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  • 特開-印刷装置、及び、印刷装置の制御方法 図1
  • 特開-印刷装置、及び、印刷装置の制御方法 図2
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  • 特開-印刷装置、及び、印刷装置の制御方法 図4
  • 特開-印刷装置、及び、印刷装置の制御方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010312
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】印刷装置、及び、印刷装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240117BHJP
   B41J 2/205 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/205
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111577
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真人
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA08
2C056EB07
2C056EB11
2C056EB13
2C056EB35
2C056EB45
2C056EB49
2C056EB58
2C056EC12
2C056EC34
2C056EC78
2C056ED01
2C056FA10
2C057AF31
2C057AN01
2C057CA01
(57)【要約】
【課題】横長のドットによりドット間に筋状の隙間が発生するおそれがある。
【解決手段】印刷装置は、媒体に液体を吐出してドットを形成可能な複数のノズルを第1方向へ配列したヘッドと、第1方向へ、ヘッドと媒体とを相対的に移動させる第1走査を行う第1走査部と、ヘッドを搭載し、第1方向と交差する第2方向へ、媒体と相対的に移動する第2走査部と、第1方向に複数の画素データを有する画素列を、第2方向に複数有する画素データ群に基づいて、ヘッドにより、第1方向よりも第2方向に長いドットを形成させる制御部と、を備え、制御部は、画素データ群の第1方向の解像度を第1解像度、第2方向の解像度を第2解像度とした場合に、第1解像度が第2解像度よりも小さい画素データ群に基づいて印刷を実行する際は、少なくとも一部の画素列を、他の画素列に対して、相対的に第1方向に第1解像度の逆数未満の所定距離だけオフセットをさせる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に液体を吐出してドットを形成可能な複数のノズルを第1方向へ配列したヘッドと、
前記第1方向へ、前記ヘッドと前記媒体とを相対的に移動させる第1走査を行う第1走査部と、
前記ヘッドを搭載し、前記第1方向と交差する第2方向へ、前記媒体と相対的に移動する第2走査部と、
前記第1方向に複数の画素データを有する画素列を、前記第2方向に複数有する画素データ群に基づいて、前記ヘッドにより、前記第1方向よりも前記第2方向に長い前記ドットを形成させる制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記画素データ群の前記第1方向の解像度を第1解像度、前記第2方向の解像度を第2解像度とした場合に、
前記第1解像度が前記第2解像度よりも小さい前記画素データ群に基づいて印刷を実行する際は、少なくとも一部の前記画素列を、他の前記画素列に対して、相対的に前記第1方向に前記第1解像度の逆数未満の所定距離だけオフセットをさせることを特徴とする、印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、
少なくとも一部の前記画素列を、他の前記画素列に対して、前記所定距離長くオフセットする、前記所定距離短くオフセットする、オフセットさせない、のいずれかの組み合わせを繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1解像度が前記第2解像度以上の大きさの前記画素データ群に基づいて印刷を実行する際は、隣り合う前記画素列を、前記第1走査部により相対的に前記所定距離だけオフセットさせないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、
隣り合う奇数番目の前記画素列と偶数番目の前記画素列とを、前記第1走査部により前記所定距離だけ相対的にオフセットさせることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記所定距離を、前記第1解像度の逆数と前記画素列の数の逆数とを乗算した値とし、
隣り合う前記画素列を、前記第1走査部により相対的に前記所定距離だけオフセットさせることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記ドットを、複数の異なる大きさで形成可能であり、
前記異なる大きさのうち、所定の閾値よりも大きいドットの使用割合が、前記閾値よりも小さいドットの使用割合よりも高い条件で印刷を実行する際に、隣り合う前記画素列を、前記第1走査部により相対的に前記所定距離だけオフセットさせることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記媒体の種類を指定可能な媒体指定部を有し、
前記媒体指定部によって、所定の閾値よりも滲みやすい前記媒体が指定された際には、前記制御部は、隣り合う前記画素列を、前記第1走査部により相対的に前記所定距離だけオフセットさせないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記第2走査部を前記第2方向へ走査する第2走査の速度が所定の速度閾値よりも速い場合には、隣り合う前記画素列を、前記第1走査部により相対的に前記所定距離だけオフセットさせ、
前記第2走査の速度が前記所定の速度閾値以下の場合には、隣り合う前記画素列を、オフセットさせないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項9】
