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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103004
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】防災用車両
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/08 20060101AFI20240725BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240725BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20240725BHJP
   F02D 29/04 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
F02D41/08
H02J7/34 D
F02D29/06 E
F02D29/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007117
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000215822
【氏名又は名称】帝国繊維株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130199
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 充弘
(72)【発明者】
【氏名】設樂 篤史
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 光彦
(72)【発明者】
【氏名】岸 秀次郎
【テーマコード(参考)】
3G093
3G301
5G503
【Fターム(参考)】
3G093AA01
3G093AA14
3G093CA04
3G093CA08
3G093DB06
3G093DB15
3G093DB19
3G093DB20
3G093DB23
3G093DB26
3G093DB27
3G093EA03
3G093EB05
3G093EB09
3G301KA07
3G301KA28
3G301ND03
3G301NE01
3G301PF01
3G301PF05
3G301PF11
3G301PF12
3G301PG01
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503EA05
(57)【要約】
【課題】投光器および作業関連の車載電気機器の全体で消費電力が大きい場合であっても、補機用バッテリのバッテリ上がりを防ぎ、消防活動や救助活動が制限されることのない防災用車両を提供する。
【解決手段】走行用エンジン8によって駆動されるオルタネータ14と、補機用バッテリ16と、投光器4および車載電気機器18と、走行用エンジン8から動力取出装置11によって取り出された動力により駆動される油圧作業装置15と、投光器4および車載電気機器18に対する補機用バッテリ16の電力供給の制御および油圧作業装置15の制御を行う架装物主制御部21とを備える。架装物主制御部21は、バッテリ電圧が所定の閾値を下回り、作動状態判定部21bによって油圧作業装置15が動作していないと判定し、さらに、停車状態判定部21cによって停車中であると判定した場合に、エンジン回転数をアイドリングより上昇させる発電量増加モードを行う。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用エンジンと、前記走行用エンジンの動力によって駆動されるオルタネータと、前記オルタネータによって充電される補機用バッテリと、前記補機用バッテリの電力により作動する投光器および車載電気機器と、前記走行用エンジンから動力取出装置によって取り出された動力により駆動される油圧作業装置と、前記投光器および前記車載電気機器に対する前記補機用バッテリの電力供給の制御および前記油圧作業装置の制御を行う架装物主制御部と、を備え、
前記架装物主制御部は、前記補機用バッテリのバッテリ残量を取得するバッテリ残量取得部と、前記油圧作業装置の作動状態を判定する作動状態判定部と、を有し、
前記架装物主制御部は、前記バッテリ残量取得部によって取得された前記バッテリ残量が所定の閾値を下回り、かつ、前記作動状態判定部によって前記油圧作業装置が動作していないと判定した場合に、前記走行用エンジンのエンジン回転数をアイドリングより上昇させる発電量増加モードを行うように構成した、
ことを特徴とする防災用車両。
【請求項2】
