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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103116
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】カレンダーシート成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
C08L67/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007280
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 仁崇
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CF181
4J002CF182
4J002CF183
4J002DJ047
4J002EH046
4J002FD017
4J002FD026
4J002GA00
4J002GG01
(57)【要約】
【課題】ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分を含有し、生産性が良好で、耐割れ性が改善されたカレンダーシート成形体の提供。
【解決手段】カレンダーシート成形体に含まれるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の全量に対し、共重合体(A)の含有量が60~90重量%、共重合体(B-1)または(B-2)の含有量が10~40重量%である。前記樹脂成分の総量100重量部に対して可塑剤の含有量は0.5重量部以上20.0重量部未満である。前記共重合体は、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体であり、他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が、共重合体(A)は1モル%以上10モル未満%、共重合体(B-1)は10モル%以上24モル%未満、共重合体(B-2)は24モル%以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分、及び、可塑剤を含有する、カレンダーシート成形体であって、
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分が、下記共重合体(A)と、下記共重合体(B-1)または下記共重合体(B-2)の少なくともいずれか一方とを含み、
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の全量に対し、前記共重合体(A)の含有量が60~90重量%、前記共重合体(B-1)または前記共重合体(B-2)の含有量が10~40重量%であり、
前記可塑剤の含有量は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の総量100重量部に対して0.5重量部以上20.0重量部未満である、カレンダーシート成形体。
共重合体(A):他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が1モル%以上10モル未満%である、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体
共重合体(B-1):他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が10モル%以上24モル%未満である、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体
共重合体(B-2):他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が24モル%以上である、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体
【請求項2】
前記共重合体(B-1)を、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の全量に対し20~40重量%含む、請求項1に記載のカレンダーシート成形体。
【請求項3】
前記共重合体(B-2)を、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の全量に対し10~30重量%含む、請求項1に記載のカレンダーシート成形体。
【請求項4】
前記共重合体(A)が、他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が2モル%以上4モル%未満である3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体を含み、該共重合体の含有量が、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の全量に対し1~20重量%である、請求項3に記載のカレンダーシート成形体。
【請求項5】
前記可塑剤が、変性グリセリン系化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載のカレンダーシート成形体。
【請求項6】
前記変性グリセリン系化合物が、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンジアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノカプリレート、及び、グリセリンジアセトモノデカノエートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項5に記載のカレンダーシート成形体。
【請求項7】
無機充填剤を、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の総量100重量部に対して0重量部以上30.0重量部以下含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のカレンダーシート成形体。
【請求項8】
前記無機充填剤が、タルク、マイカ、カオリナイト、モンモリロナイト、及び、スメクタイトからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項7に記載のカレンダーシート成形体。
【請求項9】
前記カレンダーシート成形体の膜厚が100~500μmである、請求項1~3のいずれか1項に記載のカレンダーシート成形体。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか1項に記載のカレンダーシート成形体を含む、プレス成形体または真空成形体。
【請求項11】
