(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103136
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】接合基板、及び接合基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20240725BHJP
H03H 3/08 20060101ALI20240725BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
H03H9/25 C
H03H3/08
H01L21/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007312
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】丸子 拓也
(72)【発明者】
【氏名】岩田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】菊地 弘一
(72)【発明者】
【氏名】千葉 理樹
(72)【発明者】
【氏名】横田 裕章
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA24
5J097BB11
5J097EE08
5J097EE09
5J097FF05
5J097HA03
5J097HA04
5J097KK01
5J097KK09
5J097KK10
(57)【要約】
【課題】ボイドの発生を抑制しつつ、接合強度が高い接合基板を提供すること。
【解決手段】本開示の一態様にかかる接合基板1は、第1基板10と第2基板20とが接合面15を介して接合された接合基板である。第1基板10は水晶基板であり、第2基板20は、タンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板である。第1基板10及び第2基板20の少なくとも一方の接合面15側には、酸化シリコンからなる中間層11、21が形成されている。第1基板の接合面15側には第1改質層12が形成されており、第2基板20の接合面15側には第2改質層22が形成されており、第1改質層12及び第2改質層22のうち中間層11、21の上に形成されている改質層12、22の厚さが1.8nm以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と第2基板とが接合面を介して接合された接合基板であって、
前記第1基板は水晶基板であり、
前記第2基板は、タンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板であり、
前記第1基板及び前記第2基板の少なくとも一方の前記接合面側には、酸化シリコンからなる中間層が形成されており、
前記第1基板の前記接合面側には第1改質層が形成されており、
前記第2基板の前記接合面側には第2改質層が形成されており、
前記第1改質層及び前記第2改質層のうち前記中間層の上に形成されている改質層の厚さが1.8nm以上である、
接合基板。
【請求項2】
前記第1基板及び前記第2基板の各々の前記接合面側には前記中間層として第1中間層及び第2中間層がそれぞれ形成されており、
前記第1改質層は前記第1基板に形成された前記第1中間層の前記接合面側の面に形成されており、
前記第2改質層は前記第2基板に形成された前記第2中間層の前記接合面側の面に形成されており、
前記第1中間層に形成された前記第1改質層の厚さが1.8nm以上2.2nm以下であり、
前記第2中間層に形成された前記第2改質層の厚さが1.8nm以上2.2nm以下である、
請求項1に記載の接合基板。
【請求項3】
前記第2基板には前記中間層として第2中間層が形成されており、
前記第1改質層は前記第1基板の前記接合面側の面に形成されており、
前記第2改質層は前記第2基板に形成された前記第2中間層の前記接合面側の面に形成されており、
前記第1基板の前記接合面側に形成された前記第1改質層の厚さが2.7nm以上3.2nm以下であり、
前記第2中間層に形成された前記第2改質層の厚さが1.8nm以上2.2nm以下である、
請求項1に記載の接合基板。
【請求項4】
前記第1基板には前記中間層として第1中間層が形成されており、
前記第1改質層は前記第1基板に形成された前記第1中間層の前記接合面側の面に形成されており、
前記第2改質層は前記第2基板の前記接合面側の面に形成されており、
前記第1中間層に形成された前記第1改質層の厚さが1.8nm以上2.2nm以下であり、
前記第2基板の前記接合面側に形成された前記第2改質層の厚さが2.2nm以上2.7nm以下である、