前記架装物主制御部は、前記エンジン回転数をアイドリングより上昇させてから所定時間経過後に前記エンジン回転数をアイドリングに戻し、前記バッテリ残量が前記閾値を下回っているかどうかを判定するように構成した、
ことを特徴とする請求項1に記載の防災用車両。
【請求項3】
前記架装物主制御部は、停車中であるか否かを判定する停車状態判定部を有し、
前記架装物主制御部は、前記バッテリ残量が所定の閾値を下回るとともに前記油圧作業装置が動作しておらず、さらに、前記停車状態判定部によって停車中であると判定した場合に、前記発電量増加モードを行うように構成した、
ことを特徴とする請求項2に記載の防災用車両。
【請求項4】
前記架装物主制御部は、前記動力取出装置のオンオフを切り替えるPTOスイッチと電気的に接続され、
前記作動状態判定部は、前記PTOスイッチがオフの場合に前記油圧作業装置が動作していないと判定するように構成した、
ことを特徴とする請求項3に記載の防災用車両。
【請求項5】
前記架装物主制御部は、パーキングブレーキのオンオフを切り替えるパーキングブレーキスイッチと電気的に接続され、
前記停車状態判定部は、前記パーキングブレーキスイッチがオンの場合に停車中であると判定するように構成した、
ことを特徴とする請求項3または4に記載の防災用車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン装置等の油圧作業装置と投光器とを搭載した防災用車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災や災害時において、消防活動や救助活動を円滑に支援するための防災用車両が用いられている。防災用車両としては、クレーン装置やウインチ装置等の油圧作業装置と、投光器と、活動支援のための必要な機材を収納するための収納庫とを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
防災用車両には、投光器の他に、走行や作業のために使用される各種の車載電気機器が搭載されている。従来の防災用車両には、投光器および車載電気機器への電力供給が、補器用バッテリから行われるものがあった。補機用バッテリは、走行関連の車載電気機器に電力を供給するためにシャシメーカーが設けたものであり、オルタネータの発電電力によって充電される。オルタネータは、走行用エンジンの動力がオルタネータベルトを介して伝達されることによって駆動される。オルタネータは、シャシメーカーによって設けられる。オルタネータは、補機用バッテリを充電することによって、投光器や車載電気機器への電力供給を行って補機用バッテリのバッテリ残量を一定レベルに維持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-008146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の防災用車両では、消防活動や救助活動の間、投光器や作業関連の車載電気機器は、走行用エンジンの停止状態またはアイドリング状態で使用されていた。この際、投光器の他、消費電力の大きい複数の車載電機器を同時に使用することがあった。そのため、走行用エンジンをアイドリング状態にしてオルタネータにより補機用バッテリを充電しながら機器を使用した場合であっても、消費電力がオルタネータの発電量を上回ることがあった。そして、投光器および車載電気機器の全体の消費電力がオルタネータの発電量を上回った状態が長く続くと、バッテリ上がりが生じるおそれがあった。これにより、従来では、投光器および作業関連の車載電気機器の搭載数が制限されたり、消防活動や救助活動の時間が制限されたりするという問題があった。
【0006】
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、その目的は、投光器および作業関連の車載電気機器の全体で消費電力が大きい場合であっても、補機用バッテリのバッテリ上がりを防ぎ、消防活動や救助活動が制限されることのない防災用車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために本明細書に開示する発明は、以下のように構成されている。すなわち、第1の発明は、走行用エンジンと、前記走行用エンジンの動力によって駆動されるオルタネータと、前記オルタネータによって充電される補機用バッテリと、前記補機用バッテリの電力により作動する投光器および車載電気機器と、前記走行用エンジンから動力取出装置によって取り出された動力により駆動される油圧作業装置と、前記投光器および前記車載電気機器に対する前記補機用バッテリの電力供給の制御および前記油圧作業装置の制御を行う架装物主制御部と、を備え、前記架装物主制御部は、前記補機用バッテリのバッテリ残量を取得するバッテリ残量取得部と、前記油圧作業装置の作動状態を判定する作動状態判定部と、を有し、前記架装物主制御部は、前記バッテリ残量取得部によって取得された前記バッテリ残量が所定の閾値を下回り、かつ、前記作動状態判定部によって前記油圧作業装置が動作していないと判定した場合に、前記走行用エンジンのエンジン回転数をアイドリングより上昇させる発電量増加モードを行うように構成したことを特徴とする。
