IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スタンレー電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-路面描画システム 図1
  • 特開-路面描画システム 図2
  • 特開-路面描画システム 図3
  • 特開-路面描画システム 図4
  • 特開-路面描画システム 図5
  • 特開-路面描画システム 図6
  • 特開-路面描画システム 図7
  • 特開-路面描画システム 図8
  • 特開-路面描画システム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103053
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】路面描画システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/34 20060101AFI20240725BHJP
   B60Q 1/26 20060101ALI20240725BHJP
   F21V 23/00 20150101ALI20240725BHJP
   F21S 43/14 20180101ALI20240725BHJP
   F21W 103/20 20180101ALN20240725BHJP
   F21W 103/60 20180101ALN20240725BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240725BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240725BHJP
【FI】
B60Q1/34 D
B60Q1/34 A
B60Q1/26 Z
F21V23/00 110
F21V23/00 113
F21V23/00 140
F21S43/14
F21W103:20
F21W103:60
F21Y115:10
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007183
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】石川 尚平
(72)【発明者】
【氏名】石井 優輝
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 健
(72)【発明者】
【氏名】古郡 裕大
【テーマコード(参考)】
3K014
3K339
【Fターム(参考)】
3K014AA01
3K339AA25
3K339AA26
3K339AA32
3K339AA33
3K339AA43
3K339CA12
3K339DA01
3K339DA05
3K339EA02
3K339EA09
3K339GB01
3K339GB11
3K339JA02
3K339JA04
3K339KA12
3K339MA01
3K339MC02
3K339MC03
3K339MC91
3K339MC92
(57)【要約】      (修正有)
【課題】自車両周辺の交通環境参加者へ不快感を与える可能性を低減できる路面描画技術を提供する。
【解決手段】自車両の進行方向を示唆するマークを路面に描画するシステムであって、マークを描画するための光を照射可能な路面描画ユニットと、路面描画ユニットと接続されたコントローラと、コントローラと接続されており、自車両の少なくとも側方及び後方に存在する他車両を検出するセンサと、を含み、コントローラは、自車両の方向指示器の作動状況に基づいて特定される進行方向に応じて路面描画ユニットにマークを描画させる制御を行う際に、センサの検出結果を用いて特定される他車両の相対位置に応じてマークの描画態様を可変に設定する、路面描画システムである。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の進行方向を示唆するマークを路面に描画するシステムであって、
前記マークを描画するための光を照射可能な路面描画ユニットと、
前記路面描画ユニットと接続されたコントローラと、
前記コントローラと接続されており、前記自車両の少なくとも側方及び後方に存在する他車両を検出するセンサと、
を含み、
前記コントローラは、前記自車両の方向指示器の作動状況に基づいて特定される前記進行方向に応じて前記路面描画ユニットに前記マークを描画させる制御を行う際に、前記センサの検出結果を用いて特定される前記他車両の相対位置に応じて前記マークの描画態様を可変に設定する、
