(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103096
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】無機繊維シート
(51)【国際特許分類】
C04B 14/38 20060101AFI20240725BHJP
C04B 28/14 20060101ALI20240725BHJP
C04B 14/42 20060101ALI20240725BHJP
C04B 14/46 20060101ALI20240725BHJP
C04B 38/00 20060101ALN20240725BHJP
【FI】
C04B14/38 Z
C04B28/14
C04B14/42 Z
C04B14/46
C04B38/00 301C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007245
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】古江 友樹
(72)【発明者】
【氏名】高畑 正則
(72)【発明者】
【氏名】浅井 滋記
【テーマコード(参考)】
4G019
4G112
【Fターム(参考)】
4G019CA01
4G019CA03
4G019CB01
4G019CC01
4G112PA11
4G112PA15
4G112PA16
4G112PA17
4G112PA18
4G112PA29
(57)【要約】
【課題】不燃性、耐火性に優れ、無機物が主成分でありながら、柔軟性、強度が高く、ハンドリング性が良い無機繊維シートを提供する。
【解決手段】無機の結晶性繊維、無機の非晶質繊維、及び無機バインダーを含み、前記結晶性繊維の融点が1000℃以上である無機繊維シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機の結晶性繊維、無機の非晶質繊維、及び無機バインダーを含み、前記結晶性繊維の融点が1000℃以上である無機繊維シート。
【請求項2】
前記結晶性繊維の含有量が15~90(質量%)である請求項1に記載の無機繊維シート。
【請求項3】
前記無機繊維シートの嵩密度が0.2~0.6(g/cm3)である請求項1に記載の無機繊維シート。
【請求項4】
前記結晶性繊維がアルミナ繊維、ジルコニア繊維、シリカ繊維、SiC繊維からなる群から選択される1種以上である請求項1に記載の無機繊維シート。
【請求項5】
前記非晶質繊維がグラスウール、ガラス微細繊維、スラグウール、ロックウール、アルカリアースシリケートウール(AES)、リフラクトリーセラミックファイバー(RCF)からなる群から選択される1種以上である請求項1に記載の無機繊維シート。
【請求項6】
前記無機バインダーの含有量xが5~50(質量%)であり、
前記無機繊維シートの厚さyが0.2(mm)以上であり、
前記無機バインダーの含有量xと前記無機繊維シートの厚さyとの積が90(質量%・mm)以下である請求項1に記載の無機繊維シート。
【請求項7】
前記無機バインダーが二水石膏、半水石膏、無水石膏からなる群から選択される1種以上である請求項1に記載の無機繊維シート。
【請求項8】
前記無機繊維シート中の有機分の含有量が、1(質量%)以下である請求項1に記載の無機繊維シート。
【請求項9】
前記無機バインダーが二水石膏を含み、二水石膏の結晶相の比率が85質量%以上である請求項1に記載の無機繊維シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機繊維シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軽量で、不燃性を有するシート状の基材が知られている。例えば、特許文献1には、スラリーを湿式抄造したシートを熱圧成形して得られ、スラリー中に無機繊維と含水無機充填材と軽量骨材と樹脂エマルジョンを必須成分として含み、熱圧成形する際に表裏に樹脂エマルジョンが塗布・乾燥されてなる不燃性基材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術は不燃性に優れるが、柔軟性が乏しい。このため、曲げると、ひび割れ、シート破断が生じる問題がある。
【0005】
本発明の課題は、不燃性、耐火性に優れ、無機物が主成分でありながら、柔軟性、強度が高く、ハンドリング性が良い無機繊維シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、無機の結晶性繊維、無機の非晶質繊維、及び無機バインダーを含み、前記結晶性繊維の融点が1000℃以上である無機繊維シートである。
【0007】
第2の態様は、第1の態様において、前記結晶性繊維の含有量が15~90(質量%)である。
第3の態様は、第1または第2の態様において、前記無機繊維シートの嵩密度が0.2~0.6(g/cm3)である。
