(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103112
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 3/39 20060101AFI20240725BHJP
B66C 23/687 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
E02F3/39
B66C23/687 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007274
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大南 有正
(72)【発明者】
【氏名】稲元 昭
(72)【発明者】
【氏名】関 誠治
(72)【発明者】
【氏名】江東 真也
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA20
3F205AC01
3F205BA01
3F205CB05
3F205CB17
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で昇降シリンダの座屈を防止する。
【解決手段】作業装置5は、チューブ18Aが第1の連結ピン18Eを介してアーム10に連結された昇降シリンダ18と、昇降シリンダ18のロッド18Bに第2の連結ピン18Gを介して連結されたシーブ取付部材14と、シーブ取付部材14に取付けられた第1昇降用シーブ19と、アーム10に設けられた第2昇降用シーブ23と、第1昇降用シーブ19と第2昇降用シーブ23とに巻回され一端38Aがアーム10に取付けられる昇降ロープ38と、昇降ロープ38の他端38Bに支持されたクラムシェルバケット9とを備える。昇降シリンダ18のロッド18Bの先端側には、ピン孔52Aを有する座屈防止部材50が設けられ、座屈防止部材50のピン孔52Aには、第1の連結ピン18Eおよび第2の連結ピン18Gに対して固定された座屈防止ピン53が挿通される。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体と、前記車体に設けられた作業装置とからなり、
前記作業装置は、前記車体に対して回動可能に設けられたアームと、
チューブおよびロッドの一方が第1の連結ピンを介して前記アームに連結された昇降シリンダと、
前記昇降シリンダの前記チューブおよび前記ロッドの他方に第2の連結ピンを介して連結され前記アームの長さ方向に移動するシーブ取付部材と、
前記シーブ取付部材に取付けられた第1シーブと、
前記第1シーブから離間して前記アームに設けられた第2シーブと、
前記第1シーブと前記第2シーブとに巻回され一端が前記アームに取付けられる昇降ロープと、
前記昇降ロープの他端に支持され、前記昇降シリンダの伸縮による前記第1シーブと前記第2シーブとの間隔の変化により前記アームに対して昇降するバケットとを備えてなる作業機械において、
前記昇降シリンダの前記ロッドの先端側には、前記昇降シリンダの長さ方向において前記昇降シリンダから離れる方向に突出し、前記昇降シリンダの長さ方向と直交する方向に貫通するピン孔を有する座屈防止部材が設けられ、
前記座屈防止部材の前記ピン孔には、前記第1の連結ピンおよび前記第2の連結ピンに対して固定された座屈防止ピンが挿通されていることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
前記座屈防止部材は、前記座屈防止ピンの外径寸法よりも大きな幅寸法を有し、一定の間隔をもって対向する複数枚の板体を含んで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記座屈防止部材の前記ピン孔は、前記座屈防止ピンと直交する方向に延びる長孔状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項4】
前記座屈防止部材は、前記昇降シリンダの前記ロッドの先端側に締結具を用いて着脱可能に取付けられていることを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項5】
前記座屈防止部材の前記ピン孔は、前記座屈防止ピンと直交する方向に延びる直線部を有する長孔状に形成され、
前記座屈防止ピンには、前記長孔状に形成された前記ピン孔の直線部に当接する平面部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項6】
前記シーブ取付部材には、前記第1シーブを回転可能に支持するシーブ軸が設けられ、
前記座屈防止ピンは前記シーブ軸に一体形成されていることを特徴とする請求項2に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、立坑の掘削作業等に好適に用いられる作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
自走可能な車体と、車体に設けられた作業装置とを備えた作業機械として、立坑の掘削作業を行う深礎掘削機が知られている。深礎掘削機の作業装置は、通常、基端側が車体に回動可能に取付けられたブームと、ブームの先端側に回動可能に取付けられたアームと、アームに対して昇降可能に設けられたクラムシェルバケットとを含んで構成されている。深礎掘削機は、アームの先端を立坑の上方に配置した状態でクラムシェルバケットを立坑内に下ろし、クラムシェルバケットを開閉させて土砂を掘削する。
【0003】
深礎掘削機の作業装置としては、伸縮可能に重ね合わされた複数段のアームを備え、最下段のアームにクラムシェルバケットが取付けられたテレスコピック式の作業装置、あるいは、アームの先端から昇降ロープおよび開閉ロープを用いてクラムシェルバケットが吊下げられ、アームに設けられたバケット昇降・開閉装置によってロープの巻取り、巻出しを行うことによりクラムシェルバケットを昇降、開閉させる作業装置が知られている。これらの深礎掘削機の作業装置には、クラムシェルバケットを昇降させるための長尺な昇降シリンダが設けられている。
【0004】
ここで、深礎掘削機の作業装置においては、通常、昇降シリンダのチューブおよびロッドが、それぞれアームに回動可能にピン結合されている。昇降シリンダは長尺であるため、昇降シリンダの作動時に、ピン結合部の隙間等によって昇降シリンダに僅かに回動変位を生じることがある。また、作業時にロッドに圧縮方向の負荷がかかった場合、ロッドが撓もうとすることでロッドに回動変位が生じ得る。このように、掘削作業時に昇降シリンダに対して縮小方向の荷重(圧縮荷重)が作用すると、昇降シリンダが座屈する虞がある。これに対し、1段目のアームに昇降シリンダのロッドの上端部がピン結合され、2段目のアームに昇降シリンダのチューブがピン結合されたテレスコピック式の作業装置において、ロッドの上端部に固定した座屈防止用のプレートと、1段目のアームの上端部に設けた押さえ板とによって昇降シリンダの座屈を防止した作業装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1による作業装置は、ロッドの上端部に固定したプレートを、1段目のアームに設けた押さえ板によって挟み込むことにより、ロッドの上端部の回動変位を拘束する。これにより、昇降シリンダに作用する縮小方向の荷重に対し、昇降シリンダの座屈荷重を大きくすることができる。
【0007】
ここで、特許文献1による作業装置は、1段目のアームと3段目のアームとが引上げロープを介して連結され、昇降シリンダによって2段目のアームと3段目のアームを連動して昇降させるため、2段目のアームの上端部に設けられた引上げシーブに引上げロープが巻回されている。このため、1段目のアームに設けられる押さえ板は、引上げシーブとの干渉を避けるため、またアーム内部への配置は組立が困難になるために、引上げシーブよりも上方に配置する必要があり、座屈防止用のプレートが固定されるロッドの上端部は、引上げシーブよりも上方で押さえ板に挟まれることになる。この結果、昇降シリンダは、2段目のアームの昇降動作に関与しない余剰の長さ(ストローク)が必要となり、座屈荷重が低下してしまう上に、昇降シリンダの重量も増加するという問題がある。
【0008】