請求項1に記載の接合基板。
【請求項5】
前記中間層の厚さが50nm以上10μm以下である、請求項1に記載の接合基板。
【請求項6】
前記第1基板の厚さが100μm以上1000μm以下であり、
前記第2基板の厚さが10μm以上1000μm以下である、
請求項1に記載の接合基板。
【請求項7】
第1基板である水晶基板と第2基板であるタンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板とが接合面を介して接合された接合基板の製造方法であって、
前記第1基板及び前記第2基板の少なくとも一方の前記接合面側に酸化シリコンからなる中間層を形成する第1工程と、
前記第1基板の前記接合面側の面をプラズマ処理して第1改質層を形成する第2工程と、
前記第2基板の前記接合面側の面をプラズマ処理して第2改質層を形成する第3工程と、
前記第1改質層と前記第2改質層とを対向させた状態で、前記第1基板と前記第2基板とを仮接合する第4工程と、
前記仮接合後の基板をアニール処理して前記第1基板と前記第2基板とを接合する第5工程と、を備え、
前記第1改質層及び前記第2改質層のうち前記中間層の上に形成されている改質層の厚さを1.8nm以上とする、
接合基板の製造方法。
【請求項8】
前記第1工程において、前記第1基板及び前記第2基板の各々の前記接合面側に酸化シリコンからなる第1中間層及び第2中間層をそれぞれ形成し、
前記第2工程において、前記第1基板に形成された前記第1中間層の前記接合面側の面をプラズマ処理して前記第1改質層を形成し、
前記第3工程において、前記第2基板に形成された前記第2中間層の前記接合面側の面をプラズマ処理して前記第2改質層を形成し、
前記第1中間層に形成された前記第1改質層の厚さを1.8nm以上2.2nm以下とし、
前記第2中間層に形成された前記第2改質層の厚さを1.8nm以上2.2nm以下とする、
請求項7に記載の接合基板の製造方法。
【請求項9】
前記第1工程において、前記第2基板の前記接合面側に酸化シリコンからなる第2中間層を形成し、
前記第2工程において、前記第1基板の前記接合面側の面をプラズマ処理して前記第1改質層を形成し、
前記第3工程において、前記第2基板に形成された前記第2中間層の前記接合面側の面をプラズマ処理して前記第2改質層を形成し、
前記第1基板の前記接合面側に形成された前記第1改質層の厚さを2.7nm以上3.2nm以下とし、
前記第2中間層に形成された前記第2改質層の厚さを1.8nm以上2.2nm以下とする、
請求項7に記載の接合基板の製造方法。
【請求項10】
前記第1工程において、前記第1基板の前記接合面側に酸化シリコンからなる第1中間層を形成し、
前記第2工程において、前記第1基板に形成された前記第1中間層の前記接合面側の面をプラズマ処理して前記第1改質層を形成し、
前記第3工程において、前記第2基板の前記接合面側の面をプラズマ処理して前記第2改質層を形成し、
前記第1中間層に形成された前記第1改質層の厚さを1.8nm以上2.2nm以下とし、
前記第2基板の前記接合面側に形成された前記第2改質層の厚さを2.2nm以上2.7nm以下とする、
請求項7に記載の接合基板の製造方法。
【請求項11】
前記アニール処理の温度が50℃以上300℃以下である、請求項7に記載の接合基板の製造方法。
【請求項12】
前記第1基板の厚さが100μm以上1000μm以下であり、
前記第2基板の厚さが10μm以上1000μm以下である、
請求項7に記載の接合基板の製造方法。
【請求項13】
前記第1基板と前記第2基板とを接合した後、前記第2基板の前記第2改質層が形成された側と反対側の面を研磨する工程を更に備える、請求項7に記載の接合基板の製造方法。
【請求項14】
前記第2基板の厚さが10μm以下となるように研磨する、請求項13に記載の接合基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接合基板、及び接合基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの移動体通信機器の進化に伴い弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)フィルタについても高性能化が要求されている。SAWフィルタを構成する弾性表面波素子には、例えば、電気機械結合係数の向上による広帯域化や周波数温度係数(TCF:Temperature Coefficient of Frequency)の絶対値の低減等が求められている。