(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103082
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
H01M 8/2465 20160101AFI20240725BHJP
H01M 8/2404 20160101ALI20240725BHJP
H01M 8/0273 20160101ALI20240725BHJP
【FI】
H01M8/2465
H01M8/2404
H01M8/0273
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007224
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】青野 晴之
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA22
5H126DD05
5H126EE11
(57)【要約】
【課題】複数の単セルを積層状態で安定させることができる燃料電池スタックを提供する。
【解決手段】燃料電池スタックは、中央部に膜電極接合体18を支持した樹脂製の支持枠19を一対のセパレータ20で挟んだ単セル12を複数積層したものである。支持枠19及び一対のセパレータ20には、単セル12の積層方向Zに延びるとともに流体が流れる流路を構成する貫通孔23が形成される。支持枠19は、外縁部及び貫通孔23の周縁部においてセパレータ20よりも突出する外縁側突出部31及び周縁側突出部33をそれぞれ有している。外縁側突出部31及び周縁側突出部33は、セパレータ20の外縁部30及びセパレータ20の貫通孔23の周縁部32と共に積層方向Zにおいて外縁フレーム34及び周縁フレーム35によってそれぞれ挟まれている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に膜電極接合体を支持した樹脂製の支持枠を一対のセパレータで挟んだ単セルを複数積層した燃料電池スタックであって、
前記支持枠及び一対の前記セパレータには、前記単セルの積層方向に延びるとともに流体が流れる流路を構成する貫通孔が形成され、
前記支持枠は、外縁部及び前記貫通孔の周縁部のうちの少なくとも一方において前記セパレータよりも突出する突出部を有しており、
前記突出部は、前記セパレータの外縁部及び前記セパレータの前記貫通孔の周縁部のうちの対応する少なくとも一方と共に前記積層方向において樹脂フレームによって挟まれていることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項2】
前記突出部を挟む前記樹脂フレームの前記積層方向における二つの外側の面のうちの一方には凸部が形成されるとともに他方には凹部が形成され、
積層された隣合う二つの前記単セルのうち、一方に設けられた前記樹脂フレームの前記凸部と、他方に設けられた前記樹脂フレームの前記凹部とは、互いに嵌合していることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料電池スタックとして、例えば特許文献1に示すものが知られている。こうした燃料電池スタックは、薄板状の単セルを複数積層した構成になっている。単セルは、膜電極接合体を支持した樹脂製の支持枠を一対のセパレータによって挟んだ構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような燃料電池スタックにおいて、薄板状の単セルは、剛性が低いので、反り易い。このため、複数の単セルを積層状態で安定させることが困難になるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する燃料電池スタックは、中央部に膜電極接合体を支持した樹脂製の支持枠を一対のセパレータで挟んだ単セルを複数積層した燃料電池スタックであって、前記支持枠及び一対の前記セパレータには、前記単セルの積層方向に延びるとともに流体が流れる流路を構成する貫通孔が形成され、前記支持枠は、外縁部及び前記貫通孔の周縁部のうちの少なくとも一方において前記セパレータよりも突出する突出部を有しており、前記突出部は、対応する前記セパレータの外縁部及び前記セパレータの前記貫通孔の周縁部のうちの少なくとも一方と共に前記積層方向において樹脂フレームによって挟まれていることを要旨とする。
【0006】