路面描画システム。
【請求項2】
前記マークの描画態様は、少なくとも、相対的に速い周期での点滅である第1態様、相対的に遅い周期での点滅である第2態様及び非描画である第3態様を含む、
請求項1に記載の路面描画システム。
【請求項3】
前記マークの描画態様における前記第2態様は、消灯状態から予め定めた上限明るさへ至るまでの間に当該明るさが連続的ないし段階的に増加する、
請求項2に記載の路面描画システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記他車両の相対位置と前記センサの検出結果を用いて特定される前記自車両に対する前記他車両の相対速度との組み合わせに応じて前記マークの描画態様を可変に設定する、
請求項1に記載の路面描画システム。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記自車両の少なくとも側方を含む領域であって当該自車両の進行方向に沿って前側の第1領域と後側の第2領域のうちの当該第1領域に前記他車両の相対位置が位置する場合において、
前記自車両に対する前記他車両の相対速度が同等ないし速い場合若しくは当該相対速度が遅い場合であって前記他車両の相対位置が前記マークの描画位置と重複する場合には前記描画態様を前記第3態様に設定し、
前記自車両に対する前記他車両の相対速度が遅い場合であって当該他車両の相対位置が前記マークの描画位置と重複しない場合には前記描画態様を前記第2態様に設定する、
請求項4に記載の路面描画システム。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記他車両の相対位置が前記第2領域に位置する場合において、
前記自車両に対する前記他車両の相対速度が遅い場合には前記描画態様を前記第1態様に設定し、
前記自車両に対する前記他車両の相対速度が同等の場合には前記描画態様を前記第2態様に設定し、
前記自車両に対する前記他車両の相対速度が速い場合には前記描画態様を前記第3態様に設定する、
請求項5に記載の路面描画システム。
【請求項7】
前記第1領域は、前記自車両の側方であって当該自車両の後端よりも前側の領域を含んで設定されており、
前記第2領域は、前記自車両の後端よりも後側の領域を含んで設定されている、
請求項6に記載の路面描画システム。
【請求項8】
前記コントローラは、
前記自車両の進行方向に沿って前記第2領域よりも後側の領域を含む第3領域に前記他車両の相対位置が属する場合において、
前記自車両に対する前記他車両の相対速度が遅い場合及び同等の場合には前記描画態様を前記第1態様に設定し、
前記自車両に対する前記他車両の相対速度が速い場合には前記描画態様を前記第2態様に設定する、
請求項7に記載の路面描画システム。
【請求項9】
前記第1領域及び前記第2領域は、前記自車両の側方において前記自車両の進行方向に沿って隣り合って設定されており、
前記第1領域と前記第2領域との境界が前記自車両の側方ないし当該側方よりも斜め後ろ方向に設定されている、
請求項6に記載の路面描画システム。
【請求項10】
前記コントローラは、
前記自車両の後側の領域を含み前記第2領域と隣り合う第3領域に前記他車両の相対位置が属する場合において、
前記自車両に対する前記他車両の相対速度が遅い場合及び同等の場合には前記描画態様を前記第1態様に設定し、
前記自車両に対する前記他車両の相対速度が速い場合には前記描画態様を前記第2態様に設定する、
請求項9に記載の路面描画システム。
【請求項11】
前記コントローラは、前記他車両の相対位置が前記第3領域に属する場合であって、前記他車両の相対速度が所定の基準値よりも速い場合には前記描画態様を前記第3態様に設定する、
