(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102998
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】樹脂組成物および絶縁電線
(51)【国際特許分類】
C08L 79/08 20060101AFI20240725BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20240725BHJP
C08K 5/3415 20060101ALI20240725BHJP
H01B 7/02 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C08L79/08
C08G73/10
C08K5/3415
H01B7/02 A
H01B7/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007109
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】309019534
【氏名又は名称】住友電工ウインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】太田 槙弥
(72)【発明者】
【氏名】飯田 益大
【テーマコード(参考)】
4J002
4J043
5G309
【Fターム(参考)】
4J002CM041
4J002EU026
4J002FD206
4J002GQ01
4J002HA03
4J043PA01
4J043PA02
4J043PA04
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA34
4J043RA35
4J043SA06
4J043SB01
4J043TA22
4J043TB01
4J043TB02
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA132
4J043UB121
4J043UB402
4J043XA16
4J043YA06
4J043ZB48
5G309MA02
(57)【要約】
【課題】可とう性および皮膜伸びに優れる絶縁層を形成できる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの反応生成物であるポリイミド前駆体と、有機溶媒とを含有し、上記ポリイミド前駆体の重量平均分子量が80,000以下であり、N-メチルスクシンイミドの含有量が5,000ppm未満であり、4-ヒドロキシ酪酸の含有量が400ppm未満であり、モノメチルアミンの含有量が400ppm未満である樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの反応生成物であるポリイミド前駆体と、
有機溶媒と
を含有し、
上記ポリイミド前駆体の重量平均分子量が80,000以下であり、
下記条件1から条件3の全ての条件を満たす樹脂組成物。
条件1:N-メチルスクシンイミドの含有量が5,000ppm未満である。
条件2:4-ヒドロキシ酪酸の含有量が400ppm未満である。
条件3:モノメチルアミンの含有量が400ppm未満である。
【請求項2】
上記N-メチルスクシンイミドの含有量が500ppm以上2,000ppm以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
上記芳香族テトラカルボン酸二無水物がピロメリット酸二無水物およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群から選択される少なくとも1種を含み、上記芳香族ジアミンがジアミノジフェニルエーテルを含む請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
上記有機溶媒がN-メチル-2-ピロリドンを含む請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
絶縁電線の絶縁層を形成するために用いられる請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
導体と、
上記導体を被覆する絶縁層と
を備え、
上記絶縁層が請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物により形成されている絶縁電線。
【請求項7】
上記絶縁層のガラス転移温度が250℃超である請求項6に記載の絶縁電線。
【請求項8】
上記絶縁層が複数の気孔を有する請求項6に記載の絶縁電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂組成物および絶縁電線に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、絶縁電線の絶縁層を形成するために用いられる樹脂組成物として、特定の分子構造を有する芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応して得られるポリイミド前駆体樹脂を主成分とするポリイミド樹脂ワニスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係る樹脂組成物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの反応生成物であるポリイミド前駆体と、有機溶媒とを含有し、上記ポリイミド前駆体の重量平均分子量が80,000以下であり、下記条件1から条件3の全ての条件を満たす。
条件1:N-メチルスクシンイミドの含有量が5,000ppm未満である。
条件2:4-ヒドロキシ酪酸の含有量が400ppm未満である。
条件3:モノメチルアミンの含有量が400ppm未満である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
[本開示が解決しようとする課題]
本開示が解決しようとする課題は、可とう性および皮膜伸びに優れる絶縁層を形成できる樹脂組成物を提供することである。
【0006】
[本開示の効果]
本開示の一態様に係る樹脂組成物によれば、可とう性および皮膜伸びに優れる絶縁層を形成できる。
【0007】
[本開示の実施態様の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
項1.
芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの反応生成物であるポリイミド前駆体と、
有機溶媒と
を含有し、
上記ポリイミド前駆体の重量平均分子量が80,000以下であり、
下記条件1から条件3の全ての条件を満たす樹脂組成物。
条件1:N-メチルスクシンイミドの含有量が5,000ppm未満である。
条件2:4-ヒドロキシ酪酸の含有量が400ppm未満である。
条件3:モノメチルアミンの含有量が400ppm未満である。
項2.