上記構成によれば、樹脂フレームによって単セルの剛性が向上するので、単セルが反り難くなる。したがって、複数の単セルを積層状態で安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】一実施形態における単セルの分解斜視図である。
【
図5】一実施形態において、燃料電池スタックの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、燃料電池の一実施形態を図面に従って説明する。
<燃料電池11>
図1に示すように、燃料電池11は、発電を行う矩形板状の単セル12をそれらの厚さ方向で複数積層した燃料電池スタック13と、燃料電池スタック13を単セル12の積層方向Zの両側から挟む一対のエンドプレート14とを備えている。一対のエンドプレート14は、外縁部同士を複数のボルト15及び複数のナット16によって互いに締結することにより、燃料電池スタック13を積層方向Zにおいて圧縮するように押圧している。一対のエンドプレート14と燃料電池スタック13とのそれぞれの間には、集電を行うターミナルプレート(図示略)及び絶縁を行う絶縁プレート(図示略)が介在している。
【0009】
<単セル12>
図2及び
図3に示すように、単セル12は、単セル12は、矩形枠状に形成されて中央部の矩形状の開口部17に矩形シート状をなす膜電極接合体18(MEA:Membrane Electrode Assembly)を支持した樹脂製の支持枠19と、膜電極接合体18を支持した状態の支持枠19を挟む一対の金属製のセパレータ20とを有している。一対のセパレータ20のうち、一方は第1セパレータ21とされるとともに、他方は第2セパレータ22とされている。
【0010】
単セル12は、膜電極接合体18における積層方向Zの一方側(アノード側)の部分に燃料ガスが供給され且つ他方側(カソード側)の部分に酸化剤ガスが供給されると、燃料ガス及び酸化剤ガスの膜電極接合体18での電気化学反応に基づき発電を行う。単セル12の長辺方向の両端部、すなわち支持枠19、第1セパレータ21、及び第2セパレータ22の長辺方向の両端部には、複数(本例では6つ)の貫通孔23がそれぞれ形成されている。各貫通孔23は、一例として、四角形状をなしている。
【0011】
これら6つの貫通孔23は、それぞれ、燃料ガス供給孔24、燃料ガス排出孔25、酸化剤ガス供給孔26、酸化剤ガス排出孔27、冷却媒体供給孔28、及び冷却媒体排出孔29とされている。燃料ガス供給孔24は、積層方向Zに延びて流体の一例としての燃料ガスが供給される流路を構成する。燃料ガス排出孔25は、積層方向Zに延びて燃料ガスが排出される流路を構成する。
【0012】
酸化剤ガス供給孔26は、積層方向Zに延びて流体の一例としての酸化剤ガスが供給される流路を構成する。酸化剤ガス排出孔27は、積層方向Zに延びて酸化剤ガスが排出される流路を構成する。冷却媒体供給孔28は、積層方向Zに延びて流体の一例としての冷却水が供給される流路を構成する。冷却媒体排出孔29は、積層方向Zに延びて冷却水が排出される流路を構成する。
【0013】
<支持枠19>
図3及び
図4に示すように、支持枠19は、セパレータ20よりも一回り大きい矩形板状をなしている。したがって、支持枠19の外縁部は、セパレータ20の外縁部30よりも外側に突出している。支持枠19の外縁部におけるセパレータ20の外縁部30よりも外側に突出した矩形枠状の部分は、突出部の一例としての外縁側突出部31とされている。
【0014】
支持枠19に形成された各貫通孔23は、セパレータ20に形成された各貫通孔23よりも一回り小さい四角形状をなしている。したがって、支持枠19における各貫通孔23の周縁部は、セパレータ20の各貫通孔23の周縁部32よりも内側に突出している。支持枠19の各貫通孔23の周縁部におけるセパレータ20の各貫通孔23の周縁部32よりも内側に突出した四角枠状の部分は、突出部の一例としての周縁側突出部33とされている。したがって、本例の支持枠19は、6つの周縁側突出部33を有している。
【0015】
支持枠19の外縁側突出部31は、一対のセパレータ20の外縁部30と共に積層方向Zにおいて樹脂フレームの一例としての一対の矩形環状の外縁フレーム34によって挟まれている。一対の外縁フレーム34は、支持枠19の外縁側突出部31及び一対のセパレータ20の外縁部30に対して、例えば接着剤や熱溶着などによって接合される。
【0016】
