(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103059
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】ドハティ増幅器
(51)【国際特許分類】
H03F 1/02 20060101AFI20240725BHJP
H03F 3/68 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
H03F1/02 188
H03F3/68 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007192
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 翔平
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA21
5J500AA41
5J500AC16
5J500AC36
5J500AC52
5J500AC75
5J500AC81
5J500AF01
5J500AF10
5J500AH25
5J500AH29
5J500AH33
5J500AH35
5J500AK02
5J500AK12
5J500AK13
5J500AK29
5J500AM08
5J500AT01
5J500CK06
5J500LV08
(57)【要約】
【課題】ピークアンプの誤作動を抑制する。
【解決手段】ドハティ増幅器は、半導体基板上に形成され、1段以上の増幅器を含み、1つの段の第1増幅器に第1バイアス電流が入力される、キャリアアンプと、半導体基板上に形成され、2段以上の増幅器を含み、第2増幅器に第1バイアス電流よりも少ない第2バイアス電流が入力される、ピークアンプと、第2増幅器の給電経路に直列に挿入された第1抵抗と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成され、1段以上の増幅器を含み、1つの段の第1増幅器に第1バイアス電流が入力される、キャリアアンプと、
前記半導体基板上に形成され、2段以上の増幅器を含み、第2増幅器に前記第1バイアス電流よりも少ない第2バイアス電流が入力される、ピークアンプと、
前記第2増幅器の給電経路に直列に挿入された第1抵抗と、
を含む、
ドハティ増幅器。
【請求項2】
請求項1に記載のドハティ増幅器であって、
前記半導体基板上に形成され、一端が前記第2増幅器の給電経路に電気的に接続され、他端が基準電位に電気的に接続された第1コンデンサを更に含む、
ドハティ増幅器。
【請求項3】
請求項2に記載のドハティ増幅器であって、
前記第1コンデンサは、高周波信号の周波数における前記第1コンデンサのインピーダンスが前記第1抵抗の抵抗値より低くなるような値となる容量値を有する、
ドハティ増幅器。
【請求項4】
請求項2に記載のドハティ増幅器であって、
前記第1コンデンサの一端は、前記第1抵抗よりも前記第2増幅器に近い箇所に電気的に接続されている、
ドハティ増幅器。
【請求項5】
請求項2に記載のドハティ増幅器であって、
前記第1抵抗と前記第2増幅器との間に直列に挿入された第1インダクタを更に含む、
ドハティ増幅器。
【請求項6】
請求項1に記載のドハティ増幅器であって、
前記第2バイアス電流は、前記第2増幅器の後段の第3増幅器に入力される第3バイアス電流よりも少ない、
ドハティ増幅器。
【請求項7】
請求項6に記載のドハティ増幅器であって、
前記第3バイアス電流は、前記第1増幅器の後段の第4増幅器に入力される第4バイアス電流と同じである、
ドハティ増幅器。
【請求項8】
請求項1に記載のドハティ増幅器であって、
前記ピークアンプの前記第2増幅器よりも後段のいずれか1つ以上の前記増幅器への給電経路に抵抗が挿入されていない、
ドハティ増幅器。
【請求項9】
請求項1に記載のドハティ増幅器であって、
前記第1抵抗は、前記半導体基板上に形成されている、
ドハティ増幅器。
【請求項10】
請求項1に記載のドハティ増幅器であって、
前記キャリアアンプと前記ピークアンプとの段数は、は同じであり、
前記第2増幅器は、前記1つの段と同じ段である、