請求項8又は10に記載の路面描画システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、路面描画システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2022-84903号公報(特許文献1)には、車両に関する情報を取得する取得部と、取得部が取得した情報に基づいて画像を投射する画像投射部とを備えた画像投射装置が記載されている。この画像投射装置は、例えば車両の前方の路上に車両の進行方向を示す矢印などの画像を投射することで、周囲のドライバーや歩行者に対して自車両の状況を提示するものである。しかし、画像を路上へ投射(描画)するタイミングによっては、周囲のドライバー等の交通環境参加者に対して不快感(例えば、眩しさや驚き等)を与える可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-84903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示に係る具体的態様は、自車両周辺の交通環境参加者へ不快感を与える可能性を低減できる路面描画技術を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る一態様の路面描画システムは、自車両の進行方向を示唆するマークを路面に描画するシステムであって、(a)前記マークを描画するための光を照射可能な路面描画ユニットと、(b)前記路面描画ユニットと接続されたコントローラと、(c)前記コントローラと接続されており、前記自車両の少なくとも側方及び後方に存在する他車両を検出するセンサと、を含み、(d)前記コントローラは、前記自車両の方向指示器の作動状況に基づいて特定される前記進行方向に応じて前記路面描画ユニットに前記マークを描画させる制御を行う際に、前記センサの検出結果を用いて特定される前記他車両の相対位置に応じて前記マークの描画態様を可変に設定する、路面描画システムである。
【0006】
上記構成によれば、自車両周辺の交通環境参加者へ不快感を与える可能性を低減できる路面描画技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態の路面描画システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、コンピュータの構成例を示す図である。
図3図3は、車両位置検出部における他車両の位置の検出方法について説明するための図である。
図4図4は、点灯パターン設定部によって設定される点灯パターンについて説明するための図である。
図5図5(A)及び図5(B)は、マークの照射態様を例示する模式図である。
図6図6は、路面描画システムの動作手順を示すフローチャートである。
図7図7は、交差点におけるマークの描画例を説明するための図である。
図8図8は、第1領域~第3領域の設定方法の変形実施例を説明するための図である。
図9図9は、所定の関係式を用いてマークの描画制御を行う変形実施例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、一実施形態の路面描画システムの構成を示すブロック図である。本実施形態の路面描画システム1は、自車両の進路変更時(車線変更や右左折等)においてその進行方向を周囲の交通環境参加者(二輪車両や四輪車両等)に対して路面へのマーク描画によって示唆するものであり、コントローラ10、路面描画ユニット12、物体検知センサ13を含んで構成されている。
【0009】
コントローラ10は、例えば後述する図2で詳述するようなコンピュータを用いて構成されており、路面描画システム1の全体動作を制御する。コントローラ10は、CPU等のプロセッサにおいて所定の動作プログラムを実行させることで各種機能を実現するものである。コントローラ10は、路面描画ユニット12及び物体検知センサ13と接続されている。また、コントローラ10は、自車両の運転席に備わっている方向指示器14の操作状態を受信可能である。例えば、コントローラ10は、方向指示器14と直接的に接続されていてもよいし、図示しない車載プロセッサ等から方向指示器14の操作状態を受信できるように構成されていてもよい。
【0010】
路面描画ユニット12は、例えば自車両前部の左右の所定位置に搭載されており、コントローラ10から与えられる制御信号に応じて動作して自車両前方の路面上へ光照射によってマークを描画する。路面描画ユニット12としては公知の種々の構成を採用することができる。例えば、光源バルブと反射鏡や遮蔽板を組み合わせた構成のランプユニットを用いてもよい。また、LED(Light Emitting Diode)などの発光素子が一方向または二方向に配列されており、各発光素子の点灯状態を個別に制御可能なランプユニットを用いてもよい。また、光源と液晶素子などを備え、液晶素子の各画素の光透過状態を個別に制御可能なランプユニットを用いてもよい。また、レーザダイオードなどの発光素子と、この発光素子から出射する光を走査するミラーデバイス等の走査素子などを備え、発光素子の点消灯のタイミングと走査素子による走査タイミングを制御可能なランプユニットを用いてもよい。
