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特開2024-103094情報処理装置、照明装置、情報処理システムおよび情報処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103094
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】情報処理装置、照明装置、情報処理システムおよび情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06V 10/60 20220101AFI20240725BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240725BHJP
   G06T 7/90 20170101ALI20240725BHJP
【FI】
G06V10/60
G06T7/00 660Z
G06T7/90 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007242
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 諒
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 靖弘
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA06
5L096BA02
5L096BA18
5L096CA02
5L096DA02
5L096GA40
5L096GA51
5L096HA08
(57)【要約】
【課題】検出対象の検出精度を向上させること。
【解決手段】実施形態に係る情報処理装置は、取得部と、算出部と、検出部とを具備する。取得部は、画像と、画像の撮像範囲の光環境に関する環境情報を取得する。算出部は、取得部によって取得された画像から検出対象となる対象物の検出スコアを算出する。検出部は、算出部によって算出された検出スコアと環境情報に応じて設定した閾値との比較結果に基づいて、画像から前記対象物を検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像と、前記画像の撮像範囲の光環境に関する環境情報とを取得する取得部と;
前記取得部によって取得された前記画像から検出対象となる対象物の検出スコアを算出する算出部と;
前記算出部によって算出された前記検出スコアと前記環境情報に応じて設定した閾値との比較結果に基づいて、前記画像から前記対象物を検出する検出部と;
を具備する、情報処理装置。
【請求項2】
前記算出部は、
前記対象物である人物に関する検出スコアを算出し、
前記検出部は、
前記対象物として人物を検出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記検出部は、
前記環境情報に含まれる前記撮像範囲の照度に応じて設定した前記閾値を用いて、前記対象物を検出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記検出部は、
前記環境情報に含まれる前記撮像範囲の色温度に基づいて設定した前記閾値を用いて、前記対象物を検出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記検出部は、
前記撮像範囲の色温度が所定範囲から逸脱する場合に低い値に設定される前記閾値を用いて、前記対象物を検出する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一つに記載の情報処理装置と;
前記撮像範囲を照らす照明部と;
を具備する照明装置。
【請求項7】
画像と、前記画像の撮像範囲の光環境に関する環境情報とを取得し、
取得した前記画像から検出対象となる対象物の検出スコアを算出し、
算出した前記検出スコアと前記環境情報に応じて設定した閾値との比較結果に基づいて、前記画像から前記対象物を検出する、
情報処理システム。
【請求項8】
コンピュータが実行する情報処理方法であって、
画像と、前記画像の撮像範囲の光環境に関する環境情報とを取得する取得工程と;
前記取得工程によって取得された前記画像から検出対象となる対象物の検出スコアを算出する算出工程と;
前記算出工程によって算出された前記検出スコアと前記環境情報に応じて設定した閾値との比較結果に基づいて、前記画像から前記対象物を検出する検出工程と;