ドハティ増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドハティ増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、キャリアアンプ及びピークアンプの各々が3段の増幅器を有するドハティ増幅器が記載されている。このドハティ増幅器では、キャリアアンプ及びピークアンプの各々の初段増幅器のトランジスタのコレクタへの給電が、給電端子からインダクタを介して行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のドハティ増幅器を1個の半導体基板上に形成した場合、半導体基板上の給電端子は、有限のインダクタンスを介して接続されるので、十分な低インピーダンスとはならず、キャリアアンプから漏洩する漏洩信号によって交流振幅を持ってしまう。このことは、一般の増幅器であれば問題とならない。しかし、ドハティ増幅器で、キャリアアンプの初段増幅器のバイアス点と、ピークアンプの初段増幅器のバイアス点と、が異なる場合には、問題となる。
【0005】
具体的には、ドハティ増幅器は、バイアス電流が流れないようにピークアンプをバイアスすることで、ピークアンプを極力動作させず高効率を得る技術である。つまり、キャリアアンプの初段増幅器のバイアス点と、ピークアンプの初段増幅器のバイアス点と、を異ならせることは、ピークアンプの作動を制御するためであると言える。しかし、前述のように、半導体基板上の給電端子が交流振幅を持ってしまうことにより、ピークアンプの初段増幅器に給電するインダクタを介して、ピークアンプの後段増幅器を駆動してしまう。つまり、ピークアンプの初段増幅器のバイアス点を低くすることによってピークアンプの作動を制御しようとしても、給電端子をリーク経路とする漏洩信号がピークアンプの後段増幅器を駆動してしまい、ドハティ増幅器が誤作動をしてしまう現象が発生し得る。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、ピークアンプの誤作動を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面のドハティ増幅器は、半導体基板上に形成され、1段以上の増幅器を含み、1つの段の第1増幅器に第1バイアス電流が入力される、キャリアアンプと、半導体基板上に形成され、2段以上の増幅器を含み、第2増幅器に第1バイアス電流よりも少ない第2バイアス電流が入力される、ピークアンプと、第2増幅器の給電経路に直列に挿入された第1抵抗と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ピークアンプの誤作動を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態の増幅モジュールの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態の半導体装置のピークアンプの一部を示す図である。
【
図3】
図3は、第2の実施の形態の増幅モジュールの構成を示す図である。
【
図4】
図4は、第3の実施の形態の増幅モジュールの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。各実施の形態は例示であり、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。第2の実施の形態以降では第1の実施の形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施の形態毎には逐次言及しない。
【0011】
<第1の実施の形態>
(構成)
図1は、第1の実施の形態の増幅モジュールの構成を示す図である。
【0012】
増幅モジュール1は、基板2と、基板2上に実装された半導体装置3及び合成器4と、を含む。
【0013】
半導体装置3は、ドハティ増幅器である。半導体装置3は、90°ハイブリッド回路11と、キャリアアンプ12と、ピークアンプ13と、インダクタLC1及びLP1と、コンデンサCC1及びCP1と、抵抗RC1及びRP1と、が1個の半導体基板上に形成されている。
【0014】
半導体装置3の端子3aには、高周波入力信号RFinが入力される。
【0015】
90°ハイブリッド回路11は、端子3aとキャリアアンプ12との間、及び、端子3aとピークアンプ13との間に、電気的に接続されている。
【0016】
90°ハイブリッド回路11は、高周波入力信号RFinの入力を受けて、位相が互いに略90°異なる高周波信号RF1及びRF2を、キャリアアンプ12及びピークアンプ13に夫々出力する。なお、「略90°」とは、90°の位相のみではなく、90°±45°の位相をも含むものとする。
【0017】
キャリアアンプ12は、多段接続された増幅器CA1、CA2及びCA3と、コンデンサ21と、バランLC2と、を含む。
【0018】
第1の実施の形態では、キャリアアンプ12は、3段の増幅器を含むこととしたが、本開示はこれに限定されない。キャリアアンプ12は、1段以上の増幅器を含むこととしても良い。
【0019】