上記N-メチルスクシンイミドの含有量が500ppm以上2,000ppm以下である上記項1に記載の樹脂組成物。
項3.
上記芳香族テトラカルボン酸二無水物がピロメリット酸二無水物およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群から選択される少なくとも1種を含み、上記芳香族ジアミンがジアミノジフェニルエーテルを含む上記項1または上記項2に記載の樹脂組成物。
項4.
上記有機溶媒がN-メチル-2-ピロリドンを含む上記項1から上記項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
項5.
絶縁電線の絶縁層を形成するために用いられる上記項1から上記項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
項6.
導体と、
上記導体を被覆する絶縁層と
を備え、
上記絶縁層が上記項1から上記項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物により形成されている絶縁電線。
項7.
上記絶縁層のガラス転移温度が250℃超である上記項6に記載の絶縁電線。
項8.
上記絶縁層が複数の気孔を有する上記項6または上記項7に記載の絶縁電線。
【0008】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の一態様に係る樹脂組成物および絶縁電線について説明する。
【0009】
<樹脂組成物>
当該樹脂組成物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの反応生成物であるポリイミド前駆体と、有機溶媒とを含有する。上記ポリイミド前駆体の重量平均分子量は80,000以下である。
【0010】
当該樹脂組成物は、下記条件1から条件3の全ての条件を満たす。
条件1:N-メチルスクシンイミドの含有量が5,000ppm未満である。
条件2:4-ヒドロキシ酪酸の含有量が400ppm未満である。
条件3:モノメチルアミンの含有量が400ppm未満である。
【0011】
当該樹脂組成物は、特定範囲の重量平均分子量のポリイミド前駆体を含有し、かつ上記条件1から条件3の全てを満たすことにより、可とう性および皮膜伸びに優れる絶縁層を形成することができる。上記条件1から条件3に記載される各成分は樹脂組成物において不純物として存在し得るものである。本開示の発明者らは、これらの不純物が、特定範囲の重量平均分子量のポリイミド前駆体を含有する樹脂組成物を用いて絶縁層を形成した場合に、可とう性および皮膜伸びを悪化させるという知見を得た。そして、上記知見に基づき、上記条件1から条件3を全て満たすことにより、可とう性および皮膜伸びに優れる絶縁層を形成することができることを見出した。限定的な解釈を望むものではないが、N-メチルスクシンイミド、4-ヒドロキシ酪酸およびモノメチルアミンの少なくとも1つの成分は、絶縁層を形成する際のポリイミド前駆体やポリイミドの分子鎖伸長反応を阻害すると考えられる。その結果、絶縁層におけるポリイミド分子鎖の絡み合いが不十分となることにより、ポリイミド分子鎖の絡み合いが粗な部分においてポリイミド分子鎖の絡み合いが解かれることで可とう性および皮膜伸びが悪化するものと考えられる。ポリイミド前駆体の重量平均分子量が小さい場合、上述のようなポリイミド分子鎖の絡み合いが粗な部分の割合が相対的に多いため、N-メチルスクシンイミド等による影響がより大きくなると推測される。
【0012】
(条件1)
条件1は、当該樹脂組成物中におけるN-メチルスクシンイミドの含有量が5,000ppm未満であることである。「ppm」は質量ppmである。当該樹脂組成物中におけるN-メチルスクシンイミドの含有量の上限としては、4,000ppmであってもよく、2,000ppmであってもよい。上記含有量の下限としては特に制限されず、例えば100ppmであってもよく、500ppmであってもよい。上記含有量が500ppm以上2,000ppm以下である場合、可とう性および皮膜伸びにより優れる絶縁層を形成することができる。当該樹脂組成物中におけるN-メチルスクシンイミドの含有量は、例えば当該樹脂組成物を調製する際の酸素濃度の調節により調整することができる。
【0013】
(条件2)