を含む情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、照明装置、情報処理システムおよび情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、周囲を撮像可能なカメラを備えるいわゆるカメラ付き照明装置が知られている。かかる照明装置は、検出対象の教示データを学習した検出モデルを用いて、カメラで撮影した画像から検出対象を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-169455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、検出対象の検出精度を向上させるうえで改善の余地があった。例えば、照度などの光環境によって検出対象の映り方が変化するため、同じ画角で検出対象を撮影した画像であっても、光環境によって検出される場合や、検出されない場合がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、検出対象の検出精度を向上させることができる情報処理装置、照明装置、情報処理システム、情報処理方法および情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る情報処理装置は、取得部と、算出部と、検出部とを具備する。前記取得部は、画像と、前記画像の撮像範囲の光環境に関する環境情報を取得する。前記算出部は、前記取得部によって取得された前記画像から検出対象となる対象物の検知スコアを算出する。前記検出部は、前記算出部によって算出された前記検知スコアと前記環境情報に応じて設定した閾値との比較結果に基づいて、前記画像から前記対象物を検出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、検出対象の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、情報処理装置の概要を示す図である。
図2図2は、情報処理システムのブロック図である。
図3図3は、情報処理装置のブロック図である。
図4図4は、画像情報記憶部の一例を示す図である。
図5図5は、閾値情報の具体例を示す図である。
図6図6は、閾値情報の具体例を示す図である。
図7図7は、閾値情報の具体例を示す図である。
図8図8は、閾値情報の具体例を示す図である。
図9図9は、情報処理システムのタイミングチャートである。
図10図10は、情報処理装置が実行するフローチャートである。
図11図11は、環境情報取得システムによる処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する実施形態に係る情報処理装置10は、画像と、画像の撮像範囲の光環境に関する環境情報を取得する取得部121と、取得部121によって取得された画像から検出対象となる対象物の検知スコアを算出する算出部122と、算出部122によって算出された検知スコアと環境情報に応じて設定した閾値との比較結果に基づいて、画像から対象物を検出する検出部124とを具備する。
【0010】
また、以下に説明する情報処理装置10において、算出部122は、対象物である人物に関する検出スコアを算出し、検出部124は、対象物として人物を検出する。
【0011】
また、以下に説明する情報処理装置10において、検出部124は、環境情報に含まれる撮像範囲の照度に応じて設定した閾値を用いて、対象物を検出する。
【0012】
また、以下に説明する情報処理装置10において、検出部124は、環境情報に含まれる撮像範囲の色温度に基づいて設定した閾値を用いて、対象物を検出する。
【0013】
また、以下に説明する情報処理装置10において、検出部124は、撮像範囲の色温度が所定範囲から逸脱する場合に低い値に設定される閾値を用いて、対象物を検出する。
【0014】
また、以下に説明する照明装置50は、情報処理装置10と、撮像範囲を照らす照明部51とを具備する。
【0015】
また、以下に説明する情報処理システム1は、画像と、画像の撮像範囲の光環境に関する環境情報を取得し、取得した画像から検出対象となる対象物の検出スコアを算出し、算出した検出スコアと環境情報に応じて設定した閾値との比較結果に基づいて、画像から対象物を検出する。
【0016】
また、以下に説明する情報処理方法は、コンピュータが実行する情報処理方法であって、画像と、画像の撮像範囲の光環境に関する環境情報を取得する取得工程と、取得工程によって取得された画像から検出対象となる対象物の検出スコアを算出する算出工程と、算出工程によって算出された検出スコアと環境情報に応じて設定した閾値との比較結果に基づいて、画像から対象物を検出する検出工程と、を含む。
