(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103088
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】プリンタ、制御方法、および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 301
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007233
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100213687
【弁理士】
【氏名又は名称】平松 大輝
(72)【発明者】
【氏名】溝手 健志
(72)【発明者】
【氏名】白▲崎▼ 宏行
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC12
2C056EC26
2C056EC35
2C056HA29
(57)【要約】
【課題】ユーザが求める品質の印刷結果物を作成することに貢献するプリンタ、制御方法、および制御プログラムを提供する。
【解決手段】プリンタは、ヘッドとプラテンと受信部と制御部を備える。ヘッドは、ノズルが設けられたノズル面を含み、ノズルからインクを吐出する。プラテンは印刷媒体が載置される載置面を含む。プラテンは、載置面に印刷媒体が載置されるセット位置と、載置面がノズル面と対向方向に対向する印刷位置との間で対向方向と交差する移動方向に移動し、且つ対向方向に移動する。受信部は印刷データを受信する。制御部は、プラテンの対向方向の位置であるプラテン高さを示す高さ情報が含まれる印刷データである特定印刷データが受信部によって受信された場合(S31:YES)、特定印刷データに含まれる高さ情報が示すプラテン高さである指定高さにプラテンを移動させる(S36)。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルが設けられたノズル面を含み、前記ノズルからインクを吐出するヘッドと、
印刷媒体が載置される載置面を含むプラテンであって、前記載置面に前記印刷媒体が載置されるセット位置と、前記載置面が前記ノズル面と対向方向に対向する印刷位置との間で前記対向方向と交差する移動方向に移動し、且つ前記対向方向に移動するプラテンと、
印刷データを受信する受信部と、
制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記プラテンの前記対向方向の位置であるプラテン高さを示す高さ情報が含まれる前記印刷データである特定印刷データが前記受信部によって受信された場合、前記特定印刷データに含まれる前記高さ情報が示す前記プラテン高さである指定高さに前記プラテンを移動させる移動処理を行う
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記制御部は、
前記移動処理において、前記セット位置と前記印刷位置との間のうち前記セット位置とは異なる位置に前記プラテンが位置する状態で、前記特定印刷データが前記受信部によって受信された場合、前記セット位置と前記印刷位置との間のうち前記印刷位置とは異なる位置に前記プラテンが位置する状態で、前記プラテンを前記指定高さに移動させる
ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記制御部は、
現在の前記プラテン高さが前記指定高さと異なる場合、現在の前記プラテン高さが前記指定高さと異なることを示す報知を行う報知処理を行う
ことを特徴とする請求項1または2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記移動処理の実行を許容する許容モード、および前記移動処理の実行を禁止する禁止モードのいずれかを設定する設定部を備え、
前記制御部は、
前記設定部によって前記許容モードが設定された状態で、前記特定印刷データが前記受信部によって受信された場合、前記移動処理を行い、
前記設定部によって前記禁止モードが設定された状態で、前記特定印刷データが前記受信部によって受信された場合、前記移動処理を行わない
ことを特徴とする請求項1または2に記載のプリンタ。
【請求項5】
ノズルが設けられたノズル面を含み、前記ノズルからインクを吐出するヘッドと、
印刷媒体が載置される載置面を含むプラテンであって、前記載置面に前記印刷媒体が載置されるセット位置と、前記載置面が前記ノズル面と対向方向に対向する印刷位置との間で前記対向方向と交差する移動方向に移動し、且つ前記対向方向に移動するプラテンと、
印刷データを受信する受信部と
を備えたプリンタの制御方法であって、
前記プラテンの前記対向方向の位置であるプラテン高さを示す高さ情報が含まれる前記印刷データである特定印刷データが前記受信部によって受信された場合、前記特定印刷データに含まれる前記高さ情報が示す前記プラテン高さである指定高さに前記プラテンを移動させる移動処理を備えた
ことを特徴とする制御方法。
【請求項6】
ノズルが設けられたノズル面を含み、前記ノズルからインクを吐出するヘッドと、
印刷媒体が載置される載置面を含むプラテンであって、前記載置面に前記印刷媒体が載置されるセット位置と、前記載置面が前記ノズル面と対向方向に対向する印刷位置との間で前記対向方向と交差する移動方向に移動し、且つ前記対向方向に移動するプラテンと、
印刷データを受信する受信部と
を備えたプリンタのコンピュータに、
前記プラテンの前記対向方向の位置であるプラテン高さを示す高さ情報が含まれる前記印刷データである特定印刷データが前記受信部によって受信された場合、前記特定印刷データに含まれる前記高さ情報が示す前記プラテン高さである指定高さに前記プラテンを移動させる移動処理を実行させる
