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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103114
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】深礎掘削機
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/39 20060101AFI20240725BHJP
   E02F 3/47 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
E02F3/39
E02F3/47 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007277
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲元 昭
(72)【発明者】
【氏名】江東 真也
(72)【発明者】
【氏名】関 誠治
(57)【要約】
【課題】昇降用シーブに対する昇降ロープの脱落および/または開閉用シーブに対する開閉ロープの脱落を防止する。
【解決手段】深礎掘削機1の作業装置5は、アーム10の長さ方向に移動可能に設けられた第1昇降用シーブ19および第1開閉用シーブ21と、第1昇降用シーブ19および第1開閉用シーブ21から離間してアーム10に設けられた第2昇降用シーブ23および第2開閉用シーブ30と、第1昇降用シーブ19と第2昇降用シーブ23とに巻回されクラムシェルバケット9を昇降させる昇降ロープ38と、第1開閉用シーブ21と第2開閉用シーブ30とに巻回されクラムシェルバケット9を開閉させる開閉ロープ40とを備える。アーム10には、その長さ方向に移動可能なロープ支持装置49が設けられ、ロープ支持装置49によって開閉ロープ40を支持することにより、開閉ロープ40の脱落を防止する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体と、クラムシェルバケットを有し前記車体に設けられた作業装置とからなり、
前記作業装置は、前記車体に対して回動可能に設けられたアームと、
前記アームにその長さ方向に移動可能に設けられた第1昇降用シーブおよび第1開閉用シーブと、
前記第1昇降用シーブおよび前記第1開閉用シーブから離間してそれぞれ前記アームに設けられた第2昇降用シーブおよび第2開閉用シーブと、
前記第1昇降用シーブと前記第2昇降用シーブとに巻回され前記クラムシェルバケットを昇降させる昇降ロープと、
前記第1開閉用シーブと前記第2開閉用シーブとに巻回され前記クラムシェルバケットを開閉させる開閉ロープと、を備えてなる深礎掘削機において、
前記アームにおける前記第1昇降用シーブと前記第2昇降用シーブとの間、および前記第1開閉用シーブと前記第2開閉用シーブとの間の少なくとも一方には、前記昇降ロープおよび前記開閉ロープの少なくとも一方のロープを支持するロープ支持装置が前記アームの長さ方向に移動可能に設けられていることを特徴とする深礎掘削機。
【請求項2】
前記ロープ支持装置は、前記アームの長さ方向に並んで複数設けられ、
これら複数のロープ支持装置は、連結部材を介して相互に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の深礎掘削機。
【請求項3】
前記第1昇降用シーブおよび前記第1開閉用シーブは、前記アームにその長さ方向に移動可能に設けられたシーブ取付部材に取付けられ、
前記連結部材は、前記複数のロープ支持装置のうち前記シーブ取付部材に最も近いロープ支持装置と前記シーブ取付部材との間を連結する第1の連結ロープと、
前記複数のロープ支持装置のうち前記第2昇降用シーブおよび前記第2開閉用シーブに最も近いロープ支持装置と前記アームとの間を連結する第2の連結ロープと、
前記複数のロープ支持装置のうち隣り合う2個のロープ支持装置間を連結する第3の連結ロープとを備えていることを特徴とする請求項2に記載の深礎掘削機。
【請求項4】
前記第1,第2,第3の連結ロープは、前記複数のロープ支持装置が互いに最も離れたときの離間姿勢と、前記複数のロープ支持装置が互いに最も接近したときに下向きに弛んだ接近姿勢との間で変形し、
前記第1,第2,第3の連結ロープは、前記ロープ支持装置のうち前記離間姿勢と前記接近姿勢との変形が許容される部位に取付けられていることを特徴とする請求項3に記載の深礎掘削機。
【請求項5】
前記ロープ支持装置は、前記アームにガイドされた状態で前記アームの長さ方向に移動可能となったベース部材と、
前記ベース部材から前記昇降ロープおよび前記開閉ロープの少なくとも一方のロープの下側に向けて突出した軸部材と、
前記軸部材に取付けられ前記昇降ロープおよび前記開閉ロープの少なくとも一方のロープを下側から支持するロープ受けとを含んで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の深礎掘削機。
【請求項6】
前記ロープ受けは、前記軸部材に対して回転可能に、かつ軸方向に移動可能に取付けられたローラによって構成されていることを特徴とする請求項5に記載の深礎掘削機。
【請求項7】
前記ベース部材と前記アームとの間には、前記ベース部材を前記アームの長さ方向に沿って案内するガイド部材が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の深礎掘削機。
【請求項8】
前記ベース部材は、前記アームの側部を取り囲むように枠状に形成されているとともに、前記アームの側部から取り外し可能な構造を有することを特徴とする請求項5に記載の深礎掘削機。
【請求項9】
前記アームには、前記複数のロープ支持装置のうち最も前記第2昇降用シーブおよび前記第2開閉用シーブに近いロープ装置と、前記第2昇降用シーブおよび前記第2開閉用シーブとの間に位置して、前記昇降ロープおよび前記開閉ロープの少なくとも一方のロープを支持するロープ支持具が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の深礎掘削機。
【請求項10】
前記シーブ取付部材が前記第2昇降用シーブおよび前記第2開閉用シーブに対して最も離れた状態で、
前記複数のロープ支持装置のうち前記シーブ取付部材に最も近いロープ支持装置と前記第1昇降用シーブまたは前記第1開閉用シーブとの間隔は、前記複数のロープ支持装置のうち隣り合う2個の前記ロープ支持装置の間隔よりも小さく設定され、
前記複数のロープ支持装置のうち隣り合う2個のロープ支持装置の間隔は、前記第2昇降用シーブおよび前記第2開閉用シーブ側に比較して、前記シーブ取付部材側が小さく設定されていることを特徴とする請求項3に記載の深礎掘削機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、立坑の掘削作業等に好適に用いられる深礎掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
立坑の掘削作業等に好適に用いられる作業機械として、深礎掘削機が知られている。深礎掘削機の作業装置は、車体に対して回動可能に設けられたアームと、アームに対して昇降可能に設けられたクラムシェルバケットと、クラムシェルバケットの昇降動作および開閉動作を制御するバケット昇降・開閉装置とを備えている。バケット昇降・開閉装置は、アームの長さ方向に移動可能な可動シーブと、アームに対して固定された固定シーブと、可動シーブと固定シーブとに巻回された昇降ロープおよび開閉ロープと、クラムシェルバケットを昇降させる昇降シリンダと、クラムシェルバケットを開閉させる開閉シリンダとを含んで構成されている。
【0003】
昇降シリンダは、可動シーブと固定シーブとの間隔を変化させて昇降ロープを巻出し、巻取ることによりクラムシェルバケットを昇降させる。開閉シリンダは、可動シーブと固定シーブとの間隔を変化させて開閉ロープを巻出し、巻取ることによりクラムシェルバケットを開閉させる。深礎掘削機は、アームの先端を立坑の上方に配置した状態でクラムシェルバケットを立坑内に下ろし、クラムシェルバケットを開閉させることにより土砂を掘削する(特許文献1)。
【0004】
