(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010304
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】スカイビング加工装置
(51)【国際特許分類】
B23F 5/16 20060101AFI20240117BHJP
B23F 23/12 20060101ALI20240117BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20240117BHJP
B23Q 17/22 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
B23F5/16
B23F23/12
B23Q17/24 Z
B23Q17/22 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111565
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】秋月 啓作
【テーマコード(参考)】
3C025
3C029
【Fターム(参考)】
3C025AA12
3C025HH07
3C029AA24
3C029AA40
3C029EE20
(57)【要約】
【課題】小型のスカイビングカッタの位相検出にも好適に用いることができ、且つ高い精度でスカイビングカッタの位相を検出することが可能なスカイビング加工装置を提供する。
【解決手段】本発明のスカイビング加工装置の構成は、スカイビングカッタを用いてワークに歯車を創成するスカイビング加工装置であって、スカイビングカッタを回動可能に支持する工具主軸と、スカイビングカッタに対してレーザの照射および受光を行うレーザ変位計と、工具主軸および前記レーザ変位計の動作を制御する制御部と、スカイビングカッタの位相を検出するカッタ検出部と、を備え、制御部は、スカイビングカッタを回転させた状態でスカイビングカッタのすくい面にレーザ変位計によってレーザを照射し、カッタ検出部は、工具主軸のモータの回転角とレーザ変位計におけるレーザの受光位置とからスカイビングカッタの位相を検出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スカイビングカッタを用いてワークに歯車を創成するスカイビング加工装置であって、
前記スカイビングカッタを回動可能に支持する工具主軸と、
前記スカイビングカッタに対してレーザの照射および受光を行うレーザ変位計と、
前記工具主軸および前記レーザ変位計の動作を制御する制御部と、
前記スカイビングカッタの位相を検出するカッタ検出部と、
を備え、
前記制御部は、前記スカイビングカッタを回転させた状態で前記スカイビングカッタのすくい面に前記レーザ変位計によって前記レーザを照射し、
前記カッタ検出部は、前記工具主軸のモータの回転角と前記レーザ変位計における前記レーザの受光位置とから前記スカイビングカッタの前記位相を検出することを特徴とするスカイビング加工装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記スカイビングカッタのピッチ円上に前記レーザ変位計によって前記レーザを照射するよう制御し、
前記カッタ検出部は、前記レーザ変位計における前記受光の検出から消失までの距離を前記スカイビングカッタの歯厚として検出することを特徴とする請求項1に記載のスカイビング加工装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記カッタ検出部が検出した前記スカイビングカッタの前記歯厚に基づいて、前記ワークの前記歯車が設定した形状になるように前記スカイビングカッタの切込量を制御することを特徴とする請求項2に記載のスカイビング加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スカイビングカッタを用いてワークに歯車を創成するスカイビング加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車を製造する加工装置の1つとして、スカイビングカッタを用いるスカイビング加工装置が挙げられる。かかるスカイビング加工装置において熱処理後の高硬度歯車を創成加工する際には、ワークの生加工、熱処理後の熱処理歪の仕上げ加工、およびさらえ切りを行うため、ワーク歯溝と工具刃溝(カッタ刃溝)との位置合わせ、すなわち工具(スカイビングカッタ)とワークとの位相合わせを行う必要がある。
【0003】
例えば特許文献1には、「歯切り工具と工作物とを同期回転させながら、前記工作物の回転軸線方向に沿って前記歯切り工具を前記工作物に対して相対移動させることにより、前記工作物に歯車を創成する歯車加工装置」が開示されている。特許文献1の歯車加工装置は、「前記工作物を回転可能に保持する工作物保持装置と、前記歯切り工具を回転可能に保持する工具保持装置と、前記工作物が保持する前記工作物の形状を検出する工作物検出センサと、前記工具保持装置が保持する前記歯切り工具に形成された切れ刃の形状を検出する工具検出センサと、前記工作物保持装置及び前記工具保持装置に関する制御を行う制御装置と」を備えている。
【0004】
