(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103084
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】燃料電池用セパレータ
(51)【国際特許分類】
H01M 8/026 20160101AFI20240725BHJP
H01M 8/0267 20160101ALI20240725BHJP
H01M 8/0265 20160101ALI20240725BHJP
【FI】
H01M8/026
H01M8/0267
H01M8/0265
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007226
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松原 直大
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA11
5H126BB06
5H126DD04
5H126DD05
5H126EE03
5H126EE11
5H126EE22
5H126EE27
5H126EE29
5H126EE33
5H126JJ03
5H126JJ05
(57)【要約】
【課題】燃料電池の冷却効率を高めることができる燃料電池用セパレータを提供する。
【解決手段】カソードセパレータ60には、冷媒が流れる冷却流路65が設けられている。冷却流路65は、互いに間隔をおいて並列して延びる複数の突条66と、互いに隣り合う突条66同士の間において突条66に沿って延びる溝67とを有している。冷却流路65のうち、冷却流路65の延在方向において互いに隣り合う第1領域65A及び第2領域65Bの各々には、溝67の底面から突出するとともに互いに隣り合う突条66同士を連結する複数の突出部68が設けられている。突出部68における溝67の底面からの突出高さは、突条66における溝67の底面からの突出高さよりも小さい。第1領域65Aに設けられた複数の突出部68の数は、第2領域65Bに設けられた複数の突出部68の数よりも多い。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の発電部に対向するとともに反応ガスが流れるガス流路が第1面に設けられ、冷媒が流れる冷却流路が前記第1面と反対側の第2面に設けられた燃料電池用セパレータであって、
前記冷却流路は、互いに間隔をおいて並列して延びる複数の突条と、互いに隣り合う前記突条同士の間において前記突条に沿って延びる溝と、を有しており、
前記冷却流路のうち、前記冷却流路の延在方向において互いに隣り合う第1領域及び第2領域の各々には、前記溝の底面から突出するとともに互いに隣り合う前記突条同士を連結する複数の突出部が設けられており、
前記突出部における前記底面からの突出高さは、前記突条における前記底面からの突出高さよりも小さく、
前記第1領域における単位面積あたりの前記突出部の数は、前記第2領域における単位面積あたりの前記突出部の数よりも多い、
燃料電池用セパレータ。
【請求項2】
前記ガス流路の延在方向における両端には、前記反応ガスが供給されるガス供給口と、前記反応ガスが排出されるガス排出口とがそれぞれ設けられており、
前記冷却流路の延在方向における両端には、前記冷媒が供給される冷媒供給口と、前記冷媒が排出される冷媒排出口とがそれぞれ設けられており、
前記複数の突条の並列方向において、前記ガス供給口と前記冷媒供給口とが隣り合って設けられるとともに、前記ガス排出口と前記冷媒排出口とが隣り合って設けられており、
前記第1領域は、前記冷却流路のうち前記冷媒供給口に隣り合う領域であり、
前記第2領域は、前記第1領域に対して前記冷媒供給口とは反対側において前記第1領域に隣り合う領域である、
請求項1に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項3】
前記冷却流路のうち前記第2領域に対して前記第1領域とは反対側において前記第2領域に隣り合う領域であって、前記冷媒排出口に隣り合う第3領域には、前記複数の突出部が設けられており、
前記第3領域における単位面積あたりの前記突出部の数は、前記第2領域における単位面積あたりの前記突出部の数よりも多い、