【0008】
第4の態様は、第1~3のいずれか1の態様において、前記結晶性繊維がアルミナ繊維、ジルコニア繊維、シリカ繊維、SiC繊維からなる群から選択される1種以上である。
第5の態様は、第1~4のいずれか1の態様において、前記非晶質繊維がグラスウール、ガラス微細繊維、スラグウール、ロックウール、アルカリアースシリケートウール(AES)、リフラクトリーセラミックファイバー(RCF)からなる群から選択される1種以上である。
【0009】
第6の態様は、第1~5のいずれか1の態様において、前記無機バインダーの含有量xが5~50(質量%)であり、前記無機繊維シートの厚さyが0.2(mm)以上であり、前記無機バインダーの含有量xと前記無機繊維シートの厚さyとの積が90(質量%・mm)以下である。
【0010】
第7の態様は、第1~6のいずれか1の態様において、前記無機バインダーが二水石膏、半水石膏、無水石膏からなる群から選択される1種以上である。
第8の態様は、第1~7のいずれか1の態様において、前記無機繊維シート中の有機分の含有量が、1(質量%)以下である。
第9の態様は、第1~8のいずれか1の態様において、前記無機バインダーが二水石膏を含み、二水石膏の結晶相の比率が85質量%以上である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、不燃性、耐火性に優れ、無機物が主成分でありながら、柔軟性、強度が高く、ハンドリング性が良い無機繊維シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0013】
実施形態の無機繊維シートは、無機の結晶性繊維、無機の非晶質繊維、及び無機バインダーを含む。
【0014】
無機の結晶性繊維は、融点が1000℃以上であることが好ましく、1500℃以上であることがより好ましい。無機の結晶性繊維は結晶構造を有することにより、融点が高いため、無機繊維シートの耐熱性を確保することができる。具体的には、無機の結晶性繊維の融点が1000℃以上であることにより、耐熱性を確保することができる。
【0015】
無機の非晶質繊維は、非結晶構造を有することにより、強度と粘りを両立させることができる。これにより、無機繊維シートの強度と柔軟性を確保することができる。無機の非晶質繊維の融点は、1000℃以下でもよく、1000℃以上でもよい。無機の非晶質繊維の融点の下限値は特に限定されないが、例えば300℃以上が挙げられる。
【0016】
実施形態の無機繊維シートは、無機の結晶性繊維及び無機の非晶質繊維を含む、少なくとも2種類の無機繊維で材料骨格を形成している。また、無機繊維からなる材料骨格に無機バインダーを添加することにより、後加工を要することなく、無機繊維シートを成形することができる。
【0017】
したがって、実施形態の無機繊維シートによれば、不燃性、耐火性に優れ、無機物が主成分でありながら、柔軟性、強度が高く、ハンドリング性が良い。
【0018】
無機の結晶性繊維は、各繊維が線状または針状であり、絡みにくい傾向がある。無機の非晶質繊維は、各繊維がウール状、樹枝状、または縮れ状であり、絡みやすい傾向がある。これらの無機繊維を組み合わせることにより、結晶性繊維の高い耐熱性を損ねることなく、強度と柔軟性を兼ね備えて、ハンドリング性に優れた無機繊維シートを形成することができる。
【0019】
実施形態の無機繊維シートにおける、無機の結晶性繊維の含有量は、15~90(質量%)であることが好ましい。無機の結晶性繊維の含有量が、上記の下限値以上であることにより、無機繊維シートの耐熱性を確保することができる。無機の結晶性繊維の含有量が、上記の上限値以下であることにより、無機繊維シートの柔軟性を確保することができる。
【0020】
無機の結晶性繊維の含有量の具体的な数値は、特に限定されないが、10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、40質量%、45質量%、50質量%、55質量%、60質量%、65質量%、70質量%、75質量%、80質量%、85質量%、90質量%、95質量%や、これらの中間の値が挙げられる。
【0021】
実施形態の無機繊維シートにおける、無機の非晶質繊維の含有量は、特に限定されないが、無機の非晶質繊維の含有量の具体的な数値として、1質量%、3質量%、5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、40質量%、45質量%、50質量%、55質量%、60質量%、65質量%、70質量%、75質量%、80質量%や、これらの中間の値が挙げられる。
【0022】
無機繊維シートの嵩密度は、0.2~0.6(g/cm3)であることが好ましい。無機繊維シートの嵩密度が、上記の下限値以上であることにより、無機繊維シートの強度を確保することができる。無機繊維シートの嵩密度が、上記の上限値以下であることにより、無機繊維シートの柔軟性を確保することができる。
