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特開2024-103030画素シフトデバイスおよびプロジェクター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103030
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】画素シフトデバイスおよびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20240725BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20240725BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20240725BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
G03B21/14 Z
G03B21/00 E
G02B26/08 D
H04N5/74 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007153
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 竜矢
【テーマコード(参考)】
2H141
2K203
5C058
【Fターム(参考)】
2H141MA03
2H141MA16
2H141MB39
2H141MC05
2H141MD13
2H141MD20
2H141MD23
2H141MF05
2H141MF24
2H141MG04
2H141MZ06
2K203FA03
2K203FA23
2K203FA34
2K203FA44
2K203FA62
2K203GB12
2K203GB26
2K203GB30
2K203HA79
2K203HB08
2K203HB22
2K203KA63
2K203KA75
2K203KA78
2K203MA01
2K203MA14
5C058AA18
5C058AB02
5C058BA25
5C058EA26
5C058EA54
(57)【要約】
【課題】画像光の光路を精度良くシフトできる、画素シフトデバイスおよびプロジェクターを提供する。
【解決手段】本発明の画素シフトデバイスは、光学部材と、光学部材を保持する第1フレームと、第1フレームと連結する第2フレームと、第2フレームと連結するベースと、第1フレームおよび第2フレームを連結する一対の第1揺動軸形成部と、第2フレームとベースとを連結する一対の第2揺動軸形成部と、第1アクチュエーターと、第2揺動軸を挟んで配置され第2フレームを揺動させる一対の第2アクチュエーターと、を備える。一対の第2揺動軸形成部は、アクチュエーター保持部側において第2フレームとベースとの間を連結する一方側連結軸部と、アクチュエーター保持部と反対側において第2フレームとベースとの間を連結する他方側連結軸部と、を含み、他方側連結軸部の剛性は一方側連結軸部の剛性よりも低い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部材と、
前記光学部材を保持し、第1揺動軸回りに揺動する第1フレームと、
前記第1フレームの周囲に配置されるとともに前記第1フレームと連結し、前記第1揺動軸と直交する第2揺動軸回りに揺動する第2フレームと、
前記第2フレームの周囲に配置されるとともに前記第2フレームと連結するベースと、
前記第1揺動軸上に位置し前記第1フレームおよび前記第2フレームを連結する一対の第1揺動軸形成部と、
前記第2揺動軸上に位置し前記第2フレームと前記ベースとを連結する一対の第2揺動軸形成部と、
前記第2揺動軸上に配置され、前記第1フレームと前記第2フレームとの間で、前記第2フレームに対して前記第1フレームを揺動させる第1アクチュエーターと、
前記第2フレームおよび前記ベースの前記第1アクチュエーターが配置される側に設けられ前記第2揺動軸を挟んで配置される一対のアクチュエーター保持部にそれぞれ保持され、前記ベースに対して前記第2フレームを揺動させる一対の第2アクチュエーターと、を備え、
前記一対の第2揺動軸形成部は、前記アクチュエーター保持部側において前記第2フレームと前記ベースとの間を連結する一方側連結軸部と、前記アクチュエーター保持部と反対側において前記第2フレームと前記ベースとの間を連結する他方側連結軸部と、を含み、
前記他方側連結軸部の剛性は前記一方側連結軸部の剛性よりも低い、
ことを特徴とする画素シフトデバイス。
【請求項2】
前記一対の第1揺動軸形成部の各々は、前記第1フレームおよび前記第2フレームを連結する連結軸部をそれぞれ有し、
前記連結軸部の各々の剛性は等しい、
ことを特徴とする請求項1に記載の画素シフトデバイス。
【請求項3】
前記他方側連結軸部の断面二次モーメントは、前記一方側連結軸部の断面二次モーメントよりも小さい、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画素シフトデバイス。
【請求項4】
前記第2フレームに設けられる前記一対のアクチュエーター保持部は、前記一対の第2揺動軸形成部の一部で構成され、前記第2アクチュエーターを構成するマグネットおよびコイルの一方を保持する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画素シフトデバイス。
【請求項5】
前記他方側連結軸部および前記一方側連結軸部は、互いの形状、幅、長さおよび厚みの少なくとも1つが異なることで、各々の剛性を異ならせる、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画素シフトデバイス。
【請求項6】
前記一対の第2揺動軸形成部は、前記一方側連結軸部を有し前記第2フレームおよび前記ベースを第1ねじ部材により連結する一方側連結部と、前記他方側連結軸部を有し前記第2フレームおよび前記ベースを第2ねじ部材により連結する他方側連結部と、を含み、
前記一方側連結部および前記他方側連結部は、前記第1ねじ部材の頭部から前記一方側連結軸部までの距離と前記第2ねじ部材の頭部から前記他方側連結軸部までの距離とを調整することで、各々の剛性を異ならせる、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画素シフトデバイス。
【請求項7】
前記一対の第2揺動軸形成部は、前記一方側連結軸部を有し前記第2フレームおよび前記ベースを第1ねじ部材により連結する一方側連結部と、前記他方側連結軸部を有し前記第2フレームおよび前記ベースを第2ねじ部材により連結する他方側連結部と、を含み、
前記一方側連結部および前記他方側連結部は、前記第1ねじ部材のねじ穴から前記一方側連結軸部までの距離と前記第2ねじ部材のねじ穴から前記他方側連結軸部までの距離とを調整することで、各々の剛性を異ならせる、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画素シフトデバイス。
【請求項8】
画像光を生成する画像生成部と、
前記画像光を投射する投射光学系と、
前記画像生成部と前記投射光学系との間に配置され、前記画像生成部からの前記画像光の光路をシフトさせる、請求項1または請求項2に記載の画素シフトデバイスと、を備える、
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項9】
前記画像生成部は、
第1光射出面を有し、前記第1光射出面を前記投射光学系側に向けて配置された第1光変調装置と、
第2光射出面を有し、前記第2光射出面を前記第1光変調装置と前記投射光学系とが並ぶ方向に直交する方向に向けて配置された第2光変調装置と、
第3光射出面を有し、前記第3光射出面を前記第2光変調装置の前記第2光射出面と対向させるように配置された第3光変調装置と、
前記第1光変調装置、前記第2光変調装置および前記第3光変調装置から射出された光を合成して前記画像光を生成し、前記画像光を前記投射光学系に向けて射出する光合成素子と、
を備え、
前記画素シフトデバイスの前記光学部材は、前記投射光学系と前記光合成素子との間の前記画像光の光路上に配置され、
前記第2揺動軸に沿う方向において、前記第2光変調装置および前記第3光変調装置の前記投射光学系側の端部は、それぞれ前記画素シフトデバイスの前記第2アクチュエーターから離れた位置に配置される、
ことを特徴とする請求項8に記載のプロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素シフトデバイスおよびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶パネル等の光変調装置から射出された画像光の光路をシフトさせる画素シフトデバイスを備えたプロジェクターがある(例えば、下記特許文献1参照)。
上記プロジェクターにおける画素シフトデバイスは、光学部材を保持する第1フレームと、第1フレームの周囲に配置され第1フレームを連結する第2フレームと、第2フレームの周囲に配置され第2フレームを連結するベースと、第1フレームを第2フレームに対して第1揺動軸回りに揺動させる第1アクチュエーターと、第2フレームをベースに対して第2揺動軸回りに揺動させる第2アクチュエーターと、を備えている。
【0003】
上記画素シフトデバイスでは、第1アクチュエーターおよび第2アクチュエーターを第2揺動軸の軸方向に沿う一方側に集めて配置することで、駆動時の熱源となるアクチュエーターを効率良く冷却できるレイアウトを採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-91343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記画素シフトデバイスでは、第2揺動軸上において、同じ幅、同じ長さ、同じ厚みで形成された一対の軸部材を介して第2フレームおよびベースが連結された構造を有する。この構成により、第2アクチュエーターの推力による第2フレームの変位はアクチュエーターから離間するにつれて伝わり難くなるので、一対の軸部材によるねじれ角は異なった状態となる。したがって、上記画素シフトデバイスでは、一対の軸部材によるねじれ角の差により光学部材が第2揺動軸回りにバランス良く回転できないため、画像光の光路を精度良くシフトさせることが難しかった。