ことを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、制御方法、および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のプリンタは、テーブル上の印刷媒体にインクジェットヘッドからインクを吐出することで、印刷結果物を作成する。プリンタは、テーブル上の印刷媒体の高さを検知するための検知機構を備える。プリンタは、印刷結果物を作成する前に、検知機構によって検知された印刷媒体の高さに基づいてテーブルを昇降する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記プリンタでは、検知機構によって検知されたテーブル上の印刷媒体の高さに基づいてテーブルの高さが調整される。このため、プリンタは、印刷結果物に対してユーザが求める品質に応じて、テーブルの高さを調整することが難しい可能性がある。よって、プリンタは、ユーザが求める品質の印刷結果物を作成することが難しい可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、ユーザが求める品質の印刷結果物を作成することに貢献するプリンタ、制御方法、および制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係るプリンタは、ノズルが設けられたノズル面を含み、前記ノズルからインクを吐出するヘッドと、印刷媒体が載置される載置面を含むプラテンであって、前記載置面に前記印刷媒体が載置されるセット位置と、前記載置面が前記ノズル面と対向方向に対向する印刷位置との間で前記対向方向と交差する移動方向に移動し、且つ前記対向方向に移動するプラテンと、印刷データを受信する受信部と、制御部とを備え、前記制御部は、前記プラテンの前記対向方向の位置であるプラテン高さを示す高さ情報が含まれる前記印刷データである特定印刷データが前記受信部によって受信された場合、前記特定印刷データに含まれる前記高さ情報が示す前記プラテン高さである指定高さに前記プラテンを移動させる移動処理を行うことを特徴とする。
【0007】
第一態様によれば、特定印刷データが受信部によって受信された場合、制御部は移動処理によってプラテンを指定高さに移動させる。このため、例えば、ユーザは、求める品質に応じた高さ情報を印刷データに含ませることで、求める品質の印刷結果物を得ることができる。よって、プリンタは、ユーザが求める品質の印刷結果物を作成することに貢献する。
【0008】
前記制御部は、前記移動処理において、前記セット位置と前記印刷位置との間のうち前記セット位置とは異なる位置に前記プラテンが位置する状態で、前記特定印刷データが前記受信部によって受信された場合、前記セット位置と前記印刷位置との間のうち前記印刷位置とは異なる位置に前記プラテンが位置する状態で、前記プラテンを前記指定高さに移動させてもよい。
【0009】
この場合、プリンタは載置面上の印刷媒体がノズル面に接触することを抑制することに貢献する。
【0010】
前記制御部は、現在の前記プラテン高さが前記指定高さと異なる場合、現在の前記プラテン高さが前記指定高さと異なることを示す報知を行う報知処理を行ってもよい。
【0011】
この場合、プリンタは現在のプラテン高さが指定高さと異なることをユーザに知らせることに貢献する。
【0012】
前記移動処理の実行を許容する許容モード、および前記移動処理の実行を禁止する禁止モードのいずれかを設定する設定部を備え、前記制御部は、前記設定部によって前記許容モードが設定された状態で、前記特定印刷データが前記受信部によって受信された場合、前記移動処理を行い、前記設定部によって前記禁止モードが設定された状態で、前記特定印刷データが前記受信部によって受信された場合、前記移動処理を行わなくてもよい。
【0013】
この場合、ユーザは、許容モードおよび禁止モードのいずれかを設定することで、特定印刷データが受信部によって受信された場合にプラテンを指定高さに移動させるか否かを選択できる。よって、プリンタは、例えばユーザがプラテン高さを一定に維持したい場合に、プラテンが現在のプラテン高さから指定高さに移動することを抑制することに貢献する。
【0014】
本発明の第二態様に係る制御方法は、ノズルが設けられたノズル面を含み、前記ノズルからインクを吐出するヘッドと、印刷媒体が載置される載置面を含むプラテンであって、前記載置面に前記印刷媒体が載置されるセット位置と、前記載置面が前記ノズル面と対向方向に対向する印刷位置との間で前記対向方向と交差する移動方向に移動し、且つ前記対向方向に移動するプラテンと、印刷データを受信する受信部とを備えたプリンタの制御方法であって、前記プラテンの前記対向方向の位置であるプラテン高さを示す高さ情報が含まれる前記印刷データである特定印刷データが前記受信部によって受信された場合、前記特定印刷データに含まれる前記高さ情報が示す前記プラテン高さである指定高さに前記プラテンを移動させる移動処理を備えたことを特徴とする。
【0015】
第二態様は、第一態様と同様に、ユーザが求める品質の印刷結果物を作成することに貢献する。
【0016】
本発明の第三態様に係る制御プログラムは、ノズルが設けられたノズル面を含み、前記ノズルからインクを吐出するヘッドと、印刷媒体が載置される載置面を含むプラテンであって、前記載置面に前記印刷媒体が載置されるセット位置と、前記載置面が前記ノズル面と対向方向に対向する印刷位置との間で前記対向方向と交差する移動方向に移動し、且つ前記対向方向に移動するプラテンと、印刷データを受信する受信部とを備えたプリンタのコンピュータに、前記プラテンの前記対向方向の位置であるプラテン高さを示す高さ情報が含まれる前記印刷データである特定印刷データが前記受信部によって受信された場合、前記特定印刷データに含まれる前記高さ情報が示す前記プラテン高さである指定高さに前記プラテンを移動させる移動処理を実行させることを特徴とする。
【0017】
第三態様は、第一態様と同様に、ユーザが求める品質の印刷結果物を作成することに貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】プリンタ1を前左上方から見た斜視図である。
【
図2】プラテン5がセット位置に位置するときのA-A線矢視方向の断面図である。
【
図3】プラテン5が印刷位置に位置するときのA-A線矢視方向の断面図である。
【
図4】プリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、本発明の一実施形態に係るプリンタ1を説明する。
図1の上方、下方、左下方、右上方、右下方、および左上方が、それぞれ、プリンタ1の上方、下方、左方、右方、前方、および後方である。本実施形態において図面中の機械的要素は、実際のスケールを示す。
【0020】
図1~
図3を参照し、プリンタ1の概略構成を説明する。
図1に示すように、プリンタ1は筐体2、ガイドレール11、12、キャリッジ20、ヘッド9、プラテン5、およびプラテン搬送機構6を備える。筐体2は直方体状であり、前壁21を含む。
図1は筐体2の上部を省略する。筐体2には穴22が形成される。穴22は前壁21の中央部から後方に延びる。以下では、穴22のうち前壁21によって囲まれる領域を「開口221」という。つまり、開口221は穴22の前端である。前壁21は左縁211を含む。左縁211は開口221の左端を規定する部位であり、上下方向に延びる。前壁21において開口221の右斜め上側には、ディスプレイ45が設けられる。ディスプレイ45は各種情報を表示する。