増幅器CA1が、本開示の「第1増幅器」の一例に相当する。増幅器CA2が、本開示の「第4増幅器」の一例に相当する。
【0020】
増幅器CA1の入力端子(トランジスタのベース又はゲート)は、90°ハイブリッド回路11に電気的に接続されている。増幅器CA1の出力端子(トランジスタのコレクタ又はドレイン)は、コンデンサ21の一端に電気的に接続されている。
【0021】
増幅器CA1の中のトランジスタのコレクタ又はドレインは、インダクタLC1を介して給電される。
【0022】
インダクタLC1の一端は、増幅器CA1の中のトランジスタのコレクタ又はドレインに電気的に接続されている。インダクタLC1の他端は、ノードN11に電気的に接続されている。コンデンサCC1の一端は、ノードN11に電気的に接続されている。コンデンサCC1の他端は、基準電位に電気的に接続されている。基準電位は、接地電位が例示されるが、本開示はこれに限定されない。抵抗RC1の一端は、ノードN11に電気的に接続されている。抵抗RC1の他端は、半導体装置3の端子3fに電気的に接続されている。
【0023】
抵抗RC1は、半導体装置3の内部の配線の材料よりも抵抗率が大きい材料で形成されることが例示されるが、本開示はこれに限定されない。抵抗RC1は、半導体装置3の内部の配線と同じ材料で、半導体装置3の内部の配線よりも線幅が狭いこととしても良い。または、抵抗RC1は、半導体装置3の内部の配線と同じ材料で、半導体装置3の内部の配線よりも膜厚が薄いこととしても良い。
【0024】
半導体装置3の端子3fには、基板2上の配線5を介して、電源電圧Vccが供給される。配線5は、寄生インダクタンスLDP及びLFPを有する。配線5と端子3fとの間は、インタフェース部材6によって、電気的に接続されている。インタフェース部材6は、ワイヤ、バンプ等が例示されるが、本開示はこれに限定されない。インタフェース部材6は、寄生インダクタンスLC1pを有する。
【0025】
増幅器CA1は、高周波信号RF1を増幅し、増幅後の高周波信号RF11をコンデンサ21の一端に出力する。
【0026】
コンデンサ21の他端は、増幅器CA2の入力端子に電気的に接続されている。コンデンサ21は、高周波信号RF11の直流成分を除去して増幅器CA2の入力端子に出力する。つまり、コンデンサ21は、DCカットコンデンサである。
【0027】
増幅器CA2の出力端子は、バランLC2の1次巻線LC2aの一端に電気的に接続されている。バランLC2の1次巻線LC2aの他端は、半導体装置3の端子3hを介して給電される。
【0028】
半導体装置3の端子3hには、基板2上の配線5を介して、電源電圧Vccが供給される。配線5と端子3hとの間は、インタフェース部材8によって、電気的に接続されている。インタフェース部材8は、ワイヤ、バンプ等が例示されるが、本開示はこれに限定されない。インタフェース部材8は、寄生インダクタンスLC2pを有する。
【0029】
バランLC2の2次巻線LC2bの両端は、差動増幅器である増幅器CA3の2個の入力端子に夫々電気的に接続されている。
【0030】
第1の実施の形態では、増幅器CA3が差動増幅器であることとしたが、本開示はこれに限定されない。増幅器CA3は、シングルエンド増幅器であっても良い。増幅器CA3がシングルエンド増幅器である場合、バランLC2は不要である。
【0031】
バランLC2は、高周波信号RF12を差動信号である高周波信号RF13に変換して、変換後の高周波信号RF13を増幅器CA3の2個の入力端子に出力する。
【0032】
増幅器CA3の2個の出力端子は、半導体装置3の端子3b及び3cに夫々電気的に接続されている。
【0033】
増幅器CA3は、差動信号である高周波信号RF13を増幅し、増幅後の差動信号である高周波信号RF14を端子3b及び3cに出力する。
【0034】
ピークアンプ13は、多段接続された増幅器PA1、PA2及びPA3と、コンデンサ31と、バランLP2と、を含む。
【0035】
第1の実施の形態では、ピークアンプ13は、3段の増幅器を含むこととしたが、本開示はこれに限定されない。ピークアンプ13は、2段以上の増幅器を含むこととしても良い。
【0036】
増幅器PA1が、本開示の「第2増幅器」の一例に相当する。増幅器PA2が、本開示の「第3増幅器」の一例に相当する。
【0037】