また、ねじれ角の差による各軸部材の負荷に差が生じ、各軸部材の耐久性にバラツキが生じるといった問題が生じる恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の1つの態様によれば、光学部材と、前記光学部材を保持し、第1揺動軸回りに揺動する第1フレームと、前記第1フレームの周囲に配置されるとともに前記第1フレームと連結し、前記第1揺動軸と直交する第2揺動軸回りに揺動する第2フレームと、前記第2フレームの周囲に配置されるとともに前記第2フレームと連結するベースと、前記第1揺動軸上に位置し前記第1フレームおよび前記第2フレームを連結する一対の第1揺動軸形成部と、前記第2揺動軸上に位置し前記第2フレームと前記ベースとを連結する一対の第2揺動軸形成部と、前記第2揺動軸上に配置され、前記第1フレームと前記第2フレームとの間で、前記第2フレームに対して前記第1フレームを揺動させる第1アクチュエーターと、前記第2フレームおよび前記ベースにおける前記第1アクチュエーターが配置される側に設けられたアクチュエーター保持部に、前記第2揺動軸を挟んで配置された2つのアクチュエーターで構成され、前記ベースに対して前記第2フレームを揺動させる第2アクチュエーターと、を備え、前記一対の第2揺動軸形成部は、前記アクチュエーター保持部側において前記第2フレームと前記ベースとの間を連結する一方側連結軸部と、前記アクチュエーター保持部と反対側において前記第2フレームと前記ベースとの間を連結する他方側連結軸部と、を含み、前記他方側連結軸部の剛性が前記一方側連結軸部の剛性よりも低い、ことを特徴とする画素シフトデバイスが提供される。
【0007】
また、本発明の別の態様によれば、画像光を生成する画像生成部と、前記画像光を投射する投射光学系と、前記画像生成部と前記投射光学系との間に配置され、前記画像生成部からの前記画像光の光路をシフトさせる、上記態様の画像シフトデバイスと、を備える、プロジェクターが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態のプロジェクターの概略構成を示す図である。
図2】画素シフトデバイスによる画像の高解像度化の原理を示す説明図である。
図3】画素シフトデバイスの平面図である。
図4図3のIV-IV線矢視による断面図である。
図5】画素シフトデバイスと画像生成部との位置関係を示した図である。
図6】画素シフトデバイスと画像生成部との位置関係を示した図である。
図7】第2フレームの要部構成を示した斜視図である。
図8A】第1のシミュレーション結果を示す変位分布図である。
図8B】第2のシミュレーション結果を示す変位分布図である。
図9A】変形例の画素シフトデバイスの要部構成を示す拡大図である。
図9B】変形例の画素シフトデバイスの要部構成を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0010】
図1は本実施形態のプロジェクターの概略構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態のプロジェクター1は、光源2と、色分離光学系3と、画像生成部4と、投射光学系6と、画素シフトデバイス10と、を備えている。
【0011】
以下、図面中に示すXYZ座標系を用いて各部材の配置関係を説明する場合がある。各図面において、Y軸はプロジェクター1におけるスクリーンSCRに対する画像光LTの投射方向に沿う軸である。X軸はY軸に直交し、スクリーンSCRの横幅方向に沿う軸である。Z軸はX軸およびY軸に直交する軸であり、スクリーンSCRの上下方向に沿う軸である。
【0012】
本実施形態では、例えば、Z軸に沿う両方向をまとめてプロジェクター1における「上下方向Z」、+Z方向に向かう方向を「上側」、-Z方向に向かう方向を「下側」と称す。また、X軸に沿う両方向をまとめてプロジェクター1における「左右方向X」、+X方向に向かう方向を「右側」、-X方向に向かう方向を「左側」と称す。また、Y軸に沿う両方向をまとめてプロジェクター1における「前後方向Y」、+Y方向に向かう方向を「前側」、-Y方向に向かう方向を「後側」と称する。
なお、上下方向Z、左右方向Xおよび前後方向Yとは、単にプロジェクター1の各構成部材の配置関係を説明するための名称であって、プロジェクター1における実際の設置姿勢や向きを規定するものではない。
【0013】
光源2は、例えばレーザー光源、波長変換素子等の構成を有する。光源2は、レーザー光源から射出される青色のレーザー光を励起光として集光レンズで集光し、蛍光体を含む波長変換素子に入射させ、青色のレーザー光と黄色の蛍光とからなる白色光WLを射出する。なお、光源2は、レーザー光源と波長変換素子とを用いた構成に限定されず、例えばレーザー光源を単独で用いる構成、LED(Light Emitting Diode)、放電型の光源ランプを用いる構成を適用してもよい。
【0014】
画像生成部4は、赤色の画像光を射出する光変調装置4Rと、緑色の画像光を射出する光変調装置4Gと、青色の画像光を射出する光変調装置4Bと、光合成素子5と、を有する。画像生成部4は、光源2から射出される光を画像情報に基づいて変調し、画像光LTを生成する。
【0015】
色分離光学系3は、第1ダイクロイックミラー7aと、第2ダイクロイックミラー7bと、第1反射ミラー8aと、第2反射ミラー8bと、第3反射ミラー8cと、リレーレンズ9aと、リレーレンズ9bと、を備えている。色分離光学系3は、光源2から射出された白色光WLを赤色光LRと緑色光LGと青色光LBとに分離する。
【0016】
第1ダイクロイックミラー7aは、光源2から射出される白色光WLを、赤色光LRと、緑色光LGと青色光LBとに分離する。第1ダイクロイックミラー7aは、赤色光LRを透過するとともに、緑色光LGおよび青色光LBを反射させる。第2ダイクロイックミラー7bは、緑色光LGと青色光LBとが混合された光を緑色光LGと青色光LBとに分離する。第2ダイクロイックミラー7bは、緑色光LGを反射するとともに、青色光LBを透過させる。
【0017】
第1反射ミラー8aは、赤色光LRの光路中に配置されている。第1反射ミラー8aは、第1ダイクロイックミラー7aによって透過された赤色光LRを光変調装置4Rに向けて反射する。第2反射ミラー8bおよび第3反射ミラー8cは、青色光LBの光路中に配置されている。第2反射ミラー8bおよび第3反射ミラー8cは、第2ダイクロイックミラー7bを透過した青色光LBを光変調装置4Bに導く。
【0018】
光変調装置4Gは、緑色用液晶パネル4GPと緑色用液晶パネル4GPの入射側および射出側にそれぞれ設けられた偏光板(図示略)とで構成される。光変調装置4Gは第1光射出面40Gを有し、第1光射出面40Gを投射光学系6側に向けて配置される。
【0019】
光変調装置4Rは、赤色用液晶パネル4RPと赤色用液晶パネル4RPの入射側および射出側にそれぞれ設けられた偏光板(図示略)とで構成される。光変調装置4Rは第2光射出面40Rを有し、第2光射出面40Rを光変調装置4Gと投射光学系6とが並ぶ前後方向Yに直交する左右方向Xの右側(+X)に向けて配置される。
【0020】
光変調装置4Bは、青色用液晶パネル4BPと青色用液晶パネル4BPの入射側および射出側にそれぞれ設けられた偏光板(図示略)とで構成される。光変調装置4Bは第3光射出面40Bを有し、第3光射出面40Bを光変調装置4Rの第2光射出面40Rと対向させるように配置される。つまり、光変調装置4Bは、第3光射出面40Bを左右方向Xの左側(-X)に向けて配置される。
特に本実施形態のプロジェクター1では、より明るい画像を表示するため、各光変調装置4R,4G,4Bの各液晶パネル4RP,4GP,4BPとして上述のように大型パネルを用いている。
【0021】
本実施形態の場合、光変調装置4Gは「第1光変調装置」に相当し、光変調装置4Rは「第2光変調装置」に相当し、光変調装置4Bは「第3光変調装置」に相当する。
以下、赤色用液晶パネル4RP、緑色用液晶パネル4GPおよび青色用液晶パネル4BPを総称し、各液晶パネル4RP,4GP,4BPと呼ぶ場合もある。
【0022】
光変調装置4Rは、光源2から射出された白色光WLのうち、赤色光LRを画像信号に応じて赤色用液晶パネル4RPにより変調する。光変調装置4Gは、光源2から射出された白色光WLのうち、緑色光LGを画像信号に応じて緑色用液晶パネル4GPにより変調する。光変調装置4Bは、光源2から射出された白色光WLのうち、青色光LBを画像信号に応じて青色用液晶パネル4BPにより変調する。これにより、各光変調装置4R,4G,4Bは、各色光に対応した画像光を生成する。
【0023】
光変調装置4Rの光入射側には、光変調装置4Rに入射する赤色光LRを平行化するフィールドレンズ11Rが配置されている。光変調装置4Gの光入射側には、光変調装置4Gに入射する緑色光LGを平行化するフィールドレンズ11Gが配置されている。光変調装置4Bの光入射側には、光変調装置4Bに入射する青色光LBを平行化するフィールドレンズ11Bが配置されている。
【0024】
光合成素子5は、略立方体状のクロスダイクロイックプリズムから構成されている。光合成素子5は、各光変調装置4R,4G,4Bの各光射出面40R,40G,40Bから射出された各色光を合成して画像光LTを生成する。
【0025】
投射光学系6は複数の投射レンズから構成されている。投射光学系6は画像生成部4により合成された画像光LTをスクリーンSCRに向けて拡大投射する。これにより、スクリーンSCR上にカラー画像が表示される。
【0026】
画素シフトデバイス10は、画像生成部4の光合成素子5と投射光学系6との間の画像光LTの光路上に配置される。プロジェクター1は、画素シフトデバイス10によって画像光LTの光路をシフトさせ、いわゆる画素シフトを生じさせることにより、各液晶パネル4RP,4GP,4BPの解像度よりも高い解像度の画像をスクリーンSCRに表示することができる。例えば、各液晶パネル4RP,4GP,4BPがフルハイビジョン対応の液晶パネルであれば、4Kの画像を表示することができる。
【0027】
ここで、光路シフトによる高解像度化の原理について図2を用いて簡単に説明する。図2は、画像光LTの光路シフトによる高解像度化の原理を示す説明図である。
後述するように、画素シフトデバイス10は、画像光LTを透過させる透光性基板である光学部材20を有しており、この光学部材20の姿勢を変更することで、屈折を利用して画像光LTの光路をシフトさせる。
【0028】
画素シフトデバイス10は、光学部材20を光軸AXと交差する第1揺動軸J1回りの第1揺動方向、および、光軸AXと交差し、かつ、第1揺動軸J1と交差する第2揺動軸J2回りの第2揺動方向、の2つの方向に揺動させる。光学部材20が第1揺動方向に揺動すると、光学部材20に入射する光の光路は、図2に示す第1方向F1にシフトする。光学部材20が第2揺動方向に揺動すると、光学部材20に入射する光の光路は、図2に示す第1方向F1と交差する第2方向F2にシフトする。これにより、スクリーンSCR上に表示される画素Pxは、第1方向F1および第1方向F1と交差する第2方向F2にずれた位置に表示される。本実施形態の場合、第1方向F1は左右方向Xに対応し、第2方向F2は上下方向Zに対応する。
