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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103026
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】動物用サポーター
(51)【国際特許分類】
   A01K 15/00 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
A01K15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007146
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 莉咲
(57)【要約】
【課題】長時間の着用においてもズレ落ちなく動物が快適に使用することができ、かつ膝蓋骨を、その大きさや形状、脱臼の症状に合わせて適正な位置に保持することができる動物用サポーターを提供する。
【解決手段】動物用サポーターであって、膝関節の膝蓋骨に対応する開口部が形成され、前記膝蓋骨を保持する膝蓋骨保持部が設けられていることを特徴とする動物用サポーターであり、前記膝蓋骨保持部が着脱自在かつ左右に可動域があり取付位置の調整が可能であることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物用サポーターであって、膝関節の膝蓋骨に対応する開口部が形成され、かつ前記膝蓋骨を保持する膝蓋骨保持部が設けられていることを特徴とする動物用サポーター。
【請求項2】
前記開口部の横縁に沿って前記膝蓋骨保持部が設けられている、請求項1に記載の動物用サポーター。
【請求項3】
前記膝蓋骨保持部が膝蓋骨の形状に沿って湾曲した三日月状の形をしている、請求項1に記載の動物用サポーター。
【請求項4】
前記膝蓋骨保持部が着脱自在かつ左右に可動域があり取付位置の調整が可能である、請求項1に記載の動物用サポーター。
【請求項5】
前記膝蓋骨保持部がポリエステル極細糸を含む編地からなる、請求項1に記載の動物用サポーター。
【請求項6】
前記ポリエステル極細糸の単繊維径が200~2000nmである、請求項5に記載の動物用サポーター。
【請求項7】
サポーター本体が装着用伸縮ベルトを備えている、請求項1に記載の動物用サポーター。
【請求項8】
サポーター本体が伸縮性を有している、請求項1に記載の動物用サポーター。
【請求項9】
サポーター本体の表面が面ファスナーの雄材または雌材からなる、請求項1に記載の動物用サポーター。
【請求項10】
前記サポーター本体の裏面が密着性のある素材からなる、請求項1に記載の動物用サポーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長時間の着用においてもズレ落ちなく動物が快適に使用することができ、かつ膝蓋骨の大きさや形状、脱臼の症状に合わせて適正な位置に保持することができる動物用サポーターに関する。
【背景技術】
【0002】
膝関節にある膝蓋骨の脱臼(通称、膝蓋骨脱臼)は、足の膝にある膝蓋骨が内側または外側にズレて起こる脱臼であり、人間だけでなく動物でも見られる症状である。膝蓋骨脱臼により、膝蓋骨が本来の位置から内側または外側へ繰り返しズレると、軟骨表面や骨格が変形し歩行が困難になる可能性がある。特に小型犬に見られる膝蓋骨脱臼は、先天性が多く、成長に伴って症状が進行していく場合が多い。症状の進行を防ぐためには、健康管理や獣医師による定期健診が推奨されているが、処置対象が無症状の場合は飼い主が無自覚のまま症状が進行し、症状が出始めたころには手術が必要となる場合が少なくない。膝蓋骨脱臼は症状によってグレードが存在しており、初期グレードに属するうちに本来の位置からズレが生じにくいような対策を打つことが求められる。
【0003】
近年は、膝関節周辺の脱臼や、打撲、骨折などを起こした場合に使用するサポーターの提案がされ始めている。