無信号入力時に増幅器PA1に入力されるベース(又はゲート)バイアスによって設定されるアイドル電流は、増幅器CA1に設定されるアイドル電流よりも少ないものとする。増幅器PA2に設定されるアイドル電流は、増幅器PA1に設定されるアイドル電流よりも多いものとする。増幅器PA2に設定されるアイドル電流は、増幅器CA2に設定されるアイドル電流と同じであるものとする。増幅器CA1に設定されるアイドル電流は、増幅器CA2に設定されるアイドル電流と同じであるものとする。但し、本開示はこれらに限定されない。なお,ここでのアイドル電流の比較は,単位トランジスタサイズで規格化したものである。なお、本明細書において、アイドル電流量の大小を比較する場合、上述のとおり無信号入力時のアイドル電流量の大小を比較するものとする。また、本明細書において、電流が同じとは、トランジスタ、抵抗、コンデンサ等の個体差を考慮して、±10%のばらつきを含むものとする。
【0038】
増幅器PA1の入力端子は、90°ハイブリッド回路11に電気的に接続されている。増幅器PA1の出力端子は、コンデンサ31の一端に電気的に接続されている。
【0039】
増幅器PA1の中のトランジスタのコレクタ又はドレインは、インダクタLP1を介して給電される。
【0040】
インダクタLP1の一端は、増幅器PA1の中のトランジスタのコレクタ又はドレインに電気的に接続されている。インダクタLP1の他端は、ノードN12に電気的に接続されている。コンデンサCP1の一端は、ノードN12に電気的に接続されている。コンデンサCP1の他端は、基準電位に電気的に接続されている。抵抗RP1の一端は、ノードN12に電気的に接続されている。抵抗RP1の他端は、半導体装置3の端子3gに電気的に接続されている。
【0041】
抵抗RP1が、本開示の「第1抵抗」の一例に相当する。コンデンサCP1が、本開示の「第1コンデンサ」の一例に相当する。インダクタLP1が、本開示の「第1インダクタ」の一例に相当する。外部の電源電圧Vccを増幅器に給電する経路が、本開示の「給電経路」に相当する。
【0042】
抵抗RP1は、半導体装置3の内部の配線の材料よりも抵抗率が大きい材料で形成されることが例示されるが、本開示はこれに限定されない。抵抗RP1は、半導体装置3の内部の配線と同じ材料で、半導体装置3の内部の配線よりも線幅が狭いこととしても良い。または、抵抗RP1は、半導体装置3の内部の配線と同じ材料で、半導体装置3の内部の配線よりも膜厚が薄いこととしても良い。
【0043】
半導体装置3の端子3gには、基板2上の配線5を介して、電源電圧Vccが供給される。配線5と端子3gとの間は、インタフェース部材7によって、電気的に接続されている。インタフェース部材7は、ワイヤ、バンプ等が例示されるが、本開示はこれに限定されない。インタフェース部材7は、寄生インダクタンスLP1pを有する。
【0044】
増幅器PA1は、高周波信号RF2を増幅し、増幅後の高周波信号RF21をコンデンサ31の一端に出力する。
【0045】
コンデンサ31の他端は、増幅器PA2の入力端子に電気的に接続されている。コンデンサ31は、高周波信号RF21の直流成分を除去して増幅器PA2の入力端子に出力する。つまり、コンデンサ31は、DCカットコンデンサである。
【0046】
増幅器PA2の出力端子は、バランLP2の1次巻線LP2aの一端に電気的に接続されている。バランLP2の1次巻線LP2aの他端は、半導体装置3の端子3iを介して給電される。
【0047】
半導体装置3の端子3iには、基板2上の配線5を介して、電源電圧Vccが供給される。配線5と端子3iとの間は、インタフェース部材9によって、電気的に接続されている。インタフェース部材9は、ワイヤ、バンプ等が例示されるが、本開示はこれに限定されない。インタフェース部材9は、寄生インダクタンスLP2pを有する。
【0048】
バランLP2の2次巻線LP2bの両端は、差動増幅器である増幅器PA3の2個の入力端子に夫々電気的に接続されている。
【0049】
第1の実施の形態では、増幅器PA3が差動増幅器であることとしたが、本開示はこれに限定されない。増幅器PA3は、シングルエンド増幅器であっても良い。増幅器PA3がシングルエンド増幅器である場合、バランLP2は不要である。
【0050】
バランLP2は、高周波信号RF22を差動信号である高周波信号RF23に変換して、変換後の高周波信号RF23を増幅器PA3の2個の入力端子に出力する。
【0051】
増幅器PA3の2個の出力端子は、半導体装置3の端子3d及び3eに夫々電気的に接続されている。
【0052】
増幅器PA3は、差動信号である高周波信号RF23を増幅し、増幅後の差動信号である高周波信号RF24を端子3d及び3eに出力する。
【0053】
合成器4は、バラン41及び42と、コンデンサ43からコンデンサ48までと、を含む。
【0054】
合成器4の端子4b及び4cは、半導体装置3の端子3b及び3cに夫々電気的に接続されている。端子4b及び4cには、高周波信号RF14が入力される。
【0055】