特許文献1の制御装置は、「前記工作物保持装置及び前記工具保持装置の位置制御を行う位置制御部と、前記工作物検出センサの検出結果と前記工具検出センサの検出結果とに基づき、前記工作物の位相と前記歯切り工具の位相とのずれ量を演算する位相演算部と」を備えている。かかる位置制御部は、「前記切れ刃の形状を検出する際に、前記切れ刃の形状を検出可能な位置へ前記工具検出センサを配置すると共に、前記工作物に形成された歯車の形状を検出する際に、前記工作物に形成された歯車の形状を検出可能な位置へ前記工作物検出センサを配置」している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、工作物検出センサによって工作物の形状として工作物の位相を検出していて、工具検出センサによって歯切り工具に形成された切れ刃の形状として歯切り工具の位相を検出している。また特許文献1では、工作物検出センサおよび工具検出センサとして非接触式のセンサを用いていて、非接触式のセンサとしては、渦電流センサまたは電磁ピックアップを挙げている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に挙げられている過電流センサや電磁ピックアップは、センサの精度が低く、特に検出対象となるモジュール、すなわち工作物(ワーク)や工具(カッタ)が小さい場合にはそれらの位相を正確に検出することが困難である。
【0008】
また特許文献1では、非接触式のセンサから出力された電圧波形として、歯切り工具の回転角度や工作物の回転角度の変化に伴って周期的に上下するサイン波形が例示されている。これは非接触式のセンサが工具や工作物(ワーク)の歯面を検出していることを示している。特許文献1では過電流センサや電磁ピックアップが例示されているが、レーザ変位計によって歯面までの距離の変化(歯と歯溝の繰り返し)を測定し、同様のサイン波形を得て、位相を検出する技術が知られている。このようなサイン波形による位相検出は一般的な手法であるが、波形の形状によっては、検出された位相に誤差が生じる場合がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、小型のスカイビングカッタの位相検出にも好適に用いることができ、且つ高い精度でスカイビングカッタの位相を検出することが可能なスカイビング加工装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のスカイビング加工装置の代表的な構成は、スカイビングカッタを用いてワークに歯車を創成するスカイビング加工装置であって、スカイビングカッタを回動可能に支持する工具主軸と、スカイビングカッタに対してレーザの照射および受光を行うレーザ変位計と、工具主軸および前記レーザ変位計の動作を制御する制御部と、スカイビングカッタの位相を検出するカッタ検出部と、を備え、制御部は、スカイビングカッタを回転させた状態でスカイビングカッタのすくい面にレーザ変位計によってレーザを照射し、カッタ検出部は、工具主軸のモータの回転角とレーザ変位計におけるレーザの受光位置とからスカイビングカッタの位相を検出する。
【0011】
上記制御部は、スカイビングカッタのピッチ円上にレーザ変位計によってレーザを照射するよう制御し、カッタ検出部は、レーザ変位計における受光の検出から消失までの距離をスカイビングカッタの歯厚として検出するとよい。
【0012】
上記制御部は、カッタ検出部が検出したスカイビングカッタの歯厚に基づいて、ワークの歯車が設定した形状になるようにスカイビングカッタの切込量を制御するとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、小型のスカイビングカッタの位相検出にも好適に用いることができ、且つ高い精度でスカイビングカッタの位相を検出することが可能なスカイビング加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態にかかるスカイビング加工装置の構成を概略的に説明する図である。
【
図2】
図1のスカイビング加工装置によるスカイビングカッタの位相検出について説明する図である。
【
図3】
図2のスカイビングカッタの位相検出および歯厚検出を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態にかかるスカイビング加工装置(以下、加工装置100と称する)の構成を概略的に説明する図である。
図1(a)は、加工装置100の正面図と制御装置140を概略的に示した図である。
図1(b)は、
図1(a)の加工装置100における制御装置140を除いた上面図である。
【0017】
本実施形態にかかる加工装置100は、スカイビングカッタ200を用いてワーク300に歯車を創成する。
図1に示すように本実施形態の加工装置100は、工具主軸110、ワーク主軸120、レーザ変位計130および制御部140を含んで主要部が構成される。
【0018】
工具主軸110は、ベッド102上に配置されていて、工具であるスカイビングカッタ200を回動可能に支持する。工具主軸110は、ワーク主軸120に対して離接する方向であるZ方向に移動可能であり、且つワーク300の回動軸に対して工具の回動軸を傾ける方向であるA方向(
図1(b)参照)に旋回可能である。
【0019】
ワーク主軸120は、ベッド102上に配置されていて、加工対象であるワーク300を交換可能に支持する。ワーク主軸120は、Z方向に略直交するX方向、およびX方向及びZ方向に対して略鉛直方向であるY方向に移動可能である。
【0020】
レーザ変位計130は、スカイビングカッタ200に対するレーザの照射、およびスカイビングカッタ200において反射されたレーザ(反射光)の受光を行う。本実施形態では、レーザ変位計130はワーク主軸120に取り付けられていて、ワーク主軸120と連動してX方向に移動可能である。本実施形態では、