【0029】
プロジェクター1は、第1方向F1の光路のシフトと、第2方向F2の光路のシフトと、を組み合わせることにより、見掛け上の画素数を増加させ、スクリーンSCRに投射される画像光LTを高解像度化する。例えば、図2に示すように、第1方向F1および第2方向F2にそれぞれ1/2画素分ずれた位置に画素Pxを移動させる。これにより、スクリーンSCR上の画像表示位置を、画像表示位置P1から第1方向F1に沿って1/2画素分ずれた画像表示位置P2、画像表示位置P1から第1方向F1および第2方向F2に沿ってそれぞれ1/2画素分ずれた画像表示位置P3、および、画像表示位置から第2方向F2に沿って1/2画素分ずれた画像表示位置P4に移動させることができる。図2では、画素Pxの1/4の領域を注目して、A→B→C→Dとシフト動作の流れを示している。
【0030】
図2に示すように、画像表示位置P1、P2、P3、P4にそれぞれ一定時間ずつ画像を表示させるように光路シフト動作を行い、光路シフト動作に同期させて各液晶パネル4RP,4GP,4BPにおける表示内容を変化させる。これにより、見掛け上、画素Pxよりも小さいサイズの画素A、B、C、Dを表示させることができる。例えば画素A、B、C、Dの表示を全体として60Hzの周波数で行う場合、画像表示位置P1、P2、P3、P4に対応して、各液晶パネル4RP,4GP,4BPに4倍の速度で表示を実行させる必要がある。つまり、各液晶パネル4RP,4GP,4BPにおける表示の周波数、いわゆるリフレッシュレートは、240Hzとなる。
【0031】
なお、図2に示す例では、第1方向F1および第2方向F2は、互いに直交する方向であり、スクリーンSCRにマトリクス状に表示される画素Pxの配列方向である。この構成に代えて、第1方向F1と第2方向F2とは、互いに直交する方向でなくてもよく、画素Pxの配列方向に対して傾いた方向であってもよい。このようなずらし方向であっても、第1方向F1および第2方向F2への画素ずらしを適宜組み合わせることにより、図2に示す画像表示位置P1、P2、P3、P4に画素Pxを移動させることができる。また、画像表示位置のずれ量は、1/2画素分に限定されず、例えば、画素Pxの1/4であってもよいし、3/4であってもよい。
【0032】
続いて、画素シフトデバイス10の構成について説明する。図3は画素シフトデバイス10の平面図である。図3は画素シフトデバイス10を-Y側から+Y側に向かって視た平面図である。
図3に示すように、画素シフトデバイス10は、光学部材20と、第1フレーム21と、第2フレーム22と、ベース23と、一対の第1揺動軸形成部24と、一対の第2揺動軸形成部50と、一対の第1アクチュエーター25と、一対の第2アクチュエーター26と、を備えている。
図3では、画素シフトデバイス10が光学部材20の姿勢を変化させていない状態、つまり、画素シフトデバイス10が動作していない状態を示している。
【0033】
画素シフトデバイス10は、画像生成部4から入射した画像光LTが入射する光学部材20の姿勢に応じて画像光LTの光路をシフトさせる。画像光LTの光路のシフト量は光学部材20の姿勢変化の度合いに応じて規定される(図2参照)。
【0034】
光学部材20は屈折を利用して画像生成部4から入射する画像光LTの光路をシフトさせる部材である。画素シフトデバイス10は、光学部材20に対する画像光LTの入射角度が0°である基準位置にあるとき、光学部材20の法線方向は前後方向Yと一致する。
【0035】
光学部材20としては、例えば、略正方形の白板ガラスを用いた。強度に優れた白板ガラスを採用することで、光学部材20全体の剛性が高まるため、光学部材20に生じる歪みを抑制することができる。
なお、光学部材20の材料は白板ガラスに限定するものではなく、光透過性を有し、光を屈折可能な材料であれば良く、ホウケイ酸ガラス、石英ガラスなどの各種ガラス材料を用いても良い。または、水晶、サファイアなどの各種結晶材料、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂などの各種樹脂材料を用いても良い。なお、光学部材20の形状は、略正方形に限定するものではなく、長方形や、菱形、楕円形状であっても良い。
【0036】
第1フレーム21は光学部材20を保持し第1揺動軸J1回りに揺動するフレームである。第1フレーム21の第1揺動軸J1は第1フレーム21に支持された光学部材20の中心を通る仮想軸である。
【0037】
第1フレーム21は金属製の額縁状のフレームであり、光学部材20の周囲に配置される。第1フレーム21は光学部材20の外周縁を支持することで、表裏面を露出した状態の光学部材20を収納している。第1フレーム21の材質としては所定の剛性を有する金属材料として、例えばステンレスを用いた。光学部材20は接着剤により第1フレーム21に固定されている。なお、第1フレーム21は額縁形状に限られず、光学部材20の少なくとも一部を支持する部材であればよい。
【0038】
第2フレーム22は第1揺動軸と直交する第2揺動軸J2回りに揺動するフレームである。第2フレーム22の第2揺動軸J2は、第1揺動軸J1と直交し、かつ、第1フレーム21に支持された光学部材20の中心を通る仮想軸である。
【0039】
第2フレーム22は、平面視、略八角形状の板材から構成され、略八角形状の開口部22Hを有する。第2フレーム22の開口部22Hの内側には、光学部材20を保持する第1フレーム21が配置されている。すなわち、第2フレーム22は、第1フレーム21を囲む枠状の部材から構成され、第1フレーム21の周囲に配置されるとともに第1フレーム21と連結している。
【0040】
第2フレーム22は、一対の第1揺動軸形成部24を介して第1フレーム21と連結される。また、第2フレーム22は、後述する一対の第2揺動軸形成部50を介してベース23と連結する。なお、一対の第1揺動軸形成部24および一対の第2揺動軸形成部50の構成については後述する。
このような構成に基づき、本実施形態の画素シフトデバイス10は、第1フレーム21を介して第2フレーム22に支持された光学部材20は、ベース23に対して第2揺動軸J2回りに回転することで姿勢を変更可能である。
【0041】
本実施形態の場合、第2フレーム22および第1フレーム21は前後方向Yにおいて少なくとも一部が重なるように配置されている。すなわち、第2フレーム22および第1フレーム21は互いの少なくとも一部がXZ面に平行な同一面上に配置されている。なお、第2フレーム22は、前後方向Yに平面視した際、第1フレーム21の周囲を囲んで配置される形状であればよく、第1フレーム21に対する位置が前後方向Yにおいてずれていてもよい。つまり、第2フレーム22および第1フレーム21は前後方向Yにおいて互いの位置がずれた状態で配置されていてもよい。
【0042】
ベース23は、例えばアルミニウム等の金属部材で構成される。ベース23は、開口部230と、第1の第2フレーム固定部231と、第2の第2フレーム固定部232と、一対の第2コイルホルダー234と、を有する。
【0043】
開口部230は、互いに連通する第1開口230aおよび第2開口230bで構成される。第2フレーム22は開口部230の第1開口230aの内側に位置し、一対の第2揺動軸形成部50の一方は開口部230の第2開口230bの内側に位置する。
第1の第2フレーム固定部231は、第2フレーム22の上下方向Zの上側(+Z)に位置する第2揺動軸形成部50を固定する。
第2の第2フレーム固定部232は、第2フレーム22の上下方向Zの下側(-Z)に位置する第2揺動軸形成部50を固定する。
一対の第2コイルホルダー234は、後述する一対の第2アクチュエーター26の各コイルをそれぞれ保持する。一対の第2コイルホルダー234は、ベース23のうち第2揺動軸J2に直交する方向において後述するアクチュエーター保持部55に設けられた一対の第2マグネットホルダー35とそれぞれ対向するように設けられる。
すなわち、ベース23は、第2フレーム22の周囲に配置されるとともに第2フレーム22と連結する。
【0044】
本実施形態の場合、第2フレーム22およびベース23は前後方向Yにおいて少なくとも一部が重なるように配置されている。すなわち、第2フレーム22およびベース23は互いの少なくとも一部がXZ面に平行な同一面上に配置されている。なお、ベース23は、前後方向Yに平面視した際、第2フレーム22の周囲を囲んで配置される形状であればよく、前記第2フレーム22に対する位置が前後方向Yにおいてずれていてもよい。つまり、第2フレーム22およびベース23は前後方向Yにおいて互いの位置がずれた状態で配置されていてもよい。
【0045】
一対の第1揺動軸形成部24は、第1揺動軸J1に沿う方向である左右方向Xにおいて第1フレーム21の両側に配置され、第1フレーム21および第2フレーム22を連結する。本実施形態の場合、一対の第1揺動軸形成部24は第1フレーム21と一体に形成されるが、一対の第1揺動軸形成部24と第1フレーム21とは別体で形成されていてもよい。
【0046】
一対の第1揺動軸形成部24は、ねじ部材60を介して第2フレーム22の表面22bに固定される。第2フレーム22の表面22bは前後方向Yの後側(-Y)を向く面であり、画素シフトデバイス10に対して画像生成部4が配置される側の面である。
【0047】
本実施形態の画素シフトデバイス10において、一対の第1揺動軸形成部24は、第2揺動軸J2を中心として対称に配置される。本実施形態において、一対の第1揺動軸形成部24が対称に配置されるとは、各第1揺動軸形成部24が同様の形状を有し、第2揺動軸J2を基準として一方側を折り返した際に他方側に重なる関係の形状を意味する。本実施形態の画素シフトデバイス10によれば、第1フレーム21と第2フレーム22とが一対の第1揺動軸形成部24によってバランス良く連結されるため、光学部材20を第1揺動軸J1回りに安定した状態で揺動させることができる。
【0048】
一対の第1揺動軸形成部24は、一対の連結軸部240と、一対の梁241と、を有する。一対の連結軸部240は、第1フレーム21の第1揺動軸J1上に位置し、第1フレーム21の外側面21aと第2フレーム22の内側とを揺動可能に連結する。一対の連結軸部240は、矩形枠状の光学部材20の4つの外側面21aのうち互いに反対を向く面からそれぞれ突出し、第1フレーム21と第2フレーム22とを連結する。
【0049】