前記プレス成形体または真空成形体が、食品容器、又は、農業用資材である、請求項10に記載のカレンダーシート成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分を含有するカレンダーシート成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
石油由来プラスチックは毎年大量に廃棄されており、これらの大量廃棄物による環境汚染が深刻な問題として取り上げられている。また近年、マイクロプラスチックが、海洋環境において大きな問題になっている。
【0003】
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂は優れた海水分解性を有しており、廃棄されたプラスチックが引き起こす環境問題を解決しうる材料である。例えば、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂の1種であるポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)は3-ヒドロキシヘキサノエートの組成比率を変化させることにより、機械特性を柔軟にコントロールできる。
【0004】
このようなポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を用いて、様々な成形体を構成することが検討されている。例えば、特許文献1では、当該樹脂を用いたカレンダー成形によってフィルムを製造するのに適した樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-128070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の樹脂組成物によると、良好な生産性にてカレンダーシート成形体を製造することができる。しかし、製造されたカレンダーシート成形体は、耐割れ性が十分ではなく、二次加工(例えば、真空成形やプレス加工による成形加工)後の後処理工程や、二次加工によって得られた成形体の使用又は搬送時において、割れ等の欠陥を生じる場合があった。例えば、二次加工された成形体の後処理工程(例えばカット工程)で割れが生じたり、二次加工で得られた成形体の使用又は搬送時に割れてしまう問題があった。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分を含有するカレンダーシート成形体であって、生産性が良好であり、かつ、耐割れ性が改善されたカレンダーシート成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂成分を特定のモノマー比率を有する少なくとも2種類の共重合体の組合せから構成し、かつ、特定量の可塑剤を配合することで、良好な生産性で製造でき、かつ、割れの発生が抑制されたカレンダーシート成形体を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分、及び、可塑剤を含有する、カレンダーシート成形体であって、
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分が、下記共重合体(A)と、下記共重合体(B-1)または下記共重合体(B-2)の少なくともいずれか一方とを含み、
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の全量に対し、前記共重合体(A)の含有量が60~90重量%、前記共重合体(B-1)または前記共重合体(B-2)の含有量が10~40重量%であり、
前記可塑剤の含有量は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の総量100重量部に対して0.5重量部以上20.0重量部未満である、カレンダーシート成形体に関する。
共重合体(A):他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が1モル%以上10モル未満%である、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体
共重合体(B-1):他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が10モル%以上24モル%未満である、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体
共重合体(B-2):他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が24モル%以上である、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分を含有するカレンダーシート成形体であって、生産性が良好であり、かつ、耐割れ性が改善されたカレンダーシート成形体を提供することができる。
本発明に係るカレンダーシート成形体は、二次加工(例えば、真空成形やプレス加工による成形加工)によって、所定の形状を有する成形体に加工することができ、得られた成形体は、実使用に適した強度を示すことができる。
本発明に係るカレンダーシート成形体によると、二次加工後の後処理工程(例えばカット工程)や、二次加工によって得られた成形体の使用又は搬送時において、割れの発生を抑制することができる。
好適な態様によると、常温時、及び、低温時のいずれにおいても、割れの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
本実施形態は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分、及び、可塑剤を含有するカレンダーシート成形体に関する。
【0013】
(ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分)
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)樹脂成分は、構成モノマーの含有割合が互いに異なる少なくとも2種類のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を含む。各ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂は、3-ヒドロキシブチレート(以下、3HBと称する場合がある)単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体である。
【0014】
前記他のヒドロキシアルカノエート単位は、3HB単位以外の3-ヒドロキシアルカノエート単位であってよいし、3-ヒドロキシアルカノエート単位以外のヒドロキシアルカノエート単位(例えば、4-ヒドロキシアルカノエート単位)であってもよい。前記他のヒドロキシアルカノエート単位は、1種のみが含まれてもよいし、2種以上が含まれてもよい。
【0015】