図1(a)および(b)に示すレーザ変位計130の位置を初期位置P1とする。
【0021】
制御部140は、工具主軸110、ワーク主軸120およびレーザ変位計130の動作を制御する。また後述するように本実施形態の制御部140は、スカイビングカッタ200の位相を検出するカッタ検出部142を有する。
【0022】
図2は、
図1のスカイビング加工装置100によるスカイビングカッタ200の位相検出について説明する図である。
図2(a)は、
図1(b)のスカイビングカッタ200とレーザ変位計130との位置関係を説明する図である。
図2(b)は、
図2(a)のスカイビングカッタ200をレーザ変形130とともに示す拡大斜視図である。
【0023】
図2(b)に示すようにスカイビングカッタ200は、外周面に複数の切刃210が形成されている。切刃210の端面は、所定の切削角度(すくい角)を有するすくい面220となっている。
【0024】
本実施形態の加工装置100を用いてスカイビングカッタ200の位相を検出する際には、まず制御部140は、工具主軸110をX方向およびY軸方向に移動させ、ワーク主軸120をZ方向に移動し且つA方向において旋回させる。とくにA方向の旋回は、スカイビングカッタ200のすくい面220がレーザ変位計130の光軸とできるだけ直交する角度とする。これにより、
図2(a)に示すように、スカイビングカッタ200のすくい面220にレーザが照射される位置、すなわち位相検出位置P2にレーザ変位計130が配置される。
【0025】
続いて制御部140は、スカイビングカッタ200を回転させた状態でスカイビングカッタ200のすくい面220にレーザ変位計130によってレーザを照射する。そしてカッタ検出部142は、工具主軸110のモータ(不図示)の回転角とレーザ変位計130におけるレーザ受光位置とからスカイビングカッタ200の位相を検出する。
【0026】
図3は、
図2のスカイビングカッタ200の位相検出および歯厚検出を説明する概略図である。
図3の上段は、スカイビングカッタ200に対するレーザの照射位置の概略図である。
図3の下段は、スカイビングカッタ200のすくい面220において反射されてレーザ変位計130において受光された反射光の波形を例示する図である。
【0027】
本実施形態の加工装置100では、
図3の上段に示すようにスカイビングカッタ200のすくい面220に対してレーザを照射する。すると反射光を受光した際のレーザ変位計130の出力電流は、
図3の下段に示すように矩形波として検出され、矩形波が検出された回転角がr1、矩形波が消失する回転角がr3となり、回転角r1から回転角r3までがレーザ変位計130におけるレーザ受光位置(レーザ受光範囲)となる。そして、「(回転角r1+回転角r3)/2」の計算式から回転角r2が算出され、回転角r2がレーザ受光位置における回転座標がスカイビングカッタ200の位相として検出される。
【0028】
上記説明したように本実施形態の加工装置100によれば、スカイビングカッタ200のすくい面220において反射光を受光した際の矩形波の出力電流を用いてスカイビングカッタ200の位相を検出することより、上述したサイン波形を用いる場合に比して高い精度でスカイビングカッタの位相を検出することができる。
【0029】
また本実施形態ではスカイビングカッタ200の位相検出手段としてレーザを照射するレーザ変位計130を用いている。したがって、過電流センサや電磁ピックアップを用いる場合よりも小型のスカイビングカッタの位相を好適に検出することが可能である。
【0030】
さらに本実施形態の加工装置100では、上述したようにスカイビングカッタ200のすくい面220にレーザを照射する際には、レーザの照射位置がスカイビングカッタ200のピッチ円C(
図3参照)上であるとよい。これにより、カッタ検出部142は、レーザ変位計130における受光の検出(回転角r1)から消失(回転角r3)までの距離をスカイビングカッタ200の歯厚として検出することができる。
【0031】
ここで、スカイビングカッタの歯厚は、研磨により小さくなるものである。また、スカイビングカッタの形状の寸法誤差もある。したがってカタログ値だけでは正確な歯厚を知ることができず、従来は切削後にワークの歯面形状を測定し、所定の形状になるまで繰り返し切削を行っていた(手直し作業)。
【0032】
これに対し本実施形態の加工装置100では、スカイビングカッタ200の正確な歯厚を知ることができる。すると、切込量に応じて、ワーク300に転写される歯面形状も正確に推定することができる。そこで制御部140は、カッタ検出部142が検出したスカイビングカッタ200の歯厚に基づいて、ワーク300の歯車が「設定した形状」になるようにスカイビングカッタ200の切込量を制御する。これにより、1回の加工で所定の歯面形状の歯車を創成することができ、手直し作業を不要とすることが可能である。
【0033】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は斯かる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、スカイビングカッタを用いてワークに歯車を創成するスカイビング加工装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
100…加工装置、102…ベッド、110…工具主軸、120…ワーク主軸、130…レーザ変位計、140…制御部、142…カッタ検出部、200…スカイビングカッタ、210…切刃、220…すくい面、300…ワーク