媒体に液体を吐出してドットを形成可能な複数のノズルを第1方向へ配列したヘッドと、
前記第1方向へ、前記ヘッドと前記媒体とを相対的に移動させる第1走査を行う第1走査部と、
前記ヘッドを搭載し、前記第1方向と交差する第2方向へ、前記媒体と相対的に移動する第2走査部と、を備える印刷装置の制御方法であって、
前記第1方向に複数の画素データを有する画素列を、前記第2方向に複数有する画素データ群に基づいて、前記ヘッドにより、前記第1方向よりも前記第2方向に長い前記ドットを形成させ、
前記画素データ群の前記第1方向の解像度を第1解像度、前記第2方向の解像度を第2解像度とした場合に、前記第1解像度が前記第2解像度よりも小さい前記画素データ群に基づいて印刷を実行する際は、少なくとも一部の前記画素列を、他の前記画素列に対して、相対的に前記第1方向に前記第1解像度の逆数未満の所定距離だけオフセットをさせることを特徴とする、印刷装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、及び、印刷装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、ベタ部におけるドット間の筋状の隙間である、いわゆるバンディングの発生を抑制するために、市松状にドットを間引き、間引かなかったドットのサイズを大きくする装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-38176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の装置では、媒体を搬送する方向の解像度が、媒体を搬送する方向と交差する方向よりも高い解像度において印刷をする場合に、いわゆる横長のドットが形成され易いことが考慮されておらず、ドット間の筋状の隙間の発生の抑制が限定されるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
印刷装置は、媒体に液体を吐出してドットを形成可能な複数のノズルを第1方向へ配列したヘッドと、前記第1方向へ、前記ヘッドと前記媒体とを相対的に移動させる第1走査を行う第1走査部と、前記ヘッドを搭載し、前記第1方向と交差する第2方向へ、前記媒体と相対的に移動する第2走査部と、前記第1方向に複数の画素データを有する画素列を、前記第2方向に複数有する画素データ群に基づいて、前記ヘッドにより、前記第1方向よりも前記第2方向に長い前記ドットを形成させる制御部と、を備え、前記制御部は、前記画素データ群の前記第1方向の解像度を第1解像度、前記第2方向の解像度を第2解像度とした場合に、前記第1解像度が前記第2解像度よりも小さい前記画素データ群に基づいて印刷を実行する際は、少なくとも一部の前記画素列を、他の前記画素列に対して、相対的に前記第1方向に前記第1解像度の逆数未満の所定距離だけオフセットをさせることを特徴とする。
【0006】
媒体に液体を吐出してドットを形成可能な複数のノズルを第1方向へ配列したヘッドと、前記第1方向へ、前記ヘッドと前記媒体とを相対的に移動させる第1走査を行う第1走査部と、前記ヘッドを搭載し、前記第1方向と交差する第2方向へ、前記媒体と相対的に移動する第2走査部と、を備える印刷装置の印刷方法であって、前記第1方向に複数の画素データを有する画素列を、前記第2方向に複数有する画素データ群に基づいて、前記ヘッドにより、前記第1方向よりも前記第2方向に長い前記ドットを形成させ、前記画素データ群の前記第1方向の解像度を第1解像度、前記第2方向の解像度を第2解像度とした場合に、前記第1解像度が前記第2解像度よりも小さい前記画素データ群に基づいて印刷を実行する際は、少なくとも一部の前記画素列を、他の前記画素列に対して、相対的に前記第1方向に前記第1解像度の逆数未満の所定距離だけオフセットをさせることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】印刷装置の斜視図。
図2】印刷装置の構成を示すブロック図。
図3】第1ラスタライズのときのノズルとドットとの関係を示すイメージ図。
図4】印刷するときの処理を示すフローチャート。
図5】第2ラスタライズのときのノズルとドットとの関係を示すイメージ図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.実施形態1
1-1.印刷装置の構成
以下、実施形態に係る印刷装置1について、図1及び図2を参照し、一部については図3も参照して説明する。なお、図における方向を、三次元座標系を用いて説明する。説明の便宜上、Z軸の正方向を上方向又は単に上と称し負方向を下方向又は単に下と称し、X軸の正方向を右方向又は単に右と称し負方向を左方向又は単に左と称し、Y軸の正方向を前方向又は単に前と称し負方向を後方向又は単に後と称して説明する。
【0009】
図1に示すように、印刷装置1は、インク等の液体を、媒体である紙Pへ吐出して印刷を行うインクジェットプリンターである。なお、紙Pには、普通紙、写真用紙、合成紙などの他、フィルム及びDVDなどの樹脂も含めることができる。
なお、図1における左右方向は、第2方向である主走査方向に対応し、前後方向は、第1方向である副走査方向に対応する。
【0010】
印刷装置1は、ヘッド16、第1走査部17、第2走査部18を含んで構成されている。
ヘッド16は、キャリッジ16aに搭載されている。第2走査部18は、キャリッジモーター18a、ベルト18b、キャリッジ16a、キャリッジ軸16bを含んで構成されている。第2走査部18は、キャリッジモーター18aによりベルト18bを移動させ、ベルト18bに装着されたキャリッジ16aを、キャリッジ軸16bに沿って左右方向へ移動させる。
第1走査部17は、搬送モーター17a、搬送ローラー17bを含んで構成されている。第1走査部17は、搬送モーター17aにより搬送ローラー17bを回転させ、紙Pを前後方向へ移動させる。紙Pは、ヘッド16と搬送ローラー17bとの間に形成される搬送経路に沿って、移動される。
ヘッド16は、複数のノズルを第1方向へ配列し、キャリッジ16aと共に移動しながら、紙Pに向かって、下方向へインクを吐出し、ドットを形成可能である。なお、第1走査部17及び第2走査部18による移動を走査ともいい、前者は第1走査ともいい、後者は第2走査ともいう。
【0011】
