュエータ40を制御する。
【0038】
この構成によれば、複数の切断対象物のそれぞれに対応した適切な付勢力を刃30に付与することができるため、より適切に切断対象物を切断することが可能となる。
<第2実施形態>
次に、カッターシステム1の第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態のカッターシステム1との相違点を中心に説明する。
【0039】
本実施形態の制御部70は、切断制御として、図5に示される処理に代えて、図11に示される処理を実行する。なお、図11に示される処理において、図5に示される処理と同一の処理には同一の符号を付すことにより重複する説明は割愛する。
図11に示されるように、制御部70は、ステップS13の処理に続いて、アクチュエータ40により刃30を振動させる処理を実行する(ステップS30)。具体的には、制御部70は、図1における下側方向及び上側方向に刃30が微少振動するようにアクチュエータ40を制御する。
【0040】
また、制御部70は、ステップS16の処理においてアクチュエータ40を停止させる際に、アクチュエータ40による刃30の微小振動も同様に停止する。
以上説明した本実施形態のカッターシステム1によれば、以下のような作用及び効果を得ることができる。
【0041】
本実施形態のカッターシステム1では、制御部70が、刃30が微小振動するようにアクチュエータ40を制御する。
この構成によれば、微小振動する刃30により対象物を切断し易くなるため、切断効率を向上させることができる。
【0042】
(変形例)
次に、第2実施形態のカッターシステム1の変形例について説明する。
本変形例の制御部70は、図5に示される処理を実行しつつ、ステップS14の切断制御の処理手順として、図6に示される手順に代えて、図12に示される手順を採用する。図12に示されるように、制御部70は、ステップS20の処理に続いて、状態センサ50により取得されたセンシングデータに基づいて、刃30の先端部が切断対象物に接触したか否かを判断する(ステップS40)。制御部70は、刃30の先端部が切断対象物Dに接触していない場合には(ステップS40:NO)、すなわち刃30が切断対象物Dの手前に位置している場合には、刃30をカッターシステム1の外側方向に付勢するようにアクチュエータ40を制御する(ステップS41)。この際、制御部70は、アクチュエータ40から刃30に付与される付勢力が、図5に示されるステップS13の処理で取得した付勢力の設定値となるようにアクチュエータ40を制御する。
【0043】
図12に示されるように、制御部70は、刃30の先端部が切断対象物に接触したと判断した場合には(ステップS40:YES)、アクチュエータ40により刃30を振動させる処理を実行する(ステップS42)。続いて、制御部70は、状態センサ50により取得されたセンシングデータに基づいて、刃30の先端部が切断対象物Dの内部に位置しているか否かを判断して(ステップS43)、刃30の先端部が切断対象物Dの内部に位置していると判断した場合には(ステップS43:YES)、刃30をカッターシステム1の外側方向に付勢するようアクチュエータ40を制御する(ステップS44)。この際、制御部70は、アクチュエータ40から刃30に付与される付勢力が、図5に示されるステップS13の処理で取得した付勢力の設定値となるようにアクチュエータ40を制御する。
【0044】
図12に示されるように、制御部70は、刃30の先端部が切断対象物Dの内部に位置していないと判断した場合には(ステップS43:NO)、ステップS23以降の処理を実行する。
このように、本変形例のカッターシステム1では、制御部70が、アクチュエータ40の制御を開始した後、刃30の先端部が切断対象物Dに接触したことを状態センサ50により検出したとき、刃30が振動するようにアクチュエータ40を制御する。
【0045】
この構成によれば、切断対象物Dを切断するときにのみ刃30が振動するようになるため、刃30の振動に対してユーザが違和感を覚え難くなる。
<他の実施形態>
本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0046】
D:切断対象物、1:カッターシステム、30:刃、40:アクチュエータ(付勢部)、50:状態センサ(検出部)、61:操作選択スイッチ(選択部)、62:対象物選択スイッチ(対象物選択部)、64:手動操作部、70:制御部、74:メモリ(記憶部)。
図1
図2
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図12