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂としては、特に微生物から産生されるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂が好ましい。微生物から産生されるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂においては、3-ヒドロキシアルカノエート単位が、全て(R)-3-ヒドロキシアルカノエート単位として含有される。
【0016】
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂の具体例としては、例えば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(略称:P3HB3HV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(略称:P3HB3HH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘプタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシノナノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシウンデカノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(略称:P3HB4HB)等が挙げられる。特に、カレンダーシート成形体の生産性および機械特性等の観点から、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、又は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)が好ましく、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)が特に好ましい。
【0017】
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分は、少なくとも、下記共重合体(A)と、下記共重合体(B-1)または下記共重合体(B-2)の少なくともいずれか一方とを含む。
共重合体(A):他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が1モル%以上10モル未満%である、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体
共重合体(B-1):他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が10モル%以上24モル%未満である、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体
共重合体(B-2):他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が24モル%以上である、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体
【0018】
共重合体(A)は、高結晶性のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂であるのに対し、共重合体(B-2)は、低結晶性のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂である。共重合体(B-1)は、結晶性が共重合体(A)と共重合体(B-2)の中間にある中結晶性のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂である。
【0019】
一般に、高結晶性のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂は生産性に優れるが機械特性が乏しい性質を有し、低結晶性のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂は生産性に劣るが優れた機械特性を有する。上述した樹脂を組み合わせて使用することで、良好な生産性で製造でき、かつ、割れの発生が抑制されたカレンダーシート成形体を提供することが可能になる。
【0020】
共重合体(A)における他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合は、1モル%以上10モル%未満である。カレンダーシート成形体の生産性の観点から、前記割合の下限は4モル%以上であることが好ましく、上限は7モル%以下であることが好ましい。
【0021】
共重合体(A)としては、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、又は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)が好ましく、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)がより好ましい。
【0022】
共重合体(B-1)における他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合は、10モル%以上24モル%未満である。カレンダーシート成形体の生産性の観点から、前記割合の上限は15モル%未満であることが好ましく、12モル%未満がより好ましい。
【0023】
共重合体(B-1)は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、又は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)が好ましく、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)がより好ましい。
【0024】
共重合体(B-2)における他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合は、24モル%以上である。カレンダーシート成形体の生産性の観点から、前記割合の下限は25モル%以上が好ましい。
共重合体(B-2)の生産性の観点から、前記割合の上限は99モル%以下であることが好ましく、50モル%以下がより好ましく、40モル%以下がより更に好ましく、30モル%以下が特に好ましい。
【0025】
共重合体(B-2)としては、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、又は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)が好ましく、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)がより好ましい。
【0026】