特許文献1には、弾性表面波素子に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、弾性表面波素子を作製する際は、水晶基板からなる第1基板と、タンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板からなる第2基板と、を接合した接合基板が用いられる。しかしながら、これらの基板の接合条件によっては、第1基板と第2基板との接合面にボイドが発生したり、これらの基板の接合強度が低くなったりする場合がある。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様にかかる接合基板は、第1基板と第2基板とが接合面を介して接合された接合基板である。前記第1基板は水晶基板であり、前記第2基板は、タンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板である。前記第1基板及び前記第2基板の少なくとも一方の前記接合面側には、酸化シリコンからなる中間層が形成されており、前記第1基板の前記接合面側には第1改質層が形成されており、前記第2基板の前記接合面側には第2改質層が形成されており、前記第1改質層及び前記第2改質層のうち前記中間層の上に形成されている改質層の厚さが1.8nm以上である。
【0006】
本開示の一態様にかかる接合基板の製造方法は、第1基板である水晶基板と第2基板であるタンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板とが接合面を介して接合された接合基板の製造方法であって、前記第1基板及び前記第2基板の少なくとも一方の前記接合面側に酸化シリコンからなる中間層を形成する第1工程と、前記第1基板の前記接合面側の面をプラズマ処理して第1改質層を形成する第2工程と、前記第2基板の前記接合面側の面をプラズマ処理して第2改質層を形成する第3工程と、前記第1改質層と前記第2改質層とを対向させた状態で、前記第1基板と前記第2基板とを仮接合する第4工程と、前記仮接合後の基板をアニール処理して前記第1基板と前記第2基板とを接合する第5工程と、を備え、前記第1改質層及び前記第2改質層のうち前記中間層の上に形成されている改質層の厚さを1.8nm以上とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示により、ボイドの発生を抑制しつつ、接合強度が高い接合基板、及び接合基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態にかかる接合基板の構成例1を示す断面図である。
【
図2】実施の形態にかかる接合基板の構成例2を示す断面図である。
【
図3】実施の形態にかかる接合基板の構成例3を示す断面図である。
【
図4】実施の形態にかかる接合基板の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図5】実施の形態にかかる接合基板の製造方法を説明するための模式図である。
【
図6】実施の形態にかかる接合基板の製造方法を説明するための模式図である。
【
図7】中間層(酸化シリコン)の膜種と改質層の厚さとの関係を示すグラフである。
【
図8】中間層(酸化シリコン)の膜種と接合強度との関係を示すグラフである。
【
図9】改質層の厚さと接合強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
図1は、実施の形態にかかる接合基板の構成例1を示す断面図である。
図1において上図は接合前の基板を示し、下図は接合後の接合基板を示している。
図1に示すように、本実施の形態にかかる接合基板1は、第1基板10と第2基板20とが接合面15を介して接合された接合基板である。ここで、第1基板10は支持基板として機能し、第2基板20は圧電素子として機能する。
【0010】
本実施の形態において第1基板10は水晶基板である。また、第2基板20は、タンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板である。第1基板10(支持基板)として水晶基板を用いることで、弾性表面波素子の周波数の温度特性を改善できる。また、第2基板20であるタンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板は、弾性波の伝搬速度が速く、電気機械結合係数が大きい。よって、第2基板20(圧電素子)としてタンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板を用いることで、弾性表面波素子の広帯域化を実現できる。
【0011】