このように、第1走査部17は、前後方向へヘッド16と紙Pとを相対的に移動させることができる。また、第2走査部18は、キャリッジ16にヘッド16aを搭載し、前後方向と交差する左右方向へ、ヘッド16と紙Pとを相対的に移動させることができる。
第1走査部17により紙Pを移動させた後、ヘッド16は、第2走査部18により移動しながら、停止している紙Pに向かってインクを吐出する。このサイクルを繰り返して、印刷装置1は紙Pに所定の画像を印刷する。
【0012】
ヘッド16は、第2走査部18により左右方向へ移動しながら、紙Pへインクを吐出するため、後述の図3に示すように、紙Pへ着弾したインクは、前後方向よりも左右方向に長い形状のドットとなり易く、いわゆる横長ドットを形成する傾向にある。また、ヘッド16のノズルから吐出されたサテライトのインク滴も、主滴の左右方向へ散らばって紙Pへ着弾する傾向があり、横長ドットを形成する要因ともなっている。
【0013】
印刷装置1は、インク色である例えばCMYK(Cyan, Magenta, Yellow, Black)の各色のインクを貯蔵したインクカートリッジやインクタンクを装着可能である。インクカートリッジ等は、各色のインクを対応するヘッド16のノズル列へ供給する。
【0014】
図2に示すように、印刷装置1は、上述の他、制御部10、記憶部15、通信部19を含んで構成されている。
制御部10は、印刷装置1の各部を統括的に制御するCPU(Central Processing Unit)、入出力を管理するUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)、論理回路であるFPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device)などを含んで構成されている。CPUはプロセッサーともいう。
記憶部15は、書き換え可能な不揮発性メモリーであるフラッシュROM(Read Only Memory)、揮発性メモリーであるRAM(Random Access Memory)などを含んで構成されている。
制御部10のCPUは、記憶部15のフラッシュROMに記憶されたファームウェアなどのプログラムを読み出し、記憶部15のRAMを作業領域として用いて実行する。
制御部10は、後述のように、色変換部11、ハーフトーン処理部12、ラスタライズ部13を含んでいる。
【0015】
印刷装置1の通信部19は、外部装置2との間で有線通信又は無線通信での通信が可能な通信回路を含んで構成されている。
外部装置2は、コンピューター、タブレット、スマートフォンなどである。図2に示すように、外部装置2は、CPUを含む外部装置側制御部20、RAMや不揮発性メモリーであるフラッシュROMやHDD(Hard Disk Drive)などを含む外部装置側記憶部22、印刷装置1と通信可能な通信回路を含む外部装置側通信部23などを備えている。
【0016】
外部装置2の外部装置側制御部20のCPUは、外部装置側記憶部22に記憶されている図形作成アプリケーション、グラフィック作成アプリケーション、文章作成アプリケーションなどアプリケーションであるプログラムを読み出して実行する。外部装置側制御部20は、アプリケーションから画像データを生成する。印刷装置1の通信部19は、外部装置側通信部23から入力データである画像データを受信する。
また、外部装置側制御部20には、画像データを生成可能であり、印刷装置1を制御可能なドライバー21が含まれる。
【0017】
制御部10は、受信した画像データに基づき、ヘッド16のノズルからインクを吐出するための画素データを生成する。制御部10の制御の下、画素データに基づき、ヘッド16のノズルが備える駆動素子へ駆動信号を印加し、ノズルからインクを紙Pへ吐出し、ドットを形成して画像を印刷することができる。
なお、制御部10は、印加する駆動信号のパターンを変えることにより、ノズルから吐出するインク量を変えることができる。この結果、ヘッド16は、紙Pに対して異なるサイズのドットを形成することが可能となる。また、ノズルの特性によっては、制御部10は、印加する駆動信号のパターンを変えず、駆動素子へ駆動信号を印加する回数を変えることにより、紙Pへ打ち込むインク量を変えて、異なるサイズのドットを形成することもできる。
【0018】
ここで、図3を参照して、ヘッド16のノズルの構成、並びに、第1走査部17及び第2走査部18による移動動作、紙Pに形成されるドットの関係について説明する。
図3は、ヘッド16における、一のインク色に対応するノズル列の例を模式的に示している。ヘッド16のノズル列には、複数のノズルが前方向であるノズル配列方向へ並べられている。
図3では、ノズル列における各ノズルの位置を、ノズル配列方向へ向かって、ノズル#0からノズル#2のように、番号を用いて示している。ノズル列における各ノズルの間隔であるノズルピッチHRは、例えば300dpi(dot per inch)である。
【0019】
制御部10は、第1走査部17により、例えば、1200dpiの解像度の逆数となるような距離の単位で、紙Pを前後方向へ移動させることができる。
この結果、制御部10は、第1走査部17による前後方向の解像度である第1解像度YRを、1200dpiの単位とすることができる。図3の例では、制御部10は、第1解像度YRを600dpiとすることができる。制御部10は、第1走査部17により、600dpiの解像度の逆数となる距離である第1搬送量Lの分、紙Pを後方向へ移動させることができる。
なお、図5の例のように、制御部10は、第1搬送量Lに対し、1200dpiの解像度の逆数となる距離である第2搬送量αを、加算又は減算して、第1走査部17により紙Pを後方向へ移動させることもできる。この場合、制御部10は、第1走査部17による第1解像度YRを1200dpiとすることができる。
【0020】
また、制御部10は、例えば、1200dpiの解像度の逆数となるような距離の単位で、第2走査部18によりヘッド16を移動させたタイミング毎に、ノズルによりインクを吐出することができる。
この結果、制御部10は、左右方向の解像度である第2解像度XRを1200dpiとすることができる。図3は、制御部10は、1200dpiの解像度の逆数となる距離のタイミングでヘッド16を右方向へ移動させつつ、ノズルによりインクを吐出させた例を示している。
【0021】