【0023】
無機の結晶性繊維としては、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、シリカ繊維、SiC繊維からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。ここで、SiCは、シリコンカーバイド(炭化ケイ素)を表す。これらの結晶性繊維は、融点が高いため、無機繊維シートの耐熱性を確保することができる。
【0024】
無機の非晶質繊維としては、グラスウール、ガラス微細繊維、スラグウール、ロックウール、アルカリアースシリケートウール(AES)、リフラクトリーセラミックファイバー(RCF)からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。これらの非晶質繊維は、繊維の強度と粘りを両立させることができるため、無機繊維シートの強度と柔軟性を確保することができる。
【0025】
グラスウールやガラス微細繊維の原料となるガラスとしては、特に限定されないが、非晶質のシリカガラス、ケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルカリガラス、リサイクルガラス等が挙げられる。
【0026】
スラグウールやロックウールとしては、鉄鋼スラグ、高炉スラグ等のスラグ類や、玄武岩等の岩石類を主原料とした人造鉱物繊維である。これらは、スラグ類または岩石類のいずれか一方を主原料としてもよく、スラグ類及び岩石類の両方を合わせて主原料としてもよい。
【0027】
アルカリアースシリケートウール(AES)としては、シリカ(二酸化ケイ素)にカルシア(酸化カルシウム)やマグネシア(酸化マグネシウム)等のアルカリ土類酸化物を加えた原料から成形した人造鉱物繊維が挙げられる。
【0028】
リフラクトリーセラミックファイバー(RCF)としては、アルミナ(酸化アルミニウム)とシリカ(二酸化ケイ素)を主成分とした非晶質の人造鉱物繊維が挙げられる。
【0029】
実施形態の無機繊維シートにおける、無機バインダーの含有量は、5~50(質量%)であることが好ましい。無機バインダーの含有量が、上記の下限値以上であることにより、無機繊維シートの強度を確保して、ハンドリング性を良くすることができる。無機バインダーの含有量が、上記の上限値以下であることにより、無機繊維シートの柔軟性を確保することができる。
【0030】
無機バインダーの含有量の具体的な数値は、特に限定されないが、3質量%、5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、40質量%、45質量%、50質量%、55質量%や、これらの中間の値が挙げられる。
【0031】
無機繊維シートの厚さは、0.2(mm)以上であることが好ましい。無機繊維シートの厚さの上限値は、特に限定されないが、無機バインダーの含有量をxとし、無機繊維シートの厚さをyとして、xとyとの積が90(質量%・mm)以下であることが好ましい。すなわち、無機繊維シートの厚さの上限値が、90(質量%・mm)を無機バインダーの含有量x(質量%)で除して得られる厚さy(mm)以下であることが好ましい。
【0032】
無機繊維シートの厚さが、上記の下限値以上であることにより、無機繊維シートの強度を確保して、ハンドリング性を良くすることができる。無機繊維シートの厚さが厚い方が、耐火性には有利になる。無機繊維シートの厚さが、上記の上限値以下であることにより、無機繊維シートの柔軟性を確保することができる。具体的には、φ10mmの芯管に巻き付けても、ひび割れの発生を抑制することができる。
【0033】
無機バインダーとしては、特に限定されないが、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム等の金属の化合物であり、例えば、水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩等が挙げられる。より具体的には、石膏(二水石膏、半水石膏、無水石膏等を含む総称)、アルミナゾル等が挙げられる。
【0034】
無機バインダーが二水石膏、半水石膏、無水石膏からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。これらの無機バインダーは、耐熱温度が高いため、無機繊維シートの耐熱性を確保することができる。また、これらの無機バインダーは、低コストで、入手が容易である。
【0035】
二水石膏は、硫酸カルシウム二水和物(CaSO4・2H2O)であり、半水石膏は、硫酸カルシウム半水和物(CaSO4・0.5H2O)であり、無水石膏は、硫酸カルシウム(CaSO4)の無水塩である。
【0036】
