(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103091
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/405 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
H01R13/405
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007237
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】二戸 彩香
(72)【発明者】
【氏名】安藤 基泰
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE03
5E087EE14
5E087FF02
5E087GG03
5E087JJ03
5E087QQ04
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】バスバーの浮き上がりを生じ難くでき、かつ、バスバーにおいて接点障害を生じ難くできるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ1は、相手端子13と電気接続されるバスバー10をモールド成型によって樹脂と一体形成したコネクタ本体3を備える。バスバー10は、相手端子13に対する接点として、バスバー10の一部を突状に曲げることにより形成された突状接点部24と、コネクタ本体3のボディ11に埋め込まれるように、突状接点部24の内面に形成された係合部27と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手端子と電気接続されるバスバーをモールド成型によって樹脂と一体形成したコネクタ本体を備えたコネクタであって、
前記バスバーは、
前記相手端子に対する接点として、前記バスバーの一部を突状に曲げることにより形成された突状接点部と、
前記コネクタ本体のボディに埋め込まれるように、前記突状接点部の内面に形成された係合部と、を備えたコネクタ。
【請求項2】
前記係合部は、前記バスバーにおいて前記突状接点部を形成したとき、前記突状接点部と同時に前記バスバーに形成される、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記突状接点部は、前記バスバーの一部において肉厚を薄くすることにより形成された凹部を内面に備え、
前記係合部は、前記凹部の周縁の少なくとも一部に形成されている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記凹部は、長穴状の開口を有する形状に形成され、
前記凹部には、前記バスバーの幅方向に延びる一対の幅方向開口縁が対向配置されて設けられるとともに、前記幅方向開口縁と交差する方向に延びる一対の幅交差方向開口縁が対向配置されて設けられ、
前記係合部は、少なくとも前記幅方向開口縁に形成されている、請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記突状接点部及び前記係合部の組は、前記バスバーに複数設けられている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記突状接点部は、前記バスバーの先端寄りの位置に配置されている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記バスバーは、少なくとも一部が前記ボディに埋設されたバスバー本体部と、前記ボディから露出されるとともに前記バスバー本体部の延設方向に対して交差する方向に折り曲げられた形状に形成されたバスバー先端部と、を有し、
前記突状接点部及び前記係合部は、前記バスバー先端部に設けられている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記ボディは、前記バスバー先端部を載置するための座部を有し、
前記バスバー先端部は、前記座部に載置される部位において、前記座部と同一の幅及び奥行きとなる大きさに形成されている、請求項7に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記バスバー先端部は、長方形の板状に形成され、