【0011】
物体検知センサ13は、自車両の周辺に存在する物体(主に二輪車両や四輪車両などの他車両)を検知する。本実施形態において、自車両の周辺とは、少なくとも自車両の前方、側方、後方のそれぞれにおいて自車両から数m~十数m以内の範囲内を含む。物体検知センサ13は、例えば車両の周辺を撮影してその画像に基づいて物体を検知可能なカメラを用いて構成することができる。また、物体検知センサ13は、例えばLiDAR(Light Detection And Ranging)など近赤外線や紫外光などを使って物体を検知可能な光センサを用いて構成することもできる。さらに、物体検知センサ13は、上記したカメラやLiDARなどを併用して構成することもできる。物体検知センサ13の設置場所については、自車両の前方、側方、後方、頂上部などが考えられる。例えば、ウィンドシールドやピラー、バンパー等に内蔵させて設置することが好ましい。また、自車両のルーフ上に設置してもよい。
【0012】
方向指示器14は、自車両の運転席のハンドル周辺に設置されており、右左折時や車線変更時など自車両の進路が変更される際にその進路に応じて運転者によって操作される。この方向指示器14が操作されることで自車両の方向指示灯が点灯(点滅)する。また、本実施形態ではこの方向指示器14の操作状態を考慮して路面描画ユニット12による路面描画の状態が制御される(詳細は後述する)。
【0013】
上記したコントローラ10の備える機能を理解しやすくするために機能ブロックで示すと、コントローラ10は、車両位置検出部20、相対速度検出部21、制御信号生成部22を有しており、制御信号生成部22は、点灯パターン設定部23と出力制御部24を有する。
【0014】
車両位置検出部20は、物体検知センサ13によって検知される他車両が自車両の周辺において相対的にどの領域に位置しているかを検出する。具体的な検出方法については後述する。
【0015】
相対速度検出部21は、物体検知センサ13によって検知される他車両の自車両を基準にした相対速度を求める。この相対速度については、例えば他車両の相対的な位置の単位時間当たりの変化量を元に演算することができる。また、物体検知センサ13自体が他車両の速度を検出可能に構成されている場合にはその検出結果を用いて相対速度を求めてもよい。
【0016】
制御信号生成部22は、車両位置検出部20によって検出される他車両の位置と相対速度検出部21によって求められる他車両の相対速度に基づいて、路面描画ユニット12の動作を制御するための制御信号を生成し出力するものであり、点灯パターン設定部23と出力制御部24を有する。点灯パターン設定部23は、路面描画ユニット12によって路面に描画されるマークの点灯パターン(描画態様)を設定する。出力制御部24は、点灯パターン設定部23によって設定される点灯パターンによる路面上へのマーク描画を実現するための制御信号を生成して路面描画ユニット12へ出力する。
【0017】
図2は、コンピュータの構成例を示す図である。上記したコントローラ10は、例えば図示のようなコンピュータを用いて構成することが可能である。CPU(中央演算ユニット)201は、記憶デバイス204に格納されたプログラム207を読み出してこれを実行することにより情報処理を行う。ROM(読み出し専用メモリ)202は、CPU201の動作に必要な基本制御プログラムなどを格納する。RAM(一時記憶メモリ)203は、CPU201の情報処理に必要なデータを一時記憶する。記憶デバイス204は、データを記憶するための大容量記憶装置であり、ハードディスクドライブやソリッドステートドライブなどで構成される。通信デバイス205は、外部の他装置との間でのデータ通信に係る処理を行う。入出力部206は、外部装置との接続を図るインターフェイスであり、本実施形態では物体検知センサ13や方向指示器14との間の接続に用いられる。
【0018】
図3は、車両位置検出部における他車両の位置の検出方法について説明するための図である。図3では、片側三車線の道路上に存在する自車両100、他車両110、111を俯瞰した様子が模式的な平面図で例示されている。自車両100及び他車両110、111は、それぞれ図中において下側から上側へ走行中であるものとする。また、自車両100は、進路変更時にその進行方向(方向指示器14の操作状態)に応じて、描画ユニット12によって右前方の路面上へ進行方向を示唆するマーク101Rを描画するか、又は左前方の路面上へ進行方向を示唆するマーク101Lを描画する。
