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  • 特開-鉄道車両の記録装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103032
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】鉄道車両の記録装置
(51)【国際特許分類】
   B61C 17/12 20060101AFI20240725BHJP
   G01D 9/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B61C17/12 A
G01D9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007157
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 修
(72)【発明者】
【氏名】根来 尚志
(72)【発明者】
【氏名】品川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小坂田 潤
【テーマコード(参考)】
2F070
【Fターム(参考)】
2F070AA01
2F070BB01
2F070CC06
2F070CC11
2F070FF04
2F070FF08
(57)【要約】
【課題】比較的小さいメモリ容量で監視装置の有用なログを記録することができる鉄道車両の記録装置を提供する。
【解決手段】鉄道車両(1)の記録装置(10A)は、監視装置(8A)と、フラッシュメモリ(11A)と、制御装置(9A)とを備える。監視装置(8A)は、鉄道車両(1)の状態を監視する。フラッシュメモリ(11A)は、監視装置(8A)のログを記録する。制御装置(9A)は、鉄道車両(1)の走行中、フラッシュメモリ(11A)へのログの記録をリアルタイムに行わせ、鉄道車両(1)の停車中、フラッシュメモリ(11A)へのログの記録を少なくとも一時停止させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の状態を監視する監視装置と、
前記監視装置のログを記録するフラッシュメモリと、
前記鉄道車両の走行中、前記フラッシュメモリへの前記ログの記録をリアルタイムに行わせ、前記鉄道車両の停車中、前記フラッシュメモリへの前記ログの記録を停止又は一時停止させる制御装置と、を備える、鉄道車両の記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両の記録装置であって、
前記制御装置は、前記鉄道車両の停車中に前記ログの記録を一時停止させる場合、サンプリング時間を間引いて前記フラッシュメモリへの前記ログの記録を行わせる、鉄道車両の記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の鉄道車両の記録装置であって、
前記監視装置と、前記フラッシュメモリと、前記制御装置とをそれぞれ含む複数の記録装置ユニットを備え、
前記サンプリング時間の間引き方が、前記複数の記録装置ユニットで相互に異なる、鉄道車両の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄道車両の記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両は、台車と、車体とを備える。車体は、左右にそれぞれ配置された空気ばねを介して台車に支持されている。通常、鉄道車両には、鉄道車両の状態を監視する装置が設けられている。このような監視装置として、例えば、国際公開第2012/026102号公報(特許文献1)に記載される動揺抑制装置や、特開2022-072076号公報(特許文献2)に記載される車体傾斜装置や、特許第6438702号公報(特許文献3)に記載される脱線検知装置が知られている。
【0003】
動揺抑制装置は、車体に生じる左右方向の振動を抑制する。具体的には、動揺抑制装置は、加速度センサと、アクチュエータとを含む。台車に対して車体が左右方向に振動すると、その振動は加速度センサによって検出される。加速度センサで検出された振動に基づいて、アクチュエータは作動し、振動を打ち消すように車体に左右方向の推力を与える。これにより、車体の振動が低減される。
【0004】
