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特開2024-10311導電材料、接続構造体及び接続構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010311
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】導電材料、接続構造体及び接続構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20240117BHJP
   H01B 5/16 20060101ALI20240117BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
H01B1/22 A
H01B5/16
H05K3/34 512C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111575
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内野 慎也
(72)【発明者】
【氏名】定永 周治郎
【テーマコード(参考)】
5E319
5G301
5G307
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319CC33
5E319CD27
5E319CD29
5E319GG20
5G301DA02
5G301DA03
5G301DA06
5G301DA13
5G301DA42
5G301DA55
5G301DA57
5G301DA59
5G301DD01
5G307HA02
5G307HB03
5G307HC01
(57)【要約】
【課題】はんだ凝集性及び貯蔵安定性を高めることができる導電材料を提供する。
【解決手段】本発明に係る導電材料は、熱硬化性化合物と、複数のはんだ粒子と、フラックスと、有機酸とを含む導電材料であり、前記有機酸が、脂肪族骨格を有し、かつ炭素数が12以上である有機酸であり、前記導電材料100重量%中、前記はんだ粒子の含有量が、40重量%以上90重量%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性化合物と、複数のはんだ粒子と、フラックスと、有機酸とを含む導電材料であり、
前記有機酸が、脂肪族骨格を有し、かつ炭素数が12以上である有機酸であり、
前記導電材料100重量%中、前記はんだ粒子の含有量が、40重量%以上90重量%以下である、導電材料。
【請求項2】
前記有機酸が、モノカルボン酸である、請求項1に記載の導電材料。
【請求項3】
前記有機酸が、不飽和モノカルボン酸である、請求項1又は2に記載の導電材料。
【請求項4】
前記有機酸が、アミド結合を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の導電材料。
【請求項5】
前記フラックスが、多価カルボン酸又は多価カルボン酸アミン塩である、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電材料。
【請求項6】
熱硬化剤を含まないか、又は、前記導電材料100重量%中、熱硬化剤を30重量%以下で含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の導電材料。
【請求項7】
熱硬化剤を含まない、請求項6に記載の導電材料。
【請求項8】
前記はんだ粒子の粒子径が、0.1μm以上10.0μm以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の導電材料。
【請求項9】
25℃及び0.5rpmでの粘度の、25℃及び5rpmでの粘度に対する比が、2.5以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載の導電材料。
【請求項10】
導電ペーストである、請求項1~9のいずれか1項に記載の導電材料。
【請求項11】
第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、
第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、
前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備え、
前記接続部の材料が、請求項1~10のいずれか1項に記載の導電材料であり、
前記第1の電極と前記第2の電極とが前記接続部中のはんだ部により電気的に接続されている、接続構造体。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の導電材料を用いて、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材の表面上に、前記導電材料を配置する工程と、
前記導電材料の前記第1の接続対象部材側とは反対の表面上に、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材を、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向するように配置する工程と、
前記はんだ粒子の融点以上に前記導電材料を加熱することで、前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続している接続部を、前記導電材料により形成し、かつ、前記第1の電極と前記第2の電極とを、前記接続部中のはんだ部により電気的に接続する工程とを備える、接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ粒子を含む導電材料に関する。また、本発明は、上記導電材料を用いた接続構造体及び接続構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板と電子部品との接続に、はんだ粒子等を含む導電材料を用いた接続方法が利用されている。また、導電材料として、異方性導電材料が用いられることがある。上記異方性導電材料では、バインダー樹脂中に導電性粒子が分散されている。
【0003】
上記異方性導電材料は、各種の接続構造体を得るために使用されている。上記異方性導電材料による接続としては、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、並びにフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))等が挙げられる。
【0004】
下記の特許文献1には、導電性粒子が分散された接着剤樹脂組成物を成膜してなる異方性導電フィルムが開示されている。上記接着剤樹脂組成物は、ポリビニルアルコールをアセタール化して得られるポリアセタール化樹脂よりなるベース樹脂と、メラミン系樹脂と、アンモニウム塩とを含む。また、特許文献1には、上記アンモニウム塩が、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム及び酢酸アンモニウムよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましいことが記載されている。
【0005】