【0021】
ガイドレール11は前壁21の後側において穴22の上部に設けられ、左右方向に延びる。ガイドレール12はガイドレール11の後側に設けられ、左右方向に延びる。キャリッジ20はガイドレール11とガイドレール12の前後方向の間に位置し、ガイドレール11とガイドレール12によって支持される。キャリッジ20は
図4に示す主走査モータ19の駆動によってガイドレール11とガイドレール12に沿って左右方向に移動する。ヘッド9はキャリッジ20に搭載され、キャリッジ20とともに左右方向に移動する。プリンタ1の左右方向は主走査方向である。ヘッド9の個数は、単数でも複数でもよく、本実施形態では6つである。
【0022】
図1に示す拡大図は、ヘッド9の底面図である。ヘッド9の下面にはノズル面91が形成される。ノズル面91はキャリッジ20に設けられた開口(図示略)から下方に露出する。ノズル面91にはノズル911が設けられる。ノズル911は開口である。ノズル911の個数は単数でもよいが、本実施形態では複数である。ヘッド9は複数のノズル911からインクを吐出する。
【0023】
プラテン5は正面視で穴22内に配置される。プラテン5は板状であり、前後方向および左右方向に延びる。プラテン5の上面には載置面51が形成される。載置面51には印刷媒体Mが載置される。印刷媒体Mは布帛、紙等であり、例えばTシャツである。プラテン搬送機構6は、穴22の下部に配置され、プラテン5を支持する。プラテン搬送機構6は、プラテン5を上下方向に移動させ、且つプラテン5を前後方向に移動させる。
【0024】
図2に示すように、プラテン搬送機構6は一例として軸61と搬送ベルト62とプラテン支持部材3と連結部35と
図4に示す副走査モータ18と昇降モータ16を備える。軸61と搬送ベルト62は穴22の下部に設けられ、それぞれ、前後方向に延びる。軸61の前端は開口221よりも前側まで延びる。
【0025】
プラテン支持部材3は軸61の上側に設けられ、第一部分32と第二部分33とを含む。第一部分32は水平方向に延びる板状である。第二部分33は第一部分32の後端部から下方に延びる。連結部35は第二部分33の下側に位置し、軸61によって支持される。連結部35には搬送ベルト62の一端部が連結される。
図4に示す副走査モータ18は搬送ベルト62の他端部と連結する。
【0026】
昇降モータ16は連結部35の後部に固定される。昇降モータ16の出力軸は上方に延びる。昇降モータ16の出力軸にはボールねじ38が固定される。第二部分33の内部にはナット39が固定される。ボールねじ38はナット39に螺合する。プラテン支持部材3は、ボールねじ38とナット39との螺合によって連結部35と連結する。
【0027】
上記プラテン搬送機構6の構成によれば、昇降モータ16が駆動すると、ボールねじ38がナット39に対して回転する。これにより、プラテン支持部材3が上下方向に移動する。プラテン5がプラテン支持部材3とともに上下方向に移動する。以下では、プラテン5の上下方向の位置を「プラテン高さ」という。プラテン高さは、例えば載置面51とノズル面91との間の上下方向の距離によって規定される。
【0028】
副走査モータ18が駆動すると、搬送ベルト62が連結部35を軸61に沿って前後方向に移動させる。これにより、プラテン支持部材3が前後方向に移動する。プラテン5は、プラテン支持部材3とともに後述のセット位置(
図2参照)と印刷位置(
図3参照)との間で前後方向に移動する。プリンタ1の前後方向は、主走査方向と交差する副走査方向である。以下では、プラテン5の前後方向の位置を「プラテン搬送位置」という。
【0029】
プリンタ1は高さセンサ47を備える。高さセンサ47は左縁211に設けられる。高さセンサ47は反射型の光センサであり、発光部と受光部とを備える。高さセンサ47は、発光部から光を右方に発し、受光部によって光を受ける。
【0030】
高さセンサ47は、検出位置V1にある印刷媒体Mを検出する。検出位置V1は、高さセンサ47の上下方向の位置であり、例えば高さセンサ47の発光部および受光部の上下方向の位置である。検出位置V1は、ノズル面91から下方に所定の検出距離D1だけ離れた位置である。検出距離D1は特定の値に限定されないが、本実施形態では、1.2mmである。
【0031】
図2、
図3を参照し、プリンタ1による印刷準備動作および印刷動作を説明する。ユーザは、プラテン5が
図2に示すセット位置に位置する状態で、印刷前の印刷媒体Mを載置面51に載置する。つまり、セット位置は、載置面51に印刷媒体Mが載置されるときのプラテン搬送位置である。
【0032】
図2に示すように、セット位置は、プラテン5が前壁21よりも前方に配置されるときのプラテン搬送位置であり、例えば、プラテン5の移動範囲の前端である。本実施形態では、プラテン5がセット位置に位置する場合、プラテン5の後端は開口221よりも前側に配置される。プラテン5がセット位置に位置する状態で印刷準備動作が開始される。印刷準備動作が開始されると、プラテン5がセット位置から
図3に示す印刷位置まで搬送される。これにより、印刷準備動作が終了する。
【0033】
図3に示すように、印刷位置は、載置面51が複数のノズル面91の一部または全部と上下方向に対向するときのプラテン搬送位置であり、
図2に示すセット位置よりも後側である。プラテン5が印刷位置に位置する状態で印刷動作が開始される。印刷動作が開始されると、キャリッジ20が左右方向(主走査方向)に移動する。複数のヘッド9は、キャリッジ20とともに左右方向に移動しながら、ノズル911からインクを吐出する。ノズル911から吐出されたインクは載置面51上の印刷媒体Mに着弾する。プラテン5は印刷位置において前後方向(副走査方向)に移動する。ヘッド9の左右方向への移動およびインクの吐出と、印刷位置におけるプラテン5の前後方向への移動とが繰り返されることで、印刷媒体Mに画像が印刷される。
【0034】
印刷媒体Mへの画像の印刷が完了すると、プラテン5は印刷位置から
図2に示すセット位置まで搬送される。これにより、プリンタ1による印刷動作が終了する。ユーザは、プラテン5が
図2に示すセット位置に位置する状態で、印刷された印刷媒体M(印刷結果物)を載置面51から取り外す。
【0035】
