IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ紡織株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-衝撃吸収部材 図1
  • 特開-衝撃吸収部材 図2
  • 特開-衝撃吸収部材 図3
  • 特開-衝撃吸収部材 図4
  • 特開-衝撃吸収部材 図5
  • 特開-衝撃吸収部材 図6
  • 特開-衝撃吸収部材 図7
  • 特開-衝撃吸収部材 図8
  • 特開-衝撃吸収部材 図9
  • 特開-衝撃吸収部材 図10
  • 特開-衝撃吸収部材 図11
  • 特開-衝撃吸収部材 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103119
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】衝撃吸収部材
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/04 20060101AFI20240725BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20240725BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20240725BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20240725BHJP
   F16F 7/12 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B60R21/04 330
B60J5/04 Z
B60J5/00 501Z
F16F7/00 J
F16F7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007284
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 侑基
(72)【発明者】
【氏名】川口 学
(72)【発明者】
【氏名】尾関 悠我
【テーマコード(参考)】
3J066
【Fターム(参考)】
3J066AA24
3J066BA03
3J066BB01
3J066BC01
3J066BF02
(57)【要約】
【課題】乗物衝突時の初期段階において乗員を乗物室内側に押し出すことが可能なように剛性を備えつつ、衝撃自体を好適に吸収することが可能な衝撃吸収部材を提供する。
【解決手段】ドアトリム20と対向配置される第1対向壁部31と、第1対向壁部31の周端部から車室外側に延びる内壁部32と、内壁部32における車室外側の端部から第1対向壁部31の外周方向側に延び、ドアパネル10と対向配置される第2対向壁部33と、第2対向壁部33における周端部から車室内側に延びると共に内壁部32を取り囲む外壁部34と、ドアトリム20に取り付けられる取付部40,50,60と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用パネルを乗物室内側から覆う乗物用内装材に取り付けられ、前記乗物用パネルと前記乗物用内装材の間に配される衝撃吸収部材であって、
前記乗物用内装材と対向配置される第1対向壁部と、
前記第1対向壁部の周端部から乗物室外側に延びる内壁部と、
前記内壁部における乗物室外側の端部から前記第1対向壁部の外周方向側に延び、前記乗物用パネルと対向配置される第2対向壁部と、
前記第2対向壁部における周端部から乗物室内側に延びると共に前記内壁部を取り囲む外壁部と、
前記外壁部における乗物室内側の端部に設けられ、前記乗物用内装材に取り付けられる取付部と、を備える、衝撃吸収部材。
【請求項2】
前記乗物用内装材は、乗物用ドアトリムであり、
当該衝撃吸収部材は、前記乗物用ドアトリムにおいて、乗物のシートに着座した乗員の大腿部と対向する箇所に設けられ、
前記外壁部における乗物後側の端部には、貫通孔が形成されている、請求項1に記載の衝撃吸収部材。
【請求項3】
乗物室外側から視た場合において、三角形の頂点に位置するように配された3つの前記取付部を備える請求項1または請求項2に記載の衝撃吸収部材。
【請求項4】
前記外壁部は、
前記乗物用内装材における乗物室外側の面に設けられた第1機能性部品と対向配置される第1対向面と、