【0017】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づき説明する。なお、以下に示す各実施形態は、本発明が開示する技術を限定するものではない。また、各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
(実施形態)
まず、図1を用いて、実施形態に係る情報処理装置の概要について説明する。図1は、情報処理装置の概要を示す図である。図1に示すように、実施形態に係る情報処理装置10は、例えば、オフィス等のフロアfに設定される照明装置50の内部に設けられる。
【0019】
照明装置50は、照明部51およびカメラ52を有するカメラ付き照明装置である。なお、照明部51は、例えば、LED(Light Emitting Diode)や、蛍光灯などの所定の光源を有する。なお、照明部51は、非常灯や殺菌灯であってもよい。また、カメラ52は、所定の撮像素子を有し、例えば、フロアfの天井から床面を撮影する。
【0020】
情報処理装置10は、カメラ52によって撮影された画像から対象物である人物Tを検出する画像処理装置である。後述するように、情報処理装置10は、人物が写る教示データを用いて各種機械学習を行った人物検出AI(Artificial Intelligence)を用いて、カメラ52で撮影した画像から人物Tを検出する。
【0021】
情報処理装置10は、人物検出AIによって算出される人物Tに関する検出スコアと閾値とを比較し、検出スコアが閾値を上回る場合に、画像から人物Tを検出する。
【0022】
ところで、このような人物検出AIを用いた画像処理において、同一の画角であっても、光環境によって異なる写り方の画像が得られることになる。そのため、同じ画角で人物を撮影した画像あっても、光環境によっては、人物を検出できる画像と、人物を検出できない画像が混在するおそれがある。
【0023】
これらを解決するための手段の一つとして、光環境がそれぞれ異なる環境下で人物を撮影した画像を教示データとして準備することが考えられるが、この場合には教示データの準備に多大な時間やコストが生じるおそれがあるため好ましくない。
【0024】
そこで、実施形態に係る情報処理装置10は、画像の撮影範囲の光環境に応じて検出スコアと比較する閾値を動的に変更することにした。具体的には、図1に示すように、まず、情報処理装置10は、画像および環境情報を取得する(ステップS1)。
【0025】
情報処理装置10は、カメラ52から画像を取得するとともに、例えば、画像を解析することで環境情報を取得する。環境情報は、画像の撮影範囲の光環境に関する情報であり、照度や、色温度等に関する情報を含む。
【0026】
情報処理装置10は、画像に含まれる各画素の照度、色温度等に関する値を環境情報として取得する。なお、情報処理装置10は、光環境を測定するセンサや、照明部51の照明状態等に関する情報を環境情報として取得するようにしてもよい。
【0027】
つづいて、情報処理装置10は、取得した画像および人物検出AIを用いて検出スコアを算出する(ステップS2)。情報処理装置10は、人物検出AIによって教示データと取得した画像とを比較することで検出スコアを算出する。
【0028】
ここで、検出スコアは、教示データと画像との類似度を示し、検出スコアが高いほど、教示データと画像が類似することを示す。
【0029】
つづいて、情報処理装置10は、環境情報に応じて検出スコアと比較する閾値を設定する(ステップS3)。情報処理装置10は、詳細は後述するが、環境情報と閾値とを対応付けたテーブルを参照することで、現在の環境情報に応じた閾値を設定する。例えば、閾値は、画像の撮影範囲の照度が低い場合等に低い値に設定される。
【0030】
つまり、情報処理装置10は、人物Tを検出するために適していない光環境であるほど閾値を低く設定し、逆に、画像から人物Tを検出するために適した光環境である場合ほど閾値を高く設定する。
【0031】
その後、情報処理装置10は、光環境に応じて設定した閾値と、人物検出AIを用いて算出した検出スコアを比較し、画像から人物Tを検出する(ステップS4)。情報処理装置10は、検出スコアが閾値を上回る場合に、画像から人物Tを検出し、検出スコアが閾値以下である場合に、画像から人物Tが検出できないと判定する。
【0032】
このように、実施形態に係る情報処理装置10では、光環境に応じて閾値を動的に設定することにより、光環境に応じて検出対象を適切に検出することができる。つまり、情報処理装置10は、光環境に応じて閾値を下げることで、対象物の検出漏れを抑制することができ、光環境に応じて閾値をあげることで、対象物の誤検出を抑制することができる。
【0033】