図4を参照し、プリンタ1の電気的構成を説明する。プリンタ1は制御基板10を備える。制御基板10にはCPU41、ROM42、RAM43、およびフラッシュメモリ44が設けられる。CPU41はプリンタ1の制御を司り、ROM42、RAM43、およびフラッシュメモリ44と電気的に接続する。ROM42は、CPU41がプリンタ1の動作を制御するための制御プログラム、各種プログラムの実行時にCPU41が必要な情報等を記憶する。ROM42は、副走査モータ18の回転角度をプラテン搬送位置と対応付けて記憶する。ROM42は、昇降モータ16の回転角度をプラテン高さと対応付けて記憶する。RAM43は、制御プログラムで用いられる各種データ等を一時的に記憶する。フラッシュメモリ44は、不揮発性であり、後述の予約無効モード、指定モード、印刷データ等を記憶する。
【0036】
CPU41には主走査モータ19、副走査モータ18、昇降モータ16、ヘッド駆動部17、ディスプレイ45、入力部46、高さセンサ47、および通信部48が電気的に接続される。主走査モータ19、副走査モータ18、昇降モータ16、およびヘッド駆動部17はCPU41による制御によって駆動する。
【0037】
副走査モータ18は特定の種類に限定されないが、本実施形態ではサーボモータである。副走査モータ18にはエンコーダ181が設けられる。エンコーダ181は副走査モータ18の回転角度を検出し、検出結果をCPU41に出力する。昇降モータ16は特定の種類に限定されないが、本実施形態ではサーボモータである。昇降モータ16にはエンコーダ161が設けられる。エンコーダ161は昇降モータ16の回転角度を検出し、検出結果をCPU41に出力する。ヘッド駆動部17は圧電素子または発熱素子であり、複数のヘッド9にそれぞれのノズル911からインクを吐出させる。
【0038】
ディスプレイ45は例えば後述のスタンバイ画面71(
図5参照)、ステータス画面81(
図6参照)、および選択画面50(
図7参照)を表示する。入力部46は例えばタッチパネルであり、ディスプレイ45の表面に設けられる。入力部46はユーザによる操作に応じた情報をCPU41に出力する。ユーザは入力部46を操作することで、後述する印刷準備動作および印刷動作を実行するための印刷指示、プラテン5を上下方向に移動させるための昇降指示、プラテン5を前後方向に移動させるための搬送指示、後述の印刷予約を設定するための印刷予約指示等をプリンタ1に入力できる。
【0039】
高さセンサ47は、検出位置V1にある印刷媒体Mを検出した場合、検出信号をCPU41に出力する。CPU41は、高さセンサ47からの検出信号に基づいて、載置面51上の印刷媒体Mが検出位置V1に位置するか判断できる。本実施形態では、例えば印刷準備動作中に高さセンサ47が印刷媒体Mを検出した場合、CPU41は、実行中の印刷準備動作を停止する。これにより、CPU41は、載置面51上の印刷媒体Mがノズル面91に接触する可能性を抑制することに貢献する。
【0040】
通信部48は、外部機器と有線または無線で通信するためのインターフェース回路である。例えば、通信部48は、無線LANまたは無線LANに接続するためのインターフェース回路である。通信は、受信および送信の両方を含むが、通信部48は、外部機器から情報を受信できればよい。CPU41は通信部48によって外部機器と通信する。外部機器は、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、カードリーダ等である。
【0041】
印刷予約を説明する。印刷予約は、プリンタ1が印刷動作を実行不能な状態で、印刷準備動作を行うための設定である。印刷予約が設定されていない場合、プリンタ1が印刷動作を実行可能な状態において、印刷準備動作に引き続いて印刷動作が行われる。一方、印刷予約が設定された場合、プリンタ1が印刷動作を実行可能な状態になる前に印刷準備動作が行われる。その後、プリンタ1が印刷動作を実行可能な状態になると、印刷動作が行われる。このため、印刷予約が設定された場合、印刷予約が設定されていない場合に比べて、プリンタ1が印刷動作を実行可能な状態になってから印刷動作が開始されるまでにかかる時間が、印刷準備動作にかかる時間分、短縮される。
【0042】
ユーザは所定の予約可能条件において、入力部46を操作して印刷予約指示をプリンタ1に入力することで、印刷予約を設定できる。予約可能条件は、プリンタ1が印刷動作を実行不能な状態であり、本実施形態では、印刷データの受信中である。印刷データの受信中、プリンタ1は受信中の印刷データに基づいて印刷媒体Mに印刷する画像(以下、「印刷画像」という。)等を特定できないので、印刷動作を実行できない。印刷予約が設定されていない場合、印刷データの受信完了を待ってから印刷準備動作が開始される。印刷データの受信中に印刷予約が設定された場合、印刷データの受信中に印刷準備動作が行われる。その後、印刷データの受信が完了し、プリンタ1が印刷動作を実行可能な状態になると、印刷動作が行われる。
【0043】
印刷データを説明する。印刷データは画像データを含む。画像データは印刷画像を示す。本実施形態では、画像データに加えて高さ情報を含む印刷データがある。高さ情報はプラテン高さを示し、本実施形態では、プラテン高さとして「A」、「B」、および「C」のいずれかを示す(
図2参照)。「A」は、「A」、「B」、および「C」のうち最も高いプラテン高さを示す。「C」は、「A」、「B」、および「C」のうち最も低いプラテン高さを示す。「B」は、「A」と「C」の間のプラテン高さを示す。
図2は、プラテン5が「A」のプラテン高さに位置する状態を示す。
【0044】
以下では、高さ情報が示すプラテン高さを「データ指定高さ」という。高さ情報を含む印刷データを「特定印刷データ」といい、高さ情報を含まない印刷データを「通常印刷データ」という。通常印刷データは、高さ情報を含まないことで、プラテン高さを指定しないことを示す。本実施形態では、特定印刷データが外部機器からプリンタ1に送信される場合、画像データが先に送信され、画像データの後に高さ情報が送信される。
【0045】
プラテン高さが高いと、上下方向において、ノズル面91から載置面51上の印刷媒体Mまでの距離が小さくなる。このため、プラテン高さが高いと、印刷結果物の品質が高くなりやすい。よって、印刷データの作成者は、印刷結果物に求める品質に応じて高さ情報を設定する。印刷データの作成者は、例えば印刷結果物に高い品質を求める場合、印刷データにおいて、「A」を示す高さ情報を設定する。印刷データの作成者は、ユーザの一種である。
【0046】
図5を参照し、スタンバイ画面71を説明する。例えばユーザが入力部46においてスタンバイ画面71を表示するための操作を行うと、または入力部46において操作が行われない状態が所定時間続くと、CPU41はディスプレイ45にスタンバイ画面71を表示する。スタンバイ画面71は印刷画像表示領域72、インク残量表示領域73、印刷関連情報表示領域74、およびプラテン高さ表示領域75を含む。