深礎掘削機を用いて立坑を掘削する場合には、クラムシェルバケットを自重によって地中に潜り込ませる必要がある。このため、深礎掘削機は、クラムシェルバケットが地面に着地した後に、昇降シリンダによって可動シーブと固定シーブとの間隔を縮小させることにより、昇降ロープおよび開閉ロープに適度な緩みを与えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-161716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、掘削深さが小さく可動シーブと固定シーブとの間隔が大きい場合には、昇降ロープや開閉ロープが、緩みを生じたときに可動シーブと固定シーブとの間で大きく下向きに弛んでしまい、可動シーブあるいは固定シーブから脱落してしまうという問題がある。また、緩みを生じた昇降ロープや開閉ロープは、クラムシェルバケットの昇降動作や開閉動作を行うときの動き出しの衝撃によって大きく振れるため、可動シーブあるいは固定シーブに擦れることにより摩耗し、寿命が低下してしまうという問題がある。さらに、開閉ロープは、可動シーブと固定シーブとに幾重にも巻回されているため、可動シーブおよび固定シーブに巻回されたアーム側の開閉ロープの重量(可動シーブおよび固定シーブに作用する開閉ロープの重量)は、アームから垂下したクラムシェルバケット側の開閉ロープの重量を大きく上回っている。このため、クラムシェルバケットを開いた状態で降下させたとしても、クラムシェルバケットの降下速度に追従して開閉ロープを繰り出すことができず、クラムシェルバケットが閉じてしまうことにより、掘削性が低下してしまうという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、昇降用シーブに対する昇降ロープの脱落および/または開閉用シーブに対する開閉ロープの脱落を防止できるようにした深礎掘削機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、自走可能な車体と、クラムシェルバケットを有し前記車体に設けられた作業装置とからなり、前記作業装置は、前記車体に対して回動可能に設けられたアームと、前記アームにその長さ方向に移動可能に設けられた第1昇降用シーブおよび第1開閉用シーブと、前記第1昇降用シーブおよび前記第1開閉用シーブから離間してそれぞれ前記アームに設けられた第2昇降用シーブおよび第2開閉用シーブと、前記第1昇降用シーブと前記第2昇降用シーブとに巻回され前記クラムシェルバケットを昇降させる昇降ロープと、前記第1開閉用シーブと前記第2開閉用シーブとに巻回され前記クラムシェルバケットを開閉させる開閉ロープと、を備えてなる深礎掘削機において、前記アームにおける前記第1昇降用シーブと前記第2昇降用シーブとの間、および前記第1開閉用シーブと前記第2開閉用シーブとの間の少なくとも一方には、前記昇降ロープおよび前記開閉ロープの少なくとも一方のロープを支持するロープ支持装置が前記アームの長さ方向に移動可能に設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、昇降ロープおよび開閉ロープの少なくとも一方をロープ支持装置によって支持することにより、昇降ロープおよび開閉ロープの少なくとも一方が大きく弛むのを抑えることができる。この結果、昇降ロープが第1昇降用シーブあるいは第2昇降用シーブから脱落する事態、および/または開閉ロープが第1開閉用シーブあるいは第2開閉用シーブから脱落する事態を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態による深礎掘削機を示す左側面図である。
図2】アーム、バケット昇降・開閉装置等を、シーブ取付部材がベースアームから最も離れた状態で示す左側面図である。
図3】アーム、バケット昇降・開閉装置等を示す平面図である。
図4】アーム、バケット昇降・開閉装置等を、シーブ取付部材がベースアーム側に移動した状態で示す左側面図である。
図5】アーム、バケット昇降・開閉装置等を、シーブ取付部材がベースアームに最も接近した状態で示す左側面図である。
図6】アームの分解図である。
図7図2中のシーブ取付部材、ロープ支持装置等を拡大して示す左側面図である。
図8図2中のベースアームの後端、ロープ支持装置等を拡大して示す左側面図である。
図9図5中のベースアームの後端、複数のロープ支持装置、シーブ取付部材等を拡大して示す左側面図である。
図10】ロープ支持装置を示す斜視図である。
図11】上ガイドアーム、下ガイドアーム、昇降シリンダ、ロープ支持装置等を図3中の矢示XI-XI方向から見た断面図である。
図12】ロープ支持装置を図11中の矢示XII-XII方向から見た右側面図である。
図13】ベースアーム、上ガイドアーム、下ガイドアーム、固定ロープ支持具等を図3中の矢示XIII-XIII方向から見た断面図である。
図14】立坑の掘削作業時に弛んだ開閉ロープを、ロープ支持装置によって支持する状態を示す右側面図である。
図15】第2の実施形態による連結部材、ロープ支持装置等を示すアームの左側面図である。
図16】変形例による連結部材、ロープ支持装置等を示すアームの左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態による深礎掘削機について添付図面に従って詳細に説明する。図1ないし図14は、本発明の第1の実施形態を示している。なお、実施形態では、深礎掘削機の走行方向を前後方向とし、走行方向と直交する方向を左右方向として説明する。
【0012】
深礎掘削機1は、例えばクローラ式の油圧ショベルをベースにして製造されている。深礎掘削機1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3に設けられた後述の作業装置5とにより構成されている。下部走行体2と上部旋回体3は、深礎掘削機1の車体を構成している。
【0013】
キャブ4は、上部旋回体3の左前側に設けられている。キャブ4は運転室を画成し、深礎掘削機1を操縦するオペレータが搭乗する。キャブ4内には、オペレータが座る運転席4Aが設けられ、運転席4Aの周囲には、下部走行体2の走行動作、上部旋回体3の旋回動作、および作業装置5を操作するための操作装置(図示せず)が設けられている。
【0014】
作業装置5は、上部旋回体3に上下方向に回動可能に設けられたブーム6と、後述のアーム10と、クラムシェルバケット9と、バケット昇降・開閉装置17と、複数のロープ支持装置49と、を含んで構成されている。上部旋回体3とブーム6との間にはブームシリンダ7が設けられ、ブーム6は、ブームシリンダ7の伸縮動作に応じて上部旋回体3に対して回動する。ブーム6とアーム10との間にはアームシリンダ8が設けられ、アーム10は、アームシリンダ8の伸縮動作に応じてブーム6ないし上部旋回体3に対して回動する。
【0015】
クラムシェルバケット9は、アーム10の前端(一端)側に配置され、後述する昇降ロープ38を用いて昇降可能に吊り下げられている。クラムシェルバケット9は、バケット支持部9Aと、バケット支持部9Aの下側に開閉可能に設けられた一対のバケット9Bと、一対のバケット9Bが回動可能に連結された連結ブラケット9Cと、バケット支持部9Aと一対のバケット9Bとの間を連結する一対の開閉アーム9Dとを有している。バケット支持部9Aには、複数枚の上側シーブ9Eが設けられ、連結ブラケット9Cには、上側シーブ9Eと上下方向で対向する複数枚の下側シーブ9Fが設けられている。
【0016】
クラムシェルバケット9のバケット支持部9Aには、昇降ロープ38の他端38Bが取付けられている。クラムシェルバケット9の上側シーブ9Eと下側シーブ9Fには、後述する開閉ロープ40が交互に巻回され、開閉ロープ40の他端40Bは、クラムシェルバケット9のバケット支持部9Aに取付けられている。
【0017】
アーム10は、ブーム6の先端に回動可能に設けられている。図5に示すように、アーム10は、中空な筒体により形成され前後方向に延びるベースアーム11と、ベースアーム11の後側に着脱可能に設けられた上ガイドアーム12および下ガイドアーム13と、これら上ガイドアーム12および下ガイドアーム13に移動可能に取付けられたシーブ取付部材14とにより、分割可能に構成されている。
【0018】
ベースアーム11は、アーム10のベースとなるもので、上下方向に延びる長方形の断面形状を有する角筒体として形成されている。ベースアーム11は、アーム10の長さ方向(前後方向)と直交する方向(左右方向)において対向する左側面板11Aおよび右側面板11Bと、左側面板11Aおよび右側面板11Bの上端間を連結する上面板11Cと、左側面板11Aおよび右側面板11Bの下端間を連結する下面板11Dとによって囲まれている。
【0019】
左側面板11Aと右側面板11Bとの間隔は、上面板11Cと下面板11Dとの間隔よりも小さく設定されている。ベースアーム11の前端(長さ方向の一端)11Eは閉塞され、ベースアーム11の後端(長さ方向の他端)11Fは開口端となっている。ベースアーム11の上面板11Cのうち、前後方向の中央部より前側に位置する部位には、中央部より後側に位置する部位よりも高さ(下面板11Dとの間隔)が低い段差面11Gが形成されている。段差面11Gには、後述する中間ガイドシーブ37が設けられている。ベースアーム11の下面板11Dには、ブーム取付ブラケット11Hとシリンダ取付ブラケット11Jとが設けられている。ブーム取付ブラケット11Hは、ブーム連結ピン11Kを介してブーム6の先端に回動可能に連結されている(図1参照)。シリンダ取付ブラケット11Jは、基端がブーム6に取付けられたアームシリンダ8の先端にピン結合されている。従って、ベースアーム11は、アームシリンダ8の伸縮動作に応じて、ブーム連結ピン11Kを中心として前後方向ないし上下方向に回動する。