したがって、実施形態に係る情報処理装置10によれば、検出対象の検出精度を向上させることができる。
【0034】
次に、図2を用いて、実施形態に係る情報処理システムの構成例について説明する。図2は、情報処理システムのブロック図である。実施形態に係る情報処理システム1は、例えば、オフィスビル等に導入される。
【0035】
図2に示すように、情報処理システム1は、複数の照明装置50と、管理者端末600とを有する。複数の照明装置50は、それぞれフロアf等に設置され、ネットワークNを通じて管理者端末600と接続される。
【0036】
管理者端末600は、例えば、オフィスビルを管理する管理者の端末装置である。管理者は、管理者端末600を通じて、各照明装置50の設定状態を管理する、あるいは、各照明装置50のカメラ52で撮影された画像等を確認することができる。
【0037】
この際、例えば、照明装置50に内蔵される情報処理装置10は、画像から検出対象である人物Tを検出した場合に、画像において人物Tの検出領域にマークを付けた画像を管理者端末600に送る。これにより、管理者は、各フロアfにおける人物Tの存在状況を容易に把握することができる。
【0038】
なお、図2に破線で示すように、情報処理システム1は、各照明装置50のカメラ52が撮影する撮像範囲の光環境に関する環境情報を取得する環境情報取得システム700を備えるようにしてもよい。環境情報取得システム700は、各カメラ52の撮影範囲の照度、色温度等を計測するセンサによって構成され、センサの計測結果を環境情報として取得する。
【0039】
また、環境情報取得システム700は、照明装置50の情報処理装置10へ取得した環境情報をネットワークNを通じて提供する。
【0040】
次に、図3を用いて、実施形態に係る情報処理装置10の構成例について説明する。図3は、情報処理装置10のブロック図である。図3に示すように、情報処理装置10は、通信部110と、制御部120と、記憶部130とを有する。
【0041】
通信部110は、例えば、所定の通信回路またはNIC(Network Interface Card)等によって実現される。
【0042】
記憶部130は、例えば、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、HDD、光ディスク等の記憶装置である。図3に示す例において、記憶部130は、画像情報記憶部131、人物検出AI記憶部132、閾値情報記憶部133を有する。
【0043】
画像情報記憶部131は、カメラ52によって撮影された画像に関する情報を記憶する記憶部である。図4は、画像情報記憶部131の一例を示す図である。図4に示すように、画像情報記憶部131は、「画像ID」、「画像データ」、「座標情報」、「検出スコア」、「環境情報」、「フラグ」などといった項目の情報を互いに対応付けて記憶する。
【0044】
「画像ID」は、各画像を識別するための識別子であり、「画像データ」は、対応する画像IDによって識別される画像のデータ(データ本体)である。「座標情報」は、検出スコアの算出対象となった画像内の座標(領域)を示し、「検出スコア」は、対応する座標情報が示す座標の検出スコアを示す。
【0045】
「環境情報」は、対応する座標情報が示す座標の環境情報を示し、「フラグ」は、対応する座標において人物Tを検出したか否かを示すフラグであり、情報処理装置10が人物Tを検出した場合に「1」、人物Tを検出していない場合に「0」となる。
【0046】
図3の説明に戻り、人物検出AI記憶部132について説明する。人物検出AI記憶部132は、人物検出AIを記憶する。人物検出AIは、検出対象が写る画像を教示データとして学習したAIである。
【0047】
閾値情報記憶部133は、閾値情報を記憶する。閾値情報は、画像から人物Tを検出する際に用いられる閾値に関する情報であり、人物検出AIによって算出された検出スコアと比較する閾値に関する情報である。
【0048】
ここで、図5図8を用いて、閾値情報の具体例について説明する。図5図8は、閾値情報の具体例を示す図である。図5に示す例において、閾値情報は、照度に対して閾値を対応付けたテーブルに関する情報である。
【0049】
図5に示す例では、照度が「0~100(lx)」である場合の閾値が「0.3」であり、照度が「100~500(lx)」である場合の閾値が「0.5」、照度が「500~1000(lx)」である場合の閾値が「0.6」である場合を示す。
【0050】
つまり、図5に示す例では、照度が低下するにつれて、閾値が段階的に低い値に設定されることを示している。
【0051】
次に、図6図8を用いて、理想環境との差分に応じて閾値を設定する際に利用される閾値情報について説明する。図6に示すように、理想環境に関する情報と、当該理想環境における閾値のペアを閾値情報として記憶する。