本実施形態において、一対の連結軸部240は、互いの形状、幅、長さおよび厚みが等しい。つまり、一対の連結軸部240は、互いの剛性が等しくなっている。なお、一対の連結軸部240は、互いの剛性が等しければ、互いの形状、幅、長さおよび厚みの少なくともいずれかが異なっていてもよい。本明細書において、連結軸部240の剛性とは、第1揺動軸形成部24が第1フレーム21と第2フレーム22とを連結した状態での剛性を意味しており、第1揺動軸形成部24の部品単体での剛性とは異なる。
また、後述のように、一対の第1アクチュエーター25は第1フレーム21が保持する光学部材20に対して第1揺動軸J1を中心として上下方向Zの両側に対称となるように配置されている。このため、第1アクチュエーター25の推力が一対の連結軸部240に均等に伝わるため、第1フレーム21が第1揺動軸J1回りに回転する際のねじれの発生を抑制することもできる。
このような構成に基づき、本実施形態の画素シフトデバイス10は、第1フレーム21を第2フレーム22に対して第1揺動軸J1回りにバランス良く回転させることで第1フレーム21が支持する光学部材20の姿勢を精度良く変更することが可能である。
【0050】
一対の梁241は、一対の連結軸部240の各々から第2揺動軸J2に沿って第2フレーム22の表面22bに沿って延在する。第2フレーム22は、一対の梁241が設けられた部分の強度が高められている。本実施形態の画素シフトデバイス10によれば、一対の第1揺動軸形成部24の梁241を第2フレーム22の表面22bに設けることで、第2フレーム22における第1フレーム21との連結部分の周辺領域の強度を高めることができる。
【0051】
本実施形態において、一対の梁241の各々は、第1揺動軸J1を跨ぐように配置される。各梁241の各々は第1揺動軸J1の両側に配置される。本実施形態の場合、一対の梁241の各々は、第1揺動軸J1を中心として対称に配置される。
このような構成に基づき、第1揺動軸形成部24の各梁241は、第2フレーム22のうち第1揺動軸J1に対して直交する上下方向Zに延びる部分の強度をバランス良く高めることができる。
【0052】
各梁241の各々における第2揺動軸J2に沿う上下方向Zの第1長さL1は、第1フレーム21の第2揺動軸J2に沿う上下方向Zの第2長さL2に対応した長さである。
本明細書において、第1長さL1および第2長さL2が対応する長さであるとは、第1長さL1および第2長さL2が略等しいことを意味する。なお、第1長さL1および第2長さL2が略等しいとは、第1長さL1および第2長さL2の長さが完全に一致している状態のみならず、第1長さL1および第2長さL2の一方が他方に比べて数ミリ程度だけ大きいあるいは小さい状態も含む。なお、梁241の上下方向Zの第1長さL1は、第1フレーム21に保持された光学部材20の上下方向Zの長さと等しくてもよい。
【0053】
この構成によれば、第1フレーム21に相当する長さを持つ一対の梁241が第2フレーム22上に重ねて配置されることで第2フレーム22の剛性を十分に高めることができる。よって、本実施形態の画素シフトデバイス10は、厚みの小さい軽量材料で構成した第2フレーム22を用いた場合でも、第2フレーム22として十分な剛性を確保できるので、デバイス自体の小型化および軽量化を実現できる。
【0054】
図4は画素シフトデバイス10の要部の断面図である。図4図3のIV-IV線矢視による断面図である。
図4に示すように、一対の梁241は、第2揺動軸J2に沿う上下方向Zに延び、第2フレーム22の表面22bの法線方向である前後方向Yに沿って立ち上がり、第2揺動軸J2に沿う上下方向Zに延びる、立ち壁部243を有する。
【0055】
立ち壁部243は、一対の梁241の各々におけるベース23側の端部241aに設けられる。本実施形態の場合、立ち壁部243は、第2フレーム22の外側面22cに沿って投射光学系6側に延びる。一対の梁241は立ち壁部243を備えることでXY面に沿う断面が略L字形状となり、立ち壁部243を設けない構造に比べて断面二次モーメントを大きくできる。よって、一対の梁241は上下方向Zの第1長さL1を最小限に抑えつつ、第2フレーム22の剛性を高めることができる。よって、本実施形態の画素シフトデバイス10は、一対の梁241の長さを抑えることで重量増加を抑制しつつ、第2フレーム22の剛性を効率良く高めることができる。
【0056】
図3に戻り、第2フレーム22の表面22bの法線方向である前後方向Yに平面視した際、一対の梁241の各々における第2揺動軸J2に沿う上下方向Zの両端部245は、第1フレーム21側からベース23側に向けて上下方向Zの長さが長くなる斜辺246を有している。すなわち、各梁241の各々の両端部245は、斜辺246により第2フレーム22の内側から外側に向かうにつれて上下方向Zの幅がテーパー状に拡がる形状を有する。
【0057】
本発明者は、各梁241の各々の平面形状を長方形状とした場合、すなわち各梁241の各々の両端部をテーパー形状としない場合についてシミュレーションを行った。本シミュレーションにより、各梁241の各々の平面形状を長方形状とすることは、各梁241の剛性に寄与しないことが確認できた。
これに対して、本実施形態の画素シフトデバイス10では、上述のように各梁241の両端部245に斜辺246を設けることで各梁241の剛性を確保しつつ軽量化を図ることが可能である。
【0058】
ここで、第2フレーム22の共振周波数は一対の梁241の長さに応じて変化する。本実施形態の画素シフトデバイス10では、一対の梁241の長さを適宜調整することで第2フレーム22の共振周波数を所望の値に設定している。具体的に本実施形態の画素シフトデバイス10は、一対の梁241の長さを適切に調整することで第2フレーム22の共振周波数を高周波数にシフトさせている。これにより、第2フレーム22は、サイズを大きくする、あるいは、厚さを大きくすることなく、共振の発生を抑制することが可能である。よって、本実施形態の画素シフトデバイス10によれば、装置構成の小型化を図りつつ、共振による不具合の発生を抑制した信頼性の高い画素シフトデバイスを提供することができる。
【0059】
このように本実施形態の画素シフトデバイス10は、第1フレーム21と第2フレーム22とを連結する一対の第1揺動軸形成部24の一対の梁241が第2フレーム22の表面22bに沿って形成されるため、各梁241が配置されている第2フレーム22の強度を高めることができる。
【0060】
一対の第1揺動軸形成部24は、第1揺動軸J1上において光学部材20を支持する第1フレーム21と第2フレーム22とを連結する連結軸部240から第2揺動軸J2に沿う上下方向Zに第2フレーム22の表面22b上に延出する梁241を備えるため、第2フレーム22のうち第1フレーム21との連結部分の近傍の強度を効率良く高めることができる。
【0061】
例えば、プロジェクター1を運搬する際の振動やプロジェクター1を誤って落下させてしまうことで衝撃による負荷が加わった際、第2フレーム22のうち光学部材20を支持する第1フレーム21との連結部の周辺に特に大きな負荷が生じる。これに対して、本実施形態の画素シフトデバイス10は、上述のように一対の第1揺動軸形成部24によって第2フレーム22における第1フレーム21との連結部分の強度を高めることで、第2フレーム22の変形や破損を抑制することができる。よって、本実施形態の画素シフトデバイス10は、衝撃の負荷に対する耐性を向上させた信頼性の高いものとなる。
【0062】
一対の第2揺動軸形成部50は、第2揺動軸J2上に位置し第2フレーム22とベース23とを連結する部材である。一対の第2揺動軸形成部50は、上側ベース連結部材28と下側ベース連結部材29とを含む。本実施形態において、上側ベース連結部材28は「他方側連結部材」に相当し、下側ベース連結部材29は「一方側連結部材」に相当する。
【0063】
一対の第2揺動軸形成部50の一方をなす上側ベース連結部材28は、第2揺動軸J2上の一方側である上側(+Z)において、第2フレーム22とベース23とを連結する部材である。上側ベース連結部材28は、ベース固定部28aと、上側連結軸部28bと、フレーム固定部28cと、を有する。上側ベース連結部材28は、ねじ部材60を介してベース23および第2フレーム22に固定される。
【0064】
フレーム固定部28cは、上側ベース連結部材28を第2フレーム22の上下方向Zの上側(+Z)に位置する上端部に固定する。ベース固定部28aは、上側ベース連結部材28をベース23の第1の第2フレーム固定部231に固定する。上側連結軸部28bは、フレーム固定部28cとベース固定部28aとの間を連結し、ベース23に対して第2フレーム22を第2揺動軸J2回りに揺動させる。
すなわち、一対の第2揺動軸形成部50の一つをなす上側ベース連結部材28は、上側連結軸部28bを含む。本実施形態において、上側連結軸部28bは「他方側連結軸部」に相当する。上側ベース連結部材28は、第2フレーム22と一体に形成されていてもよい。なお、下側ベース連結部材29の構成については後述する。
【0065】
一対の第1アクチュエーター25の各々は、第1フレーム21と第2フレーム22との間で、第2フレーム22に対して第1フレーム21を揺動させる駆動力を発生させる。
一対の第1アクチュエーター25の各々は、第1揺動軸J1に直交する第2揺動軸J2上に配置された、第1フレーム21に配置された第1マグネット25aと、ベース23に配置され第1マグネット25aに対向する第1コイル25bと、を有する。
【0066】
一対の第1アクチュエーター25は、第1フレーム21が保持する光学部材20に対して第1揺動軸J1を中心として上下方向Zの両側に対称となるように配置されている。一対の第1アクチュエーター25は第1揺動軸J1から等距離に位置するため、光学部材20を保持する第1フレーム21に対して各々の駆動力をバランス良く伝達可能となっている。このため、本実施形態の画素シフトデバイス10は、一対の第1アクチュエーター25により第1フレーム21を第1揺動軸J1回りに偏りなく回転させることができる。
【0067】
第1マグネット25aはマグネット保持プレート27を介して第1フレーム21に配置される。具体的に第1マグネット25aは、第1フレーム21の外側面21aのうち第1揺動軸J1上に位置する部位に設けられた第1マグネットホルダー21bに配置される。マグネット保持プレート27は鉄などの金属から構成されており、バックヨークとして機能する。第1マグネット25aに用いるマグネットとしてはネオジムマグネットの他、所定の磁力を有する永久マグネットであれば良く、サマリウムコバルトマグネット、フェライトマグネット、アルニコマグネットであっても良い。
【0068】
第1コイル25bはコイルホルダー材36を介して第2フレーム22の内側面22aに配置されている。コイルホルダー材36はベース23に固定され、間隙を介して第1コイル25bと第1マグネット25aとを対向配置させる。コイルホルダー材36は鉄などの金属から構成されており、バックヨークとして機能する。第1コイル25bはコイルホルダー材36に巻回したコイル線により構成される。
