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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102962
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
H02K9/19 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007065
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 優志
(72)【発明者】
【氏名】田中 大貴
(72)【発明者】
【氏名】諏訪林 明
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP08
5H609QQ05
5H609RR33
5H609RR38
5H609RR41
(57)【要約】
【課題】磁性体板間に冷媒を流す冷媒流路構造に付加価値を付与可能とする。
【解決手段】回転電機は第1磁性体板と、第2磁性体板と、冷媒流路が設けられた冷却板とを有する。冷却板は軸方向において第1磁性体板と第2磁性体板との間に挟まれる。冷却板は絶縁性を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1磁性体板と、第2磁性体板と、冷媒流路が設けられた冷却板とを有する回転電機であって、
前記冷却板は、軸方向において前記第1磁性体板と前記第2磁性体板との間に挟まれ、
前記冷却板は、絶縁性を有する、
回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記冷媒流路は、前記第1磁性体板と対向する第1溝と、前記第2磁性体板と対向する第2溝とを有する、
回転電機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電機であって、
前記冷媒流路は、径方向と交差する方向に延びる部分を有し、当該部分で当該回転電機におけるインシュレータ収容部と連通する、
回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には磁性体薄板を用いて形成される冷媒流路がステータコアに設けられた回転電機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-129447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁性体板間に冷媒を流す冷媒流路構造は、例えばステータコアの軸方向中央に設けるなど、回転電機の軸方向において温度上昇を抑制したい位置に設けることができ、これにより温度上昇による出力制限が行われ難くすることができる。加えて、更なる利点はこのような構造の有用性を高めることに資する。このため、このような冷媒流路構造に付加価値を付与可能とすることが望まれる。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、磁性体板間に冷媒を流す冷媒流路構造に付加価値を付与可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の回転電機は、第1磁性体板と、第2磁性体板と、冷媒流路が設けられた冷却板とを有する回転電機であって、前記冷却板は軸方向において前記第1磁性体板と前記第2磁性体板との間に挟まれる。前記冷却板は絶縁性を有する。
【発明の効果】
【0007】
この態様によれば、冷媒流路が設けられた冷却板を磁性体板と異なる材料で構成することで付加価値を付与できる。例えば、磁性体板よりも密度が小さい材料を用いた場合は、軽量化という付加価値を付与できる。また、磁性体板よりも製造費が安価な材料を用いた場合は、低コスト化という付加価値を付与できる。従って、磁性体板間に冷媒を流す冷媒流路構造に付加価値を付与可能になる。また、冷却板を導電性材料で構成した場合は冷却板の周囲の磁界に影響を及ぼす可能性があり回転電機の特性に影響を与え得るところ、冷却板は絶縁性を有する、つまり絶縁性材料で構成されるので、回転電機の特性に影響を与えることもない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態にかかる回転電機の概略構成図である。
図2図2は、冷却板を含むロータコアの部分拡大図である。
図3図3は、冷却板を含むステータコアの部分拡大図である。
図4図4は、第1溝の周方向配置を示す模式図である。
図5図5は、軸方向視でステータコアの冷却板の一部を拡大して示す図である。
図6図6は、ロータコアにおいて冷却板が電磁鋼板に挟まれる様子を径方向視で示す図である。
図7図7は、ステータコアにおいて冷却板が電磁鋼板に挟まれる様子を径方向視で示す図である。
図8図8は、第1変形例を示す図である。