前記乗物用内装材における乗物室外側の面に設けられた第2機能性部品と対向配置される第2対向面と、を有する、請求項3に記載の衝撃吸収部材。
【請求項5】
前記第1機能性部品の一部を乗物室外側から覆うことで、前記一部の乗物室外側への変位を規制可能な規制壁部を備える請求項4に記載の衝撃吸収部材。
【請求項6】
前記乗物用内装材は、乗物用ドアトリムであり、
乗物前後方向に沿って並ぶ2つの前記取付部を備え、
前記2つの取付部のうち、いずれか一方の取付部は、前記乗物用ドアトリムにおける乗物室外側の面に設けられた取付ボスが挿通されるボス挿通孔を有しており、
他方の取付部は、前記乗物用ドアトリムにおける乗物室外側の面に設けられた係止爪が挿通される爪挿通孔を有している、請求項1または請求項2に記載の衝撃吸収部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される技術は、衝撃吸収部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衝撃吸収部材として、下記特許文献1に記載のものが知られている。この特許文献1に記載された衝撃吸収部材は、車両衝突時に変形することで衝撃を吸収することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-55549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、衝撃吸収部材は剛性を低くして乗物衝突時の衝撃を吸収することが求められる一方、乗物衝突時の初期段階においては、乗員をより速やかに乗物室内側に押し出して保護することが求められる。衝撃吸収部材が、ある程度の剛性を備えていない場合、乗物衝突時の初期段階において乗員を乗物室内側に押し出すことができない場合があり、この点において、改善の余地があった。
【0005】
本明細書で開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、乗物衝突時の初期段階において乗員を乗物室内側に押し出すことが可能なように剛性を備えつつ、衝撃自体を好適に吸収することが可能な衝撃吸収部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、本明細書で開示される衝撃吸収部材は、乗物用パネルを乗物室内側から覆う乗物用内装材に取り付けられ、前記乗物用パネルと前記乗物用内装材の間に配される衝撃吸収部材であって、前記乗物用内装材と対向配置される第1対向壁部と、前記第1対向壁部の周端部から乗物室外側に延びる内壁部と、前記内壁部における乗物室外側の端部から前記第1対向壁部の外周方向側に延び、前記乗物用パネルと対向配置される第2対向壁部と、前記第2対向壁部における周端部から乗物室内側に延びると共に前記内壁部を取り囲む外壁部と、前記外壁部における乗物室内側の端部に設けられ、前記乗物用内装材に取り付けられる取付部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
二重の壁部(内壁部及び外壁部)を備えることで、乗物衝突時の初期段階において乗員を乗物室内側に押し出すことが可能なように剛性を備えつつ、衝撃自体を好適に吸収することが可能な衝撃吸収部材を提供することが可能となる。また、乗物用内装材に取り付けられる取付部は、外壁部に設けられているため、外側から視認し易く、取付に係る作業性が良好である。
【0008】
また、前記乗物用内装材は、乗物用ドアトリムであり、当該衝撃吸収部材は、前記乗物用ドアトリムにおいて、乗物のシートに着座した乗員の大腿部と対向する箇所に設けられ、前記外壁部における乗物後側の端部には、貫通孔が形成されているものとすることができる。乗物のシートに着座した乗員の腰部は、大腿部よりも乗物後側に配される。外壁部の乗物後側の端部(腰部により近い箇所)に貫通孔を形成することで、衝撃吸収部材において、腰部により近い箇所を潰れ易くすることができ、腰部をより確実に保護することができる。
【0009】
また、乗物室外側から視た場合において、三角形の頂点に位置するように配された3つの前記取付部を備えるものとすることができる。4つの取付部が四角形の頂点に位置するように配された構成と比べて、省スペース化を図ることができ、取付に係る自由度をより高くすることができる。