下記の特許文献2には、導電性基材粒子の表面に、カルボン酸又はカルボン酸塩が付着している導電性微粒子が開示されている。上記導電性基材粒子は、錫又はその合金により形成された導電性基材粒子、又は、錫又はその合金により形成されたはんだ層を最表面に有する導電性基材粒子である。また、特許文献2には、導電性基材粒子の表面には、更に、リン酸塩又はリン酸エステルが付着していることが好ましいことが記載されている。
【0006】
下記の特許文献3には、(A)脂環式エポキシ化合物と、(B1)カチオン発生剤とを含有する接着剤組成物が開示されている。(B1)カチオン発生剤は、イオウ原子にアルケニル基、アリル基もしくはその誘導体が結合した構造を有するスルフォニウムリン酸塩である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-229024号公報
【特許文献2】特開2011-009184号公報
【特許文献3】特開2011-111556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1~3に記載のような従来の導電材料では、はんだ凝集性が低いことがある。また、特許文献1~3に記載のような従来の導電材料では、該導電材料の粘度が経時的に増加するなど、導電材料の貯蔵安定性が低いことがある。
【0009】
本発明の目的は、はんだ凝集性及び貯蔵安定性を高めることができる導電材料を提供することである。また、本発明の目的は、上記導電材料を用いた接続構造体及び接続構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、熱硬化性化合物と、複数のはんだ粒子と、フラックスと、有機酸とを含む導電材料であり、前記有機酸が、脂肪族骨格を有し、かつ炭素数が12以上である有機酸であり、前記導電材料100重量%中、前記はんだ粒子の含有量が、40重量%以上90重量%以下である、導電材料が提供される。
【0011】
本発明に係る導電材料のある特定の局面では、前記有機酸が、モノカルボン酸である。
【0012】
本発明に係る導電材料のある特定の局面では、前記有機酸が、不飽和モノカルボン酸である。
【0013】
本発明に係る導電材料のある特定の局面では、前記有機酸が、アミド結合を有する。
【0014】
本発明に係る導電材料のある特定の局面では、前記フラックスが、多価カルボン酸又は多価カルボン酸アミン塩である。
【0015】
本発明に係る導電材料のある特定の局面では、導電材料が、熱硬化剤を含まないか、又は、前記導電材料100重量%中、熱硬化剤を30重量%以下で含む。
【0016】
本発明に係る導電材料のある特定の局面では、導電材料が、熱硬化剤を含まない。
【0017】
本発明に係る導電材料のある特定の局面では、前記はんだ粒子の粒子径が、0.1μm以上10.0μm以下である。
【0018】
本発明に係る導電材料のある特定の局面では、25℃及び0.5rpmでの粘度の、25℃及び5rpmでの粘度に対する比が、2.5以上である。
【0019】
本発明に係る導電材料のある特定の局面では、前記導電材料が、導電ペーストである。
【0020】
本発明の広い局面によれば、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、前記第1の接続対象部材と、前記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備え、前記接続部の材料が、上述した導電材料であり、前記第1の電極と前記第2の電極とが、前記接続部中のはんだ部により電気的に接続されている、接続構造体が提供される。
【0021】
本発明の広い局面によれば、上述した導電材料を用いて、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材の表面上に、前記導電材料を配置する工程と、前記導電材料の前記第1の接続対象部材側とは反対の表面上に、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材を、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向するように配置する工程と、前記はんだ粒子の融点以上に前記導電材料を加熱することで、前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続している接続部を、前記導電材料により形成し、かつ、前記第1の電極と前記第2の電極とを、前記接続部中のはんだ部により電気的に接続する工程とを備える、接続構造体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る導電材料は、熱硬化性化合物と、複数のはんだ粒子と、フラックスと、有機酸とを含む導電材料であり、上記有機酸が、脂肪族骨格を有し、かつ炭素数が12以上である有機酸であり、上記導電材料100重量%中、上記はんだ粒子の含有量が、40重量%以上90重量%以下である。本発明に係る導電材料では、上記の構成が備えられているので、はんだ凝集性及び貯蔵安定性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る導電材料を用いた接続構造体を模式的に示す断面図である。
図2図2(a)~(c)は、本発明の第1の実施形態に係る導電材料を用いて、接続構造体を製造する方法の一例の各工程を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0025】
(導電材料)
本発明に係る導電材料は、熱硬化性化合物と、複数のはんだ粒子と、フラックスと、有機酸とを含む。本発明に係る導電材料では、上記有機酸が、脂肪族骨格を有し、かつ炭素数が12以上である有機酸である。本発明に係る導電材料では、上記導電材料100重量%中、上記はんだ粒子の含有量が、40重量%以上90重量%以下である。
【0026】
本発明に係る導電材料では、上記の構成が備えられているので、はんだ凝集性及び貯蔵安定性を高めることができる。
【0027】
本発明では、貯蔵安定性を高めることができ、導電材料が室温等で保管された場合でも、粘度の経時的な上昇を抑えることができる。
【0028】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記導電材料は、25℃で液状であることが好ましく、導電ペーストであることが好ましい。
【0029】
電極上にはんだをより一層効率的に配置する観点からは、作製直後の上記導電材料の25℃及び5rpmでの粘度(ηA)は、好ましくは30Pa・s以上、より好ましくは50Pa・s以上であり、好ましくは400Pa・s以下、より好ましくは300Pa・s以下である。上記粘度(ηA)は、配合成分の種類及び配合量により適宜調整することができる。
【0030】
作製直後の上記導電材料の25℃及び0.5rpmでの粘度(ηB)の、作製直後の上記導電材料の25℃及び5rpmでの粘度(ηA)に対する比(初期のチクソトロピックインデックス)は、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3.0以上である。上記比(ηB/ηA)は、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.5以下、さらに好ましくは4.0以下である。上記比(ηB/ηA)が、上記下限以上及び上記上限以下であると、導電材料の配置性(特に、印刷性)を高めることができる。
【0031】
