(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103034
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】クランチー性を有するスナック様食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A21D 13/60 20170101AFI20240725BHJP
A21D 10/00 20060101ALI20240725BHJP
A21D 2/36 20060101ALI20240725BHJP
A21D 13/045 20170101ALI20240725BHJP
A21D 2/18 20060101ALI20240725BHJP
A21D 2/16 20060101ALI20240725BHJP
A23L 11/65 20210101ALI20240725BHJP
A23L 11/50 20210101ALI20240725BHJP
A23L 11/00 20210101ALI20240725BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240725BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20240725BHJP
【FI】
A21D13/60
A21D10/00
A21D2/36
A21D13/045
A21D2/18
A21D2/16
A23L11/65
A23L11/50
A23L11/00 Z
A23L11/00 F
A23L5/00 E
A23L5/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007163
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友則
(72)【発明者】
【氏名】米元 博子
(72)【発明者】
【氏名】水野 洋
【テーマコード(参考)】
4B020
4B032
4B035
【Fターム(参考)】
4B020LB27
4B020LB30
4B020LC02
4B020LC04
4B020LG05
4B020LG09
4B020LK01
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4B035LP55
4B035LP56
4B035LP59
4B035LT03
(57)【要約】
【課題】
小麦粉等を主体とした生地のフライ食品の多くは、クリスピーな膨化組織とメイラード香を有するものである。本発明では、クランチー性を有する、メイラード香を抑えた風味のスナック様食品の調製を課題とした。
【解決手段】
油脂10~40質量%、澱粉10~40質量%および水30~60質量%を混合した生地を成型後に、60~100℃でフライ処理することで、メイラード香を抑えた風味、適度な膨化組織とこれに起因するクランチー性および濃厚感を有する、従来には存在しないスナック様食品を得ることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂10~40質量%、澱粉10~40質量%および水30~60質量%を混合した生地を、60~100℃でフライ処理する、スナック様食品の製造方法。
【請求項2】
フライ処理を減圧下で行う、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
生地のpHが4~6である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
水の一部または全部に豆乳を使用する、請求項1乃至3の何れか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランチー性を有する、スナック様食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小麦粉を主体とした生地をフライする、いわゆるスナック食品は従来より数多く製造されている。小麦粉の加熱によるメイラード香の付与、内在水の瞬時の蒸発による膨化および油脂成分の生地への移行が相まって、非常に良好な風味食感を有するものである。強い組織と十分な膨化に起因した、クリスピー性を有する物も多い。
大豆は古くから用いられている食材であり、その代表的な加工食品である豆腐は、油揚げとしてフライ品が広く流通している。澱粉を主体としないためにスナック様の物性は有しないが、上記と同様のメイラード香と柔軟性を有した膨化組織が特徴である。また、豆乳を凍結乾燥したチーズ代替物の技術も開示されている(特許文献1)。
一方、減圧フライ技術は、常圧に比較して低い圧力および温度でフライする加工方法であり、主には野菜や果物の様な食品に対して加工を行い、加熱による風味の変化を抑えつつ保存性を向上させるものである。例えば、非特許文献1には、じゃがいもや枝豆を減圧フライした乾燥食品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】https://kitanohako.shop/?category_id=61d776ae72c5de176d65c43d/株式会社江戸屋 公式Site北の箱