図9図9は、第2変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は本実施形態にかかる回転電機100の概略構成図である。図2は冷却板313を含むロータコア31の部分拡大図である。図3は冷却板413を含むステータコア41の部分拡大図である。図1から図3において、図の左側は回転電機100の軸方向一方側に対応し、図の右側は回転電機100の軸方向他方側に対応する。
【0011】
回転電機100は例えば車両に搭載され、電動機機能及び/又は発電機機能(電動機機能及び発電機機能のうち少なくともいずれか)を有することができる。回転電機100は例えば電動車両の駆動源として用いられる。回転電機100はハウジング10と回転軸20とロータ30とステータ40とを備える。
【0012】
ハウジング10はケース11とカバー12とを有する。ケース11は図の左側に底壁部11aが設けられるとともに、図の右側に開口部11bが設けられた筒状の形状を有する。底壁部11aには貫通孔が形成され、当該貫通孔にはベアリング51が設けられる。開口部11bからは回転電機100の組み立ての際に回転軸20、ロータ30、ステータ40等がケース11内に挿入される。
【0013】
カバー12はケース11に設けられる。カバー12はケース11にボルト締結される。カバー12は開口部11bに設けられ、開口部11bを塞ぐ。カバー12がケース11の開口部11bを塞いだ状態でハウジング10内にはロータ30及びステータ40の収容室が形成される。カバー12は開口部11bを塞ぐとともに当該収容室の一部を形成する。カバー12には貫通孔が形成され、当該貫通孔にはベアリング52が設けられる。
【0014】
回転軸20は図の左側でベアリング51を介してケース11に支持されるとともに、図の右側でベアリング52を介してカバー12に支持されることで、ハウジング10に支持される。回転軸20の外周にはロータ30が設けられる。回転軸20の軸方向は回転電機100の軸方向を構成する。
【0015】
ロータ30はロータコア31とマグネット32とを有する。ロータコア31は筒状の形状を有し、内周で回転軸20の外周に固定される。ロータコア31は第1コア311と第2コア312とを有する。第1コア311と第2コア312とはともに複数の電磁鋼板を積層して構成される。
【0016】
第1コア311は第2コア312より図の左側に配置される。第1コア311は回転電機100の軸方向中央に対し図の左側に配置され、第2コア312は回転電機100の軸方向中央に対し図の右側に配置される。回転電機100の軸方向中央は換言すれば、ロータ30(或いはロータコア31)の軸方向中央や、ステータ40(或いは後述するステータコア41)の軸方向中央といえる。
【0017】
マグネット32は永久磁石であり、磁極を形成する。マグネット32は第1マグネット321と第2マグネット322とを有する。第1マグネット321は第1コア311に設けられ、第2マグネット322は第2コア312に設けられる。第1マグネット321と第2マグネット322とはともに周方向に沿って複数設けられる。
【0018】
ステータ40はステータコア41とコイル42とを有する。ステータコア41は筒状の形状を有し、ケース11の内周に固定される。ステータコア41にはロータコア31が収容され、ステータコア41とロータコア31との間にはエアギャップが形成される。ステータコア41は複数のティースTを有し、コイル42は各ティースTに巻き回される。各ティースTは周方向に沿って並ぶとともに径方向内側に突出する。コイル42はステータコア41の軸方向両側にコイルエンドを形成し、図の右側のコイルエンドの一部はカバー12に収容される。
【0019】
ステータコア41は第1コア411と第2コア412とを有する。第1コア411と第2コア412とはともに複数の電磁鋼板を積層して構成される。第1コア411は第2コア412より図の左側に配置される。第1コア411は回転電機100の軸方向中央に対し図の左側に配置され、第2コア412は回転電機100の軸方向中央に対し図2の右側に配置される。電磁鋼板は磁性体板に相当する。
【0020】
第1コア411は例えば磁性粉末により一体成形されてもよい。この場合、第1コア411が電磁鋼板でも構成可能なことに照らし、第1コア411の軸方向端面の部分を磁性体板として観念できる。第2コア412やロータコア31の第1コア311及び第2コア312についても同様である。
【0021】
ロータコア31は冷却板313を、ステータコア41は冷却板413をさらに有する。冷却板313と冷却板413とはともにリング状の形状を有し、回転電機100の軸方向中央に設けられる。このように設けられた冷却板313は軸方向において第1コア311と第2コア312との間に挟まれ、同様に冷却板413は軸方向において第1コア411と第2コア412との間に挟まれる。
【0022】
冷却板313と冷却板413とは例えば樹脂で構成され、絶縁性を有する。このため、冷却板313と冷却板413とは回転電機100においてショートを発生させることはない。また、冷却板313と冷却板413とは磁界の影響も受けず、導電性材料からなる導体のように磁界に影響することがないので、回転電機100の特性に影響を与えることもない。
【0023】
回転電機100では冷却板313及び冷却板413を利用した冷却が行われる。回転電機100の冷却については次の通りである。