上記粘度(ηA)及び上記粘度(ηB)は、E型粘度計を用いて測定することができる。上記E型粘度計としては、東機産業社製「TVE22L」等が挙げられる。
【0032】
導電材料の貯蔵安定性をより一層高める観点からは、24時間経過後の上記導電材料の25℃及び5rpmでの粘度(ηC)は、好ましくは40Pa・s以上、より好ましくは50Pa・s以上であり、好ましくは400Pa・s以下、より好ましくは300Pa・s以下である。
【0033】
24時間経過後の上記導電材料の25℃及び0.5rpmでの粘度(ηD)の、24時間経過後の上記導電材料の25℃及び5rpmでの粘度(ηC)に対する比(24時間経過後のチクソトロピックインデックス)は、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3.0以上である。上記比(ηD/ηC)は、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.5以下、さらに好ましくは4.0以下である。上記比(ηD/ηC)が、上記下限以上及び上記上限以下であると、長時間に亘り導電材料の配置性(特に、印刷性)を高めることができる。
【0034】
上記粘度(ηC)及び上記粘度(ηD)は、25℃及び50%RHの条件で24時間放置した導電材料について、E型粘度計を用いて測定することができる。上記E型粘度計としては、東機産業社製「TVE22L」等が挙げられる。
【0035】
上記導電材料は、導電ペースト及び導電フィルム等として使用され得る。上記導電ペーストは異方性導電ペーストであることが好ましく、上記導電フィルムは異方性導電フィルムであることが好ましい。電極上にはんだをより一層効率的に配置する観点からは、上記導電材料は、導電ペーストであることが好ましい。上記導電材料は、電極の電気的な接続に好適に用いられる。上記導電材料は、回路接続材料であることが好ましい。
【0036】
以下、上記導電材料に含まれる各成分を説明する。なお、以下の説明において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」との一方又は双方を意味する。
【0037】
(熱硬化性化合物)
上記導電材料は、熱硬化性化合物を含む。上記熱硬化性化合物は、加熱により硬化可能な化合物である。
【0038】
上記熱硬化性化合物は特に限定されない。上記熱硬化性化合物としては、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。導電材料の硬化性及び粘度をより一層良好にする観点、導通信頼性をより一層効果的に高める観点から、上記熱硬化性化合物は、エポキシ化合物又はエピスルフィド化合物を含むことが好ましく、エポキシ化合物を含むことがより好ましい。上記熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0039】
上記エポキシ化合物は、少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物である。上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ化合物、アダマンタン骨格を有するエポキシ化合物、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ化合物、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ化合物等が挙げられる。上記エポキシ化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
硬化物の耐熱性を高め、接続されてはならない電極間の絶縁信頼性を高める観点からは、上記エポキシ化合物は、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、又はフェノールノボラック型エポキシ化合物であることが好ましく、フェノールノボラック型エポキシ化合物であることがより好ましい。
【0041】
上記エポキシ化合物は、常温(25℃)で液状又は固体であり、上記エポキシ化合物が常温で固体である場合には、上記エポキシ化合物の溶融温度は、上記はんだ粒子の融点以下であることが好ましい。上記の好ましいエポキシ化合物を用いることで、接続対象部材を貼り合わせた段階では、粘度が高くなるため、搬送等の衝撃により加速度が付与された際に、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材との位置ずれを抑制することができる。さらに、硬化時の熱により、導電材料の粘度を大きく低下させることができ、はんだ粒子の凝集を効率よく進行させることができる。
【0042】
上記導電材料100重量%中、上記熱硬化性化合物の含有量は、好ましくは4重量%以上、より好ましくは6重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは25重量%以下である。上記熱硬化性化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができ、また、接続されてはならない電極間の絶縁信頼性及び接続されるべき電極間の導通信頼性をより一層効果的に高めることができる。また、上記熱硬化性化合物の含有量が上記下限以上であると、耐衝撃性を高めることができる。
【0043】
上記導電材料100重量%中、上記エポキシ化合物の含有量は、好ましくは4重量%以上、より好ましくは6重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは25重量%以下である。上記エポキシ化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができ、また、接続されてはならない電極間の絶縁信頼性及び接続されるべき電極間の導通信頼性をより一層効果的に高めることができる。また、上記エポキシ化合物の含有量が上記下限以上であると、耐衝撃性を高めることができる。
【0044】
(はんだ粒子)
上記導電材料は、複数のはんだ粒子を含む。上記はんだ粒子は、中心部分及び外表面のいずれもがはんだにより形成されている。上記はんだ粒子は、中心部分及び外表面のいずれもがはんだである粒子である。上記はんだ粒子の代わりに、はんだ以外の材料から形成された基材粒子と該基材粒子の表面上に配置されたはんだ部とを備える導電性粒子を用いた場合には、電極上に導電性粒子が集まり難くなる。また、上記導電性粒子では、導電性粒子同士のはんだ接合性が低いために、電極上に移動した導電性粒子が電極外に移動しやすくなる傾向があり、電極間の位置ずれの抑制効果も低くなる傾向がある。
【0045】
上記はんだは、融点が450℃以下である金属(低融点金属)であることが好ましい。上記はんだ粒子は、融点が450℃以下である金属粒子(低融点金属粒子)であることが好ましい。上記低融点金属粒子は、低融点金属を含む粒子である。該低融点金属とは、融点が450℃以下の金属を示す。低融点金属の融点は好ましくは400℃以下、より好ましくは300℃以下である。上記はんだ粒子は、融点が300℃未満の低融点はんだであることが好ましい。
【0046】