条件2は、当該樹脂組成物中における4-ヒドロキシ酪酸の含有量が400ppm未満であることである。当該樹脂組成物中における4-ヒドロキシ酪酸の含有量の上限としては、300ppmであってもよく、100ppmであってもよく、50ppmであってもよい。上記含有量の下限としては特に制限されず、例えば10ppmであってもよい。上記含有量が10ppm以上100ppm未満である場合、可とう性および皮膜伸びにより優れる絶縁層を形成することができる。当該樹脂組成物中における4-ヒドロキシ酪酸の含有量は、例えば当該樹脂組成物を調製する際のろ過などの精製により調整することができる。
【0014】
(条件3)
条件3は、当該樹脂組成物中におけるモノメチルアミンの含有量が400ppm未満であることである。当該樹脂組成物中におけるモノメチルアミンの含有量の上限としては、300ppmであってもよく、100ppmであってもよく、50ppmであってもよい。上記含有量の下限としては特に制限されず、例えば10ppmであってもよい。上記含有量が10ppm以上100ppm未満である場合、可とう性および皮膜伸びにより優れる絶縁層を形成することができるできる。当該樹脂組成物中におけるモノメチルアミンの含有量は、例えば当該樹脂組成物を調製する際のろ過などの精製より調整することができる。
【0015】
当該樹脂組成物は、絶縁電線の絶縁層を形成するための樹脂組成物(樹脂ワニス)として好適に用いることができる。
【0016】
以下、当該樹脂組成物が含有する各成分について説明する。
【0017】
(ポリイミド前駆体)
ポリイミド前駆体は、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの重合縮合反応によって得られる反応生成物である。ポリイミド前駆体は、ポリアミック酸(ポリアミド酸)とも称される化合物である。ポリイミド前駆体は、脱水環化反応により環状イミドを形成し、ポリイミドとなる。
【0018】
上記ポリイミド前駆体の重量平均分子量は80,000以下である。上記ポリイミド前駆体の重量平均分子量の下限としては、5,000であってもよく、10,000であってもよく、20,000であってもよく、30,000であってもよく、40,000であってもよく、45,000であってもよい。上記ポリイミド前駆体の重量平均分子量の上限としては、70,000であってもよく、60,000であってもよく、55,000であってもよい。上記ポリイミド前駆体の重量平均分子量が上記範囲であることで、当該樹脂組成物の塗工性が向上し、形成される絶縁層の可とう性および皮膜伸びもより向上する。ポリイミド前駆体の「重量平均分子量」は、JIS-K7252-1(2008)の「プラスチック-サイズ排除クロマトグラフィーによる高分子の平均分子量および分子量分布の求め方-第1部:通則」に準拠してゲル浸透クロマトグラフィーによりポリスチレン換算で測定した値をいう。
【0019】
上記芳香族テトラカルボン酸二無水物はピロメリット酸二無水物(PMDA)およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)からなる群から選択される少なくとも1種を含むと絶縁層の皮膜伸びをより向上させることができる。ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a-BPDA)および2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(i-BPDA)が挙げられる。3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)であると、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a-BPDA)および2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(i-BPDA)に比べ、皮膜伸びをさらに向上させることができる。
【0020】
上記芳香族テトラカルボン酸二無水物100モル%に対するPMDAの含有量の下限としては、0モル%であってもよく、10モル%であってもよく、20モル%であってもよく、30モル%であってもよい。上記芳香族テトラカルボン酸二無水物100モル%に対するPMDAの含有量の上限としては、100モル%であってもよく、90モル%であってもよく、80モル%であってもよく、70モル%であってもよい。
【0021】
上記芳香族テトラカルボン酸二無水物100モル%に対するBPDAの含有量の下限としては、0モル%であってもよく、10モル%であってもよく、20モル%であってもよく、30モル%であってもよい。上記芳香族テトラカルボン酸二無水物100モル%に対するBPDAの含有量の上限としては、100モル%であってもよく、90モル%であってもよく、80モル%であってもよく、70モル%であってもよい。
