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  • 特開-アンカーボルト用座金 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103138
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】アンカーボルト用座金
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/00 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
E02D27/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007314
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】516152952
【氏名又は名称】構法開発株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507011611
【氏名又は名称】株式会社進富
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】大西 克則
(72)【発明者】
【氏名】依田 佳幸
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046AA01
2D046AA03
(57)【要約】
【課題】 基礎の縁端寸法を大きくしたり、アンカーボルトの径を大きくする必要がなく、従来の基礎施工治具を使用することができ、安価で固定する構造体からの水平剪断力を受けるアンカーボルトと基礎コンクリートの固定強度を合理的に確保することができるアンカーボルト用座金を提供する。
【解決手段】 構造物の基礎に埋設される、ねじ部21及び軸部22を有するアンカーボルト2に装着するアンカーボルト用座金1であって、前記アンカーボルトを挿通する挿通孔11と、脱気孔12を有する天板部10と、該天板部の縁部に沿って延設された側面部13を有し、挿通孔にアンカーボルトのねじ部又は軸部に装着した状態で、側部が基礎に埋設されることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の基礎に埋設される、ねじ部及び軸部を有するアンカーボルトに装着するアンカーボルト用座金であって、
前記アンカーボルトを挿通する挿通孔と、脱気孔を有する天板部と、
該天板部の縁部に沿って延設された側面部を有し、
前記挿通孔にアンカーボルトのねじ部又は軸部に装着した状態で、前記側部が基礎に埋設されることを特徴とするアンカーボルト用座金。
【請求項2】
前記天板部の上視面形状が円形であることを特徴とする請求項1に記載のアンカーボルト用座金。
【請求項3】
前記アンカーボルトの前記基礎から突出する突出部の前記軸部側に調整部が設けられるとともに、先端側にねじ部が設けられ、前記調整部の前記ねじ部側の端部にテーパー部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアンカーボルト用座金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカーボルト用座金に関し、詳しくは、建造物の基礎の施工時に用いるアンカーボルトに装着するアンカーボルト用座金に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の基礎の施工時に用いる一般的なアンカーボルトは、引抜力に対抗するとともに、剪断力は固定する構造体からの鉛直抗力により、コンクリートと構造体の摩擦力で対抗するので、建築基準法(建築基準法告示1456号)の規定により、構造体の孔クリアランスはボルト径+5mmまでと定められている。
【0003】
しかし、固定する構造体からの剪断力がコンクリートと構造体の摩擦より大きい場合、孔クリアランス5mmの範囲で滑り、構造体の孔がアンカーボルトに当接して剪断力をアンカーボルトが受けることが考慮される。
【0004】
一方、構造体からの剪断力を受けたアンカーボルトは、コンクリート基礎に埋め込まれているため、アンカーボルトとコンクリートの面際に剪断力が集中し、コンクリートが支圧破壊することが考慮される。また、コンクリート基礎の縁端が近い場合は水平方向にコーン破壊が発生する可能性がある。
【0005】
このように、アンカーボルトに対して、固定する構造体からの剪断力がコンクリートと構造体の摩擦力より大きい場合、通常、アンカーボルトとの孔クリアランスが小さい座金プレートを溶接したり、孔クリアランス部分にモルタルなどを充填している(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-113238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の提案のように、現地で溶接したりモルタルを充填する方法は、天候等の影響を受けるため施工性に問題がある。
【0008】
このような場合には、基礎の縁端寸法を大きくしたり、アンカーボルトの径を大きくすることによる対策が考えられるが、これらの対策は基礎設計の変更やアンカーボルトの変更が必要となるため現実的ではない。
【0009】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、基礎の縁端寸法を大きくしたり、アンカーボルトの径を大きくする必要がなく、従来の基礎施工治具を使用することができ、固定する構造体からの水平剪断力を受けるアンカーボルトと基礎コンクリートの固定強度を安価で合理的に確保することができるアンカーボルト用座金を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のアンカーボルト用座金は、上記の技術的課題を解決するためになされたものであって、以下のことを特徴としている。