上記はんだ粒子の融点は、好ましくは80℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは130℃以上、好ましくは400℃以下、より好ましくは300℃以下、さらに好ましくは220℃以下である。上記はんだ粒子の融点が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができ、絶縁信頼性及び導通信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0047】
上記はんだ粒子の融点は、示差走査熱量測定(DSC)により求めることができる。示差走査熱量測定(DSC)装置としては、SII社製「EXSTAR DSC7020」等が挙げられる。
【0048】
上記はんだ粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1.0μm以上であり、好ましくは20.0μm以下、より好ましくは10.0μm以下、さらに好ましくは8.0μm以下である。上記はんだ粒子の平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。平均粒子径の比較的小さいはんだ粒子を含む従来の導電材料では、転写面積のばらつきを十分に抑えることは困難であるものの、本発明では、はんだ粒子の平均粒子径が比較的小さい場合であっても、転写面積のばらつきを効果的に抑えることができる。また、上記はんだ粒子の平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができ、導通信頼性及び接続信頼性をより一層効果的に高めることができる。上記はんだ粒子の平均粒子径は2μm以下であってもよく、1μm以下であってもよく、1μm未満であってもよい。本発明では、上記はんだ粒子の平均粒子径がかなり小さくても、本発明の効果が効果的に奏される。
【0049】
上記はんだ粒子の平均粒子径は、数平均粒子径であることが好ましい。上記はんだ粒子の平均粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定を行うことにより求められる。
【0050】
上記導電材料100重量%中、上記はんだ粒子の含有量は、40重量%以上90重量%以下である。上記導電材料100重量%中、上記はんだ粒子の含有量は、好ましくは43重量%以上、より好ましくは45重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上であり、好ましくは85重量%以下、より好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下である。上記はんだ粒子の含有量が上記下限以上であると、はんだ凝集性をより一層高めることができる。上記はんだ粒子の含有量が上記上限以下であると、導電材料の配置性(特に、印刷性)を高めることができる。
【0051】
(フラックス)
上記導電材料は、フラックスを含む。フラックスを用いることで、電極上にはんだをより一層効率的に配置することができる。上記フラックスは特に限定されない。上記フラックスとして、はんだ接合等に一般的に用いられているフラックスを用いることができる。
【0052】
上記フラックスとしては、塩化亜鉛、塩化亜鉛と無機ハロゲン化物との混合物、塩化亜鉛と無機酸との混合物、溶融塩、リン酸、リン酸アミン塩、リン酸の誘導体、多価カルボン酸、多価カルボン酸アミン塩、有機ハロゲン化物、ヒドラジン、リン酸アミン塩及び多価カルボン酸アミン塩の双方とは異なるアミン化合物、並びに松脂等が挙げられる。上記フラックスは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0053】
上記溶融塩としては、塩化アンモニウム等が挙げられる。
【0054】
上記リン酸アミン塩としては、アシッドホスフェートアミン塩等が挙げられる。上記アシッドホスフェートアミン塩としては、アルキルアシッドホスフェートアミン塩等が挙げられ、より具体的には、エチルアシッドホスフェートビス(2-エチルヘキシルアミン塩)、ブチルアシッドホスフェートビス(2-エチルヘキシルアミン塩)、ブチルアシッドホスフェートビス(ジメチルドデシルアミン)、ブチルアシッドホスフェートビス(2-エチルエキシルアミン)等が挙げられる。
【0055】
上記多価カルボン酸は、カルボキシ基を2つ以上有する。上記多価カルボン酸は、ジカルボン酸であってもよく、トリカルボン酸であってもよい。上記多価カルボン酸としては、クエン酸、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、リンゴ酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びトリメリット酸等が挙げられる。
【0056】
上記多価カルボン酸アミン塩としては、グルタル酸シクロヘキシルアミン塩、アジピン酸シクロヘキシルアミン塩、グルタル酸ベンジルアミン塩、及びアジピン酸ベンジルアミン塩等が挙げられる。
【0057】
リン酸アミン塩及び多価カルボン酸アミン塩の双方とは異なる上記アミン化合物としては、ジシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ベンズヒドリルアミン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、フェニルイミダゾール、カルボキシベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、及びカルボキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0058】
上記松脂としては、活性化松脂及び非活性化松脂等が挙げられる。上記松脂はアビエチン酸を主成分とするロジン類である。上記ロジン類としては、アビエチン酸、及びアクリル変性ロジン等が挙げられる。
【0059】
上記フラックスは、多価カルボン酸、リン酸、多価カルボン酸アミン塩、又はリン酸アミン塩を含むことが好ましい。上記フラックスは、多価カルボン酸又は多価カルボン酸アミン塩であることがより好ましく、多価カルボン酸アミン塩であることがさらに好ましい。これらの好ましいフラックスを用いることにより、接続されてはならない電極間の絶縁信頼性及び接続されるべき電極間の導通信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0060】
上記フラックスの活性温度(融点)は、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上であり、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下、より一層好ましくは250℃以下、さらに好ましくは200℃以下、さらに一層好ましくは180℃以下である。上記フラックスの活性温度が上記下限以上及び上記上限以下であると、フラックス効果がより一層効果的に発揮され、電極上にはんだをより一層効率的に配置することができる。
【0061】
上記フラックスの融点は、示差走査熱量測定(DSC)により求めることができる。示差走査熱量測定(DSC)装置としては、SII社製「EXSTAR DSC7020」等が挙げられる。
【0062】
また、上記フラックスの沸点は400℃以下であることが好ましい。
【0063】
上記フラックスは、導電材料中に分散されていてもよく、はんだ粒子の表面上に付着していてもよい。
【0064】