第1基板10及び第2基板20の各々の接合面15側には中間層として第1中間層11及び第2中間層21がそれぞれ形成されている。第1中間層11及び第2中間層21はそれぞれ、酸化シリコンからなる中間層である。第1中間層11及び第2中間層21は、例えば、熱酸化法、スパッタ法、物理蒸着法、CVD法等を用いて形成できる。特に、緻密な膜が得られる成膜方法で、酸化シリコンからなる第1中間層11及び第2中間層21を形成することが好ましい。第1中間層11及び第2中間層21の厚さは、50nm以上10μm以下とすることができる。なお、本明細書では第1中間層11及び第2中間層21を総称して、中間層11、21とも記載する。
【0012】
また、第1基板10は接合面15側に第1改質層12を備える。第2基板20は接合面15側に第2改質層22を備える。すなわち、第1改質層12は、第1基板10に形成された第1中間層11の接合面15側の面に形成されている。第2改質層12は、第2基板20に形成された第2中間層21の接合面15側の面に形成されている。なお、本明細書では第1改質層12及び第2改質層22を総称して、改質層12、22とも記載する。
【0013】
そして本実施の形態では、第1改質層12及び第2改質層22の厚さを1.8nm以上、好ましくは1.8nm以上2.2nm以下としている。本実施の形態において第1改質層12及び第2改質層22は、基板表面が改質されて生成された非晶質層であり、プラズマ処理やイオン照射等によって形成できる。つまり、第1改質層12及び第2改質層22は、第1中間層11及び第2中間層21を構成する酸化シリコンを主成分とする非晶質層である。換言すると、第1改質層12及び第2改質層22は、非晶質酸化シリコンからなる層である。
【0014】
ここで、第1改質層12及び第2改質層22の厚さは、改質層を形成する際のプラズマ処理等の条件を同一とした場合であっても、下地である第1中間層11及び第2中間層21の成膜方法(換言すると、第1中間層11及び第2中間層21の膜質)が異なると、異なる場合がある。このため本実施の形態では、第1中間層11及び第2中間層21の成膜方法(換言すると、第1中間層11及び第2中間層21の膜質)に応じて、第1改質層12及び第2改質層22を形成する際のプラズマ処理等の条件をそれぞれ変更して最適化している。これにより、第1改質層12及び第2改質層22の厚さを1.8nm以上、好ましくは1.8nm以上2.2nm以下とすることができる。したがって、ボイドの発生を抑制しつつ、接合強度が高い接合基板を形成することができる。
【0015】
次に、本実施の形態にかかる接合基板の構成例2について説明する。
図2は、実施の形態にかかる接合基板の構成例2を示す断面図である。
図2に示す構成例2にかかる接合基板2は、
図1で説明した構成例1にかかる接合基板1と比較して、第1基板10が第1中間層11を備えない点が異なる。これ以外の構成については、
図1で説明した構成例1にかかる接合基板1と同様である。
【0016】
図2に示すように、構成例2にかかる接合基板2は、第1基板10と第2基板20とが接合面15を介して接合された接合基板である。第2基板20には第2中間層21が形成されている。第1改質層12は、第1基板10の接合面15側の面に形成されている。第2改質層22は、第2基板20に形成された第2中間層21の接合面15側の面に形成されている。
【0017】
そして構成例2にかかる接合基板2では、第1基板10の接合面15側に形成された第1改質層12の厚さを2.7nm以上3.2nm以下としている。また、第2中間層21に形成された第2改質層22の厚さを1.8nm以上、好ましくは1.8nm以上2.2nm以下としている。
【0018】
本実施の形態においても、第2中間層21の成膜方法(換言すると、第2中間層21の膜質)に応じて、第2改質層22を形成する際のプラズマ処理等の条件をそれぞれ変更して最適化している。これにより、第2改質層22の厚さを1.8nm以上、好ましくは1.8nm以上2.2nm以下とすることができる。また、第1基板10の接合面15側に第1改質層12を形成する際、プラズマ処理等の条件を最適化することで、第1改質層12の厚さを2.7nm以上3.2nm以下としている。したがって、ボイドの発生を抑制しつつ、接合強度が高い接合基板を形成することができる。
【0019】
次に、本実施の形態にかかる接合基板の構成例3について説明する。
図3は、実施の形態にかかる接合基板の構成例3を示す断面図である。
図3に示す構成例3にかかる接合基板3は、
図1で説明した構成例1にかかる接合基板1と比較して、第2基板20が第2中間層21を備えない点が異なる。これ以外の構成については、
図1で説明した構成例1にかかる接合基板1と同様である。
【0020】