【0047】
印刷画像表示領域72は印刷画像を表示する。
図5の例では、印刷画像表示領域72は印刷画像として花の画像を表示する。インク残量表示領域73はインクタンク(図示略)またはインクカートリッジ(図示略)内のインク残量を表示する。
図5の例では、インク残量表示領域73は「CS(前処理剤)」、「K(ブラック)」、「Y(イエロー)」、「C(シアン)」、「M(マゼンタ)」、「W(ホワイト)」のそれぞれのインク残量を表示する。
【0048】
印刷関連情報表示領域74は、印刷関連情報を表示する。
図5の例では、印刷関連情報表示領域74は、印刷関連情報として、印刷データのファイル名「Sample.arx6」、プラテン5のサイズ「14×16inch」、印刷に使用されるインク量「0.04cc」、および印刷枚数「000」を示す。プラテン高さ表示領域75は現在のプラテン高さを表示する。
図5の例では、プラテン高さ表示領域75において、「A」が現在のプラテン高さを示す。
【0049】
図6を参照し、ステータス画面81を説明する。例えばユーザが入力部46においてステータス画面81を表示するための操作を行うと、CPU41はディスプレイ45にステータス画面81を表示する。ステータス画面81は日時表示領域82、データ表示領域83、湿度表示領域84、印刷枚数表示領域85、プラテン高さ表示領域86、加湿設定表示領域87、および循環時刻表示領域88を含む。
【0050】
日時表示領域82は現在の日時を表示する。
図6の例では、日時表示領域82は現在の日時が2020年11月5日の10時16分であることを示す。データ表示領域83は、解像度およびデータ指定高さを表示する。
図6の例では、データ表示領域83において、「1200dpi」が解像度を示し、「C」がデータ指定高さを示す。湿度表示領域84は筐体2内に設けられた湿度センサ(図示略)が検知する湿度が所定範囲内であるかを表示する。
図6の例では、湿度表示領域84は、湿度が所定範囲内であることを「適湿」によって示す。
【0051】
印刷枚数表示領域85は、印刷後処理が行われるまでの印刷枚数に関する情報を表示する。
図6の例では、印刷枚数表示領域85において、「72」が印刷後処理間の印刷枚数を示し、「00」が現在までに完了している印刷枚数を示す。印刷後処理は、ノズル面91へのキャッピング、ノズル面91のワイピング、ヘッド9によるフラッシング等である。本実施形態では、所定枚数(例えば72枚)の印刷媒体Mに印刷が行われるたびに、印刷後処理が行われる。プラテン高さ表示領域86は現在のプラテン高さを表示する。
図6の例では、プラテン高さ表示領域86において、「A」が現在のプラテン高さを示す。
【0052】
加湿設定表示領域87は、筐体2内を加湿するための加湿器(図示略)による加湿動作を行うかの設定を表示する。
図6の例では、加湿設定表示領域87は、加湿動作を行う設定であることを「ON」によって示す。循環時刻表示領域88は、次回の循環動作が行われる時刻を示す。
図6の例では、循環時刻表示領域88は、10時10分に次回の循環動作が行われることを示す。循環動作はヘッド9内のインクを循環させる動作である。
【0053】
ユーザは、ステータス画面81において、印刷、プリンタ設定等に関する各種情報を確認する。例えば、ユーザは、データ表示領域83およびプラテン高さ表示領域86において、現在のプラテン高さがデータ指定高さと異なるか否かを確認できる。
図6の例では、データ指定高さが「C」であり、現在のプラテン高さが「A」なので、ユーザは現在のプラテン高さがデータ指定高さと異なっていることを確認できる。
【0054】
図7を参照し、選択画面50を説明する。例えばユーザが入力部46において選択画面50を表示するための操作を行うと、CPU41はディスプレイ45に選択画面50を表示する。選択画面50は、第一階層表示領域52と第二階層表示領域53とを含む。第一階層表示領域52は、第一階層の選択肢を表示する。
図7の例では、第一階層表示領域52は、第一階層の選択肢として「プラテン高さ変更」等を表示する。
【0055】
第二階層表示領域53は、第一階層に対応する第二階層の選択肢を表示する。例えばユーザが入力部46を操作して、第一階層表示領域52において、「プラテン高さ変更」を選択すると、「プラテン高さ変更」に対応する第二階層の選択肢を表示する。
図7の例では、第二階層表示領域53は、「プラテン高さ変更」に対応する第二階層の選択肢として「A」、「B」、「C」、「ユーザ設定1」、「ユーザ設定2」、および「データ指定高さ」を表示する。
【0056】
「A」、「B」、「C」、「ユーザ設定1」、および「ユーザ設定2」は、それぞれ、固定のプラテン高さである。「ユーザ設定1」、「ユーザ設定2」は、ユーザが任意に設定したプラテン高さである。「データ指定高さ」は、高さ情報に応じて変わるプラテン高さである。例えば高さ情報が「A」であれば、「データ指定高さ」は「A」となる。例えば高さ情報が「B」であれば、「データ指定高さ」は「B」となる。
【0057】
ユーザは、例えばプラテン高さを変更する場合、第一階層表示領域52において、「プラテン高さ変更」を選択する。この場合、ユーザは、第二階層表示領域53において、「A」、「B」、「C」、「ユーザ設定1」、「ユーザ設定2」、および「データ指定高さ」のいずれかを選択する。これにより、ユーザは昇降指示をプリンタ1に入力する。
【0058】
以下では、昇降指示によって指定されるプラテン高さを「メニュー指定高さ」という。つまり、メニュー指定高さは、選択画面50において、ユーザによって選択されたプラテン高さである。選択画面50において、ユーザによってプラテン高さが選択されると、プラテン5は、メニュー指定高さに移動する。
【0059】
図8を参照し、メイン処理を説明する。プリンタ1の電源が投入されると、CPU41は、ROM42から制御プログラムを読み出して動作することで、メイン処理を実行する。メイン処理では、プラテン5の昇降、プリンタ1による印刷動作等が行われる。
【0060】
メイン処理が開始されると、CPU41は初期処理を行う(S10)。初期処理では、CPU41は、例えばRAM43において、印刷予約フラグを「OFF」にする。印刷予約フラグは、印刷予約が設定されているかを示す。印刷予約フラグの「ON」は、印刷予約が設定されていることを示す。印刷予約フラグの「OFF」は、印刷予約が設定されていないことを示す。
【0061】
CPU41は