【0010】
また、前記外壁部は、前記乗物用内装材における乗物室外側の面に設けられた第1機能性部品と対向配置される第1対向面と、前記乗物用内装材における乗物室外側の面に設けられた第2機能性部品と対向配置される第2対向面と、を有するものとすることができる。衝撃吸収部材を第1機能性部品及び第2機能性部品に囲まれた領域に配置することができる。
【0011】
また、前記第1機能性部品の一部を乗物室外側から覆うことで、前記一部の乗物室外側への変位を規制可能な規制壁部を備えるものとすることができる。第1機能性部品の剛性をより高くすることができる。
【0012】
また、前記乗物用内装材は、乗物用ドアトリムであり、乗物前後方向に沿って並ぶ2つの前記取付部を備え、前記2つの取付部のうち、いずれか一方の取付部は、前記乗物用ドアトリムにおける乗物室外側の面に設けられた取付ボスが挿通されるボス挿通孔を有しており、他方の取付部は、前記乗物用ドアトリムにおける乗物室外側の面に設けられた係止爪が挿通される爪挿通孔を有しているものとすることができる。
【0013】
乗物用ドアトリムは、乗物進行方向を基準として左右一対設けられる場合がある。このような構成では、左右一対の乗物用ドアトリムは対称形状をなし、これらに取り付けられる衝撃吸収部材も、左右で対称形状をなすものが用いられる。乗物前後方向に沿って並ぶ2つの取付部を異なる種類の取付手段(ボス挿通孔及び爪挿通孔)にすることで、ドアトリムに対する衝撃吸収部材の誤組付けを抑制することができる。例えば、乗物進行方向を基準として右側に配されたドアトリムに対して、左側のドアトリムに対応した衝撃吸収部材を組み付けてしまう事態を抑制できる。また、係止爪に他方の取付部を取り付けることで、衝撃吸収部材をドアトリムに取付固定する前に仮組付けができ、例えば、ドアトリムに衝撃吸収部材を仮組付けした状態で運搬するなど、利便性をより高くすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、乗物衝突時の初期段階において乗員を乗物室内側に押し出すことが可能なように剛性を備えつつ、衝撃自体を好適に吸収することが可能な衝撃吸収部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る衝撃吸収部材が取り付けられたドアトリムの正面図
図2】ドアトリムの車室外側の面を示す図
図3】衝撃吸収部材の斜視図
図4】衝撃吸収部材を車室外側から視た図
図5】衝撃吸収部材を車室内側から視た斜視図
図6】衝撃吸収部材を車両後方から視た図
図7】衝撃吸収部材を車両上方から視た図
図8】衝撃吸収部材の一部を切断して視た断面図(図7のVIII-VIII線で切断した図に対応)
図9】衝撃吸収部材の一部を切断して視た断面図(図2のIX-IX線で切断した図に対応)
図10】衝撃吸収部材の一部を切断して視た断面図(図2のX-X線で切断した図に対応)
図11】衝撃吸収部材の一部を切断して視た断面図(図2のXI-XI線で切断した図に対応)
図12】衝撃吸収部材の一部を切断して視た断面図(図2のXII-XII線で切断した図に対応)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態を図1から図12によって説明する。本実施形態では、車両用のドアトリムに取り付けられる衝撃吸収部材を例示する。ドアトリム20(乗物用内装材、乗物用ドアトリム)は、車両のドアパネル10(乗物用パネル、図9参照)を車室内側(乗物室内側)から覆う構成とされる。ドアトリム20は、図1に示すように、ドアパネル10(より詳しくはインナパネル)と対向配置されるトリムボード21と、車室内側に膨出した形状をなすアームレスト22と、ドアポケットボード23と、を備える。トリムボード21は、ドアトリム20の本体を構成する板状の部材であり、例えばポリプロピレン等の合成樹脂材料によって構成されている。なお、トリムボード21の材質は合成樹脂材料に限定されず、例えば、木質系材料と合成樹脂材料を混合したものを用いてもよい。
【0017】