【0022】
上記芳香族テトラカルボン酸二無水物はPMDAおよびBPDA以外の芳香族テトラカルボン酸二無水物(以下、「他の芳香族テトラカルボン酸二無水物」ともいう)をさらに含んでいてもよい。上記他の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。上記他の芳香族テトラカルボン酸二無水物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記芳香族テトラカルボン酸二無水物100モル%に対する上記他の芳香族テトラカルボン酸二無水物の含有量は、本開示の効果を損なわない範囲において適宜決定することができる。上記芳香族テトラカルボン酸二無水物100モル%に対する上記他の芳香族テトラカルボン酸二無水物の含有量の上限としては、30モル%であってもよく、20モル%であってもよい。上記芳香族テトラカルボン酸二無水物100モル%に対する上記他の芳香族テトラカルボン酸二無水物の含有量の下限としては、0モル%であってもよく、10モル%であってもよい。
【0024】
上記芳香族テトラカルボン酸二無水物はPMDAおよびBPDAからなる群から選択される少なくとも1種のみを含んでいてもよい。この場合、絶縁層の耐熱性を向上できる。
【0025】
上記芳香族ジアミンはジアミノジフェニルエーテル(ODA)を含むと絶縁層の皮膜伸びをより向上させることができる。ジアミノジフェニルエーテルとしては、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(4,4’-ODA)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(3,4’-ODA)、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル(3,3’-ODA)、2,4’-ジアミノジフェニルエーテル(2,4’-ODA)、および2,2’-ジアミノジフェニルエーテル(2,2’-ODA)が挙げられる。4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(4,4’-ODA)であると、絶縁層の皮膜伸びをさらに向上させることができる。
【0026】
上記芳香族ジアミン100モル%に対するODAの含有量の下限としては、50モル%であってもよく、60モル%であってもよく、70モル%であってもよい。上記芳香族ジアミン100モル%に対するODAの含有量の上限としては、100モル%であってもよく、90モル%であってもよい。
【0027】
上記芳香族ジアミンはODA以外の芳香族ジアミン(以下、「他の芳香族ジアミン」ともいう)をさらに含んでいてもよい。上記他の芳香族ジアミンとしては、例えば2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、2,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、2,4’-ジアミノジフェニルスルホン、2,2’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2’-ジアミノジフェニルスルフィド、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(mTBHG)、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-ベンゾフェノンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。上記他の芳香族ジアミンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)であると、絶縁層の比誘電率を低下させることができる。
【0028】
上記芳香族ジアミン100モル%に対する上記他の芳香族ジアミンの含有量は、本開示の効果を損なわない範囲において適宜決定することができる。上記芳香族ジアミン100モル%に対する上記他の芳香族ジアミンの含有量の上限としては、40モル%であってもよく、30モル%であってもよい。上記芳香族ジアミン100モル%に対する上記他の芳香族ジアミンの含有量の下限としては、0モル%であってもよく、10モル%であってもよい。
【0029】