さらに、特許文献1による作業装置は、昇降シリンダのロッドの上端部に固定したプレートを、1段目のアームに設けた押さえ板によって挟み込む構成となっている。このため、プレートに対して曲げ荷重が作用しないように、プレートと押さえ板との間にスペーサを装着してプレートの位置調整を行う必要があり、プレートを押さえ板で挟み込むときの作業性が低下するという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、簡単な構成で昇降シリンダの座屈を防止することができるようにした作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、自走可能な車体と、前記車体に設けられた作業装置とからなり、前記作業装置は、前記車体に対して回動可能に設けられたアームと、チューブおよびロッドの一方が第1の連結ピンを介して前記アームに連結された昇降シリンダと、前記昇降シリンダの前記チューブおよび前記ロッドの他方に第2の連結ピンを介して連結され前記アームの長さ方向に移動するシーブ取付部材と、前記シーブ取付部材に取付けられた第1シーブと、前記第1シーブから離間して前記アームに設けられた第2シーブと、前記第1シーブと前記第2シーブとに巻回され一端が前記アームに取付けられる昇降ロープと、前記昇降ロープの他端に支持され、前記昇降シリンダの伸縮による前記第1シーブと前記第2シーブとの間隔の変化により前記アームに対して昇降するバケットとを備えてなる作業機械において、前記昇降シリンダの前記ロッドの先端側には、前記昇降シリンダの長さ方向において前記昇降シリンダから離れる方向に突出し、前記昇降シリンダの長さ方向と直交する方向に貫通するピン孔を有する座屈防止部材が設けられ、前記座屈防止部材の前記ピン孔には、前記第1の連結ピンおよび前記第2の連結ピンに対して固定された座屈防止ピンが挿通されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロッドの先端側に設けられた座屈防止部材のピン孔に、座屈防止ピンが挿通されることにより、昇降シリンダのロッドの先端側の回動変位を拘束することができ、昇降シリンダの座屈を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態が適用された深礎掘削機を示す左側面図である。
【
図2】バケット昇降・開閉装置を示す左側面図である。
【
図3】バケット昇降・開閉装置を示す平面図である。
【
図4】バケット昇降・開閉装置を示す右側面図である。
【
図6】ガイドアームおよびシーブ取付部材等を示す
図2中の矢示VI-VI方向から見た断面図である。
【
図7】アーム本体と昇降シリンダとの連結部を示す
図2中の矢示VII-VII方向から見た断面図である。
【
図8】昇降シリンダ、シーブ取付部材、第1昇降用シーブ、第1開閉用シーブ、座屈防止部材、座屈防止ピン等を示す
図2中の矢示VIII-VIII方向から見た断面図である。
【
図9】座屈防止板、ピン孔、座屈防止ピン等を示す
図8中の矢示IX-IX方向から見た断面図である。
【
図10】第2の実施形態による座屈防止板、座屈防止ピン等を示す
図8と同様位置の断面図である。
【
図11】第3の実施形態による座屈防止板、座屈防止ピン等を示す
図8と同様位置の断面図である。
【
図12】本発明の第4の実施形態が適用されたテレスコピック式の作業装置を有する深礎掘削機を示す左側面図である。
【
図14】昇降シリンダ、座屈防止板、座屈防止ピン等を示す
図13中の矢示XIV-XIV方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る作業機械として深礎掘削機を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。なお、実施形態では、深礎掘削機の走行方向を前後方向とし、走行方向と直交する方向を左右方向として説明する。
【0014】
図1ないし
図9は、本発明の第1の実施形態を示している。深礎掘削機1は、例えばクローラ式の油圧ショベルをベースにして製造されている。深礎掘削機1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3に設けられた後述の作業装置5とにより構成されている。下部走行体2と上部旋回体3は、深礎掘削機1の車体を構成している。
【0015】
キャブ4は、上部旋回体3の左前側に設けられている。キャブ4は運転室を画成し、深礎掘削機1を操縦するオペレータが搭乗する。キャブ4内には、オペレータが座る運転席4Aが設けられ、運転席4Aの周囲には、下部走行体2の走行動作、上部旋回体3の旋回動作、および作業装置5を操作するための操作装置(図示せず)が設けられている。
【0016】
作業装置5は、上部旋回体3に上下方向に回動可能に設けられたブーム6と、後述のアーム10と、クラムシェルバケット9と、バケット昇降・開閉装置17と、座屈防止機構49と、を含んで構成されている。上部旋回体3とブーム6との間にはブームシリンダ7が設けられ、ブーム6は、ブームシリンダ7の伸縮動作に応じて上部旋回体3に対して回動する。ブーム6とアーム10との間にはアームシリンダ8が設けられ、アーム10は、アームシリンダ8の伸縮動作に応じてブーム6ないし上部旋回体3に対して回動する。
【0017】
クラムシェルバケット9は、アーム10の前端から後述する昇降ロープ38を用いて昇降可能に吊り下げられている。クラムシェルバケット9は、バケット支持部9Aと、バケット支持部9Aの下側に開閉可能に設けられた一対のバケット9Bと、一対のバケット9Bが回動可能に連結された連結ブラケット9Cと、バケット支持部9Aと一対のバケット9Bとの間を連結する一対の開閉アーム9Dとを有している。バケット支持部9Aには、複数枚の上側シーブ9Eが設けられ、連結ブラケット9Cには、上側シーブ9Eと上下方向で対向する複数枚の下側シーブ9Fが設けられている。
【0018】
クラムシェルバケット9のバケット支持部9Aには、昇降ロープ38の他端38Bが取付けられている。クラムシェルバケット9の上側シーブ9Eと下側シーブ9Fには、後述する開閉ロープ40が交互に巻回され、開閉ロープ40の他端40Bは、クラムシェルバケット9のバケット支持部9Aに取付けられている。
【0019】
アーム10は、ブーム6の先端に回動可能に設けられている。
図5ないし
図7に示すように、アーム10は、中空な筒体により形成され前後方向に延びるアーム本体11と、アーム本体11の後側に着脱可能に設けられた一対のガイドアーム12,13と、ガイドアーム12,13に移動可能に取付けられたシーブ取付部材14とにより、分割可能に構成されている。
【0020】
アーム本体11は、アーム10のベースとなるもので、長方形の断面形状を有する角筒体として形成されている。アーム本体11は、アーム10の長さ方向(前後方向)と直交する方向(左右方向)において対向する左側面板11Aおよび右側面板11Bと、左側面板11Aおよび右側面板11Bの上端間を連結する上面板11Cと、左側面板11Aおよび右側面板11Bの下端間を連結する下面板11Dとによって囲まれている。
【0021】
左側面板11Aと右側面板11Bとの間隔は、上面板11Cと下面板11Dとの間隔よりも小さく設定されている。アーム本体11の前端11Eは閉塞され、アーム本体11の後端11Fは開口端となっている。アーム本体11の上面板11Cのうち、前後方向の中央部より前側に位置する部位には、中央部より後側に位置する部位よりも高さ(下面板11Dとの間隔)が低い段差面11Gが形成されている。段差面11Gには、後述する中間ガイドシーブ37が設けられている。アーム本体11の下面板11Dには、ブーム取付ブラケット11Hとシリンダ取付ブラケット11Jとが設けられている。ブーム取付ブラケット11Hは、連結ピン11Kを介してブーム6の先端に回動可能に連結されている(
図1参照)。シリンダ取付ブラケット11Jは、基端がブーム6に取付けられたアームシリンダ8の先端にピン結合されている。従って、アーム本体11は、アームシリンダ8の伸縮動作に応じて、連結ピン11Kを中心として前後方向ないし上下方向に回動する。
【0022】
左側面板11Aおよび右側面板11Bの後端11F側には、それぞれ上下に離間して左右方向に貫通する2個のピン挿通孔11L,11Mが形成されている。これらピン挿通孔11L,11Mには、後述する連結ピン12B,13Bが挿通される。また、左側面板11Aおよび右側面板11Bのうちピン挿通孔11L,11Mよりも前側には、それぞれ左右方向に貫通するトラニオンピン挿通孔11Nが、同心上に形成されている(
図7参照)。これら2個のトラニオンピン挿通孔11Nには、後述する第1の連結ピン18Eが挿通される。
【0023】