制御部10は、第1解像度YRに基づき第1搬送量Lの分、第1走査部17により紙Pを移動させた後、第2走査部18によりヘッド16を移動しながら、第2解像度XRに基づくタイミングで、停止している紙Pに向かってインクを吐出させる。制御部10は、このサイクルを繰り返して、紙Pに印刷をする。
ところで、印刷の際、第2走査部18によりヘッド16を左右に移動することを、いわゆるパス(pass)と称する。図3の左には、「0」番目から「4」番目のパスにおける、紙Pに対する各ヘッド16の位置を示している。各ヘッド16の上端に、何番目のパスであるかを示している。
【0022】
図3の右には、「0」番目から「4」番目のパスのとき、ヘッド16の各ノズルにより紙Pに形成したドットを示す。ドットの中の文字は、ヘッド16による当該ドット形成時に、何番目のパスであり、ノズルの番号が何であったかを示している。例えば、ドットの中の「1#2」は、ヘッド16により、1パス目でありノズル#2により形成したドットであることを示す。
ここで、ヘッド16のノズル#1に注目すると、「0」番目から「4」番目のパスの順に、ドットである、D0,D1,D2,D3,D4が紙Pに形成される。
以下では、これらの紙Pに形成されるドットを、単にD0,D1,D2,D3,D4と称する。また、第1走査部17による第1搬送量Lの紙Pの移動を、単にLと称する。ドットであるD0,D1,D2,D3,D4が形成される順番と、第1走査部17による紙Pの移動との関係は、パスの順に従って、D0→L→D1→L→D2→L→D3→L→D4→L、となる。制御部10は、この順になるように、処理をすることとなる。
【0023】
後述のように、各ドットの画素列の上端には、画素列の番号を示している。図5と対比するため、図3でも、画素列は2列で区切られ、「1」列目、「2」列目として示される。
記憶部15に記憶されている各画素データは、図3に示す各ドットに対応して並んでいる。これらは、後述のように、制御部10のラスタライズ部13が画素データを並び替える処理である、図4に示す第1ラスタライズ(S104)の処理に関連する。
【0024】
上述のように、インクが紙Pへ着弾したときのドット形状は、図3に示すように、前後方向よりも左右方向へ長い、横長となる傾向にある。このようなドットを、いわゆる横長ドットと称する。
この結果、図3の例では、前後方向の一のドット間Wは、左右方向に亘って連続する筋状の隙間が発生し易くなる。以下では、前後方向の一のドット間Wを単にドット間Wと称する。このため、ドット間の埋まりが悪くなり、色味が薄くなることがある。さらに、第1走査部17により紙Pを移動させたときの誤差により、いわゆる白筋が生じる場合があるが、白筋により、さらにドット間Wの筋状の隙間が目立つようになってしまうことがある。
なお、第1走査部17による誤差により紙Pに縞模様のように現れる隙間を、いわゆるバンディングともいう。
【0025】
1-2.印刷装置の制御方法
図4を参照し、一部については図5も参照して、印刷装置1の制御方法について説明する。
最初に、制御部10が画像データを処理する流れについて説明する。印刷装置1の通信部19は、外部装置2の外部装置側通信部23から入力データである画像データを受信する。制御部10は、通信部19により画像データを取得する(S101)。
画像データは、例えば、RGB(Red, Green, Blue)の色空間で表現されたビットマップデータで構成されている。具体的には、ビットマップデータは、RGBの各濃度階調値である8ビットで示される、0ないし255の256階調の値で表現されている。
【0026】
制御部10の色変換部11は、記憶部15に記憶されている色変換テーブルに従って、ビットマップデータを、ヘッド16が対応しているインク色である例えばCMYKの4色の色空間で表現されたインク量データへ色変換する(S102)。
例えば、インク量データは、CMYKの各濃度階調値である8ビットで示される、0ないし255の256階調で表現された値で表現されている。インク量データは、例えばCMYKの各濃度階調値で表現され、インク色毎に各ノズル列のノズルにそれぞれ対応している。
【0027】
色変換テーブルは、記憶部15に記憶されているLUT(ルックアップテーブル)であり、ビットマップデータのRGBの各濃度階調値に対して、対応するCMYKの各インク量データが記憶されているテーブルである。
また、色変換テーブルは、紙Pの種類、ヘッド16の解像度などの印刷条件に対応して設定されている。色変換部11は、紙Pの種類、ヘッド16の解像度に応じて、画像データをインク量データに変換することができる。
【0028】
次に、制御部10のハーフトーン処理部12は、色変換部11により画像データから変換されたインク量データを、印刷装置1のヘッド16が形成可能な階調数のデータへ変換するハーフトーン処理を行う(S103)。
【0029】
ハーフトーン処理部12は、例えば256階調で表現されたインク量データを、各サイズのドットを形成可能なデータであって、「ドット無し」、「ドット小」、「ドット中」、「ドット大」を含む4階調の2ビットデータへ変換することができる。インク量データが大きくなるに従って、大きなサイズのドットへ変換される。これらの「ドット無し」、「ドット小」、「ドット中」、「ドット大」に対応する各データのことを、ドットデータと称する。
【0030】
ハーフトーン処理部12は、例えば、インク量データの値が小さい場合には、「ドット小」を含めたドットデータを発生し、濃度の薄い印刷結果とすることができる。一方、ハーフトーン処理部12は、インク量データの値が大きい場合には、「ドット大」を含めたドットデータを発生し、濃度の濃い印刷結果とすることができる。
【0031】
記憶部15には、インク量データに対する上述の「ドット無し」、「ドット小」、「ドット中」、「ドット大」を示すドットデータを発生するドット発生率が、ドット発生率テーブルとして記憶されている。
ハーフトーン処理部12は、記憶部15のドット発生率テーブルを参照し、インク量データに対応するドットデータを発生させる。
また、ハーフトーン処理部12は、ドット発生率テーブルにより得られたドットデータに対して、ディザ法や誤差拡散法などを利用して、各ドットが分散して形成されるようにドットデータを作成する。
【0032】
ドットデータを、例えばノズルから吐出するインク量に対応させて、変換することもできる。さらに、インク量データを、例えばノズルからインクを吐出する回数に対応させて、変換することもできる。