バラン41の1次巻線41aの両端は、合成器4の端子4b及び4cに夫々電気的に接続されている。コンデンサ43は、バラン41の1次巻線41aに並列に電気的に接続されている。
【0056】
合成器4の端子4d及び4eは、半導体装置3の端子3d及び3eに夫々電気的に接続されている。端子4d及び4eには、高周波信号RF24が入力される。
【0057】
バラン42の1次巻線42aの両端は、合成器4の端子4d及び4eに夫々電気的に接続されている。コンデンサ44は、バラン42の1次巻線42aに並列に電気的に接続されている。
【0058】
バラン41の1次巻線41aの中間タップ及びバラン42の1次巻線42aの中間タップは、合成器4の端子4aに電気的に接続されている。端子4aは、寄生インダクタンスLDPと寄生インダクタンスLFPとの間のノードN1に電気的に接続されている。バラン41の1次巻線41aの中間タップ及びバラン42の1次巻線42aの中間タップには、電源電圧Vccが供給される。
【0059】
コンデンサ45の一端は、バラン41の1次巻線41aの中間タップと合成器4の端子4aとの間に、電気的に接続されている。コンデンサ45の他端は、基準電位に電気的に接続されている。
【0060】
コンデンサ46の一端は、バラン42の1次巻線42aの中間タップに、電気的に接続されている。コンデンサ46の他端は、基準電位に電気的に接続されている。
【0061】
コンデンサ47は、バラン42の2次巻線42bに並列に電気的に接続されている。バラン42の2次巻線42bの一端は、基準電位に電気的に接続されている。バラン42の2次巻線42bの他端は、バラン41の2次巻線41bの一端に電気的に接続されている。バラン41の2次巻線41bの他端は、コンデンサ48の一端に電気的に接続されている。コンデンサ48の他端は、合成器4の端子4fに電気的に接続されている。
【0062】
合成器4は、高周波信号RF14と高周波信号RF24とを合成し、シングルエンドの高周波出力信号RFoutを出力する。
【0063】
(寄生インダクタンスの影響)
抵抗RP1が設けられていない場合に、寄生インダクタンスLP1p及びLC2pにより、ピークアンプ13が誤作動することについて説明する。回路動作を説明するために、実動作に近い具体的数字を用いるが、本開示はこれに限定されない。
【0064】
増幅器CA1及び増幅器CA2の各々は、バイアス(ベース又はゲートバイアス)電流が流れるようにバイアスされており、利得を有する。増幅器1段当たりの利得は、例えば、10dBが例示される。増幅器CA1の利得と増幅器CA2の利得との和は、計20dBとなる。
【0065】
一方、増幅器PA1は、高周波信号RF2が小信号又は無信号である場合には、バイアス(ベース又はゲートバイアス)電流が増幅器CA1のバイアス電流よりも少なく設定されており、-30dBの利得を有するものとする。
【0066】
先に説明したように、増幅器PA2のバイアス(ベース又はゲートバイアス)電流は、増幅器CA2のバイアス(ベース又はゲートバイアス)と同じであるものとする。従って、増幅器PA2は、増幅器CA2と同様に、10dBの利得を有する。
【0067】
半導体装置3のダイサイズが小さいので、インタフェース部材7とインタフェース部材8とは、十分な距離をおいて配置することができない。従って、寄生インダクタンスLP1pと寄生インダクタンスLC2pとは、磁界的に結合し、相互インダクタンスM1を僅かながら有してしまう。この相互インダクタンスM1によって、-30dBの信号がリークしてしまう場合を考える。
【0068】
磁界結合がない場合には、増幅器PA2から出力される高周波信号RF22の電力は、次の通りである。
-30dB(増幅器PA1の利得)
+10dB(増幅器PA2の利得)
=-20dB
【0069】
この-20dBという電力値は、十分低いとみなすことができる。
【0070】
しかし、磁界結合がある場合には、高周波信号が、増幅器CA1→増幅器CA2→インタフェース部材8→相互インダクタンスM1→インタフェース部材7→インダクタLP1→増幅器PA2の経路で、増幅器PA2の入力端子に流入する。このように、増幅器CA2の出力端子から増幅器PA2の入力端子に流入する高周波信号を、以降「漏洩高周波信号」と称する。
【0071】
この場合、増幅器PA2から出力される高周波信号RF22の電力は、次の通りである。
+10dB(増幅器CA1の利得)
+10dB(増幅器CA2の利得)
-30dB(相互インダクタンスM1での信号伝達)
+10dB(増幅器PA2の利得)
=0dB
【0072】
増幅器PA3は、この0dBの高周波信号RF22によって駆動されてしまい、ピークアンプ13は、誤作動してしまうことになる。
【0073】
(第1の実施の形態の第1の特徴点)