【0011】
第1に、本発明のアンカーボルト用座金は、構造物の基礎に埋設される、ねじ部及び軸部を有するアンカーボルトに装着するアンカーボルト用座金であって、前記アンカーボルトを挿通する挿通孔と、脱気孔を有する天板部と、該天板部の縁部に沿って延設された側面部を有し、
前記挿通孔にアンカーボルトのねじ部又は軸部に装着した状態で、前記側部が基礎に埋設されることを特徴とする。
第2に、上記第1の発明のアンカーボルト用座金において、前記天板部の上視面形状が円形であることが好ましい。
第3に、上記第1又は第2の発明のアンカーボルト用座金において、前記アンカーボルトの前記基礎から突出する突出部の前記軸部側に調整部が設けられるとともに、先端側にねじ部が設けられ、前記調整部の前記ねじ部側の端部にテーパー部が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアンカーボルト用座金によれば、基礎の縁端寸法を大きくしたり、アンカーボルトの径を大きくする必要がなく、従来の基礎施工治具を使用することができ、固定する構造体からの水平剪断力を受けるアンカーボルトと基礎コンクリートの固定強度を安価で合理的に確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のアンカーボルト用座金の一実施形態を示す概略図であり、(A)は上視面図、(B)は(A)のA-A断面図である。
図2】アンカーボルト用座金を接合したアンカーボルトの施工状態を示す透視側面図であり、(A)はナット固定、(B)は溶接固定を示す概略図である。
図3】本発明のアンカーボルト用座金を適用可能な合芯アンカーボルトの側面図である。
図4】本発明のアンカーボルト用座金による支圧強度の説明概略図であり、(A)は上視面図、(B)は透視側面図である。
図5】一般的なアンカーボルトによる支圧強度の説明概略図である。
図6】アンカーボルト用座金の側面部のみを基礎に埋設した施工状態を示す透視側面図である。
図7】アンカーボルト用座金の天板部と側面部を基礎に埋設した施工状態を示す透視側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、本発明のアンカーボルトについて図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明のアンカーボルト用座金の一実施形態を示す概略図であり、(A)は上視面図、(B)は(A)のA-A断面図である。
【0015】
本発明のアンカーボルト用座金1は、構造物の基礎4に埋設されるアンカーボルト2に装着する座金である。本実形態のアンカーボルト用座金1は、天板部10と、天板部10の縁部に沿って延設された側面部13を備えており、円形椀状の形状を有している。
【0016】
天板部10の略中央部には、アンカーボルト2を挿通するための挿通孔11が設けられている。挿通孔11の径は、アンカーボルト2が挿通、固定できれば特に限定されるものではないが、安定性等の観点からアンカーボルト2の直径+1mm以下の孔径が好ましい。
【0017】
また、天板部10に設けられた挿通孔11の周囲には脱気孔12が設けられている。脱気孔12は、基礎4のコンクリート打設施工の際に、アンカーボルト用座金1内にコンクリートを十分に充填させるためのものである。脱気孔12の形状や大きさ、数は、アンカーボルト用座金1の強度を十分に保持でき、さらに脱気できれば特に限定されるものではなく、適切な形状、大きさのものを1つ或いは複数設けることができる。
【0018】
天板部10の縁部に沿って延設される側面部13は、基礎施工の際にコンクリートに埋設される部分である。側面部13の幅は、構造体5からの剪断力を受ける部分であるため広いほど望ましいが、アンカーボルト用座金1内へのコンクリートの充填性や、取り扱い性を考慮して決定することが望ましい。構造体5からの剪断力を側面部13で受けることによりアンカーボルト2の径を大きくすることなく、アンカーボルト2と基礎コンクリートの固定強度を保持することが可能となる。
【0019】
上記構成の実施形態のアンカーボルト用座金1は、挿通孔11にアンカーボルト2のねじ部21又は軸部22に挿通、装着して用いられる。具体的には、例えば、図2(A)に示すように、アンカーボルト2に対してナット3により固定したり、図2(B)に示すように、アンカーボルト2に溶接して固定することができる。本発明のアンカーボルト用座金1が適用可能なアンカーボルト2は、基礎4の施工に用いられる、強度、引抜力、剪断力に対応した径と強度区分、長さを有する一般的なアンカーボルトを例示することができる。
【0020】
また、本発明のアンカーボルト用座金1は、上記通常のアンカーボルト2のほか、他の機能を有するアンカーボルト2に対して装着することができる。例えば、複数のアンカーボルト2と構造体5を接合する場合、孔クリアランス1mm以下では施工が困難となる場合があるので、接合部材をストレスなく容易に挿入し、固定でき、剪断力と軸力ともに必要強度を確保することができる合芯アンカーボルト2を例示することができる。
【0021】
このようなアンカーボルト2としては、例えば、図3に示すような、アンカーボルト2の基礎4から突出する突出部25の軸部22側に調整部23が設けられるとともに、先端側にねじ部21が設けられ、調整部23のねじ部21側の端部にテーパー部24が設けられた構成の合芯アンカーボルト2を用いることができる。上記構成のアンカーボルト2に本発明のアンカーボルト用座金1を合わせて用いることにより、アンカーボルト2に対して接合部材をストレスなく容易に挿入することができるとともに、基礎4コンクリートの養生期間が短い接合施工時に、構造体5の変形を矯正する際にかかる剪断力に対し、アンカーボルト用座金1によるコンクリート補強効果を有効に機能させることができる。