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で示されたチーズ様の凍結乾燥品は、凍結乾燥の処理が膨化を伴わない為に、クランチー性の付与には至っていない。また非特許文献1も、原料であるじゃがいもには油が、枝豆には澱粉がそれぞれ不足しており、何れも油脂及び澱粉から成る乳化物を形成してない上に、フライ時の水分も多く、クランチー性の付与には至っていない。
小麦粉等を主体とした生地のフライ食品の多くは、クリスピー(Crispy)な膨化組織を有するものであるが、その特徴的なメイラード香はプレーンな風味の対極であり、他の風味を付与すると違和感が出る場合がある。また、クリスピーな食感に替わる組織も求められている。そこで本発明では、クランチー(Crunch)性を有するメイラード香を抑えた風味の、スナック様食品の調製を課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題に対して鋭意研究を重ねた結果、澱粉、油脂および水を適切な比率で混合した水中油型乳化物の生地を成型し、低温にてフライ操作を行うことで、メイラード香を抑えた風味およびクランチー性を有する、従来には存在しないスナック様食品が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は
(1)油脂10~40質量%、澱粉10~40質量%および水30~60質量%を混合した生地を、60~100℃でフライ処理する、スナック様食品の製造方法。
(2)フライ処理を減圧下で行う、(1)に記載の製造方法。
(3)生地のpHが4~6である、(2)に記載の製造方法。
(4)水の一部または全部に豆乳を使用する、(1)乃至(3)の何れかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、メイラード香を抑えた風味、クランチー性および濃厚感を有する、新規なスナック様食品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(油脂)
本発明の構成のひとつは、生地に添加する油脂である。添加油脂は、ダイズ油,ナタネ油,トウモロコシ油,サフラワー油,コメ油,綿実油,ヒマワリ油,ゴマ油,オリーブ油,落花生油,ヤシ油,パーム核油,パーム油,カカオバター,豚脂,牛脂,魚油,中鎖脂肪酸油といったトリグリセリド類が例示できる。食感上は固型脂すなわち、20℃の室温で固体としての形状を維持できるものが好ましく、ヤシ油,パーム核油,パーム油、カカオバター、およびこれらの分別油、並びに各種の硬化油等が挙げられる。このような油脂を使用することで、メイラード香を抑えた風味およびクランチー性を有する、新規なスナック様食品を得ることができる。
【0010】
(澱粉)
本発明は、澱粉が必須である。澱粉は本スナック様食品のボディ材であり、フライ後の食感にも大きく寄与する。使用する澱粉としては、エンドウ,緑豆,インゲン,小豆等の豆類に由来するもの、馬鈴薯,甘藷,タピオカ等の芋類に由来するもの、コーン,小麦,米等の穀類に由来するものが例示できる。また、これらは種々の化学処理による加工でん粉としても使用することができる。尚、単糖類,二糖類を除く、デキストリンと呼ばれる重合度が3~10程度の糖類も、本発明では澱粉に含むものとする。
本用途には食感上は豆類の澱粉が非常に好ましい。適当なデンプンを適当な量使用することで、メイラード香を抑えた風味およびクランチー性を有する、新規なスナック様食品を得ることができる。
小麦粉は澱粉を多く含む原料ではあるが、澱粉としても、また後述する他原料としても、使用しないか、少量に留めることが好ましい。
【0011】
(配合)
上記の油脂、澱粉に水を加えたものが生地である。本発明は生地中に、油脂として10~40質量%の配合が必要であり、13~37質量%が好ましい。20~30質量%が更に好ましい。油脂が多過ぎるとボディが強く固くなり。油脂が少な過ぎるとボディが柔らかくなる場合がある。
澱粉は10~40質量%の配合が必要であり、15~35質量%が好ましい。20~30質量%が更に好ましい。澱粉が多過ぎるとボディが強く固くなり、澱粉が少な過ぎるとボディが柔らかくなる。また、水は30~60質量%が必要である。水分が少な過ぎると膨化が進行せず、フライ後に固い食感となる。水分が多過ぎるとフライ時に崩れたり、フライ後も脆い食感となる。
【0012】
(pH)
本発明は生地のpH調整を行うことが好ましい。pHが高いとフライ後に脆い食感となる場合がある。pHは6以下が好ましく、pH5.5以下が更に好ましい。またpHが低いと酸味が強くなるため、pH3以上が好ましく、pH4以上が更に好ましい。pHの調整は、酸の添加により行うことができるが、より風味が付与される微生物による醗酵が好ましい。酸添加の場合は、乳酸,クエン酸,リンゴ酸,酢酸等の有機酸や、リン酸,塩酸等の無機酸を前述した生地に添加する。有機酸の使用が好ましく、乳酸の使用が最も好ましい。醗酵の場合は乳酸菌の使用が好ましい。例えば後述する豆乳等を原料に乳酸菌スターターを用いて、15~45℃で、pH4.0~5.5程度まで醗酵を行ったものに、上記の油脂および澱粉を添加して生地とすることができる。