そこで、第1の実施の形態の半導体装置3は、抵抗RP1を含むことを第1の特徴点とする。抵抗RP1が存在することにより、漏洩高周波信号は、増幅器CA1→増幅器CA2→インタフェース部材8→相互インダクタンスM1→インタフェース部材7→抵抗RP1→インダクタLP1→増幅器PA2の経路で、増幅器PA2の入力端子に流入する。
【0074】
抵抗RP1での減衰を-10dBとすると、増幅器PA2から出力される高周波信号RF22の電力は、次の通りである。
+10dB(増幅器CA1の利得)
+10dB(増幅器CA2の利得)
-30dB(相互インダクタンスM1での信号伝達)
-10dB(抵抗RP1での減衰)
+10dB(増幅器PA2の利得)
=-10dB
【0075】
高周波信号RF22のこの電力値-10dBは、とても低い。従って、半導体装置3は、増幅器PA3が漏洩高周波信号によって駆動されることを抑制できる。これにより、半導体装置3は、ピークアンプ13が誤作動することを抑制できる。
【0076】
(第1の実施の形態の第2の特徴点)
第1の実施の形態の半導体装置3は、コンデンサCP1を更に含む点を第2の特徴点とする。
【0077】
[1]
コンデンサCP1は、相互インダクタンスM1を介して流入する高周波信号の更なる減衰を実現できる。
【0078】
コンデンサCP1は、高周波入力信号RFin及び高周波出力信号RFoutの周波数におけるインピーダンスが抵抗RP1の抵抗値より低くなるように容量値を設定することで、大きな減衰効果を奏することができる。
【0079】
コンデンサCP1の一端の接続箇所は、抵抗RP1の一端(ノードN12)側であってもよいし、抵抗RP1の他端(端子3g)側であってもよい。但し、コンデンサCP1の一端の接続箇所は、抵抗RP1の一端(ノードN12)側の方が、上記の減衰効果が大きいのに加え、次に説明するように整合にも寄与するので、好ましい。
【0080】
[2]
コンデンサCP1は、増幅器PA1と増幅器PA2との間のインピーダンス整合も同時に実現することができる。
【0081】
図2は、第1の実施の形態の半導体装置のピークアンプの一部を示す図である。
【0082】
増幅器PA1は、トランジスタPQ1を含む。トランジスタPQ1のエミッタは、基準電位に電気的に接続されている。トランジスタPQ1のベースには、抵抗51を介して、ベースバイアス電流が入力される。トランジスタPQ1のコレクタは、インダクタLP1を介して、給電される。トランジスタPQ1のコレクタと基準電位との間には、寄生容量52が存在する。寄生容量52は、シャント容量とみなすことができる。
【0083】
増幅器PA2は、トランジスタPQ2を含む。トランジスタPQ2のエミッタは、基準電位に電気的に接続されている。トランジスタPQ2のベースには、抵抗61を介して、ベースバイアス電流が入力される。トランジスタPQ2のベースと基準電位との間には、寄生容量62が存在する。寄生容量62は、シャント容量とみなすことができる。
【0084】
コンデンサCP1は、容量値が十分に大きく設定されることにより、ノードN12の交流振幅を抑制できる。これにより、ノードN12は、交流的には接地電位(グランド)と等価に扱えるようになる。従って、インダクタLP1は、シャントインダクタとみなすことができる。
【0085】
その結果、インダクタLP1と寄生容量52との間、インダクタLP1と寄生容量62との間、又は、インダクタLP1と寄生容量52及び寄生容量62の和との間が、共振する。これにより、半導体装置3は、増幅器PA1と増幅器PA2との間のインピーダンス整合も同時に実現することができる。
【0086】
(効果)
半導体装置3は、抵抗RP1を含むことにより、相互インダクタンスM1を介して増幅器PA2に流入する漏洩高周波信号を抑制することができる。
【0087】
これにより、半導体装置3は、増幅器PA3が誤作動してしまうことを抑制でき、ピークアンプ13が誤作動してしまうことを抑制できる。
【0088】
半導体装置3は、コンデンサCP1を更に含むことにより、相互インダクタンスM1を介して流入する漏洩高周波信号を更に抑制することができる。
【0089】
これにより、半導体装置3は、増幅器PA3が誤作動してしまうことを更に抑制でき、ピークアンプ13が誤作動してしまうことを更に抑制できる。
【0090】
また、インダクタLP1と寄生容量52との間、インダクタLP1と寄生容量62との間、又は、インダクタLP1と寄生容量52及び寄生容量62の和との間が、共振する。
【0091】
これにより、半導体装置3は、増幅器PA1と増幅器PA2との間のインピーダンス整合も同時に実現することができる。
【0092】