【0052】
同図に示す例では、照度が「1000(lx)」であり、基準色(R;G;B)がそれぞれ「100;100;100」を理想環境として、その際の閾値が「0.8」である場合を示している。
【0053】
つづいて、図7および図8を用いて、理想環境からの差分と閾値との関係性について説明する。図7では、理想環境と、現在の照度との差分である照度差と、閾値の補正値との関係を示している。
【0054】
図7に示すように、照度差「0」を基準として、照度差の絶対値が大きくなるにつれて、補正値の絶対値が段階的に増加する。例えば、同図に示す例では、照度差「+500(lx)」である場合の補正値が「-0.2」である。そのため、この場合の閾値は、理想環境の閾値である「0.8」に対して「-0.2」を加算し、「0.6」となる。
【0055】
また、図8では、理想環境における基準色(R;G;B)との差分と補正値との関係性を示している。なお、同図に示す色差(R)、色差(G)、色差(B)は、RGBそれぞれの理想環境との差を示している。
【0056】
同図に示す例では、図7の照度差と同様に、色差(R)、色差(G)、色差(B)それぞれの差分の絶対値が大きくなるにつれて、補正値の絶対値が段階的に大きくなる場合を示している。
【0057】
なお、図5図8に示した各閾値情報は、テーブルに限定されず、関数であってもよい。この場合、関数は、線形関数であってもよく、指数関数であってもよい。すなわち、閾値情報を関数とする場合には、環境情報に応じて連続的に閾値を設定することができる。
【0058】
また、各閾値情報は、各種シミュレーション等を通じて予め導出されたものを使用することができる。また、図6図8に示した理想環境に関する閾値情報については、例えば、画像が撮影される環境に応じて設定するようにしてもよい。この場合、例えば、照明装置50が設置されるフロアfを複数の光環境下で撮影した画像を用いてこれらを決定するようにしてもよい。
【0059】
また、閾値情報を登録する際には、フロアf等の施設の照明設計情報と現在の照明点灯状態を基に閾値が変化するように各閾値等を予め設定しておくようにしてもよい。この場合、後述する設定部123では、照明装置50の点灯状態に連動して動的に閾値を設定することになる。
【0060】
図3の説明に戻り、制御部120について説明する。制御部120は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。
【0061】
制御部120は、取得部121と、算出部122と、設定部123と、検出部124と、出力部125とを有する。制御部120の各機能は、例えば、制御部120のCPUが制御部120のRAM、ROM、または記憶部130に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0062】
なお、取得部121、算出部122、設定部123、検出部124および出力部125は、一部または全部がASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。
【0063】
取得部121は、画像と、画像の撮像範囲の光環境に関する環境情報を取得する。取得部121は、カメラ52(図1参照)によって撮影された画像を取得する。また、取得部121は、取得した画像を解析することで、環境情報を取得する。
【0064】
例えば、取得部121は、各撮影範囲における各画素の照度、色温度等を環境情報として取得する。なお、取得部121は、図2に示した環境情報取得システム700から環境情報を取得するようにしてもよい。
【0065】
算出部122は、取得部121によって取得された画像から検出対象となる対象物の検出スコアを算出する。算出部122は、人物検出AIを用いて画像から検出スコアを算出する。
【0066】
算出部122は、画像の各領域それぞれについて検出スコアを算出し、各領域の検出スコアに関する情報を検出部124へ渡す。なお、人物検出AIは、検出対象である人物が写る画像を教示データとして学習した学習モデルである。
【0067】
また、後述するように、算出部122は、検出スコアの算出に先立ち、前回の画像と今回の画像との差分を算出し、算出した差分が閾値を超える場合に、検出スコアを算出する。つまり、今回の画像と前回の画像とが略一致する場合には、検出スコアの算出を省略する。これにより、検出スコアの算出処理を省略する分だけ、省エネに寄与することができる。
【0068】
設定部123は、撮像範囲の光環境に関する環境情報に応じて閾値を設定する。例えば、設定部123は、閾値情報記憶部133を参照し、取得部121によって取得された環境情報に対応する閾値を設定する。