【0019】
図示のように、第1領域は、自車両100の位置を基準として、自車両100の左右両方の側方と自車両100の少なくとも右前方と左前方の各領域を含む。また、第2領域は、自車両100の位置を基準として自車両100の後方(真後ろ、右後方、左後方を含む)の一定距離内の領域を含む。自車両100の進行方向に沿って、第1領域が前側、第2領域が後側に配置されている。また、第3領域は、自車両100の位置を基準として、第2領域よりも更に後方(真後ろ、右後方、左後方を含む)の一定距離内の領域を含む。このとき、車両位置検出部20は、物体検知センサ13によって検知される他車両の位置が第1領域、第2領域、第3領域のいずれに存在するかを検出する。例えば図示の例では、他車両110は第2領域に存在し、他車両111は第3領域に存在することが検出される。このように自車両100の周辺領域を複数に分割し、いずれの領域に位置するかを検出することで、後述する描画制御の簡素化を図ることができる。
【0020】
ここで、第1領域は、例えば自車両100の後端から自車両100の前方へ向かって所定長さAsepの領域を含むように設定することができる。また、第2領域は、例えば自車両100の後端から自車両100の後方へ向かって所定長さBsepの領域を含むように設定することができる。第3領域は、例えば第2領域の後端(自車両100から遠い側の端)から更に自車両100の後方へ向かって所定長さの領域を含むように設定することができる。所定長さAsepについては、例えば一般的な四輪車両の全長に対応して設定することが可能であり、3~7mに設定することができる。所定長さBsepについては、例えば一般的な四輪車両の全長の2倍の長さに対応して設定することが可能であり、7~13mに設定することができる。また、三車線の道路における1つの車線の幅は、例えば3.5m程度に想定することができる。
【0021】
図4は、点灯パターン設定部によって設定される点灯パターンについて説明するための図である。本実施形態では、車両検出部20によって検出される他車両の位置(第1領域、第2領域又は第3領域のいずれか)と、相対速度検出部21によって求められる他車両の相対速度の各内容の組み合わせに基づいて、マーク101R又はマーク101Lの点灯パターンが設定される。
【0022】
具体的には、他車両が第1領域に位置する場合において当該他車両の相対速度が遅い場合には、マーク101R等の点灯パターンは「じんわり点滅(第2態様)」に設定される。本実施形態における「じんわり点滅」とは、図5(A)に模式的に示すようにマーク101R等の明るさ(輝度ないし照度)が消灯状態から徐々に上がり、予め定めた上限の明るさになった後に消灯状態に戻る、という一連の流れが繰り返される照射態様である。明るさの増加の仕方については図示のように段階的であってもよいし連続的であってもよい。なお、他車両が第1領域に位置する場合であっても、マークが他車両に重複するような相対位置である場合には「非描画」とし、マークが他車両に重複しないような相対位置である場合に「じんわり点滅」とすることが望ましい。
【0023】
また、他車両が第1領域に位置する場合であっても当該他車両の相対速度が自車両と同等である場合や相対速度が速い場合には、マーク101R等の点灯パターンは「非描画(第3態様)」に設定される。なお、相対速度が同等である場合とは、相対速度が厳密に同一である場合に限られず、例えば自車両と他車両との相対速度の差が±5%程度の範囲内に含まれる場合をいう。
【0024】
他車両が第2領域に位置する場合において当該他車両の相対速度が遅い場合には、マーク101R等の点灯パターンは「通常点滅(第1態様)」に設定される。本実施形態における「通常点滅」とは、図5(B)に模式的に示すようにマーク101R等が消灯状態から直ちに予め定めた上限の明るさ(一例として最高値)になった後に消灯状態に戻るという一連の流れが繰り返される照射態様である。じんわり点滅との対比でいえば、通常点滅は相対的に速い周期での点滅であり、じんわり点滅は相対的に遅い周期での点滅であるともいえる。
【0025】
また、他車両が第2領域に位置する場合であっても当該他車両の相対速度が自車両と同等である場合には、マーク101R等の点灯パターンは「じんわり点滅」に設定される。また、他車両が第2領域に位置する場合であって当該他車両の相対速度が速い場合には、マーク101R等の点灯パターンは「非描画(消灯)」に設定される。
【0026】