【0024】
ここで、ケース11は供給口11cと供給口11dとをさらに有する。供給口11cはコイル42の図の左側のコイルエンドと径方向にオーバーラップする位置、つまり径方向に重なり合う位置でハウジング10内(収容室)に開口し、当該コイルエンドに径方向外側から対向する。供給口11dはコイル42の図の右側のコイルエンドと径方向にオーバーラップする位置に開口し、当該コイルエンドに径方向外側から対向する。
【0025】
供給口11cは図の左側のコイルエンドに、供給口11dは図の右側のコイルエンドに冷媒としての油を噴射等により供給する。つまり、供給口11c、供給口11dからはステータコア41の軸方向両側に位置するコイルエンドそれぞれに油が供給される。
【0026】
このためこの場合は、発熱するコイル42が油により直接冷却される一方で、回転電機100の軸方向中央の部分では温度上昇が十分に抑制されないことが懸念される。特に回転電機100が軸方向に長い長軸モータの場合は、供給口11c、供給口11dからの油供給だけでは回転電機100の軸方向中央の部分で温度が上昇し、これに起因して回転電機100の出力が制限されることが懸念される。
【0027】
このことから、本実施形態ではケース11が供給口11eをさらに有する。供給口11eは回転電機100の軸方向中央でハウジング10内に開口する。供給口11eは冷却板313及び冷却板413それぞれと径方向にオーバーラップする位置でハウジング10内に開口し、径方向外側から冷却板413に対向する。
【0028】
本実施形態ではさらに回転軸20が油路20aを有する。油路20aは回転軸20内に設けられ、図の右側から軸方向に沿って回転電機100の軸方向中央まで延伸した後に径方向に分岐し、回転軸20の外周に開口する。油路20aは回転電機100の軸方向中央で複数の部分油路に分岐し、複数の部分油路それぞれは回転軸20の外周で開口して径方向内側から冷却板313に対向する。油路20aは冷却板313及び冷却板413それぞれと径方向にオーバーラップする位置で回転軸20の外周に開口する。
【0029】
冷却板313には油路20aから油が供給され、冷却板413には供給口11eから油が供給される。油路20aからはオイルポンプを油圧源として油を供給できる。供給口11c、供給口11d、供給口11eについても同様である。供給口11c、供給口11d及び供給口11eそれぞれは回転電機100の周方向に沿って複数設けることができ、ハウジング10内からは排出孔を介して油を排出することができる。油が供給される冷却板313と冷却板413とは次のように構成される。
【0030】
図2図3にも示すように、冷却板313は第1溝313a及び第2溝313bを有し、冷却板413は第1溝413a及び第2溝413bを有する。冷却板313において第1溝313aは図の左側の面に、第2溝313bは図の右側の面に形成される。同様に、冷却板413において第1溝413aは図の左側の面に、第2溝413bは図の右側の面に形成される。従って、第1溝313aは第1コア311と対向し、第2溝313bは第2コア312と対向する。同様に、第1溝413aは第1コア411と対向し、第2溝413bは第2コア412と対向する。
【0031】
図4は第1溝313a及び第1溝413aの周方向配置を示す模式図である。図4では後述するスロットSや部分溝413aaについては図示省略している。図4では第1溝313a及び第1溝413aを例にして説明するが、第2溝313b及び第2溝413bについても同様とされる。図4に示すように、第1溝313aは径方向に沿って冷却板313の内周から外周にかけて設けられる。第1溝313aは周方向に均等に複数(ここでは4ケ)設けられる。油路20aは複数の第1溝313aと同数の部分油路に分岐された上で複数の第1溝313aに接続される。第1溝313aは第1マグネット321の数つまり磁極数と同数設けることができる。
【0032】
第1溝313aは第1マグネット321と軸方向にオーバーラップする配置、従って対向配置とされる。このため、冷却板313に供給された油は第1溝313aを流通しながら、回転電機100の軸方向中央で第1マグネット321を直接冷却する。結果、第1マグネット321が回転電機100の軸方向中央で効率的に冷却される。第1溝313aを流通する油は回転電機100の軸方向中央で第1コア311も直接冷却する。第1溝313aは例えば周方向に隣り合う第1マグネット321同士の間の周方向領域それぞれに設けられてもよい。
【0033】
第1溝413aは径方向に沿って冷却板413の内周から外周にかけて設けられる。第1溝413aは周方向に均等に複数(ここでは24ケ)設けられる。このため、冷却板413に供給された油は第1溝413aを流通しながら、回転電機100の軸方向中央で第1コア411を直接冷却する。結果、第1コア411が回転電機100の軸方向中央で効率的に冷却される。第1溝413aは第1溝313aと比べて多く設けられる。
【0034】
図5は軸方向視で冷却板413の一部を拡大して示す図である。図5では冷却板413の一部とともにインシュレータ43を示す。図5では第1溝413aについて説明するが、第2溝413bについても同様とすることができる。