上記導電材料100重量%中、上記フラックスの含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは8重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。上記フラックスの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、はんだ及び電極の表面に酸化被膜がより一層形成され難くなり、さらに、はんだ及び電極の表面に形成された酸化被膜をより一層効果的に除去できる。
【0065】
(有機酸)
上記導電材料は、有機酸を含む。上記有機酸を用いることで、導電材料のチキソトロピー性を良好にすることができる。
【0066】
上記有機酸は、脂肪族骨格を有し、かつ炭素数が12以上である有機酸である。上記有機酸の炭素数は、好ましくは14以上、より好ましくは16以上であり、好ましくは24以下、より好ましくは22以下である。上記有機酸の炭素数が上記下限以上及び上記上限以下であると、導電材料のチキソトロピー性を良好にすることができる。
【0067】
脂肪族骨格を有し、かつ炭素数が12以上である有機酸としては、パルミトオレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、及びN-オレオイルサルコシン等が挙げられる。上記有機酸は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0068】
導電材料のチキソトロピー性を良好にする観点からは、上記有機酸は、カルボキシ基を1つ有する有機酸であることが好ましい。導電材料の貯蔵安定性をより一層高める観点からは、上記有機酸は、モノカルボン酸であることが好ましい。酸素バリア性を高める観点からは、上記有機酸は、不飽和結合を有することが好ましい。酸素バリア性を高め、かつ、導電材料の貯蔵安定性をより一層高める観点からは、上記有機酸は、不飽和モノカルボン酸であることが好ましい。酸素バリア性を高める観点からは、上記有機酸中の不飽和結合の数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。
【0069】
導電材料を加熱した際のアウトガスを低減する観点からは、上記有機酸は、アミド結合を有することが好ましい。上記有機酸は、アミド結合を1つ有していてもよく、2つ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。アミド結合を有する有機酸としては、N-ミリストイルサルコシン、N-ラウロイルサルコシン、及びN-オレオイルサルコシン等が挙げられる。
【0070】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記有機酸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、又はN-オレオイルサルコシンを含むことが好ましく、オレイン酸、又はN-オレオイルサルコシンを含むことがより好ましく、N-オレオイルサルコシンを含むことが特に好ましい。
【0071】
上記導電材料100重量%中、上記有機酸の含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上であり、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5.0重量%以下である。上記有機酸の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、導電材料のチキソトロピー性を良好にすることができる。
【0072】
(他の成分)
上記導電材料は、必要に応じて、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、チキソ剤、レベリング剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、及び難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0073】
貯蔵安定性をより一層高める観点からは、上記導電材料は、熱硬化剤を含まないか、又は、上記導電材料100重量%中、熱硬化剤を30重量%以下で含むことが好ましい。貯蔵安定性をより一層高める観点からは、上記導電材料100重量%中、上記熱硬化剤の含有量は、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。貯蔵安定性をより一層高める観点からは、上記導電材料は、熱硬化剤を含まないことが最も好ましい。
【0074】
上記熱硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、チオール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、酸無水物硬化剤、熱カチオン開始剤及び熱ラジカル発生剤等が挙げられる。上記熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0075】
(接続構造体及び接続構造体の製造方法)
本発明に係る接続構造体は、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、上記第1の接続対象部材と、上記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備える。本発明に係る接続構造体では、上記接続部の材料が、上述した導電材料である。本発明に係る接続構造体では、上記第1の電極と上記第2の電極とが、上記接続部中のはんだ部により電気的に接続されている。
【0076】
本発明に係る接続構造体の製造方法は、上述した導電材料を用いて、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材の表面上に上記導電材料を配置する工程を備える。本発明に係る接続構造体の製造方法は、上記導電材料の上記第1の接続対象部材側とは反対の表面上に、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材を、上記第1の電極と上記第2の電極とが対向するように配置する工程を備える。本発明に係る接続構造体の製造方法は、上記はんだ粒子の融点以上に上記導電材料を加熱することで、上記第1の接続対象部材と上記第2の接続対象部材とを接続している接続部を、上記導電材料により形成し、かつ、上記第1の電極と上記第2の電極とを、上記接続部中のはんだ部により電気的に接続する工程を備える。
【0077】
本発明に係る接続構造体及び接続構造体の製造方法では、特定の導電材料を用いているので、第1の電極と第2の電極との間において、はんだ部を良好に形成させることができる。また、はんだの一部が、電極が形成されていない領域(スペース)に配置され難く、電極が形成されていない領域に配置されるはんだの量をかなり少なくすることができる。従って、第1の電極と第2の電極との間の導通信頼性を高めることができる。しかも、接続されてはならない横方向に隣接する電極間の電気的な接続を防ぐことができ、絶縁信頼性を高めることができる。
【0078】