車体傾斜装置は、台車に対する車体の傾斜を制御する。具体的には、車体傾斜装置は、回転軸を有するLV(レベリングバルブ)と、角度センサと、電磁弁とを含む。曲線路などで車体を傾斜させるために、電磁弁が開閉されると、空気ばねに圧縮空気が供給され、又は空気ばねから圧縮空気が排出される。すなわち、空気ばねの高さが大きくなり、又は空気ばねの高さが小さくなる。これにより、台車に対して車体が上下方向に移動し、LVの回転軸が回転する。その回転軸の回転角が角度センサによって検出される。角度センサで検出された回転角に基づいて、電磁弁の開閉度合いが調整される。これにより、車体の傾斜が適当になる。
【0005】
脱線検知装置は、鉄道車両の脱線を検知する。具体的には、脱線検知装置は、加速度センサと、速度センサとを含む。加速度センサによって、鉄道車両の3軸方向(前後方向、左右方向及び上下方向)それぞれに生じる加速度が検出され、速度センサによって、鉄道車両の走行速度が検出される。検出された走行速度に基づいて、車輪のフランジの回転数が算出され、この回転数及び検出された各加速度に基づいて、フランジ外周の回転1次周波数が算出される。フランジ外周の回転1次周波数より、鉄道車両が脱線しているか否かが判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2012/026102号公報
【特許文献2】特開2022-072076号公報
【特許文献3】特許第6438702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、監視装置の性能を分析したり、鉄道車両が故障したときの原因を分析したりするため、監視装置のログが利用される場合がある。ログの記録には、信頼性と耐久性が要求される。そのため、工業用・産業用のフラッシュメモリが用いられる。このようなログの記録は、常時連続的にリアルタイムで行われることから、多くのメモリ容量を必要とする。工業用・産業用のフラッシュメモリは一般的なものと比べて高価なため、メモリ容量の増量がコスト面に与える影響は大きい。
【0008】
本開示の目的は、比較的小さいメモリ容量で監視装置の有用なログを記録することができる鉄道車両の記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る鉄道車両の記録装置は、監視装置と、フラッシュメモリと、制御装置とを備える。監視装置は、鉄道車両の状態を監視する。フラッシュメモリは、監視装置のログを記録する。制御装置は、鉄道車両の走行中、フラッシュメモリへのログの記録をリアルタイムに行わせ、鉄道車両の停車中、フラッシュメモリへのログの記録を停止又は一時停止させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る鉄道車両の記録装置によれば、比較的小さいメモリ容量で監視装置の有用なログを記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係る記録装置を備える鉄道車両を示す模式図である。
図2図2は、第2実施形態に係る記録装置を備える鉄道車両を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、本開示の実施形態について例を挙げて説明するが、本開示は以下で説明する例に限定されない。以下の説明において特定の数値や特定の材料を例示する場合があるが、本開示はそれらの例示に限定されない。
【0013】
本実施形態に係る鉄道車両の記録装置は、監視装置と、フラッシュメモリと、制御装置とを備える。監視装置は、鉄道車両の状態を監視する。フラッシュメモリは、監視装置のログを記録する。制御装置は、鉄道車両の走行中、フラッシュメモリへのログの記録をリアルタイムに行わせ、鉄道車両の停車中、フラッシュメモリへのログの記録を停止又は一時停止させる(第1の構成)。
【0014】
第1の構成では、鉄道車両の走行中は、監視装置のログの記録が常時連続的に行われる。一方、鉄道車両の停車中は、監視装置のログの記録が停止又は一時停止される。すなわち、鉄道車両の停車中、ログの記録は、全く行われないか、一時的に行われる。そのため、鉄道車両の停車中にログの記録が停止された分だけ、フラッシュメモリの容量の消費を抑えることができる。基本的に、監視装置の有用なログは、鉄道車両の走行中のものである。したがって、第1の構成の記録装置によれば、小さいメモリ容量で監視装置の有用なログを記録することができる。
【0015】
第1の構成の記録装置において、好ましくは、制御装置は、鉄道車両の停車中にログの記録を一時停止させる場合、サンプリング時間を間引いてフラッシュメモリへのログの記録を行わせる(第2の構成)。例えば、鉄道車両の停止中にログの記録が全く行われない場合、停止中の鉄道車両に何らかの異常事態が起こっていても、その事象を後で分析することができない。第2の構成では、鉄道車両の停車中、ログの記録は一時的に行われる。そのため、停車中の鉄道車両に起こった事象を後で分析できる可能性が高まる。