支持枠19の各周縁側突出部33は、一対のセパレータ20の貫通孔23の周縁部32と共に積層方向Zにおいて樹脂フレームの一例としての一対の四角環状の周縁フレーム35によって挟まれている。すなわち、支持枠19の6つの周縁側突出部33は、一対のセパレータ20の6つずつの貫通孔23の周縁部32と共に積層方向Zにおいて六対の周縁フレーム35によってそれぞれ挟まれている。各対の周縁フレーム35は、支持枠19の周縁側突出部33及び一対のセパレータ20の貫通孔23の周縁部32に対して、例えば接着剤や熱溶着などによって接合される。
【0017】
<外縁フレーム34>
図3及び
図4に示すように、一対の外縁フレーム34のうち、一方は第1外縁フレーム36とされるとともに、他方は第2外縁フレーム37とされている。一対の外縁フレーム34の積層方向Zにおける二つの外側の面のうちの一方には凸部の一例としての複数(本例では10個)の外縁凸部38が形成されるとともに他方には凹部の一例としての複数(本例では10個)の外縁凹部39が形成されている。
【0018】
すなわち、積層方向Zにおける第1外縁フレーム36の外側の面には複数の外縁凸部38が周方向の全体にわたって並んで形成されるとともに、積層方向Zにおける第2外縁フレーム37の外側の面には複数の外縁凹部39が周方向の全体にわたって並んで形成されている。
【0019】
そして、
図5に示すように、積層された隣合う二つの単セル12のうち、一方に設けられた第1外縁フレーム36の複数の外縁凸部38と、他方に設けられた第2外縁フレーム37の複数の外縁凹部39とは、それぞれ互いに嵌合するように構成されている。
【0020】
図4に示すように、第1外縁フレーム36の積層方向Zの内側の面には、第1セパレータ21の外縁部30に接触する内周側接触面40と、支持枠19の外縁側突出部31に接触する外周側接触面41とが形成されている。内周側接触面40と外周側接触面41との間には、段差42が形成されている。
【0021】
第2外縁フレーム37の積層方向Zの内側の面には、第2セパレータ22の外縁部30に接触する内周側接触面40と、支持枠19の外縁側突出部31に接触する外周側接触面41とが形成されている。内周側接触面40と外周側接触面41との間には、段差42が形成されている。
【0022】
<周縁フレーム35>
図3及び
図4に示すように、各対の周縁フレーム35のうち、一方は第1周縁フレーム43とされるとともに、他方は第2周縁フレーム44とされている。すなわち、一対の周縁フレーム35は、一つの第1周縁フレーム43と、一つの第2周縁フレーム44とによって構成されている。
【0023】
各対の周縁フレーム35の積層方向Zにおける二つの外側の面のうちの一方には凸部の一例としての複数(本例では2個)の周縁凸部45が形成されるとともに他方には凹部の一例としての複数(本例では2個)の周縁凹部46が形成されている。
【0024】
すなわち、積層方向Zにおける各第1周縁フレーム43の外側の面には複数の周縁凸部45が形成されるとともに、積層方向Zにおける各第2外縁フレーム37の外側の面には複数の周縁凹部46が形成されている。そして、積層された隣合う二つの単セル12のうち、一方に設けられた各第1周縁フレーム43の複数の周縁凸部45と、他方に設けられた各第2周縁フレーム44の複数の周縁凹部46とは、それぞれ互いに嵌合するように構成されている。
【0025】
第1周縁フレーム43の積層方向Zの内側の面には、第1セパレータ21の貫通孔23の周縁部32に接触する外周側接触面47と、支持枠19の周縁側突出部33に接触する内周側接触面48とが形成されている。外周側接触面47と内周側接触面48との間には、段差49が形成されている。
【0026】
第2周縁フレーム44の積層方向Zの内側の面には、第2セパレータ22の貫通孔23の周縁部32に接触する外周側接触面47と、支持枠19の周縁側突出部33に接触する内周側接触面48とが形成されている。外周側接触面47と内周側接触面48との間には、段差49が形成されている。
【0027】
<実施形態の作用>
各単セル12においては、外縁部が一対の外縁フレーム34によって挟まれるとともに、六つの貫通孔23の周縁部が六対の周縁フレーム35によってそれぞれ挟まれている。これにより、各単セル12が効果的に補強される。このため、各単セル12の剛性が向上するので、各単セル12が反り難くなる。
【0028】
そして、複数の単セル12を積層した場合には、隣合う二つの単セル12のうち、一方に設けられた第1外縁フレーム36の複数の外縁凸部38と、他方に設けられた第2外縁フレーム37の複数の外縁凹部39とがそれぞれ互いに嵌合する。これに加えて、積層された隣合う二つの単セル12のうち、一方に設けられた各第1周縁フレーム43の複数の周縁凸部45と、他方に設けられた各第2周縁フレーム44の複数の周縁凹部46とがそれぞれ互いに嵌合する。