前記突状接点部は、複数設けられる場合、前記バスバー先端部の長手方向に並んで配置されている、請求項7に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記相手端子は、前記バスバーと接触する板状部を有する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項11】
前記バスバーは、複数設けられる場合、前記コネクタ本体の平面方向に並び配置されている、請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、端子を樹脂でインサート成型することによって形成されたインサート成型品が周知である。端子は、ボンディングワイヤを接続するための接続板部を有する。接続板部には、ボンディングワイヤを溶着する溶着面の周囲に樹脂充填孔が複数形成されている。樹脂充填孔には、充填された樹脂によって隙間樹脂部が形成されている。樹脂充填孔は、逆截頭錐体状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の場合、インサート成型後、樹脂充填孔の周縁が隙間樹脂部に係合することから、接続板部の浮き上がりを生じ難くすることができている。しかし、接続板部に樹脂充填孔が形成されているので、インサート成型時に樹脂が溶着面に這い上がってしまう懸念がある。こうなると、接続板部の溶着面に樹脂が存在することになるため、接点障害等が発生してしまう可能性があった。
【0005】
本開示の目的は、バスバーの浮き上がりを生じ難くでき、かつ、バスバーにおいて接点障害を生じ難くできるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するコネクタは、相手端子と電気接続されるバスバーをモールド成型によって樹脂と一体形成したコネクタ本体を備えた構成であって、前記バスバーは、前記相手端子に対する接点として、前記バスバーの一部を突状に曲げることにより形成された突状接点部と、前記コネクタ本体のボディに埋め込まれるように、前記突状接点部の内面に形成された係合部と、を備えた。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、バスバーの浮き上がりを生じ難くでき、かつ、バスバーにおいて接点障害を生じ難くできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図6】
図6(a)~
図6(c)は、突状接点部及び係合部の成形手順図である。
【
図7】
図7は、従来の位置付けのバスバーの断面図である。
【
図9】
図9は、別例のバスバーの部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
[1]本開示のコネクタは、相手端子と電気接続されるバスバーをモールド成型によって樹脂と一体形成したコネクタ本体を備えた構成であって、前記バスバーは、前記相手端子に対する接点として、前記バスバーの一部を突状に曲げることにより形成された突状接点部と、前記コネクタ本体のボディに埋め込まれるように、前記突状接点部の内面に形成された係合部と、を備えた。
【0010】
本構成によれば、突状接点部の内部に収まるボディの隆起部に、突状接点部の内面の係合部を埋め込むという構造によって、バスバーをボディにしっかりと固定することが可能となる。これにより、バスバーをボディから浮き上がり難くすることが可能となる。また、バスバーに係合部を設けてボディに埋め込むというバスバーの浮き上がり防止の対策をとれば、バスバーに孔を形成せずに済む。このため、インサート成型時に樹脂がバスバーの上面に這い上がることがない。従って、バスバーにおいて接点障害を生じ難くすることも可能となる。
【0011】
[2]上記[1]において、前記係合部は、前記バスバーにおいて前記突状接点部を形成したとき、前記突状接点部と同時に前記バスバーに形成される。この構成によれば、バスバーに突状接点部を形成する加工時、突状接点部と係合部とを同時に形成することが可能となる。よって、バスバー製造の簡素化が可能となる。
【0012】
[3]上記[1]又は[2]において、前記突状接点部は、前記バスバーの一部において肉厚を薄くすることにより形成された凹部を内面に備え、前記係合部は、前記凹部の周縁の少なくとも一部に形成されている。この構成によれば、バスバーに突状接点部及び係合部を形成するに際しては、バスバーの裏面に単に凹部を形成し、そして、そのバスバーにおいて、凹部を含む部位を曲げるという加工で済む。よって、この点でバスバー製造が簡易であるといえる。
【0013】