例えば、動物への装着が容易で、動物の体型の違いなどにも容易に適合させ、効果的に脚部における膝関節や足根関節の動きを拘束したり制限したりすることができ、容易に外すことができないように動物の脚部にしっかりと保持させることができる動物用脚部サポーター装具が提供されている(先行文献1)。
【0004】
また、膝関節周辺をサポーターが被覆する設計が施されるとともに、膝蓋骨を支える保持部が下側や上側、または膝蓋骨周辺を囲うように設置され、膝のぐらつきを防ぐための措置がなされたサポーターも提案されている(特許文献2)。
【0005】
しかしながら、従来の装具では、処置対象の足に保持させることに特化しており、日常的な動きでサポーターが本来の位置からズレてもその状態で固定され、悪化してしまうおそれや、人間の骨格形状を基盤として作られているため、動物の骨格形状と合わず、適切な効果が得られないおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-211657号公報
【特許文献2】実用新案登録第0312048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、長時間の着用においてもズレ落ちなく動物が快適に使用することができ、かつ膝蓋骨を、その大きさや形状、脱臼の症状に合わせて適正な位置に保持することができる動物用サポーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を達成するため鋭意検討した結果、膝蓋骨保持部を工夫することにより、長時間の着用においてもズレ落ちがなく動物が快適に使用することができ、かつ膝蓋骨を、大きさや形状、脱臼の症状に合わせて適正な位置に保持することができる動物用サポーターが得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。かくして以下の本発明が提供される。
【0009】
1.動物用サポーターであって、膝関節の膝蓋骨に対応する開口部が形成され、かつ前記膝蓋骨を保持する膝蓋骨保持部が設けられていることを特徴とする動物用サポーター。
2.前記開口部の横縁に沿って前記膝蓋骨保持部が設けられている、上記1に記載の動物用サポーター。
3.前記膝蓋骨保持部が膝蓋骨の形状に沿って湾曲した三日月状の形をしている、上記1または2に記載の動物用サポーター。
4.前記膝蓋骨保持部が着脱自在かつ左右に可動域があり取付位置の調整が可能である、上記1~3のいずれかに記載の動物用サポーター。
5.前記膝蓋骨保持部がポリエステル極細糸を含む編地からなる上記1~4のいずれかに記載の動物用サポーター。
6.前記ポリエステル極細糸の単繊維径が200~2000nmである、上記5に記載の動物用サポーター。
7.サポーター本体が装着用伸縮ベルトを備えている、上記1~6のいずれかに記載の動物用サポーター。
8.サポーター本体が伸縮性を有している、上記1~7のいずれかに記載の動物用サポーター。
9.サポーター本体の表面が面ファスナーの雄材または雌材からなる、上記1~8のいずれかに記載の動物用サポーター。
10.前記サポーター本体の裏面が密着性のある素材からなる、上記1~9のいずれかに記載の動物用サポーター。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、長時間の着用においてもズレ落ちなく動物が快適に使用することができ、かつ膝蓋骨を、その大きさや形状、脱臼の症状に合わせて適正な位置に保持することができる動物用サポーターが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】膝蓋骨保持部装着前のサポーターの表面図(写真)である。
図2】膝蓋骨保持部装着前のサポーターの裏面図(写真)である。
図3】装着前の膝蓋骨保持部の図(写真)である。
図4】膝蓋骨保持部装着後のサポーター表面図(写真)である。
図5】膝蓋骨保持部装着後のサポーター裏面図(写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の動物用サポーターはヒト以外の犬や猫などの動物用サポーターであって、膝関節の膝蓋骨に対応する開口部が形成され、好ましくは前記開口部の横縁に沿って、前記膝蓋骨を保持する膝蓋骨保持部が設けられている。
【0013】