【0016】
第2の構成の記録装置は、複数の記録装置ユニットを備えていてもよい。複数の記録装置ユニットは、それぞれ、監視装置と、フラッシュメモリと、制御装置とを含む。そして、サンプリング時間の間引き方が、複数の記録装置ユニットで相互に異なる(第3の構成)。この場合、鉄道車両の停車中、ログの一時的な記録は、相互に異なるタイミングで行われる。そのため、停車中の鉄道車両に起こった事象を後で十分に分析できる可能性がより高まる。
【0017】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。各図において同一又は相当の構成については同一符号を付し、同じ説明を繰り返さない。
【0018】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る記録装置を備える鉄道車両を示す模式図である。図1には、記録装置10Aを含む鉄道車両1を進行方向に沿って見たときの様子が示される。本明細書において、鉄道車両1の進行方向を前後方向と称し、鉄道車両1の幅方向を左右方向と称し、鉄道車両1の高さ方向を上下方向と称する場合がある。
【0019】
[鉄道車両1の基本構成]
図1を参照して、鉄道車両1は、台車2と、車体3とを備える。車体3の前と後にそれぞれ台車2が配置され、各台車2によって車体3が支持されている。具体的には、台車2は、前と後にそれぞれ輪軸4を備える。輪軸4の右と左にそれぞれ車輪4a,4aが設けられている。台車2は、右と左にそれぞれ空気ばね5,5を備える。空気ばね5,5は、台車2と車体3との間に配置され、車体3は、空気ばね5,5を介して台車2に支持されている。鉄道車両1はレールR、R上を走行する。
【0020】
さらに、鉄道車両1は、監視装置8Aを備える。監視装置8Aは、鉄道車両1の状態を監視する。本実施形態では、監視装置8Aとして動揺抑制装置18が設けられている。動揺抑制装置18は、車体3に生じる左右方向の振動を抑制する。
【0021】
具体的には、動揺抑制装置18は、加速度センサ181と、アクチュエータ182とを含む。動揺抑制装置18は、制御装置9Aによって制御される。加速度センサ181は、車体3の台車2に近い部分に取り付けられている。加速度センサ181は、車体3に生じた左右方向の振動の加速度を検出する。アクチュエータ182は、台車2と車体3との間に配置される。アクチュエータ182は、例えば、直動式の電動アクチュエータである。アクチュエータ182は左右方向に延びるように配置されており、その一端部が台車2に接続され、その他端部が車体3に接続されている。アクチュエータ182は、電気的な信号に応じて作動する。アクチュエータ182の作動によって、アクチュエータ182は推力を出し、車体3に左右方向の推力を与える。
【0022】
制御装置9Aは、各種の処理を実行するプログラムがインストールされたコンピュータである。制御装置9Aは、加速度センサ181及びアクチュエータ182とそれぞれ導線で接続されている。制御装置9Aは、加速度センサ181が検出した振動加速度を取得する。制御装置9Aは、加速度センサ181から取得した振動加速度に応じて必要な推力を算出し、指令推力を設定する。そして、制御装置9Aは、指令推力に対応する信号を生成し、生成した信号をアクチュエータ182に送出する。このような処理は、制御装置9A内のプログラムによって実行される。アクチュエータ182は、制御装置9Aからの指令推力の信号に応じて作動する。
【0023】
このような動揺抑制装置18を備えた鉄道車両1において、車体3が左右方向に振動すると、その振動は加速度センサ181によって検出される。加速度センサ181で検出された振動に基づいて、アクチュエータ182は作動し、振動を打ち消すように車体3に左右方向の推力を与える。これにより、車体3の振動が低減される。
【0024】
[鉄道車両1の記録装置10A]
鉄道車両1は、動揺抑制装置18(監視装置8A)のログを記録するための記録装置10Aを備える。具体的には、記録装置10Aは、上記動揺抑制装置18と、フラッシュメモリ11Aと、上記制御装置9Aとを含む。フラッシュメモリ11Aは、例えば、信頼性と耐久性に優れた工業用・産業用のフラッシュメモリである。フラッシュメモリ11Aは、データの読み書きが可能である。フラッシュメモリ11Aとして、例えば、カード型のフラッシュメモリを用いることができる。典型的な例では、フラッシュメモリ11Aは、CFカードである。制御装置9Aは、データ書き込み装置9Aaを有する。データ書き込み装置9Aaは、スロットを有し、このスロットにフラッシュメモリ11Aが装着される。フラッシュメモリ11Aは、スロットから取り外すことが可能である。