トリムボード21の車室外側の面には、衝撃吸収部材30が取り付けられている。衝撃吸収部材30は、図1に示すように、ドアトリム20において車両のシート(図示せず)に着座した乗員の大腿部11に対向する箇所に配されている。なお、衝撃吸収部材30は合成樹脂(例えばポリプロピレン等)製とされるが、その材質は適宜変更可能である。図2及び図3に示すように、ドアトリム20(より詳しくはトリムボード21)における車室外側の面には、プルハンドルボックス24及びドアポケットボード23が設けられておいる。プルハンドルボックス24は,図示しないが上方に開口する箱形状をなし、乗員が車両ドアを開閉する際に車室内側且つ上方から手を挿入することが可能となっている。なお、プルハンドルボックス24は、一つの部材から構成されていてもよいし、複数の部材から構成されていてもよい。衝撃吸収部材30は、プルハンドルボックス24の下方であって、ドアポケットボード23の車両後方となる箇所に配されている。ドアポケットボード23は、板状をなし、トリムボード21に形成された開口部21Aを車室外側から覆うようにトリムボード21に組み付けられており、トリムボード21と共にドアポケット28を構成する部材である。このドアポケット28には、乗員が車室内側且つ上方から荷物を出し入れすることが可能となっている。
【0018】
衝撃吸収部材30は、図9に示すように、ドアパネル10とドアトリム20(より詳しくはトリムボード21)の間に配され、ドアトリム20と対向配置される第1対向壁部31と、第1対向壁部31の周端部から車室外側(乗物室外側)に延びる内壁部32と、内壁部32における車室外側の端部から第1対向壁部31の外周方向側に延び、ドアパネル10と対向配置される第2対向壁部33と、第2対向壁部33における周端部から車室内側に延びると共に内壁部32を取り囲む外壁部34と、外壁部34における車室内側の端部に設けられ、ドアトリム20(より詳しくはトリムボード21)に取り付けられる取付部40,50,60(図4参照)と、を備える。図3に示すように、第1対向壁部31及び内壁部32によって、車室外側に開口する箱状部材が構成されており、この箱状部材を外壁部34が外側から取り囲む構成となっている。
【0019】
第1対向壁部31は、図5に示すように、車室外側から視た場合において、3つの角部が切り欠かれた略三角形状をなしている。内壁部32は、図3に示すように、第1対向壁部31の周端部の全周に亘って設けられている。内壁部32は、図2に示すように、車室外側から視た場合において、第1対向壁部31の形状に倣う形状をなしている。図10に示すように、第1対向壁部31とトリムボード21の間には異音防止のために隙間が設けられている。なお、第1対向壁部31がトリムボード21に当接していてもよいし、第1対向壁部31とトリムボード21の間に緩衝材が介在されていてもよい。
【0020】
第2対向壁部33は、図4に示すように、内壁部32における車室外側の端部の全周に亘って設けられている。第2対向壁部33は、図10に示すように、板状をなす本体部35と、本体部35の車室外側の面から立設し、車室外側から視た場合に格子状をなすリブ36(図4参照)と、を備える。リブ36は、車両衝突時に本体部35が初期段階で破損することを抑制するために本体部35を補強している。第2対向壁部33は、車両側突時に、ドアパネル10等が当接して力が入力される部分である。
【0021】
外壁部34は、図4に示すように、第2対向壁部33における外周端部の全周に亘って設けられている。外壁部34は、車室外側から視た場合に、3つの取付部40,50,60に対応する箇所が切り欠かれた切欠部71,72,73を有する略三角形状をなしている。外壁部34は、図2に示すように、ドアポケットボード23(第1機能性部品)と対向配置される第1対向面37Aを有する第1壁部37と、プルハンドルボックス24(第2機能性部品)と対向配置される第2対向面38Aを有する第2壁部38と、第1壁部37及び第2壁部38の車両後端部同士を連結する第3壁部39と、を備える。また、図8に示すように、外壁部34は、内壁部32に倣う形状をなし、内壁部32を外側から取り囲む形状をなしている。
【0022】
図2に示すように、プルハンドルボックス24は、取付片24Aを有している。これに対してトリムボード21の車室外側の面には取付ボス24Bが設けられている。取付ボス24Bに超音波を用いたカシメ(USカシメ)を行うことで、取付片24Aは、取付ボス24Bに取り付けられている。第2壁部38において、取付片24Aに対応する箇所には、開口部38Bが形成されている。開口部38Bは、図7に示すように、車室内側(図7の上側)に開口する形状をなしている。開口部38Bを有することで、取付ボス24Bにカシメ作業を行う際に、工具が第2壁部38と干渉する事態が抑制され、作業性が良好となる。