ガイドアーム12,13は、上下方向で対をなした状態でアーム本体11の後側に着脱可能に取付けられている。ガイドアーム12,13は、それぞれ長方形の断面形状を有する角筒体として形成され、前後方向に延びている。ガイドアーム12,13の前端には、それぞれ左右方向に延びる円筒部12A,13Aが固定されている。ガイドアーム12の円筒部12Aの内周側には連結ピン12Bが挿通され、連結ピン12Bの両端は、アーム本体11のピン挿通孔11Lに挿通されている。ガイドアーム13の円筒部13Aの内周側には連結ピン13Bが挿通され、連結ピン13Bの両端は、アーム本体11のピン挿通孔11Mに挿通されている。一方、ガイドアーム12,13の後端は、連結部材13Cを介して連結されている。これにより、ガイドアーム12,13は、上下方向に一定の間隔を保った状態でアーム本体11の後端11Fから後方に延在している。
【0024】
シーブ取付部材14は、一対のガイドアーム12,13に移動可能に取付けられている。シーブ取付部材14は、後述する第1昇降用シーブ19と第1開閉用シーブ21とが取付けられた状態で、ガイドアーム12,13に沿って前後方向に移動する。シーブ取付部材14は、アーム本体11と同等な長方形の断面形状を有する筒体として形成され、ガイドアーム12,13を外側から取り囲んでいる。シーブ取付部材14は、左側板14A、右側板14B、上板14Cおよび下板14Dによって囲まれた短尺な筒体(枠体)として形成されている。
【0025】
シーブ取付部材14を構成する左側板14Aおよび右側板14Bの前側部位には、それぞれ左右方向に貫通するピン挿通孔14Eが、同心上に形成されている。これら2個のピン挿通孔14Eには、後述する第2の連結ピン18Gが挿通される。シーブ取付部材14を構成する左側板14Aの中央部には、左右方向に貫通する左軸取付孔14Fが形成され、右側板14Bの中央部には、左右方向に貫通する右軸取付孔14Gが形成されている。左軸取付孔14Fには、後述の第1昇降用シーブ軸20が取付けられ(
図2参照)、右軸取付孔14Gには、後述の第1開閉用シーブ軸22が取付けられる(
図4参照)。
【0026】
シーブ取付部材14の左側板14A、右側板14B、上板14Cの内周面とガイドアーム12との間には、それぞれスライドプレート15が設けられ、スライドプレート15は、ガイドアーム12に摺動可能に当接している。シーブ取付部材14の左側板14A、右側板14B、下板14Dの内周面とガイドアーム13との間には、それぞれスライドプレート16が設けられ、スライドプレート16は、ガイドアーム13に摺動可能に当接している。これらスライドプレート15,16は、ボルト等を用いてシーブ取付部材14に固定され、シーブ取付部材14を、ガイドアーム12,13に対して円滑に移動(摺動)させる(
図6参照)。
【0027】
バケット昇降・開閉装置17は、アーム10に設けられている。バケット昇降・開閉装置17は、クラムシェルバケット9の昇降動作と開閉動作を含む各種の動作を制御する。バケット昇降・開閉装置17は、後述の昇降シリンダ18、第1昇降用シーブ19、第1開閉用シーブ21、第2昇降用シーブ23、第2開閉用シーブ30、開閉シリンダ31、中間ガイドシーブ37、昇降ロープ38、開閉ロープ40、緩み調整用シーブ47、緩み調整シリンダ48を含んで構成されている。
【0028】
昇降シリンダ18は、アーム10を構成するアーム本体11内に設けられ、アーム本体11の長さ方向(前後方向)に沿って延びている。昇降シリンダ18は、キャブ4内に設けられた操作装置の操作に応じて伸長または縮小することにより、クラムシェルバケット9を昇降させる。昇降シリンダ18は、チューブ18Aと、チューブ18A内に挿嵌されたピストン(図示せず)と、基端がピストンに取付けられ先端がチューブ18Aから突出したロッド18Bとを有している。
【0029】
図7に示すように、昇降シリンダ18のチューブ18Aには、取付フランジ18Cが固定され、取付フランジ18Cには、チューブ18Aを挟んで2個のピン穴18Dが同心上に形成されている。これら2個のピン穴18Dには、アーム本体11(左側面板11Aおよび右側面板11B)のトラニオンピン挿通孔11Nに挿通された2本の第1の連結ピン18Eが嵌合する。これにより、昇降シリンダ18のチューブ18Aは、アーム本体11に対し、第1の連結ピン18Eを介して連結されている。
【0030】
一方、
図8に示すように、昇降シリンダ18のロッド18Bの先端には、角筒状の取付アイ18Fが設けられている。シーブ取付部材14のピン挿通孔14Eと取付アイ18Fとには、第2の連結ピン18Gが挿通されている。これにより、昇降シリンダ18のロッド18Bは、第2の連結ピン18Gを介してシーブ取付部材14に連結されている。また、取付アイ18Fには、後述の座屈防止部材50が取付けられている。
【0031】
このように、昇降シリンダ18のチューブ18Aは、第1の連結ピン18Eを介してアーム本体11に取付けられ、ロッド18Bは、第2の連結ピン18Gを介してシーブ取付部材14に取付けられている。従って、昇降シリンダ18を伸縮させることにより、シーブ取付部材14は、ガイドアーム12,13に沿って前後方向に移動する。
【0032】
第1シーブとしての第1昇降用シーブ19は、シーブ取付部材14を構成する左側板14Aの外側面に、第1昇降用シーブ軸20を介して取付けられている。第1昇降用シーブ19は、第1昇降用シーブ軸20の軸方向に並んで複数枚(例えば5枚)設けられ、シーブ取付部材14に対し、第1昇降用シーブ軸20を中心として回転可能に支持されている。
【0033】
図8に示すように、第1昇降用シーブ軸20は、軸方向の中間部がシーブ取付部材14(左側板14A)の左軸取付孔14Fに固定されている。第1昇降用シーブ軸20の一端20Aは、シーブ取付部材14(左側板14A)から外部に向けて突出している。第1昇降用シーブ軸20のうち左側板14Aから外部に突出した部位は、第1昇降用シーブ19を回転可能に支持している。第1昇降用シーブ軸20の他端20Bは、左側板14Aからシーブ取付部材14の内部に向けて突出している。第1昇降用シーブ軸20のうち左側板14Aから内部に突出した部位には、後述する座屈防止ピン53が一体形成されている。
【0034】
第1開閉用シーブ21は、シーブ取付部材14を構成する右側板14Bの外側面に、第1開閉用シーブ軸22を介して取付けられている。第1開閉用シーブ軸22は、一端がシーブ取付部材14(右側板14B)の右軸取付孔14Gに固定され、他端がシーブ取付部材14から右側方に突出している。第1開閉用シーブ21は、第1開閉用シーブ軸22の他端側に軸方向に並んで複数枚(例えば5枚)設けられ、シーブ取付部材14に対し、第1開閉用シーブ軸22を中心として回転可能に支持されている。
【0035】
第2シーブとしての第2昇降用シーブ23は、第1昇降用シーブ19から離間してアーム本体11に設けられている。第2昇降用シーブ23は、アーム本体11を構成する左側面板11Aの外側面に、第2昇降用シーブ軸24を介して取付けられている。第2昇降用シーブ軸24は、一端がアーム本体11(左側面板11A)の長さ方向の中間部に固定され、他端がアーム本体11から左側方に突出している。第2昇降用シーブ23は、第2昇降用シーブ軸24の軸方向に並んで複数枚(例えば4枚)設けられ、アーム本体11に対し、第2昇降用シーブ軸24を中心として回転可能に支持されている。従って、昇降シリンダ18の伸縮動作に応じてシーブ取付部材14が移動することにより、シーブ取付部材14に取付けられた第1昇降用シーブ19は、第2昇降用シーブ23に対して接近、離間する。第1昇降用シーブ19と第2昇降用シーブ23には、昇降ロープ38が巻回されている。
【0036】
開閉用シーブ移動機構25は、アーム本体11の前後方向の中間部に位置して右側面板11Bに設けられている。開閉用シーブ移動機構25は、第2開閉用シーブ30を前後方向に移動可能に支持している。
図3および
図4に示すように、開閉用シーブ移動機構25は、ガイドレール26と、スライド部材27と、枠部材28と、第2開閉用シーブ軸29とを含んで構成されている。
【0037】
ガイドレール26は、アーム本体11の右側面板11Bに固定されている。スライド部材27は、ガイドレール26に長さ方向に摺動可能に係合している。枠部材28は、スライド部材27にボルト等を用いて取付けられている。枠部材28には、左右方向に延びるロッド取付ピン28Aが取付けられ、ロッド取付ピン28Aには、後述する開閉シリンダ31のロッド31Bが取付けられている。また、枠部材28には、ロッド取付ピン28Aに隣接して左右方向に延びる第2開閉用シーブ軸29が取付けられている。
【0038】