上記ポリイミド前駆体の当該樹脂組成物中の濃度の下限としては、25質量%であってもよく、27質量%であってもよい。上記濃度の上限としては、40質量%であってもよく、35質量%であってもよい。上記濃度を上記下限以上とすることで、当該樹脂組成物を用いて絶縁層を形成する際に所望の厚さの絶縁層を得るために製造工程全体で必要となる樹脂組成物量を低下させることができ、塗工工程および加熱工程の回数を低減させることができる。上記濃度を上記上限以下とすることで、良好な皮膜特性を維持しつつ当該樹脂組成物の粘度を適度に調節することができ、塗工性を向上させることができる。
【0030】
上記ポリイミド前駆体の原料として用いる芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとのモル比(芳香族テトラカルボン酸二無水物:芳香族ジアミン)としては、ポリイミド前駆体の合成容易性の観点から、例えば95:105以上105:95以下であってもよく、97:103以上103:97以下であってもよく、99:101以上101:99以下であってもよい。芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとは実質的に当モル量であってもよい。この場合、ポリイミド前駆体の分子量を容易に大きくすることができる。「実質的に当モル量」とは、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとのモル比(芳香族テトラカルボン酸二無水物:芳香族ジアミン)が99:101以上101:99以下の範囲をいう。
【0031】
(ポリイミド前駆体の合成方法)
上記ポリイミド前駆体は、上述した芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの重合縮合反応により得ることができる。上記重合縮合反応の方法としては、従来のポリイミド前駆体の合成と同様とすることができる。上記重合縮合反応の具体的な方法としては、例えば芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを有機溶媒中で混合する方法等が挙げられる。この方法により、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとが重合し、ポリイミド前駆体が有機溶媒に溶解した溶液を得ることができる。上記重合縮合反応を反応制御剤の存在下で行うことにより、重合度(重量平均分子量)を制御することができる。
【0032】
反応制御剤としては、例えば水(H2O)、炭素数1~15のアルコールが挙げられる。炭素数1~15のアルコールとしては、例えばエタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールなどの1価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールが挙げられる。
【0033】
上記重合の際の反応条件としては、使用する原料等により適宜設定できる。例えば反応温度を10℃以上100℃以下、反応時間を0.5時間以上24時間以下とすることができる。
【0034】
上記重合縮合反応に用いる有機溶媒としては、後述する有機溶媒と同様のものが挙げられる。
【0035】
(有機溶媒)
有機溶媒としては、例えばN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン等の非プロトン性極性有機溶媒が挙げられる。有機溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。「非プロトン性極性有機溶媒」とは、プロトンを放出する基を持たない極性有機溶媒をいう。
【0036】
有機溶媒としてNMPを用いる場合、上記条件1から条件3の全ての条件を満たすことはより困難となる。N-メチルスクシンイミドは、NMPの酸化体であり、NMPの合成の際に不純物として混入しやすい傾向がある。NMPは、γ-ブチロラクトンおよびモノメチルアミンを原料として合成され、モノメチルアミンはγ-ブチロラクトンに対して過剰に添加されるため、未反応のモノメチルアミンが不純物としてNMPに混入しやすい傾向がある。4-ヒドロキシ酪酸は、γ-ブチロラクトンの加水分解物であるため、不純物としてNMPに混入しやすい傾向がある。
【0037】
上記有機溶媒の含有量は、芳香族テトラカルボン酸二無水物および芳香族ジアミンを均一に溶解または分散させることができる使用量であれば特に制限されないが、あまりに多量であると絶縁電線の絶縁層を形成する際に多量の有機溶媒を揮発させる必要があり、絶縁層の形成に時間を要するおそれがある。そのため、上記有機溶媒の含有量としては、例えば芳香族テトラカルボン酸二無水物および芳香族ジアミンの合計100質量部に対して100質量部以上1,000質量部以下とすることができる。