図3に示すように、構成例3にかかる接合基板3は、第1基板10と第2基板20とが接合面15を介して接合された接合基板である。第1基板10には第1中間層11が形成されている。第1改質層12は、第1基板10に形成された第1中間層11の接合面15側の面に形成されている。第2改質層22は、第2基板20の接合面15側の面に形成されている。
【0021】
そして構成例3にかかる接合基板3では、第1中間層11に形成された第1改質層12の厚さを1.8nm以上、好ましくは1.8nm以上2.2nm以下としている。また、第2基板20の接合面15側に形成された第2改質層22の厚さを2.2nm以上2.7nm以下としている。
【0022】
本実施の形態においても、第1中間層11の成膜方法(換言すると、第1中間層11の膜質)に応じて、第1改質層12を形成する際のプラズマ処理等の条件をそれぞれ変更して最適化している。これにより、第1改質層12の厚さを1.8nm以上、好ましくは1.8nm以上2.2nm以下とすることができる。また、第2基板20の接合面15側に第2改質層22を形成する際、プラズマ処理等の条件を最適化することで、第2改質層22の厚さを2.2nm以上2.7nm以下としている。したがって、ボイドの発生を抑制しつつ、接合強度が高い接合基板を形成することができる。
【0023】
上述した構成例1~3にかかる接合基板1~3において、第1基板10の厚さは100μm以上1000μm以下であり、第2基板の厚さは10μm以上1000μm以下である。また、第1基板10と第2基板20とを接合した後、第2基板20の面を研磨してもよい。例えば、第2基板20の厚さが10μm以下となるように研磨してもよい。
【0024】
次に、本実施の形態にかかる接合基板の製造方法について説明する。
図4は、本実施の形態にかかる接合基板の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図5、
図6は、本実施の形態にかかる接合基板の製造方法を説明するための模式図である。以下では一例として、構成例1かかる接合基板1(つまり、第1基板10及び第2基板20の両方が中間層11、21を備える構成)の製造方法について説明するが、構成例2かかる接合基板2、及び構成例3かかる接合基板3についても同様の製造方法を用いて製造することができる。
【0025】
本実施の形態にかかる接合基板1を製造する際は、まず、
図4、
図5に示すように、第1基板10(水晶基板)を準備する(ステップS1)。一例を挙げると、第1基板10(水晶基板)の厚さは100μm以上1000μm以下である。次に、第1基板10の表面に第1中間層11である酸化シリコン(SiO
2)層を成膜する(ステップS2)。第1中間層11は、例えば、熱酸化法、スパッタ法、物理蒸着法、CVD法等を用いて形成できる。特に、緻密な膜が得られる成膜方法で第1中間層11を形成することが好ましい。第1中間層11の厚さは、50nm以上10μm以下とすることができる。その後、成膜した第1中間層11を研磨する(ステップS3)。このように、第1中間層11の表面を研磨することで、第1中間層11の表面を平坦にすることができる。
【0026】
次に、研磨後の第1基板10を洗浄する(ステップS4)。例えば、研磨後の第1基板10をAPM(Ammonia hydrogen Peroxide Mixture)やSPM(sulfuric acid-hydrogen peroxide mixture)などの薬液を用いて洗浄する。次に、第1基板10の第1中間層11側の面をプラズマ処理する(ステップS5)。第1基板10の第1中間層11側の面をプラズマ処理することで、第1基板10(第1中間層11)の表面に第1改質層12を形成できる。第1基板10(第1中間層11)の表面に形成する第1改質層12の厚さは、1.8nm以上、好ましくは1.8nm以上2.2nm以下とする。
【0027】
なお、本実施の形態では、プラズマ発光が安定している条件(プラズマ発光のばらつきが小さい条件)で第1基板10をプラズマ処理することで、第1基板10(第1中間層11)の表面に形成される第1改質層12の面内膜厚のばらつきを小さくできる。なお、プラズマ発光のばらつきは、プラズマ処理装置のチャンバー内の圧力とプラズマ出力(RF出力)を調整することで小さくできる。
【0028】
次に、第2基板20(タンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板)を準備する(ステップS6)。一例を挙げると、第2基板20の厚さは100μm以上1000μm以下である。次に、第2基板20の表面に第2中間層21である酸化シリコン(SiO2)層を成膜する(ステップS7)。第2中間層21は、例えば、熱酸化法、スパッタ法、物理蒸着法、CVD法等を用いて形成できる。特に、緻密な膜が得られる成膜方法で第2中間層21を形成することが好ましい。第2中間層21の厚さは、50nm以上10μm以下とすることができる。その後、成膜した第2中間層21を研磨する(ステップS8)。このように、第2中間層21の表面を研磨することで、第2中間層21の表面を平坦にすることができる。