第2開閉用シーブ30は、開閉用シーブ移動機構25の第2開閉用シーブ軸29に回転可能に取付けられている。即ち、第2開閉用シーブ30は、アーム本体11を構成する右側面板11Bの外側面に、開閉用シーブ移動機構25を介して前後方向に移動可能に設けられている。第2開閉用シーブ30は、開閉用シーブ移動機構25に設けられた第2開閉用シーブ軸29の軸方向に並んで複数枚(例えば4枚)設けられ、アーム本体11に対し、第2開閉用シーブ軸29を中心として回転可能に支持されている。
【0039】
開閉シリンダ31は、アーム本体11の後側(後端11F側)に位置して右側面板11Bに設けられている。開閉シリンダ31は前後方向に延び、第1開閉用シーブ21に対して第2開閉用シーブ30を接近、離間させる。開閉シリンダ31は、チューブ31Aと、チューブ31A内に挿嵌されたピストン(図示せず)と、基端がピストンに取付けられ先端がチューブ31Aから突出したロッド31Bとを有している。チューブ31Aのボトム側は、アーム本体11の右側面板11Bの後端11F側に、ブラケット31Cを介して取付けられている。ロッド31Bの先端は、ロッド取付ピン28Aを介して開閉用シーブ移動機構25の枠部材28に取付けられている。従って、開閉用シーブ移動機構25に取付けられた第2開閉用シーブ30は、開閉シリンダ31の伸縮動作に応じて前後方向に移動し、第1開閉用シーブ21に対して接近、離間する。
【0040】
ガイドシーブ支持軸32は、アーム本体11の前端11E側に設けられている。ガイドシーブ支持軸32の一端は、左側面板11Aの前端11E側に固定され、ガイドシーブ支持軸32の他端は、左側面板11Aから左側方に突出している。ガイドシーブ支持軸32は、昇降ガイドシーブ33および開閉ガイドシーブ34を回転可能に支持している。
【0041】
昇降ガイドシーブ33と開閉ガイドシーブ34とは、ガイドシーブ支持軸32を介してアーム本体11の左側面板11Aに設けられている。昇降ガイドシーブ33と開閉ガイドシーブ34とは、同一の直径を有している。昇降ガイドシーブ33は、第1昇降用シーブ19と第2昇降用シーブ23とに巻回された昇降ロープ38を、クラムシェルバケット9へと導く。開閉ガイドシーブ34は、第1開閉用シーブ21、第2開閉用シーブ30、および後述する中間ガイドシーブ37、緩み調整用シーブ47に巻回された開閉ロープ40を、クラムシェルバケット9へと導く。これにより、
図1に示すように、例えばアーム10を地面に対して水平に保持した状態で、クラムシェルバケット9を、アーム10の前端に配置した昇降ガイドシーブ33に巻回された昇降ロープ38を用いて上下方向に昇降させることができる。
【0042】
昇降ガイドシーブ33と開閉ガイドシーブ34とは、アーム本体11のうち、運転席4Aに座ったオペレータにとって視認性が高い左側面板11Aの前端11E側に配置されている。これにより、オペレータは、クラムシェルバケット9に取付けられた昇降ロープ38および開閉ロープ40の状態を目視によって確認しつつ、バケット昇降・開閉装置17を操作することができる。
【0043】
中間ガイドシーブ軸35は、アーム本体11の前端11E側に位置する段差面11Gに設けられている。アーム本体11の段差面11Gには、断面U字型に屈曲した枠部材36が固定されている。中間ガイドシーブ軸35は、一端が段差面11Gに取付けられ、他端が枠部材36に取付けられることにより、段差面11Gから後方に向けて僅かに傾斜しつつ上方に延びている。
【0044】
中間ガイドシーブ37は、アーム本体11の段差面11Gに、中間ガイドシーブ軸35を介して回転可能に設けられている。中間ガイドシーブ37は、アーム本体11の左側面板11Aに設けられた開閉ガイドシーブ34と、アーム本体11の右側面板11Bに設けられた緩み調整用シーブ47との間に介在し、緩み調整用シーブ47から延びる開閉ロープ40が巻回されることにより、開閉ロープ40を開閉ガイドシーブ34へと案内する。このように、緩み調整用シーブ47と開閉ガイドシーブ34とが、アーム本体11を挟んで互いに反対側に配置されている場合でも、開閉ロープ40を、緩み調整用シーブ47から中間ガイドシーブ37を介して開閉ガイドシーブ34へと円滑に導くことができる。
【0045】
昇降ロープ38は、アーム10とクラムシェルバケット9との間に設けられ、クラムシェルバケット9を昇降可能に支持している。昇降ロープ38はワイヤロープからなり、昇降ロープ38の一端38Aは、アーム本体11の左側面板11Aに突設された左ステー39に取付けられている。昇降ロープ38の他端38Bは、クラムシェルバケット9のバケット支持部9Aに取付けられ、クラムシェルバケット9を支持している(
図1参照)。昇降ロープ38の中間部は、複数枚の第1昇降用シーブ19と複数枚の第2昇降用シーブ23に交互に巻回されている。
【0046】
開閉ロープ40は、アーム10とクラムシェルバケット9との間に設けられ、クラムシェルバケット9の一対のバケット9Bを開閉させる。開閉ロープ40はワイヤロープからなり、開閉ロープ40の一端40Aは、アーム本体11の右側面板11Bに突設された右ステー41に取付けられている。開閉ロープ40の他端40Bは、クラムシェルバケット9のバケット支持部9Aに取付けられている(
図1参照)。開閉ロープ40の中間部は、複数枚の第1開閉用シーブ21と複数枚の第2開閉用シーブ30に交互に巻回されている。また、開閉ロープ40の他端40B側は、クラムシェルバケット9を構成する複数枚の上側シーブ9Eと複数枚の下側シーブ9Fとに交互に巻回されている。
【0047】
クラムシェルバケット9は、昇降シリンダ18が縮小して第1昇降用シーブ19が第2昇降用シーブ23に接近することにより下降し、昇降シリンダ18が伸長して第1昇降用シーブ19が第2昇降用シーブ23から離間することにより上昇する。一方、クラムシェルバケット9は、開閉シリンダ31が縮小して第2開閉用シーブ30が第1開閉用シーブ21に接近することにより開き、開閉シリンダ31が伸長して第2開閉用シーブ30が第1開閉用シーブ21から離間することにより閉じる。
【0048】
緩み調整用シーブ移動機構42は、アーム本体11の前端11E側に位置して右側面板11Bに設けられている。緩み調整用シーブ移動機構42は、緩み調整用シーブ47を前後方向に移動可能に支持している。
図3および
図4に示すように、緩み調整用シーブ移動機構42は、ガイドレール43と、スライド部材44と、枠部材45と、緩み調整用シーブ軸46とを含んで構成されている。
【0049】
ガイドレール43は、アーム本体11の右側面板11Bに固定されている。スライド部材44は、ガイドレール43に長さ方向に摺動可能に係合している。枠部材45は、スライド部材44にボルト等を用いて取付けられている。枠部材45には、左右方向に延びるロッド取付ピン45Aが取付けられ、ロッド取付ピン45Aには、後述する緩み調整シリンダ48のロッド48Bが取付けられている。また、枠部材45には、ロッド取付ピン45Aに隣接して左右方向に延びる緩み調整用シーブ軸46が取付けられている。
【0050】
緩み調整用シーブ47は、緩み調整用シーブ移動機構42の緩み調整用シーブ軸46に回転可能に取付けられている。即ち、緩み調整用シーブ47は、アーム本体11の右側面板11Bに、緩み調整用シーブ移動機構42を介して前後方向に移動可能に設けられている。緩み調整用シーブ47は1枚のシーブによって構成され、アーム本体11に対し、緩み調整用シーブ軸46を中心として回転可能に支持されている。
【0051】
複数枚の第1開閉用シーブ21と複数枚の第2開閉用シーブ30とに巻回された開閉ロープ40は、緩み調整用シーブ47、中間ガイドシーブ37、開閉ガイドシーブ34に順次巻回される。そして、開閉ガイドシーブ34に巻回された開閉ロープ40の他端40B側が、クラムシェルバケット9の上側シーブ9Eと下側シーブ9Fとに巻回された後、開閉ロープ40の他端40Bは、バケット支持部9Aに取付けられている。
【0052】
緩み調整シリンダ48は、開閉用シーブ移動機構25の前側に位置してアーム本体11の右側面板11Bに設けられている。緩み調整シリンダ48は前後方向に延び、第2開閉用シーブ30に対して緩み調整用シーブ47を接近、離間させる。緩み調整シリンダ48は、チューブ48Aと、チューブ48A内に挿嵌されたピストン(図示せず)と、基端がピストンに取付けられ先端がチューブ48Aから突出したロッド48Bとを有している。チューブ48Aのボトム側は、アーム本体11の右側面板11Bにブラケット48Cを介して取付けられている。ロッド48Bの先端は、緩み調整用シーブ移動機構42の枠部材45にロッド取付ピン45Aを介して取付けられている。
【0053】