【0069】
なお、第1マグネット25aおよび第1コイル25bの位置は入れ替えてもよく、第1マグネット25aがベース23から延びるマグネットホルダーに配置され、第1コイル25bが第1フレーム21の外側面21aに設けられたコイルホルダー材に配置されてもよい。
【0070】
一対の第2アクチュエーター26の各々は、第2フレーム22とベース23との間で、ベース23に対して第2フレーム22を揺動させる装置である。
一対の第2アクチュエーター26は、第1アクチュエーター25と同様、第2フレーム22が第1フレーム21を介して保持する光学部材20に対して第2揺動軸J2を中心として左右方向Xの両側に対称となるように配置することで各々の駆動力の伝達効率を高めることが望ましい。つまり、一対の第2アクチュエーター26を第1揺動軸J1上に配置することが望ましい。
【0071】
ここで、本実施形態のプロジェクター1における画素シフトデバイス10と画像生成部4との位置関係について説明する。
図5および図6は、画素シフトデバイス10と画像生成部4との位置関係を示した図である。図5はXZ平面に沿う面による断面図であり、図6は-Y側から+Y側に視た平面図である。
【0072】
図5に示すように、画像生成部4は光変調装置4R,4G,4Bと光合成素子5とがフレーム部材Fを介して一体に保持されることでユニット化されている。
本実施形態のプロジェクター1では、光変調装置4R,4G,4Bのうち光変調装置4R,4Bは画素シフトデバイス10に対して接近した状態とされる。
本実施形態の画像生成部4では、光変調装置4R,4G,4Bの横幅が光合成素子5の横幅よりも大きくなっている。
本実施形態の画素シフトデバイス10では、光変調装置4Gおよび投射光学系6が並ぶ前後方向Yにおいて、光変調装置4Rおよび光変調装置4Bの投射光学系6側に位置する前端部4R1,4B1がそれぞれ画素シフトデバイス10と重なる。このため、光変調装置4Rおよび光変調装置4Bの前端部4R1,4B1は画素シフトデバイス10と非常に近接している。より具体的に光変調装置4R,4Bの前端部4R1,4B1はそれぞれ画素シフトデバイス10の第1フレーム21、第2フレーム22およびベース23に近接して配置されている。
【0073】
本実施形態の画素シフトデバイス10は、第1揺動軸形成部24を備えることで第2フレーム22の強度が高められているため、第2フレーム22を大型化させる場合でも強度の向上を目的として厚みを厚くする必要が無い。このように本実施形態の画素シフトデバイス10は、第2フレーム22の厚さを薄くできるため、光変調装置4R,4Bの前端部4R1,4B1と画素シフトデバイス10とを前後方向Yにおいて近づけて配置することで装置構成の小型化を図ることができる。
【0074】
一方、本実施形態のプロジェクター1では、光変調装置4R,4Bの前端部4R1,4B1が画素シフトデバイス10のうち第2フレーム22およびベース23に対して近接して配置されるため、第1揺動軸J1上に第2アクチュエーターを配置することは難しい。
【0075】
そこで本実施形態の画素シフトデバイス10では、第1揺動軸J1に対して第2揺動軸J2に沿う上下方向Zの一方側である下側(-Z)に設けた一対のアクチュエーター保持部55に各第2アクチュエーター26をそれぞれ保持している。
【0076】
一対のアクチュエーター保持部55は、第1アクチュエーター25に対して第1揺動軸J1と反対側である下側(-Z)に位置する。本実施形態の場合、一対の第2アクチュエーター26は、光学部材20の下側(-Z)に位置する第1アクチュエーター25よりもさらに下側(-Z)に配置される。
【0077】
図6に示すように、本実施形態の画素シフトデバイス10において、光変調装置4R,4Bの前端部4R1,4B1は、第2揺動軸J2に沿う上下方向Zにおいて、それぞれ画素シフトデバイス10の第2アクチュエーター26から離れた位置に配置される。このため、本実施形態の画素シフトデバイス10では、光変調装置4R,4Bの前端部4R1,4B1と第2アクチュエーター26とが干渉しないため、光変調装置4R,4Bの前端部4R1,4B1と画素シフトデバイス10とを前後方向Yにおいて近づけて配置することで装置構成の小型化を図ることができる。
【0078】
一対のアクチュエーター保持部55は、第2フレーム22およびベース23のうち、上下方向Zの下側(-Z)に延出する部位に設けられる。一対のアクチュエーター保持部55は、後述する下側ベース連結部材29の一対の第2マグネットホルダー35と、ベース23の一対の第2コイルホルダー234とで構成される。すなわち、第2フレーム22に設けられる一対のアクチュエーター保持部55は、一対の第2揺動軸形成部50の一部である下側ベース連結部材29の第2マグネットホルダー35で構成される。本実施形態の場合、アクチュエーター保持部55が下側ベース連結部材29の一部で構成されるため、部品点数の削減を図ることができる。
【0079】
各第2アクチュエーター26は、第1揺動軸J1に沿う方向に所定の間隔をおいて配置されたマグネットとコイルとを有する。具体的に、各第2アクチュエーター26は、第2揺動軸J2に交差する第1揺動軸J1に沿う方向において、アクチュエーター保持部55を構成する第2フレーム22の第2マグネットホルダー35に配置された第2マグネット26aと、アクチュエーター保持部55を構成するベース23の第2コイルホルダー234に配置され第2マグネット26aに対向する第2コイル26bと、を有する。
【0080】
第2マグネット26aはバックヨークとして機能するマグネット保持プレート27を介して第2マグネットホルダー35に配置される。第2コイル26bを保持する第2コイルホルダー234はバックヨークとして機能する。
第2マグネット26aおよび第2コイル26bは、第1アクチュエーター25を構成する第1マグネット25aおよび第1コイル25bと同様の構成を有するため、説明を省略する。
【0081】
なお、第2マグネット26aおよび第2コイル26bの位置は入れ替えてもよく、第2マグネット26aがベース23側に配置され、第2コイル26bが第2フレーム22側に配置されてもよい。
【0082】
このように本実施形態の画素シフトデバイス10は、第2アクチュエーター26が第2フレーム22の第1アクチュエーター25が配置される側の領域に設けられている。より具体的に本実施形態の画素シフトデバイス10は、光学部材20に対して第2揺動軸J2に沿う上下方向Zの下側(-Z)に第1アクチュエーター25および第2アクチュエーター26を集約して配置した構造を採用している。
【0083】
本実施形態のプロジェクター1によれば、第2アクチュエーター26を第1アクチュエーター25の一方側に集約させたことで、前後方向Yにおいて画素シフトデバイス10を画像生成部4に対して近接した状態で配置することが可能である。このため、本実施形態のプロジェクター1は前後方向Yの寸法を小型化することが可能である。また、画素シフトデバイス10は、画像生成部4の投射光学系6から射出される画像光LTを効率良く取り込むことができ、画像光LTの光利用効率を向上できる。
【0084】
一方、本実施形態の画素シフトデバイス10では上述のように第1アクチュエーター25の下側(-Z)に第2アクチュエーター26を配置する必要がある。このため、本実施形態の第2フレーム22は、図3および図6に示すように、第1アクチュエーター25に対して第1揺動軸J1と反対側、かつ、第2揺動軸J2に沿う軸方向一方側(-Z)に延出する延出部220を有し、延出部220に固定した下側ベース連結部材29を介して第2アクチュエーター26の構成部品であるマグネットを保持している。
【0085】
このように本実施形態の画素シフトデバイス10では、第2アクチュエーター26から光学部材20までの距離が第1アクチュエーター25から光学部材20までの距離に比べて大きいため、第2アクチュエーター26の駆動力を光学部材20側に伝わり難い構造となっている。
【0086】
これに対して本実施形態の画素シフトデバイス10は、第2アクチュエーター26の駆動力を光学部材20側へ効率良く伝わることで第2フレーム22が容易に揺動可能とするため、第2フレーム22を例えばアルミニウム等の軽量部材で構成するようにした。
【0087】
一般的にアルミニウム等の軽量部材は剛性が低い。このため、軽量部材で構成された第2フレーム22は第1アクチュエーター25および第2アクチュエーター26の駆動力に伴って発生した応力が集中することで耐久性の低下や変形等を生じる恐れがある。
特に本実施形態のプロジェクター1では、上述のように明るい画像を表示するため、各光変調装置4R,4G,4Bの各液晶パネル4RP,4GP,4BPとして大型パネルを用いるため、光学部材20のサイズが大型化するため、結果的に第1フレーム21や第2フレーム22のサイズも大型化することになる。このような大型の第2フレーム22を上述のような軽量部材で構成すると、上述した耐久性の低下や変形等のリスクがさらに高める恐れがある。
【0088】
本実施形態の画素シフトデバイス10は、第2フレーム22における第1アクチュエーター25および第2アクチュエーター26が集約して配置される側の領域、具体的には延出部220に下側ベース連結部材29を設けることで、第2フレーム22の剛性を高めるようにした。つまり、下側ベース連結部材29は、第2フレーム22の剛性を高めるフレーム補強部材としての機能を有している。
以下、下側ベース連結部材29および下側ベース連結部材29が設けられた第2フレーム22の周辺構成について説明する。
【0089】
図7は下側ベース連結部材29が設けられた第2フレーム22の要部構成を示した斜視図である。
図7に示すように、一対の第2揺動軸形成部50の他方をなす下側ベース連結部材29は、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼からなる板金部材で構成され、所定の剛性を有している。下側ベース連結部材29は、第2フレーム22の剛性を十分に高めるという目的を達成できるのであれば一枚の板材で構成されていてもよいし二枚の板材に分割されていてもよい。
【0090】
下側ベース連結部材29は、第2フレーム22の上下方向Zの下側(-Z)に位置する延出部220にねじ部材60を介して固定される。下側ベース連結部材29は、平面視、略U字状の形状からなる本体部31と、後述する第2アクチュエーター26のマグネットを保持する第2マグネットホルダー35と、ベース23の第2の第2フレーム固定部232と連結されるベース連結部34と、を含む。
【0091】