他車両が第3領域に位置する場合において当該他車両の相対速度が遅い場合並びに相対速度が同等である場合には、マーク101R等の点灯パターンは「通常点滅」に設定される。他方で、他車両が第3領域に位置する場合であって当該他車両の相対速度が速い場合には、マーク101R等の点灯パターンは「じんわり点滅」に設定される。
【0027】
このように、他車両の相対位置と相対速度に応じてマークの描画態様を可変に設定することで、周辺の他車両へ不快感を与える可能性を低減することができる。なお、点灯パターンの制御については、例えば路面描画ユニット12の光が半導体発光素子を用いて形成されている場合であってパルス幅変調波形による点灯制御が行われている場合であれば、そのデューティ比を用いて制御することができる。具体的には、図5(A)にデューティ比を例示するように、例えば半導体発光素子へ印加する駆動電圧のデューティ比を0%、30%、50%、100%というように段階的に変化させれば、じんわりと明るさが変化するマーク101R等を描画することができる。他方で、図5(B)にデューティ比を例示するように、例えば半導体発光素子へ印加する駆動電圧のデューティ比を0%から100%へ直ちに変化させることを繰り返せば、素早く点滅を繰り返すようにマーク101R等を描画することができる。なお、点灯パターンの制御についてはパルス幅変調波形による制御に限定されるものではなく、例えば駆動電圧の波高値を増減させることによって制御してもよい。
【0028】
図6は、路面描画システムの動作手順を示すフローチャートである。なお、ここに示す各処理については情報処理の結果に矛盾や不整合を生じない限りにおいて、それらの順序を入れ替えることも可能であり、またここでは明示しない他の処理を追加することも可能である。
【0029】
コントローラ10の点灯パターン設定部23は、方向指示器14が作動中である場合には(ステップS11;YES)、その作動状況に基づいて左右いずれの進行方向を指示するものであるかを特定し、それに応じて路面描画ユニット12によるマークの描画方向を設定する(ステップS12)。例えば、右の進行方向を指示する作動状態であれば、描画方向は右方向に設定される。この場合、マーク101Rが描画されることになる。左の進行方向の場合も同様である。
【0030】
コントローラ10の車両位置検出部20は、他車両の相対位置を検出する(ステップS13)。上記のように、ここでは他車両110、111などが第1領域、第2領域、第3領域のいずれの領域に位置するかが検出される。この際、他車両の先端がどの領域に位置しているかを検出することがより好ましい。また、コントローラ10の相対速度検出部21は、他車両の相対速度を求める(ステップS14)。
【0031】
コントローラ10の点灯パターン設定部23は、車両位置検出部20によって検出された他車両の位置(第1領域~第3領域のいずれか)と、相対速度検出部21によって検出された相対速度に基づいて、路面描画ユニット21によるマークの描画態様を設定する(ステップS15)。他車両の位置及び相対速度と設定される描画態様との関係は上記した通りである(図4参照)。ここでは、例えば自車両に最も近い他車両についての位置と相対速度に基づいて描画態様を設定することが好ましいがその限りではない。
【0032】
マークの描画態様が設定されると、コントローラ10の出力制御部24は、その描画態様並びに描画方向に応じた制御信号を生成して路面描画ユニット12へ出力する(ステップS16)。その後、ステップS11へ戻る。
【0033】
他方、方向指示器14が作動中ではない場合には(ステップS11;NO)、コントローラ10の出力制御部24は、消灯に対応する制御信号を生成して路面描画ユニット12へ出力する(ステップS17)。その後、ステップS11へ戻る。
【0034】
以上のような実施形態によれば、自車両周辺の交通環境参加者へ不快感を与える可能性を低減できる路面描画技術を提供することが可能となる。
【0035】
なお、本開示は上記した実施形態の内容に限定されるものではなく、本開示の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した実施形態では自車両の前部に路面描画ユニット12が設置される場合を例示していたが設置位置はこれに限定されず、例えば自車両の後部に設置されてもよい。また、マークの形状は上記した矩形状のものに限定されず、例えば矢印状でもよいし、自車両から離れるにつれて広がる形状であってもよい。また、いわゆるシーケンシャルランプのように一部分ずつ徐々に描画される形態であってもよい。また、マークの描画方向も上記した斜め前方に限定されず、側方(中心線cに対して直交方向)であってもよい。