本発明に係る接続構造体及び接続構造体の製造方法では、特定の導電材料を用いているので、はんだが第1の電極と第2の電極との間に集まりやすく、はんだを電極(ライン)上に効率的に配置することができる。また、はんだの一部が、電極が形成されていない領域(スペース)に配置され難く、電極が形成されていない領域に配置されるはんだの量をかなり少なくすることができる。従って、第1の電極と第2の電極との間の導通信頼性を高めることができる。しかも、接続されてはならない横方向に隣接する電極間の電気的な接続を防ぐことができ、絶縁信頼性を高めることができる。
【0079】
また、電極上にはんだを効率的に配置し、かつ電極が形成されていない領域に配置されるはんだの量をかなり少なくするためには、上記導電材料は、導電フィルムではなく、導電ペーストを用いることが好ましい。
【0080】
また、導電フィルムではなく、導電ペーストを用いれば、導電ペーストの塗布量によって、接続部及びはんだ部の厚みを調整することが容易になる。一方で、導電フィルムでは、接続部の厚みを変更したり、調整したりするためには、異なる厚みの導電フィルムを用意したり、所定の厚みの導電フィルムを用意したりしなければならないという問題がある。また、導電フィルムでは、導電ペーストと比べて、はんだの溶融温度で、導電フィルムの溶融粘度を十分に下げることができず、はんだの凝集が阻害されやすい傾向がある。
【0081】
電極間でのはんだ部の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下である。電極の表面上のはんだ濡れ面積(電極の露出した面積100%中のはんだが接している面積)は、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上であり、好ましくは100%以下である。
【0082】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0083】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る導電材料を用いた接続構造体を模式的に示す断面図である。
【0084】
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材3と、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材3とを接続している接続部4とを備える。接続部4の材料は、上述した導電材料である。接続部4は、上述した導電材料により形成されている。本実施形態では、上記導電材料は、熱硬化性化合物と、複数のはんだ粒子と、フラックスと、有機酸とを含む。
【0085】
接続部4は、複数のはんだ粒子が集まり互いに接合したはんだ部4Aと、熱硬化性化合物が熱硬化された硬化物部4Bとを有する。
【0086】
第1の接続対象部材2は表面(上面)に、複数の第1の電極2aを有する。第2の接続対象部材3は表面(下面)に、複数の第2の電極3aを有する。第1の電極2aと第2の電極3aとが、はんだ部4Aにより電気的に接続されている。従って、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材3とが、はんだ部4Aにより電気的に接続されている。なお、接続部4において、第1の電極2aと第2の電極3aとの間において、はんだ部4Aとは異なる領域(硬化物部4B部分)では、はんだ粒子は存在しない。はんだ部4Aとは異なる領域(硬化物部4B部分)では、はんだ部4Aと離れたはんだ粒子は存在しない。なお、少量であれば、第1の電極2aと第2の電極3aとの間において、はんだ部4Aとは異なる領域(硬化物部4B部分)に、はんだ粒子が存在していてもよい。
【0087】
図1に示すように、接続構造体1では、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に、複数のはんだ粒子が集まり、複数のはんだ粒子が溶融した後、はんだ粒子の溶融物が電極の表面を濡れ拡がった後に固化して、はんだ部4Aが形成されている。このため、はんだ部4Aと第1の電極2a、並びにはんだ部4Aと第2の電極3aとの接続面積が大きくなる。すなわち、はんだ粒子を用いることにより、外表面がニッケル、金又は銅等の金属である導電性粒子を用いた場合と比較して、はんだ部4Aと第1の電極2a、並びにはんだ部4Aと第2の電極3aとの接触面積が大きくなる。このことによっても、接続構造体1における導通信頼性及び接続信頼性が高くなる。なお、フラックスは、一般に、加熱により次第に失活する。
【0088】
図1に示す接続構造体1では、はんだ部4Aの全てが、第1,第2の電極2a,3a間の対向している領域に位置している。また、図1に示す接続構造体1では、硬化物部4Bの全てが、第1,第2の電極2a,3a間の対向している領域に位置している。なお、上記接続構造体では、はんだ部の多くが、第1,第2の電極の対向している領域に位置しており、はんだ部の一部が第1,第2の電極の対向している領域から側方にはみ出していてもよい。第1,第2の電極の対向している領域から側方にはみ出しているはんだ部は、はんだ部の一部であり、はんだ部から離れたはんだ粒子ではない。なお、本実施形態では、はんだ部から離れたはんだ粒子の量を少なくすることができるが、はんだ部から離れたはんだ粒子が硬化物部中に存在していてもよい。また、上記接続構造体では、硬化物部の多くが、第1,第2の電極の対向している領域に位置しており、硬化物部の一部が第1,第2の電極の対向している領域から側方にはみ出していてもよい。
【0089】
上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の50%以上に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることが好ましい。上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中、上記接続部中のはんだ部が配置されている部分の面積は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上である。上記接続部中のはんだ部が、上記の好ましい態様を満足することで、導通信頼性をより一層高めることができる。
【0090】
次に、図2を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る導電材料を用いて、接続構造体1を製造する方法の一例を説明する。
【0091】
先ず、第1の電極2aを表面(上面)に有する第1の接続対象部材2を用意する。次に、図2(a)に示すように、第1の接続対象部材2の表面上に、熱硬化性化合物11Bと、複数のはんだ粒子11Aと、フラックスと、有機酸とを含む導電材料11を配置する(第1の工程)。
【0092】
第1の接続対象部材2の第1の電極2aが設けられた表面上に、導電材料11を配置する。導電材料11の配置の後に、はんだ粒子11Aは、第1の電極2a(ライン)上と、第1の電極2aが形成されていない領域(スペース)上との双方に配置されている。なお、上記導電材料は、上記第1の電極の表面上にのみ配置されてもよい。
【0093】
導電材料11の配置方法としては、ディスペンサーによる塗布、スクリーン印刷、及びインクジェット装置による吐出等が挙げられる。
【0094】
また、第2の電極3aを表面(下面)に有する第2の接続対象部材3を用意する。次に、図2(b)に示すように、第1の接続対象部材2の表面上の導電材料11において、導電材料11の第1の接続対象部材2側とは反対側の表面上に、第2の接続対象部材3を配置する(第2の工程)。導電材料11の表面上に、第2の電極3a側から、第2の接続対象部材3を配置する。このとき、第1の電極2aと第2の電極3aとを対向させる。