その際、前記膝蓋骨保持部が膝蓋骨の形状に沿って湾曲した三日月状の形をしていると、膝蓋骨が本来の位置から外れようとしたときに膝蓋骨保持部によって、適切な方向から加圧され保持されやすくなるため好ましい。
【0014】
また、前記膝蓋骨保持部が着脱自在かつ左右に可動域があり取付位置の調整が可能であると、膝蓋骨の大きさや形状、脱臼の症状に違いがあっても膝蓋骨保持部をそれぞれ適正位置に取り付けることができるため好ましい。
【0015】
また、前記膝蓋骨保持部がポリエステル極細糸(好ましくはポリエステルナノファイバー糸)を含む編地からなっていると、ポリエステル極細糸はグリップ力が大きいため膝蓋骨と膝蓋骨保持部がズレ難く、さらに生地が編地のため膝蓋骨の動きに沿って膝蓋骨保持部も追従しズレ難いため好ましい。
【0016】
前記ポリエステル極細糸は、これを形成するポリマーがポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステル、さらにはリサイクル(ケミカルまたはマテリアル)ポリエステルなどであり、単繊維径(単繊維の直径)が200~2000nm、より好ましくは単繊維径(単繊維の直径)が1000nm以下(特に好ましくは250~800nm)のポリエステルナノファイバー糸であることが好ましい。
【0017】
また、前記サポーター本体が装着用伸縮ベルトを備えていると、装着対象の膝関節の大きさや形状の違いに関わらず巻き付け力が調整でき、かつ密着して装着できるためズレ難く好ましい。
【0018】
また、前記サポーター本体が伸縮性を有していると、装着した膝関節に密着しズレ難くなるため好ましい。なお、伸縮性とは、一般的な編地(緯編地および経編地)の持つ伸縮性レベルを意味する。例えば、JIS L1096-2010 8.16.1 D法にて伸び率を測定して1%以上(より好ましくは5~80%)であることが好ましい。
【0019】
また、前記サポーター本体の表面部材が、面ファスナーが貼りつく素材(雌材または雄材)からなると、巻き付け時の伸縮性ベルトの位置調整や膝関節への締め付け具合の調整が簡単にできて好ましい。
【0020】
また、前記サポーター本体の裏面部材が密着性のある素材からなると、サポーターと膝関節がしっかりと密着しズレ難くなり好ましい。なお、密着性のある素材とは、膝関節に巻き付けたとき、膝関節との摩擦係数が大きく滑りにくい素材を意味する。例えば、測定機器KES-FB4-A表面試験機で測定した平均摩擦係数MIUが0.1以上であると滑り難く好ましい。
【0021】
以下、図面を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによってなんら限定されるものではない。
図1は、膝蓋骨保持部装着前のサポーター(犬用)表面図であり、図2は、膝蓋骨装着前のサポーター裏面図である。図2のサポーター裏面に図3の膝蓋骨保持部を取付けて図4および図5に示す本発明のサポーターが作製される。図1図2に示すように、膝蓋骨保持部装着前のサポーターは、表面部材(2)、裏面部材(3)、開口部(4)、膝蓋骨保持部取付用切り込み(5)、上部ベルト(6)、下部ベルト(7)、および面ファスナーA(8)からなる。
【0022】
まず、サポーター本体用の表面部材と裏面部材を接着または縫合により一体化し、膝蓋骨に対応する開口部および膝蓋骨保持部取付用切り込み(上部、中央、下部の3ヶ所)を開口しサポーター本体を形成する。次に上部伸縮性ベルトおよび下部伸縮性ベルトに面ファスナーを縫合し、それぞれを本体に縫合することにより図1および図2の膝蓋骨装着前のサポーターが形成される。
【0023】
上記表面部材は、サポーターを装着したときに面ファスナーがしっかりと貼りつくようなループやパイル調素材が好ましく、裏面部材は、膝関節に密着しズレ難い素材が好ましい。例えば、表面部材は経編地(ハーフ組織、サテン組織等)、裏面部材はウレタン樹脂発泡体などが例示される。
【0024】
次に、膝蓋骨保持部は図3に示すように、本体(10)、上部ベルト(11)、中央ベルト(12)、および下部ベルト(13)、および面ファスナーB(9)からなる。