【0013】
(豆乳)
本発明は、水の一部または全部を豆乳で置換することができる。ここで用いる豆乳とは、大豆または脱脂大豆を原料に、必要により前処理を行った後に加水して、水溶性成分を抽出したものである。前処理とは水抽出前に大豆に対して行う操作で、乾熱加熱,湿熱加熱,脱皮,脱胚,圧偏,粉砕,分級,脱脂等が例示できる。
豆乳にこれら前処理の1種またはそれ以上を行い、または行わず、水溶性成分を抽出する。抽出条件は任意に設定することができるが、大豆に含まれる大豆グロブリンの半分以上が抽出されることが好ましい。抽出水の量、温度、pH等は任意に設定可能であり、抽出も1度ではなく、同じ条件や異なる条件で複数回行うこともできる。また、加水後に湿式破砕を行うこともできる。得られた抽出液である豆乳は、オカラ等の不溶成分と分離して回収する。分離後の豆乳は減圧濃縮等の種々の方法にて濃縮することも可能である。
尚、本発明で使用する豆乳は、うま味等に富むとされている低脂肪豆乳であることが好ましい。低脂肪豆乳とは油脂分が2質量%以下の豆乳であり、好ましくは1質量%以下の豆乳である。
【0014】
(他原料)
本発明品は生地中に、本発明の効果へ悪影響を及ぼさない限り、上記以外の原料を加えることもできる。アーモンド,落花生等の子実類、および米,大麦,オーツ麦等の穀類の、破砕物や抽出物、並びに、単糖類,二糖類等の糖類、各種の塩類,調味料,香料等を挙げることができる。ここで添加した原料中の油脂や澱粉は、生地組成に反映する。
特に、前述した発酵操作を行う場合は、グルコース,ショ糖,果糖,麦芽糖,乳糖等の少糖類を、豆乳に添加することもできる。
【0015】
(生地の調製)
油脂、澱粉及び他の原料を混合した水または豆乳に、せん断力を与えて均質化処理を行う。均質化には、ホモミキサー、高圧ホモジナイザーまたは超音波ホモジナイザー等の乳化装置を用いることができる。ホモミキサー等で油脂を分散させた後に、高圧ホモジナイザーで均質化を行うことで、より細かい粒子径のエマルジョンを調製することができる。
安定なエマルジョンを調製するために、乳化剤を添加することができる。乳化剤としては、レシチン,酵素処理レシチン等の天然乳化剤、ショ糖脂肪酸エステル,プロピレングリコール脂肪酸エステル,グリセリン脂肪酸エステル,ポリグリセリン脂肪酸エステル,ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の合成乳化剤が挙げられる。
また、均質化処理後に、加熱殺菌を行うことで、安全性の高い食品とすることができる。加熱は80℃~130℃、30分~5秒程度の条件で行うことができる。尚、殺菌を目的とした加熱は、メイラード反応および水の蒸発が発生しにくい常圧以上の環境で行われる為、水の蒸散が目的である本発明の低温フライ操作とは異なるものである。
以上の処理を施した混合液をピローバック等に充填後に冷却し、生地とする。
【0016】
(低温フライ)
調製した生地について、低温フライを行いスナック様食品とする。この際、フライ後にスナック様食品として喫食に供するため、喫食し易い形状に加工した上でフライ処理することが好ましい。立方体や直方体、球状など種々の形状を取ることができるが、いずれも0.1~10ml程度の単位で分画した上でフライ処理に供することが好ましく、0.5~3mlが更に好ましい。また、その際の大きさは、垂直3辺のどの辺を取っても5mm以上であることが好ましい。小さいと喫食し難く、大きいとフライ処理に長時間が必要となる上に、喫食しにくい、均一な組織になりにくい等の問題も起こる場合がある。
低温フライとは、60~100℃、好ましくは60~90℃、更に好ましくは65~85℃の環境でフライ処理を行うものである。この際、常圧では脱水が進行しにくい為、減圧することが好ましい。減圧時の圧力は設定温度での水の蒸気圧以下であり、例えば70℃であれば312hPa,80℃であれば474hPaが例示できる。尚、減圧機能を有するフライヤーとしては、株式会社アトラステクノサービス社製AVF-1K/340-70等が例示できる。
フライ時間は、圧力や温度にもよるが、10~120分間、好ましくは、15~90分間、更に好ましくは30~80分間が例示できる。
【0017】
フライ油は特に限定しないが、ダイズ油,ナタネ油,トウモロコシ油,サフラワー油,コメ油,綿実油,ヒマワリ油,ゴマ油,オリーブ油,落花生油,ヤシ油,パーム核油,パーム油,カカオバター,豚脂,牛脂,魚油,中鎖脂肪酸油といったトリグリセリド類、およびこれらの分別油、並びに各種の硬化油等が例示できる。中でも酸化安定性に富み、且つ体温で溶融するもの、または液体油が好ましく、パーム分別油,ヒマワリ油,紅花油等が挙げられる。
水の沸点を超える様な、高い温度による加熱を必要としない生地の乾燥方法として、凍結乾燥法や冷風乾燥機による方法等が知られている。しかし、これらの方法では生地の膨化が十分ではなく、本発明の様なクランチー性を付与することが難しい。
【0018】
(スナック様食品)
以上の操作で製造されたスナック様食品は、メイラード香を抑えた風味およびクランチー性を有する、新規な食感のものである。また濃厚感を増すこともできる。