請求項2に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項4】
前記ガス流路の延在方向における両端には、前記反応ガスが供給されるガス供給口と、前記反応ガスが排出されるガス排出口とがそれぞれ設けられており、
前記冷却流路の延在方向における両端には、前記冷媒が供給される冷媒供給口と、前記冷媒が排出される冷媒排出口とがそれぞれ設けられており、
前記複数の突条の並列方向において、前記ガス供給口と前記冷媒供給口とが隣り合って設けられるとともに、前記ガス排出口と前記冷媒排出口とが隣り合って設けられており、
前記第1領域は、前記冷却流路のうち前記冷媒排出口に隣り合う領域であり、
前記第2領域は、前記第1領域に対して前記冷媒排出口とは反対側において前記第1領域に隣り合う領域である、
請求項1に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項5】
前記冷却流路の延在方向における一端には、前記冷媒が供給される冷媒供給口が設けられており、
前記突出部における前記冷媒供給口側の部分には、当該突出部によって連結された2つの前記突条の一方から他方に向かうほど前記冷媒供給口から離れるように傾斜した傾斜面が設けられている、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項6】
前記冷却流路の延在方向における一端には、前記冷媒が供給される冷媒供給口が設けられており、
前記突出部における前記冷媒供給口側の部分には、前記冷媒供給口から離れるほど前記底面から離れるように傾斜した傾斜面が設けられている、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項7】
前記突出部における前記底面からの突出高さは、当該突出部によって連結された2つの前記突条の一方から他方に向かうほど徐々に大きくなっている、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体高分子形燃料電池は、複数の発電セルが積層されたセルスタックを備えている。発電セルは、膜電極接合体を有する発電部と、発電部を挟持する一対のセパレータとを備えている。
【0003】
セパレータは、並列する複数の突条と、隣り合う2つの突条の間に形成された溝とにより構成されたガス流路を有している。ガス流路は、発電部に対向している。ガス流路に反応ガスが流れることにより、発電部において反応ガスの電気化学反応による発電が行われる。この発電に伴って、発電部の温度が上昇する。
【0004】
セパレータのガス流路とは反対側の面には、冷媒が流れる冷却流路が設けられている。冷却流路に空気などの冷媒が流れることにより、発電部が冷却される。
特許文献1に記載のセパレータは、複数の突起が設けられた冷却流路を有している。複数の突起は、冷却流路の延在方向に互いに間隔をおいて設けられている。冷却流路を流れる冷媒が複数の突起に接触することにより、冷媒と冷却流路との接触面積が増加する。これにより、燃料電池の冷却効率が高められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、燃料電池の発電時における発電部には、発電部内におけるその他の部分よりも発電量が多くなる部分が存在することがある。この場合、発電量が多くなる部分ほど温度が上昇しやすいため、発電部における温度勾配が大きくなるおそれがある。
【0007】
特許文献1に記載のセパレータでは、冷却流路に突起を設定する上で、発電部の温度勾配については考慮されていない。このため、燃料電池の冷却効率を高める上では、改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための燃料電池用セパレータは、燃料電池の発電部に対向するとともに反応ガスが流れるガス流路が第1面に設けられ、冷媒が流れる冷却流路が前記第1面と反対側の第2面に設けられた燃料電池用セパレータであって、前記冷却流路は、互いに間隔をおいて並列して延びる複数の突条と、互いに隣り合う前記突条同士の間において前記突条に沿って延びる溝と、を有しており、前記冷却流路のうち、前記冷却流路の延在方向において互いに隣り合う第1領域及び第2領域の各々には、前記溝の底面から突出するとともに互いに隣り合う前記突条同士を連結する複数の突出部が設けられており、前記突出部における前記底面からの突出高さは、前記突条における前記底面からの突出高さよりも小さく、前記第1領域における単位面積あたりの前記突出部の数は、前記第2領域における単位面積あたりの前記突出部の数よりも多い。
