(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010315
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】輪列受の加飾方法、輪列受、および時計
(51)【国際特許分類】
G04B 29/02 20060101AFI20240117BHJP
G04B 45/02 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
G04B29/02 B
G04B45/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111580
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】菊地 美紗妃
(72)【発明者】
【氏名】原 和幸
(72)【発明者】
【氏名】星野 一憲
(57)【要約】
【課題】優れた美観の加飾部を有する輪列受の加飾方法を提供すること。
【解決手段】加飾方法は、受石を有する輪列受の加飾方法であって、前記輪列受の第1面に複数本の溝部を形成する切削工程と、隣り合う前記溝部間に生じる頂部を平滑化する平滑化工程と、前記溝部および前記平滑化された平滑部を含む加飾部を粗面化する粗面化工程と、前記第1面から前記第1面とは反対側の第2面に貫通する石受孔を形成する穿孔工程とを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受石を有する輪列受の加飾方法であって、
前記輪列受の第1面に複数本の溝部を形成する切削工程と、
隣り合う前記溝部間に生じる頂部を平滑化する平滑化工程と、
前記溝部および前記平滑化された平滑部を含む加飾部を粗面化する粗面化工程と、
前記第1面から前記第1面とは反対側の第2面に貫通する石受孔を形成する穿孔工程と、を含む、
輪列受の加飾方法。
【請求項2】
前記石受孔に前記第2面から前記受石を埋め込む埋込工程を、さらに含む、
請求項1に記載の輪列受の加飾方法。
【請求項3】
前記切削工程は、ボールエンドミルを用いて行われ、
複数本の前記溝部は、等間隔に形成される、
請求項1に記載の輪列受の加飾方法。
【請求項4】
前記平滑化工程は、スクエアエンドミルを用いて行われる、
請求項1に記載の輪列受の加飾方法。
【請求項5】
前記粗面化工程は、ブラシを用いて行われる、
請求項1に記載の輪列受の加飾方法。
【請求項6】
前記加飾部に、レーザー照射により彫刻を施すレーザー照射工程を、さらに含む、
請求項1に記載の輪列受の加飾方法。
【請求項7】
第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有し、
前記第1面に形成された複数本の溝部と、
隣り合う前記溝部間における頂部を平滑化した平滑部と、
前記第1面から前記第2面に貫通する石受孔と、
前記石受孔に埋め込まれる受石と、を備え、
前記第1面において、複数本の前記溝部は、等間隔に形成されており、
前記溝部の底部における面粗度は、前記平滑部の面粗度よりも小さいか、同じである、
輪列受。
【請求項8】
前記第1面において、複数本の前記溝部は、枯山水を表現した波状をなしている、
請求項7に記載の輪列受。
【請求項9】
前記溝部の底部における面粗度は、前記平滑部の面粗度よりも小さい、
請求項7に記載の輪列受。
【請求項10】
前記溝部の底部における面粗度は、前記平滑部の面粗度と同じである、
請求項7に記載の輪列受。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか一項に記載の輪列受を有する、
時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輪列受の加飾方法、輪列受、および当該輪列受を備えた時計に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、裏蓋や、ムーブメントおよび受け等に、多数の円形連続模様からなるツゲ模様を形成するツゲ模様加工機が開示されている。当該文献によれば、当該加工機を用いた加工方法によれば、加工時間を短縮することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、輪列受に対して特許文献1の加工方法を適用した場合、美観を損ね兼ねない虞があった。詳しくは、輪列受には、歯車などの回動部品の軸を受ける受石が埋め込まれるが、当該受石は、模様を加工した後、換言すれば、加飾した後に打ち込まれるため、当該打ち込み時に、加飾部にダメージを与えてしまう虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願に係る一態様の輪列受の加飾方法は、受石を有する輪列受の加飾方法であって、前記輪列受の第1面に複数本の溝部を形成する切削工程と、隣り合う前記溝部間に生じる頂部を平滑化する平滑化工程と、前記溝部および前記平滑化された平滑部を含む加飾部を粗面化する粗面化工程と、前記第1面から前記第1面とは反対側の第2面に貫通する石受孔を形成する穿孔工程と、を含む。
【0006】
本願に係る一態様の輪列受は、第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有し、前記第1面に形成された複数本の溝部と、隣り合う前記溝部間における頂部を平滑化した平滑部と、前記第1面から前記第2面に貫通する石受孔と、前記石受孔に埋め込まれる受石と、を備え、前記第1面において、複数本の前記溝部は、等間隔に形成されており、前記溝部の底部における面粗度は、前記平滑部の面粗度よりも小さいか、同じである。
【0007】
本願に係る一態様の時計は、上記の輪列受と、分針および時針を含む指針とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】輪列受の製造方法の流れを示すフローチャート図。
【
図10】製造過程における輪列受の一態様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態1