[4]上記[3]において、前記凹部は、長穴状の開口を有する形状に形成され、前記凹部には、前記バスバーの幅方向に延びる一対の幅方向開口縁が対向配置されて設けられるとともに、前記幅方向開口縁と交差する方向に延びる一対の幅交差方向開口縁が対向配置されて設けられ、前記係合部は、少なくとも前記幅方向開口縁に形成されている。この構成によれば、凹部の形状を、長穴状の開口を有する簡素な形状とすることが可能となる。また、一対の係合部を対向配置するように設けたので、一対の係合部でボディを両側から挟み込んだ埋め込み形状とすることが可能となる。よって、係合部をボディにしっかりと埋め込むことも可能となる。
【0014】
[5]上記[1]から[4]のいずれかにおいて、前記突状接点部及び前記係合部の組は、前記バスバーに複数設けられている。この構成によれば、複数の係合部によってバスバーをボディに固定することが可能となるので、バスバーの浮き上がり防止に一層寄与する。
【0015】
[6]上記[1]から[5]のいずれかにおいて、前記突状接点部は、前記バスバーの先端寄りの位置に配置されている。この構成によれば、バスバーの先端からの浮き上がりを生じ難くすることが可能となるので、バスバーの浮き上がり防止に一層寄与する。
【0016】
[7]上記[1]から「6」のいずれかにおいて、前記バスバーは、少なくとも一部が前記ボディに埋設されたバスバー本体部と、前記ボディから露出されるとともに前記バスバー本体部の延設方向に対して交差する方向に折り曲げられた形状に形成されたバスバー先端部と、を有し、前記突状接点部及び前記係合部は、前記バスバー先端部に設けられている。この構成によれば、バスバー先端部をボディから浮き上がり難くすることが可能となる。
【0017】
[8]上記[7]において、前記ボディは、前記バスバー先端部を載置するための座部を有し、前記バスバー先端部は、前記座部に載置される部位において、前記座部と同一の幅及び奥行きとなる大きさに形成されている。この構成によれば、バスバー先端部は、ボディの座部に載置する形状の場合、例えば、座部と同様の面積でしか形成できない状況になり得る。しかし、バスバー先端部に係合部を設けたので、バスバー先端部にサイズ制限が生じても、バスバー先端部を座部にしっかりと固定することが可能となる。
【0018】
[9]上記[7]において、前記バスバー先端部は、長方形の板状に形成され、前記突状接点部は、複数設けられる場合、前記バスバー先端部の長手方向に並んで配置されている。この構成によれば、長方形の板状に形成されたバスバー先端部に対して、突状接点部を好適な位置にバランスよく配置することが可能となる。
【0019】
[10]上記[1]から[9]のいずれかにおいて、前記相手端子は、前記バスバーと接触する板状部を有する。この構成によれば、相手端子の板状部をバスバーに接触させる構造であっても、板状部の接触先が突状接点部であるので、これらの接触を取り易くすることが可能となる。
【0020】
[11]上記[1]から[10]のいずれかにおいて、前記バスバーは、複数設けられる場合、前記コネクタ本体の平面方向に並び配置されている。この構成によれば、コネクタ本体の形状を、バスバーがコネクタ本体の平面方向に並んだ簡素な形状とすることが可能となる。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際とは異なる場合がある。
【0022】
(コネクタ1)
図1に示すように、コネクタ1は、相手コネクタ2と電気接続されるコネクタ本体3を備える。本例の場合、例えば、コネクタ1が雄コネクタであり、相手コネクタ2が雌コネクタである。コネクタ1は、取付片4の孔5に入れたカラー6に留め具(図示略)を通しつつ、この留め具を取付け先(図示略)に固定することによって、取付け先に取付けられる。コネクタ1は、相手コネクタ2との間の隙間をシールするシール部材7が取付けられている。コネクタ1は、例えば、車載用であることが好ましい。
【0023】
(コネクタ本体3)
図1に示す通り、コネクタ本体3は、複数(本例は、6つ)のバスバー10を備える。コネクタ本体3は、バスバー10をモールド成型によって樹脂と一体形成した樹脂モールド成型品である。本例の場合、コネクタ本体3は、例えば、複数のバスバー10を金型にセットして樹脂を流し込むモールド成型によって、樹脂と一体形成されている。本例の場合、コネクタ本体3は、複数のバスバー10と、これらバスバー10が一体となった樹脂製のボディ11と、を有する。取付片4は、ボディ11に形成されている。
【0024】