【0008】
第1の発明によれば、補機用バッテリのバッテリ残量が所定の閾値を下回り、かつ、油圧作業装置が動作していない場合に、走行用エンジンのエンジン回転数をアイドリングより上昇させる発電量増加モードが行われる。この構成により、バッテリ残量が所定の閾値を下回るとオルタネータの発電量を増加させることができる。これにより、消防活動や救助活動の活動中に使用される投光器および作業関連の車載電気機器の全体の消費電力が大きくなったとしても、その消費電力よりもオルタネータで発電される電力の方が大きくなるようにできる。これにより、バッテリ残量が活動中に閾値よりも減少していくことを防ぐことができ、活動中における投光器および作業関連の車載電気機器の数や活動時間が制限されることのない防災用車両にできる。
【0009】
また、油圧作業装置は、走行用エンジンから動力取出装置によって取り出された動力により駆動されるところ、油圧作業装置が動作していない場合に、走行用エンジンのエンジン回転数をアイドリングより上昇させる。これにより、走行用エンジンのエンジン回転数が油圧作業装置の動作中に不適切に上昇して油圧作業装置の動作に不具合が生じることを防止することができ、安全である。一方で、油圧作業装置の使用時には、油圧作業装置の油圧アクチュエータに十分な作動油を供給するために、油圧アクチュエータの動作に合わせて走行用エンジンのエンジン回転数を上昇させることが一般的である。これにより、油圧作業装置を使用した活動中は、油圧アクチュエータの動作に合わせてオルタネータの発電量が増加するので、バッテリ残量が活動中に閾値よりも減少していくことを防ぐことができる。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、前記架装物主制御部は、前記エンジン回転数をアイドリングより上昇させてから所定時間経過後に前記エンジン回転数をアイドリングに戻し、前記バッテリ残量が前記閾値を下回っているかどうかを判定するように構成したことを特徴とする。
【0011】
第2の発明によれば、バッテリ残量が閾値を下回ってエンジン回転数を上昇させた後、消防活動や救助活動が終了するまでエンジン回転数がアイドリングよりも高い状態を維持するのではなく、活動中定期的にアイドリングに戻すことになる。そして、バッテリ残量が閾値を上回っているのであればアイドリングを維持し、バッテリ残量が閾値を下回っていれば再度エンジン回転数を上昇させることができる。これにより、必要とされる間だけオルタネータの発電量を増加させることができるので、走行用エンジンの燃料消費量を抑制しつつ、活動中における投光器および作業関連の車載電気機器の数や活動時間が制限されることのない防災用車両にできる。
【0012】
第3の発明では、第2の発明において、前記架装物主制御部は、停車中であるか否かを判定する停車状態判定部を有し、前記架装物主制御部は、前記バッテリ残量が所定の閾値を下回るとともに前記油圧作業装置が動作しておらず、さらに、前記停車状態判定部によって停車中であると判定した場合に、前記発電量増加モードを行うように構成した、ことを特徴とする。
【0013】
第3の発明によれば、バッテリ残量が所定の閾値を下回った場合、油圧作業装置が動作していないことに加えて、停車中であることを条件として、発電量増加モードが行われる。これにより、車両走行中に走行用エンジンの回転数を投光器および作業関連の車載電気機器のために上昇させて車両走行に影響を与えることを防止できる。
【0014】
第4の発明では、第3の発明において、前記架装物主制御部は、前記動力取出装置のオンオフを切り替えるPTOスイッチと電気的に接続され、前記作動状態判定部は、前記PTOスイッチがオフの場合に前記油圧作業装置が動作していないと判定するように構成したことを特徴とする。
【0015】
第4の発明によれば、油圧作業装置は、動力取出装置がオフの場合に駆動できないことから、PTOスイッチがオフの場合に油圧作業装置が動作していないと判定しても問題ない。PTOスイッチのオンオフで油圧作業装置の作動状態を判定することにより、簡単かつ確実に判定することができる。
【0016】
第5の発明では、第3または第4の発明において、前記架装物主制御部は、パーキングブレーキのオンオフを切り替えるパーキングブレーキスイッチと電気的に接続され、前記停車状態判定部は、前記パーキングブレーキスイッチがオンの場合に停車中であると判定するように構成したことを特徴とする。