【0023】
第3壁部39は、図2に示すように、外壁部34における車両後側(乗物後側)の端部を構成するものである。第3壁部39には、図3に示すように、車室内側に開口された貫通孔39Aが形成されている。図6に示すように、貫通孔39Aは、車室内側(図6の左側)に向かうにつれて、その開口幅が大きくなっている。
【0024】
衝撃吸収部材30は、トリムボード21に取り付けるための3つの取付部40,50,60を備える。3つの取付部40,50,60は、図2に示すように、車室外側から視た場合において、三角形の頂点に位置するように配されている。上側に位置する2つの取付部40,50は、車両前後方向(乗物前後方向、図2の左右方向)に沿って並んでいる。2つの取付部40,50のうち、車両前側に配される取付部40(一方の取付部)は、トリムボード21(ドアトリム)における車室外側の面に設けられた取付ボス25が挿通されるボス挿通孔40A(図11参照)を有している。ボス挿通孔40Aに取付ボス25を挿通させた後、取付ボス25の先端部に対してUSカシメを行うことで、取付ボス25に対して、取付部40が取り付けられる。
【0025】
図4に示すように、2つの取付部40,50のうち、車両後側に配される取付部50(他方の取付部)は、爪挿通孔50Aを有している。爪挿通孔50Aには、図12に示すように、トリムボード21における車室外側の面に設けられた係止爪26が挿通される。爪挿通孔50Aの孔縁部には、弾性片51が設けられている。爪挿通孔50Aに係止爪26が挿通される過程では、弾性片51に係止爪26の先端部26Aが押し当てられることで、弾性片51が爪挿通孔50Aから離れる方向に弾性変形する。そして係止爪26の先端部が弾性片51を越えると、弾性片51は弾性復帰することで、係止爪26が弾性片51の先端に係止される。
【0026】
取付部40の下端部には、図11に示すように、車室外側(図11の右側)に延びる延設片部41が設けられている。延設片部41の先端には、下方に延びる形で規制壁部42が設けられている。規制壁部42は、ドアポケットボード23の上端部23A(第1機能性部品の一部)を車室外側から覆う構成となっており、上端部23Aに対して、わずかに隙間を空けて対向配置されている。これにより、規制壁部42は、車室外側への変位を規制可能な構成となっている。より詳しくは、ドアポケットボード23が車室内側から押圧される等して、上端部23Aが車室外側へ変位した際には、上端部23Aが規制壁部42に当接することで、それ以上、車室外側へ変位することが規制される。
【0027】
取付部60は、図4に示すようにボス挿通孔60Aを有している。トリムボード21における車室外側の面に設けられた取付ボス27(図2参照)をボス挿通孔60Aに挿通させた後、取付ボス27の先端部に対してUSカシメを行うことで、取付ボス27に対して、取付部60が取り付けられる。
【0028】
また、図2に示すようにトリムボード21の車室外側の面において、取付部50と隣接する箇所には直線状をなすリブ29Aが設けられ、取付部60と隣接する箇所には湾曲状をなすリブ29Bが設けられている。このようなリブ29A,29Bを設けることで、車両側突時に衝撃吸収部材30がトリムボード21の板面方向に移動する事態を抑制できる。つまり、衝撃吸収部材30が所定の取付位置から移動する事態を抑制でき、衝撃吸収性能の低下を抑制することができる。
【0029】
次に本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、二重の壁部(内壁部32及び外壁部34)を備えることで、車両衝突時の初期段階において乗員を車室内側に押し出すことが可能なように剛性を備えつつ、衝撃自体を好適に吸収することができる衝撃吸収部材30を提供することが可能となる。また、ドアトリム20に取り付けられる取付部40,50,60は、外壁部34に設けられているため、外側から視認し易く、取付に係る作業性が良好である。
【0030】
また、衝撃吸収部材30は、ドアトリム20において、車両のシートに着座した乗員の大腿部11と対向する箇所に設けられ、外壁部34における車両後側の端部には、貫通孔39Aが形成されている。車両のシートに着座した乗員の腰部は、大腿部よりも車両後側に配される。外壁部34の車両後側の端部(腰部により近い箇所)に貫通孔39Aを形成することで、衝撃吸収部材30において、腰部により近い箇所を潰れ易くすることができ、腰部をより確実に保護することができる。