【0038】
(その他の成分)
当該樹脂組成物は、上記成分以外のその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば化学発泡剤、熱膨張性マイクロカプセル、外殻を備える中空形成粒子(コアシェル粒子)、中空フィラーなどの気孔形成剤が挙げられる。当該樹脂組成物が気孔形成剤を含有する場合、当該樹脂組成物を用いることにより形成される絶縁層は複数の気孔を備える。
【0039】
<絶縁電線>
当該絶縁電線は、導体と、上記導体を被覆する絶縁層とを備える。当該絶縁電線は、コイル用巻線(マグネットワイヤ)として好適に用いることができる。
【0040】
(導体)
上記導体は、通常、金属を主成分とする。上記金属としては、特に限定されないが、銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金であると、良好な加工性、導電性等を兼ね備えた絶縁電線を得ることができる。上記導体は、上記主成分の金属以外に公知の添加剤等の他の成分を含有していてもよい。
【0041】
上記導体の断面形状は、特に限定されず、円形、方形、矩形等の種々の形状を採用することができる。導体の断面の大きさも特に限定されず、直径(短辺幅)を例えば0.2mm以上8.0mm以下とすることができる。
【0042】
(絶縁層)
上記絶縁層は上述の当該樹脂組成物により形成されている。このため、上記絶縁層は可とう性および皮膜伸びに優れる。上記絶縁層は、上記導体を被覆するように上記導体の周面に積層される。上記絶縁層は、上記導体を直接に被覆していてもよいし、間接に被覆していてもよい。間接に被覆する場合としては、例えば導体の被覆層が上記絶縁層以外の層を含む多層構造が挙げられる。
【0043】
上記絶縁層の平均厚さは、特に限定されず、通常2μm以上200μm以下とされる。
【0044】
当該絶縁電線は、絶縁層の外周上にさらに他の層が積層されていてもよい。上記他の層としては、例えば表面潤滑層等が挙げられる。
【0045】
上記絶縁層のガラス転移温度は250℃超であるとよい。この場合、高温(例えば240℃)で絶縁電線を用いた場合の比誘電率の変動を抑制することができる。さらに、絶縁電線の溶接時に絶縁層の発泡や潰れの発生を抑制することができる。上記絶縁層のガラス転移温度は300℃以上であってもよい。この場合、高い溶接熱に耐えることができ、モーターの小型化に寄与することができる。上記絶縁層のガラス転移温度は、JIS K 7121:2012(プラスチックの転移温度測定方法)に準拠して測定した値である。
【0046】
上記絶縁層は複数の気孔を有していてもよい。この場合、絶縁電線の比誘電率を低下することができる。上記複数の気孔は、例えば上述の気孔形成剤により形成することができる。
【0047】
上記絶縁層における気孔率の下限としては、20体積%であってもよく、25体積%であってもよく、30体積%であってもよい。上記気孔率の上限としては、70体積%であってもよく、60体積%であってもよく、50体積%であってもよい。「気孔率」とは、気孔を含む絶縁層の体積に対する気孔の容積の百分率を意味する。通常、気孔率が高くなるほど絶縁層の低誘電率化を図ることができるが、可とう性や皮膜伸びなどの機械的特性が低下してしまう傾向にある。しかし、上記絶縁層は上述の当該樹脂組成物により形成されているため、気孔率が高い場合であっても可とう性および皮膜伸びに優れる。上記絶縁層における気孔率が上記範囲内であると、絶縁層の低誘電率化を図ることができ、絶縁層の機械的特性(可とう性および皮膜伸び)を向上させることができる。つまり、絶縁層の低誘電率化と機械的特性との両立を図ることができる。
【0048】
上記絶縁層は、上記成分以外の他の成分を含有することができる。上記他の成分としては、絶縁電線の絶縁層に配合される添加剤であれば特に制限されず、例えばフィラー、酸化防止剤、レベリング剤、硬化剤、接着助剤が挙げられる。
【0049】
(絶縁電線の製造方法)
当該絶縁電線は、例えば上述の当該樹脂組成物を導体の外周面に塗工する工程(以下、「塗工工程」という)と、上記導体に塗工された上記樹脂組成物を加熱する工程(以下、「加熱工程」という)とを備える方法により製造することができる。
【0050】