これらの処理を施されたドットデータは、一旦、記憶部15のアドレスにマトリクス状に並ぶように記憶される。
【0033】
次に、制御部10のラスタライズ部13は、記憶部15に記憶されたマトリクス状に並ぶドットデータを、第1走査部17により紙Pを移動した後、第2走査部18によりヘッド16を移動させながらノズルからインクを吐出させて、ドットを形成できるような順序に割り付けて、並べ替える第1ラスタライズの処理を行う(S104)。
【0034】
ラスタライズ部13は、ハーフトーン処理部12により生成されたドットデータに基づき、ヘッド16の各ノズルを駆動してドットを形成できるような画素データを生成する。
画素データは、ラスタライズ部13により、ヘッド16の各ノズルによりドットを形成できるように並んで、記憶部15に記憶されている。
なお、画素データは、ドットデータと同じデータとすることもでき、インク量データと同じデータとすることもできる。
【0035】
制御部10は、記憶部15から画素データを順次読み出して、各パスに対応するドットから成るラスターラインを形成することができる。
図3及び図5は、ラスタライズ部13が、一の色に対し、「ドット小」に対応する画素データとして、第1ラスタライズの処理を行い、ヘッド16の一の色のインク色に対応するノズル列のノズルによりドットを形成する例を示している。
【0036】
上述のように、図3の例では、ドット間Wは、左右方向に亘って連続する筋状の隙間が発生し易くなってしまう。
そこで、ラスタライズ部13は、記憶部15に記憶されている画素データを、複数列に区切り、オフセット対象列とオフセット量を決める、第2ラスタライズの処理を行う(S105)。
【0037】
以下では、制御部10のラスタライズ部13が処理する第2ラスタライズについて、図5図3と比較しながら説明する。
なお、図5は、図3の場合と同様に構成されている。すなわち、図5の左には、第1走査部17によりそれぞれ紙Pを移動した後の「0」番目から「4」番目のパスのときのヘッド16の位置を示している。ヘッド16のノズル列は、一のインク色に対応している。各ヘッド16の上端の位置に、何番目のパスであるかを示している。
図5の右には、「0」番目から「4」番目のパスのとき、ヘッド16の各ノズルにより紙Pに形成したドットを示す。ドットの中の文字は、何パス目の何番目のノズルで形成されたドットであるか、を示す。ドットの上端には、何番目の画素列であるかを示していて、ここでは「1」列目、「2」列目として示される。
【0038】
また、記憶部15に記憶されている各画素データは、図5に示す各ドットに対応している。また、記憶部15に記憶されている各画素データは、図5に示す各ドットに対応した順番のアドレスで並んでいる。
制御部10は、前後方向に複数の画素データを有する画素列を、左右方向に「1」列目及び「2」列目として、複数有する画素データ群に基づいて、ヘッド16のノズルにより、前後方向よりも左右方向に長いドットである横長ドットを紙Pへ形成させる。
【0039】
図5の例では、右のドットに示すように、ラスタライズ部13は、複数列である2列の画素列の単位に画素データを区切っている。換言すると、ラスタライズ部13は、画素データをそれぞれ複数列である2列の画素データ群となるように区切っている。
制御部10は、2列で構成した画素データ群を、前後方向の解像度を第1解像度である600dpiとし、左右方向の解像度を第2解像度である1200dpiとし、第1解像度が第2解像度よりも小さい解像度として、印刷するものとする。
なお、第1解像度<第2解像度、となるとき、すなわち、図3に示すように、第1解像度である600dpi<第2解像度である1200dpi、となるとき、ドット間Wは、よりドットの埋まりの悪さが目立ち易い。
【0040】
ラスタライズ部13は、2列の画素列に対して、一部の画素列である偶数列の2列目を、オフセット対象列として決める。そして、ラスタライズ部13は、1200dpiの解像度の逆数となる距離である第2搬送量αを、オフセット量として決める。
このように、ラスタライズ部13は、2列の画素列を含む画素データ群に基づいて印刷を実行する際は、少なくとも一部の画素列である2列目を、他の1列目の画素列に対して、相対的に前後方向に、第1解像度である600dpiの逆数未満である、1200dpiの解像度の逆数となる第2搬送量αだけオフセットさせるようにする。
【0041】
このように、ラスタライズ部13は、第2搬送量αを、第1解像度である600dpiの逆数と、画素列の数である2の逆数とを、乗算した値とすることができる。すなわち、ラスタライズ部13は、第2搬送量αを、第1解像度の逆数と、画素列の数の逆数とを、乗算した値とすることができる。
ラスタライズ部13は、隣り合う、1列目である奇数番目の画素列、及び、2列目である偶数番目の画素列を、第1走査部17により所定距離である第2搬送量αだけ相対的にオフセットさせることができる。
【0042】
ラスタライズ部13による第1ラスタライズの処理の結果に対応する図3は、第2ラスタライズの処理に係るオフセットをする前を示す。制御部10は、第2走査部18によりヘッド16を移動させる全てのパスの前に、それぞれ第1走査部17により一律に第1搬送量Lの分、紙Pを移動させている。従って、ラスタライズ部13は、1列目及び2列目のいずれも、前後方向に第1搬送量Lの分、移動させ、オフセットはしていない。
上述のように、ヘッド16のノズル#1に注目すると、制御部10は、「0」番目から「4」番目のパスの順に、D0→L→D1→L→D2→L→D3→L→D4→L、の順に処理をする。
【0043】
一方、図5は、ラスタライズ部13による第2ラスタライズの処理に係るオフセットをした後を示す。ラスタライズ部13は、第2ラスタライズの処理をし、1列目には、図3の場合と同じく、第1走査部17により紙Pを第1搬送量Lの分、移動させている一方、2列目には、第1搬送量Lに対して第2搬送量αを加算、又は減算した搬送量としている。すなわち、制御部10は、2列の画素列の中で、奇数列に対して偶数列を、相対的に第2搬送量αの分、オフセットする。
【0044】
ヘッド16のノズル#1に注目すると、第1走査部17による第2搬送量αの搬送を単にαとした場合、制御部10は、「0」番目から「4」番目のパスの順に、D0→(L)→D1→(L+α)→D2→(L)→D3→(L-α)→D4、の順に処理をすることとなる。