【0029】
次に、研磨後の第2基板20を洗浄する(ステップS9)。例えば、研磨後の第2基板20をAPMやSPMなどの薬液を用いて洗浄する。次に、第2基板20の第2中間層21側の面をプラズマ処理する(ステップS10)。第2基板20の第2中間層21側の面をプラズマ処理することで、第2基板20(第2中間層21)の表面に第2改質層22を形成できる。第2基板20(第2中間層21)の表面に形成する第2改質層22の厚さは、1.8nm以上、好ましくは1.8nm以上2.2nm以下とする。
【0030】
なお、本実施の形態では、プラズマ発光が安定している条件(プラズマ発光のばらつきが小さい条件)で第2基板20をプラズマ処理することで、第2基板20(第2中間層21)の表面に形成される第2改質層22の面内膜厚のばらつきを小さくできる。なお、プラズマ発光のばらつきは、プラズマ処理装置のチャンバー内の圧力とプラズマ出力(RF出力)を調整することで小さくできる。
【0031】
なお、ステップS1~S5の処理とステップS6~S10の処理の順番は逆であってもよい。つまり、ステップS6~S10の処理を実施した後に、ステップS1~S5の処理を実施してもよい。また、ステップS1~S5の処理とステップS6~S10の処理は、並行して(同時に)実施してもよい。
【0032】
次に、第1基板10の第1改質層12と第2基板20の第2改質層22とを対向させた状態で、第1基板10と第2基板20とを仮接合する(ステップS11)。例えば、第1基板10と第2基板20の面内方向の位置(水平方向の位置)を調整した後、第1基板10と第2基板20とを垂直方向に移動させて、第1基板10と第2基板20とを仮接合する。
【0033】
その後、
図4、
図6に示すように、仮接合後の基板をアニール処理して第1基板10と第2基板20とを接合する(ステップS12)。アニール処理することで、第1基板10の第1改質層12と第2基板20の第2改質層22との接合を強固にでき、第1基板10と第2基板20とを強固に接合できる。例えば、アニール処理の温度は50℃以上300℃以下である。アニール処理は、例えば、仮接合後の基板を電気炉に入れて加熱することで実施できる。
【0034】
本実施の形態では、第1基板10と第2基板20とを接合した後、第2基板20の表面を研磨する工程(ステップS13)を更に備えていてもよい。研磨工程は例えば、化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)を用いて実施できる。例えば、第2基板20の厚さが10μm以下となるように研磨する。
【0035】
以上で説明した製造方法(基板接合方法)を用いることで、本実施の形態にかかる接合基板を製造することができる。
【0036】
なお、本実施の形態では、第1基板10の第1改質層12の厚さ、及び第2基板20の第2改質層22の厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて測定できる。
【0037】
例えば、透過型電子顕微鏡を用いて第1改質層12、第2改質層22の厚さを測定し、測定した第1改質層12、第2改質層22の厚さに応じてプラズマ処理の条件を変更することで、上記範囲の厚さを有する第1改質層12、第2改質層22を形成できる。
【0038】
また、本実施の形態では、透過型電子顕微鏡を用いることで、接合後の接合基板1の第1改質層12および第2改質層22の厚さを測定することができる。本実施の形態では、第1基板10と第2基板20とを接合する前後において、第1改質層12および第2改質層22の厚さの関係は変わらないと考えられる。
【0039】
なお、構成例2かかる接合基板2(つまり、第2基板20のみが中間層21を備える構成)を製造する場合は、
図4、
図5に示すステップS2、S3を省略する。また、構成例3かかる接合基板3(つまり、第1基板10のみが中間層11を備える構成)を製造する場合は、
図4、
図5に示すステップS7、S8を省略する。これ以外の製造工程については、構成例1にかかる接合基板1の製造工程と同様である。
【0040】
ところで、本願発明者らは、第1基板10及び第2基板20の表面にそれぞれ形成された第1中間層11及び第2中間層21の膜種に応じて、第1改質層12及び第2改質層22の厚さが異なることを見出した。つまり、同一条件でプラズマ処理をしても、第1中間層11及び第2中間層21の膜種に応じて、第1改質層12及び第2改質層22の厚さが異なることを見出した。