【0020】
左側面板11Aおよび右側面板11Bの後端側には、それぞれ上下に離間して左右方向に貫通する2個のピン挿通孔11L,11Mが形成されている。上側のピン挿通孔11Lには、後述する上アーム連結ピン12Bが挿通され、下側のピン挿通孔11Mには、後述する下アーム連結ピン13Bが挿通される。また、左側面板11Aおよび右側面板11Bのうちピン挿通孔11L,11Mよりも前側には、それぞれ左右方向に貫通するトラニオンピン挿通孔11Nが形成されている(図8参照)。これら2個のトラニオンピン挿通孔11Nには、後述するシリンダ支持ピン18Dが挿通される。
【0021】
上ガイドアーム12および下ガイドアーム13は、上下方向で対をなした状態でベースアーム11の後側に着脱可能に取付けられている。上ガイドアーム12および下ガイドアーム13は、それぞれ長方形の断面形状を有する角筒体として形成され、ベースアーム11の長さ方向(前後方向)に延在している。上ガイドアーム12の前端には、左右方向に延びる円筒部12Aが固定され、下ガイドアーム13の前端には、左右方向に延びる円筒部13Aが固定されている。上ガイドアーム12の円筒部12Aの内周側には上アーム連結ピン12Bが挿通され、上アーム連結ピン12Bの両端は、ベースアーム11の上側のピン挿通孔11Lに挿通されている。下ガイドアーム13の円筒部13Aの内周側には下アーム連結ピン13Bが挿通され、下アーム連結ピン13Bの両端は、ベースアーム11の下側のピン挿通孔11Mに挿通されている。一方、上ガイドアーム12および下ガイドアーム13の後端は、連結部材13Cを介して連結されている。これにより、上ガイドアーム12および下ガイドアーム13は、上下方向に一定の間隔を保った状態でベースアーム11の後端11Fから後方に延在している。
【0022】
シーブ取付部材14は、上ガイドアーム12および下ガイドアーム13にその長さ方向に移動可能に取付けられている。シーブ取付部材14は、後述する第1昇降用シーブ19と第1開閉用シーブ21とが取付けられた状態で、上ガイドアーム12および下ガイドアーム13に沿って前後方向に移動する。シーブ取付部材14は、ベースアーム11と同等な長方形の断面形状を有する筒体として形成され、上ガイドアーム12および下ガイドアーム13を外側から取り囲んでいる。シーブ取付部材14は、左側板14A、右側板14B、上板14Cおよび下板14Dによって囲まれた短尺な筒体(枠体)として形成されている。
【0023】
シーブ取付部材14を構成する左側板14Aおよび右側板14Bの前側部位には、それぞれ左右方向に貫通するピン挿通孔14Eが形成されている。これら2個のピン挿通孔14Eには、後述するロッド取付ピン18Fが挿通される。シーブ取付部材14を構成する左側板14Aの中央部には、後述の第1昇降用シーブ軸20が取付けられている。シーブ取付部材14を構成する右側板14Bの中央部には、後述の第1開閉用シーブ軸22が取付けられている。
【0024】
シーブ取付部材14の左側板14A、右側板14B、上板14Cの内周面と上ガイドアーム12との間には、それぞれスライドプレート15が設けられ、スライドプレート15は、上ガイドアーム12に摺動可能に当接している。シーブ取付部材14の左側板14A、右側板14B、下板14Dの内周面と下ガイドアーム13との間には、それぞれスライドプレート16が設けられ、スライドプレート16は、下ガイドアーム13に摺動可能に当接している。これらスライドプレート15,16は、ボルト等を用いてシーブ取付部材14に固定され、シーブ取付部材14を、上ガイドアーム12および下ガイドアーム13に対して円滑に移動(摺動)させる。
【0025】
バケット昇降・開閉装置17は、アーム10に設けられている。バケット昇降・開閉装置17は、クラムシェルバケット9の昇降動作と開閉動作を含む各種の動作を制御する。バケット昇降・開閉装置17は、後述の昇降シリンダ18、第1昇降用シーブ19、第1開閉用シーブ21、第2昇降用シーブ23、第2開閉用シーブ30、開閉シリンダ31、中間ガイドシーブ37、昇降ロープ38、開閉ロープ40、緩み調整用シーブ47、緩み調整シリンダ48を含んで構成されている。
【0026】
昇降シリンダ18は、ベースアーム11内に設けられ、ベースアーム11の長さ方向(前後方向)に沿って延びている。昇降シリンダ18は、キャブ4内に設けられた操作装置の操作に応じて伸長または縮小することにより、クラムシェルバケット9を昇降させる。昇降シリンダ18は、チューブ18Aと、チューブ18A内に挿嵌されたピストン(図示せず)と、基端がピストンに取付けられ先端がチューブ18Aから突出したロッド18Bとを有している。
【0027】
昇降シリンダ18のチューブ18Aには、取付フランジ18Cが固定され、取付フランジ18Cには、チューブ18Aを挟んで2個のピン穴(図示せず)が形成されている。これら2個のピン穴には、ベースアーム11(左側面板11Aおよび右側面板11B)のトラニオンピン挿通孔11Nに挿通された2本のシリンダ支持ピン18Dが嵌合する。これにより、昇降シリンダ18のチューブ18Aは、ベースアーム11に対し、シリンダ支持ピン18Dを介して連結されている。
【0028】
一方、昇降シリンダ18のロッド18Bの先端には取付アイ18Eが設けられている。取付アイ18Eとシーブ取付部材14のピン挿通孔14Eには、ロッド取付ピン18Fが挿通されている。これにより、昇降シリンダ18のロッド18Bは、ロッド取付ピン18Fを介してシーブ取付部材14に連結されている。
【0029】
このように、昇降シリンダ18のチューブ18Aは、シリンダ支持ピン18Dを介してベースアーム11に取付けられ、ロッド18Bは、ロッド取付ピン18Fを介してシーブ取付部材14に取付けられている。従って、昇降シリンダ18を伸縮させることにより、シーブ取付部材14は、上ガイドアーム12および下ガイドアーム13に沿って前後方向に移動する。
【0030】
第1昇降用シーブ19は、シーブ取付部材14を構成する左側板14Aの外側面に、第1昇降用シーブ軸20を介して取付けられている。第1昇降用シーブ軸20は、シーブ取付部材14を構成する左側板14Aの中央部に固定され、左側板14Aから左側方に突出している。第1昇降用シーブ19は、第1昇降用シーブ軸20の軸方向に並んで複数枚(例えば5枚)設けられ、シーブ取付部材14に対し、第1昇降用シーブ軸20を中心として回転可能に支持されている。
【0031】
第1開閉用シーブ21は、シーブ取付部材14を構成する右側板14Bの外側面に、第1開閉用シーブ軸22を介して取付けられている。第1開閉用シーブ軸22は、シーブ取付部材14を構成する右側板14Bの中央部に固定され、右側板14Bから右側方に突出している。第1開閉用シーブ21は、第1開閉用シーブ軸22に軸方向に並んで複数枚(例えば5枚)設けられ、シーブ取付部材14に対し、第1開閉用シーブ軸22を中心として回転可能に支持されている。
【0032】
第2昇降用シーブ23は、第1昇降用シーブ19から離間してベースアーム11に設けられている。第2昇降用シーブ23は、ベースアーム11を構成する左側面板11Aの外側面に、第2昇降用シーブ軸24を介して取付けられている。第2昇降用シーブ軸24は、ベースアーム11(左側面板11A)の長さ方向の中間部に固定され、左側面板11Aから左側方に突出している。第2昇降用シーブ23は、第2昇降用シーブ軸24の軸方向に並んで複数枚(例えば4枚)設けられ、ベースアーム11に対し、第2昇降用シーブ軸24を中心として回転可能に支持されている。従って、昇降シリンダ18の伸縮動作に応じてシーブ取付部材14が移動することにより、シーブ取付部材14に取付けられた第1昇降用シーブ19は、第2昇降用シーブ23に対して接近、離間する。第1昇降用シーブ19と第2昇降用シーブ23には、昇降ロープ38が巻回されている。
【0033】
開閉用シーブ移動機構25は、ベースアーム11の前後方向の中間部に位置して右側面板11Bに設けられている。開閉用シーブ移動機構25は、第2開閉用シーブ30を前後方向に移動可能に支持している。図3に示すように、開閉用シーブ移動機構25は、ガイドレール26と、スライド部材27と、枠部材28と、第2開閉用シーブ軸29とを含んで構成されている。
【0034】
ガイドレール26は、ベースアーム11の右側面板11Bに固定されている。スライド部材27は、ガイドレール26に長さ方向に摺動可能に係合している。枠部材28は、スライド部材27にボルト等を用いて取付けられている。枠部材28には、後述する開閉シリンダ31のロッド31Bが取付けられている。また、枠部材28には第2開閉用シーブ軸29が固定され、第2開閉用シーブ軸29は、枠部材28から右側方に突出している。
【0035】
第2開閉用シーブ30は、開閉用シーブ移動機構25の第2開閉用シーブ軸29に回転可能に取付けられている。即ち、第2開閉用シーブ30は、ベースアーム11を構成する右側面板11Bの外側面に、開閉用シーブ移動機構25を介して前後方向に移動可能に設けられている。第2開閉用シーブ30は、開閉用シーブ移動機構25を構成する第2開閉用シーブ軸29の軸方向に並んで複数枚(例えば4枚)設けられ、ベースアーム11に対し、第2開閉用シーブ軸29を中心として回転可能に支持されている。