下側ベース連結部材29の本体部31は、第2フレーム22の表面22bに接する第1面31aと第1面31aと反対の第2面31bとを有する。下側ベース連結部材29の本体部31は、左右方向Xに延びる第1壁部32と、第1壁部32の左右方向Xの両端から上下方向Zの下側(-Z)に延びる一対の第2壁部33と、を含む。
【0092】
本実施形態において、第1壁部32には、第2フレーム22の表面22bに設けられた一対のピン22Pを挿入する一対のピン孔32aが設けられている。なお、一対のピン孔32aの一方を長孔で形成することで、一対のピン22P間の寸法ばらつきによらず、下側ベース連結部材29と第2フレーム22との位置決め時の作業性を向上させることができる。
【0093】
第2マグネットホルダー35は、本体部31の第2面31bのうち各第2壁部33の端部33aから前後方向Yの後側(-Y)に立ち上がり、上下方向Zに延びる部位である。本実施形態の場合、第2マグネットホルダー35の一部は第2壁部33に対して上下方向Zの下側(-Z)に突出する。つまり、第2マグネットホルダー35の前後方向Yの長さは、第2壁部33の前後方向Yの長さよりも長い。
このため、下側ベース連結部材29の第2マグネットホルダー35は、より大型のマグネットを保持可能である。
【0094】
第2マグネットホルダー35は、マグネットを支持する支持板35aと、支持板35aに支持されたマグネットを係止する係止爪35bと、を有し、マグネットを安定して保持することが可能となっている。
本実施形態の場合、立ち上がり壁部として第2マグネットホルダー35を設けることで下側ベース連結部材29の大型化することなく、強度を向上させることができる。また、立ち上がり壁部をマグネットホルダーとして利用することでフレーム補強部材の大型化を抑制できる。
【0095】
ベース連結部34は、ベース固定部34aおよび下側連結軸部34bを含む。すなわち、一対の第2揺動軸形成部50の一つをなす下側ベース連結部材29は、下側連結軸部34bを含む。
ベース固定部34aは、下側ベース連結部材29をベース23の第2の第2フレーム固定部232に固定する部位である。第2の第2フレーム固定部232は、ベース固定部34aを支持する支持面232aと、支持面232aから突出する位置決めピン232bと、を有する。
下側連結軸部34bは、第2揺動軸J2上に位置し、アクチュエーター保持部55側において第2フレーム22とベース23との間を連結する。すなわち、下側連結軸部34bは、上下方向Zの下側(-Z)において第2フレーム22とベース23とを連結し、ベース23に対して第2フレーム22を第2揺動軸J2回りに揺動させる。本実施形態において、下側連結軸部34bは「一方側連結軸部」に相当する。
【0096】
本実施形態において、ベース固定部34aには、第2の第2フレーム固定部232の支持面232aに設けられた位置決めピン232bを挿通させる切欠き34a1が設けられている。下側ベース連結部材29は、ベース固定部34aの切欠き34a1に位置決めピン232bを挿入することでベース23に対する位置が規制される。
【0097】
また、本実施形態の画素シフトデバイス10は、上述のように、第2揺動軸J2に沿う上下方向Zの一方側である下側(-Z)に第1アクチュエーター25と第2アクチュエーター26とを集約させて配置している。
【0098】
本発明者は、第2フレーム22における上下方向Zの一方側に第1アクチュエーター25および第2アクチュエーター26を集約して配置した場合、一対の第2アクチュエーター26の推力による第2フレーム22の変位が伝わり難くなることを後述のシミュレーション結果から見出した。
【0099】
本発明者は、シミュレーション結果に基づき、本実施形態の画素シフトデバイス10の構成を完成させた。本実施形態の画素シフトデバイス10は、一対の第2アクチュエーター26の推力による第2フレーム22の変位を第2揺動軸J2に沿う方向にバランス良く伝達可能とするため、第2フレーム22とベース23とを連結する、下側ベース連結部材29の下側連結軸部34bおよび上側ベース連結部材28の上側連結軸部28bの剛性を異ならせている。
【0100】
上側連結軸部28bおよび下側連結軸部34bは、互いの形状、幅、長さおよび厚みの少なくとも1つが異なることで、各々の剛性を異ならせる。本実施形態において、上側連結軸部28bの左右方向Xの幅W1は、図3に示すように、下側連結軸部34bの左右方向Xの幅W2よりも小さい。本実施形態の場合、上側連結軸部28bおよび下側連結軸部34bの長さ、厚みは等しい。
このようにして、上側連結軸部28bの剛性は下側連結軸部34bの剛性よりも低くなっている。また、上側連結軸部28bの断面二次モーメントは下側連結軸部34bの断面二次モーメントよりも小さくなっている。つまり、上側連結軸部28bの剛性は下側連結軸部34bの剛性よりも低くなるので、上側連結軸部28bは下側連結軸部34bよりもねじれ易くなる。
【0101】
まず、発明者は、第2フレーム22における上下方向Zの一方側に第1アクチュエーター25および第2アクチュエーター26を集約して配置した場合において、一対の第2アクチュエーター26の推力による第2フレーム22の変位について以下のシミュレーションを行った。
【0102】
本発明者は、第1のシミュレーションとして、本実施形態の画素シフトデバイス10に相当するモデルを用いて第2アクチュエーターの推力による第2フレームへの変位の伝わり方を算出した。さらに、本発明者は、第2のシミュレーションとして、上側連結軸部および下側連結軸部の剛性が等しい構成を有する比較例の画素シフトデバイスに相当するモデルを用いて第2アクチュエーターの推力による第2フレームへの変位の伝わり方を算出した。
【0103】
図8Aは本実施形態の画素シフトデバイス10に対応する第1のシミュレーション結果を示す変位分布図であり、図8Bは比較例の画素シフトデバイス100に対応する第2のシミュレーション結果を示す変位分布図である。
図8Bに示すように、比較例の画素シフトデバイス100のように上側連結軸部128bおよび下側連結軸部134bの剛性が等しい場合、第2フレーム22の変位分布の等値線Kがアクチュエーター保持部55から離れるに従ってフレーム外側へ拡がることが確認できる。これは、第2フレーム22は、第2アクチュエーター26を配置するアクチュエーター保持部55に近い位置においては第2アクチュエーター26の推力が効率良く伝わり、アクチュエーター保持部55から離れた位置においては第2アクチュエーター26の推力が伝わり難くなるためである。
【0104】
つまり、比較例の画素シフトデバイス100では、アクチュエーター保持部55から離れるにつれて第2フレーム22の変位が小さくなる。このため、比較例の画素シフトデバイス100では、上側連結軸部128bによる第2フレーム22のねじれ角が下側連結軸部134bによる第2フレーム22のねじれ角よりも小さくなる。
このように比較例の画素シフトデバイス100では、上側連結軸部128bおよび下側連結軸部134bのねじれ角に差が生じるため、光学部材20を第2揺動軸回りにバランス良く回転させることができず、画像光の光路を精度良くシフトさせることが難しい。また、比較例の画素シフトデバイス100では、ねじれ角の差による各軸部材の負荷に差が生じ、各軸部材の耐久性に差が生じることで信頼性の低下を招く恐れがある。
【0105】
これに対して本実施形態の画素シフトデバイス10では、上述のように上側連結軸部28bの幅を下側連結軸部34bの幅よりも小さくすることで、上側連結軸部28bの剛性を下側連結軸部34bの剛性よりも低くしている。
この構成によれば、第2アクチュエーター26の推力が伝わり易い第2フレーム22におけるアクチュエーター保持部55側(-Z)をベース23に連結する下側連結軸部34bの剛性を相対的に高めつつ、第2アクチュエーター26の推力が伝わり難い第2フレーム22におけるアクチュエーター保持部55と反対側(+Z)をベース23に連結する上側連結軸部28bの剛性を相対的に低下させることができる。
したがって、上側連結軸部28bおよび下側連結軸部34bの剛性を適切に調整することで、上側連結軸部28bにおける第2フレーム22のねじれを下側連結軸部34bにおける第2フレーム22のねじれよりも発生し易くすることができる。よって、上側連結軸部28bによる第2フレーム22のねじれ角と下側連結軸部34bによる第2フレーム22のねじれ角とを等しくすることができる。
【0106】
なお、本実施形態の画素シフトデバイス10によれば、図8Aに示すように、第2フレーム22の変位分布の等値線Kが第2揺動軸J2と略平行に延びていることが確認できる。このように本実施形態の画素シフトデバイス10によれば、アクチュエーター保持部55からの距離によらず第2フレーム22の変位がほぼ一定となり、上側連結軸部28bおよび下側連結軸部34bのねじれ角が略一致することがシミュレーション結果からも確認できた。
【0107】
また、本実施形態の画素シフトデバイス10は、第2フレーム22における第1アクチュエーター25および第2アクチュエーター26が集約された延出部220に下側ベース連結部材29を設けることで第2フレーム22の剛性を高めることができる。
【0108】
これにより、本実施形態の画素シフトデバイス10は、第2揺動軸J2回りに揺動する第2フレーム22の変形が抑制されるため、第1フレーム21を介して保持する光学部材20の姿勢を精度良く制御することができる。
また、第2フレーム22の変形が生じ難いため、例えば、第2フレーム22或いは第2フレーム22に第1フレーム21を介して保持する光学部材20が前後方向Yにおいて動いて画像生成部4と接触することを抑制できる。よって、本実施形態の画素シフトデバイス10は、前後方向Yにおいて画素シフトデバイス10を画像生成部4に対して近接した状態で配置可能となる。このため、実施形態のプロジェクター1は前後方向Yの寸法をより小型化することができる。よって、本実施形態の画素シフトデバイス10は、画像生成部4の投射光学系6から射出される画像光LTを効率良く取り込むので、画像光LTの光利用効率を向上できる。
【0109】
また、第2フレーム22の変形が生じ難いため、第2アクチュエーター26の駆動力を第2フレーム22の回転に効率良く利用することができる。よって、光学部材20を同じ角度だけ傾けるために第2アクチュエーター26へ供給する電流が小さくなるので、第2アクチュエーター26の消費電力を抑制できる。
【0110】
続いて、本実施形態の画素シフトデバイス10の動作について説明する。
本実施形態の画素シフトデバイス10は、各第1アクチュエーター25において、不図示の回路基板を用いて第1コイル25bに通電することで磁界を発生させて第1マグネット25aと反発または引き合わせることにより、第1マグネット25aおよび第1コイル25b間に第1揺動軸J1に交差する方向の力を生じさせる。これにより、第1フレーム21は第1揺動軸J1回りに揺動する。第1フレーム21は、上述のように第1揺動軸J1に沿う方向の両端に位置する一対の第1揺動軸形成部24の連結軸部240が第2フレーム22と連結されるため、第1フレーム21に固定された光学部材20は第1揺動軸J1回りに第2フレーム22に対して揺動することができる。