【0035】
ステータ40はインシュレータ43をさらに有する。インシュレータ43はスロットSに設けられる。スロットSはステータコア41において周方向に隣り合うティースT間に形成される。冷却板413は第1コア411及び第2コア412の各電磁鋼板と同様の輪郭形状を内径側及び外径側に有し、第1コア411及び第2コア412とともにステータコア41のティースTやスロットSを構成する。インシュレータ43は繊維体である紙材料により構成され、第1コア411及び第2コア412と各ティースTに巻き回されるコイル42とを絶縁する。なお、冷却板313も第1コア311及び第2コア312の各電磁鋼板と同様の輪郭形状を内径側及び外径側に有する。
【0036】
第1溝413aは部分溝413aaを有する。部分溝413aaは第1溝413aにおいて径方向と交差する方向に延伸する部分により構成され、スロットSに連通する。部分溝413aaは径方向に沿って延伸する部分から分岐して径方向と概ね直交する方向に延伸し、スロットSの径方向中央でスロットSに連通する。
【0037】
このため、第1溝413aを流通する油は部分溝413aaを介してインシュレータ43にも供給される。部分溝413aaから供給された油はインシュレータ43に浸み込むほか、インシュレータ43から浸み出すことで、インシュレータ43に包まれたコイル42にも供給される。結果、回転電機100の軸方向中央でインシュレータ43やコイル42の冷却も図られ、回転電機100の軸方向中央の部分での温度上昇がさらに抑制される。部分溝413aaは径方向に延伸した部分から図示とは周方向反対側に延伸してもよい。スロットSはインシュレータ収容部に相当する。
【0038】
図2図3に示すように、第1溝313aが対向する第1コア311の図の右側の端部は、第1コア311において最も図の右側に位置する電磁鋼板311aで構成される。また、第1溝413aが対向する第1コア411の図の右側の端部は、第1コア411において最も図の右側に位置する電磁鋼板411aで構成される。
【0039】
同様に、第2溝313bが対向する第2コア312の図の左側の端部は、第2コア312において最も図の左側に位置する電磁鋼板312aで構成される。また、第2溝413bが対向する第2コア412の図の左側の端部は、第2コア412において最も図の左側に位置する電磁鋼板412aで構成される。
【0040】
図6はロータコア31で冷却板313が電磁鋼板311a及び電磁鋼板312aに挟まれる様子を径方向視で示す図である。図7はステータコア41で冷却板413が電磁鋼板411a及び電磁鋼板412aに挟まれる様子を径方向視で示す図である。図6図7では図の左側は回転電機100の軸方向一方側に対応し、図の右側は回転電機100の軸方向他方側に対応する。図6図7では冷却板313、冷却板413を太線で強調して示す。
【0041】
図6図7に示すように、電磁鋼板311aは図の左側から、電磁鋼板312aは図の右側から冷却板313に当接して冷却板313を間に挟む。また、電磁鋼板411aは図の左側から、電磁鋼板412aは図の右側から冷却板413に当接して冷却板413を間に挟む。電磁鋼板311aと電磁鋼板411aとは第1磁性体板に相当し、電磁鋼板312aと電磁鋼板412aとは第2磁性体板に相当する。
【0042】
次に本実施形態の主な作用効果について説明する。
【0043】
(1)回転電機100は第1磁性体板としての電磁鋼板311aと、第2磁性体板としての電磁鋼板312aと、冷媒流路としての第1溝313a及び第2溝313bが設けられた冷却板313とを有する。冷却板313は回転電機100の軸方向において電磁鋼板311aと電磁鋼板312aとの間に挟まれ、絶縁性を有する。或いは、回転電機100は第1磁性体板としての電磁鋼板411aと、第2磁性体板としての電磁鋼板412aと、冷媒流路としての第1溝413a及び第2溝413bが設けられた冷却板413とを有する。冷却板413は回転電機100の軸方向において電磁鋼板411aと電磁鋼板412aとの間に挟まれ、絶縁性を有する。
【0044】
前者の構成によれば、第1溝313a及び第2溝313bが設けられた冷却板313を電磁鋼板311aや電磁鋼板312aと異なる材料で構成することで付加価値を付与できる。例えば、電磁鋼板311aや電磁鋼板312aよりも密度が小さい材料を用いた場合は、軽量化という付加価値を付与できる。また、電磁鋼板311aや電磁鋼板312aよりも製造費が安価な材料を用いた場合は、低コスト化という付加価値を付与できる。従って、電磁鋼板311a及び電磁鋼板312a間に冷媒としての油を流す冷媒流路構造に付加価値を付与可能になる。また、冷却板313を導電性材料で構成した場合は冷却板313の周囲の磁界に影響を及ぼす可能性があり回転電機100の特性に影響を与え得るところ、冷却板313は絶縁性を有する、つまり絶縁性材料で構成されるので、回転電機100の特性に影響を与えることもない。後者の構成(冷却板413を有する構成)とされる場合についても同様である。
【0045】