【0036】
開閉シリンダ31は、ベースアーム11の後端11F側に位置して右側面板11Bに設けられている。開閉シリンダ31は前後方向に延び、第1開閉用シーブ21に対して第2開閉用シーブ30を接近、離間させる。開閉シリンダ31は、チューブ31Aと、チューブ31A内に挿嵌されたピストン(図示せず)と、基端がピストンに取付けられ先端がチューブ31Aから突出したロッド31Bとを有している。チューブ31Aのボトム側は、ベースアーム11の右側面板11Bの後端11F側に、ブラケット31Cを介して取付けられている。ロッド31Bの先端は、開閉用シーブ移動機構25の枠部材28に取付けられている。従って、開閉用シーブ移動機構25に取付けられた第2開閉用シーブ30は、開閉シリンダ31の伸縮動作に応じて前後方向に移動し、第1開閉用シーブ21に対して接近、離間する。
【0037】
ガイドシーブ支持軸32は、ベースアーム11の前端11E側に設けられている。ガイドシーブ支持軸32の一端は、左側面板11Aの前端11E側に固定され、ガイドシーブ支持軸32の他端は、左側面板11Aから左側方に突出している。ガイドシーブ支持軸32は、昇降ガイドシーブ33および開閉ガイドシーブ34を回転可能に支持している。
【0038】
昇降ガイドシーブ33と開閉ガイドシーブ34とは、ガイドシーブ支持軸32を介してベースアーム11の左側面板11Aに設けられている。昇降ガイドシーブ33と開閉ガイドシーブ34とは、同一の直径を有している。昇降ガイドシーブ33は、第1昇降用シーブ19と第2昇降用シーブ23とに巻回された昇降ロープ38を、クラムシェルバケット9へと導く。開閉ガイドシーブ34は、第1開閉用シーブ21、第2開閉用シーブ30、および後述する中間ガイドシーブ37、緩み調整用シーブ47に巻回された開閉ロープ40を、クラムシェルバケット9へと導く。これにより、図1に示すように、例えばアーム10を地面に対して水平に保持した状態で、クラムシェルバケット9を、アーム10の前端に配置した昇降ガイドシーブ33に巻回された昇降ロープ38を用いて上下方向に昇降させることができる。
【0039】
昇降ガイドシーブ33と開閉ガイドシーブ34とは、ベースアーム11のうち、運転席4Aに座ったオペレータにとって視認性が高い左側面板11Aの前端11E側に配置されている。これにより、オペレータは、クラムシェルバケット9に取付けられた昇降ロープ38および開閉ロープ40の状態を目視によって確認しつつ、バケット昇降・開閉装置17を操作することができる。
【0040】
中間ガイドシーブ軸35は、ベースアーム11の前端11E側に位置する段差面11Gに設けられている。ベースアーム11の段差面11Gには、断面U字型に屈曲した枠部材36が固定されている。中間ガイドシーブ軸35は、一端が段差面11Gに取付けられ、他端が枠部材36に取付けられることにより、段差面11Gから後方に向けて僅かに傾斜しつつ上方に延びている。
【0041】
中間ガイドシーブ37は、ベースアーム11の段差面11Gに、中間ガイドシーブ軸35を介して回転可能に設けられている。中間ガイドシーブ37は、ベースアーム11の左側面板11Aに設けられた開閉ガイドシーブ34と、ベースアーム11の右側面板11Bに設けられた緩み調整用シーブ47との間に介在し、緩み調整用シーブ47から延びる開閉ロープ40が巻回されることにより、開閉ロープ40を開閉ガイドシーブ34へと案内する。このように、緩み調整用シーブ47と開閉ガイドシーブ34とが、ベースアーム11を挟んで互いに反対側に配置されている場合でも、開閉ロープ40を、緩み調整用シーブ47から中間ガイドシーブ37を介して開閉ガイドシーブ34へと円滑に導くことができる。
【0042】
昇降ロープ38は、アーム10とクラムシェルバケット9との間に設けられ、クラムシェルバケット9を昇降可能に支持している。昇降ロープ38はワイヤロープからなり、昇降ロープ38の一端38Aは、ベースアーム11の左側面板11Aに突設された昇降ロープ取付ブラケット39に取付けられている。昇降ロープ38の他端38Bは、クラムシェルバケット9のバケット支持部9Aに取付けられ、クラムシェルバケット9を支持している(図1参照)。昇降ロープ38の中間部は、複数枚の第1昇降用シーブ19と複数枚の第2昇降用シーブ23に交互に巻回されている。
【0043】
開閉ロープ40は、アーム10とクラムシェルバケット9との間に設けられ、クラムシェルバケット9の一対のバケット9Bを開閉させる。開閉ロープ40はワイヤロープからなり、開閉ロープ40の一端40Aは、ベースアーム11の右側面板11Bに突設された開閉ロープ取付ブラケット41に取付けられている。開閉ロープ40の他端40Bは、クラムシェルバケット9のバケット支持部9Aに取付けられている(図1参照)。開閉ロープ40の中間部は、複数枚の第1開閉用シーブ21と複数枚の第2開閉用シーブ30に交互に巻回されている。また、開閉ロープ40の他端40B側は、クラムシェルバケット9を構成する複数枚の上側シーブ9Eと複数枚の下側シーブ9Fとに交互に巻回されている。
【0044】
クラムシェルバケット9は、昇降シリンダ18が縮小して第1昇降用シーブ19が第2昇降用シーブ23に接近することにより下降し、昇降シリンダ18が伸長して第1昇降用シーブ19が第2昇降用シーブ23から離間することにより上昇する。一方、クラムシェルバケット9は、開閉シリンダ31が縮小して第2開閉用シーブ30が第1開閉用シーブ21に接近することにより開き、開閉シリンダ31が伸長して第2開閉用シーブ30が第1開閉用シーブ21から離間することにより閉じる。
【0045】
緩み調整用シーブ移動機構42は、ベースアーム11の前端11E側に位置して右側面板11Bに設けられている。緩み調整用シーブ移動機構42は、緩み調整用シーブ47を前後方向に移動可能に支持している。図3に示すように、緩み調整用シーブ移動機構42は、ガイドレール43と、スライド部材44と、枠部材45と、緩み調整用シーブ軸46とを含んで構成されている。
【0046】
ガイドレール43は、ベースアーム11の右側面板11Bに固定されている。スライド部材44は、ガイドレール43に長さ方向に摺動可能に係合している。枠部材45は、スライド部材44にボルト等を用いて取付けられている。枠部材45には、後述する緩み調整シリンダ48のロッド48Bが取付けられている。また、枠部材45には緩み調整用シーブ軸46が固定され、緩み調整用シーブ軸46は、枠部材45から右側方に突出している。
【0047】
緩み調整用シーブ47は、緩み調整用シーブ移動機構42の緩み調整用シーブ軸46に回転可能に取付けられている。即ち、緩み調整用シーブ47は、ベースアーム11の右側面板11Bに、緩み調整用シーブ移動機構42を介して前後方向に移動可能に設けられている。緩み調整用シーブ47は1枚のシーブによって構成され、ベースアーム11に対し、緩み調整用シーブ軸46を中心として回転可能に支持されている。
【0048】
複数枚の第1開閉用シーブ21と複数枚の第2開閉用シーブ30とに巻回された開閉ロープ40は、緩み調整用シーブ47、中間ガイドシーブ37、開閉ガイドシーブ34に順次巻回される。そして、開閉ガイドシーブ34に巻回された開閉ロープ40の他端40B側が、クラムシェルバケット9の上側シーブ9Eと下側シーブ9Fとに巻回された後、開閉ロープ40の他端40Bは、バケット支持部9Aに取付けられている。
【0049】
緩み調整シリンダ48は、開閉用シーブ移動機構25の前側に位置してベースアーム11の右側面板11Bに設けられている。緩み調整シリンダ48は前後方向に延び、第2開閉用シーブ30に対して緩み調整用シーブ47を接近、離間させる。緩み調整シリンダ48は、チューブ48Aと、チューブ48A内に挿嵌されたピストン(図示せず)と、基端がピストンに取付けられ先端がチューブ48Aから突出したロッド48Bとを有している。チューブ48Aのボトム側は、ベースアーム11の右側面板11Bにブラケット48Cを介して取付けられている。ロッド48Bの先端は、緩み調整用シーブ移動機構42の枠部材45に取付けられている。
【0050】
従って、緩み調整用シーブ移動機構42に取付けられた緩み調整用シーブ47は、緩み調整シリンダ48の伸縮動作に応じて前後方向に移動し、第2開閉用シーブ30に対して接近、離間する。これにより、例えば深礎掘削機1を用いた立坑の掘削作業時に、クラムシェルバケット9が地面に着地し、開閉ロープ40が緩んだ状態において、緩み調整シリンダ48を伸長させて緩み調整用シーブ47を第2開閉用シーブ30から離間させることにより、開閉ロープ40の緩みを除去することができる。
【0051】
次に、本実施形態に用いられる複数のロープ支持装置49について、図6ないし図11を参照して説明する。
【0052】