【0095】
次に、はんだ粒子11Aの融点以上に導電材料11を加熱する(第3の工程)。好ましくは、熱硬化性化合物11Bの硬化温度以上に導電材料11を加熱する。この加熱時には、電極が形成されていない領域に存在していたはんだ粒子11Aは、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に集まる(自己凝集効果)。導電フィルムではなく、導電ペーストを用いた場合には、はんだ粒子11Aが、第1の電極2aと第2の電極3aとの間により一層効果的に集まる。また、はんだ粒子11Aは溶融し、互いに接合する。また、熱硬化性化合物11Bは熱硬化する。この結果、図2(c)に示すように、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材3とを接続している接続部4が、導電材料11により形成される。導電材料11により接続部4が形成され、複数のはんだ粒子11Aが接合することによってはんだ部4Aが形成され、熱硬化性化合物11Bが熱硬化することによって硬化物部4Bが形成される。はんだ粒子11Aが十分に移動すれば、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に位置していないはんだ粒子11Aの移動が開始してから、第1の電極2aと第2の電極3aとの間にはんだ粒子11Aの移動が完了するまでに、温度を一定に保持しなくてもよい。
【0096】
本実施形態では、上記第2の工程及び上記第3の工程において、加圧を行わない方が好ましい。この場合には、導電材料11には、第2の接続対象部材3の重量が加わる。このため、接続部4の形成時に、はんだ粒子11Aが、第1の電極2aと第2の電極3aとの間により一層効果的に集まる。なお、上記第2の工程及び上記第3の工程の内の少なくとも一方において、加圧を行えば、はんだ粒子11Aが第1の電極2aと第2の電極3aとの間に集まろうとする作用が阻害される傾向が高くなる。
【0097】
また、本実施形態では、加圧を行っていないため、第1の電極2aと第2の電極3aとのアライメントがずれた状態で、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材3とが重ね合わされた場合でも、そのずれを補正して、第1の電極2aと第2の電極3aとを接続させることができる(セルフアライメント効果)。これは、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に自己凝集している溶融したはんだが、第1の電極2aと第2の電極3aとの間のはんだと導電材料のその他の成分とが接する面積が最小となる方がエネルギー的に安定になり、その最小の面積となる接続構造であるアライメントのあった接続構造にする力が働くためである。この際、導電材料が硬化していないこと、及び、その温度、時間にて、導電材料のはんだ粒子以外の成分の粘度が十分低いことが望ましい。
【0098】
このようにして、図1に示す接続構造体1が得られる。なお、上記第2の工程と上記第3の工程とは連続して行われてもよい。また、上記第2の工程を行った後に、得られる第1の接続対象部材2と導電材料11と第2の接続対象部材3との積層体を、加熱部に移動させて、上記第3の工程を行ってもよい。上記加熱を行うために、加熱部材上に上記積層体を配置してもよく、加熱された空間内に上記積層体を配置してもよい。
【0099】
上記第3の工程における上記加熱温度は、特に限定されない。
【0100】
上記第3の工程における加熱方法としては、はんだ粒子の融点以上及び熱硬化性化合物の硬化温度以上に、接続構造体全体を、リフロー炉を用いて又はオーブンを用いて加熱する方法や、接続構造体の接続部のみを局所的に加熱する方法が挙げられる。
【0101】
上記第1,第2の接続対象部材は、特に限定されない。上記第1,第2の接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、半導体パッケージ、LEDチップ、LEDパッケージ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びに樹脂フィルム、プリント基板、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル、リジッドフレキシブル基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板等の電子部品等が挙げられる。上記第1,第2の接続対象部材は、電子部品であることが好ましい。
【0102】
上記第1の接続対象部材及び上記第2の接続対象部材の内の少なくとも一方が、樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル又はリジッドフレキシブル基板であることが好ましい。上記第2の接続対象部材が、樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル又はリジッドフレキシブル基板であることが好ましい。樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル及びリジッドフレキシブル基板は、柔軟性が高く、比較的軽量であるという性質を有する。このような接続対象部材の接続に導電フィルムを用いた場合には、はんだ粒子が電極上に集まりにくい傾向がある。これに対して、導電ペーストを用いることで、樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル又はリジッドフレキシブル基板を用いたとしても、はんだ粒子を電極上に効率的に集めることで、電極間の導通信頼性を十分に高めることができる。樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル又はリジッドフレキシブル基板を用いる場合に、半導体チップ等の他の接続対象部材を用いた場合と比べて、加圧を行わないことによる電極間の導通信頼性の向上効果がより一層効果的に得られる。
【0103】
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極、銀電極、SUS電極、及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブルプリント基板である場合には、上記電極は金電極、ニッケル電極、錫電極、銀電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極はアルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極、銀電極又はタングステン電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物層の材料としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
【0104】