【0069】
図5に示した例において、設定部123は、撮像範囲の照度が低くなるにつれて段階的に閾値を引き下げる。また、図6~8に示した例において、設定部123は、理想環境の環境情報と、撮像範囲の環境情報との差分に応じて段階的に閾値を引き下げることになる。
【0070】
また、設定部123は、撮像範囲の色温度に応じて閾値を設定するようにしてもよい。例えば、この場合、設定部123は、撮像範囲の色温度が所定範囲から逸脱する場合に、閾値を低く設定し、逸脱量の絶対値に応じて閾値を段階的に低く設定する。
【0071】
また、設定部123は、撮像範囲の色情報に応じて閾値を設定するようにしてもよい。ここでの閾値は、各画素のRGBに関する情報であり、設定部123は、RGBそれぞれの値を合算した合算値に応じて閾値を設定する。
【0072】
この場合、設定部123は、合算値が少なくなるにつれて閾値を低く設定する。すなわち、画像から十分な色情報が得られない場合には、検出スコアが低くなる傾向があり、これらを考慮することで、対象物の未検出を抑制することができる。
【0073】
次に、検出部124について説明する。検出部124は、算出部122によって算出された検出スコアと設定部123によって設定された閾値との比較結果に応じて、対象物を検出する。
【0074】
検出部124は、検出スコアが閾値を超える場合に、対象物を検出し、検出スコアが閾値以下である場合には、対象物として検出しない。この際、検出部124は、複数の閾値を用いて対象物を検出するようにしてもよい。
【0075】
例えば、検出部124は、第1閾値と第1閾値よりも大きい第2閾値とを用いて対象物を検出する。例えば、第1閾値は、検出スコアを画像に表示するか否かを判定するための閾値であり、第2閾値は、対象物を検出する際に使用される閾値である。なお、例えば、上述の設定部123は、環境情報に応じて第2閾値を設定するようにしてもよく、第1閾値および第2閾値の双方を設定するようにしてもよい。
【0076】
出力部125は、検出部124の検出結果に応じた出力データを、通信部110を介して、外部装置(例えば、管理者端末600)へ出力する。例えば、出力データは、検出スコアと、第1閾値、第2閾値との比較結果に応じて生成される。
【0077】
具体的には、検出スコアが第1閾値以上、第2閾値以下である場合、対象領域を青色の矩形で囲うとともに検出スコアが描画された出力データが生成される。また、検出スコアが第2閾値を超える場合、対象領域を赤色の矩形で囲うとともに検出スコアが描画された出力データが生成される。
【0078】
これにより、管理者端末600を閲覧する管理者は、矩形の色の違いによって、画像から対象物である人物を容易に認識することができる。
【0079】
次に、図9を用いて、実施形態に係る情報処理システム1による一連の処理手順について説明する。図9は、情報処理システム1のタイミングチャートである。なお、図9では、カメラ52、記憶部130、人物検出AI、環境情報取得システム700に関するそれぞれの処理タイミングについて説明する。ここでの人物検出AIによる処理は、算出部122、設定部123および検出部124による処理を含むものとする。また、環境情報取得システム700による処理は、情報処理装置10の取得部121で行うようにしてもよい。
【0080】
図9に示すように、カメラ52で映像を取得すると(ステップS11)、カメラ52から記憶部130へ映像が送信される(ステップS12)。つづいて、記憶部130は、人物検出AIおよび環境情報取得システム700に対して映像に含まれる各画像を送信する(ステップS13)。
【0081】
人物検出AIは、記憶部130から受け取った今回の画像と前回の画像とを比較し双方の画像の差分を検知する(ステップS14)。人物検出AIは、差分を検知した場合、ステップS15以降の処理に進み、差分が検知されなかった場合、今回の画像に関する処理を終了する。
【0082】
つづいて、人物検出AIは、差分が検知された画像に対して検出スコアを算出する(ステップS15)。一方、環境情報取得システム700では、人物検出AIによるステップS14~ステップS15までの処理と並行して、環境情報の評価、および、評価結果に応じて現在の環境情報を更新し(ステップS16)、更新後の環境情報を人物検出AIに渡す(ステップS17)。
【0083】
人物検出AIは、環境情報取得システム700から受け取った環境情報に応じて閾値を設定し(ステップS18)、人物検出処理を実行する(ステップS19)。なお、人物検出処理は、ステップS15にて算出した検出スコアと、設定した閾値とを比較することで行われる。
【0084】