ロープ支持装置49は、第1開閉用シーブ21と第2開閉用シーブ30との間に複数個(例えば4個)設けられている。これら複数のロープ支持装置49は、アーム10を構成する上ガイドアーム12および下ガイドアーム13の長さ方向に移動しつつ、第1開閉用シーブ21と第2開閉用シーブ30とに巻回された開閉ロープ40を下側から支持する。図10および図11に示すように、ロープ支持装置49は、ベース部材50と、ローラ支持フレーム55と、上側軸部材58と、下側軸部材59と、ローラ60,61とを含んで構成されている。
【0053】
ベース部材50は、アーム10の側部(本実施形態においては上ガイドアーム12および下ガイドアーム13の側部)を取り囲むように四角形の枠状(環状)に形成されている。また、ベース部材50は、アーム10の側部から取り外し可能(本実施形態においてはアーム10の周方向において分離可能)な構造を有する。
より具体的には、ベース部材50は、アーム10の長さ方向と直交する方向(左右方向)で対向するU字型の左側板50Aおよび右側板50Bと、左側板50Aおよび右側板50Bの上端にボルト50Cを用いて取付けられた上板50Dと、左側板50Aおよび右側板50Bの下端にボルト50Cを用いて取付けられた下板50Eとにより、アーム10の周方向において4分割可能なようにアーム10の側部を取り囲む四角形の枠状の形状を有する。右側板50Bの板厚は左側板50Aの板厚より大きく設定され、右側板50Bにはローラ支持フレーム55が取付けられている。
【0054】
ベース部材50を構成する上板50Dの内側面には、M字型をなす2個の上側ブラケット50Fが、左右方向に離間して下向きに突設されている。ベース部材50を構成する下板50Eの内側面には、M字型をなす2個の下側ブラケット50Gが、左右方向に離間して上向きに突設されている。上側ブラケット50Fの突出端には、ガイド部材としての2個の上側ベアリング50Hが回転可能に取付けられ、下側ブラケット50Gの突出端には、ガイド部材としての2個の下側ベアリング50Jが回転可能に取付けられている。図11に示すように、ベース部材50を上ガイドアーム12および下ガイドアーム13に取付けた状態で、上側ベアリング50Hは上ガイドアーム12の上面に当接し、下側ベアリング50Jは下ガイドアーム13の下面に当接する。従って、上側ベアリング50Hが上ガイドアーム12に当接して転動すると共に、下側ベアリング50Jが下ガイドアーム13に当接して転動することにより、ベース部材50は、上ガイドアーム12および下ガイドアーム13の長さ方向に円滑に移動する。
【0055】
ベース部材50を構成する左側板50Aおよび右側板50Bの内側面には、それぞれ上下方向に離間して2個(合計4個)のスライドプレート51が設けられている。ガイド部材としてのスライドプレート51は、例えばエンジニアリングプラスチック等の摩擦係数が低く耐摩耗性に優れた材料を用いて四角形の板状に形成され、それぞれ左側板50Aおよび右側板50Bの内側面に固定された枠状のホルダ52内に嵌め込まれている。上側のスライドプレート51は、上ガイドアーム12の左側面および右側面に摺接し、下側のスライドプレート51は、下ガイドアーム13の左側面および右側面に摺接している。これらスライドプレート51は、ベース部材50が上ガイドアーム12および下ガイドアーム13の長さ方向に移動するときに、上ガイドアーム12および下ガイドアーム13に対するベース部材50の摩擦を低減する。
【0056】
ベース部材50を構成する右側板50Bの上端側には、平板状の上側取付板53が上向きに突設されている。上側取付板53には、左右方向に貫通する2個の軸挿通孔53A,53Bが上下方向に離間して形成されている。また、右側板50Bの下端側には、平板状の下側取付板54が下向きに突設されている。下側取付板54には、左右方向に貫通する2個の軸挿通孔54A,54Bが上下方向に離間して形成されている。これら上側取付板53および下側取付板54は、ベース部材50の一部を構成している。
【0057】
ローラ支持フレーム55は、ベース部材50の右側板50Bに取付けられている。ローラ支持フレーム55は、左右方向に延びる円筒状の横パイプ56と、上下方向に延びる断面U字型の縦板57とを有している。横パイプ56の一端(左端)にはフランジ部56Aが設けられ、横パイプ56の他端には縦板57が固定されている。ローラ支持フレーム55は、横パイプ56のフランジ部56Aに挿通した複数のボルト56Bを、ベース部材50の右側板50Bに螺着することにより、ベース部材50に一体的に固定されている。ローラ支持フレーム55の縦板57は、ベース部材50の右側板50B、上側取付板53および下側取付板54と対向しつつ上下方向に延在している。また、横パイプ56には、縦板57と対向しつつ上方に延びる端末ロープガイド56Cが固定されている。
【0058】
ローラ支持フレーム55を構成する縦板57の上端側には、上側取付板53の軸挿通孔53A,53Bに対応する2個の軸挿通孔57A,57Bが形成されると共に、これら軸挿通孔57A,57Bを取り囲む2個の円筒体57C,57Dが固定されている。縦板57の下端側には、下側取付板54の軸挿通孔54A,54Bに対応する2個の軸挿通孔57E,57Fが形成されると共に、これら軸挿通孔57E,57Fを取り囲む2個の円筒体57G,57Hが溶接等の手段を用いて固定されている。
【0059】
軸部材としての上側軸部材58および下側軸部材59は、上下方向に離間してベース部材50とローラ支持フレーム55との間に取付けられている。上側軸部材58は、一端が上側取付板53の軸挿通孔53Bに挿通され、他端が縦板57の軸挿通孔57Bと円筒体57Dとに挿通されている。上側軸部材58の他端と円筒体57Dには径方向に貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔には抜止めボルト58Aが挿通されている。下側軸部材59は、一端が下側取付板54の軸挿通孔54Bに挿通され、他端が縦板57の軸挿通孔57Fと円筒体57Hとに挿通されている。下側軸部材59の他端と円筒体57Hには径方向に貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔には抜止めボルト59Aが挿通されている。
【0060】
下側軸部材59には、複数(例えば5個)のローラ60が回転可能に取付けられ、上側軸部材58には、複数(例えば3個)のローラ60と1個のローラ61が回転可能に取付けられている。これらローラ60およびローラ61は、本実施形態に用いられるロープ受けを構成し、第1開閉用シーブ21と第2開閉用シーブ30とに巻回された開閉ロープ40を下側から支持している。ローラ60は、下側軸部材59および上側軸部材58に隙間をもって挿通される円筒状に形成され、軸方向の両端側には大径な円板状の鍔部60Aが固定されている。ローラ61は、上側軸部材58に隙間をもって挿通される円筒状に形成され、軸方向の一端側(上側取付板53側)には大径な円板状の鍔部61Aが固定されている。このように、ローラ60およびローラ61は、下側軸部材59および上側軸部材58に対して回転しながら開閉ロープ40を下側から支持することができるので、開閉ロープ40の摩耗を抑えることができる。
【0061】
ここで、下側軸部材59に取付けられた5個のローラ60を合計した軸方向の長さ寸法Aは、下側取付板54と縦板57との間隔Bよりも小さく設定されている(A<B)。従って、5個のローラ60は、下側軸部材59に対して回転可能に、かつ軸方向に移動可能に取付けられている。同様に、上側軸部材58に取付けられた3個のローラ60と1個のローラ61とを合計した軸方向の長さ寸法Cは、上側取付板53と縦板57との間隔Bよりも小さく設定されている(C<B)。従って、3個のローラ60および1個のローラ61は、上側軸部材58に対して回転可能に、かつ軸方向に移動可能に取付けられている。これにより、第1開閉用シーブ21と第2開閉用シーブ30との間で斜めに巻回された開閉ロープ40が、第1開閉用シーブ21の移動に応じて長さ方向と直交する方向(左右方向)に変位する場合でも、ローラ60およびローラ61は、この開閉ロープ40の変位に追従して左右方向に移動しつつ、開閉ロープ40を支持することができる。
【0062】
また、開閉ロープ40の一端40A側は、ベースアーム11の右側面板11Bに突設された開閉ロープ取付ブラケット41に取付けられているため、第1開閉用シーブ21の移動に応じて上下方向に揺動する。これに対し、開閉ロープ40の一端40A側は、上側軸部材58に取付けられたローラ61によって支持されることなく、横パイプ56、端末ロープガイド56C、縦板57、上側軸部材58によって囲まれた空間内に配置される。これにより、開閉ロープ40の一端40A側が、開閉ロープ40の隣合う部位やローラ61に干渉するのを防止することができる。
【0063】
上側外止め軸62は、一端が上側取付板53の軸挿通孔53Aに挿通され、他端が縦板57の軸挿通孔57Aと円筒体57Cとに挿通されている。上側外止め軸62の他端と円筒体57Cには径方向に貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔には抜止めボルト62Aが挿通されている。上側軸部材58に取付けられたローラ60,61の鍔部60A,61Aと上側外止め軸62との間には、開閉ロープ40の直径よりも小さい微小な隙間が形成され、上側外止め軸62は、ローラ60およびローラ61に対して開閉ロープ40を外止めしている。