また、増幅器PA1に入力されるバイアス電流が増幅器PA1の後段の増幅器PA2に入力されるバイアス電流よりも少ない場合に、本開示の課題が生じやすくなる(0dBの信号が入力された場合でも増幅されてしまいがちになる)。従って、このような場合に、半導体装置3は、より有用である。
【0093】
また、半導体装置3は、ピークアンプ13の増幅器PA1よりも後段のいずれか1つ以上の増幅器への給電経路に抵抗が挿入されていないと、効果的である。後段の増幅器の方が求められる利得が大きく必要なバイアス電流も大きくなりやすい。従って、半導体装置3は、後段の増幅器の給電経路には抵抗を入れないことで、消費電流を削減できる。
【0094】
抵抗RP1は、半導体基板上に形成されていると好ましい。半導体装置3は、特にインタフェース部同士の磁界結合が強い場合に、効果を奏しやすくなる。
【0095】
(その他)
抵抗RC1は、無くても良い。但し、キャリアアンプ12とピークアンプ13との対称性を保つため、抵抗RP1に加えて、抵抗RC1も設けることが望ましい。同様に、コンデンサCC1は、無くても良い。但し、キャリアアンプ12とピークアンプ13との対称性を保つため、コンデンサCP1に加えて、コンデンサCC1も設けることが望ましい。コンデンサCC1の一端の接続箇所は、抵抗RC1の一端(ノードN11)側であってもよいし、抵抗RC1の他端(端子3f)側であってもよい。
【0096】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態の構成要素のうち、第1の実施の形態の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0097】
図3は、第2の実施の形態の増幅モジュールの構成を示す図である。
【0098】
増幅モジュール1Aは、増幅モジュール1(
図1参照)と比較して、半導体装置3に代えて、半導体装置3Aを含む。
【0099】
半導体装置3AのバランLC2の1次巻線LC2aの他端は、端子3fに電気的に接続されている。つまり、キャリアアンプ12の初段の増幅器CA1と中間段の増幅器CA2とは、端子3fを介して電源電圧Vccが給電される。
【0100】
半導体装置3AのバランLP2の1次巻線LP2aの他端は、端子3gに電気的に接続されている。つまり、ピークアンプ13の初段の増幅器PA1と中間段の増幅器PA2とは、端子3gを介して電源電圧Vccが給電される。
【0101】
増幅モジュール1Aは、増幅モジュール1と比較して、半導体装置3Aと基板2と間のインタフェース部材の数が減っている。そのため、増幅モジュール1Aは、増幅モジュール1と比較して、インタフェース部材6とインタフェース部材7との間の距離を広くすることができる。従って、増幅モジュール1Aは、インタフェース部材6とインタフェース部材7との間の磁界結合を緩和することができる。
【0102】
しかし、インタフェース部材6とインタフェース部材7との間の磁界結合が全くない理想的な状態である場合であっても、配線5に寄生インダクタンスLDPが存在する。従って、抵抗RP1が設けられていない場合、漏洩高周波信号が、増幅器CA1→増幅器CA2→インタフェース部材6→配線5→インタフェース部材7→インダクタLP1→増幅器PA2の経路で、増幅器PA2の入力端子に流入する。これにより、増幅器PA3は、漏洩高周波信号によって駆動されてしまい、ピークアンプ13は、誤作動してしまうことになる。
【0103】
そこで、半導体装置3Aは、抵抗RP1を含む。抵抗RP1が存在することにより、漏洩高周波信号は、増幅器CA1→増幅器CA2→インタフェース部材6→配線5→インタフェース部材7→抵抗RP1→インダクタLP1→増幅器PA2の経路で、増幅器PA2の入力端子に流入する。この漏洩高周波信号は、抵抗RP1によって減衰される。
【0104】
従って、半導体装置3Aは、増幅器PA3が漏洩高周波信号によって駆動されることを抑制できる。これにより、半導体装置3Aは、ピークアンプ13が誤作動することを抑制できる。
【0105】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態の構成要素のうち、他の実施の形態の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0106】
図4は、第3の実施の形態の増幅モジュールの構成を示す図である。
【0107】
増幅モジュール1Bは、増幅モジュール1(
図1参照)と比較して、半導体装置3に代えて、半導体装置3Bを含む。
【0108】
半導体装置3Bは、半導体装置3と比較して、抵抗RC1及びRP1を含んでいない。その代わり、抵抗RC1は、インタフェース部材6と配線5との間に設けられている。また、抵抗RP1は、インタフェース部材7と配線5との間に設けられている。つまり、抵抗RC1及びRP1は、基板2上に設けられている。