【0009】
同構成によれば、冷却流路を流れる冷媒が複数の突出部に接触するため、冷媒と冷却流路との接触面積が増加する。これにより、燃料電池の冷却効率を高めることができる。
ここで、第1領域における単位面積あたりの突出部の数は、第2領域における単位面積あたりの突出部の数よりも多い。このため、冷却流路に第1領域及び第2領域を設定して燃料電池を冷却する上で、特に第1領域における冷却効果を高めることができる。
【0010】
以上のことから、冷却流路のうち発電部の発電に伴って高温となる部分に第1領域を設定することにより、発電部の温度勾配を小さくできる。したがって、燃料電池の冷却効率を好適に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態の燃料電池用セパレータが設けられる発電セルの概略構成を示す分解斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のカソードセパレータを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1のカソードセパレータを示す平面図である。
【
図4】
図4は、第1変更例のカソードセパレータを示す平面図である。
【
図5】
図5は、第2変更例のカソードセパレータを示す平面図である。
【
図6】
図6は、第3変更例のカソードセパレータを示す斜視図である。
【
図7】
図7は、第4変更例のカソードセパレータを示す斜視図である。
【
図8】
図8は、第5変更例のカソードセパレータを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1~
図3を参照して、燃料電池用セパレータの一実施形態について説明する。
(発電セル10)
図1に示すように、燃料電池を構成するセルスタックは、反応ガスが供給されることによって発電する発電セル10を備えている。燃料電池のセルスタックは、複数の発電セル10が積層されることにより構成されている。
【0013】
反応ガスとしては、例えば、水素を含有する燃料ガス、空気を含有する酸化ガスが挙げられる。
発電セル10は、図示しない膜電極ガス拡散層接合体を有する発電部20と、樹脂フレーム30と、2つのセパレータ40とを備えている。発電部20は、シート状をなしている。樹脂フレーム30は、発電部20の外周部を取り囲む枠状をなしている。
【0014】
樹脂フレーム30の外周部のうち発電部20を挟んで互いに反対側に位置する部分には、貫通孔30a,30bが設けられている。
(セパレータ40)
2つのセパレータ40は、発電部20及び樹脂フレーム30を厚さ方向において挟持している。セパレータ40は、アノードセパレータ50及びカソードセパレータ60の総称である。
【0015】
アノードセパレータ50は、発電部20におけるアノード側の面に配置されている。カソードセパレータ60は、発電部20におけるカソード側の面に配置されている。
セパレータ40は、例えば、平面視において、長辺及び短辺を有する長方形状をなしている。
【0016】
以降において、セパレータ40の長辺方向を単に長辺方向と称し、セパレータ40の短辺方向を単に短辺方向と称する。
セパレータ40の材料としては、例えば、チタンやステンレス鋼などの金属材料や、導電性粒子及び樹脂材料を含む複合材料が挙げられる。
【0017】
アノードセパレータ50の長辺方向における両端部には、貫通孔50a,50bが設けられている。
アノードセパレータ50の発電部20に対向する面には、貫通孔50a,50bに連通するとともに燃料ガスが流れる燃料ガス流路51が設けられている。燃料ガス流路51は、アノードセパレータ50の長辺方向に延びている。
【0018】
カソードセパレータ60の長辺方向における両端部には、樹脂部材70が固定されている。樹脂部材70のそれぞれには、貫通孔70a,70bがそれぞれ設けられている。
貫通孔30a,50a,70aによって、燃料ガスが供給される燃料ガス供給口11が構成されている。貫通孔30b,50b,70bによって、燃料ガスが排出される燃料ガス排出口12が構成されている。燃料ガス供給口11から供給された燃料ガスは、アノードセパレータ50の燃料ガス流路51を通じて、燃料ガス排出口12から排出される。