【0041】
図7は、中間層(酸化シリコン)の膜種と改質層の厚さとの関係を示すグラフである。
図7に示す膜種A~膜種Dはそれぞれ異なる気相法を用いて形成した。そして、膜種A~膜種Dの中間層(酸化シリコン)を同一条件でプラズマ処理して、改質層を形成し、改質層の膜厚を測定した。その結果、同一条件でプラズマ処理しても、中間層(酸化シリコン)の膜種に応じて、改質層の厚さが異なる結果となった。具体的には、膜種Dにおいて改質層の厚さが最も厚くなった。膜種A及び膜種Bでは改質層の厚さは同程度の厚さとなった。膜種Cでは改質層の厚さが最も薄くなった。膜種Dと膜種Cとでは改質層の厚さの差が約1.4nm程度と大きな差があった。
【0042】
図8は、中間層(酸化シリコン)の膜種と接合強度との関係を示すグラフである。
図8では、中間層(酸化シリコン)がない場合の接合強度、膜種Bの中間層(酸化シリコン)の場合の接合強度、膜種Cの中間層(酸化シリコン)の場合の接合強度、及び膜種Dの中間層(酸化シリコン)の場合の接合強度を示している。
図8に示すように、中間層(酸化シリコン)がない場合、及び膜種B~Dの中間層(酸化シリコン)の場合の各々において、接合強度が異なる結果となった。
【0043】
図9は、改質層の厚さと接合強度との関係を示すグラフである。
図9では、膜種B~Dの中間層に形成された改質層の厚さと接合強度との関係を示している。
図9に示すように、改質層の厚さと接合強度は正の相間があった。
図9に示すように、0.50よりも大きい接合強度を得るためには、改質層の厚さを1.8nm以上とする必要があることがわかった。
【0044】
本実施の形態にかかる接合基板では、中間層(酸化シリコン)の表面に形成される改質層の厚さを1.8nm以上とすることで、ボイドの発生を抑制しつつ、接合強度が高い接合基板を得ることができる。また、接合基板の接合強度を高めることで、研磨工程において接合基板が剥離することを抑制できる。
【0045】
具体的には、
図1に示した構成例1にかかる接合基板1では、第1基板10及び第2基板20の両方にそれぞれ第1中間層11及び第2中間層21を設けている。よって、第1中間層11及び第2中間層21の表面に形成される第1改質層12及び第2改質層22の厚さをそれぞれ、1.8nm以上とすることで、ボイドの発生を抑制しつつ、接合基板の接合強度を高くすることができる。つまり、
図1に示した構成例1にかかる接合基板1では、第1基板10及び第2基板20の両方に中間層(酸化シリコン)11、21が形成されているので、中間層(酸化シリコン)11、21の表面に形成される改質層12、22の膜厚を1.8nm以上としている。
【0046】
また、
図2に示した構成例2にかかる接合基板2では、第2基板20に第2中間層21を設けている。よって、第2中間層21の表面に形成される第2改質層22の厚さを1.8nm以上とすることで、ボイドの発生を抑制しつつ、接合基板の接合強度を高くすることができる。つまり、
図2に示した構成例2にかかる接合基板2では、第2基板20のみに中間層(酸化シリコン)21を形成しているので、第2基板20の中間層(酸化シリコン)21の表面に形成される改質層22の膜厚を1.8nm以上としている。このとき、第1基板10の接合面15側に形成された第1改質層12の厚さは、2.7nm以上3.2nm以下とする。
【0047】
また、
図3に示した構成例3にかかる接合基板3では、第1基板10に第1中間層11を設けている。よって、第1中間層11の表面に形成される第1改質層12の厚さを1.8nm以上とすることで、ボイドの発生を抑制しつつ、接合基板の接合強度を高くすることができる。つまり、
図3に示した構成例3にかかる接合基板3では、第1基板10のみに中間層(酸化シリコン)11を形成しているので、第1基板10の中間層(酸化シリコン)11の表面に形成される改質層12の膜厚を1.8nm以上としている。このとき、第2基板20の接合面15側に形成された第2改質層22の厚さは、2.2nm以上2.7nm以下とする。
【0048】
なお、改質層12、22の膜厚は、中間層11、21の膜種に応じてプラズマ処理等の条件をそれぞれ変更することで調整することができる。
【0049】
また、本実施の形態では、第1基板10及び第2基板20の少なくとも一方の表面に中間層11、21を形成することで、第1基板10及び第2基板20の影響、つまり、改質層12、22への第1基板10及び第2基板20の影響をキャンセルすることができる。よって、第1基板10及び第2基板20の選択肢を広げることができる。また、中間層11、21の膜種に応じてプラズマ処理等の条件をそれぞれ変更することで、改質層12、22の膜厚を調整することができるので、所望の改質層12、22を得るための条件出しを容易にすることができる。