本発明に係る接続構造体では、上記第1の電極及び上記第2の電極は、エリアアレイ又はペリフェラルにて配置されていることが好ましい。上記第1の電極及び上記第2の電極が、エリアアレイ又はペリフェラルにて配置されている場合において、本発明の効果がより一層効果的に発揮される。上記エリアアレイとは、接続対象部材の電極が配置されている面にて、格子状に電極が配置されている構造のことである。上記ペリフェラルとは、接続対象部材の外周部に電極が配置されている構造のことである。電極が櫛型に並んでいる構造の場合は、櫛に垂直な方向に沿ってはんだ粒子が凝集すればよいのに対して、上記エリアアレイ又はペリフェラル構造では電極が配置されている面において、全面にて均一にはんだ粒子が凝集する必要がある。そのため、従来の方法では、はんだ量が不均一になりやすいのに対して、本発明の方法では、全面にて均一にはんだ粒子を凝集させることができる。
【0105】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0106】
以下の材料を用意した。
【0107】
(熱硬化性化合物)
熱硬化性化合物1(フェノールノボラック型エポキシ化合物、DOW社製「DEN431」、51.7℃における粘度1400mPa・s)
熱硬化性化合物2(フェノールノボラック型エポキシ化合物、DOW社製「DEN438」、51.7℃における粘度35000mPa・s)
【0108】
(はんだ粒子)
はんだ粒子1(SnAgCuはんだ粒子、三井金属鉱業社製「Sn96.5Ag3Cu0.5 DS10」、平均粒子径10.0μm、融点:219℃)
はんだ粒子2(SnAgCuはんだ粒子、三井金属鉱業社製「Sn96.5Ag3Cu0.5 ST-3」、平均粒子径3.0μm、融点:219℃)
はんだ粒子3(SnAgCuはんだ粒子、三井金属鉱業社製「Sn96.5Ag3Cu0.5 ST-2」、平均粒子径2.0μm、融点:219℃)
はんだ粒子4(SnBiはんだ粒子、三井金属社製「Sn42Bi58 DS10」、平均粒子径10.0μm、融点139℃)
はんだ粒子5(SnBiはんだ粒子、三井金属社製「Sn42Bi58 ST-3」、平均粒子径3.0μm、融点139℃)
はんだ粒子6(SnBiはんだ粒子、三井金属社製「Sn42Bi58 ST-2」、平均粒子径2.0μm、融点139℃)
【0109】
(フラックス)
アジピン酸ベンジルアミン塩(下記の合成例1に従って作製、融点180℃、アジピン酸の沸点338℃、ベンジルアミンの沸点185℃)
グルタル酸ベンジルアミン塩(下記の合成例2に従って作製、融点108℃、グルタル酸の沸点200℃、ベンジルアミンの沸点185℃)
【0110】
(合成例1)
ガラスビンに、反応溶媒である水24gと、アジピン酸(和光純薬工業社製)13.89gとを入れ、室温で均一になるまで溶解させた。その後、ベンジルアミン(和光純薬工業社製)10.715gを入れて、約5分間撹拌し、混合液を得た。得られた混合液を5℃~10℃の冷蔵庫に入れて、一晩放置した。析出した結晶をろ過により分取し、水で洗浄し、真空乾燥し、アジピン酸ベンジルアミン塩を得た。
【0111】
(合成例2)
ガラスビンに、反応溶媒である水24gと、グルタル酸(和光純薬工業社製)13.212gとを入れ、室温で均一になるまで溶解させた。その後、ベンジルアミン(和光純薬工業社製)10.715gを入れて、約5分間撹拌し、混合液を得た。得られた混合液を5~10℃の冷蔵庫に入れて、一晩放置した。析出した結晶をろ過により分取し、水で洗浄し、真空乾燥し、フラックス1を得た。
【0112】
(有機酸)
N-オレオイルサルコシン(アミド結合を有する不飽和モノカルボン酸、炭素数21)
オレイン酸(不飽和モノカルボン酸、炭素数18)
パルミチン酸(モノカルボン酸、炭素数16)
ミリスチン酸(モノカルボン酸、炭素数14)
ラウリン酸(モノカルボン酸、炭素数12)
オクタン酸(モノカルボン酸、炭素数8)
【0113】
(実施例1~12及び比較例1,2)
導電材料(異方性導電ペースト)の作製:
下記の表1~4に示す成分を下記の表1~4に示す配合量で配合して、導電材料(異方性導電ペースト)を得た。
【0114】
(評価)
(1)初期のチクソトロピックインデックス、及び(2)貯蔵安定性
E型粘度計(東機産業社製「TVE22L」)を用いて、得られた導電材料の以下の粘度を測定した。
【0115】
作製直後の上記導電材料の25℃及び5rpmでの粘度(ηA)
作製直後の上記導電材料の25℃及び0.5rpmでの粘度(ηB)
24時間経過後の上記導電材料の25℃及び5rpmでの粘度(ηC)
24時間経過後の上記導電材料の25℃及び0.5rpmでの粘度(ηD)
【0116】
測定結果から、比(ηB/ηA)(初期のチクソトロピックインデックス)、及び比(ηD/ηC)(24時間経過後のチクソトロピックインデックス)を算出した。さらに、比((ηD/ηC)/(ηB/ηA))を算出した。なお、ηC及びηDは、より具体的には、得られた導電材料を25℃及び50%RHの条件で24時間放置した後の導電材料の粘度を測定して求めた。初期のチクソトロピックインデックス、及び貯蔵安定性を、以下の基準で判定した。
【0117】
[初期のチクソトロピックインデックスの判定基準]
○○:比(ηB/ηA)が3.0以上
〇:比(ηB/ηA)が2.5以上3.0未満
×:比(ηB/ηA)が2.5未満
【0118】
[貯蔵安定性の判定基準]
○○:比((ηD/ηC)/(ηB/ηA))が0.90以上
〇:比((ηD/ηC)/(ηB/ηA))が0.60以上0.90未満
×:比((ηD/ηC)/(ηB/ηA))が0.60未満
【0119】
(3)はんだ凝集性
接続構造体の作製:
第1,2の接続対象部材として、L/Sが60μm/90μmであるCu/Au電極パターンを表面に有するガラスエポキシ基板(材質:FR-4、厚み:0.5mm)を用意した。第1の接続対象部材の上面に、スクリーン印刷により、作製直後の導電材料(異方性導電ペースト)を厚さ100μmとなるように印刷し、導電材料(異方性導電ペースト)層を形成した。次に、導電材料(異方性導電ペースト)層の上面に第2の接続対象部材を電極同士が対向するように積層した。導電材料(異方性導電ペースト)層には、上記第2の接続対象部材の重量は加わる。その状態から、導電材料(異方性導電ペースト)層の温度が、260℃(はんだ粒子1~3の場合)又は180℃(はんだ粒子4~6の場合)となるように加熱して、導電材料(異方性導電ペースト)層を硬化させ、第1の接続対象部材と第2の接続対象部材とを接続している接続部を備える接続構造体を得た。加熱時には、加圧を行わなかった。
【0120】
はんだ凝集性の評価:
得られた接続構造体において、光学顕微鏡(OLYMPUS社製「BX53M」)を用いて、第1の電極と接続部と第2の電極との積層方向に第1の電極と第2の電極との対向し合う部分の顕微鏡画像を取得した。次いで、画像処理ソフト「ImageJ」を用いて、取得した顕微鏡画像の画像処理を行い、第1の電極と第2の電極との対向し合う部分(接続部中のはんだ部)の周囲に形成されているサイドボール量をピクセル値に換算した。はんだ凝集性を以下の基準で判定した。
【0121】
[はんだ凝集性の判定基準]
○○:ピクセル値が1500未満
○:ピクセル値が1500以上3000未満
×:ピクセル値が3000以上
【0122】
導電材料の組成及び結果を下記の表1~4に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
【表3】
【0126】
【表4】
【符号の説明】
【0127】
1…接続構造体
2…第1の接続対象部材
2a…第1の電極
3…第2の接続対象部材
3a…第2の電極
4…接続部
4A…はんだ部
4B…硬化物部
11…導電材料
11A…はんだ粒子
11B…熱硬化性化合物
図1
図2