【0019】
カソードセパレータ60の発電部20に対向する第1面には、酸化ガスが流れる酸化ガス流路61が設けられている。酸化ガス流路61は、例えば、短辺方向において直線状に延びている。すなわち、酸化ガス流路61は、燃料ガス流路51に対して直交する方向に延びている。酸化ガス流路61は、「ガス流路」の一例である。
【0020】
酸化ガス流路61は、互いに間隔をおいて並列して延びる複数の突条62と、互いに隣り合う突条62同士の間において突条62に沿って延びる溝63とを有している。突条62と溝63とは、カソードセパレータ60の長辺方向において交互に並列している。
【0021】
酸化ガス流路61の延在方向、すなわち短辺方向における両端には、酸化ガスが供給される複数の酸化ガス供給口13と、酸化ガス排出される複数の酸化ガス排出口14とがそれぞれ設けられている。酸化ガス供給口13から供給された酸化ガスは、酸化ガス流路61を通じて、酸化ガス排出口14から排出される。酸化ガス供給口13及び酸化ガス排出口14は、酸化ガス流路61の両端において短辺方向に開口した開口端によって構成されている。酸化ガス供給口13及び酸化ガス排出口14は、それぞれ「ガス供給口」及び「ガス排出口」の一例である。
【0022】
カソードセパレータ60の第1面とは反対側の第2面には、冷媒が流れる冷却流路65が設けられている。冷却流路65は、例えば、短辺方向において直線状に延びている。なお、冷却流路65は、当該冷却流路65が設けられたカソードセパレータ60を有する発電セル10に隣り合う他の発電セル10のアノードセパレータ50に対向している。
【0023】
冷却流路65は、互いに間隔をおいて並列して延びる複数の突条66と、互いに隣り合う突条66同士の間において突条66に沿って延びる溝67とを有している。突条66と溝67とは、カソードセパレータ60の長辺方向において交互に並列している。
【0024】
冷却流路65の溝67は、酸化ガス流路61の突条62の裏側に形成されている。酸化ガス流路61の溝63は、冷却流路65の突条66の裏側に形成されている。
冷却流路65の延在方向、すなわち短辺方向における両端には、冷媒が供給される複数の冷媒供給口15と、冷媒が排出される複数の冷媒排出口16とがそれぞれ設けられている。冷媒供給口15から供給された冷媒は、冷却流路65を通じて、冷媒排出口16から排出される。冷媒供給口15及び冷媒排出口16は、冷却流路65の両端において短辺方向に開口した開口端によって構成されている。冷媒としては、例えば、空気が挙げられる。
【0025】
酸化ガス供給口13と冷媒供給口15とは、複数の突条66の並列方向、すなわち長辺方向において交互に隣り合って設けられている。また、酸化ガス排出口14と冷媒排出口16とは、長辺方向において交互に隣り合って設けられている。
【0026】
酸化ガス供給口13及び冷媒供給口15には、例えば、図示しない送風機によって空気が供給される。
図2に示すように、冷却流路65には、複数の突出部68が設けられている。各突出部68は、溝67の底面から突出するとともに互いに隣り合う突条66同士を連結している。なお、
図1では、突出部68の図示が省略されている。
【0027】
各突出部68における溝67の底面からの突出高さは、突条66における溝67の底面からの突出高さよりも小さい。したがって、冷媒は、各突出部68を乗り越えることで、冷媒供給口15から冷媒排出口16に向かって冷却流路65を流れる。
【0028】
突出部68は、酸化ガス流路61の突条62の裏側に形成されている。突出部68の裏側には、酸化ガス流路61の溝63同士を連通する連通路69が形成されている。酸化ガスが連通路69を流れることにより、酸化ガス流路61における酸化ガスの分配性が高められるとともに、酸化ガス流路61における酸化ガスの圧力損失の増加が抑制されている。
【0029】
図3に示すように、単一の溝67に設けられた複数の突出部68は、冷却流路65の延在方向に互いに間隔をおいて設けられている。
冷却流路65は、冷却流路65の延在方向において互いに隣り合う第1領域65A及び第2領域65Bを有している。第1領域65Aは、冷却流路65のうち冷媒供給口15に隣り合う領域である。第2領域65Bは、第1領域65Aに対して冷媒供給口15とは反対側において第1領域65Aに隣り合う領域である。第2領域65Bは、例えば、冷媒排出口16に隣り合っている。