このように、ラスタライズ部13は、少なくとも一部の画素列を、他の画素列に対して、第2搬送量αの分、(L+α)のときのように長くオフセットする、(L-α)のときのように第2搬送量αの分短くオフセットする、(L)のときのようにオフセットさせない、のいずれかの組み合わせを繰り返す。
【0045】
図5は、ラスタライズ部13が画素データ群の画素列を2列とした場合であるが、画素データ群を3列以上で構成した場合も同様である。
ラスタライズ部13は、第2搬送量αを、第1解像度の逆数と、画素列の数の逆数とを、乗算した値とし、少なくとも一部の画素列を、他の画素列に対して、第2搬送量αの分、長くオフセットする、短くオフセットする、オフセットさせない、のいずれかの組み合わせを繰り返せばよい。
【0046】
この結果、図5に示すように、1列目及び2列目のドットの位置は、いわゆるチェッカーフラッグのように配置される。すなわち、1列目及び2列目のドットの位置は、前後方向に互い違いに形成されるので、ドット間Wは、左右方向に亘って連続する筋状の隙間が発生し難くなる。なお、1列目及び2列目のドットの位置は、左右方向にも互い違いに形成され、前後方向にも隙間が空き難くなる。
また、第1走査部17により紙Pを移動させたときの誤差により白筋が発生する場合も、ドット間Wの筋状の隙間が目立つことを抑制することができる。
【0047】
次に、具体的に、制御部10が紙Pにドットを形成する制御について説明する。以下では、説明の便宜上、ヘッド16のノズル#1に注目し、紙Pに形成されるドットであるD0,D1,D2,D3,D4について説明する。なお、これらのドットは、記憶部15に記憶されている画素データにも対応するものとして説明する。
制御部10は、記憶部15から、処理対象の画素列の画素データを順次取得する(S106)。
制御部10は、前回の処理対象が非対象列であり、且つ、今回の処理対象が対象列であるかを判定する(S107)。
【0048】
最初に、今回の処理対象を、画素データのD0を含む1列目の画素列とする。仮に、前回の処理対象は非対象列であったとする。制御部10は、今回は1列目の画素列であるので非対象列であり、対象列ではないと判定する(S107:NO)。
そして、前回が対象列であり、且つ、今回が非対象列であるかを判定する(S108)。制御部10は、前回が非対象列であったので、対象列ではないと判定する(S108:NO)。
【0049】
制御部10は、第1走査部17による搬送量PFを第1搬送量Lとし、PF=L、とする(S109)。制御部10は、第1走査部17により、搬送量PFである第1搬送量Lの分、紙Pを後方向へ移動する(S110)。
そして、制御部10は、0パス目として、第2走査部18によりヘッド16を右へ移動させながら、1列目の位置となるタイミングで、1列目のD0を含む画素データに基づき、ノズル#1からインクを吐出させ、紙PにドットのD0を形成し、印刷する(S111)。
【0050】
次に、今回の処理対象を、画素データのD1を含む1列目の画素列とする。前回のD0のときは、1列目の非対象列であった。制御部10は、今回は1列目の非対象列であり、対象列ではないと判定する(S107:NO)。
制御部10は、搬送量PFを第1搬送量Lとし、PF=L、とする(S109)。制御部10は、第1走査部17により、搬送量PFである第1搬送量Lの分、紙Pを後方向へ移動する(S110)。
そして、制御部10は、1パス目として、第2走査部18により、ヘッド16を右へ移動させながら、1列目の位置となるタイミングで、1列目のD1を含む画素データに基づき、ノズル#1からインクを吐出させ、紙PにドットのD1を形成し、印刷する(S111)する。
【0051】
次に、今回の処理対象を、画素データのD2を含む2列目の画素列とする。前回のD1のときは、1列目の非対象列であった。制御部10は、前回が非対象列であり、且つ、今回は2列目の対象列であると判定する(S107:YES)。
制御部10は、搬送量PFを、第1搬送量Lに対して第2搬送量αを加算してオフセットするものとし、PF=L+α、とする(S113)。制御部10は、第1走査部17により、第1搬送量Lに第2搬送量αを加算した搬送量PFの分、紙Pを後方向へ移動する(S110)。
そして、制御部10は、2パス目として、第2走査部18により、ヘッド16を右へ移動させながら、2列目の位置となるタイミングで、2列目のD2を含む画素データに基づき、ノズル#1からインクを吐出させ、紙PにドットD2を形成し、印刷する(S111)する。
【0052】
次に、今回の処理対象を、画素データのD3を含む2列目の画素列とする。前回のD2のときも、2列目の対象列であった。制御部10は、前回が対象列であり、非対象列ではないと判定する(S107:NO)。
そして、制御部10は、今回が対象列であり、非対象列ではないと判定する(S108:NO)。
制御部10は、搬送量PFを第1搬送量Lとし、PF=L、とする(S109)。制御部10は、第1走査部17により、搬送量PFである第1搬送量Lの分、紙Pを後方向へ移動する(S110)。
そして、制御部10は、3パス目として、第2走査部18により、ヘッド16を右へ移動させながら、2列目の位置となるタイミングで、2列目のD3を含む画素データに基づき、ノズル#1からインクを吐出させ、紙PにドットのD3を形成し、印刷する(S111)する。
【0053】
次に、今回の処理対象を、画素データのD4を含む1列目の画素列とする。前回のD3のときは、2列目の対象列であった。制御部10は、前回が対象列であり非対象列ではなく、今回が1列目の非対象列であり対象列ではないと判定する(S107:NO)。
そして、制御部10は、前回が対象列であり、且つ、今回が非対象列であると判定する(S108:YES)。
制御部10は、搬送量PFを、第1搬送量Lに対して第2搬送量αを減算してオフセットするものとし、PF=L-α、とする(S114)。制御部10は、第1走査部17により、第1搬送量Lに第2搬送量αを減算した搬送量PFの分、紙Pを後方向へ移動する(S110)。
そして、制御部10は、4パス目として、第2走査部18により、ヘッド16を右へ移動させながら、1列目の位置となるタイミングで、D4を含む1列目の画素データに基づき、ノズル#1からインクを吐出させ、紙PにドットD4を形成し、印刷する(S111)する。
【0054】