上記塗工工程では、上述の当該樹脂組成物を導体の外周面に塗工する。上述の当該樹脂組成物を導体の外周側に塗工する方法としては、例えば樹脂組成物を貯留した液状組成物槽と塗工ダイスとを備える塗工装置を用いた方法を挙げることができる。この塗工装置によれば、導体が液状組成物槽内を挿通することで樹脂組成物が導体の外周面に付着し、その後塗工ダイスを通過することで樹脂組成物が均一な厚みに塗工される。
【0051】
上記加熱工程では、上記塗工工程で導体に塗工された上述の当該樹脂組成物を加熱する。この加熱により、当該樹脂組成物中の溶媒が揮発すると共に、ポリイミド前駆体が硬化し、ポリイミドが形成される。
【0052】
上記加熱工程で用いる装置としては特に限定されず、例えば導体の走行方向に長い筒状の焼付炉を用いることができる。加熱方法は特に限定されず、例えば熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱などの従来公知の方法により行うことができる。
【0053】
加熱温度としては、例えば300℃以上800℃以下とすることができる。加熱時間としては、例えば5秒以上1分以下とすることができる。
【0054】
上記塗工工程と上記加熱工程とは、通常、複数回繰り返される。複数回繰り返すことで絶縁層の厚みを増加させていくことができる。塗工ダイスの孔径は繰り返し回数にあわせて適宜調整することができる。
【0055】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【実施例0056】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
<樹脂組成物の調製および絶縁電線の作製>
樹脂組成物の調製に用いた各種成分の略称を以下に示す。
(芳香族テトラカルボン酸二無水物)
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
ODPA:3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物
(芳香族ジアミン)
ODA:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル
BAPB:4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル
DDS:3,3’-ジアミノジフェニルスルホン
TFMB:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
(有機溶媒)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
【0058】
[No.1]
(樹脂組成物の調製)
芳香族ジアミンとしてのODAをNMPに溶解させた。芳香族テトラカルボン酸二無水物としてのPMDAを、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの混合比(モル比)が100:100となるように加えた。窒素雰囲気下で攪拌しながら30℃で3時間反応させ、ポリイミド前駆体を合成した。得られたポリイミド前駆体の重量平均分子量は45,000であった。上記ポリイミド前駆体に対し、樹脂組成物中での含有量が500ppmとなる量のN-メチルスクシンイミドを添加し、樹脂組成物No.1を調製した。
【0059】
(絶縁電線の作製)
導体として、平均直径1mmの丸線状の銅線を用いた。樹脂組成物No.1を上記導体の表面に塗工し、上記樹脂組成物No.1を塗工した導体を加熱炉の設定温度500℃で加熱する工程を繰り返し行うことで平均厚さ30μmの絶縁層を形成し、絶縁電線No.1を作製した。
【0060】
[No.2からNo.10およびNo.13]
下記表1に示す種類および使用量の各成分を用いたこと以外はNo.1と同様にして樹脂組成物No.2からNo.10およびNo.13を調製し、絶縁電線No.2からNo.10およびNo.13を作製した。
【0061】
[No.11]
(樹脂組成物の調製)
芳香族ジアミンとしてのODAをNMPに溶解させた。芳香族テトラカルボン酸二無水物としてのPMDAを、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの混合比(モル比)が100:100となるように加えた。窒素雰囲気下で攪拌しながら30℃で3時間反応させ、ポリイミド前駆体を合成した。得られたポリイミド前駆体に対し、樹脂組成物中での含有量が500ppmとなる量のN-メチルスクシンイミドを添加し、ポリイミド前駆体100質量部に対し絶縁層の気孔率が計算値で30体積%となる量の気孔形成剤を添加し、樹脂組成物No.11を調製した。気孔形成剤として、コアがポリメチルメタクリレート粒子であり、シェルがシリコーンである平均粒子径3μmのコアシェル粒子を用いた。