【0064】
下側外止め軸63は、一端が下側取付板54の軸挿通孔54Aに挿通され、他端が縦板57の軸挿通孔57Eと円筒体57Gとに挿通されている。下側外止め軸63の他端と円筒体57Gには径方向に貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔には抜止めボルト63Aが挿通されている。下側軸部材59に取付けられたローラ60の鍔部60Aと下側外止め軸63との間には、開閉ロープ40の直径よりも小さい微小な隙間が形成され、下側外止め軸63は、ローラ60に対して開閉ロープ40を外止めしている。
【0065】
ベースアーム11の右側面板11Bには、上下方向で対をなすロープ支持具64が、ベースアーム11の長さ方向の2か所に配置されている。図3および図13に示すように、これら合計4個のロープ支持具64は、複数のロープ支持装置49のうち最も第2開閉用シーブ30に近いロープ支持装置49と第2開閉用シーブ30との間、具体的には、ベースアーム11の後端11Fと第2開閉用シーブ30との間に配置されている。ロープ支持具64は、例えばU字型に屈曲した棒材によって形成され、ベースアーム11の右側面板11Bにボルト等の締結具(図示せず)を用いて固定されることにより、ベースアーム11から右側方に突出している。
【0066】
ベースアーム11の上面板11C側に配置された2個のロープ支持具64は、第1開閉用シーブ21の上縁部と第2開閉用シーブ30の上縁部との間に配置された開閉ロープ40を支持している。ベースアーム11の下面板11D側に配置された2個のロープ支持具64は、第1開閉用シーブ21の下縁部と第2開閉用シーブ30の下縁部との間に配置された開閉ロープ40を支持している。このように、最も第2開閉用シーブ30に近いロープ支持装置49と第2開閉用シーブ30との間にロープ支持具64を設けることにより、第1開閉用シーブ21が第2開閉用シーブ30に最接近した状態(図5の状態)においても、第1開閉用シーブ21と第2開閉用シーブ30とに巻回された開閉ロープ40を下側から支持することができる。
【0067】
次に、ベースアーム11と、シーブ取付部材14と、複数のロープ支持装置49との間を相互に連結する連結部材について、図7ないし図9を参照して説明する。
【0068】
ベースアーム11を構成する下面板11Dの後端部には、前側掛止め具65が設けられている。シーブ取付部材14を構成する下板14Dの前端部には、後側掛止め具66が設けられている。ロープ支持装置49のベース部材50を構成する下板50Eの下面には、下向きに突出するU字型のフック67が設けられている。
【0069】
シーブ取付部材14に最も近いロープ支持装置49とシーブ取付部材14との間は、連結部材としての第1の連結ロープ68を介して連結されている。第1の連結ロープ68の一端(後端)は、シーブ取付部材14の後側掛止め具66に接続され、第1の連結ロープ68の他端(前端)は、ロープ支持装置49のフック67に接続されている。第2昇降用シーブ23および第2開閉用シーブ30に最も近いロープ支持装置49とベースアーム11との間は、連結部材としての第2の連結ロープ69を介して連結されている。第2の連結ロープ69の一端(後端)は、ロープ支持装置49のフック67に接続され、第2の連結ロープ69の他端(前端)は、ベースアーム11の前側掛止め具65に接続されている。複数のロープ支持装置49のうち隣り合う2個のロープ支持装置49は、連結部材としての3本の第3の連結ロープ70を介して互いに接続されている。即ち、4個のロープ支持装置49に設けられたフック67には、第3の連結ロープ70の一端および他端が接続されている。
【0070】
図2に示すように、昇降シリンダ18が伸長してシーブ取付部材14がベースアーム11から離れる方向に移動し、4個のロープ支持装置49が互いに最も離れたときには、第1の連結ロープ68、第2の連結ロープ69、第3の連結ロープ70は、直線状に緊張した状態で連続する離間姿勢となる。ここで、本実施形態では、第1の連結ロープ68の長さ寸法は、第3の連結ロープ70の長さ寸法よりも小さく設定され、3本の第3の連結ロープ70は等しい長さ寸法に設定されている。また、4個のロープ支持装置49をシーブ取付部材14(第1昇降用シーブ19または第1開閉用シーブ21)からベースアーム11に向けて順番に1番目、2番目、3番目、4番目のロープ支持装置49とすると、図2に示すように、第1昇降用シーブ19(第1昇降用シーブ19または第1開閉用シーブ21の中心)と1番目のロープ支持装置49との間隔S1、1番目と2番目のロープ支持装置49の間隔S2、2番目と3番目のロープ支持装置49の間隔S3、および3番目と4番目のロープ支持装置49の間隔S4は、略等しくなるように設定されている(S1=S2=S3=S4)。
【0071】
一方、図4に示すように、昇降シリンダ18が縮小し、シーブ取付部材14がベースアーム11に接近すると、複数のロープ支持装置49は、シーブ取付部材14に押圧されることにより、シーブ取付部材14に近いロープ支持装置49から順次、ベースアーム11側に移動する。そして、図5および図9に示すように、シーブ取付部材14がベースアーム11に最も接近し、複数のロープ支持装置49が互いに当接すると、第1の連結ロープ68、第2の連結ロープ69、第3の連結ロープ70は、それぞれ下向きにU字型に弛んだ接近姿勢となる。
【0072】
このように、第1の連結ロープ68、第2の連結ロープ69、第3の連結ロープ70は、昇降シリンダ18の伸縮動作に応じて、図2に示す離間姿勢と図5に示す接近姿勢との間で変形を生じる。このため、第1の連結ロープ68、第2の連結ロープ69、第3の連結ロープ70は、離間姿勢と接近姿勢との変形が許容される部位、即ち、ベースアーム11の下面板11Dに設けられた前側掛止め具65、シーブ取付部材14の下板14Dに設けられた後側掛止め具66、ロープ支持装置49を構成するベース部材50の下板50Eに設けられたフック67に取付けられている。なお、実施形態では、ロープ支持装置49に第1の連結ロープ68、第2の連結ロープ69、第3の連結ロープ70を接続するためのフック67を、ロープ支持装置49を構成するベース部材50の下板50Eに取付けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばベース部材50の左側板50A、ローラ支持フレーム55の横パイプ56、ローラ支持フレーム55の縦板57といった、第1,第2,第3の連結ロープ68,69,70の離間姿勢と接近姿勢との変形が許容される部位にフックを取付ける構成としてもよい。
【0073】
本実施形態による深礎掘削機1は、上述の如き構成を有するもので、以下、深礎掘削機1を用いて立坑を掘削する作業について説明する。
【0074】
キャブ4に搭乗したオペレータは、ブームシリンダ7を操作してブーム6の先端を上方に持上げると共に、アームシリンダ8を操作することにより、アーム10を前後方向に延びる姿勢(地面に対して水平な姿勢、または前端側が若干上向きとなる姿勢)に保持する。次に、クラムシェルバケット9を、立坑を掘削すべき地面の上方に配置した後、昇降シリンダ18を縮小させる。これにより、シーブ取付部材14が、上ガイドアーム12および下ガイドアーム13に沿って前側に移動し、第1昇降用シーブ19が第2昇降用シーブ23に接近すると共に、第1開閉用シーブ21が第2開閉用シーブ30に接近する。この結果、昇降ロープ38と開閉ロープ40とがアーム10から送り出され、クラムシェルバケット9が下降する。
【0075】
クラムシェルバケット9が地面に近づくと、オペレータは、開閉シリンダ31を縮小させる。これにより、開閉用シーブ移動機構25に取付けられた第2開閉用シーブ30が、第1開閉用シーブ21に接近し、開閉ロープ40がアーム10から送り出され、クラムシェルバケット9の一対のバケット9Bが全開となる。クラムシェルバケット9が全開となった状態で、オペレータは昇降シリンダ18を縮小させ、クラムシェルバケット9の一対のバケット9Bを、その自重によって地中に潜り込ませる。
【0076】
次に、オペレータは、クラムシェルバケット9を閉じる前に、緩み調整シリンダ48を伸長させ、緩み調整用シーブ移動機構42に取付けられた緩み調整用シーブ47を、第2開閉用シーブ30から離間させる。この結果、昇降ロープ38は緩んだまま、開閉ロープ40の緩みのみが除去される。この状態で、オペレータは、開閉シリンダ31を伸長させ、開閉用シーブ移動機構25に取付けられた第2開閉用シーブ30を第1開閉用シーブ21から離間させることにより、開閉ロープ40をアーム10側に引上げる。これにより、クラムシェルバケット9は、自重によって地中に潜り込みながら閉じていき、大量の土砂を掬うことができる。
【0077】