【0017】
第5の発明によれば、防災用車両は、一瞬だけ停止したのではなく継続的に停止し、かつ、傾斜地でも容易に移動しないことが、パーキングブレーキスイッチのオンに基づく判定によって簡単かつ確実に判定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る防災用車両によれば、投光器および作業関連の車載電気機器の全体で消費電力が大きい場合であっても、補機用バッテリのバッテリ上がりを防ぎ、消防活動や救助活動が制限されることのないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る防災用車両の側面図である。
図2】本実施形態に係る防災用車両の投光器および車載電気機器への電力供給のための構成と油圧作業装置の構成とを示す電気・油圧概略回路図である。
図3】本実施形態に係る防災用車両の架装物主制御部を中心とした制御ブロック図である。
図4】本実施形態に係る防災用車両の補機用バッテリの充電・電力供給制御を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る防災用車両1の側面図である。図1において、本実施形態の防災用車両1は、車両前部に設けられたキャブ2と、キャブ2の後方に設けられ、活動支援に必要な資機材を収納するための収納庫3と、クレーン等の油圧作業装置15と、収納庫3の上部に設けられた投光器4と、を備えている。
【0022】
キャブ2は例えばダブルキャブとなっており、前列には運転席が設けられ、後列には複数の隊員が座る後部座席が設けられている(図示省略)。キャブ2内の後部座席の上方には、隊員の快適性を向上させるためのエアコン6が設けられている。運転席および後部座席の床下には、走行用エンジン8と、走行用エンジン8の動力によって駆動されるシャシ付属のオルタネータ14と、走行用エンジン8の後端に連設されるクラッチ・トランスミッション部9とが設けられている。オルタネータ14は、オルタネータベルト13によって走行用エンジン8から動力が伝達されるように構成されている。オルタネータ14は、DC24Vの出力を行う。
【0023】
クラッチ・トランスミッション部9には、走行用エンジン8の動力を取り出すための動力取出装置11が設けられている。動力取出装置11の動力取出口には、PTOシャフト12の一端部が連結されている。PTOシャフト12の他端部には、油圧ポンプ151が連結されている。
【0024】
収納庫3の下部には、補機用バッテリ16が設けられている。補機用バッテリ16は、DC24Vの鉛バッテリからなり、投光器4および車載電気機器18に電力を供給する。車載電気機器18としては、上記エアコン6の他、キャブ2に設けられたヘッドライト5、収納庫3の側面に設けられた赤色灯7等が含まれている。
【0025】
図2は、本実施形態に係る防災用車両1の投光器4および車載電気機器18への電力供給のための構成と油圧作業装置15の構成とを示す電気・油圧概略回路図である。図2に示すように、オルタネータ14は、第1電力供給ライン19aによって補機用バッテリ16と接続されている。補機用バッテリ16は、オルタネータ14によって充電されるように構成されている。第1電力供給ライン19aには、第2電力供給ライン19bと第3電力供給ライン19cが接続されている。第2電力供給ライン19bの下流側には、車載電気機器18が接続されている。また、第3電力供給ライン19cの下流側には、配電盤17を介して投光器4が接続されている。投光器4は、例えば、LED光源であって、DC24VやAC100Vで駆動するものが使用される。配電盤17は投光器4を制御する。AC100Vで駆動する投光器4の場合は、配電盤17に設けられたDC-ACインバータによって電圧変換される。
【0026】
油圧作業装置15は、油圧駆動のクレーンおよびウインチを備えている。油圧作業装置15は、油圧ポンプ151と、作動油タンク152と、ソレノイドバルブ153と、クレーン用アクチュエータ154と、ウインチ用アクチュエータ155とを有し、これらの要素機器が油圧配管156によって接続されている。油圧配管156によって作動油の循環流路が形成される。油圧ポンプ151は、走行用エンジン8から動力取出装置11によって取り出された動力によって駆動される。
【0027】