【0030】
第1領域65A及び第2領域65Bの各々には、上述した複数の突出部68が設けられている。第1領域65Aにおける単位面積あたりの突出部68の数は、第2領域65Bにおける単位面積あたりの突出部68の数よりも多い。ここで、単位面積とは、冷却流路65における突条66及び溝67を含む部分をカソードセパレータ60の板厚方向に直交する仮想平面上に投影した領域の面積である。
【0031】
第1領域65A及び第2領域65Bでは、冷却流路65の延在方向における突出部68同士の距離(以下、突出部間距離という)が互いに異なる。第1領域65Aにおける突出部間距離は、第2領域65Bにおける突出部間距離よりも小さい。
【0032】
本実施形態の作用について説明する。
発電部20では、燃料ガス流路51を流れる燃料ガスと酸化ガス流路61を流れる酸化ガスとが発電部20に潜り込む。これにより、燃料ガスと酸化ガスとが電気化学反応することで発電が行われる。この発電によって、発電部20の温度が上昇する。発電部20は、冷却流路65を流れる冷媒によって冷却される。
【0033】
冷却流路65には複数の突出部68が設けられているため、冷却流路65を流れる冷媒は、複数の突出部68に接触する。このため、冷媒と冷却流路65との接触面積が増加する。これにより、燃料電池の冷却効率を高めることができる。
【0034】
ここで、第1領域65Aにおける単位面積あたりの突出部68の数は、第2領域65Bにおける単位面積あたりの突出部68の数よりも多い。このため、冷却流路65に第1領域65A及び第2領域65Bを設定して燃料電池を冷却する上で、特に第1領域65Aにおける冷却効果を高めることができる。
【0035】
本実施形態の効果について説明する。
冷却流路65のうち、冷却流路65の延在方向において互いに隣り合う第1領域65A及び第2領域65Bの各々には、溝67の底面から突出するとともに互いに隣り合う突条66同士を連結する複数の突出部68が設けられている。第1領域65Aにおける単位面積あたりの突出部68の数は、第2領域65Bにおける単位面積あたりの突出部68の数よりも多い。第1領域65Aは、冷却流路65のうち冷媒供給口15に隣り合う領域である。第2領域65Bは、第1領域65Aに対して冷媒供給口15とは反対側において第1領域65Aに隣り合う領域である。
【0036】
燃料電池の発電時には、酸化ガス排出口14付近よりも酸化ガス供給口13付近における温度が高くなることがある。このため、酸化ガス供給口13と冷媒供給口15とが隣り合って設けられるカソードセパレータ60においては、冷却流路65のうち冷媒供給口15付近の冷却効率を高めることが好ましい。
【0037】
本実施形態のカソードセパレータ60によれば、冷却流路65のうち冷媒供給口15に隣り合う領域が第1領域65Aである。また、第1領域65Aに対して冷媒供給口15とは反対側において第1領域65Aに隣り合う領域が第2領域65Bである。このため、第1領域65Aによって発電部20における酸化ガス供給口13付近の部分を効果的に冷却できる。したがって、燃料電池の冷却効率を好適に高めることができる。
【0038】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0039】
・
図4に示すように、第1領域65Aは、冷却流路65のうち冷媒排出口16に隣り合う領域であってもよい。この場合、第2領域65Bは、第1領域65Aに対して冷媒排出口16とは反対側において第1領域65Aに隣り合う領域である。本変更例において、第1領域65Aにおける単位面積あたりの突出部68の数は、第2領域65Bにおける単位面積あたりの突出部68の数よりも多い。ここで、燃料電池の発電時には、酸化ガス供給口13付近よりも酸化ガス排出口14付近における温度が高くなることがある。このため、酸化ガス排出口14と冷媒排出口16とが隣り合って設けられる場合には、冷却流路65のうち冷媒排出口16付近の冷却効率を高めることが好ましい。上記構成によれば、冷却流路65のうち冷媒排出口16に隣り合う領域が第1領域65Aである。また、第1領域65Aに対して冷媒排出口16とは反対側において第1領域65Aに隣り合う領域が第2領域65Bである。このため、第1領域65Aによって発電部20における酸化ガス排出口14付近の部分を効果的に冷却できる。