二水石膏は加熱により水分を失い、半水石膏に変化することができる。半水石膏は水と化学反応することにより、二水石膏に変化することができる。無水石膏には、可溶性無水石膏(III型無水石膏)と不溶性無水石膏(II型無水石膏)の区別が知られている。
【0037】
III型無水石膏は、例えば半水石膏を比較的低温(200℃程度)で加熱脱水して得られ、吸湿性が強いため、水分を吸収して、半水石膏に変化しやすい。II型無水石膏は、半水石膏を比較的高温(300℃以上)で焼成して得られ、水分に対して安定性が高く、容易に水和しにくい。
【0038】
無機バインダーが二水石膏を含む場合は、二水石膏の結晶相の比率が85質量%以上であることが好ましい。二水石膏の結晶相の比率が、上記の下限値以上であることにより、無機繊維シートの強度及び柔軟性を確保することができる。二水石膏の結晶相の比率とは、無機バインダーの全量を100質量%とした場合に、二水石膏の結晶相が占める割合である。
【0039】
無機バインダーにおける、二水石膏の結晶相の比率の具体的な数値は、特に限定されないが、80質量%、85質量%、90質量%、95質量%、100質量%や、これらの中間の値が挙げられる。
【0040】
無機繊維シート中の有機分の含有量が、1(質量%)以下であることが好ましい。有機分の含有量が、上記の上限値以下であることにより、無機繊維シートの耐熱性を確保することができる。
【0041】
無機繊維シートの製造方法は、特に限定されないが、湿式抄紙法を用いることが好ましい。この場合、無機繊維及び無機バインダーを含む原料スラリーを、原料スラリーを公知の抄紙機で抄紙することで、シート状の湿体シートを成形することができる。
【0042】
原料スラリーの調製方法は、特に限定されないが、無機繊維及び無機バインダー粒子が均一に分散されることが好ましい。無機繊維を均一に分散させたスラリーに、無機バインダーを均一に分散させたスラリーを添加し、高分子凝着材を使用して定着させる方法は、原料スラリーの配合調整が容易になるので好ましい。無機繊維を均一に分散させたスラリーの調製方法は、無機の結晶性繊維及び無機の非晶質繊維を別々に分散させたスラリーを混合する方法でもよく、無機の結晶性繊維及び無機の非晶質繊維を同時に分散させる方法でもよい。
【0043】
高分子凝集材としては、合成樹脂等の有機高分子材料を用いてもよい。高分子凝集材は、水溶性樹脂であってもよい。無機繊維シート中の有機分の含有量を低減するため、抄紙後の無機繊維シートに対する高分子凝集材の使用量を調整することが好ましい。
【0044】
抄紙機の具体例としては、特に限定されないが、円網抄紙機、傾斜型抄紙機、長網抄紙機、短網抄紙機を単独で用いてもよい。これらの中から、同種または異種の抄紙機を組み合わせたコンビネーション抄紙機を用いてもよい。
【0045】
上記抄紙後の湿体シートを乾燥温度100~200℃程度で、脱水、乾燥を施すことにより、無機繊維シートが得られる。湿体シートの乾燥は、具体的には、吸引脱水、ヤンキードライヤー、シリンダードライヤー、エアドライヤー、赤外線ドライヤー等の公知のドライヤーを用いることができる。
【0046】
原料スラリーに添加される無機バインダーが石膏である場合、湿体シートを乾燥する過程で、二水石膏、半水石膏、無水石膏からなる群から選択される1種以上の混合状態となってもよい。上述したように、無機バインダーの全量に対して、二水石膏の結晶相の占める割合が高い方が望ましい。
【0047】
実施形態の無機繊維シートの寸法は特に限定されないが、柔軟性、強度が高く、ハンドリング性が良いことから、ロール状に巻回することも可能である。また、無機繊維シートを所定の寸法に切断し、または所定の形状に加工して用いることも可能である。
【0048】
実施形態の無機繊維シートの用途は特に限定されないが、不燃性、耐火性に優れ、柔軟性、強度が高く、ハンドリング性が良いことから、各種の産業資材に用いることが可能である。
【0049】
実施形態の無機繊維シートは、そのまま、各種の用途に用いることも可能である。また、塗布、含浸、積層等により、薬剤、粉粒、塗料、皮膜等の各種材料を付加するための基材として、実施形態の無機繊維シートを用いることも可能である。無機繊維シートに各種材料を付加した後に、乾燥、焼成等の加熱処理を施すことも可能である。
【0050】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【実施例0051】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0052】
<無機繊維シートの製造>
表1~表5の「組成」欄に示すように、各種の無機繊維及び無機バインダーを用いて、湿式抄紙法により、無機繊維シートを製造した。
【0053】
実施例1~27では、無機繊維として、結晶性繊維及び非晶質繊維を用いた。比較例1では、結晶性繊維を用いることなく、2種の非晶質繊維を用いた。比較例2では、非晶質繊維を用いることなく、2種の結晶性繊維を用いた。
【0054】