【0109】
もしインタフェース部材7とインタフェース部材8との間の相互インダクタンスM1(
図1参照)が無い又は小さい場合であっても、第2の実施の形態で説明したように、配線5に寄生インダクタンスLDPが存在する。従って、抵抗RP1が設けられていない場合、漏洩高周波信号が、増幅器CA1→増幅器CA2→インタフェース部材8→配線5→インタフェース部材7→インダクタLP1→増幅器PA2の経路で、増幅器PA2の入力端子に流入する。これにより、増幅器PA3は、漏洩高周波信号によって駆動されてしまい、ピークアンプ13は、誤作動してしまうことになる。
【0110】
そこで、増幅モジュール1Bは、抵抗RP1を含む。抵抗RP1が存在することにより、漏洩高周波信号は、増幅器CA1→増幅器CA2→インタフェース部材8→配線5→抵抗RP1→インタフェース部材7→インダクタLP1→増幅器PA2の経路で、増幅器PA2の入力端子に流入する。この漏洩高周波信号は、抵抗RP1によって減衰される。
【0111】
従って、増幅モジュール1Bは、増幅器PA3が漏洩高周波信号によって駆動されることを抑制できる。これにより、増幅モジュール1Bは、ピークアンプ13が誤作動することを抑制できる。
【0112】
<本開示の構成例>
本開示は、下記の構成をとることもできる。
【0113】
(1)
半導体基板上に形成され、1段以上の増幅器を含み、1つの段の第1増幅器に第1バイアス電流が入力される、キャリアアンプと、
前記半導体基板上に形成され、2段以上の増幅器を含み、第2増幅器に前記第1バイアス電流よりも少ない第2バイアス電流が入力される、ピークアンプと、
前記第2増幅器の給電経路に直列に挿入された第1抵抗と、
を含む、
ドハティ増幅器。
【0114】
(2)
上記(1)に記載のドハティ増幅器であって、
前記半導体基板上に形成され、一端が前記第2増幅器の給電経路に電気的に接続され、他端が基準電位に電気的に接続された第1コンデンサを更に含む、
ドハティ増幅器。
【0115】
(3)
上記(2)に記載のドハティ増幅器であって、
前記第1コンデンサは、高周波信号の周波数における前記第1コンデンサのインピーダンスが前記第1抵抗の抵抗値より低くなるような値となる容量値を有する、
ドハティ増幅器。
【0116】
(4)
上記(2)又は(3)に記載のドハティ増幅器であって、
前記第1コンデンサの一端は、前記第1抵抗よりも前記第2増幅器に近い箇所に電気的に接続されている、
ドハティ増幅器。
【0117】
(5)
上記(2)から(4)のいずれか1つに記載のドハティ増幅器であって、
前記第1コンデンサの一端と前記第2増幅器との間に直列に挿入された第1インダクタを更に含む、
ドハティ増幅器。
【0118】
(6)
上記(1)から(5)のいずれか1つに記載のドハティ増幅器であって、
前記第2バイアス電流は、前記第2増幅器の後段の第3増幅器に入力される第3バイアス電流よりも少ない、
ドハティ増幅器。
【0119】
(7)
上記(6)に記載のドハティ増幅器であって、
前記第3バイアス電流は、前記第1増幅器の後段の第4増幅器に入力される第4バイアス電流と同じである、
ドハティ増幅器。
【0120】
(8)
上記(1)から(7)のいずれか1つに記載のドハティ増幅器であって、
前記ピークアンプの前記第2増幅器よりも後段のいずれか1つ以上の前記増幅器への給電経路に抵抗が挿入されていない、
ドハティ増幅器。
【0121】
(9)
上記(1)から(8)のいずれか1つに記載のドハティ増幅器であって、
前記第1抵抗は、前記半導体基板上に形成されている、
ドハティ増幅器。
【0122】
(10)
上記(1)から(9)のいずれか1つに記載のドハティ増幅器であって、
前記キャリアアンプと前記ピークアンプとの段数は、は同じであり、
前記第2増幅器は、前記1つの段と同じ段である、
ドハティ増幅器。
【0123】
なお、上記した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0124】
1、1A、1B 増幅モジュール
2 基板
3、3A、3B 半導体装置
4 合成器
5 配線
6、7、8、9 インタフェース部材
11 90°ハイブリッド回路
12 キャリアアンプ
13 ピークアンプ
CA1、CA2、CA3、PA1、PA2、PA3 増幅器
CC1、CP1 コンデンサ
LC1、LP1 インダクタ
LC1p、LC2p、LP1p、LP2p、LDP、LFP 寄生インダクタンス
LC2、LP2 バラン
LC2a、LP2a 1次巻線
LC2b、LP2b 2次巻線
M1 相互インダクタンス
PQ1、PQ2 トランジスタ
RC1、RP1 抵抗