本実施形態の一態様に係るカレンダーシート成形体において、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の全量に対し、前記共重合体(A)の含有量は60~90重量%、前記共重合体(B-1)の含有量は10~40重量%である。共重合体(B-1)の割合を10重量%以上40重量%以下とすることによって、カレンダーシート成形体の生産性を良好にし、かつ、カレンダーシート成形体の耐割れ性を改善することができる。また、当該割合を40重量%以下とすることによって、実使用が可能な強度をカレンダーシート成形体に付与することもできる。前記共重合体(B-1)の割合は、20~40重量%であることが好ましく、30~40重量%がより好ましい。
【0027】
本実施形態の別態様に係るカレンダーシート成形体において、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の全量に対し、前記共重合体(A)の含有量は60~90重量%、前記共重合体(B-2)の含有量は10~40重量%である。共重合体(B-2)の割合を10重量%以上40重量%以下とすることによって、カレンダーシート成形体の生産性を良好にし、かつ、カレンダーシート成形体の耐割れ性を改善することができる。また、当該割合を40重量%以下とすることによって、実使用が可能な強度をカレンダーシート成形体に付与することもできる。前記共重合体(B-2)の割合は、10~30重量%であることが好ましく、20~30重量%がより好ましい。
【0028】
前記共重合体(B-1)と前記共重合体(B-2)を併用してもよい。その場合、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の全量に対し、前記共重合体(A)の含有量は60~90重量%、前記共重合体(B-1)と前記共重合体(B-2)の合計含有量は10~40重量%である。この範囲内において、カレンダーシート成形体の生産性を良好にし、かつ、カレンダーシート成形体の耐割れ性を改善することができる。前記共重合体(B-1)と前記共重合体(B-2)の合計含有量は15~35重量%であることが好ましい。
【0029】
共重合体(B-2)を使用する場合、共重合体(A)は、他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が2モル%以上4モル%未満である3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体を含むことが好ましい。該共重合体の含有量は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の全量に対し1~20重量%であることが好ましく、5~18重量%がより好ましく、10~15重量%がさらに好ましい。
【0030】
また、共重合体(A)は、前述した他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が2モル%以上4モル%未満である3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体に加えて、他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が4モル%以上10モル%未満である3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体をさらに含むことがより好ましい。
【0031】
カレンダーシート成形体に含まれるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分を構成する全モノマー単位に占める3-ヒドロキシブチレート単位および他のヒドロキシアルカノエート単位の平均含有比率は、カレンダーシート成形体の強度と生産性を両立する観点から、3-ヒドロキシブチレート単位/他のヒドロキシアルカノエート=96/4~90/10(モル%/モル%)が好ましく、95/5~91/9(モル%/モル%)がより好ましく、94/6~92/8(モル%/モル%)がさらに好ましい。
【0032】
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分を構成する全モノマー単位に占める各モノマー単位の平均含有比率は、当業者に公知の方法、例えば国際公開2013/147139号の段落[0047]に記載の方法により求めることができる。平均含有比率とは、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分を構成する全モノマー単位に占める各モノマー単位のモル比を意味し、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分が2種類のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂の混合物である場合、該混合物全体に含まれる各モノマー単位のモル比を意味する。
【0033】
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の重量平均分子量は、特に限定されないが、カレンダーシート成形体の強度と生産性を両立する観点から、20万~200万が好ましく、25万~150万がより好ましく、30万~100万が更に好ましい。
【0034】
また、共重合体(A)、共重合体(B-1)及び共重合体(B-2)それぞれの重量平均分子量は、特に限定されない。しかし、共重合体(A)の重量平均分子量は、カレンダーシート成形体の強度と生産性を両立する観点から、20万~100万が好ましく、40万~95万がより好ましく、50万~90万が更に好ましい。一方、共重合体(B-1)の重量平均分子量は、カレンダーシート成形体の強度と生産性を両立する観点から、20万~100万が好ましく、40万~95万がより好ましく、50万~90万が更に好ましい。また、共重合体(B-2)の重量平均分子量は、カレンダーシート成形体の強度と生産性を両立する観点から、20万~250万が好ましく、40万~95万がより好ましく、50万~90万が更に好ましい。
【0035】
なお、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分、共重合体(A)、共重合体(B-1)又は共重合体(B-2)の重量平均分子量は、クロロホルム溶液を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(島津製作所社製HPLC GPC system)を用い、ポリスチレン換算により測定することができる。該ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるカラムとしては、重量平均分子量を測定するのに適切なカラムを使用すればよい。
【0036】