従って、緩み調整用シーブ移動機構42に取付けられた緩み調整用シーブ47は、緩み調整シリンダ48の伸縮動作に応じて前後方向に移動し、第2開閉用シーブ30に対して接近、離間する。これにより、例えば深礎掘削機1を用いた立坑の掘削作業時に、クラムシェルバケット9が地面に着地し、開閉ロープ40が緩んだ状態において、緩み調整シリンダ48を伸長させて緩み調整用シーブ47を第2開閉用シーブ30から離間させることにより、開閉ロープ40の緩みを除去することができる。
【0054】
次に、本実施形態に用いられる座屈防止機構49について、
図8および
図9を参照して説明する。
【0055】
座屈防止機構49は、昇降シリンダ18のロッド18Bとシーブ取付部材14との間に設けられている。座屈防止機構49は、座屈防止部材50と、座屈防止ピン53とを含んで構成され、昇降シリンダ18に縮小方向の荷重が作用したときに、昇降シリンダ18が座屈するのを防止する。
【0056】
座屈防止部材50は、昇降シリンダ18のロッド18Bの先端に設けられた取付アイ18Fに固定されている。座屈防止部材50は、取付アイ18Fに取付けられた取付ベース51と、取付ベース51に固定された板体としての2枚の座屈防止板52とを有している。取付ベース51は平板状の板体からなり、複数のボルト挿通孔(図示せず)が設けられている。取付ベース51は、ボルト挿通孔に挿通された締結具としてのボルト51Aを、取付アイ18Fに形成されたボルト穴(図示せず)に螺着することにより、取付アイ18Fのうちロッド18Bとは反対側に位置する面に着脱可能に取付けられている。
【0057】
板体としての2枚の座屈防止板52は、昇降シリンダ18の長さ方向(前後方向)に延びる長方形の板体からなり、溶接等の手段を用いて取付ベース51に固定されている。座屈防止板52は、昇降シリンダ18の長さ方向と直交する方向(左右方向)に一定の間隔をもって対向した状態で、昇降シリンダ18の長さ方向において昇降シリンダ18から離れる方向(反対側)に突出している。
図9に示すように、座屈防止板52は、座屈防止ピン53の外径寸法よりも大きな幅寸法Aを有し、昇降シリンダ18の長さ方向と直交する方向(左右方向)に貫通するピン孔52Aが形成されている。座屈防止板52のピン孔52Aは、シーブ取付部材14の左側板14Aに形成された左軸取付孔14Fと同心上に配置され、座屈防止ピン53が挿通される。ピン孔52Aは、座屈防止ピン53と直交する方向(座屈防止板52の長さ方向)に延びる直線部52Bを有する長孔状に形成され、ピン孔52Aの中心を通って直線部52Bと平行に延びる仮想線は、昇降シリンダ18の中心線O-Oと一致するように構成されている。
なお、本実施形態においては、座屈防止板52のピン孔52Aがシーブ取付部材14の左側板14Aに形成された左軸取付孔14Fと同心上に配置されている場合について説明するが、ピン孔52Aの構成はこれに限定されない。例えば、ピン孔52Aは、シーブ取付部材14の右側板14Bに形成された右軸取付孔14Gと同心上に配置されていてもよい。
【0058】
座屈防止ピン53は、シーブ取付部材14に固定された第1昇降用シーブ軸20に一体的に設けられ、座屈防止板52と共に座屈防止機構49を構成している。座屈防止ピン53は、第1昇降用シーブ軸20の他端20B側、即ちシーブ取付部材14の左側板14Aからシーブ取付部材14の内側に突出した部位に一体形成されている。このように、座屈防止ピン53は、シーブ取付部材14に対して第1昇降用シーブ19を支持する第1昇降用シーブ軸20に一体形成され、第1の連結ピン18Eおよび第2の連結ピン18Gに対して固定されている。ここで、座屈防止ピン53には、径方向で対向する2面の平面部53Aが形成されている。これら2面の平面部53Aは、座屈防止ピン53を座屈防止板52のピン孔52Aに挿通したときに、ピン孔52Aの直線部52Bに摺動可能に当接する。これにより、座屈防止ピン53の平面部53Aは、ピン孔52Aの直線部52Bに対し、座屈防止板52の板厚によって面接触する。従って、座屈防止ピン53とピン孔52Aとの当接部の面圧が減少し、ピン孔52Aおよび座屈防止ピン53の摩耗や、塑性変形などの変形が低減できる構成となっている。
なお、上記したように、ピン孔52Aは、シーブ取付部材14の右側板14Bに形成された右軸取付孔14Gと同心上に配置されていてもよい。この場合、例えば、座屈防止ピン53は、第1開閉用シーブ軸22がシーブ取付部材14の内側に突出するように第1開閉用シーブ軸22と一体に形成されていればよい。この場合でも、座屈防止ピン53は上記したような形状を有し、ピン孔52Aに挿通されていればよい。
【0059】
本実施形態による深礎掘削機1は、上述の如き構成を有するもので、以下、深礎掘削機1を用いて立坑を掘削する作業について説明する。
【0060】
キャブ4に搭乗したオペレータは、例えば
図1に示すように、ブームシリンダ7を操作してブーム6の先端を上方に持上げると共に、アームシリンダ8を操作してアーム10を地面に対して水平な姿勢に保持する。次に、クラムシェルバケット9を、立坑を掘削すべき地面の上方に配置した後、昇降シリンダ18を縮小させる。これにより、シーブ取付部材14が、ガイドアーム12,13に沿って前側に移動し、第1昇降用シーブ19が第2昇降用シーブ23に接近すると共に、第1開閉用シーブ21が第2開閉用シーブ30に接近する。この結果、昇降ロープ38と開閉ロープ40とがアーム10から送り出され、クラムシェルバケット9が下降する。
【0061】
クラムシェルバケット9が地面に近づくと、オペレータは、開閉シリンダ31を縮小させる。これにより、開閉用シーブ移動機構25に取付けられた第2開閉用シーブ30が、第1開閉用シーブ21に接近し、開閉ロープ40がアーム10から送り出され、クラムシェルバケット9の一対のバケット9Bが全開となる。クラムシェルバケット9が全開となった状態で、オペレータは昇降シリンダ18を縮小させ、クラムシェルバケット9の一対のバケット9Bを、その自重によって地中に潜り込ませる。
【0062】
次に、オペレータは、クラムシェルバケット9を閉じる前に、緩み調整シリンダ48を伸長させ、緩み調整用シーブ移動機構42に取付けられた緩み調整用シーブ47を、第2開閉用シーブ30から離間させる。この結果、昇降ロープ38は緩んだまま、開閉ロープ40の緩みのみが除去される。この状態で、オペレータは、開閉シリンダ31を伸長させ、開閉用シーブ移動機構25に取付けられた第2開閉用シーブ30を第1開閉用シーブ21から離間させることにより、開閉ロープ40をアーム10側に引上げる。これにより、クラムシェルバケット9は、自重によって地中に潜り込みながら閉じていき、大量の土砂を掬うことができる。
【0063】
クラムシェルバケット9を閉じて土砂を掬った後、オペレータは、昇降シリンダ18を伸長させる。これにより、シーブ取付部材14に取付けられた第1昇降用シーブ19が第2昇降用シーブ23から離間し、昇降ロープ38がアーム10側に引上げられると共に、第1開閉用シーブ21が第2開閉用シーブ30から離間し、開閉ロープ40がアーム10側に引上げられる。この結果、昇降ロープ38と開閉ロープ40とが一緒にアーム10側に引上げられ、クラムシェルバケット9は、土砂を保持した状態で昇降ロープ38と開閉ロープ40とによって持上げられて上昇する。
【0064】
クラムシェルバケット9を立坑の外部まで上昇させた後には、例えば上部旋回体3を旋回させてダンプトラック(図示せず)の荷台の上方までクラムシェルバケット9を移動させる。この状態で、オペレータは、開閉シリンダ31を縮小させ、開閉用シーブ移動機構25に取付けられた第2開閉用シーブ30を、第1開閉用シーブ21に接近させる。この結果、開閉ロープ40がアーム10から引出され、クラムシェルバケット9が開くことにより、掘削した土砂をダンプトラックの荷台に放土することができる。
【0065】
ここで、例えば粘土質の地層に立坑を掘削するときに、土砂を掬ったクラムシェルバケット9が穴底面に密着してしまい、昇降シリンダ18を伸長させたとしても、クラムシェルバケット9を上昇させることができなくなることがある。これに対し、例えばブームシリンダ7を伸長させてブーム6の先端を持上げることにより、クラムシェルバケット9を穴底面から強制的に離脱させる方法がある。しかし、ブーム6の先端を持上げてもクラムシェルバケット9が穴底面から離脱できない場合には、ブーム6の先端が持上がることに伴って昇降シリンダ18が縮小することになる。この結果、昇降シリンダ18の縮小方向に大きな荷重が作用し、例えば第2の連結ピン18Gを介して連結されたシーブ取付部材14と昇降シリンダ18のロッド18Bとの連結部に隙間が生じることやロッドへの撓む方向の負荷がかかることにより、昇降シリンダ18がシーブ取付部材14に対して僅かに回動変位した場合には、昇降シリンダ18(ロッド18B)が座屈する虞がある。