(相手端子13)
図2に示すように、相手コネクタ2は、各々のバスバー10と電気接続される相手端子13を複数備える(
図2は、1つのみ図示)。相手端子13は、バスバー10との接触する板状部14を有する。相手端子13は、例えば、ばね等の付勢部15によって、バスバー10に向かって付勢されている。よって、相手端子13は、付勢部15の付勢力による所定接圧によって、バスバー10に押し付けられている。
【0025】
(バスバー10)
図1に示す通り、複数のバスバー10は、コネクタ本体3の平面方向(
図1のX-Y軸平面方向)に並び配置されている。本例の場合、6つ設けられたバスバー10は、紙面左側から順に、第1バスバー10a、第2バスバー10b、第3バスバー10c、第4バスバー10d、第5バスバー10e、第6バスバー10fとする。
【0026】
図2に示す通り、バスバー10は、少なくとも一部がボディ11に埋設されたバスバー本体部17と、ボディ11から露出されるとともにバスバー本体部17の延設方向(
図2のZ軸方向)に対して交差する方向(
図2のX軸方向)に折り曲げられた形状に形成されたバスバー先端部18と、を有する。本例の場合、バスバー本体部17及びバスバー先端部18は、直角に折り曲げ形成されている。
【0027】
図3に示すように、バスバー先端部18は、例えば、長方形の板状に形成されている。ボディ11は、バスバー先端部18を載置するための座部19を有する。バスバー先端部18は、座部19に載置される部位において、座部19と同一の幅及び奥行きとなる大きさに形成されている。なお、幅方向の大きさは、
図3に示すY軸方向の大きさである。また、奥行き方向の大きさは、
図3に示すX軸方向の大きさである。
【0028】
コネクタ本体3は、ボディ11の厚みによってバスバー10を支持する支持部20を有する。支持部20は、例えば、バスバー本体部17をボディ11の樹脂材によって両側から挟み込むことにより、バスバー本体部17を支持する。
【0029】
図4に示すように、各バスバー10の基端21は、第1バスバー10a、第2バスバー10b、及び第3バスバー10cの基端21aの群と、第4バスバー10d、第5バスバー10e、及び第6バスバー10fの基端21bの群と、がそれぞれコネクタ本体3の幅方向(
図4のY軸方向)に整列して配置されている。なお、各バスバー10において、バスバー本体部17の形状は、基端21a、21bを前述のように配列し得る形状に各々形成されている。なお、コネクタ本体3には、コネクタ1の取付け先(図示略)との間の隙間をシールするためのシール部材22が取付けられている。
【0030】
(突状接点部24)
図2及び
図3に示す通り、バスバー10は、相手端子13に対する接点として、バスバー10の一部を突状に曲げることにより形成された突状接点部24を備える。本例の場合、突状接点部24は、バスバー先端部18に設けられている。突状接点部24は、例えば、平面視において、バスバー10の幅方向(
図2のY軸方向)に延びる細長い形状に形成されている。
【0031】
突状接点部24は、例えば、バスバー10に複数(本例は、2つ)設けられている。突状接点部24は、2つの場合、一方を第1突状接点部24aとし、他方を第2突状接点部24bとする。突状接点部24は、複数設けられた場合、バスバー先端部18の長手方向(
図2のX軸方向)に並んで配置されている。突状接点部24は、例えば、バスバー10の先端寄りの位置に配置されることが好ましい。具体的には、第1突状接点部24a及び第2突状接点部24bのうち、第1突状接点部24aがバスバー先端部18において先端寄りの位置に配置されている。
【0032】
図2に示す通り、突状接点部24は、例えば、断面視において、半円弧状に形成されている。このように、バスバー先端部18は、バスバー10の内面において、突状接点部24を設けることによって形成される凹設部25を有する。凹設部25は、例えば、突状接点部24を曲げ加工によって形成したときにできる凹み部分である。突状接点部24の成型方法としては、例えば、曲げ加工の一種として、プレス加工が挙げられる。
【0033】
(突状接点部24の浮き防止構造)
図2及び
図5に示すように、バスバー10は、コネクタ本体3のボディ11に埋め込まれるように突状接点部24の内面に形成された係合部27を備える。係合部27は、例えば、金型開閉方向に対して交差する方向に突出したアンダーカット部である。係合部27は、例えば、バスバー10において突状接点部24を形成したとき、突状接点部24と同時にバスバー10に形成される。突状接点部24及び係合部27の組は、バスバー10に複数(本例は、2組)設けられている。本例の場合、係合部27は、バスバー先端部18に設けられている。