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂の製造方法は特に限定されず、化学合成による製造方法であってもよいし、微生物による製造方法であってもよい。中でも、微生物による製造方法が好ましい。微生物による製造方法については、公知の方法を適用できる。例えば、3-ヒドロキシブチレートと、その他のヒドロキシアルカノエートとのコポリマー生産菌としては、P3HB3HVおよびP3HB3HH生産菌であるアエロモナス・キヤビエ(Aeromonas caviae)、P3HB4HB生産菌であるアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)等が知られている。特に、P3HB3HHに関し、P3HB3HHの生産性を上げるために、P3HA合成酵素群の遺伝子を導入したアルカリゲネス・ユートロファス AC32株(Alcaligenes eutrophus AC32,FERM BP-6038)(T.Fukui,Y.Doi,J.Bateriol.,179,p4821-4830(1997))等がより好ましく、これらの微生物を適切な条件で培養して菌体内にP3HB3HHを蓄積させた微生物菌体が用いられる。また前記以外にも、生産したいポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂に合わせて、各種ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂合成関連遺伝子を導入した遺伝子組み換え微生物を用いても良いし、基質の種類を含む培養条件の最適化をすればよい。
【0037】
本実施形態に係るカレンダーシート成形体は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分に加えて、可塑剤を含有する。可塑剤を配合することによって、カレンダーシート成形体の耐割れ性を改善し、さらに、実使用が可能な強度をカレンダーシート成形体に付与することができる。
【0038】
前記可塑剤としては特に限定されないが、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分との相溶性の観点から、分子内にエステル結合を有するエステル化合物を使用することが好ましい。
【0039】
可塑剤として使用可能なエステル化合物としては、例えば、変性グリセリン系化合物、二塩基酸エステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物、ポリエーテルエステル系化合物、安息香酸エステル系化合物、クエン酸エステル系化合物、イソソルバイドエステル系化合物、ポリカプロラクトン系化合物等が挙げられる。なかでも、変性グリセリン系化合物、二塩基酸エステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物、ポリエーテルエステル系化合物、又は、イソソルバイドエステル系化合物が好ましく、変性グリセリン系化合物が特に好ましい。また、前記エステル化合物としては、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。2種以上を組み合わせて使用する場合、それらエステル化合物の混合比率を適宜調整することができる。
【0040】
変性グリセリン系化合物としては、グリセリンエステル系化合物が好ましい。グリセリンエステル系化合物としては、グリセリンのモノエステル、ジエステル、又はトリエステルのいずれも使用することができるが、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分との相溶性の観点から、グリセリンのトリエステルが好ましい。グリセリンのトリエステルのなかでも、グリセリンジアセトモノエステルが特に好ましい。グリセリンジアセトモノエステルの具体例としては、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンジアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノカプリレート、グリセリンジアセトモノデカノエート等を挙げることができ、これら2種類以上の混合物として用いることができる。例えば、前記変性グリセリン系化合物としては、理研ビタミン株式会社の「リケマール」PLシリーズや、「BIOCIZER」などが例示される。
【0041】
二塩基酸エステル系化合物の具体例としては、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ビス(2-エチルヘキシル)アジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]アジペート、ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]アジペート、ビス(2-エチルヘキシル)アゼレート、ジブチルセバケート、ビス(2-エチルヘキシル)セバケート、ジエチルサクシネート、混基二塩基酸エステル化合物などが挙げられる。
【0042】
アジピン酸エステル系化合物としては、ジエチルヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペートなどが挙げられる。
【0043】
ポリエーテルエステル系化合物としては、ポリエチレングリコールジベンゾエート、ポリエチレングリコールジカプリレート、ポリエチレングリコールジイソステアレートなどが挙げられる。
【0044】
前記エステル化合物としては、コスト、汎用性に優れているのに加え、バイオマス度が高い点から、変性グリセリン系化合物が好ましく、特に食品接触の観点から、グリセリントリエステルがより好ましく、グリセリンジアセトモノエステルがさらに好ましく、グリセリンジアセトモノラウレートが特に好ましい。
【0045】
可塑剤の配合量は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の総量100重量部に対して、0.5重量部以上20.0重量部未満である。可塑剤の配合量を0.5重量部以上とすることで、カレンダーシート成形体の耐割れ性を改善すると共に、実使用が可能な強度をカレンダーシート成形体に付与することができる。また、可塑剤の配合量を20.0重量部未満とすることで、カレンダーシート成形体の生産性を良好にすることができる。
【0046】
前記可塑剤の配合量の下限は、1.0重量部以上であることが好ましい。上限は、15.0重量部以下であることが好ましく、10.0重量部以下がより好ましく、5.0重量部以下がさらに好ましい。2.0重量部以下であってもよい。
【0047】
本実施形態に係るカレンダーシート成形体は、無機充填剤を含有することなく、耐割れ性を改善することができるが、カレンダーシート成形体の強度向上の観点から、無機充填剤を含有することが好ましい。
【0048】
無機充填剤としては、カレンダーシート成形用の樹脂材料に添加できる無機充填剤であれば特に限定されず、例えば、石英、ヒュームドシリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、アモルファスシリカ、アルコキシシランを縮合してなる無機充填剤、超微粉無定型シリカ等のシリカ系無機充填剤、アルミナ、ジルコン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ガラス、シリコーンゴム、シリコーンレジン、酸化チタン、炭素繊維、マイカ、黒鉛、カーボンブラック、フェライト、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マンガン、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、銀粉等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0049】