【0066】
これに対し、本実施形態では、第2の連結ピン18Gを介してシーブ取付部材14に取付けられたロッド18Bの取付アイ18Fに、座屈防止板52を有する座屈防止部材50が取付けられている。一方、シーブ取付部材14に固定された第1昇降用シーブ軸20の他端20B側に、座屈防止ピン53が一体形成され、この座屈防止ピン53が、座屈防止板52に形成されたピン孔52Aに挿通されている。これにより、昇降シリンダ18の縮小方向に大きな荷重が作用した場合でも、シーブ取付部材14に対する昇降シリンダ18の回動変位を拘束し、昇降シリンダ18の座屈荷重の低下を抑えることにより、昇降シリンダ18の座屈を防止することができる。しかも、座屈防止ピン53は、座屈防止部材50を構成する2枚の座屈防止板52にそれぞれ形成されたピン孔52Aに挿通されている。これにより、昇降シリンダ18を座屈させようとする荷重の反力を、2枚の座屈防止板52によって確実に受けることができる。
【0067】
このように、本実施形態によれば、昇降シリンダ18のロッド18Bに設けられた取付アイ18Fに座屈防止部材50を取付け、座屈防止部材50(座屈防止板52)のピン孔52Aに、第1昇降用シーブ軸20に一体形成した座屈防止ピン53を挿通するだけの簡単な構成で、昇降シリンダ18の座屈を防止することができる。
【0068】
この場合、本実施形態では、昇降シリンダ18のロッド18Bの先端側(取付アイ18F)に、ピン孔52Aを有する座屈防止部材50を取付け、第1昇降用シーブ19を支持する第1昇降用シーブ軸20に一体形成した座屈防止ピン53を、ピン孔52Aに挿通する構成としている。従って、例えば特許文献1のように、引上げシーブとの干渉を避けて昇降シリンダのロッドの上端部に座屈防止機構を設ける必要がない。この結果、本実施形態では、特許文献1に比較して昇降シリンダ18の長さを短縮することができ、座屈荷重も大きくすることができる。また、座屈防止部材50は、アーム10の内部に埋設されることができる。また、昇降シリンダ18の重量を低減することにより、作業装置5全体の軽量化およびコスト低減を図ることができる。
【0069】
また、本実施形態では、座屈防止部材50に形成されたピン孔52Aの中心を通って直線部52Bと平行に延びる仮想線が、昇降シリンダ18の中心線O-Oと一致している(
図9参照)。これにより、シーブ取付部材14に形成されたピン挿通孔14E(第2の連結ピン18Gの取付孔)と、左軸取付孔14F(第1昇降用シーブ軸20の取付孔)との間隔が大きい場合でも、第1昇降用シーブ軸20に一体形成された座屈防止ピン53の第2の連結ピン18Gに対する取付位置を、長孔状に形成されたピン孔52Aの範囲で調整することができる。従って、例えば特許文献1のように、昇降シリンダのロッドに固定したプレートと、1段目のアームに設けた押さえ板との間にスペーサを装着してプレートの位置調整を行うといった煩雑な作業を不要にできる。この結果、本実施形態では、座屈防止部材50に形成されたピン孔52Aに、第1昇降用シーブ軸20に一体形成された座屈防止ピン53を挿通するときの作業性を高めることができる。
【0070】
また、本実施形態では、座屈防止部材50が、昇降シリンダ18の取付アイ18Fにボルト51Aを用いて着脱可能に取付けられている。このため、例えばピン孔52Aの中心が、昇降シリンダ18の中心線O-Oに対して当該中心線O-Oと直交する方向に僅かに偏心している場合でも、座屈防止部材50(取付ベース51)に形成されたボルト挿通孔(図示せず)とボルト51Aとの隙間の範囲で座屈防止部材50の取付位置を調整することにより、ピン孔52Aの中心を通って直線部52Bと平行に延びる仮想線を、昇降シリンダ18の中心線O-Oと一致させることができる。
【0071】
かくして、実施形態では、深礎掘削機1は、下部走行体2および上部旋回体3からなる自走可能な車体と、上部旋回体3に設けられた作業装置5とからなり、作業装置5は、上部旋回体3に対して回動可能に設けられたアーム10と、チューブ18Aが第1の連結ピン18Eを介してアーム10に連結された昇降シリンダ18と、昇降シリンダ18のロッド18Bに第2の連結ピン18Gを介して連結されアーム10の長さ方向に移動するシーブ取付部材14と、シーブ取付部材14に取付けられた第1昇降用シーブ19と、第1昇降用シーブ19から離間してアーム10に設けられた第2昇降用シーブ23と、第1昇降用シーブ19と第2昇降用シーブ23とに巻回され一端38Aがアーム10に取付けられる昇降ロープ38と、昇降ロープ38の他端38Bに支持され、昇降シリンダ18の伸縮による第1昇降用シーブ19と第2昇降用シーブ23との間隔の変化によりアーム10に対して昇降するクラムシェルバケット9とを備えている。そして、昇降シリンダ18のロッド18Bの先端側には、昇降シリンダ18の長さ方向において昇降シリンダ18から離れる方向に突出し、昇降シリンダ18の長さ方向と直交する方向に貫通するピン孔52Aを有する座屈防止部材50が設けられ、座屈防止部材50のピン孔52Aには、第1の連結ピン18Eおよび第2の連結ピン18Gに対して固定された座屈防止ピン53が挿通されている。
【0072】
この構成によれば、座屈防止部材50のピン孔52Aに座屈防止ピン53が挿通されることにより、第2の連結ピン18Gを介してシーブ取付部材14に連結された昇降シリンダ18(ロッド18B)のシーブ取付部材14に対する回動変位を拘束することができる。この結果、昇降シリンダ18の縮小方向に大きな荷重が作用した場合でも、昇降シリンダ18の座屈荷重の低下を抑え、昇降シリンダ18の座屈を防止することができる。しかも、昇降シリンダ18のロッド18B(取付アイ18F)に取付けた座屈防止部材50と、第1昇降用シーブ軸20に一体形成した座屈防止ピン53とにより、座屈防止機構49を簡単に構成することができる。
【0073】
実施形態では、座屈防止部材50は、座屈防止ピン53の外径寸法よりも大きな幅寸法を有し、一定の間隔をもって対向する複数枚の座屈防止板52を含んで構成されている。この構成によれば、昇降シリンダ18を座屈させようとする荷重の反力を、複数枚の座屈防止板52によって確実に受けることができる。
【0074】
実施形態では、座屈防止部材50のピン孔52Aは、座屈防止ピン53と直交する方向に延びる長孔状に形成されている。この構成によれば、第2の連結ピン18Gに対する座屈防止ピン53の取付位置を、長孔状に形成されたピン孔52Aの範囲で調整することができる。この結果、座屈防止部材50に形成されたピン孔52Aに座屈防止ピン53を挿通するときの作業性を高めることができる。
【0075】
実施形態では、座屈防止部材50は、昇降シリンダ18のロッド18Bの先端側(取付アイ18F)にボルト51Aを用いて着脱可能に取付けられている。この構成によれば、座屈防止部材50(取付ベース51)に形成されたボルト挿通孔とボルト51Aとの隙間の範囲で、取付アイ18Fに対する座屈防止部材50の取付位置を調整することができ、座屈防止部材50を適正な取付位置に配置することができる。
【0076】
実施形態では、座屈防止部材50のピン孔52Aは、座屈防止ピン53と直交する方向に延びる直線部52Bを有する長孔状に形成され、座屈防止ピン53には、長孔状に形成されたピン孔52Aの直線部52Bに当接する平面部53Aが形成されている。この構成によれば、座屈防止ピン53の平面部53Aが、ピン孔52Aの直線部52Bに対し、座屈防止板52の板厚によって面接触する。この結果、座屈防止ピン53とピン孔52Aとの当接部の面圧が減少させることができ、ピン孔52Aおよび座屈防止ピン53の摩耗を低減することにより、その寿命を延ばすことができる。
【0077】
実施形態では、シーブ取付部材14には、第1昇降用シーブ19を回転可能に支持する第1昇降用シーブ軸20が設けられ、座屈防止ピン53は第1昇降用シーブ軸20に一体形成されている。この構成によれば、第1昇降用シーブ軸20を利用して座屈防止ピン53を形成することにより、座屈防止部材50のピン孔52Aに挿通されるだけの座屈防止ピンを設ける場合に比較して部品点数を削減でき、さらに構成を簡素化することができる。
【0078】
次に、
図10は本発明の第2の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、第1昇降用シーブ軸20とは別部材からなる座屈防止ピン59を、第1昇降用シーブ19および第1開閉用シーブ21よりも前側に設けたことにある。なお、本実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0079】