まず、上部ベルト、中央ベルト、および下部ベルトが付いたベース地を形成し各ベルトの先端に面ファスナーを縫合する。次に膝蓋骨保持部本体を前記ベース地に縫合し一体化して形成される。前記ベース地の部材は特に限定されないが、例えば表面部材と同じ経編地(ハーフ組織、サテン組織等)が例示される。また、膝蓋骨保持部本体は膝蓋骨を保持するためのものであり、グリップ力に優れるものが良く、例えばポリエステル極細糸(特に好ましくはポリエステルナノファイバー糸)を含む編地からなるものが好ましい。
【0025】
なお、サポーター本体の上部ベルト(6)、下部ベルト(7)、および膝蓋骨保持部の上部ベルト(11)、中央ベルト(12)、および下部ベルト(13)に縫合される面ファスナーの部材は、特に限定されないが、例えば、特許第5692958号公報に例示されるようなポリエステルナノファイバー糸を含む面ファスナーであると、カットパイルからなる立毛布帛を雄材としているため、通常のカギ状またはキノコ状などのフック部を有する雄材からなる面ファスナー、または粘着テープを用いた場合よりもペットの毛がファスナーにつきにくく基布部も柔軟なためペットの体にも優しく装着でき、さらに着脱も容易であり好ましい。
【0026】
ここで、ポリエステルナノファイバー糸は、これを形成するポリマーがポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステル、さらにはリサイクル(ケミカルまたはマテリアル)ポリエステルなどであり、単繊維径(単繊維の直径)が1000nm以下、より好ましくは250~800nmであるものがよい。かかる糸からなる編地はグリップ力が高くなり、膝蓋骨に密着して滑りにくく、ズレが生じ難くなる。
【0027】
図4図5は、サポーター本体に膝蓋骨保持部を取付けた後のサポーターを示している。膝蓋骨保持部の3つのベルトをサポーター本体の3つの切り込みに差し込み、膝蓋骨の位置に合せて面ファスナーで固定することにより本発明のサポーターが形成される。
【0028】
上記により得られた膝蓋骨保持部が取り付けられた本発明のサポーターを、上部伸縮性ベルトおよび下部伸縮性ベルトを用いて膝関節に巻きつけた場合、前記ベルトの面ファスナーが表面部材に貼りついてサポーター本体が膝関節にしっかり装着され、その裏面部材は膝関節に密着するため位置ズレを起こしにくい。
【0029】
また、膝蓋骨保持部は着脱自在かつ左右に可動域があり、膝蓋骨の大きさや形状、脱臼の症状に合わせて調整し装着することができ、さらにポリエステル極細糸を含む編地からなるため、高グリップ力により膝蓋骨の動きに沿って追従し膝蓋骨をしっかり保持することが可能である。
【0030】
上述のように、本発明のサポーターは、長時間の着用においてもズレ落ちなく動物(犬や猫など)が快適に使用することができ、かつ膝蓋骨の大きさや形状、脱臼の症状に合わせて適正な位置に保持することができる。
【0031】
なお、本発明のサポーターにおいて、各部材を構成する繊維としては、特に限定されず、ポリエステル繊維、ナイロン、綿など公知の繊維が例示される。繊維の形態も特に限定されず、紡績糸でもよいし長繊維(マルチフィラメント)でもよい、その際、長繊維において、総繊度は10~300dtex、単繊維繊度は0.0001~3.0dtex、フィラメント数は10~300本であることが好ましい。かかる長繊維は仮撚捲縮加工糸であってもよい。さらには、ポリウレタン繊維などの弾性繊維に前記の繊維をカバリングしたカバリング糸であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、長時間の着用においてもズレ落ちなく動物が快適に使用することができ、かつ膝蓋骨を、その大きさや形状、脱臼の症状に合わせて適正な位置に保持することができる動物用サポーターが提供され、その工業的価値は極めて大である。
【符号の説明】
【0033】
1:サポーター本体
2:サポーター本体表面部材
3:サポーター本体裏面部材
4:開口部
5:膝蓋骨保持部取付用切り込み
6:上部伸縮性ベルト
7:下部伸縮性ベルト
8:面ファスナーA
9:面ファスナーB
10:膝蓋骨保持部本体
11:膝蓋骨保持部取付上部ベルトa
12:膝蓋骨保持部取付中央ベルトb
13:膝蓋骨保持部取付下部ベルトc
図1
図2
図3
図4
図5