【0022】
本実形態のアンカーボルト用座金1は、アンカーボルト2に装着された状態で、図2に示すように側面部13を基礎4に埋設するように設置される。
【0023】
通常、コンクリート基礎4に埋め込まれた一般的なアンカーボルトが剪断力を受けた場合、アンカーボルトとコンクリートの面際に剪断力が集中し、コンクリートが支圧破壊する。また、コンクリート基礎4の縁端が近い場合は、図4に示すように、水平方向にコーン破壊線6に沿ってコーン破壊が発生する。このとき、アンカーボルト2の直径の幅でコンクリートに支圧がかかる。また、図5の斜線断面積(Agc面積)が大きくなると、水平方向のコーン破壊強度が大きくなる。
【0024】
これに対して、コンクリートによる基礎施工に本願発明のアンカーボルト用座金1を用いた場合、アンカーボルト用座金1の内側にコンクリートが充填され、椀形状のアンカーボルト用座金1の変形がコンクリートにより拘束されるので、通常の座金を厚板にしたりアンカーボルト径を太くする必要がない。よって、天板部10の面積が実質的なアンカーボルト2の径に見なされるとともに、側面部13の幅がその径の長さに見なされる。これにより、図4のコンクリート表面からの幅寸法(h)及び径寸法(w)部分が支圧面積になり、コーン破壊線6からの破線部分の面積がAgcとなる。即ち、いずれの面積も、アンカーボルト用座金1により大きな面積を得ることが可能となる。
【0025】
以下に、本発明のアンカーボルト用座金1を用いた基礎施工について詳述する。まず、基礎4の表面となる位置を考慮して、アンカーボルト2の基礎4の表面からの突出部25の出寸法及び、アンカーボルト2の芯の位置決め用のアンカー固定金具42を用いて、図2に示すように、基礎型枠41に本発明のアンカーボルト用座金1を装着したアンカーボルト2をセットする。
【0026】
ここで、アンカーボルト2に対するアンカーボルト用座金1の装着は、ナット3による固定であっても溶接31による固定であってもかまわない。ナット3による固定では、まず、アンカーボルト2のねじ部21の所定位置までナット3を螺合させ、アンカーボルト用座金1とアンカー固定金具42を挿通して、さらに上からナット3を螺合させ、一対のナット3により上下から挟み込むように固定する。構造体5の孔とネジ山の支圧強度は面接触しないので低減される。
【0027】
溶接31による固定では、アンカーボルト2の軸部22の所定の位置に、予めアンカーボルト用座金1を溶接しておき、アンカー固定金具42にナット3+アンカーボルト用座金1で固定する。
【0028】
ここで、構造体5との孔クリアランスが1mm以下で、構造体5からの水平力をアンカーボルト2に伝達される接合の場合、構造体5と基礎4の接触面の摩擦力は考慮する必要がないので、アンカーボルト用座金1と構造体5を直接接するように設置することができる。即ち、アンカーボルト用座金1の天板部10の位置を、図6に示すように、基礎4表面と面一になるように位置決めし、側面部13のみが基礎4に埋設されるように設定することができる。
【0029】
一方、構造体5との孔クリアランスが、例えば5mm程度の場合、構造体5からの水平力を、構造体5からの鉛直抗力による摩擦力で伝達されるため、図7に示すように、アンカーボルト用座金1の天板部10と側面部13を共に基礎4表面から下方に埋設するように位置決めすることが好ましい。
【0030】
通常、アンカーボルト用座金1と構造体5の接触面の摩擦係数μは0.2程度であり、摩擦係数μを構造計算に用いる0.4にするには、高力ボルト摩擦接合のような高度な加工と揚上などの管理が必要であり、地際の基礎工事では困難となる。そのため、構造体5の鉛直抗力がアンカーボルト用座金1に直接かからないようにコンクリート面下に埋設するのが望ましくなる。なお、構造体5とアンカーボルト用座金1に挟まれるコンクリートは捨穴を介して連続体にするのが望ましい。
【0031】
次に、上記条件でアンカーボルト用座金1を固定したアンカーボルト2を設置した状態で、所定の位置までコンクリートを打設し、脱型後に、アンカーボルト2の突出部25を構造体5の接合孔に挿通してナット3で接合する。これによりアンカーボルト2を埋設した基礎施工が完了する。
【0032】
以上、実施形態に基づき本発明のアンカーボルト用座金1を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。
【0033】
例えば、上記実施形態では、アンカーボルト用座金1の上視面形状を円形としたが、多角形や楕円等の他の形状であってもかまわない。また、上記実施形態では、アンカーボルト用座金1をアンカーボルト2に固定した状態で、側面部13が天板部10から下方に向くように接続しているが、例えば、天板部10を基礎4に深く埋設して設置するような場合には、側面部13を天板部10から上方に向くように接続して用いることもできる。
【0034】
以上の説明のとおり、上記構成のアンカーボルト用座金によれば、基礎の縁端寸法を大きくしたり、アンカーボルトの径を大きくすることなく、従来の基礎施工治具を使用することができ、固定する構造体からの水平剪断力を受けるアンカーボルトと基礎コンクリートの固定強度を安価で合理的に確保することが可能となる。
【符号の説明】
【0035】
1 アンカーボルト用座金
10 天板部
11 挿通孔
12 脱気孔
13 側面部
2 アンカーボルト
21 ねじ部
22 軸部
23 調整部
24 テーパー部
25 突出部
3 ナット
31 溶接
4 基礎
41 基礎型枠
42 アンカー固定金具
43 鉄筋
5 構造体
6 コーン破壊線
61 コーン破壊幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7