図4に示す通信部48による印刷データの受信が開始されたか判断する(S11)。印刷データの受信が開始されていない場合(S11:NO)、CPU41は処理をS11の判断に戻す。例えば、ユーザは外部機器を操作して外部機器からプリンタ1に印刷データを送信する。これにより、印刷データの受信が開始された場合(S11:YES)、CPU41は
図4に示す入力部46を介して印刷予約指示を受け付けたか判断する(S12)。
【0062】
印刷予約指示を受け付けていない場合(S12:NO)、CPU41は印刷データの受信が完了したか判断する(S16)。印刷データの受信の途中の場合(S16:NO)、CPU41は処理をS12の判断に戻す。つまり、CPU41は、印刷データの受信が開始されてから完了するまでの間(印刷データの受信中)、S12の判断を繰り返す。
【0063】
印刷データの受信中に印刷予約指示を受け付けた場合(S12:YES)、CPU41はフラッシュメモリ44を参照し、予約無効モードが設定されているか判断する(S13)。予約無効モードは、印刷予約の設定ができないモードである。本実施形態では、プリンタ1は、予約無効モードが設定されていない場合に、印刷予約の設定が可能な状態となる。予約無効モードが設定されている場合(S13:YES)、CPU41は印刷予約を設定せずに処理をS16の判断に移行する。この場合、ユーザが印刷予約指示をプリンタ1に入力したにも関わらず、印刷予約が設定されない。このため、CPU41は印刷予約を設定しない旨をディスプレイ45等によってユーザに報知してもよい。
【0064】
予約無効モードが設定されていない場合(S13:NO)、CPU41は印刷予約を設定する。つまり、CPU41は印刷準備動作を行う(S14)。S14の処理では、CPU41は、
図4に示すエンコーダ181からの検出結果に基づいて副走査モータ18を制御し、プラテン5を
図3に示す印刷位置まで搬送する。CPU41はRAM43において印刷予約フラグを「ON」にする(S15)。CPU41は処理をS16の判断に移行する。
【0065】
印刷データの全部の受信が完了した場合(S16:YES)、CPU41はRAM43を参照し、印刷予約フラグの状態に基づいて印刷予約の設定中かを判断する(S21)。印刷予約フラグが「OFF」の場合、CPU41は印刷予約の設定中でないと判断する(S21:NO)。この場合、CPU41は高さ制御処理を行う(S22)。高さ制御処理では、CPU41はプラテン5の昇降を制御する。CPU41は処理をS23の処理に移行する。
【0066】
印刷予約の設定中の場合、プラテン5が
図3に示す印刷位置に位置する。プラテン5が
図3に示す印刷位置に位置する状態でプラテン5が昇降すると、印刷媒体Mがノズル面91に接触する可能性がある。このため、CPU41は、印刷予約の設定中の場合には高さ制御処理の実行を禁止する。よって、印刷予約の設定中の場合(S21:YES)、CPU41は高さ制御処理(S22)および印刷準備動作(S23)をスキップして、印刷データに基づいて印刷動作を行う(S24)。S24の処理では、CPU41は、プラテン5が
図3に示す印刷位置に位置する状態で
図4に示す副走査モータ18、主走査モータ19、およびヘッド駆動部17を制御し、印刷媒体Mに印刷画像を印刷する。CPU41は、
図4に示す副走査モータ18を制御し、プラテン5を
図3に示す印刷位置から
図2に示すセット位置に搬送する。CPU41は処理をS10の処理に戻す。
【0067】
図9を参照し、高さ制御処理を説明する。高さ制御処理が開始されると、CPU41は、
図8に示すS16の処理で受信が完了した印刷データが高さ情報を含むかに基づいて、印刷データが特定印刷データであるか判断する(S31)。通常印刷データの場合(S31:NO)、CPU41は処理をS41の判断に移行する。
【0068】
特定印刷データの場合(S31:YES)、CPU41はフラッシュメモリ44を参照し、指定モードに許容モードが設定されているかを判断する(S32)。指定モードは、プラテン高さがデータ指定高さになるようにプラテン5を昇降させるかを決定するためのモードである。ユーザは入力部46を操作し、指定モードとして、許容モードおよび禁止モードのいずれかをあらかじめ設定する。
【0069】
許容モードは、プラテン高さがデータ指定高さになるようにプラテン5を昇降させることを許容するモードである。禁止モードは、プラテン高さがデータ指定高さになるようにプラテン5を昇降させることを禁止するモードである。このため、指定モードに禁止モードが設定されている場合、プリンタ1は、現在のプラテン高さがデータ指定高さと異なっていても現在のプラテン高さを維持する。したがって、指定モードに禁止モードが設定されている場合(S32:NO)、CPU41はS33~S36の処理をスキップし、処理をS41の判断に移行する。
【0070】
指定モードに許容モードが設定されている場合(S32:YES)、CPU41は
図4に示すエンコーダ181からの検出結果に基づいて、プラテン5が
図2に示すセット位置に位置するかを判断する(S33)。プラテン5がセット位置に位置する場合(S33:YES)、CPU41は処理をS36の処理に移行する。
【0071】
例えば、ユーザが入力部46を操作して、
図2に示すセット位置以外への搬送指示を入力した場合、プラテン5はセット位置に位置しない。このため、CPU41が通信部48を介して特定印刷データを受信したときに、プラテン5がセット位置に存在しない場合がある。この場合、CPU41はセット位置と印刷位置との間のうち印刷位置とは異なる位置にプラテン5が位置する状態で、プラテン5をデータ指定高さに移動させる。すなわち、CPU41は、印刷位置にプラテン5が位置する状態でプラテン5をデータ指定高さに昇降させることを禁止する。CPU41は、印刷位置に加えて、セット位置と印刷位置との間の途中位置にプラテン5が位置する状態でプラテン5をデータ指定高さに昇降させることも禁止する。「セット位置と印刷位置との間」には、セット位置と印刷位置との間の途中位置に加えて、セット位置および印刷位置も含まれる。
【0072】
プラテン5がセット位置に位置しない場合(S33:NO)、CPU41は
図4に示す入力部46を介して
図2に示すセット位置への搬送指示を受け付けたか判断する(S34)。セット位置への搬送指示を受け付けていない場合(S34:NO)、CPU41はS34の判断を繰り返す。セット位置への搬送指示を受け付けた場合(S34:YES)、CPU41は
図4に示すエンコーダ181からの検出結果に基づいて副走査モータ18を制御し、プラテン5を
図2に示すセット位置まで搬送する(S35)。CPU41は処理をS36の処理に移行する。
【0073】
CPU41は、