【0025】
フラッシュメモリ11Aは、動揺抑制装置18のログを記録する。具体的には、制御装置9Aからの指令により、データ書き込み装置9Aaが作動し、動揺抑制装置18のログがフラッシュメモリ11Aに書き込まれる。その際、制御装置9Aは、鉄道車両1の走行中、フラッシュメモリ11Aへのログの記録をリアルタイムに行わせる。これにより、鉄道車両1の走行中は、動揺抑制装置18のログの記録が常時連続的に行われる。一方、制御装置9Aは、鉄道車両1の停車中、フラッシュメモリ11Aへのログの記録を一時停止させる。これにより、鉄道車両1の停車中は、動揺抑制装置18のログの記録が一時的に行われる。このような処理は、制御装置9A内のプログラムによって実行される。
【0026】
制御装置9Aは、鉄道車両1の停車中、サンプリング時間を間引いてフラッシュメモリ11Aへのログの記録を行わせることができる。この場合、ログの記録は間欠的に行われる。ただし、制御装置9Aは、鉄道車両1の停車中、ログの記録を完全に停止してもよい。この場合、鉄道車両1の停止中にログの記録は全く行われない。
【0027】
フラッシュメモリ11Aに記録されるログは、例えば、時刻、地点情報、制御装置9Aが加速度センサ181から取得したインプット情報、及び制御装置9Aがアクチュエータ182に送出したアウトプット情報等である。時刻及び地点情報は、制御装置9Aが直接又は間接的に受信したものである。インプット情報は、本実施形態の例では、振動加速度の値である。アウトプット情報は、本実施形態の例では、算出した必要な推力の値、及び指令推力の値である。
【0028】
本実施形態の記録装置10Aにおいて、例えば、フラッシュメモリ11Aとして、2Gbyteのメモリ容量を有するCFカードを用い、3ms(ミリ秒)のサンプリング周期にてログを記録することができる。その際、停車中のログの記録は、停車後20秒間行い、その後、1分経過する度に1秒間行うことができる。この場合、のべ55時間分の記録が可能である。1日あたり16時間の走行及び8時間の停車と仮定すると、約3.4日分のログを記録することが可能になる。フラッシュメモリ11Aとして、8Gbyteのメモリ容量を有するCFカードを用いてもよい。
【0029】
[効果]
本実施形態の記録装置10Aでは、鉄道車両1の走行中は、動揺抑制装置18(監視装置8A)のログの記録が常時連続的に行われる。一方、鉄道車両1の停車中は、動揺抑制装置18(監視装置8A)のログの記録が停止又は一時停止される。すなわち、鉄道車両1の停車中、ログの記録は、全く行われないか、一時的に行われる。そのため、鉄道車両1の停車中にログの記録が停止された分だけ、フラッシュメモリ11Aの容量の消費を抑えることができる。特に、停車中にログの記録が全く行われない場合、フラッシュメモリ11Aの容量の消費をより抑えることができる。基本的に、監視装置8Aの有用なログは、鉄道車両の走行中のものであり、本実施形態の記録装置10Aは、小さいメモリ容量で監視装置8Aの有用なログを記録することができる。その結果、後でそのログを用いて、監視装置8Aの性能を分析したり、鉄道車両1が故障したときの原因を分析したりすることが可能になる。
【0030】
鉄道車両1の停止中にログの記録が全く行われない場合、停止中の鉄道車両1に何らかの異常事態が起こっていても、その事象を後で分析することができない。本実施形態の記録装置10Aでは、鉄道車両1の停車中にログの記録を一時停止させる場合、サンプリング時間を間引いてフラッシュメモリ11Aへのログの記録を行わせることができる。この場合、鉄道車両1の停車中、ログの記録は一時的に行われるため、停車中の鉄道車両1に起こった事象を後で分析できる可能性が高まる。
【0031】
<第2実施形態>
図2を参照して、第2実施形態に係る記録装置10Bについて説明する。図2は、第2実施形態に係る記録装置を備える鉄道車両を示す模式図である。記録装置10Bは、監視装置8Bの構成において、第1実施形態に係る記録装置10Aと異なる。
【0032】
[鉄道車両1の基本構成]
図2を参照して、鉄道車両1には、監視装置8Bとして、第1実施形態の動揺抑制装置18に代えて、車体傾斜装置28が設けられている。車体傾斜装置28は、台車2に対する車体3の傾斜を制御する。
【0033】