制御部10は、記憶部15に記憶されている処理対象の全ての画素列について処理が終了したかを判定する(S112)。制御部10は、処理対象の全ての画素列について処理が終了していないと判定する(S112:NO)と、記憶部15から次の処理対象の画素列の画素データを取得して、上述の処理を繰り返す。(S112:NO)。制御部10は、処理対象の全ての画素列について処理が終了したと判定する(S112:YES)と、処理を終了する。
以上では、ヘッド16のノズル#1に注目して説明したが、制御部10は、他のノズルに対しても同様の処理をする。
この結果、図5に示すように、紙に形成される各1列目及び2列目のドットの位置はチェッカーフラッグのように配置されることが繰り返され、ドット間Wは、左右方向に亘って連続する筋状の隙間が発生し難くなる。
【0055】
ところで、上述のように、一連のオフセット動作である、制御部10が、画素データを複数の画素列に区切った画素データ群とし、第2搬送量αを算出し、隣り合う、少なくとも一部の画素列を他の画素列に対して、第2搬送量αの分、長くオフセットする、短くオフセットする、オフセットさせない、の組み合わせを実行することは、処理に時間が掛かる場合がある。
そこで、紙Pに形成されるドットにおいて、ドット間の埋まりが悪くなく、色味が薄くならない傾向にある条件の場合には、制御部10はオフセット動作をしないことが好ましいことがある。
【0056】
図3に示すように、第1解像度である600dpi<第2解像度である1200dpi、となるとき、横長ドットで画像を埋めていく際に、より埋まりの悪さが目立ち易い。一方、第1解像度≧第2解像度、である場合、埋まりの悪さが目立ち難い。
そこで、制御部10は、第1解像度が第2解像度以上の大きさの画素データ群に基づいて印刷を実行する際には、隣り合う画素列を、第1走査部17により相対的に所定距離だけオフセットさせないようにする。
第1解像度≧第2解像度の場合、図3及び図5の右に示す、マス目の形状である画素の形状と、横長ドットの形状が近似するため、第1解像度<第2解像度の場合と比較してドット間の埋まりは悪くなり難い。第1解像度≧第2解像度の場合には、制御部10は、オフセット動作をさせずに印刷をすることで、処理時間の低減を図ることができる。
【0057】
上述のように、制御部10のハーフトーン処理部12は、「ドット小」、「ドット中」、「ドット大」などのドットデータを生成する。制御部10は、ドットデータに基づき画素データを生成して、ヘッド16のノズルからインクを紙Pに吐出し、異なる大きさのドットを形成可能である。
最も小さいドットである「ドット小」は、主には中間調を表現するために、まばらに配置されることが多く、ドットの埋まりについては課題になりにくい。対して、最も大きいドットである「ドット大」は、例えば、ベタ画像のような高階調の画像を表現するために用いるために使用されることが多い。図3に示すように、ドットを全ての画素に配置して画像を埋めていく際に、第1解像度<第2解像度で印刷を行うと、埋まりの悪さが目立ち易い。また、「ドット中」などでもドット小と比較して埋まりの悪さが目立ち易くなる。
【0058】
そこで、制御部10は、最も小さいドットである「ドット小」を主に形成して印刷を実行する際には、隣り合う画素列を、第1走査部17により相対的に所定距離だけオフセットさせないようにする。
逆に、「ドット中」「ドット大」を主に用いて印刷する、埋まりの悪さが目立ち易い場合には、制御部10は、オフセット動作をさせて印刷をすることで、処理時間の低減を図ることができる。
「主に用いて印刷をする」の具体例として、例えば、ドット小とドット大の使用割合を比較した際に、ドット小の使用割合よりもドット大の使用割合の方が高い場合などがある。このような使用割合の比率で印刷をする場合、埋まりの悪さが目立ち易いため、隣り合う画素列を、第1走査部17により相対的に所定距離だけオフセットさせるようにする。
【0059】
また、ドット大を用いて印刷を実行する場合であったとしても、その使用割合がドット小の使用割合よりも小さい場合には、ドットの埋まりについては課題になりにくいため、オフセットをさせないで印刷を実行する。
なお、上述ではドット大とドット小の使用割合の対比を例示したが、相対的なドットの大小をではなく、ドットの絶対的な大きさを閾値としても良い。例えば、第1解像度が600dpi、第2解像度が1200dpiの際には、4ng以上の重さ(大きさ)のドットの使用割合が、4ngよりも軽い(小さい)のドットの使用割合と比較して小さい時には、隣り合う画素列を、第1走査部17により相対的に所定距離だけオフセットさせないようにしてもよい。
【0060】
紙Pが、インクが滲みやすいような媒体である場合、インクが着弾した後も、ある程度ドットが滲んで広がることがある。この結果、ドット間の埋まりが向上することがある。
そこで、印刷装置1は、媒体の種類を指定可能な媒体指定部である不図示の操作パネルを有し、操作パネルにより、所定の閾値よりも滲みやすい媒体が指定された際には、制御部10は、隣り合う画素列を、第1走査部17により相対的に所定距離だけオフセットさせないようにする。
【0061】
所定の閾値は、媒体の種類として設定することができ、例えば、写真用光沢紙とすることができる。制御部10は、操作パネルにより写真用光沢紙が指定された場合には、オフセット動作をさせずに印刷をすることで、処理時間の低減を図ることができる。
なお、媒体の種類の指定は、外部装置2がコマンドを送信して、印刷装置1に指定することもできる。
【0062】
第2走査部18によるヘッド16の移動速度が速くなると、ノズルから吐出するサテライトのインク滴が主滴の左右に広がって着弾することもあり、ドットが左右方向へ長くなる傾向になる。一方、ヘッド16の移動速度が遅くなると、サテライトのインク滴が主滴と重なるように紙Pに着弾することもあり、ドットが左右方向へ長くなり難くなる。
そこで、制御部10は、第2走査部18を左右方向へ移動する第2走査の速度が所定の速度閾値よりも速い場合には、隣り合う画素列を、第1走査部17により相対的に所定距離だけオフセットさせ、第2走査の速度が所定の速度閾値以下の場合には、隣り合う画素列を、オフセットさせないようにする。
【0063】
第2走査部18によるヘッド16の移動速度が遅くなると、ドットが左右方向へ長くなり難くなるので、制御部10がオフセット動作をしても、ドット間の埋まりが向上する効果は低い。この場合、制御部10は、ヘッド16の移動速度を速くし、印刷速度が速くなることを優先する。
【0064】