クラムシェルバケット9を閉じて土砂を掬った後、オペレータは、昇降シリンダ18を伸長させる。これにより、シーブ取付部材14に取付けられた第1昇降用シーブ19が第2昇降用シーブ23から離間し、昇降ロープ38がアーム10側に引上げられると共に、第1開閉用シーブ21が第2開閉用シーブ30から離間し、開閉ロープ40がアーム10側に引上げられる。この結果、昇降ロープ38と開閉ロープ40とが一緒にアーム10側に引上げられ、クラムシェルバケット9は、土砂を保持した状態で昇降ロープ38と開閉ロープ40とによって持上げられて上昇する。
【0078】
クラムシェルバケット9を立坑の外部まで上昇させた後には、例えば上部旋回体3を旋回させてダンプトラック(図示せず)の荷台の上方までクラムシェルバケット9を移動させる。この状態で、オペレータは、開閉シリンダ31を縮小させ、開閉用シーブ移動機構25に取付けられた第2開閉用シーブ30を、第1開閉用シーブ21に接近させる。この結果、開閉ロープ40がアーム10から引出され、クラムシェルバケット9が開くことにより、掘削した土砂をダンプトラックの荷台に放土することができる。
【0079】
ここで、深礎掘削機1による立坑の掘削作業時には、例えば開閉ロープ40が、第1開閉用シーブ21と第2開閉用シーブ30との間で下向きに弛みを生じる。特に、立坑の掘削深さが小さく(浅く)、第1開閉用シーブ21が第2開閉用シーブ30から大きく離間している状態では、開閉ロープ40の弛みが大きくなり、第1開閉用シーブ21あるいは第2開閉用シーブ30から脱落することが懸念される。また、クラムシェルバケット9が昇降動作や開閉動作を行うときの動き出しの衝撃により、例えば開閉ロープ40が大きく振れ、第1開閉用シーブ21あるいは第2開閉用シーブ30に擦れて早期に摩耗してしまう虞がある。
【0080】
これに対し、本実施形態では、上ガイドアーム12および下ガイドアーム13に沿ってアーム10の長さ方向に移動可能に設けられた複数のロープ支持装置49により、第1開閉用シーブ21と第2開閉用シーブ30とに巻回された開閉ロープ40を下側から支持している。具体的には、図14に示すように、アーム10の前端側(ベースアーム11の前端11E側)を上向きに傾斜させた姿勢で立坑を掘削するときに、第1開閉用シーブ21と第2開閉用シーブ30との間で開閉ロープ40が下向きに弛んだとしても、複数のロープ支持装置49によって開閉ロープ40を下側から支持することができる。そして、昇降シリンダ18が縮小してシーブ取付部材14がベースアーム11に接近すると、複数のロープ支持装置49は、シーブ取付部材14に押圧されることにより、シーブ取付部材14に近いロープ支持装置49から順次、ベースアーム11側に移動しつつ、開閉ロープ40を支持し続ける。
【0081】
これにより、開閉ロープ40が、第1開閉用シーブ21と第2開閉用シーブ30との間で下向きに大きく弛むのを抑えることができ、立坑の掘削作業時に、開閉ロープ40が第1開閉用シーブ21あるいは第2開閉用シーブ30から脱落するのを防止することができる。また、複数のロープ支持装置49によって開閉ロープ40を支持することにより、クラムシェルバケット9が昇降動作や開閉動作を行うときの動き出しの衝撃によって開閉ロープ40が大きく振れるのを抑えることができる。この結果、開閉ロープ40が第1開閉用シーブ21あるいは第2開閉用シーブ30に擦れて早期に摩耗するのを抑え、開閉ロープ40の寿命を延ばすことができる。
【0082】
しかも、開閉ロープ40を複数のロープ支持装置49によって支持することにより、第1開閉用シーブ21と第2開閉用シーブ30とに巻回された開閉ロープ40が大きく垂れ下がることを抑制することが可能となる。また、ロープ支持装置49に開閉ロープ40が支持されることで、第1開閉用シーブ21と第2開閉用シーブ30に開閉ロープ40の重量がかかること、すなわち、例えば開閉ロープ40と第1開閉用シーブ21および第2開閉用シーブ30との間の相対変位を阻害する力がかかることを軽減することができる。これにより、クラムシェルバケット9(バケット9B)を開いた状態で降下させた場合に、開閉ロープ40をクラムシェルバケット9の降下速度に追従させて繰り出すことができる。この結果、クラムシェルバケット9が開いた状態を保持したまま、クラムシェルバケット9を自重によって地中に潜り込ませることができ、掘削性を高めることができる。
【0083】
かくして、実施形態では、上部旋回体3に設けられた作業装置5は、上部旋回体3に対して回動可能に設けられたアーム10と、アーム10にその長さ方向に移動可能に設けられた第1昇降用シーブ19および第1開閉用シーブ21と、第1昇降用シーブ19および第1開閉用シーブ21から離間してそれぞれアーム10に設けられた第2昇降用シーブ23および第2開閉用シーブ30と、第1昇降用シーブ19と第2昇降用シーブ23とに巻回されクラムシェルバケット9を昇降させる昇降ロープ38と、第1開閉用シーブ21と第2開閉用シーブ30とに巻回されクラムシェルバケット9を開閉させる開閉ロープ40と、を備えてなる深礎掘削機1において、アーム10における第1昇降用シーブ19と第2昇降用シーブ23との間、および第1開閉用シーブ21と第2開閉用シーブ30との間の少なくとも一方には、昇降ロープ38および開閉ロープ40の少なくとも一方のロープを支持するロープ支持装置49がアーム10の長さ方向に移動可能に設けられている。
【0084】
この構成によれば、昇降ロープ38および開閉ロープ40の少なくとも一方をロープ支持装置49によって支持することにより、深礎掘削機1を用いた立坑の掘削作業時に昇降ロープ38および開閉ロープ40の少なくとも一方が大きく弛むのを抑えることができる。この結果、昇降ロープ38が第1昇降用シーブ19あるいは第2昇降用シーブ23から脱落する事態、および/または開閉ロープ40が第1開閉用シーブ21あるいは第2開閉用シーブ30から脱落する事態を防止することができる。
【0085】
実施形態では、ロープ支持装置49は、アーム10の長さ方向に並んで複数設けられ、これら複数のロープ支持装置49は、連結部材を介して相互に連結されている。この構成によれば、第1昇降用シーブ19と第2昇降用シーブ23とに巻回された昇降ロープ38、および/または第1開閉用シーブ21と第2開閉用シーブ30とに巻回された開閉ロープ40を、複数のロープ支持装置49によって支持することにより、昇降ロープ38および/または開閉ロープ40が大きく弛むのを防止することができる。
【0086】
実施形態では、第1昇降用シーブ19および第1開閉用シーブ21は、アーム10にその長さ方向に移動可能に設けられたシーブ取付部材14に取付けられ、前記連結部材は、複数のロープ支持装置49のうちシーブ取付部材14に最も近いロープ支持装置49とシーブ取付部材14との間を連結する第1の連結ロープ68と、複数のロープ支持装置49のうち第2昇降用シーブ23および第2開閉用シーブ30に最も近いロープ支持装置49とアーム10(ベースアーム11)との間を連結する第2の連結ロープ69と、複数のロープ支持装置49のうち隣り合う2個のロープ支持装置49間を連結する第3の連結ロープ70とを備えている。この構成によれば、シーブ取付部材14がベースアーム11から離れる方向に移動したときに、複数のロープ支持装置49を、互いに適度な間隔を保った状態で、第1昇降用シーブ19および第1開閉用シーブ21と第2昇降用シーブ23および第2開閉用シーブ30との間に配置することができる。
【0087】
実施形態では、第1,第2,第3の連結ロープ68,69,70は、複数のロープ支持装置49が互いに最も離れたときの離間姿勢と、複数のロープ支持装置49が互いに最も接近したときに下向きに弛んだ接近姿勢との間で変形し、第1,第2,第3の連結ロープ68,69,70は、ロープ支持装置49のうち離間姿勢と前記接近姿勢との変形が許容される部位に取付けられている。この構成によれば、複数のロープ支持装置49は、第1昇降用シーブ19および第1開閉用シーブ21と第2昇降用シーブ23および第2開閉用シーブ30との間隔の変化に応じて移動しつつ、昇降ロープ38および/または開閉ロープ40を確実に支持することができる。
【0088】
実施形態では、ロープ支持装置49は、アーム10(上ガイドアーム12および下ガイドアーム13)にガイドされた状態でアーム10の長さ方向に移動可能となったベース部材50と、ベース部材50から昇降ロープ38および開閉ロープ40の少なくとも一方のロープの下側に向けて突出した上側軸部材58および下側軸部材59と、上側軸部材58および下側軸部材59に取付けられ昇降ロープ38および開閉ロープ40の少なくとも一方のロープを下側から支持するロープ受けとを含んで構成されている。この構成によれば、ベース部材50がアーム10の長さ方向に移動しつつ、上側軸部材58および下側軸部材59に取付けられたロープ受けによって、昇降ロープ38および/または開閉ロープ40を下側から支持することができる。
【0089】