具体的には、車体傾斜装置28は、LV(レベリングバルブ)281,281と、角度センサ282,282と、給気用電磁弁283,283と、排気用電磁弁284,284とを含む。車体傾斜装置28は、制御装置9Bによって制御される。さらに、車体傾斜装置28は、空気溜め6と、空気溜め6と各空気ばね5,5とをつなぐ配管7,7とを含む。LV281,281は、配管7,7の経路中に設けられている。LV281,281は、車体3の右と左にそれぞれ配置され、車体3に取り付けられている。LV281,281は、回転軸281a,281aを有する。回転軸281a,281aの一端に、レバー281b,281bが固定されている。回転軸281a,281aの他端に、角度センサ282,282が配置されている。角度センサ282,282は、回転軸281a,281aの回転角を検出する。角度センサ282,282として、例えば、レゾルバを用いることができる。
【0034】
レバー281b,281bは前後方向に延びており、その回転軸281a,281aと反対側の端に、連接棒281c,281cが接続されている。連接棒281c,281cは上下方向に延びており、その下端は台車2に接続されている。レバー281b,281b及び連接棒281c,281cによって、リンク機構が形成される。台車2に対して車体3が上下方向に移動することにより、連接棒281c,281cが上下方向に移動し、これに伴って、レバー281b,281bが回転軸281a,281aまわりに回転(回動)する。その回転軸281a,281aの回転角が角度センサ282,282によって検出される。
【0035】
配管7,7の経路のうちLV281,281と空気ばね5,5との間には、給気用電磁弁283,283が設けられている。空気ばね5,5には、排気用電磁弁284,284が設けられている。給気用電磁弁283,283の開閉度合いにより、空気溜め6から空気ばね5,5への圧縮空気の供給量が調整される。排気用電磁弁284,284が開かれることにより、空気ばね5,5から圧縮空気が排出される。要するに、給気用電磁弁283,283及び排気用電磁弁284,284は、空気ばね5,5に対して圧縮空気の給排気量を調節する電磁弁として機能する。
【0036】
制御装置9Bは、各種の処理を実行するプログラムがインストールされたコンピュータである。制御装置9Bは、角度センサ282,282、給気用電磁弁283,283、及び排気用電磁弁284,284とそれぞれ導線で接続されている。制御装置9Bは、角度センサ282,282が検出した回転角を取得する。制御装置9Bは、角度センサ282,282から取得した回転角に応じて、給気用電磁弁283,283、及び排気用電磁弁284,284に必要な弁開度を算出し、指令弁開度を設定する。そして、制御装置9Bは、指令弁開度に対応する信号を生成し、生成した信号を給気用電磁弁283,283、及び排気用電磁弁284,284に送出する。このような処理は、制御装置9B内のプログラムによって実行される。給気用電磁弁283,283、及び排気用電磁弁284,284は、制御装置9Bからの指令弁開度の信号に応じて作動する。
【0037】
このような車体傾斜装置28を備えた鉄道車両1において、曲線路などで車体3を傾斜させるために、制御装置9Bからの指令により、給気用電磁弁283,283、又は排気用電磁弁284,284が開閉されると、空気ばね5,5に圧縮空気が供給され、又は空気ばね5,5から圧縮空気が排出される。すなわち、空気ばね5,5の高さが大きくなり、又は空気ばね5,5の高さが小さくなる。これにより、台車2に対して車体3が上下方向に移動し、連接棒281c,281c及びレバー281b,281bを介してLV281,281の回転軸281a,281aが回転(回動)する。その回転軸281a,281aの回転角が角度センサ282,282によって検出される。角度センサ282,282で検出された回転角に基づいて、給気用電磁弁283,283、及び排気用電磁弁284,284の開閉度合いが調整される。これにより、車体3の傾斜が適当になる。
【0038】
[鉄道車両1の記録装置10B]
鉄道車両1は、車体傾斜装置28(監視装置8B)のログを記録するための記録装置10Bを備える。具体的には、記録装置10Bは、上記車体傾斜装置28と、フラッシュメモリ11Bと、上記制御装置9Bとを含む。フラッシュメモリ11Bとして、第1実施形態のフラッシュメモリ11Aと同様のものを用いることができる。制御装置9Bは、データ書き込み装置9Baを有する。データ書き込み装置9Baは、スロットを有し、このスロットにフラッシュメモリ11Bが装着される。フラッシュメモリ11Bは、スロットから取り外すことが可能である。
【0039】