【0034】
係合部27は、例えば、突状接点部24の内面に形成された凹部28に設けられる。凹部28は、例えば、バスバー10の一部において肉厚を薄くすることによって形成されている。凹部28は、例えば、突状接点部24の裏面に設けられた凹設部25の略中央に配置されている。
【0035】
図5に示す通り、凹部28は、例えば、長穴状の開口を有する形状に形成されている。この場合、凹部28には、バスバー10の幅方向に延びる一対の幅方向開口縁29が対向配置されて設けられている。また、凹部28には、幅方向開口縁29と交差する方向(本例は、直交方向)に延びる一対の幅交差方向開口縁30が対向配置されて設けられている。係合部27は、凹部28の周縁の少なくとも一部に形成されている。一例を挙げると、係合部27は、凹部28の周縁のうち、少なくとも幅方向開口縁29に形成されることが好ましい。なお、本例の係合部27は、凹部28の周縁のうち、幅方向開口縁29にのみ形成されている。
【0036】
図2に示す通り、ボディ11は、突状接点部24の内部に収まって係合部27と係合する樹脂製の隆起部31を有する。隆起部31は、例えば、突状接点部24の内面の凹設部25及び凹部28の両方に入り込み、かつ、凹部28の開口周縁に形成された係合部27に係合される箇所をいう。このように、ボディ11は、隆起部31で突状接点部24の係合部27と係合されることにより、バスバー10と固定されている。
【0037】
次に、本実施形態のコネクタ1の作用について説明する。
(係合部27の成型方法)
図6(a)に示すように、バスバー先端部18がバスバー本体部17に対して略直交方向に曲げられたバスバー10を用意する。続いて、
図6(b)に示すように、バスバー先端部18の裏面に凹部28を形成する。凹部28の成型方法は、例えば、切削加工であることが好ましい。本例の場合、凹部28は、バスバー先端部18の裏面において2箇所に形成されている。
【0038】
図6(c)に示すように、凹部28の形成後、バスバー先端部18において、凹部28の形成箇所にプレス加工を施すことにより、突状接点部24を形成する。プレス加工は、例えば、形成したい突状接点部24の形状に応じた金型33を、バスバー10の裏面から凹部28に所定圧で押し当ててバスバー10を曲げる加工方法であることが好ましい。金型33は、例えば、表面が断面円弧状の型、具体的には、断面が半月状で左右がやや急に落ち込こんでいる形状の型であることが好ましい。
【0039】
本例の場合、金型33でバスバー10を曲げて突状接点部24が形成されるとき、バスバー10の曲げ変形によって、凹部28の開口に係合部27が形成される。このように、突状接点部24を形成するプレス加工によって、同時に係合部27が形成される。以上のようにして、突状接点部24の内面に係合部27を有するバスバー10を複数形成する。そして、これらバスバー10をインサート成型することにより、複数のバスバー10が樹脂と一体となったコネクタ本体3を製造する。
【0040】
(突状接点部24の浮き)
図7に、バスバー10に係合部27を形成していないコネクタ本体3を図示する。インサート成型後、冷却によって、ボディ11が収縮する。具体的には、インサート成型後、樹脂が冷却すると、ボディ11がバスバー10から離れる方向に収縮する。このため、バスバー10とボディ11との間に隙間が発生してしまう。こうなると、コネクタ1に相手コネクタ2を取付けたとき、バスバー10と相手端子13との接触状態が安定せず、通電の信頼性に影響が出る。
【0041】
(バスバー10に係合部27を設けた場合)
図8に示すように、バスバー10の裏面に係合部27を設けた場合、インサート成型によってコネクタ本体3を製造したとき、係合部27をボディ11に埋め込む構造としておくことが可能となる。このため、インサート成型後、冷却によってボディ11が同図の矢印A方向に収縮しても、係合部27がボディ11に埋め込まれているため、バスバー10の浮き上がりが生じ難くなる。よって、コネクタ1と相手コネクタ2とを安定した接触状態で取付けることが可能となる。
【0042】
ところで、バスバー10の一部をボディ11に埋め込むにあたっては、例えば、バスバー10に孔を形成して、その孔の周縁をボディ11に埋め込む構造も想定される。しかし、この構造の場合、バスバー10に孔が形成されるため、インサート成型時に樹脂がバスバー10の上面に漏れる懸念がある。こうなると、接点障害のおそれが生じてしまう。一方、本例の場合、バスバー10に孔を設けなくとも、バスバー10の一部をボディ11に埋め込むことが可能となる。よって、樹脂漏れの懸念、ひいては、接点障害の懸念を考えずに済む。