図3は、本実施形態に係る防災用車両1の架装物主制御部21を中心とした制御ブロック図である。図3に示すように、本実施形態の防災用車両1は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)からなる架装物主制御部21を備えている。架装物主制御部21は、投光器4および車載電気機器18に対する補機用バッテリ16の電力供給の制御および油圧作業装置15の制御を行う。架装物主制御部21は、バッテリ残量取得部21a、作動状態判定部21b、停車状態判定部21c、計時部21d、油圧切替判定部21e、および、エンジン回転設定部21fを有している。また、架装物主制御部21には、パーキングブレーキスイッチ22、PTOスイッチ23、油圧切替スイッチ24、エンジン制御部25、および、ソレノイドバルブ153が電気的に接続されている。
【0028】
パーキングブレーキスイッチ22は、図示省略のパーキングブレーキのオンオフを切り替える。パーキングブレーキスイッチ22は、防災用車両1の停車時や駐車時にオンにされる。パーキングブレーキスイッチ22がオンにされると、車両の移動が規制される。PTOスイッチ23は、動力取出装置11のオンオフを切り替える。PTOスイッチ23がオンにされると、動力取出装置11が接続状態となる。この場合、走行用エンジン8の駆動力は、クラッチ・トランスミッション部9、動力取出装置11、およびPTOシャフト12を介して、油圧ポンプ151に伝達される。PTOスイッチ23がオフにされると、動力取出装置11が切断状態となる。油圧切替スイッチ24は、油圧作業装置15のうち、クレーン用アクチュエータ154の動作を有効にしてクレーンを使用するか、または、ウインチ用アクチュエータ155の動作を有効にしてウインチを使用するかを切り替えるために設けられている。エンジン制御部25は、走行用エンジン8の動作制御を行うためにシャシメーカーによって設けられている。ソレノイドバルブ153は、クレーン用アクチュエータ154またはウインチ用アクチュエータ155に対する作動油の流れを変えることによってクレーン用アクチュエータ154またはウインチ用アクチュエータ155の動作を制御するためのバルブである。
【0029】
バッテリ残量取得部21aは、補機用バッテリ16のバッテリ残量としてバッテリ電圧を取得する。作動状態判定部21bは、PTOスイッチ23がオンとオフのどちらに選択されているかの情報を取得する。作動状態判定部21bは、PTOスイッチ23がオフの場合に油圧作業装置15が動作していないと判定する。停車状態判定部21cは、パーキングブレーキスイッチ22がオンとオフのどちらに選択されているかの情報を取得する。停車状態判定部21cは、パーキングブレーキスイッチ22がオンの場合に停車中であると判定する。油圧切替判定部21eは、油圧切替スイッチ24がクレーン側とウインチ側のどちらに選択されているかの情報を取得する。油圧切替判定部21eは、油圧切替スイッチ24がクレーン側の場合にクレーン用アクチュエータ154の動作を有効にする。架装物主制御部21は、油圧切替判定部21eの判定結果に基づいて、ソレノイドバルブ153にクレーン用の出力を行う。また、架装物主制御部21は、エンジン回転設定部21fとは別回路で、クレーン用アクチュエータ154の動作に合わせて走行用エンジン8のエンジン回転数をクレーン用に上昇させる制御を行う。
【0030】
また、油圧切替判定部21eは、油圧切替スイッチ24がウインチ側の場合にウインチ用アクチュエータ155の動作を有効にする。架装物主制御部21は、油圧切替判定部21eの判定結果に基づいて、ソレノイドバルブ153にウインチ用の出力を行う。また、架装物主制御部21は、エンジン回転設定部21fとは別回路で、ウインチ用アクチュエータ155の動作に合わせて走行用エンジン8のエンジン回転数をウインチ用に上昇させる制御を行う。
【0031】
エンジン回転設定部21fは、後述の発電量増加モードを行うために、エンジン制御部25に対し走行用エンジン8のエンジン回転数に関する出力を行う。エンジン回転設定部21fは、アイドリングのエンジン回転数とアイドリングよりも高い所定のエンジン回転数(例えば1200rpm程度)の2種類の出力を行う。計時部21dは、エンジン回転設定部21fによってエンジン回転数をアイドリングより上昇させてからの経過時間を計測するために設けられている。
【0032】
架装物主制御部21は、バッテリ残量取得部21aによって取得された補機用バッテリ16のバッテリ電圧が所定の閾値を下回り、油圧作業装置15が動作しておらず、さらに、停車中と判定した場合に、発電量増加モードを行う。発電量増加モードは、走行用エンジン8のエンジン回転数をアイドリングより上昇させ、アイドリングより上昇させてから所定時間経過後にエンジン回転数をアイドリングに戻す制御である。所定時間は、例えば30分に設定される。架装物主制御部21は、発電量増加モードを行った後、補機用バッテリ16のバッテリ電圧が所定の閾値を下回っているかどうかの判定を再度行うように構成されている。
【0033】