フラッシュメモリ11Bは、車体傾斜装置28のログを記録する。具体的には、制御装置9Bからの指令により、データ書き込み装置9Baが作動し、車体傾斜装置28のログがフラッシュメモリ11Bに書き込まれる。その際、制御装置9Bは、第1実施形態の制御装置9Aと同様の処理を実行させる。すなわち、制御装置9Bは、鉄道車両1の走行中、フラッシュメモリ11Bへのログの記録をリアルタイムに行わせる。これにより、鉄道車両1の走行中は、車体傾斜装置28のログの記録が常時連続的に行われる。一方、制御装置9Bは、鉄道車両1の停車中、フラッシュメモリ11Bへのログの記録を一時停止させる。これにより、鉄道車両1の停車中は、車体傾斜装置28のログの記録が一時的に行われる。このような処理は、制御装置9B内のプログラムによって実行される。
【0040】
フラッシュメモリ11Bに記録されるログは、例えば、時刻、地点情報、制御装置9Bが角度センサ282,282から取得したインプット情報、及び制御装置9Bが給気用電磁弁283,283、及び排気用電磁弁284,284に送出したアウトプット情報等である。時刻及び地点情報は、制御装置9Bが直接又は間接的に受信したものである。インプット情報は、本実施形態の例では、回転角の値である。アウトプット情報は、本実施形態の例では、算出した必要な弁開度の値、及び指令弁開度の値である。
【0041】
本実施形態の記録装置10Bにおいて、例えば、フラッシュメモリ11Bとして、2Gbyteのメモリ容量を有するCFカードを用い、10ms(ミリ秒)のサンプリング周期にてログを記録することができる。その際、停車中のログの記録は、停車後20秒間行い、その後停止することができる。この場合、のべ108時間分の記録が可能である。1日あたり16時間の走行及び8時間の停車と仮定すると、約6.7日分のログを記録することが可能になる。フラッシュメモリ11Bとして、8Gbyteのメモリ容量を有するCFカードを用いてもよい。
【0042】
本実施形態の記録装置10Bでは、第1実施形態の記録装置10Aと同様に、鉄道車両1の走行中は、車体傾斜装置28(監視装置8B)のログの記録が常時連続的に行われ、鉄道車両1の停車中は、車体傾斜装置28(監視装置8B)のログの記録が停止又は一時停止される。したがって、本実施形態の記録装置10Bによれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0043】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る記録装置は、第1実施形態の記録装置10Aと、第2実施形態の記録装置10Bとをそれぞれ記録装置ユニットとして備える。具体的には、本実施形態の鉄道車両1は、監視装置8A,8Bとして、動揺抑制装置18と、車体傾斜装置28とを備える。この場合、第1実施形態に基づく記録装置10Aのユニットは、動揺抑制装置18と、フラッシュメモリ11Aと、制御装置9Aとを含む。第2実施形態に基づく記録装置10Bのユニットは、車体傾斜装置28と、フラッシュメモリ11Bと、制御装置9Bとを含む。そして、サンプリング時間の間引き方が、記録装置10Aのユニットと記録装置10Bのユニットで相互に異なっている。
【0044】
この場合、鉄道車両1の停車中、ログの一時的な記録は、相互に異なるタイミングで行われる。そのため、停車中にフラッシュメモリ11Aに記録されたログと、停車中にフラッシュメモリ11Bに記録されたログとは、記録のタイミングがずれており、全体として、広範囲をカバーするものとなる。したがって、停車中の鉄道車両1に起こった事象を後で十分に分析できる可能性がより高まる。
【0045】
以上、本開示に係る実施形態を説明した。しかしながら、上述した実施形態は例示に過ぎない。したがって、本開示は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変更して実施することができる。
【0046】
例えば、上述した実施形態では、監視装置8A,8Bは、相互に独立した動揺抑制装置18及び車体傾斜装置28であり、記録装置10A,10Bを構成する制御装置9A,9Bも相互に独立したものである。しかしながら、監視装置8A,8Bとして動揺抑制装置18及び車体傾斜装置28の両方を備える場合、制御装置9A,9Bは共用されても構わない。また、監視装置8A,8Bは、鉄道車両1の状態を監視できればよく、動揺抑制装置18及び車体傾斜装置28以外の他の監視装置であってもよい。
【0047】
例えば、監視装置が脱線検知装置であってもよい。脱線検知装置の場合、記録装置によってフラッシュメモリに記録されるログは、例えば、時刻、地点情報、加速度センサの検出値、及び速度センサの検出値等である。
【符号の説明】
【0048】
1:鉄道車両
2:台車
3:車体
4:輪軸
5:空気ばね
8A,8B:監視装置
18:動揺抑制装置
28:車体傾斜装置
9A,9B:制御装置
10A,10B:記録装置
11A,11B:フラッシュメモリ
図1
図2