また、酸化ガス排出口14付近の酸化ガスの圧力は、酸化ガス供給口13付近の酸化ガスの圧力よりも低くなる。この場合、酸化ガス排出口14付近では、酸化ガスが発電部20に到達しにくくなるため、燃料電池の発電性能が低下するおそれがある。この点、上記構成によれば、第1領域65Aに設けられた複数の突出部68の裏側には、酸化ガス流路61の溝63同士を連通する連通路69が形成されている。酸化ガスは、連通路69を経由することにより溝63同士の間を流れるため、連通路69が形成されていない場合と比較して、第1領域65Aにおける酸化ガスの圧力の低下を抑制できる。これにより、第1領域65Aにおける発電性能の低下を抑制できる。
【0040】
・
図5に示すように、冷却流路65は、第2領域65Bに対して第1領域65Aとは反対側において第2領域65Bに隣り合う領域であって、冷媒排出口16に隣り合う第3領域65Cを有していてもよい。第3領域65Cには、複数の突出部68が設けられている。第3領域65Cにおける単位面積あたりの突出部68の数は、第2領域65Bにおける単位面積あたりの突出部68の数よりも多い。ここで、燃料電池の発電時には、酸化ガス供給口13付近及び酸化ガス排出口14付近における温度が、その他の部分の温度よりも高くなることがある。このため、冷却流路65のうち冷媒供給口15付近及び冷媒排出口16付近の冷却効率を高めることが好ましい。上記構成によれば、冷却流路65のうち冷媒供給口15に隣り合う領域が第1領域65Aである。また、冷却流路65のうち冷媒排出口16に隣り合う領域が第3領域65Cである。このため、第1領域65A及び第3領域65Cによって、発電部20における酸化ガス供給口13付近及び酸化ガス排出口14付近の部分をそれぞれ効果的に冷却できる。
【0041】
・
図6に示すように、突出部68における冷媒供給口15側の部分には、当該突出部68によって連結された2つの突条66の一方から他方に向かうほど冷媒供給口15から離れるように傾斜した傾斜面68aが設けられていてもよい。こうした構成によれば、突出部68に傾斜面68aが設けられていない場合に比べて、冷媒と突出部68との接触面積が増加するため、燃料電池の冷却効率をより高めることができる。加えて、突出部68に傾斜面68aが設けられていない場合に比べて、冷媒と突出部68との衝突により生じる圧力損失の増加を抑制できる。
【0042】
・
図7に示すように、突出部68における冷媒供給口15側の部分には、冷媒供給口15から離れるほど溝67の底面から離れるように傾斜した傾斜面68bが設けられていてもよい。こうした構成によれば、突出部68に傾斜面68bが設けられていない場合に比べて、冷媒と突出部68との接触面積が増加するため、燃料電池の冷却効率をより高めることができる。加えて、突出部68に傾斜面68bが設けられていない場合に比べて、冷媒と突出部68との衝突により生じる圧力損失の増加を抑制できる。
【0043】
・
図8に示すように、突出部68における溝67の底面からの突出高さは、当該突出部68によって連結された2つの突条66の一方から他方に向かうほど徐々に大きくなっていてもよい。こうした構成によれば、突出部68の突出高さが、突出部68の全体において一定である場合に比べて、冷媒と突出部68との接触面積が増加するため、燃料電池の冷却効率をより高めることができる。ところで、突出部68の突出高さを単に高くした場合、冷却流路65の流路断面積が小さくなるため、冷媒の圧力損失が増大するおそれがある。この点、上記構成によれば、突出部68の突出高さが2つの突条66の一方から他方に向かうほど徐々に大きくなっている。このため、燃料電池の冷却効率の向上と、冷媒の圧力損失の増大の抑制とを両立できる。
【0044】
・第1領域65Aは、冷却流路65のうち冷媒供給口15に隣り合う領域でなくてもよい。例えば、第2領域65Bが、冷却流路65のうち冷媒供給口15に隣り合う領域であり、第1領域65Aが、第2領域65Bに対して冷媒供給口15とは反対側において第2領域65Bに隣り合う領域であってもよい。
【0045】
・突出部68の形状は、
図6~
図8に示す第3~第5変更例の突出部68の形状のうち少なくとも2種類の形状を組み合わせたものであってもよい。
上記実施形態は、以下の付記に記載する構成を含む。
【0046】