ところで、図4を用いて説明した、上述の印刷装置1の制御部10が処理する機能の少なくとも一部を、外部装置2が行うこともできる。具体的には、外部装置側制御部20が、外部装置側記憶部22に記憶されているドライバー21を読み出して、実行することにより行う。
【0065】
外部装置側制御部20はアプリケーションを実行し、画像データを生成することに続き、ドライバー21により、図4に示す、次の処理を実行する。
すなわち、外部装置側制御部20は、色変換を実行し(S102)、ハーフトーン処理を実行し(S103)、第1ラスタライズの処理を実行し(S104)、画素データを、複数列に区切り、オフセット対象列とオフセット量を決める、第2ラスタライズの処理を実行する(S105)。
【0066】
そして、外部装置側制御部20は、図4に示す、(S107)から(S109)、(S113)、(S114)の処理を実行する。
例えば、外部装置側制御部20は、「0」番目から「4」番目のパスの順に並べた画素データ、及び、パスの間に第1走査部17により紙Pを搬送する量のデータを含むコマンドを生成し、外部装置側通信部23から印刷装置1へ送信する。
【0067】
具体的には、外部装置側制御部20は、印刷装置1に、「0」番目から「4」番目のパスの順に、D0→(L)→D1→(L+α)→D2→(L)→D3→(L-α)→D4、の順に処理をさせるようなコマンドを生成して、印刷装置1へ送信する。外部装置側制御部20は、これらをすべての画素列に対して行う(S112)。
外部装置2から受信したコマンドに基づき、印刷装置1の制御部10は、図4に示す、第1走査部17により搬送量PFの分、紙Pを移動すること(S110)、及び、第2走査部18によりヘッド16を移動させてヘッド16により印刷すること(S111)、をすればよい。
【0068】
この結果、上述の印刷装置1の場合と同様に、外部装置2の外部装置側制御部20は、ドライバー21により、隣り合う画素列を、第1走査部17により相対的に所定距離だけオフセットさせることができる。図5に示すように、各1列目及び2列目のドットの位置は、チェッカーフラッグのように配置され、ドット間Wは、左右方向に亘って連続する筋状の隙間が発生し難くなる。
このように、外部装置2の外部装置側制御部20が、ドライバー21により、印刷装置1の制御部10が処理する機能の少なくとも一部を実行し、同様の結果を得ることもできる。
【0069】
また、外部装置2の外部装置側制御部20は、ドライバー21により、紙Pに形成されるドット間の埋まりが悪くなく、色味が薄くならない傾向にある条件であると判定した場合には、オフセット動作をさせないようにしたコマンドを印刷装置1へ送信することもできる。
外部装置側制御部20は、ドライバー21の設定により、又はドライバー21の処理により、例えば、第1解像度≧第2解像度、「ドット小」を形成しない、媒体の種類が閾値以上で滲み易い、第2走査部18の速度が閾値以下である、等を判定した場合には、隣り合う画素列を、オフセットさせないようにするコマンドとする。
【0070】
以上説明したように、制御部10は、前後方向に複数の画素データを有する画素列を、左右方向に2列など複数有する画素データ群に基づいて、ヘッド16により、紙Pにドットを形成し、印刷をする。紙Pへ着弾したインクは、前後方向よりも左右方向に長い形状のドットとなり易く、横長ドットを形成する。
第1解像度である600dpi<第2解像度である1200dpi、となるとき、横長ドットのドット間Wは、よりドットの埋まりの悪さが目立ち易い。
【0071】
制御部10は、印刷を実行する際は、少なくとも一部の画素列である2列目を、他の1列目の画素列に対して、相対的に前後方向に、第1解像度である600dpiの逆数未満である、1200dpiの解像度の逆数となる第2搬送量αだけオフセットさせるようにする。
この結果、紙に形成される各1列目及び2列目のドットの位置はチェッカーフラッグのように配置されることが繰り返され、ドット間Wは、左右方向に亘って連続する筋状の隙間が発生し難くなる。
【0072】
上述のように、各実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。
【0073】
また、以上に説明した装置における任意の構成部の機能を実現するためのファームウェアやドライバーなどのプログラムを、コンピューターに読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピューターシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。ここで、当該装置は、例えば、印刷装置1、外部装置2等である。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、OS(OperatingSystem)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD(CompactDisk)-ROM等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置を含む。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバーやクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリーのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0074】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピューターシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピューターシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル又は差分プログラムであってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…印刷装置、2…外部装置、10…制御部、11…色変換部、12…ハーフトーン処理部、13…ラスタライズ部、15…記憶部、16…ヘッド、17…第1走査部、18…第2走査部、19…通信部、20…外部装置側制御部、21…ドライバー、22…外部装置側記憶部、23…外部装置側通信部。
図1
図2
図3
図4
図5