本発明に於ける、スナック様食品のクランチー性とは、咀嚼によりブロック状に破断するが、細かい崩壊に至らず、ポリポリ、ガリガリといった音で表現される様な食感とする。
この比重は、0.65g/cm^3以上のものが好ましく、0.685g/cm^3以上のものが更に好ましい。また、1.0g/cm^3以下のものが好ましく、0.9g/cm^3以下のものが好ましく、0.8g/cm^3以下のものが最も好ましい。数値が0.685~0.8g/cm^3に近付くに連れて、食感が好ましいものとなる。
得られたスナック様食品はこのまま摂食することもできるし、フライ後に適当な調味料および/または香料等で風味を付けることもできる。メイラード香の低減が認識できる着味方法であれば、本発明の効果を得ることができる。
【実施例0019】
以下に実施例を記載することで本発明を説明する。文中の数値は全て質量部を表す。
【0020】
(製造例1)各種の生地調製
分別パーム油(融点30℃)25質量部、水45質量部を混合し50℃に加温した。そこにエンドウ澱粉12質量部、デキストリン(日澱化学製)10質量部、マルトデキストリン(松谷化学製・パインデックス #2)3質量部、ヒドロキシプロピル澱粉(日澱化学製)3質量部、食塩および調味材2質量部を混合し、全量を100質量部とした上で、50℃で加温攪拌した後、乳酸を用いてpHを5.2に調整した。これをホモゲナイザーを用いて10MPaで均質化し、掻きとり式連続熱交換機に通して85℃に加熱殺菌したものをピローバック充填・冷却して、生地Aとした。
【0021】
(実験例1)各温度でのフライ試験
生地Aを、1辺1cmの立方体に切断し、減圧フライ装置(株式会社アトラステクノサービス社製/AVF-1K/340-70)を用いて、0.01MPa以下の減圧下にて、60~90℃でフライ処理を行った(実施例1~4)。また、常圧環境の105~160℃にて、実施例1と同様にフライ処理を行った(比較例1~3)。尚、フライに要した時間は、減圧の実施例1~4では40~80分間。常圧の比較例1~3では、1~5分間であった。
フライ後に比重を測定し、官能評価を行った。比重は質量と各辺のサイズより計算した。
【0022】
(評価)
以上の実施例および比較例の各試料について、食感および風味を確認した。食感は崩れ過ぎず、固すぎず、クランチー性を有しているか、風味は異臭および/またはメイラード香がどの程度あるかを、5人のパネラーの合議により行い、評価した。これらを総合的に判断し、
◎:膨化食品としての軽快な食感と、異臭もメイラード香も少ない風味が、共に非常に良好
○:食感または風味に僅かに問題あるが、良好
△:食感または風味に問題あるが、許容範囲
×:食感および風味に問題あり、不適当
××食感および風味に著しく問題あり、不適当
とした。
【0023】
【0024】
評価結果を表1下段に示した。フライ温度が60~90℃の実施例では、許容範囲(△)以上の評価が得られた。特に70,90℃は良好(○)の評価であり(実施例2,4)、80℃は非常に良好(◎)の評価だった(実施例3)。対して、常圧の100℃を超える温度でフライ処理を行った比較例1~3は、何れも食感および風味に問題があった。
【0025】
(実験例2)各生地配合でのフライ試験
表2の配合に従って、生地Aと同様に調製した生地B~生地Eを用いて、実施例3と同様にフライ処理を行い、結果を表2下段に示した(実施例5~8)。油脂の一部を水で置換した生地B(実施例5)は非常に良好、澱粉の一部を油脂で置換した生地D(実施例7)は良好、油脂の一部を澱粉で置換した生地C(実施例6)および水の一部を油脂で置換したは生地E(実施例8)は、どちらもボディがやや強く許容範囲の評価だった。
【0026】
【0027】
(実験例3)豆乳生地調製
低脂肪豆乳(不二製油製、美味投入・固形分10質量%,蛋白質4.4質量%,脂質0.8質量%)に、ラクトバチルス・ブルガリカス及びストレプトコッカス・サーモフィラスを混合した乳酸菌スターターを0.01質量%添加して37~40℃で約5時間,pH5.2まで醗酵させることで、醗酵豆乳を調製した。実験例1の生地Aの調製に於いて、水を45質量部から12質量部と減じた上で、本醗酵豆乳32質量部を加え、表3の配合にて生地Aと同様に調製した。50℃で加温攪拌した後、乳酸添加は行わず、掻きとり式連続熱交換機に通して85℃に加熱殺菌することで、豆乳生地Aを得た。また、発酵を行わない豆乳を用いて、pHを6.8に調整したものを豆乳生地Bとした。これら生地を用いて、実施例3と同様にフライ処理を行った(実施例9,10)。
結果を表3下段に示した。水の一部を醗酵豆乳に置換したフライ品(実施例9)は水の場合に比較して更に濃厚感を有しており、また食感も軽く、非常に良好なものだった。醗酵を行わず、pHを6.8の中性付近で調製した実施例10は、実施例9に比較するとやや崩れやすい物性であり、許容範囲の評価に留まった。
【0028】
【0029】
(実験例4)豆乳の凍結乾燥
実験例3の豆乳生地Aを用いて、低温フライ処理の代わりに凍結乾燥を行った(比較例4)。低温フライ品(実施例9)に比較すると、濃厚感はやや増した一方、クランチー性に欠けるもので、「×不適当」の評価だった。