【0029】
したがって、複数の単セル12を積層方向Zに沿って精度よく容易に積層することができるようになるので、複数の単セル12が積層状態で安定する。この結果、燃料電池スタック13の品質が向上される。
【0030】
<実施形態の効果>
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)燃料電池スタック13において、各単セル12は、外縁部が一対の外縁フレーム34によって挟まれるとともに、六つの貫通孔23の周縁部が六対の周縁フレーム35によってそれぞれ挟まれている。
【0031】
上記構成によれば、一対の外縁フレーム34と六対の周縁フレーム35とによって各単セル12を効果的に補強することができる。このため、各単セル12の剛性が向上するので、各単セル12が反り難くなる。したがって、複数の単セル12を積層状態で安定させることができる。
【0032】
(2)燃料電池スタック13において、積層された隣合う二つの単セル12のうち、一方に設けられた第1外縁フレーム36の複数の外縁凸部38と、他方に設けられた第2外縁フレーム37の複数の外縁凹部39とがそれぞれ互いに嵌合している。これに加えて、積層された隣合う二つの単セル12のうち、一方に設けられた各第1周縁フレーム43の複数の周縁凸部45と、他方に設けられた各第2周縁フレーム44の複数の周縁凹部46とがそれぞれ互いに嵌合している。
【0033】
上記構成によれば、積層された隣合う二つの単セル12同士が積層方向Zと直交する方向において互いの位置がずれることを抑制できる。このため、複数の単セル12を積層方向Zに沿って精度よく容易に積層することができるようになるので、複数の単セル12を積層状態でより一層安定させることができる。この結果、燃料電池スタック13の品質を向上させることができる。
【0034】
(変更例)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0035】
・第1外縁フレーム36の外縁凸部38及び第2外縁フレーム37の外縁凹部39は、省略してもよい。
・第1外縁フレーム36の外縁凸部38の数と、第2外縁フレーム37の外縁凹部39の数とは、必ずしも一致する必要はない。すなわち、外縁凸部38の数と、外縁凹部39の数とは、異なっていてもよい。つまり、積層された隣合う二つの単セル12同士の間で、嵌合されない外縁凸部38または外縁凹部39が存在してもよい。
【0036】
・各第1周縁フレーム43の周縁凸部45及び各第2周縁フレーム44の周縁凹部46は、省略してもよい。
・各第1周縁フレーム43の周縁凸部45の数と、各第2周縁フレーム44の周縁凹部46の数とは、必ずしも一致する必要はない。すなわち、周縁凸部45の数と、周縁凹部46の数とは、異なっていてもよい。つまり、積層された隣合う二つの単セル12同士の間で、嵌合されない周縁凸部45または周縁凹部46が存在してもよい。
【0037】
・六対の周縁フレーム35は、省略してもよい。この場合、六対の周縁フレーム35と対応する周縁側突出部33は、省略することが好ましい。
・一対の外縁フレーム34は、省略してもよい。この場合、一対の外縁フレーム34と対応する外縁側突出部31は、省略することが好ましい。
【符号の説明】
【0038】
11…燃料電池
12…単セル
13…燃料電池スタック
14…エンドプレート
15…ボルト
16…ナット
17…開口部
18…膜電極接合体
19…支持枠
20…セパレータ
21…第1セパレータ
22…第2セパレータ
23…貫通孔
24…燃料ガス供給孔
25…燃料ガス排出孔
26…酸化剤ガス供給孔
27…酸化剤ガス排出孔
28…冷却媒体供給孔
29…冷却媒体排出孔
30…外縁部
31…突出部の一例としての外縁側突出部
32…周縁部
33…突出部の一例としての周縁側突出部
34…樹脂フレームの一例としての外縁フレーム
35…樹脂フレームの一例としての周縁フレーム
36…第1外縁フレーム
37…第2外縁フレーム
38…凸部の一例としての外縁凸部
39…凹部の一例としての外縁凹部
40,48…内周側接触面
41,47…外周側接触面
42,49…段差
43…第1周縁フレーム
44…第2周縁フレーム
45…凸部の一例としての周縁凸部
46…凹部の一例としての周縁凹部
Z…積層方向