図中、シーブ取付部材54には、第1昇降用シーブ19および第1開閉用シーブ21が回転可能に取付けられている。シーブ取付部材54は、第1の実施形態によるものと同様に、左側板54A、右側板54B、上板(図示せず)、下板54Cによって囲まれた筒体として形成されている。左側板54Aおよび右側板54Bの前側部位には、それぞれピン挿通孔54Dが設けられ、ピン挿通孔54Dに挿通された第2の連結ピン18Gを介して、シーブ取付部材54に昇降シリンダ18のロッド18B(取付アイ18F)が取付けられている。左側板54Aの中間部には、第1昇降用シーブ軸20を取付けるための左軸取付孔54Eが形成され、右側板54Bの中間部には、第1開閉用シーブ軸22を取付けるための右軸取付孔54Fが形成されている。また、左側板54Aおよび右側板54Bのうち、ピン挿通孔54Dと左軸取付孔54Eおよび右軸取付孔54Fとの間には、左右方向に貫通するピン挿通孔54Gがそれぞれ形成されている。
【0080】
座屈防止機構55は、第1の実施形態による座屈防止機構49と同様に、昇降シリンダ18のロッド18Bとシーブ取付部材54との間に設けられている。座屈防止機構55は、座屈防止部材56と、座屈防止ピン59とを含んで構成されているものの、座屈防止ピン59が、第1の実施形態によるものとは異なっている。
【0081】
座屈防止部材56は、昇降シリンダ18の取付アイ18Fにボルト57Aを用いて取付けられた取付ベース57と、取付ベース57に固定された2枚の座屈防止板58とを有している。座屈防止板58は、第1の実施形態による座屈防止板52よりも短尺な長方形の板体からなり、左右方向に貫通するピン孔58Aが形成されている。ピン孔58Aは、座屈防止ピン59と直交する方向に延びる直線部(図示せず)を有する長孔状に形成されている。
【0082】
座屈防止ピン59は、第1昇降用シーブ軸20とは別部材からなり、第1昇降用シーブ19および第1開閉用シーブ21の前縁部よりも前側の位置でシーブ取付部材54のピン挿通孔54Gに取付けられている。座屈防止ピン59の長さ方向の中間部は、座屈防止板58のピン孔58Aに摺動可能に挿通されている。第1の実施形態による座屈防止ピン53と同様に、座屈防止ピン59には、径方向で対向する2面の平面部59Aが形成されている。
【0083】
本実施形態による座屈防止機構55は、上述の如き構成を有するもので、その基本的作用については、第1の実施形態による座屈防止機構49と格別差異はない。然るに、本実施形態によれば、第1昇降用シーブ軸20とは別部材からなる座屈防止ピン59を備えている。このため、シーブ取付部材54に第1昇降用シーブ軸20を介して第1昇降用シーブ19等を取付けた状態で、シーブ取付部材54のピン挿通孔54Gと座屈防止部材56(座屈防止板58)のピン孔58Aとに、座屈防止ピン59を挿通することができる。この結果、座屈防止部材56のピン孔58Aに座屈防止ピン59を挿通するときの作業性を高めることができる。
【0084】
次に、
図11は本発明の第3の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、第1昇降用シーブ軸20とは別部材からなる座屈防止ピン65を、第1昇降用シーブ19および第1開閉用シーブ21よりも後側に設けたことにある。なお、本実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0085】
図中、シーブ取付部材60は、第1の実施形態によるものと同様に、左側板60A、右側板60B、上板(図示せず)、下板60Cによって囲まれた筒体として形成されている。左側板60Aおよび右側板60Bの前側部位には、それぞれピン挿通孔60Dが設けられ、ピン挿通孔60Dに挿通された第2の連結ピン18Gを介して、シーブ取付部材60に昇降シリンダ18のロッド18B(取付アイ18F)が取付けられている。左側板60Aの中間部には、第1昇降用シーブ軸20を取付けるための左軸取付孔60Eが形成され、右側板60Bの中間部には、第1開閉用シーブ軸22を取付けるための右軸取付孔60Fが形成されている。また、左側板60Aおよび右側板60Bの後端側には、左右方向に貫通するピン挿通孔60Gがそれぞれ形成されている。
【0086】
座屈防止機構61は、昇降シリンダ18のロッド18Bとシーブ取付部材60との間に設けられている。座屈防止機構61は、座屈防止部材62と、座屈防止ピン65とを含んで構成されている。
【0087】
座屈防止部材62は、昇降シリンダ18の取付アイ18Fにボルト63Aを用いて取付けられた取付ベース63と、取付ベース63に固定された2枚の座屈防止板64とを有している。座屈防止板64は、第1の実施形態による座屈防止板52よりも長尺な長方形の板体からなり、左右方向に貫通するピン孔64Aが形成されている。ピン孔64Aは、座屈防止ピン65と直交する方向に延びる直線部(図示せず)を有する長孔状に形成されている。
【0088】
座屈防止ピン65は、第1昇降用シーブ軸20とは別部材からなり、第1昇降用シーブ19および第1開閉用シーブ21の後縁部よりも後側の位置でシーブ取付部材60のピン挿通孔60Gに取付けられている。座屈防止ピン65の長さ方向の中間部は、座屈防止板64のピン孔64Aに摺動可能に挿通されている。座屈防止ピン65には、径方向で対向する2面の平面部65Aが形成されている。
【0089】
本実施形態による座屈防止機構61は、上述の如き構成を有するもので、その基本的作用については、第1の実施形態による座屈防止機構49と格別差異はない。然るに、本実施形態によれば、第1昇降用シーブ軸20とは別部材からなる座屈防止ピン65を備えている。このため、シーブ取付部材60に第1昇降用シーブ軸20を介して第1昇降用シーブ19等を取付けた状態で、シーブ取付部材60のピン挿通孔60Gと座屈防止部材62(座屈防止板64)のピン孔64Aとに、座屈防止ピン65を挿通することができる。この場合、座屈防止ピン65は、シーブ取付部材60に取付けられた第1昇降用シーブ19および第1開閉用シーブ21よりも後側に配置されている。このため、例えば第1昇降用シーブ19に昇降ロープ38が巻回され、第1開閉用シーブ21に開閉ロープ40が巻回されている場合でも、これら昇降ロープ38および開閉ロープ40に邪魔されることなく、座屈防止部材62のピン孔64Aに座屈防止ピン65を挿通することができ、その作業性を高めることができる。
【0090】
次に、
図12ないし
図14は本発明の第4の実施形態を示している。本実施形態は、テレスコピック式の作業装置74を備えた深礎掘削機に適用した場合を例示している。
【0091】
図中、深礎掘削機71は、自走可能な下部走行体72と、下部走行体72上に旋回可能に搭載された上部旋回体73とからなる車体を有している。上部旋回体73の左前側には、運転室を画成するキャブ73Aが設けられている。上部旋回体73の前端側にはテレスコピック式の作業装置74が設けられ、作業装置74は、ブームシリンダ75Aによって駆動されるブーム75と、伸縮アーム76と、クラムシェルバケット80と、を含んで構成されている。
【0092】
伸縮アーム76は、ブーム75の先端に回動可能に設けられている。伸縮アーム76は、最も外側に位置する角筒状の外筒77と、外筒77の内周側に移動可能に収容された角筒状の1段目の内筒78と、1段目の内筒78の内周側に長さ方向に移動可能に収容された角筒状の2段目の内筒79とにより構成されている。外筒77には、ブームブラケット77Aおよびアームシリンダブラケット77Bが設けられている。ブームブラケット77Aは、支持ピン77Cを介してブーム75の先端に取付けられ、アームシリンダブラケット77Bとブーム75との間には、アームシリンダ77Dが設けられている。伸縮アーム76は、アームシリンダ77Dの伸縮動作により、ブーム75ないし上部旋回体73に対し支持ピン77Cを中心として回動可能となっている。
【0093】
外筒77の上端には、シーブブラケット77Eが固定され、シーブブラケット77Eには、後述する第2昇降用シーブ86が取付けられている。シーブブラケット77Eよりも下側となる外筒77の上端側には、昇降シリンダブラケット77Fが固定されている。
図14に示すように、昇降シリンダブラケット77Fは、一定の間隔をもって対向する2枚の板体からなり、後述する第1の連結ピン81D、および座屈防止ピン96が取付けられる。一方、2段目の内筒79の下端には、取付ブラケット79Aが設けられている。
【0094】