【0111】
また、本実施形態の画素シフトデバイス10は、各第2アクチュエーター26において、不図示の回路基板を用いて第2コイル26bに通電することで磁界を発生させて第2マグネット26aと反発または引き合わせることにより、第2マグネット26aおよび第2コイル26b間に第2揺動軸J2に交差する方向の力を生じさせる。これにより、第2フレーム22は第2揺動軸J2回りに揺動する。第2フレーム22は、上述のように第2揺動軸J2に沿う方向の両端に位置する上側連結軸部28bおよび下側連結軸部34bがベース23と連結されるため、第1フレーム21および第1揺動軸形成部24を介して第2フレーム22に固定された光学部材20は第2揺動軸J2回りにベース23に対して揺動することができる。
【0112】
このようにして本実施形態の画素シフトデバイス10は、一対の第1アクチュエーター25および一対の第2アクチュエーター26による駆動力を利用して光学部材20の姿勢を2軸で制御することができる。画素シフトデバイス10は、光学部材20の姿勢を変化させることで画像生成部4から射出した画像光LTの光路を2軸に沿う方向にシフトさせることができる。
【0113】
本実施形態の場合、第1フレーム21が第1揺動軸J1周りに揺動すると、光学部材20に対する画像光LTの入射角度が変化し、画像光LTの光路が第2方向F2(図2参照)に移動する。また、第1フレーム21を保持する第2フレーム22が第2揺動軸J2周りに揺動すると、第1揺動軸J1周りに揺動した場合とは異なる方向で、光学部材20に対する画像光LTの入射角度が変化し、画像光LTの光路が第1方向F1(図2参照)に移動する。
【0114】
以上のように本実施形態の画素シフトデバイス10は、光学部材20と、光学部材20を保持し、第1揺動軸J1回りに揺動する第1フレーム21と、第1フレーム21の周囲に配置されるとともに第1フレーム21と連結し、第1揺動軸J1と直交する第2揺動軸J2回りに揺動する第2フレーム22と、第2フレーム22の周囲に配置されるとともに第2フレーム22と連結するベース23と、第1揺動軸J1上に位置し第1フレーム21および第2フレーム22を連結する一対の第1揺動軸形成部24と、第2揺動軸J2上に位置し第2フレーム22とベース23とを連結する一対の第2揺動軸形成部50と、第2揺動軸J2上に配置され、第1フレーム21と第2フレーム22との間で、第2フレーム22に対して第1フレーム21を揺動させる第1アクチュエーター25と、第2フレーム22およびベース23の第1アクチュエーター25が配置される側に設けられ第2揺動軸J2を挟んで配置される一対のアクチュエーター保持部55にそれぞれ保持され、ベース23に対して第2フレーム22を揺動させる一対の第2アクチュエーター26と、を備え、一対の第2揺動軸形成部50は、アクチュエーター保持部55側において第2フレーム22とベース23との間を連結する下側連結軸部34bと、アクチュエーター保持部55と反対側において第2フレーム22とベース23との間を連結する上側連結軸部28bと、を含み、上側連結軸部28bの剛性は下側連結軸部34bの剛性よりも低い。
【0115】
本実施形態の画素シフトデバイス10によれば、第2アクチュエーター26の推力が伝わり易い下側連結軸部34bの剛性を相対的に高めつつ、第2アクチュエーター26の推力が伝わり難い上側連結軸部28bの剛性を相対的に低下させることで、第2フレーム22の第2揺動軸J2に沿う上下方向Zに第2アクチュエーター26の推力を均等に伝達させることができる。これにより、上側連結軸部28bおよび下側連結軸部34bのねじれ角を略一致させることで、光学部材20を第2揺動軸J2回りにバランス良く回転させて画像光LTの光路を精度良くシフトすることができる。また、本実施形態の画素シフトデバイス10では、ねじれ角の差による各連結軸部28b、34bの負荷に差が生じ難いため、上側連結軸部28bおよび下側連結軸部34bの耐久性を向上させることでより信頼性の高いデバイスを提供できる。
本実施形態の画素シフトデバイス10では、第2アクチュエーター26が第2揺動軸J2に沿う方向の一方側に集約して配置されるので、第2アクチュエーター26が第1揺動軸J1上に配置される場合に比べて第2アクチュエーター26との干渉を考慮する必要が無い領域が増えるため、画素シフトデバイス10に対する画像生成部4のレイアウトがし易くなる。
【0116】
また、本実施形態の画素シフトデバイス10によれば、第1フレーム21と第2フレーム22とを連結する一対の第1揺動軸形成部24の一対の梁241が第2フレーム22の表面22bに沿って形成されるため、第2フレーム22の強度を高めることができる。このため、本実施形態の画素シフトデバイス10は、例えば、運搬時の振動や落下による衝撃による負荷が加わった場合でも、一対の第1揺動軸形成部24によって第2フレーム22における第1フレーム21との連結部分の強度を高めることで、第2フレーム22の変形や破損を抑制することができる。
よって、画素シフトデバイス10の光学部材20のサイズを大きくすることで第2フレーム22として大型かつ軽量部材で構成されたものを採用する場合でも、第2フレーム22の強度を高めることで衝撃の負荷に対する耐性を持たせることができる。したがって、本実施形態の画素シフトデバイス10によれば、軽量かつ大型の第2フレーム22の一方側に第1アクチュエーター25および第2アクチュエーター26を集約した構造を採用する場合でも、第2フレーム22に衝撃の負荷に対する耐性を持たせた信頼性の高いデバイスを提供できる。
【0117】
また、本実施形態の画素シフトデバイス10において、第1アクチュエーター25および第2アクチュエーター26が第1揺動軸J1に対して第2フレーム22の片側に集約され、第2フレーム22に第1アクチュエーター25および第2アクチュエーター26の駆動力に伴って発生した応力が集中し易くなる。これに対して、本実施形態の画素シフトデバイス10は、下側ベース連結部材29により剛性を高めることで第2フレーム22の変形が抑制されるため、第1フレーム21を介して保持する光学部材20の姿勢を精度良く制御することができる。
また、第2フレーム22の変形が生じ難いため、例えば、第2フレーム22或いは第2フレーム22に第1フレーム21を介して保持された光学部材20が前後方向Yにおいて動いて画像生成部4と接触することを抑制できる。よって、本実施形態の画素シフトデバイス10は、前後方向Yにおいて画素シフトデバイス10を画像生成部4に対して近接した状態で配置できる。このため、実施形態のプロジェクター1は前後方向Yの寸法を小型化できる。
【0118】
また、本実施形態の画素シフトデバイス10は、下側ベース連結部材29により剛性を高めることで第2フレーム22の応力による歪量が低減され、第2アクチュエーター26の振動の減衰を抑制して第2フレーム22を効率的に揺動させることができる。このため、第2アクチュエーター26の駆動力を第2フレーム22の回転に効率良く利用できるので、第2アクチュエーター26を省エネルギーで駆動させることができる。
【0119】
本実施形態のプロジェクター1によれば、耐久性に優れた画素シフトデバイス10を備えるため、長期に亘って良質な画像を投射することができる。
【0120】
また、本実施形態のプロジェクター1によれば、上記画素シフトデバイス10を備えるので、運搬時の振動や落下による衝撃による負荷に耐性に優れたものとなる。また、画素シフトデバイス10の光学部材20としてサイズの大きいものを採用できるので、各液晶パネル4RP,4GP,4BPとして大型パネルを用いることができ、明るい画像をスクリーンSCRに投射することができる。
また、本実施形態のプロジェクター1は、第2フレーム22を省エネルギーで駆動できる画素シフトデバイス10を備えるので、プロジェクターの消費電力を小さく抑えることができる。
【0121】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
その他、光源装置を構成する各種構成要素の数、配置、形状および材料等の具体的な構成は、上記実施形態に限らず、適宜変更が可能である。
【0122】
上記実施形態の画素シフトデバイス10は、一対の第1アクチュエーター25を備える場合を例に挙げたが、第1アクチュエーター25を1つのみ備える構成を採用してもよい。この場合においても、第2アクチュエーター26は第1アクチュエーター25が配置される側に配置される。
【0123】
上記実施形態において、上側連結軸部28bおよび下側連結軸部34bは互いの幅W1,W2を異ならせることで、各々の剛性を異ならせていたが、上側連結軸部28bおよび下側連結軸部34bの剛性を異なる手段はこれに限られない。
【0124】
(変形例)
図9Aおよび図9Bは変形例の画素シフトデバイスの要部構成を示す拡大図である。図9Aはベース23および第2フレーム22間を連結する下側ベース連結部材29の要部を示し、図9Bはベース23および第2フレーム22間を連結する上側ベース連結部材28の要部を示している。
【0125】
図9Aに示すように、本変形例の画素シフトデバイス10Aにおいて、下側ベース連結部材29は第2フレーム22の上下方向Zの下側(-Z)において、ベース23と第2フレーム22とを連結する。下側ベース連結部材29は第1ねじ部材61を介してベース23および第2フレーム22に固定される。
また、図9Bに示すように、本変形例の画素シフトデバイス10Aにおいて、上側ベース連結部材28は第2フレーム22の上下方向Zの上側(+Z)において、ベース23と第2フレーム22とを連結する。上側ベース連結部材28は第2ねじ部材62を介してベース23および第2フレーム22に固定される。
【0126】
図9Aおよび図9Bに示すように、本変形例において、下側連結軸部34bおよび上側連結軸部28bは、第1ねじ部材61の頭部61aから下側連結軸部34bまでの第1距離D1と第2ねじ部材62の頭部62aから上側連結軸部28bまでの第2距離D2とを調整することで、各々の剛性を異ならせている。なお、本変形例の場合、下側連結軸部34bおよび上側連結軸部28bは同じ太さを有している。
【0127】
具体的に、第1ねじ部材61の頭部61aから下側連結軸部34bまでの第1距離D1は、第2ねじ部材62の頭部62aから上側連結軸部28bまでの第2距離D2よりも短い。なお、ねじ部材の頭部と連結軸部との距離とは、ねじ部材の頭部の外形と連結軸部の外形との最短距離を意味する。
【0128】