本実施形態においては、耐衝撃性の向上や加工性の改善効果等を得ることができるため、無機充填剤の中でも、ケイ酸塩に属する無機充填剤が好ましい。更に、カレンダーシート成形体の強度向上効果が大きく、粒径分布が小さく成形体の表面平滑性を阻害しにくいため、ケイ酸塩の中でも、タルク、マイカ、カオリナイト、モンモリロナイト、及び、スメクタイトからなる群より選択される1種以上が好ましい。ケイ酸塩は2種以上併用してもよく、その場合、ケイ酸塩の種類及び使用比率は適宜調節することができる。
【0050】
前記タルクとしては、汎用のタルク、表面処理タルク等が挙げられ、具体的には、日本タルク社の「ミクロエース」(登録商標)、林化成社の「タルカンパウダー」(登録商標)、竹原化学工業社や丸尾カルシウム社製のタルクが例示される。
【0051】
前記マイカとしては、湿式粉砕マイカ、乾式粉砕マイカ等が挙げられ、具体的には、ヤマグチマイカ社や啓和炉材社製のマイカが例示される。
【0052】
前記カオリナイトとしては、乾式カオリン、焼成カオリン、湿式カオリン等が挙げられ、具体的には、林化成社「TRANSLINK」(登録商標)、「ASP」(登録商標)、「SANTINTONE」(登録商標)、「ULTREX」(登録商標)や、啓和炉材社製のカオリナイトが例示される。
【0053】
前記無機充填剤は配合しなくてもよいが、無機充填剤を配合することでカレンダーシート成形体の強度が向上する利点を得ることができる。無機充填剤を配合する場合、その配合量は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の総量100重量部に対して、0重量部以上30.0重量部以下であってよく、0重量部以上20.0重量部以下が好ましく、0重量部以上15.0重量部以下がより好ましく、0重量部以上10.0重量部以下がさらに好ましい。無機充填の配合量が上記範囲であると、耐衝撃性や成形性に優れるカレンダーシート成形体を得ることができる。
【0054】
(他の樹脂)
本実施形態に係るカレンダーシート成形体は、発明の効果を損なわない範囲で、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂以外の他の樹脂を含んでもよい。そのような他の樹脂としては、例えば、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル系樹脂や、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンセバケートテレフタレート、ポリブチレンアゼレートテレフタレートなどの脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂等が挙げられる。他の樹脂としては1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
【0055】
前記他の樹脂の含有量は、特に限定されないが、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の総量100重量部に対して、30重量部以下であることが好ましく、20重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましい。他の樹脂の含有量の下限は特に限定されず、0重量部であってもよい。
【0056】
(添加剤)
本実施形態に係るカレンダーシート成形体は、発明の効果を阻害しない範囲において、他の添加剤を含有してもよい。他の添加剤としては、例えば、結晶化核剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、導電剤、断熱剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、有機充填剤、加水分解抑制剤等を目的に応じて使用できる。特に生分解性を有する添加剤が好ましい。
【0057】
結晶化核剤としては、例えば、ペンタエリスリトール、オロチン酸、アスパルテーム、シアヌル酸、グリシン、フェニルホスホン酸亜鉛、窒化ホウ素等が挙げられる。中でも、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の結晶化を促進する効果が特に優れている点で、ペンタエリスリトールが好ましい。結晶化核剤の使用量は、特に限定されないが、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の総量100重量部に対して、0.1~5重量部が好ましく、0.3~3重量部がより好ましく、0.5~1.5重量部がさらに好ましい。また、結晶化核剤は、1種を使用してよいし、2種以上使用してもよく、目的に応じて、使用比率を適宜調整することができる。
【0058】
滑剤としては、例えば、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、N-ステアリルベヘン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、p-フェニレンビスステアリン酸アミド、エチレンジアミンとステアリン酸とセバシン酸の重縮合物等が挙げられる。中でも、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分への滑剤効果が特に優れている点で、ベヘン酸アミドとエルカ酸アミドが好ましい。滑剤の使用量は、特に限定されないが、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の総量100重量部に対して、0.01~5重量部が好ましく、0.01~3重量部がより好ましく、0.01~1.5重量部がさらに好ましい。また、滑剤は、1種を使用してもよいし、2種以上使用してもよく、目的に応じて、使用比率を適宜調整することができる。
【0059】
(カレンダーシート成形体の厚み)
本実施形態に係るカレンダーシート成形体の厚みは特に限定されないが、二次加工を実施する前の状態で、100μm以上500μm以下であることが好ましく、200μm以上480μm以下がより好ましく、250μm以上460μm以下がさらに好ましい。
【0060】
(カレンダーシート成形体の製造方法)
共重合体(A)と、共重合体(B-1)または共重合体(B-2)とのブレンド物を得る方法は特に限定されず、微生物産生によりブレンド物を得る方法であってよいし、化学合成によりブレンド物を得る方法であってもよい。また、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等を用いて2種以上の樹脂を溶融混練してブレンド物を得てもよいし、2種以上の樹脂を溶媒に溶解して混合・乾燥してブレンド物を得ても良い。また、以上に述べた各方法を複数組み合わせて実施してもよい。