【0036】
また、上記した実施形態ではカメラ等を備えた物体検知センサを用いていたが、車車間通信(V2V通信)などの車両相互間通信や車両と道路設備等との間の通信(V2I通信)などを物体検知センサとして用いて他車両の相対位置や相対速度を検出してもよい。また、自車両周辺に他車両が検知されている場合には、音声や画像表示などで自車両内の運転者等への報知を行ってもよい。
【0037】
また、上記した実施形態では主に直線道路における描画態様を例示していたが本開示の適用範囲はこれに限定されない。例えば、図7に俯瞰図を例示するように、交差点において自車両100の進路変更時にその進行方向に応じてマーク101L(あるいはマーク101R)を描画する際に、周囲に存在する他車両120(図示の例では二輪車両)の位置や相対速度に応じてマーク101L等の描画態様を切り替えることができる。
【0038】
また、第1領域~第3領域の設定方法については上記した実施形態の内容(図3参照)に限定されず、例えば、図8に例示するような設定方法を採ることもできる。具体的には、図8に例示される各領域は以下のように設定されている。第1領域は、それぞれ自車両100の側方へ斜めに延びる境界R1と境界R2の間並びに境界L1と境界L3の間に設定されている。第2領域は、それぞれ自車両100の側方へ斜めに延びる境界R2と境界R3の間並びに境界L2と境界L3の間に設定されている。第3領域は、それぞれ自車両100の側方へ斜めに延びる境界R3と境界L3の間に設定されている。
【0039】
第1領域と第2領域は、自車両100の右側方及び左側方のそれぞれにおいて自車両100の進行方向に沿って隣り合って設定されている。そして、第1領域と第2領域との境界R2、L2は、それぞれ自車両100の側方よりも斜め後ろ方向に設定されている。なお、各境界R2、L2は、自車両100の側方の方向(中心線cに直交する方向)に設定されてもよい。各境界R2、L2は、自車両100の運転者における後方の死角範囲に対応して設定されることが望ましく、例えば中心線cに対して120°~150°程度の範囲で設定されることが望ましい。
【0040】
各境界R1、L1は、自車両100の斜め前方へ延びるように設定されている。具体的には、各境界R1、L1は、自車両100の運転者における前方側の死角範囲の端、あるいはマーク101R等の描画位置の端に対応して設定することが望ましく、例えば中心線cに対して40°~70°程度の範囲で設定されることが望ましい。
【0041】
各境界R3、L3は、自車両100の斜め後ろ方向であって各境界R2、L2よりも中心線cに近い側に延びるように設定されている。具体的には、各境界R3、L3は、自車両100の運転者がバックミラーを介して視認可能な範囲に設定することが望ましく、例えば中心線cに対して150°~170°程度の範囲で設定されることが望ましい。
【0042】
上記のような設定方法による第1領域~第3領域を用いた場合にも、上記した実施形態と同様にしてマークの描画制御を行うことができる。
【0043】
また、上記した実施形態等においては他車両の相対速度と他車両の位置(予め設定した第1領域~第3領域のいずれに他車両が属するか)の組み合わせに基づいてマークの描画態様を設定していたが、図9に例示するような関係式を用いてマークの描画態様を設定してもよい。具体的には、図示のように他車両の相対位置をX軸、相対速度をY軸にとり、グラフ上でY=a1X+b1の関係式によって区分けされる境界よりも実際の相対速度が大きい場合及び/又は相対位置が小さい場合には非描画(第3態様)、グラフ上でY=a1X+b1の関係式で区分けされる境界とY=a2X+b2の関係式によって区分けされる境界との間に実際の相対速度及び/又は相対位置が含まれる場合にはじんわり点滅(第2態様)、グラフ上でY=a2X+b2の関係式によって区分けされる境界よりも実際の相対速度が小さい場合及び/又は相対位置が大きい場合には点滅(第1態様)、というようにマークの描画態様を制御してもよい。この場合に、各係数a1、a2、b1、b2は、実験やシミュレーションの結果に基づいて適宜設定することができる値であるとする。
【0044】
本開示は、以下に付記する特徴を有する。
(付記1)
自車両の進行方向を示唆するマークを路面に描画するシステムであって、