【0043】
また、例えば、バスバー10の一部をボディ11に埋め込むにあたっては、例えば、バスバー10の端部を所定量折り曲げて、その折り曲げ部分をボディ11に埋め込む構造も想定される。しかし、この構造の場合、バスバー10の一部をボディ11に埋め込む曲げ部分として使用しなくてはならず、バスバー10の電気接点の面積を確保しようとすると、バスバー10を大きめのサイズとする必要が生じる。このため、バスバー10の材料使用量が増えてしまため、コスト面で不利となる。一方、本例の場合、バスバー10の裏面の一部をボディ11に埋め込むので、バスバー10の材料使用量が増えてしまうことがない。
【0044】
(実施形態の効果)
上記実施形態の構成によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)コネクタ1は、相手端子13と電気接続されるバスバー10をモールド成型によって樹脂と一体形成したコネクタ本体3を備える。バスバー10は、相手端子13に対する接点として、バスバー10の一部を突状に曲げることにより形成された突状接点部24と、コネクタ本体3のボディ11に埋め込まれるように、突状接点部24の内面に形成された係合部27と、を備える。
【0045】
本構成によれば、突状接点部24の内部に収まるボディ11の隆起部31に、突状接点部24の内面の係合部27を埋め込むという構造によって、バスバー10をボディ11にしっかりと固定することが可能となる。これにより、バスバー10をボディ11から浮き上がり難くすることができる。また、バスバー10に係合部27を設けてボディ11に埋め込むというバスバー10の浮き上がり防止の対策をとれば、バスバー10に孔を形成せずに済む。このため、インサート成型時に樹脂がバスバー10の上面に這い上がることがない。従って、バスバー10において接点障害を生じ難くすることもできる。
【0046】
(2)係合部27は、バスバー10において突状接点部24を形成したとき、突状接点部24と同時にバスバー10に形成される。この構成によれば、バスバー10に突状接点部24を形成する加工時、突状接点部24と係合部27とを同時に形成することが可能となる。よって、バスバー10の製造を簡素化できる。
【0047】
(3)突状接点部24は、バスバー10の一部において肉厚を薄くすることにより形成された凹部28を内面に備える。係合部27は、凹部28の周縁の少なくとも一部に形成されている。この構成によれば、バスバー10に突状接点部24及び係合部27を形成するに際しては、バスバー10の裏面に単に凹部28を形成し、そして、そのバスバー10において、凹部28を含む部位を曲げるという加工で済む。よって、この点でバスバー10の製造が簡易であるといえる。
【0048】
(4)凹部28は、長穴状の開口を有する形状に形成されている。凹部28には、バスバー10の幅方向に延びる一対の幅方向開口縁29が対向配置されて設けられるとともに、幅方向開口縁29と交差する方向に延びる一対の幅交差方向開口縁30が対向配置されて設けられている。係合部27は、少なくとも幅方向開口縁29に形成されている。この構成によれば、凹部28の形状を、長穴状の開口を有する簡素な形状とすることができる。また、一対の係合部27を対向配置するように設けたので、一対の係合部27でボディ11を両側から挟み込んだ埋め込み形状とすることが可能となる。よって、係合部27をボディ11にしっかりと埋め込むこともできる。
【0049】
(5)突状接点部24及び係合部27の組は、バスバー10に複数設けられている。この構成によれば、複数の係合部27によってバスバー10をボディ11に固定することが可能となるので、バスバー10の浮き上がり防止に一層寄与する。
【0050】
(6)突状接点部24は、バスバー10の先端寄りの位置に配置されている。この構成によれば、バスバー10の先端からの浮き上がりを生じ難くすることが可能となるので、バスバー10の浮き上がり防止に一層寄与する。
【0051】
(7)バスバー10は、少なくとも一部がボディ11に埋設されたバスバー本体部17と、ボディ11から露出されるとともにバスバー本体部17の延設方向に対して交差する方向に折り曲げられた形状に形成されたバスバー先端部18と、を有する。突状接点部24及び係合部27は、バスバー先端部18に設けられている。この構成によれば、バスバー先端部18をボディ11から浮き上がり難くすることができる。