【0062】
(絶縁電線の作製)
導体として、平均直径1mmの丸線状の銅線を用いた。樹脂組成物No.11を上記導体の表面に塗工し、上記樹脂組成物No.11を塗工した導体を加熱炉の設定温度500℃で加熱する工程を繰り返し行うことで平均厚さ30μmの絶縁層を形成し、絶縁電線No.11を作製した。
【0063】
[No.12]
下記表2に示す種類および使用量の各成分を用いたこと以外はNo.11と同様にして樹脂組成物No.12を調製し、絶縁電線No.12を作製した。
【0064】
[比誘電率の測定]
上記作製した絶縁電線No.1からNo.13について、絶縁層の比誘電率を測定した。絶縁電線の表面3カ所に銀ペーストを塗布すると共に、絶縁電線の一端側の絶縁層を剥離して導体を露出させた測定用のサンプルを作製した。ここで、絶縁電線の表面3カ所に塗布した銀ペーストの絶縁電線長手方向の塗布長さは、長手方向に沿って順に10mm、100mmおよび10mmとした。長さ10mmで塗布した2カ所の銀ペーストを接地し、これらの2カ所の銀ペーストの間に塗布した長さ100mmの銀ペーストと上記露出させた導体との間の静電容量をLCRメータで測定した。この測定した静電容量および絶縁層の平均膜厚から絶縁層の比誘電率を算出した。上記比誘電率の測定は、105℃で1時間加熱した後にn=3で実施し、その平均値を求めた。測定結果を下記表1に示す。
【0065】
[可とう性の評価]
上記作製した絶縁電線No.1からNo.13について、下記の方法に従って可とう性を評価した。絶縁電線を、10%伸長後に自己径巻付けを行う群(10%伸長)と、20%伸長後に自己径巻付けを行う群(20%伸長)と、30%伸長後に自己径巻付けを行う群(30%伸長)との3群に分け、それぞれについて絶縁層の亀裂や割れの有無を目視で確認した。自己径巻付けとしては、直径1mmの芯棒に10回巻き付ける操作を行った。可とう性の評価は、絶縁層に亀裂や割れが確認されなかった場合を「A(良好)」と、絶縁層に亀裂や割れが確認された場合を「B(不良)」と評価した。評価結果を下記表1の「可とう性」の行に示す。10%伸長の群において「A」評価であるものを可とう性に優れる絶縁電線であると評価した。20%伸長の群においても「A」評価であるものは可とう性により優れる絶縁電線であり、30%伸長の群においても「A」評価であるものは可とう性にさらに優れる絶縁電線であると評価できる。
【0066】
[皮膜伸びの評価]
上記作製した絶縁電線No.1からNo.13について、絶縁電線から導体を取り除いてチューブ状の絶縁層としたものを引張試験機((株)島津製作所の「オートグラフAGS-X」)を用いてチャック間距離20mm、10mm/分の速度で引張試験を行い、皮膜伸び(破断伸び)(単位:%)を測定した。結果を下記表1の「皮膜伸び[%]」の行に示す。皮膜伸びが絶縁電線No.13の皮膜伸びよりも大きいものを皮膜伸びに優れる絶縁電線であると評価した。
【0067】
[ガラス転移温度の測定]
上記作製した絶縁電線No.1からNo.13について、絶縁電線から導体を取り除いてチューブ状の絶縁層としたものを粘弾性測定装置((株)日立ハイテクサイエンスの「DMA7100」)を用い、空気下で10℃/分で昇温して、ガラス転移温度(単位:℃)を測定した。結果を下記表1の「ガラス転移温度[℃]」の行に示す。ガラス転移温度が250℃超であるものを高温での比誘電率の変動が小さい絶縁層であると評価した。
【0068】
下記表1中、「酸無水物」は「芳香族テトラカルボン酸二無水物」を意味する。「ジアミン」は「芳香族ジアミン」を意味する。「酸無水物」および「ジアミン」の行における数値の単位はモル%である。「N-メチルスクシンイミド」、「4-ヒドロキシ酪酸」および「モノメチルアミン」の行における数値の単位はppmである。「-」は該当する成分を使用していないことを示す。ただし、「気孔率[体積%]」の行における「-」は該当する絶縁電線の絶縁層が複数の気孔を有していないことを示す。
【0069】
【0070】
表1から、絶縁電線No.1からNo.12は、絶縁電線No.13に比べ、可とう性および皮膜伸びに優れることが分かる。複数の気孔を有する絶縁層を備える絶縁電線No.11およびNo.12は、絶縁電線No.1からNo.10に比べ低誘電率化を図ることができており、複数の気孔を有しているにも関わらず、絶縁電線No.13に比べ可とう性および皮膜伸びに優れることが分かる。