次に、上記構成の防災用車両1について、投光器4および車載電気機器18への電力供給の制御について説明する。図4は、本実施形態に係る防災用車両1の補機用バッテリ16の充電・電力供給制御を説明するためのフロー図である。
【0034】
まず、ステップS01において、防災用車両1の走行用エンジン8が始動される。次に、ステップS02において、架装物主制御部21は、停車状態判定部21cにより停車中であるか否かを判定する。パーキングブレーキスイッチ22がオンで停車中と判定された場合(ステップS02でYES)、ステップS03へ進む。パーキングブレーキスイッチ22がオフで停車中でないと判定された場合(ステップS02でNO)、ステップS08へ進む。
【0035】
ステップS03において、架装物主制御部21は、作動状態判定部21bによりPTOスイッチ23がオフか否かを判定する。架装物主制御部21は、PTOスイッチ23がオフの場合、油圧作業装置15が動作していないと判定し(ステップS03でYES)、ステップS04へ進む。架装物主制御部21は、PTOスイッチ23がオンの場合、油圧作業装置15が動作していると判定し(ステップS03でNO)、ステップS08へ進む。
【0036】
ステップS04において、架装物主制御部21は、バッテリ残量取得部21aにより補機用バッテリ16のバッテリ電圧を計測する。次に、ステップS05において、架装物主制御部21は、取得されたバッテリ電圧が、所定の閾値を下回っているか否かを判定する。架装物主制御部21は、バッテリ電圧が所定の閾値未満である場合、発電量増加モードに移行すべきであると判定し(ステップS05でYES)、ステップS06へ進む。一方、架装物主制御部21は、バッテリ電圧が所定の閾値以上である場合、発電量増加モードに移行すべきでないと判定し(ステップS05でNO)、ステップS02へ戻る。
【0037】
ステップS06において、架装物主制御部21は、エンジン回転設定部21fにより、走行用エンジン8のエンジン回転数をアイドリングよりも高い所定のエンジン回転数(例えば1200rpm程度)に上昇させる。これにより、発電量増加モードが開始される。次に、ステップS07において、架装物主制御部21は、計時部21dにより、エンジン回転数をアイドリングより上昇させてからの経過時間を計測する。架装物主制御部21は、エンジン回転数をアイドリングより上昇させてから所定時間経過後(例えば30分後)、エンジン回転数をアイドリングに戻す。これにより、発電量増加モードは終了する。その後、ステップS08へ進む。
【0038】
ステップS08において、走行用エンジン8が駐車等で停止される場合、制御フローは終了する(ステップS08でYES)。走行用エンジン8が停止されない場合(ステップS08でNO)には、ステップS02へ戻る。つまり、走行用エンジン8が停止されない限り、発電量増加モードに移行するか否かの判定と判定結果に基づいた発電量増加モードの実施とが繰り返されることになる。
【0039】
以上のとおり、本実施形態に係る防災用車両1によれば、走行用エンジン8と、走行用エンジン8の動力によって駆動されるオルタネータ14と、オルタネータ14によって充電される補機用バッテリ16と、補機用バッテリ16の電力により作動する投光器4および車載電気機器18と、走行用エンジン8から動力取出装置11によって取り出された動力により駆動される油圧作業装置15と、投光器4および車載電気機器18に対する補機用バッテリ16の電力供給の制御および油圧作業装置15の制御を行う架装物主制御部21とを備えている。架装物主制御部21は、補機用バッテリ16のバッテリ残量をバッテリ電圧により取得するバッテリ残量取得部21aと、油圧作業装置15の作動状態を判定する作動状態判定部21bと、停車中であるか否かを判定する停車状態判定部21cとを有する。架装物主制御部21は、バッテリ残量取得部21aによって取得されたバッテリ電圧が所定の閾値を下回り、作動状態判定部21bによって油圧作業装置15が動作していないと判定し、さらに、停車状態判定部21cによって停車中であると判定した場合に、走行用エンジン8のエンジン回転数をアイドリングより上昇させる発電量増加モードを行うように構成している。
【0040】
上記構成によれば、補機用バッテリ16のバッテリ電圧が所定の閾値を下回るとオルタネータ14の発電量を増加させることができる。これにより、消防活動や救助活動の活動中に使用される投光器4および作業関連の車載電気機器18の全体の消費電力が大きくなったとしても、その消費電力よりもオルタネータ14で発電される電力の方が大きくなるようにできる。これにより、バッテリ電圧が活動中に閾値よりも減少していくことを防ぐことができ、活動中における投光器4および作業関連の車載電気機器18の数や活動時間が制限されることがない。
【0041】