【0052】
(8)ボディ11は、バスバー先端部18を載置するための座部19を有する。バスバー先端部18は、座部19に載置される部位において、座部19と同一の幅及び奥行きとなる大きさに形成されている。この構成によれば、バスバー先端部18は、ボディ11の座部19に載置する形状の場合、例えば、座部19と同様の面積でしか形成できない状況になり得る。しかし、バスバー先端部18に係合部27を設けたので、バスバー先端部18にサイズ制限が生じても、バスバー先端部18を座部19にしっかりと固定することができる。
【0053】
(9)バスバー先端部18は、長方形の板状に形成されている。突状接点部24は、複数設けられる場合、バスバー先端部18の長手方向に並んで配置されている。この構成によれば、長方形の板状に形成されたバスバー先端部18に対して、突状接点部24を好適な位置にバランスよく配置することができる。
【0054】
(10)相手端子13は、バスバー10と接触する板状部14を有する。この構成によれば、相手端子13の板状部14をバスバー10に接触させる構造であっても、板状部14の接触先が突状接点部24であるので、これらの接触を取り易くすることができる。
【0055】
(11)バスバー10は、複数設けられる場合、コネクタ本体3の平面方向に並び配置されている。この構成によれば、コネクタ本体3の形状を、バスバー10がコネクタ本体3の平面方向に並んだ簡素な形状とすることができる。
【0056】
(他の実施形態)
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0057】
・
図9に示すように、係合部27は、バスバー10の裏面において幅方向全域に形成されてもよい。この場合、係合部27を長く形成することが可能となるため、係合部27をボディ11にしっかりと埋め込むのに効果が高くなる。
【0058】
・突状接点部24の形状は、断面半円弧状に限定されず、例えば、断面三角形状や断面台形形状など、他の形状に変更してもよい。
・係合部27は、凹部28ではなく、例えば凹設部25の周縁に形成されてもよい。
【0059】
・バスバー先端部18は、座部19に載置されることに限定されず、例えば、ボディ11のフラットな面に載置されてもよい。
・バスバー10の形状は、真っ直ぐに延びた板状としてもよい。このように、バスバー10の形状は、他の形状に適宜変更してもよい。
【0060】
・バスバー先端部18の形状は、長方形の板状に限定されず、例えば、円形状としてもよい。また、バスバー先端部18は、例えば、長方形の板の先端に円板部を有する形状としてもよい。
【0061】
・バスバー10を複数設ける場合、コネクタ本体3は、コネクタ本体3においてバスバー10を高さ方向に並べて配置した形状としてもよい。
・バスバー10は、コネクタ本体3に1つのみ設けられた構成でもよい。
【0062】
・突状接点部24及び係合部27の組は、複数組とされることに限定されず、例えば1組のみとしてもよい。
・突状接点部24及び係合部27は、同時形成されることに限らず、別工程で形成されてもよい。
【0063】
・凹部28の平面視形状は、長孔状に限定されず、例えば、円形状や正四角形状など、他の形状に変更してもよい。
・凹部28の周縁全てに係合部27を形成してもよい。
【0064】
・凹部28は、例えばバスバー10の幅方向において複数並ぶように形成されてもよい。
・相手端子13は、付勢部15の付勢力によってバスバー10に接触する構造に限定されず、例えば、ボルト等の締結部材によってバスバー10に固定される構造でもよい。
【0065】
・本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0066】
1 コネクタ
2 相手コネクタ
3 コネクタ本体
4 取付片
5 孔
6 カラー
7 シール部材
10 バスバー
10a 第1バスバー
10b 第2バスバー
10c 第3バスバー
10d 第4バスバー
10e 第5バスバー
10f 第6バスバー
11 ボディ
13 相手端子
14 板状部
15 付勢部
17 バスバー本体部
18 バスバー先端部
19 座部
20 支持部
21 基端
21a 基端
21b 基端
22 シール部材
24 突状接点部
24a 第1突状接点部
24b 第2突状接点部
25 凹設部
27 係合部
28 凹部
29 幅方向開口縁
30 幅交差方向開口縁
31 隆起部
33 金型