[付記1]燃料電池の発電部に対向するとともに反応ガスが流れるガス流路が第1面に設けられ、冷媒が流れる冷却流路が前記第1面と反対側の第2面に設けられた燃料電池用セパレータであって、前記冷却流路は、互いに間隔をおいて並列して延びる複数の突条と、互いに隣り合う前記突条同士の間において前記突条に沿って延びる溝と、を有しており、前記冷却流路のうち、前記冷却流路の延在方向において互いに隣り合う第1領域及び第2領域の各々には、前記溝の底面から突出するとともに互いに隣り合う前記突条同士を連結する複数の突出部が設けられており、前記突出部における前記底面からの突出高さは、前記突条における前記底面からの突出高さよりも小さく、前記第1領域における単位面積あたりの前記突出部の数は、前記第2領域における単位面積あたりの前記突出部の数よりも多い、燃料電池用セパレータ。
【0047】
[付記2]前記ガス流路の延在方向における両端には、前記反応ガスが供給されるガス供給口と、前記反応ガスが排出されるガス排出口とがそれぞれ設けられており、前記冷却流路の延在方向における両端には、前記冷媒が供給される冷媒供給口と、前記冷媒が排出される冷媒排出口とがそれぞれ設けられており、前記複数の突条の並列方向において、前記ガス供給口と前記冷媒供給口とが隣り合って設けられるとともに、前記ガス排出口と前記冷媒排出口とが隣り合って設けられており、前記第1領域は、前記冷却流路のうち前記冷媒供給口に隣り合う領域であり、前記第2領域は、前記第1領域に対して前記冷媒供給口とは反対側において前記第1領域に隣り合う領域である、[付記1]に記載の燃料電池用セパレータ。
【0048】
[付記3]前記冷却流路のうち前記第2領域に対して前記第1領域とは反対側において前記第2領域に隣り合う領域であって、前記冷媒排出口に隣り合う第3領域には、前記複数の突出部が設けられており、前記第3領域における単位面積あたりの前記突出部の数は、前記第2領域における単位面積あたりの前記突出部の数よりも多い、[付記1]または[付記2]に記載の燃料電池用セパレータ。
【0049】
[付記4]前記ガス流路の延在方向における両端には、前記反応ガスが供給されるガス供給口と、前記反応ガスが排出されるガス排出口とがそれぞれ設けられており、前記冷却流路の延在方向における両端には、前記冷媒が供給される冷媒供給口と、前記冷媒が排出される冷媒排出口とがそれぞれ設けられており、前記複数の突条の並列方向において、前記ガス供給口と前記冷媒供給口とが隣り合って設けられるとともに、前記ガス排出口と前記冷媒排出口とが隣り合って設けられており、前記第1領域は、前記冷却流路のうち前記冷媒排出口に隣り合う領域であり、前記第2領域は、前記第1領域に対して前記冷媒排出口とは反対側において前記第1領域に隣り合う領域である、[付記1]~[付記3]のいずれか一つに記載の燃料電池用セパレータ。
【0050】
[付記5]前記冷却流路の延在方向における一端には、前記冷媒が供給される冷媒供給口が設けられており、前記突出部における前記冷媒供給口側の部分には、当該突出部によって連結された2つの前記突条の一方から他方に向かうほど前記冷媒供給口から離れるように傾斜した傾斜面が設けられている、[付記1]~[付記4]のいずれか一つに記載の燃料電池用セパレータ。
【0051】
[付記6]前記冷却流路の延在方向における一端には、前記冷媒が供給される冷媒供給口が設けられており、前記突出部における前記冷媒供給口側の部分には、前記冷媒供給口から離れるほど前記底面から離れるように傾斜した傾斜面が設けられている、[付記1]~[付記5]のいずれか一つに記載の燃料電池用セパレータ。
【0052】
[付記7]前記突出部における前記底面からの突出高さは、当該突出部によって連結された2つの前記突条の一方から他方に向かうほど徐々に大きくなっている、[付記1]~[付記6]のいずれか一つに記載の燃料電池用セパレータ。
【符号の説明】
【0053】
11…燃料ガス供給口
12…燃料ガス排出口
13…酸化ガス供給口(ガス供給口)
14…酸化ガス排出口(ガス排出口)
15…冷媒供給口
16…冷媒排出口
20…発電部
40…セパレータ
50…アノードセパレータ
51…燃料ガス流路
60…カソードセパレータ
61…酸化ガス流路(ガス流路)
62…突条
63…溝
65…冷却流路
65A…第1領域
65B…第2領域
65C…第3領域
66…突条
67…溝
68…突出部
68a…傾斜面
68b…傾斜面
69…連通路