また、油圧作業装置15は、走行用エンジン8から動力取出装置11によって取り出された動力により駆動されるところ、油圧作業装置15が動作していない場合に、走行用エンジン8のエンジン回転数をアイドリングより上昇させる。これにより、走行用エンジン8のエンジン回転数が油圧作業装置15の動作中に不適切に上昇して油圧作業装置15の動作に不具合が生じることを防止することができ、安全である。また、バッテリ電圧が所定の閾値を下回った場合、油圧作業装置15が動作していないことに加えて、停車中であることを条件として、発電量増加モードが行われる。これにより、車両走行中に走行用エンジン8の回転数を投光器4および作業関連の車載電気機器18のために上昇させて車両走行に影響を与えることを防止できる。
【0042】
また、油圧作業装置15の使用時、架装物主制御部21は、エンジン回転設定部21fとは別回路で、クレーン用アクチュエータ154の動作に合わせて走行用エンジン8のエンジン回転数をクレーン用に上昇させる制御を行う。または、架装物主制御部21は、エンジン回転設定部21fとは別回路で、ウインチ用アクチュエータ155の動作に合わせて走行用エンジン8のエンジン回転数をウインチ用に上昇させる制御を行う。これにより、油圧作業装置15を使用した活動中は、クレーン用アクチュエータ154またはウインチ用アクチュエータ155の動作に合わせてオルタネータ14の発電量が増加するので、バッテリ電圧が活動中に閾値よりも減少していくことを防ぐことができる。
【0043】
また、上記実施形態では、架装物主制御部21は、走行用エンジン8のエンジン回転数をアイドリングより上昇させてから所定時間経過後にエンジン回転数をアイドリングに戻し、バッテリ電圧が閾値を下回っているかどうかを判定するように構成している。
【0044】
上記構成によれば、バッテリ電圧が閾値を下回ってエンジン回転数を上昇させた後、消防活動や救助活動が終了するまでエンジン回転数がアイドリングよりも高い状態を維持するのではなく、活動中定期的にアイドリングに戻すことになる。そして、バッテリ電圧が閾値を上回っているのであればアイドリングを維持し、バッテリ電圧が閾値を下回っていれば再度エンジン回転数を上昇させることができる。これにより、必要とされる間だけオルタネータ14の発電量を増加させることができるので、走行用エンジン8の燃料消費量を抑制しつつ、活動中における投光器4および作業関連の車載電気機器18の数や活動時間が制限されることがない。
【0045】
また、上記実施形態では、架装物主制御部21は、動力取出装置11のオンオフを切り替えるPTOスイッチ23と電気的に接続され、作動状態判定部21bは、PTOスイッチ23がオフの場合に油圧作業装置15が動作していないと判定するように構成している。
【0046】
上記構成によれば、油圧作業装置15は、動力取出装置11がオフの場合に駆動できないことから、PTOスイッチ23がオフの場合に油圧作業装置15が動作していないと判定しても問題ない。PTOスイッチ23のオンオフで油圧作業装置15の作動状態を判定することにより、簡単かつ確実に判定することができる。
【0047】
また、上記実施形態では、架装物主制御部21は、パーキングブレーキのオンオフを切り替えるパーキングブレーキスイッチ22と電気的に接続され、停車状態判定部21cは、パーキングブレーキスイッチ22がオンの場合に停車中であると判定するように構成している。
【0048】
上記構成によれば、防災用車両1は、一瞬だけ停止したのではなく継続的に停止し、かつ、傾斜地でも容易に移動しないことが、パーキングブレーキスイッチ22のオンに基づく判定によって簡単かつ確実に判定することができる。
【0049】
今回、開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。本発明の技術的範囲は、前記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【0050】
例えば、上記実施形態では、補機用バッテリ16のバッテリ残量を取得するバッテリ残量取得部21aは、バッテリ電圧に基づいてバッテリ残量を判定していた。本発明はこれに限らず、補機用バッテリから入出力される電流に基づいて補機用バッテリのバッテリ残量を判定してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 防災用車両
4 投光器
8 走行用エンジン
11 動力取出装置
14 オルタネータ
15 油圧作業装置
16 補機用バッテリ
18 車載電気機器
21 架装物主制御部
21a バッテリ残量取得部
21b 作動状態判定部
21c 停車状態判定部
22 パーキングブレーキスイッチ
23 PTOスイッチ
図1
図2
図3
図4