【0061】
本実施形態に係るカレンダーシート成形体は、必要に応じて樹脂成分や各種添加剤などを溶融混錬した後、カレンダーロールで圧延シート成形することで製造できる。
前記カレンダーロールを用いた圧延シート成形とは、バンバリーミキサーやプラネタリーミキサーが取り付けられた押出機で溶融混錬して押し出した樹脂組成物を2本以上のロールでさらに溶融混錬し、その溶融混錬された樹脂組成物をカレンダーロールで圧延し、その後、1本以上の冷却ロール上で冷却する、2本以上の冷却ロール間を通す、プレスするなどの手段でシート化する製造方法である。
【0062】
前記押出機の温度は140~180℃が好ましい。2本以上のロールで溶融混錬する時の温度は90~150℃が好ましい。カレンダーロールで圧延する時の温度は90~150℃が好ましい。樹脂組成物を冷却する温度は10~100℃が好ましい。
【0063】
カレンダーシート成形における引取速度としては、成形体の膜厚、幅、樹脂吐出量により決定されるが、カレンダーシート成形の安定性を維持できる範囲で調整可能である。一般的に1~50m/分が好ましい。
【0064】
カレンダーシート成形の後、巻き取りを行うまでに、カレンダーシート成形体の表面に所望の特性に応じた塗布材の塗布を行う工程を行ってもよい。塗布材としては、特に限定されるものではないが、離型剤や防曇剤、帯電防止剤が挙げられる。塗布材の塗布方式としては、特に限定されるものではないが、グラビアリバース方式、両面塗布方式、片面塗布印刷が挙げられる。
【0065】
本実施形態に係るカレンダーシート成形体は、熱成形によって、容器等の、凹部及び/又は凸部を有する成形体に二次加工するために使用することができる。熱成形は、予備加熱して軟化したカレンダーシート成形体を、プレスし、又は、真空または圧空を利用して型に沿わせることで実施することができる。前記熱成形の具体例としては、プレス成形、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、マッチド・モールド成形、プラグアシスト成形、プラグアシスト真空成形、プラグアシスト真空圧空成形、TOM成形などの方法が挙げられるが、簡便で金型費用が安価であることから、プレス成形、真空成形、真空圧空成形、プラグアシスト真空成形、プラグアシスト真空圧空成形が好ましい。
【0066】
本実施形態に係るカレンダーシート成形体は優れた生分解性を有しているため、農業、漁業、林業、園芸、医学、衛生品、食品産業、衣料、非衣料、包装、自動車、建材、その他の分野に好適に用いることができる。例えば、食品容器(蓋、トレー)や、農業用資材(育苗ポット、トレー)の用途に用いることができる。
【0067】
特に、本実施形態に係るカレンダーシート成形体は、耐割れ性が改善されていることから、熱成形によって、凹部及び/又は凸部を有する成形体に二次加工するために好ましく使用することができる。具体的には、中央に凹部を有する容器や、仕切りを有する容器、開口部周辺に折り返し部を有する容器等に好適に二次加工することができる。より具体的な態様としては特に限定されないが、本実施形態に係るカレンダーシート成形体は、耐割れ性の改善に加え、実使用が可能な強度を有することから、食品容器(蓋、トレー)や、農業用資材(育苗ポット、トレー)として、特に好適に使用することができる。
【0068】
以下の各項目では、本開示における好ましい態様を列挙するが、本発明は以下の項目に限定されるものではない。
[項目1]
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分、及び、可塑剤を含有する、カレンダーシート成形体であって、
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分が、下記共重合体(A)と、下記共重合体(B-1)または下記共重合体(B-2)の少なくともいずれか一方とを含み、
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の全量に対し、前記共重合体(A)の含有量が60~90重量%、前記共重合体(B-1)または前記共重合体(B-2)の含有量が10~40重量%であり、
前記可塑剤の含有量は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の総量100重量部に対して0.5重量部以上20.0重量部未満である、カレンダーシート成形体。
共重合体(A):他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が1モル%以上10モル未満%である、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体
共重合体(B-1):他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が10モル%以上24モル%未満である、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体
共重合体(B-2):他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が24モル%以上である、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体
[項目2]
前記共重合体(B-1)を、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の全量に対し20~40重量%含む、項目1に記載のカレンダーシート成形体。
[項目3]
前記共重合体(B-2)を、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の全量に対し10~30重量%含む、項目1に記載のカレンダーシート成形体。
[項目4]
前記共重合体(A)が、他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合が2モル%以上4モル%未満である3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体を含み、該共重合体の含有量が、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の全量に対し1~20重量%である、項目3に記載のカレンダーシート成形体。
[項目5]
前記可塑剤が、変性グリセリン系化合物である、項目1~4のいずれか1項に記載のカレンダーシート成形体。
[項目6]
前記変性グリセリン系化合物が、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンジアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノカプリレート、及び、グリセリンジアセトモノデカノエートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、項目5に記載のカレンダーシート成形体。