実施形態では、ロープ受けは、上側軸部材58および下側軸部材59に対して回転可能に、かつ軸方向に移動可能に取付けられたローラ60,61によって構成されている。この構成によれば、ローラ60,61は、上側軸部材58および下側軸部材59に対して回転しながら昇降ロープ38および/または開閉ロープ40を支持することができ、昇降ロープ38および/または開閉ロープ40の摩耗を抑えることができる。また、昇降ロープ38および/または開閉ロープ40が、長さ方向と直交する方向に変位した場合でも、ローラ60,61は、昇降ロープ38および/または開閉ロープ40の変位に追従して上側軸部材58および下側軸部材59の軸方向に移動しつつ、昇降ロープ38および/または開閉ロープ40を支持することができる。
【0090】
実施形態では、ベース部材50とアーム10(上ガイドアーム12および下ガイドアーム13)との間には、ベース部材50をアーム10の長さ方向に沿って案内する上側ベアリング50H、下側ベアリング50J、スライドプレート51が設けられている。この構成によれば、ベース部材50は、上側ベアリング50H、下側ベアリング50J、スライドプレート51に案内されることにより、アーム10の長さ方向に円滑に移動することができる。
また、実施形態では、ベース部材50は、アーム10の側部を取り囲むように枠状に形成されている。また、ベース部材50は、アーム10の側部から取り外し可能な構造を有する。これによって、例えば、ベース部材50は、シーブ取付部材14をアーム10(例えばガイドアーム12および13)から取り外すことなく、アーム10から単独で取り外すことができる。これにより、ロープ支持装置49は、その全体として、アーム10の側部から取り外し可能な構成を有することとなる。このような構成を有することで、ロープ支持装置49の交換などのメンテナンスに対する作業性が大幅に向上する。
【0091】
実施形態では、アーム10(ベースアーム11)には、複数のロープ支持装置49のうち最も第2開閉用シーブ30に近いロープ支持装置49と第2開閉用シーブ30との間に位置して、昇降ロープ38および開閉ロープ40の少なくとも一方のロープを支持するロープ支持具64が設けられている。この構成によれば、第1開閉用シーブ21が第2開閉用シーブ30に最接近した状態(図5の状態)においても、第1開閉用シーブ21と第2開閉用シーブ30とに巻回された開閉ロープ40を、ロープ支持具64によって下側から支持することができる。
【0092】
次に、図15は本発明の第2の実施形態によるアーム、ロープ支持装置等を示している。本実施形態の特徴は、シーブ取付部材に最も近いロープ支持装置とシーブ取付部材との間隔は、隣り合う2個の前記ロープ支持装置の間隔よりも小さく設定され、隣り合う2個のロープ支持装置の間隔は、第2昇降用シーブおよび第2開閉用シーブ側に比較して、シーブ取付部材側が小さく設定されていることにある。なお、本実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0093】
図中、アーム10を構成する上ガイドアーム12および下ガイドアーム13には、4個のロープ支持装置49が設けられ、これら4個のロープ支持装置49は、第3の連結ロープ70を介して互いに連結されている。また、シーブ取付部材14と1番目のロープ支持装置49とは第1の連結ロープ68を介して連結され、ベースアーム11と4番目のロープ支持装置49とは第2の連結ロープ69を介して連結されている。しかし、本実施形態では、第1の連結ロープ68、第2の連結ロープ69、第3の連結ロープ70の長さ寸法が第1の実施形態とは異なり、シーブ取付部材14と1番目のロープ支持装置49との間隔が、隣り合う2個のロープ支持装置49の間隔よりも小さく設定され、隣り合う2個のロープ支持装置49の間隔は互いに異なっている。
【0094】
また、第1昇降用シーブ19または第1開閉用シーブ21(その中心)と1番目のロープ支持装置49との間隔S1は、1番目と2番目のロープ支持装置49の間隔S2よりも小さく、前記間隔S2は、2番目と3番目のロープ支持装置49の間隔S3よりも小さく、前記間隔S3は、3番目と4番目のロープ支持装置49の間隔S4よりも小さく設定されている(S1<S2<S3<S4)。このように、本実施形態では、シーブ取付部材14が第2昇降用シーブ23および第2開閉用シーブ30に対して最も離れた状態で、シーブ取付部材14に最も近い1番目のロープ支持装置49と第1昇降用シーブ19または第1開閉用シーブ21との間隔S1は、隣り合う2個のロープ支持装置49の間隔S2、S3、S4よりも小さく設定され、隣り合う2個のロープ支持装置49の間隔S2、S3、S4は、第2昇降用シーブ23および第2開閉用シーブ30側(ベースアーム11側)に比較して、シーブ取付部材14側が小さく設定されている。
【0095】
第2の実施形態による深礎掘削機1は上述の如き構成を有するもので、その基本的作用については、第1の実施形態によるものと格別差異はない。然るに、本実施形態では、シーブ取付部材14に最も近い1番目のロープ支持装置49と第1昇降用シーブ19または第1開閉用シーブ21との間隔S1は、隣り合う2個のロープ支持装置49の間隔S2、S3、S4よりも小さく設定され、隣り合う2個のロープ支持装置49の間隔S2、S3、S4は、第2昇降用シーブ23および第2開閉用シーブ30側に比較して、シーブ取付部材14側が小さく設定されている(S1<S2<S3<S4)。
【0096】
ここで、アーム10の前端側(ベースアーム11の前端11E側)を上向きに傾斜させた姿勢で立坑を掘削するときに、第1開閉用シーブ21と第2開閉用シーブ30との間で開閉ロープ40が弛んだ場合には、開閉ロープ40の弛みは、その自重によって第1開閉用シーブ21側(シーブ取付部材14側)に偏るようになる。これに対し、本実施形態では、4番目のロープ支持装置49から1番目のロープ支持装置49に向けて隣り合うロープ支持装置49の間隔S4、S3、S2が小さくなり、1番目のロープ支持装置49と第1昇降用シーブ19または第1開閉用シーブ21との間隔S1が最小となるように設定されている。これにより、開閉ロープ40の弛みが第1開閉用シーブ21側に偏ったとしても、4個のロープ支持装置49を開閉ロープ40の偏りに応じて適正に配置することができる。この結果、開閉ロープ40の弛みを抑え、開閉ロープ40が第1開閉用シーブ21あるいは第2開閉用シーブ30から脱落するのを防止することができる。
【0097】
なお、第2の実施形態では、1番目のロープ支持装置49と第1昇降用シーブ19または第1開閉用シーブ21との間隔S1は、隣り合う2個のロープ支持装置49の間隔S2、S3、S4よりも小さく設定され、隣り合う2個のロープ支持装置49の間隔S2、S3、S4は、第2昇降用シーブ23および第2開閉用シーブ30側に比較して、シーブ取付部材14側が小さく設定されている(S1<S2<S3<S4)。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図16に示す変形例のように、1番目のロープ支持装置49と第1昇降用シーブ19または第1開閉用シーブ21との間隔S1を最小とし、1番目と2番目のロープ支持装置49の間隔S2を、2番目と3番目のロープ支持装置49の間隔S3よりも小さく設定し、前記間隔S3を、3番目と4番目のロープ支持装置49の間隔S4と等しく設定してもよい(S1<S2<S3=S4)。
【0098】
また、実施形態では、複数のロープ支持装置49によって、第1開閉用シーブ21と第2開閉用シーブ30とに巻回された開閉ロープ40のみを支持する構成を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、ロープ支持装置49によって開閉ロープ40と昇降ロープ38とを同時に支持する構成としてもよく、ロープ支持装置49によって昇降ロープ38のみを支持する構成としてもよい。
【0099】
さらに、実施形態では、複数のロープ支持装置49によって開閉ロープ40を支持する構成を例示したが、本発明はこれに限らず、例えば1個のロープ支持装置49によって開閉ロープ40および/または昇降ロープ38を支持する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 深礎掘削機
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
5 作業装置
9 クラムシェルバケット
10 アーム
14 シーブ取付部材
19 第1昇降用シーブ
21 第1開閉用シーブ
23 第2昇降用シーブ
30 第2開閉用シーブ
38 昇降ロープ
40 開閉ロープ
49 ロープ支持装置
50 ベース部材
50H 上側ベアリング(ガイド部材)
50J 下側ベアリング(ガイド部材)
51 スライドプレート(ガイド部材)
58 上側軸部材(軸部材)
59 下側軸部材(軸部材)
60,61 ローラ(ロープ受け)
64 ロープ支持具
68 第1の連結ロープ(連結部材)
69 第2の連結ロープ(連結部材)
70 第3の連結ロープ(連結部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16