前記マークを描画するための光を照射可能な路面描画ユニットと、
前記路面描画ユニットと接続されたコントローラと、
前記コントローラと接続されており、前記自車両の少なくとも側方及び後方に存在する他車両を検出するセンサと、
を含み、
前記コントローラは、前記自車両の方向指示器の作動状況に基づいて特定される前記進行方向に応じて前記路面描画ユニットに前記マークを描画させる制御を行う際に、前記センサの検出結果を用いて特定される前記他車両の相対位置に応じて前記マークの描画態様を可変に設定する、
路面描画システム。
(付記2)
前記マークの描画態様は、少なくとも、相対的に速い周期での点滅である第1態様、相対的に遅い周期での点滅である第2態様及び非描画である第3態様を含む、
付記1に記載の路面描画システム。
(付記3)
前記マークの描画態様における前記第2態様は、消灯状態から予め定めた上限明るさへ至るまでの間に当該明るさが連続的ないし段階的に増加する、
付記2に記載の路面描画システム。
(付記4)
前記コントローラは、前記他車両の相対位置と前記センサの検出結果を用いて特定される前記自車両に対する前記他車両の相対速度との組み合わせに応じて前記マークの描画態様を可変に設定する、
付記1~3の何れかに記載の路面描画システム。
(付記5)
前記コントローラは、
前記自車両の少なくとも側方を含む領域であって当該自車両の進行方向に沿って前側の第1領域と後側の第2領域のうちの当該第1領域に前記他車両の相対位置が位置する場合において、
前記自車両に対する前記他車両の相対速度が同等ないし速い場合若しくは当該相対速度が遅い場合であって前記他車両の相対位置が前記マークの描画位置と重複する場合には前記描画態様を前記第3態様に設定し、
前記自車両に対する前記他車両の相対速度が遅い場合であって当該他車両の相対位置が前記マークの描画位置と重複しない場合には前記描画態様を前記第2態様に設定する、
付記4に記載の路面描画システム。
(付記6)
前記コントローラは、
前記他車両の相対位置が前記第2領域に位置する場合において、
前記自車両に対する前記他車両の相対速度が遅い場合には前記描画態様を前記第1態様に設定し、
前記自車両に対する前記他車両の相対速度が同等の場合には前記描画態様を前記第2態様に設定し、
前記自車両に対する前記他車両の相対速度が速い場合には前記描画態様を前記第3態様に設定する、
付記5に記載の路面描画システム。
(付記7)
前記第1領域は、前記自車両の側方であって当該自車両の後端よりも前側の領域を含んで設定されており、
前記第2領域は、前記自車両の後端よりも後側の領域を含んで設定されている、
付記6に記載の路面描画システム。
(付記8)
前記コントローラは、
前記自車両の進行方向に沿って前記第2領域よりも後側の領域を含む第3領域に前記他車両の相対位置が属する場合において、
前記自車両に対する前記他車両の相対速度が遅い場合及び同等の場合には前記描画態様を前記第1態様に設定し、
前記自車両に対する前記他車両の相対速度が速い場合には前記描画態様を前記第2態様に設定する、
付記5~7の何れかに記載の路面描画システム。
(付記9)
前記第1領域及び前記第2領域は、前記自車両の側方において前記自車両の進行方向に沿って隣り合って設定されており、
前記第1領域と前記第2領域との境界が前記自車両の側方ないし当該側方よりも斜め後ろ方向に設定されている、
付記6に記載の路面描画システム。
(付記10)
前記コントローラは、
前記自車両の後側の領域を含み前記第2領域と隣り合う第3領域に前記他車両の相対位置が属する場合において、
前記自車両に対する前記他車両の相対速度が遅い場合及び同等の場合には前記描画態様を前記第1態様に設定し、
前記自車両に対する前記他車両の相対速度が速い場合には前記描画態様を前記第2態様に設定する、
付記9に記載の路面描画システム。
(付記11)
前記コントローラは、前記他車両の相対位置が前記第3領域に属する場合であって、前記他車両の相対速度が所定の基準値よりも速い場合には前記描画態様を前記第3態様に設定する、
付記8又は10に記載の路面描画システム。
【符号の説明】
【0045】
10:コントローラ、12:路面描画ユニット、13:物体検知センサ、14:方向指示器、20:車両位置検出部、21:相対速度検出部、22:制御信号生成部、23:点灯パターン設定部、24:出力制御部、100:自車両、101L、101R:マーク、110、111:他車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9