【0031】
また、車室外側から視た場合において、三角形の頂点に位置するように配された3つの取付部40,50,60を備える。このような構成とすれば、4つの取付部が四角形の頂点に位置するように配された構成と比べて、省スペース化を図ることができ、取付に係る自由度をより高くすることができる。
【0032】
また、外壁部34は、ドアトリム20における車室外側の面に設けられたドアポケットボード23と対向配置される第1対向面37Aと、ドアトリム20における車室外側の面に設けられたプルハンドルボックス24と対向配置される第2対向面38Aと、を有する。このような構成とすれば、衝撃吸収部材30をドアポケットボード23及びプルハンドルボックス24に囲まれた領域に配置することができる。
【0033】
また、ドアポケットボード23の上端部23Aを車室外側から覆うことで、上端部23Aの車室外側への変位を規制可能な規制壁部42を備える。このような構成とすれば、ドアポケットボード23の剛性をより高くすることができる。
【0034】
また、車両前後方向に沿って並ぶ2つの取付部40,50を備え、取付部40は、ドアトリム20における車室外側の面に設けられた取付ボス25が挿通されるボス挿通孔40Aを有しており、取付部50は、ドアトリム20における車室外側の面に設けられた係止爪26が挿通される爪挿通孔50Aを有している。
【0035】
ドアトリムは、車両進行方向を基準として左右一対設けられる場合がある。このような構成では、左右一対のドアトリムは対称形状をなし、これらに取り付けられる衝撃吸収部材も、左右で対称形状をなすものが用いられる。車両前後方向に沿って並ぶ2つの取付部40,50を異なる種類の取付手段(ボス挿通孔40A及び爪挿通孔50A)にすることで、ドアトリムに対する衝撃吸収部材の誤組付けを抑制することができる。例えば、車両進行方向を基準として右側に配されたドアトリム(本実施形態のドアトリム20)に対して、左側のドアトリムに対応した衝撃吸収部材を組み付けてしまう事態を抑制できる。また、係止爪26に取付部50を取り付けることで、衝撃吸収部材30をドアトリム20に取付固定する前に仮組付けができ、例えば、ドアトリム20に衝撃吸収部材30を仮組付けした状態で運搬するなど、利便性をより高くすることができる。
【0036】
なお、本実施形態では、例えば、係止爪26に取付部50を取り付けた後、取付部40,60に対してUSカシメを行うことで、衝撃吸収部材30がトリムボード21に対して組み付けられる。上記構成によれば、係止爪26に取付部50を取り付けることでトリムボード21に衝撃吸収部材30を固定することができ、トリムボード21及び衝撃吸収部材30をUSカシメの作業工程に容易に運搬することができる。
【0037】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0038】
(1)上記実施形態で例示した衝撃吸収部材は、車両用に限定されない。例えば、地上の乗物としての列車や遊戯用車両、飛行用乗物としての飛行機やヘリコプター、海上や海中用乗物としての船舶や潜水艇などの乗物についても上記衝撃吸収部材を適用することができる。
【0039】
(2)取付部の形成個数及び形成箇所は上述したものに限定されず適宜変更可能である。また、トリムボード21に対する各取付部の取付構造は上述したもの(係止爪やUSカシメを用いた構造)に限定されず適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0040】
10…ドアパネル(乗物用パネル)、11…大腿部、20…ドアトリム(乗物用内装材)、23…ドアポケットボード(第1機能性部品)、23A…上端部(第1機能性部品の一部)、24…プルハンドルボックス(第2機能性部品)、25…取付ボス、26…係止爪、30…衝撃吸収部材、31…第1対向壁部、32…内壁部、33…第2対向壁部、34…外壁部、37A…第1対向面、38A…第2対向面、39A…貫通孔、40…取付部(一方の取付部)、40A…ボス挿通孔、42…規制壁部、50…取付部(他方の取付部)、50A…爪挿通孔、60…取付部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12