なお、冷却板313の材料は特に限定されないが、樹脂であれば電磁鋼板311aや電磁鋼板312aより密度が低く、材料単価が安く、加工費が安価で、絶縁性も有するので最も好適な材料といえる。冷却板413についても同様である。
【0046】
冷却板313や冷却板413には冷媒流路として例えば、冷却板313や冷却板413内を通過する孔や、冷却板313や冷却板413の片面のみに設けられた溝を設けることもできる。その一方で、絶縁性材料は例えば導電性材料と比べて熱伝導性が低いなど、一般に熱伝導性が低い傾向がある。
【0047】
(2)本実施形態では回転電機100は冷媒流路としての第1溝313a及び第2溝313bが、電磁鋼板311aに対向する第1溝313aと、電磁鋼板312aに対向する第2溝313bとを有する構成とされる。或いは、回転電機100は冷媒流路としての第1溝413a及び第2溝413bが、電磁鋼板411aに対向する第1溝413aと、電磁鋼板412aに対向する第2溝413bとを有する構成とされる。
【0048】
前者の構成によれば、第1溝313a及び第2溝313bにより冷却板313の両面に溝が設けられる。このため、冷却板313内を通過する孔や、冷却板313の片面のみに設けられた溝と比較して、電磁鋼板311a及び電磁鋼板312aの双方の冷却効率を向上させることができる。後者の構成とされる場合についても同様である。
【0049】
(3)本実施形態では冷媒流路としての第1溝413aが径方向と交差する方向に延びる部分溝413aaを有し、当該部分溝413aaで回転電機100におけるスロットSと連通する。第2溝413bも第1溝413aと同様に構成できる。
【0050】
このような構成によれば、電磁鋼板411aや電磁鋼板412aだけでなく、部分溝413aaを介してインシュレータ43も冷却でき、冷却効率を向上させることができる。さらに本実施形態ではインシュレータ43が紙材料で構成されるので、インシュレータ43に供給された油はインシュレータ43から浸み出してコイル42にも供給される。結果、コイル42も冷却でき、冷却効率がさらに向上する。
【0051】
このような構成は、冷却板としてロータ30及びステータ40のうち少なくともステータ40に冷却板413が設けられ、ステータ40に設けられた冷媒流路である第1溝413aが部分溝413aaでスロットSと連通する構成とすることができる。ステータ40に設けられた冷媒流路は第1溝413a及び第2溝413bのうち少なくともいずれかとすることができる。
【0052】
第1溝413aは次のように構成されてもよい。
【0053】
図8は第1溝413aの第1変形例を示す図である。図9は第1溝413aの第2変形例を示す図である。図8図9では第1溝413aについて説明するが、第2溝413bについても同様とすることができる。
【0054】
図8に示す例では、第1溝413aは径方向に沿って設けられ、冷却板413の外周に到達する一方で冷却板413の内周には到達しない。また、第1溝413aは径方向に延伸した部分の内周側の端部で周方向両側に分岐し、周方向両側に設けられた部分溝413aaを介して周方向両側のスロットSに連通する。図9に示す例では、第1溝413aは径方向に沿って設けられ、冷却板413の内周に到達する一方で冷却板413の外周には到達しない。また、第1溝413aは径方向に延伸した部分の外周側の端部で周方向両側に分岐し、周方向両側に設けられた部分溝413aaを介して周方向両側のスロットSに連通する。
【0055】
図8に示す第1変形例の場合、第1溝413aには供給口11eから油を供給できる。図9に示す第2変形例の場合、第1溝413aには第1溝313aを介して油路20aから油を供給できる。これらの場合でも、第1溝413aを介してインシュレータ43に油を供給できる。また、インシュレータ43が紙材料で構成される場合はさらにコイル42も冷却できる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0057】
例えば、上述した実施形態ではロータ30に冷却板313が設けられるとともに、ステータ40に冷却板413が設けられる場合について説明した。しかしながら、回転電機100は冷却板313と冷却板413のいずれか一方を有する構成とされてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10:ハウジング
20:回転軸
30:ロータ
31:ロータコア
311:第1コア
311a:電磁鋼板(第1磁性体板)
312:第2コア
312a:電磁鋼板(第2磁性体板)
313:冷却板
313a:第1溝(冷媒流路)
313b:第2溝(冷媒流路)
40:ステータ
41:ステータコア
411:第1コア
411a:電磁鋼板(第1磁性体板)
412:第2コア
412a:電磁鋼板(第2磁性体板)
413:冷却板
413a:第1溝(冷媒流路)
413aa:部分溝
413b:第2溝(冷媒流路)
42:コイル
43:インシュレータ
100:回転電機
S:スロット(インシュレータ収容部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9