図4に示すエンコーダ161からの検出結果に基づいて昇降モータ16を制御し、プラテン高さがデータ指定高さになるように
図2に示すプラテン5を昇降させる(S36)。CPU41は入力部46を介して昇降指示を受け付けたか判断する(S41)。昇降指示を受け付けていない場合(S41:NO)、CPU41は処理をS45の判断に移行する。
【0074】
ユーザは、例えば
図7に示す選択画面50において、入力部46を操作して、メニュー指定高さを指定する昇降指示をプリンタ1に入力する。昇降指示を受け付けた場合(S41:YES)、CPU41は、
図4に示すエンコーダ161からの検出結果に基づいて昇降モータ16を制御し、プラテン高さがメニュー指定高さになるように
図2に示すプラテン5を昇降させる(S42)。例えば、メニュー指定高さとして、「A」が選択された場合、CPU41はプラテン高さが「A」になるようにプラテン5を昇降させる。その後、例えば、メニュー指定高さとして、「データ指定高さ」が選択された場合、CPU41はプラテン高さが「データ指定高さ」になるようにプラテン5を昇降させる。
【0075】
CPU41はメニュー指定高さに基づいて、現在のプラテン高さがデータ指定高さであるか判断する(S43)。CPU41は
図4に示すエンコーダ161からの検出結果に基づいて現在のプラテン高さがデータ指定高さであるか判断してもよい。現在の指定高さは、S42の処理によってプラテン5が昇降された後のプラテン高さである。なお、印刷データが通常印刷データの場合、データ指定高さが存在しないので、CPU41はS43の処理をスキップして処理をS45の判断に移行する。
【0076】
メニュー指定高さとして「データ指定高さ」が選択されている場合、CPU41は現在のプラテン高さがデータ指定高さであると判断する(S43:YES)。この場合、CPU41はS44の処理をスキップして処理をS45の処理に移行する。
【0077】
メニュー指定高さとして、「データ指定高さ」以外のプラテン高さが選択されている場合、CPU41は現在のプラテン高さがデータ指定高さとは異なると判断する(S43:NO)。この場合、CPU41は報知処理を行う(S44)。報知処理では、CPU41は現在のプラテン高さがデータ指定高さと異なることを示す報知を行う。
【0078】
報知処理では、例えば、CPU41は、
図5に示すスタンバイ画面71において、プラテン高さ表示領域75の表示色を第一色(例えば黒色)から、第一色とは異なる第二色(例えば黄色)に変更してもよい。CPU41は、プラテン高さ表示領域75の点灯態様を点滅していない状態から点滅状態に変更してもよい。CPU41は、スタンバイ画面71に文字を表示してもよい。CPU41は、報知音をスピーカ(図示略)から出力してもよい。CPU41は、通信部48によって外部機器に報知情報を送信してもよい。
【0079】
CPU41は入力部46を介して印刷指示を受け付けたか判断する(S45)。印刷指示を受け付けていない場合(S45:NO)、CPU41は印刷指示を受け付けるまでS41の判断を繰り返す。印刷指示を受け付けた場合(S45:YES)、CPU41は処理を
図8に示すメイン処理に戻す。この場合、プラテン高さが、S36の処理によってデータ指定高さになった状態またはS42の処理でメニュー指定高さになった状態で
図8に示す印刷準備動作(S23)が行われ、印刷準備動作に引き続いて印刷動作(S24)が行われる。プラテン高さがデータ指定高さになった状態で印刷準備動作が行われると、印刷データの作成者が求める品質の印刷結果物が作成される。
【0080】
以上説明したように、上記実施形態によれば、特定印刷データが通信部48によって受信された場合、CPU41はS36の処理によってプラテン5をデータ指定高さに移動させる。このため、例えば、ユーザは、求める品質に応じた高さ情報を印刷データに含ませることで、求める品質の印刷結果物を得ることができる。よって、プリンタ1は、ユーザが求める品質の印刷結果物を作成することに貢献する。
【0081】
CPU41は、セット位置と印刷位置との間のうちセット位置とは異なる位置にプラテンが位置する状態で、特定印刷データを受信した場合、S35の処理によってプラテン5をセット位置に移動させる。CPU41は、S36の処理において、セット位置と印刷位置との間のうち印刷位置とは異なる位置にプラテン5が位置する状態で、プラテン5をデータ指定高さに移動させる。これによれば、プリンタ1は載置面51上の印刷媒体Mがノズル面91に接触することを抑制することに貢献する。さらに、プラテン5が印刷位置に位置する状態でプラテン5が昇降すると、載置面51上の印刷媒体Mが検出位置V1よりも上方に位置しても、高さセンサ47は印刷媒体Mを検出しない可能性がある。プリンタ1は、印刷位置とは異なる位置にプラテン5が位置する状態で、プラテン5をデータ指定高さに移動させる。このため、プリンタ1は、載置面51上の印刷媒体Mが高さセンサ47によって検出されないことを抑制することに貢献する。
【0082】
CPU41は、S44の処理において、現在のプラテン高さがデータ指定高さと異なる場合、現在のプラテン高さがデータ指定高さと異なることを示す報知を行う。これによれば、プリンタ1は現在のプラテン高さがデータ指定高さと異なることをユーザに知らせることに貢献する。このため、ユーザは、印刷データの作成者が求める品質とは異なる品質の印刷結果物がプリンタ1によって作成されることが分かる。
【0083】
CPU41は、許容モードが設定された状態で、特定印刷データが通信部48によって受信された場合、S36の処理を行う。CPU41は、禁止モードが設定された状態で、特定印刷データが通信部48によって受信された場合、S36の処理を行わない。これによれば、ユーザは、許容モードおよび禁止モードのいずれかを設定することで、特定印刷データが通信部48によって受信された場合にプラテン5をデータ指定高さに移動させるか否かを選択できる。よって、プリンタ1は、例えばユーザがプラテン高さを一定に維持したい場合に、プラテン5が現在のプラテン高さからデータ指定高さに移動することを抑制することに貢献する。
【0084】
上記実施形態において、ノズル911が本発明の「ノズル」に相当する。ノズル面91が本発明の「ノズル面」に相当する。ヘッド9が本発明の「ヘッド」に相当する。印刷媒体Mが本発明の「印刷媒体」に相当する。載置面51が本発明の「載置面」に相当する。プリンタ1の上下方向が本発明の「対向方向」に相当する。プリンタ1の前後方向が本発明の「移動方向」に相当する。プラテン5が本発明の「プラテン」に相当する。通信部48が本発明の「受信部」に相当する。CPU41が本発明の「制御部」および「コンピュータ」に相当する。データ指定高さが本発明の「指定高さ」に相当する。