【実施例0050】
次に、実施例について説明する。
【0051】
<サンプルの作製>
図4~
図6で説明した方法を用いて各サンプルを作製した。具体的には、
図2に示した構成例2かかる接合基板2(つまり、第2基板20のみが中間層21を備える構成)を作製した。なお、構成例2にかかる接合基板2を作製する際は、
図4、
図5に示すステップS2、S3を省略した。
【0052】
まず、第1基板10として厚さ400μmの水晶基板を準備した。次に、APM溶液に浸漬して10分間洗浄をすることで水晶基板を洗浄した。
【0053】
次に、水晶基板をプラズマ処理して、水晶基板の表面に厚さ3.0nmの改質層を形成した。プラズマ処理は減圧雰囲気下で容量結合プラズマを生成することで行った。プラズマ処理の条件はRF出力を100Wとし、改質層膜厚が3.0nmとなるよう処理時間を調整した。
【0054】
また、第2基板20として厚さ200μmのタンタル酸リチウム基板(LT基板)を準備した。次に、タンタル酸リチウム基板の表面に中間層(第2中間層)である酸化シリコン(SiO2)層を成膜した。中間層は、4種類の膜種の中間層をそれぞれ形成した。膜種A~膜種Dはそれぞれ異なる気相法を用いて形成した。膜種が異なる各々のサンプルを以降、サンプルA~Dと記載する。なお、各々の中間層の厚さは、800nmとした。その後、成膜した中間層を研磨した。
【0055】
次に、研磨後のタンタル酸リチウム基板をAPM溶液に浸漬して10分間洗浄をすることで洗浄した。次に、タンタル酸リチウム基板をプラズマ処理して、タンタル酸リチウム基板の中間層の表面に改質層を形成した。プラズマ処理は減圧雰囲気下で容量結合プラズマを生成することで行った。プラズマ処理の条件はRF出力を100Wとした。また、サンプルA~Dで、プラズマ処理の条件は同一条件とした。
【0056】
次に、水晶基板の改質層とタンタル酸リチウム基板の改質層とを対向させた状態で、水晶基板とタンタル酸リチウム基板とを接触させることで仮接合した。その後、仮接合後の基板を150℃でアニール処理して水晶基板とタンタル酸リチウム基板とを接合し、接合基板を形成した。
【0057】
また、タンタル酸リチウム基板の表面に中間層を形成しないサンプル(中間層なし)を別途作製した。
【0058】
<サンプルの評価>
タンタル酸リチウム基板の中間層の表面に改質層を形成した後、サンプルA~Dの改質層の膜厚をそれぞれ測定した。改質層の膜厚は、透過型電子顕微鏡を用いて測定した。
図7は、中間層(酸化シリコン)の膜種A~Dと改質層の厚さとの関係を示すグラフである。
図7に示すように、同一条件でプラズマ処理しても、中間層(酸化シリコン)の膜種A~Dに応じて、改質層の厚さが異なる結果となった。具体的には、膜種Dにおいて改質層の厚さが最も厚くなった。膜種A及び膜種Bでは改質層の厚さは同程度の厚さとなった。膜種Cでは改質層の厚さが最も薄くなった。膜種Dと膜種Cとでは改質層の厚さの差が約1.4nm程度と大きな差があった。
【0059】
また、上述のようにして作製したサンプルA~D、及び中間層(SiO2膜)なしのサンプルについて、接合強度を調べた。接合強度は、ブレード法を用いて測定した。ブレード法の評価方法は、参考文献(Materials Science and Engineering R25 (1999) p. 1-88)に記載の方法と同様の方法を用いた。
【0060】
図8に、中間層(SiO
2膜)なしのサンプルの接合強度、及びサンプルB~Dの接合強度を示す。
図8に示すように、中間層(SiO
2膜)なしのサンプル、及びサンプルB~Dの各々において、接合強度が異なる結果となった。
【0061】
図9は、サンプルB~Dの改質層の厚さと接合強度との関係を示すグラフである。
図9に示すように、改質層の厚さと接合強度は正の相間があった。
図9に示すように、0.50よりも大きい接合強度を得るためには、改質層の厚さを1.8nm以上とする必要があることがわかった。
【0062】
また、上述のようにして作製したサンプルA~Dについて、ボイドの発生の有無を調べた。ボイドの有無は微分干渉光学顕微鏡を用いて調査した。その結果、サンプルA~Dにおいてボイドの発生が基準値以下となり、ボイドの発生を抑制できた。
【0063】
上記結果から、改質層の厚さが1.8nm以上であるサンプルDにおいて、ボイドの発生を抑制しつつ、接合強度を基準値以上とすることができた。
【0064】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。