次に、図10を用いて、実施形態に係る情報処理装置10が実行する情報処理の処理手順について説明する。図10は、実施形態に係る情報処理装置10が実行するフローチャートである。
【0085】
図10に示すように、まず、情報処理装置10は、画像を取得し(ステップS101)、取得した画像と前回の画像とに差分があるか否かを判定する(ステップS102)。情報処理装置10は、差分があると判定した場合(ステップS102:Yes)、検出スコアを算出する(ステップS103)。
【0086】
つづいて、情報処理装置10は、環境情報に基づいて閾値を設定し(ステップS104)、検出スコアが第1閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS105)。検出スコアが第1閾値よりも大きいと判定した場合(ステップS105:Yes)、情報処理装置10は、検出スコアが第2閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS106)。
【0087】
情報処理装置10は、検出スコアが第2閾値よりも大きいと判定した場合(ステップS106;Yes)、画像の対象領域に赤色で検出スコアと矩形を描画し(ステップS107)、処理を終了する。
【0088】
また、情報処理装置10は、ステップS106の判定において、検出スコアが第2閾値以下であると判定した場合(ステップS106;No)、すなわち、検出スコアが第1閾値以上、第2閾値以下であると判定した場合、画像の対象領域に青色で検出スコアと矩形を描画し(ステップS108)、処理を終了する。
【0089】
また、情報処理装置10は、ステップS102の判定において、差分なしと判定した場合(ステップS102;No)、あるいは、ステップS105の判定において、検出スコアが第1閾値以下と判定した場合(ステップS105;No)、以降の処理を省略して処理を終了する。
【0090】
次に、図11を用いて、環境情報取得システム700による処理手順について説明する。図11は、環境情報取得システム700による処理手順を示すフローチャートである。図11に示すように、まず、環境情報取得システム700は、画像を取得する(ステップS111)。
【0091】
つづいて、環境情報取得システム700は、画像から照度、色温度を含む環境情報を取得する(ステップS112)。つづいて、環境情報取得システム700は、情報処理装置10による環境情報の出力要求があったか否かを判定し(ステップS113)、出力要求があったと判定した場合(ステップS113;Yes)、情報処理装置10へ環境情報を出力し(ステップS114)、処理を終了する。
【0092】
また、環境情報取得システム700は、ステップS113の判定処理において、環境情報の出力要求がなかったと判定した場合(ステップS113;No)、処理を終了する。
【0093】
[変形例]
上述した実施形態では、画像から検出対象である人物を検出する場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、検出対象は、人物以外の任意の対象であってもよい。
【0094】
また、上述した実施形態では、カメラ付き照明装置である照明装置50の内部に情報処理装置10が配置される場合について説明したが、情報処理装置10は、照明装置50の外部に配置されるようにしてもよい。例えば、この場合、1つの情報処理装置10に対して複数の照明装置50が有線あるいは無線で接続されるようにしてもよく、情報処理装置10は各照明装置50とネットワーク接続されたサーバ装置として構成するようにしてもよい。
【0095】
また、上述した実施形態では、照明装置50がカメラ付き照明装置である場合について説明したが、照明装置はカメラ付き照明装置に限定されるものではなく、照明装置とカメラとは別々であってもよい。
【0096】
すなわち、この場合、照明部51および情報処理装置10を含む照明装置50に対して、監視カメラや防犯カメラ等の照明装置50とは独立したカメラが接続されるようにしてもよい。
【0097】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0098】
1 情報処理システム
10 情報処理装置
50 照明装置
51 照明部
52 カメラ
120 制御部
121 取得部
122 算出部
123 設定部
124 検出部
125 出力部
130 記憶部
131 画像情報記憶部
132 人物検出AI記憶部
133 閾値情報記憶部
600 管理者端末
700 環境情報取得システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11