[項目7]
無機充填剤を、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂成分の総量100重量部に対して0重量部以上30.0重量部以下含む、項目1~6のいずれか1項に記載のカレンダーシート成形体。
[項目8]
前記無機充填剤が、タルク、マイカ、カオリナイト、モンモリロナイト、及び、スメクタイトからなる群より選択される少なくとも1種を含む、項目7に記載のカレンダーシート成形体。
[項目9]
前記カレンダーシート成形体の膜厚が100~500μmである、項目1~8のいずれか1項に記載のカレンダーシート成形体。
[項目10]
項目1~9のいずれか1項に記載のカレンダーシート成形体を含む、プレス成形体または真空成形体。
[項目11]
前記プレス成形体または真空成形体が、食品容器、又は、農業用資材である、項目10に記載のカレンダーシート成形体。
【実施例0069】
以下に実施例と比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0070】
実施例および比較例で使用した物質を以下に示す。
(ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂)
P3HB3HH-1:P3HB3HH(平均含有率3HB/3HH=94.2/5.8(モル%/モル%)、重量平均分子量は59万g/mol))
P3HB3HH-2:P3HB3HH(平均含有率3HB/3HH=98.0/2.0(モル%/モル%)、重量平均分子量は61万g/mol)
P3HB3HH-3:P3HB3HH(平均含有率3HB/3HH=89.1/10.9(モル%/モル%)、重量平均分子量は63万g/mol)
P3HB3HH-4:P3HB3HH(平均含有率3HB/3HH=74.4/25.6(モル%/モル%)、重量平均分子量は61万g/mol)
【0071】
(充填剤)
タルク(日本タルク(株)社製:ミクロエースK1)
【0072】
(可塑剤)
グリセリンジアセトモノラウレート(理研ビタミン株式会社製、Biocizer)
【0073】
(カレンダーシートの生産)
カレンダーシート成形機を用いてカレンダーシートの生産を行った。まず、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂をブレンドし、さらに充填剤と可塑剤をブレンドした樹脂組成物を155℃の温度で混錬し、さらに2本のロールで120℃で混錬し、その混錬した樹脂を138~113℃のカレンダーロールに投入して、圧延を行いながらシート厚みを400μm又は300μmに調整してカレンダーシートを製造した。
各実施例及び比較例では以下の評価を実施した。
【0074】
(カレンダーシートの成形性評価)
前述の方法によって得られたカレンダーシートを観察し、以下の基準で成形性を評価した。
○:シート工程中のロールに粘着することなくカレンダーシートとして成形できた
×:シート工程中のロールに粘着し、カレンダーシートとして成形できない
【0075】
(カレンダーシートの可塑剤のブリードアウト評価)
前述の方法によって得られたカレンダーシートを、食品衛生法370号試験に基づいた試験にて可塑剤が溶出するか否か評価した。
○:可塑剤の溶出無し
×:可塑剤の溶出あり
【0076】
(カレンダーシートの厚み評価)
前述の方法によって得られたカレンダーシートの厚みは、カレンダーシートの幅方向に20箇所、JIS K 2650に準拠した定圧厚さ測定器で測定し、算術平均で算出した。
【0077】
(カレンダーシートの耐割れ性評価)
前述の方法によって得られたカレンダーシートの耐割れ性を、Du Pont衝撃試験機(安田精機社製)を用いて評価した。40mm×40mmのサイズにカットしたカレンダーシートのサンプルを、サンプル受け台と打ち抜き型の間に固定し、その上から、25mm間隔で落下高さを変更しながら300gの錘を打ち抜き型に落下させて、シートサンプルが割れるか否かを評価した。評価時の温度は、常温(約20℃)又は低温(0℃)とした。各高さそれぞれで5回試行した。ある高さから錘を落下させた時5回の試行すべてでサンプルが割れた最低の高さを、「割れた高さ」として各表に示した。
基準値となる割れた高さ(表1では比較例2の割れた高さ、表2では比較例6の割れた高さ)に対する、各実施例又は比較例の割れた高さの比を以下の式で算出した。
式: 耐割れ性(%)=(各実施例又は比較例の割れた高さ)/(基準値となる割れた高さ)×100
【0078】
実施例1(カレンダーシートの製造方法)
各共重合体、充填剤、及び、可塑剤を表1に示す配合比で、カレンダーシート成形機を用いて、プラネタリーミキサーが取り付けられた押出機で155℃で溶融混錬して押し出した樹脂組成物を、2本以上のロールで120℃でさらに溶融混錬を行い、その溶融混錬された樹脂組成物をカレンダーロールで138~113℃で圧延し、その後50~100℃に設定した1本または2本以上の冷却ロール間を通して厚み400μmのカレンダーシートを製造した。
カレンダーシートの成形性、可塑剤のブリードアウト、及び、常温でのカレンダーシートの耐割れ性の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0079】
実施例2及び比較例1~5
各共重合体又は可塑剤の配合量を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にしてカレンダーシートを成形し、同様に各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
表1より以下のことが分かる。実施例1及び2では、カレンダーシートを問題無く成形することができ、可塑剤のブリードアウト、及び、常温での耐割れ性の各評価で良好な結果が得られた。一方、比較例1~3では、可塑剤を配合しておらず、カレンダーシートは成形できたものの、耐割れ性が十分ではなかった。このうち比較例3で得られたカレンダーシートは、例えば飲料用蓋として使用するのに十分な強度を示すものではなかった。
【0082】
比較例4及び5では、可塑剤の配合量が樹脂成分100重量部に対して20.0重量部と多量であり、成形中に樹脂がロールに粘着してしまい、カレンダーシートとして成形できなかった。
【0083】
実施例3~4及び比較例6~7
各共重合体又は可塑剤の配合量を表2に示すように変更し、厚みを300μmに変更したこと以外は実施例1と同様にしてカレンダーシートを成形し、同様に各評価を行った。耐割れ性は、常温での評価に加えて、低温(0℃)でも評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
表2より以下のことが分かる。実施例3及び4では、カレンダーシートを問題無く成形することができ、可塑剤のブリードアウト、及び、常温又は低温での耐割れ性の各評価で良好な結果が得られた。一方、比較例6~7では、可塑剤を配合しておらず、カレンダーシートは成形できたものの、常温と低温のいずれでも耐割れ性が十分ではなかった。