無機バインダーが石膏(二水石膏、半水石膏、無水石膏の総称)である場合は、各成分(二水石膏、半水石膏、無水石膏)を区別して、脱水・乾燥後の無機繊維シートで測定される割合を示した。有機分は、高分子凝集材に用いられたポリアクリルアミドが、脱水・乾燥後の無機繊維シートに残留した割合を示した。
【0055】
(無機の結晶性繊維)
アルミナ繊維としては、結晶性で、融点が2000℃より高く、繊維径が約4μmであり、耐熱温度が1500℃以上の材料を用いた。
ジルコニア繊維としては、結晶性で、融点が2000℃より高く、繊維径が約3~6μmであり、耐熱温度が1500℃以上の材料を用いた。
SiC繊維としては、結晶性で、融点が約1700℃、繊維径が約10~11μm、耐熱温度が1500℃以上の材料を用いた。
【0056】
(無機の非晶質繊維)
グラスウールとしては、非晶質で、繊維径が約1.5μm、耐熱温度が約300℃の材料を用いた。
ガラス微細繊維としては、非晶質で、繊維径が1μm以下、耐熱温度が約300℃の材料を用いた。
【0057】
スラグウールとしては、非晶質で、繊維径が約4~6μm、耐熱温度が約650℃の材料を用いた。
ロックウールとしては、非晶質で、繊維径が約4~6μm、耐熱温度が約650℃の材料を用いた。
【0058】
アルカリアースシリケートウール(AES)としては、非晶質で、繊維径が約3~4μm、耐熱温度が約1000~1300℃の材料を用いた。
リフラクトリーセラミックファイバー(RCF)としては、非晶質で、繊維径が約2~4μm、耐熱温度が約1000~1400℃の材料を用いた。
【0059】
(無機バインダー)
無機バインダーとしては、石膏またはアルミナゾルを用いた。
【0060】
<無機繊維シートの構造>
得られた無機繊維シートの嵩密度及び厚さを測定し、表1~表5の「構造」欄に示した。厚さの測定値は「実測値」に示した。無機繊維シートの厚さの「可変上限値」は、定数90(質量%・mm)を無機バインダーの含有量x(質量%)で除して得られる厚さy(mm)であり、「下限値」は、定数0.2mmである。
【0061】
<無機繊維シートの評価>
表1~表5の「評価」欄に示される各項目は、次に示す方法により評価した。
【0062】
(耐熱性)
無機繊維シートを幅25mm×長さ100mmに切断して得られた試験体シートを1300℃の電気炉に投入して30分間加熱した後、電気炉から取り出し、試験体シートの寸法変化及び変色を測定した。寸法変化は、1%に満たない寸法変化を四捨五入して、整数値で表した。
【0063】
耐熱性に関し、寸法変化の評価基準は、次のとおりである。
評点5:寸法変化率が3%未満であった。
評点4:寸法変化率が3%以上4%以下であった。
評点3:寸法変化率が5%以上9%以下であった。
評点2:寸法変化率が10%以上14%以下であった。
評点1:寸法変化率が15%以上であった。
【0064】
耐熱性に関し、変色の評価基準は、次のとおりである。
評点5:変色はなかった。
評点4:若干変色があった。
評点3:淡く変色があった。
評点2:明らかに変色があった。
評点1:黒色に変色した。
【0065】
(強度)
無機繊維シートを幅15mm×長さ150mmに切断して得られた試験体シートを用いて、引張試験機で引張強度を測定した。具体的には、クランプ間距離100mm、引張速度200mm/分の条件で、試験体シートの長さ方向に張力を加え、試験体シートが破断したときの最大値を測定した。
【0066】
強度の評価基準は、次のとおりである。
評点5:1.00(N/15mm)以上であった。
評点4:0.50(N/15mm)以上1.00(N/15mm)未満であった。
評点3:0.30(N/15mm)以上0.50(N/15mm)未満であった。
評点2:0.05(N/15mm)以上0.30(N/15mm)未満であった。
評点1:0.05(N/15mm)未満であった。
【0067】
(柔軟性)
無機繊維シートを幅15mm×長さ150mmに切断して得られた試験体シートを、試験体シートの長さ方向が棒の周方向となるように、外径φ25mmの円柱状の棒に巻き付け、試験体シートにひび割れ、シート破断が発生しないかを確認した。
【0068】
柔軟性の評価基準は、次のとおりである。
評点5:ひび割れも、シート破断もなかった。
評点4:長さ1mm程度のひび割れがあったが、シート破断はなかった。
評点3:長さ3mm程度のひび割れがあったが、シート破断はなかった。
評点2:長さ5mm程度のひび割れがあったが、シート破断はなかった。
評点1:シート破断があった。
【0069】
(総合評価)
耐熱性の寸法変化、耐熱性の変色、強度、柔軟性の4項目について、それぞれの評点を合計することにより、総合評価の評点を20点満点で算出した。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
比較例1~2では、総合評価が15~17点であったのに対して、実施例1~27では、総合評価が18~20点であった。