図9に示すS36の処理が本発明の「移動処理」に相当する。
図9に示すS44の処理が本発明の「報知処理」に相当する。フラッシュメモリ44が本発明の「設定部」に相当する。
【0085】
本発明は、上記実施形態から種々変更されてもよい。例えば、プリンタ1は禁止モードを省略し、S32の判断を省略してもよい。プリンタ1はS43の判断、およびS44の報知処理を省略してもよい。この場合、プリンタ1はS41の判断およびS42の処理も省略してもよい。プリンタ1は印刷予約を省略し、S10~S21の処理を省略してもよい。この場合、CPU41はS22、S23、S24の処理を行うとよい。
【0086】
上記実施形態において、高さ情報は、プラテン高さを「A」、「B」、「C」で示さなくてもよい。例えば高さ情報は、プラテン高さを品質(「高品質」、「普通」等)で示してもよいし、ノズル面91と載置面51との間の上下方向の距離の数値(「2mm」等)で示してもよい。通常印刷データは、プラテン高さを指定しないことを示す情報を含んでもよい。この場合、プラテン高さを指定しないことを示す情報は、高さ情報には該当しない。
【0087】
上記実施形態では、CPU41は、セット位置と印刷位置との間の途中位置または印刷位置にプラテン5が位置する状態でプラテン5をデータ指定高さに昇降させることを禁止する。これに対し、CPU41は、プラテン5が印刷位置に位置する状態でプラテン5をデータ指定高さに昇降させてもよい。CPU41はセット位置と印刷位置との間の途中位置にプラテン5が位置する状態で、プラテン5をデータ指定高さに昇降させてもよい。例えば、CPU41は、プラテン5を、印刷準備動作中に昇降させてもよい。つまり、CPU41は、プラテン5を、セット位置から印刷位置に搬送しながら昇降させてもよい。この場合、CPU41はプラテン5の昇降開始から印刷動作が開始されるまでの時間を短縮することに貢献する。プラテン5が印刷準備動作中に昇降させる場合、CPU41はプラテン5が印刷位置に到達するまでに、プラテン5の昇降を完了することが好ましい。この場合、CPU41は、印刷媒体Mがノズル面91に接触することを抑制することに貢献する。
【0088】
上記実施形態において、外部機器が特定印刷データを送信する場合、画像データを送信する前に高さ情報を送信してもよい。S16の判断では、CPU41は高さ情報の受信が完了したかを判断してもよい。
【0089】
セット位置は、プラテン5の移動範囲の前端でなくてもよい。プラテン5は、セット位置と印刷位置とに同じ経路を通って往復しなくてもよい。例えば、プラテン5は、セット位置から印刷位置を経由して、筐体2の外に設けられた経路を通ってセット位置に戻ってもよい。この場合も、プラテン5は、セット位置と印刷位置との間を移動する。
【0090】
上記実施形態では、CPU41は、エンコーダ161からの検出結果に基づいてプラテン高さを制御する。これに対し、CPU41は、高さセンサ47からの検出結果に基づいてプラテン高さを制御してもよい。例えば、CPU41は、高さセンサ47によってプラテン5が検出される状態から検出されなくなったときのプラテン高さを基準として、プラテン高さを制御してもよい。高さセンサ47は、光センサに限定されず、機械式スイッチ、近接センサ等でもよい。プリンタ1は、高さセンサ47とは別に、プラテン高さを検出するためのセンサを備えてもよい。例えば、プリンタ1は「A」、「B」、「C」のそれぞれのプラテン高さにセンサを備えてもよい。プラテン搬送位置の制御方法もプラテン高さの制御方法と同様に変更されてもよい。例えば、プリンタ1はセット位置にセンサを備えてもよい。
【0091】
予約可能条件は、印刷データの受信中に限定されない。例えば、予約可能条件は、印刷データの受信中に加えて、または代えて、特定のメンテナンス動作中であってもよい。特定のメンテナンス動作とは、例えば接液動作、接液解除動作、および印刷後処理である。接液動作は、キャップをノズル面91に密着させ、且つキャップ内を液体で満たして液体をノズル面91に接触させる動作である。接液動作はヘッド9の温度を低下させるため等を目的として行われる。接液動作は、所定枚数の印刷媒体Mへの印刷動作が行われるたびに行われる。接液解除動作は、接液動作後、所定時間(例えば5分)経過すると行われる。接液解除動作は、キャップ内から液体を排出し、且つキャップをノズル面91から離れさせる動作である。なお、特定のメンテナンス動作に含まれないメンテナンス動作は、例えばヘッド9内におけるインク(例えば白インク)の循環動作、および接液動作後から接液解除動作までの所定時間の待機である。
【0092】
予約可能条件が特定のメンテナンス動作中を含む場合、例えば、CPU41は、S11の処理において、印刷データの受信が開始されたかに加えて、または代えて、特定のメンテナンス動作が開始されたか判断してもよい。CPU41は、S16の処理において、印刷データの受信が完了したかに加えて、または代えて、特定のメンテナンス動作が終了したか判断してもよい。つまり、CPU41はS11の処理において、予約可能条件が成立しているか判断し、S16の処理において、予約可能条件が成立しなくなったか判断してもよい。
【0093】
上記実施形態では、プリンタ1は、ボールねじ38とナット39によってプラテン5を上下方向に移動させる。これに対し、プリンタ1は他の機構でプラテン5を上下方向に移動させてもよい。同様に、プリンタ1は、上記実施形態と異なる機構でプラテン5を前後方向に移動させてもよい。
【0094】
CPU41の代わりに、マイクロコンピュータ、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が、プロセッサとして用いられてもよい。メイン処理は、複数のプロセッサによって分散処理されてもよい。ROM42、フラッシュメモリ44等の非一時的な記憶媒体は、情報を記憶する期間に関わらず、情報を留めておくことが可能な記憶媒体であればよい。非一時的な記憶媒体は、一時的な記憶媒体(例えば、伝送される信号)を含まなくてもよい。制御プログラムは、例えば、図示外のネットワークに接続されたサーバからダウンロードされて(すなわち、伝送信号として送信され)、ROM42またはフラッシュメモリ44に記憶されてもよい。この場合、制御プログラムは、サーバに備えられたHDD等の非一時的な記憶媒体に保存されていればよい。
【符号の説明】
【0095】
1 プリンタ
5 プラテン
9 ヘッド
41 CPU
42 ROM
43 RAM
44 フラッシュメモリ
48 通信部
51 載置面
91 ノズル面
911 ノズル