クラムシェルバケット80は、2段目の内筒79の取付ブラケット79Aに揺動可能に取付けられている。クラムシェルバケット80は、一対のバケット80Aと、バケットシリンダ80Bとを有している。クラムシェルバケット80は、バケットシリンダ80Bによってバケット80Aを開閉させることにより、立坑等を掘削する。
【0095】
昇降シリンダ81は、伸縮アーム76の外筒77に設けられている。昇降シリンダ81は、チューブ81Aと、チューブ81Aから外部に突出したロッド81Bとを有している。ロッド81Bの上端には取付アイ81Cが設けられ、取付アイ81Cは、第1の連結ピン81Dを介して、外筒77の昇降シリンダブラケット77Fに連結されている。昇降シリンダ81のチューブ81Aは、自由端となって下方に延び、外筒77に固定された筒状のチューブガイド82内に移動可能に収容されている。
【0096】
シーブ取付部材83は、第2の連結ピン81Eを介して、昇降シリンダ81のチューブ81Aの上端部に連結されている。シーブ取付部材83には、第1シーブとしての第1昇降用シーブ84、および第1押込み用シーブ85が取付けられている。チューブ81Aは、昇降シリンダ81の伸縮動作に応じて、チューブガイド82に案内されつつ外筒77の長さ方向に移動(昇降)する。これにより、シーブ取付部材83は、第1昇降用シーブ84および第1押込み用シーブ85と共に外筒77の長さ方向に移動する。
【0097】
第2シーブとしての第2昇降用シーブ86は、第1昇降用シーブ84から離間して伸縮アーム76に設けられている。具体的には、第2昇降用シーブ86は、外筒77の上端に固定されたシーブブラケット77Eに回転可能に支持されている。昇降ロープ87は、第1昇降用シーブ84と第2昇降用シーブ86とに巻回されている。昇降ロープ87の一端87Aは、外筒77の上端に固定されたシーブブラケット77Eに係止され、昇降ロープ87の他端87Bは、2段目の内筒79の上端に係止されている。
【0098】
支持用固定シーブ88は、1段目の内筒78の下端に回転可能に取付けられている。支持用固定シーブ88には、支持用ロープ89が巻回されている。支持用ロープ89の一端89Aは、外筒77の下端に係止されている。支持用ロープ89は、支持用固定シーブ88を経由して2段目の内筒79の内側に挿入され、支持用ロープ89の他端89Bは、2段目の内筒79の上端側に係止されている。支持用ロープ89は、外筒77と2段目の内筒79との間で1段目の内筒78を支持している。
【0099】
押込み用固定シーブ90は、外筒77の下端側に回転可能に取付けられている。押込み用固定シーブ90とシーブ取付部材83に取付けられた第1押込み用シーブ85には、押込み用ロープ91が巻回されている。押込み用ロープ91の一端91Aは、アームシリンダブラケット77Bよりも上側で外筒77に係止されている。押込み用ロープ91は、第1押込み用シーブ85と押込み用固定シーブ90とに巻回され、押込み用ロープ91の他端91Bは、押込み用固定シーブ90から2段目の内筒79の内側を通って1段目の内筒78の上端側に係止されている。
【0100】
昇降シリンダ81を縮小させた場合には、チューブ81Aに連結されたシーブ取付部材83が上方に移動し、第1昇降用シーブ84が第2昇降用シーブ86に接近する。これにより、第1昇降用シーブ84と第2昇降用シーブ86とに巻回された昇降ロープ87が繰出され、2段目の内筒79は自重によって外筒77から下方に伸長する。このとき、2段目の内筒79の上端側に係止された支持用ロープ89の他端89Bが下方に移動し、支持用ロープ89によって支持された1段目の内筒78も自重によって外筒77から下方に伸長する。このようにして、チューブ81Aが上限位置まで移動して昇降シリンダ81が最縮小状態になることにより、伸縮アーム76は最伸長状態となる。
【0101】
ここで、昇降シリンダ81が縮小してシーブ取付部材83が第2昇降用シーブ86に接近すると、第1押込み用シーブ85と押込み用固定シーブ90との間に押込み用ロープ91が巻き取られ、押込み用ロープ91の他端91Bが1段目の内筒78に伴って下方に移動する。これにより、押込み用ロープ91は一定の張力を保つ。また、1段目の内筒78は支持用ロープ89に支持された状態で伸長するので、支持用ロープ89も一定の張力を保つ。従って、外筒77から1段目の内筒78および2段目の内筒79が伸長した状態で、クラムシェルバケット80を用いて掘削作業を行うことにより、これら内筒78,79に対して上向きの掘削反力が作用した場合でも、押込み用ロープ91、支持用ロープ89の張力によって1段目の内筒78および2段目の内筒79が縮小側に移動するのを抑え、クラムシェルバケット80を地中に押込むことができる。
【0102】
一方、昇降シリンダ81を伸長させた場合には、チューブ81Aに連結されたシーブ取付部材83が下方に移動し、第1昇降用シーブ84が第2昇降用シーブ86から離間する。これにより、第1昇降用シーブ84と第2昇降用シーブ86との間で昇降ロープ87が巻き取られ、2段目の内筒79は上方に移動して1段目の内筒78内に収容されていく。このとき、2段目の内筒79の上端側に係止された支持用ロープ89の他端89Bが上方に移動するので、支持用ロープ89によって支持された1段目の内筒78も上方に移動して外筒77内に収容されていく。このようにして、チューブ81Aが下限位置まで移動して昇降シリンダ81が最伸長状態になることにより、伸縮アーム76は最縮小状態となる。
【0103】
座屈防止機構92は、昇降シリンダ81のロッド81Bと、伸縮アーム76の外筒77に固定された昇降シリンダブラケット77Fとの間に設けられている。
図14に示すように、座屈防止機構92は、座屈防止部材93と、座屈防止ピン96とを含んで構成されている。
【0104】
座屈防止部材93は、昇降シリンダ81のロッド81Bに設けられた取付アイ81Cにボルト94Aを用いて取付けられた取付ベース94と、取付ベース94に固定された2枚の座屈防止板95とを有している。座屈防止板95には、昇降シリンダ81の長さ方向と直交する方向に貫通するピン孔95Aが設けられ、ピン孔95Aは、座屈防止ピン96と直交する方向に延びる直線部(図示せず)を有する長孔状に形成されている。
【0105】
座屈防止ピン96は、第1の連結ピン81Dに隣接して外筒77の昇降シリンダブラケット77Fに取付けられている。座屈防止ピン96の長さ方向の中間部は、座屈防止板95のピン孔95Aに摺動可能に挿通されている。このように、座屈防止板95のピン孔95Aには、第1の連結ピン81Dおよび第2の連結ピン81Eに対して固定された座屈防止ピン96が挿通されている。座屈防止ピン96には、径方向で対向する2面の平面部96Aが形成され、この平面部96Aは、ピン孔95Aの直線部に当接している。
【0106】
本実施形態による座屈防止機構92は、上述の如き構成を有するもので、ロッド81B(取付アイ18F)に取付けられた座屈防止部材93のピン孔95Aに、伸縮アーム76(外筒77)の昇降シリンダブラケット77Fに取付けられた座屈防止ピン96が挿通されている。これにより、第1の連結ピン81Dを中心とした、昇降シリンダブラケット77Fに対する昇降シリンダ81の回動変位を拘束することができる。この結果、深礎掘削機71による立坑の掘削作業時に、昇降シリンダ81の縮小方向に大きな荷重が作用した場合でも、昇降シリンダ81の座屈荷重の低下を抑えることにより、昇降シリンダ81の座屈を防止することができる。
【0107】
なお、第1の実施形態では、座屈防止部材50を構成する座屈防止板52を2枚の板体により構成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば1枚あるいは3枚以上の板体によって構成してもよい。このことは、他の実施形態についても同様である。
【符号の説明】
【0108】
1,71 深礎掘削機
2,72 下部走行体(車体)
3,73 上部旋回体(車体)
5,74 作業装置
9 クラムシェルバケット(バケット)
10 アーム
14,54,60,83 シーブ取付部材
18,81 昇降シリンダ
18A,81A チューブ
18B,81B ロッド
18E,81D 第1の連結ピン
18G,81E 第2の連結ピン
19,84 第1昇降用シーブ(第1シーブ)
20 第1昇降用シーブ軸(シーブ軸)
23,86 第2昇降用シーブ(第2シーブ)
38,87 昇降ロープ
38A,87A 一端
38B,87B 他端
50,56,62,93 座屈防止部材
51A,57A,63A,94A ボルト(締結具)
52,58,64,95 座屈防止板(板体)
52A,58A,64A,95A ピン孔
52B 直線部
53,59,65,96 座屈防止ピン
53A,59A,65A,96A 平面部