本変形例の場合、第1ねじ部材61および第2ねじ部材62は同じ部材で構成される。すなわち、第1ねじ部材61の頭部61aと第2ねじ部材62の頭部62aとは同じ大きさを有する。また、第1ねじ部材61を締結するねじ穴から下側連結軸部34bまでの距離は、第2ねじ部材62を締結するねじ穴から上側連結軸部28bまでの距離よりも短い。なお、2つのねじ穴の距離とは各ねじ穴の中心間距離を意味する。
【0129】
この構成によれば、上側連結軸部28bは、下側連結軸部34bに比べてねじ部材による締結部までの距離が長くなることで相対的に剛性が低下する。よって、本変形例の画素シフトデバイス10Aにおいても、上側連結軸部28bの剛性を下側連結軸部34bの剛性よりも低くできる。
【0130】
なお、第1ねじ部材61を締結するねじ穴から下側連結軸部34bまでの距離と第2ねじ部材62を締結するねじ穴から上側連結軸部28bまでの距離とが同じでもよい。
この場合において、第1ねじ部材61の頭部61aを第2ねじ部材62の頭部62aよりも大きくする。これにより、第1ねじ部材61の頭部61aから下側連結軸部34bまでの第1距離D1が第2ねじ部材62の頭部62aから上側連結軸部28bまでの第2距離D2よりも短くなるため、上側連結軸部28bの剛性を下側連結軸部34bの剛性よりも低くすることができる。
【0131】
なお、図9Aおよび図9Bに示した構成において、第1ねじ部材61の頭部61aの大きさと第2ねじ部材62の頭部62aの大きさとを異ならせることで、上側連結軸部28bおよび下側連結軸部34bの剛性をそれぞれ微調整してもよい。これにより、上側連結軸部28bおよび下側連結軸部34bの剛性の調整をより容易に行うことができる。
【0132】
以下、本開示のまとめを付記する。
(付記1)
光学部材と、
前記光学部材を保持し、第1揺動軸回りに揺動する第1フレームと、
前記第1フレームの周囲に配置されるとともに前記第1フレームと連結し、前記第1揺動軸と直交する第2揺動軸回りに揺動する第2フレームと、
前記第2フレームの周囲に配置されるとともに前記第2フレームと連結するベースと、
前記第1揺動軸上に位置し前記第1フレームおよび前記第2フレームを連結する一対の第1揺動軸形成部と、
前記第2揺動軸上に位置し前記第2フレームと前記ベースとを連結する一対の第2揺動軸形成部と、
前記第2揺動軸上に配置され、前記第1フレームと前記第2フレームとの間で、前記第2フレームに対して前記第1フレームを揺動させる第1アクチュエーターと、
前記第2フレームおよび前記ベースの前記第1アクチュエーターが配置される側に設けられ前記第2揺動軸を挟んで配置される一対のアクチュエーター保持部にそれぞれ保持され、前記ベースに対して前記第2フレームを揺動させる一対の第2アクチュエーターと、を備え、
前記一対の第2揺動軸形成部は、前記アクチュエーター保持部側において前記第2フレームと前記ベースとの間を連結する一方側連結軸部と、前記アクチュエーター保持部と反対側において前記第2フレームと前記ベースとの間を連結する他方側連結軸部と、を含み、
前記他方側連結軸部の剛性は前記一方側連結軸部の剛性よりも低い、
ことを特徴とする画素シフトデバイス。
【0133】
この構成の画素シフトデバイスによれば、第2アクチュエーターの推力が伝わり易い一方側連結軸部の剛性を相対的に高めつつ第2アクチュエーターの推力が伝わり難い他方側連結軸部の剛性を相対的に低下させることで、第2フレームの第2揺動軸に沿う方向に第2アクチュエーターの推力を均等に伝達させることができる。これにより、他方側連結軸部および一方側連結軸部のねじれ角を略一致させることで、光学部材を第2揺動軸回りにバランス良く回転させて画像光の光路を精度良くシフトできる。
また、この構成の画素シフトデバイスは、ねじれ角の差による各連結軸部の負荷に差が生じ難いため、各連結軸部の耐久性を向上させることでより信頼性の高いデバイスを提供できる。
また、この画素シフトデバイスでは、第2アクチュエーターが第2揺動軸に沿う方向の一方側に集約して配置されることで、第2アクチュエーターを第1揺動軸上に配置する構成に比べて第2アクチュエーターとの干渉を考慮する必要が無い領域が増えるため、画素シフトデバイスに対する他の部品レイアウトがし易くなる。
【0134】
(付記2)
前記一対の第1揺動軸形成部の各々は、前記第1フレームおよび前記第2フレームを連結する連結軸部をそれぞれ有し、
前記連結軸部の各々の剛性は等しい、
ことを特徴とする付記1に記載の画素シフトデバイス。
【0135】
この構成によれば、第1アクチュエーターの推力が一対の連結軸部に均等に伝わるため、第1フレームが第1揺動軸回りに回転する際のねじれの発生を抑制することもできる。
【0136】
(付記3)
前記他方側連結軸部の断面二次モーメントは、前記一方側連結軸部の断面二次モーメントよりも小さい、
ことを特徴とする付記1または付記2に記載の画素シフトデバイス。
【0137】
この構成によれば、他方連結軸部の剛性が一方側連結軸部の剛性よりも低くなるので、他方側連結軸部が一方側連結軸部よりもねじれ易くなる。よって、第2アクチュエーターの推力が第2フレームの第2揺動軸に沿う方向に均等に伝達し、他方側連結軸部および一方側連結軸部のねじれ角を一致させることができる。
【0138】
(付記4)
前記第2フレームに設けられる前記一対のアクチュエーター保持部は、前記一対の第2揺動軸形成部の一部で構成され、前記第2アクチュエーターを構成するマグネットおよびコイルの一方を保持する、
ことを特徴とする付記1から付記3のうちのいずれか一つに記載の画素シフトデバイス。
【0139】
この構成によれば、第2揺動軸形成部が第2アクチュエーターを構成するマグネットおよびコイルの一方を保持する保持部を兼ねるため、構造の簡略化を図ることができる。
【0140】
(付記5)
前記他方側連結軸部および前記一方側連結軸部は、互いの形状、幅、長さおよび厚みの少なくとも1つが異なることで、各々の剛性を異ならせる、
ことを特徴とする付記1から付記3のうちのいずれか一つに記載の画素シフトデバイス。
【0141】
この構成によれば、他方連結軸部および一方側連結軸部の互いの剛性を調整することで、他方連結軸部の剛性を一方側連結軸部の剛性よりも低くする構成を容易に実現できる。
【0142】
(付記6)
前記一対の第2揺動軸形成部は、前記一方側連結軸部を有し前記第2フレームおよび前記ベースを第1ねじ部材により連結する一方側連結部と、前記他方側連結軸部を有し前記第2フレームおよび前記ベースを第2ねじ部材により連結する他方側連結部と、を含み、
前記一方側連結部および前記他方側連結部は、前記第1ねじ部材の頭部から前記一方側連結軸部までの距離と前記第2ねじ部材の頭部から前記他方側連結軸部までの距離とを調整することで、各々の剛性を異ならせる、
ことを特徴とする付記1から付記3のうちのいずれか一つに記載の画素シフトデバイス。
【0143】
この構成によれば、一方側連結軸部のねじ部による締結部までの距離に比べて他方側連結軸部のねじ部材による締結部までの距離を長くすることで他方側連結軸部の剛性を一方側連結軸部の剛性よりも低下させることができる。
【0144】
(付記7)
前記一対の第2揺動軸形成部は、前記一方側連結軸部を有し前記第2フレームおよび前記ベースを第1ねじ部材により連結する一方側連結部と、前記他方側連結軸部を有し前記第2フレームおよび前記ベースを第2ねじ部材により連結する他方側連結部と、を含み、
前記一方側連結部および前記他方側連結部は、前記第1ねじ部材のねじ穴から前記一方側連結軸部までの距離と前記第2ねじ部材のねじ穴から前記他方側連結軸部までの距離とを調整することで、各々の剛性を異ならせる、
ことを特徴とする付記1から付記3のうちのいずれか一つに記載の画素シフトデバイス。
【0145】
この構成によれば、一方側連結軸部を締結するねじ穴までの距離に比べて他方側連結軸部を締結するねじ穴までの距離を長くすることで他方側連結軸部の剛性を一方側連結軸部の剛性よりも低下させることができる。
【0146】
(付記8)
画像光を生成する画像生成部と、
前記画像光を投射する投射光学系と、
前記画像生成部と前記投射光学系との間に配置され、前記画像生成部からの前記画像光の光路をシフトさせる、付記1から付記7のうちのいずれか一項に記載の画素シフトデバイスと、を備える、
ことを特徴とするプロジェクター。
【0147】
この構成のプロジェクターによれば、耐久性に優れた画素シフトデバイスを備えるため、長期に亘って良質な画像を投射することができる。
【0148】
(付記9)
前記画像生成部は、
第1光射出面を有し、前記第1光射出面を前記投射光学系側に向けて配置された第1光変調装置と、
第2光射出面を有し、前記第2光射出面を前記第1光変調装置と前記投射光学系とが並ぶ方向に直交する方向に向けて配置された第2光変調装置と、
第3光射出面を有し、前記第3光射出面を前記第2光変調装置の前記第2光射出面と対向させるように配置された第3光変調装置と、
前記第1光変調装置、前記第2光変調装置および前記第3光変調装置から射出された光を合成して前記画像光を生成し、前記画像光を前記投射光学系に向けて射出する光合成素子と、
を備え、
前記画素シフトデバイスの前記光学部材は、前記投射光学系と前記光合成素子との間の前記画像光の光路上に配置され、
前記第2揺動軸に沿う方向において、前記第2光変調装置および前記第3光変調装置の前記投射光学系側の端部は、それぞれ前記画素シフトデバイスの前記第2アクチュエーターから離れた位置に配置される、
ことを特徴とする付記8に記載のプロジェクター。
【0149】
この構成によれば、第2光変調装置および第3光変調装置は、第2揺動軸に沿う方向において、それぞれ画素シフトデバイスの第2アクチュエーターから離れた位置に配置されるため、第2光変調装置および第3光変調装置を画素シフトデバイスに近づけて配置することで装置構成のさらなる小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0150】
1…プロジェクター、4…画像生成部、4B,4G,4R…光変調装置、5…光合成素子、6…投射光学系、10,10A,100…画素シフトデバイス、20…光学部材、21…第1フレーム、22…第2フレーム、23…ベース、24…第1揺動軸形成部、25…第1アクチュエーター、26…第2アクチュエーター、28b,240…連結軸部、33a,241a…端部、40B…第3光射出面、40G…第1光射出面、40R…光射出面、40R…第2光射出面、50…第2揺動軸形成部、55…アクチュエーター保持部、60…ねじ部材、61…第1ねじ部材、61a,62a…頭部、62…第2ねじ部材、A,Px…画素、J1…第1揺動軸、J2…第2揺動軸、L3,L4…距離、LT…画像光、W1,W2…幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B