***時計の概要***
図1は、本実施形態に係る時計の背面図である。
本実施形態の時計100は、3針式のアナログ式の腕時計であり、
図1は、その背面の平面図である。
時計100は、所謂シースルーバックの腕時計であり、胴1に透明な裏蓋2が取付けられているため、内部の機構が観察可能な構成となっている。
【0010】
胴1は、ケースであり、チタンや、ステンレスなどの硬質金属から構成されている。胴1は略円形であり、胴1のリング状の壁の内周に裏蓋2が勘合されている。また、胴1の側面には、リュウズ16が設けられている。裏蓋2は、サファイヤガラスなど、透明なガラス部材から構成されている。
【0011】
胴1の内部には、指針を駆動するためのムーブメント10が収納されている。
図1では、裏蓋2を介してムーブメント10の受け板である輪列受4が観察されている。
輪列受4には、波状をなした複数本の溝部7を含む加飾部20が形成されている。なお、加飾部20の詳細は後述する。輪列受4の12時側には、略円形の切欠き部が設けられており、当該切欠き部からは円形の香箱15が観察されている。また、輪列受4には、複数の貫通孔5が設けられている。貫通孔5は、受石9が埋め込まれた石受孔5a(
図2)と、単純な孔である貫通孔5bとに区分けされる。貫通孔5bからは、輪列を構成する歯車の一部が観察されるようになっている。
【0012】
また、輪列受4には、輪列受4を固定するための複数のネジ8も配置されている。
時計100では、複数本の溝部7を含む加飾部20、複数の受石9、貫通孔5や、ネジ8などにより、輪列受4に枯山水を模したデザインを施している。詳しくは、複数本の溝部7により川の流れを波状に表現し、受石9、貫通孔5、ネジ8により川辺や、山の景色を表現している。また、輪列受4の6時側には、ロゴ19が彫刻されている。
図1では、WAVEという文字がレーザー加工により彫刻されているが、この文字に構成に限定するものではなく、商品仕様やデザインに応じて適宜設定すれば良い。
【0013】
図2は、
図1におけるb-b断面の断面図であり、複数の受石9や、貫通孔5bを通る部分の断面を取っている。
図2に示すように、ムーブメント10は、地板3と輪列受4との間に、複数の歯車14を含む輪列などを備えて構成されている。
地板3の一方の面には、文字板18が取り付けられており、文字板18の中央には、秒針11、分針12、時針13が取付けられている。なお、指針は、分針12および時針13を含んでいれば良い。
【0014】
歯車14には、回転軸6が設けられており、回転軸6は輪列受4に埋め込まれた受石9に挿入され、回転可能に支持されている。詳しくは、輪列受4に形成された石受孔5aに受石9が挿入されており、当該受石9の中央の孔に、回転軸6が挿入される。なお、受石9のことを穴石ともいう。また、地板3側にも同様に受石9が設けられており、複数の歯車14は、地板3側の受石9と、輪列受4側の受石9とにより、回転可能に支持されている。輪列受4における裏蓋2側の面を第1面4aという。第1面4aとは反対側の面を第2面4bという。第1面4aには、前述した複数本の溝部7(
図1)を含む加飾部20が形成される。
また、詳しくは後述するが、受石9は、第2面4bから打ち込まれる。換言すれば、輪列受4は、第1面4aから第2面4bに貫通する石受孔5aと、石受孔5aに埋め込まれる受石9とを備える。
【0015】
***加飾部の構成***
図3は、
図1におけるc-c断面の拡大断面図である。
図3に示すように、加飾部20は、輪列受4の第1面4aに形成された複数本の溝部7と、隣り合う溝部7間における頂部を平滑化した平滑部17などから構成されている。
好適例において、輪列受4は真鍮製の板部材を用いている。なお、この材質に限定するものではなく、同様の物性を有する金属部材であれば良い。
【0016】
隣り合う溝部7の間隔pは、好適例では約1.5mmとする。換言すれば、第1面4aにおいて、複数本の溝部7は、略等間隔に形成されている。
平滑部17は、溝部7をボールエンドミルで加工した際に、隣り合う溝部7間に生じるエッヂ部をスクエアエンドミルにより平滑化した部位である。好適例では、平滑部17の幅wは、約0.2mmとする。そして、溝部7の最深部から平滑部17までの高さtは、好適例では約0.08mmとする。なお、これらの寸法は一例であり、加飾部20のデザインに応じて適宜設定すれば良い。
【0017】
また、溝部7、平滑部17を含む加飾部20には、後述の粗面化処理が施されているため、溝部7の底部における面粗度は、平滑部17の面粗度よりも小さいか、略同じとしている。これにより、切削加工による金属光沢を抑えた、つや消しで立体感のある加飾部20を実現している。
【0018】
***輪列受の製造方法***
図4は、加工装置の概要図である。
図5は、輪列受の製造方法の流れを示すフローチャート図である。
図6~
図10は、製造過程における輪列受の断面図であり、
図3に対応している。
ここでは、輪列受4の製造方法について、加飾部20を主体に説明する。換言すれば、輪列受4の加飾方法について説明する。
【0019】
まず、
図4を用いて、輪列受4の製造に用いられる加工装置180の概要について説明する。加工装置180は、マシニングセンターであり、XYテーブル91、制御装置93、ツール92などから構成されている。
XYテーブル91は、加工テーブルであり、テーブル上にセットされた被加工部材を、制御装置93の指示に従いX方向、Y方向に移動させる。
図4では、XYテーブル91上に、複数の輪列受4が面付された短尺基板41がセットされている。
【0020】
制御装置93は、加工装置180のコントローラーであり、1つ又は複数のプロセッサーを含んで構成され、各部の動作を統括制御する。制御装置93は、不揮発性メモリーを含む記憶部94を備えている。記憶部94には、加工装置180の動作を制御する制御プログラム、後述の加飾プログラムや、各種データなどが記憶されている。加飾プログラムには、溝部7、平滑部17を含む加飾部20を形成するための順序と内容が規定されており、各種データには、波状の走査パターンデータなどが記憶されている。
ツール92は、加工用の刃具や、ブラシなどのツールであり、制御装置93の指示に従い自動的に取り換えられる。
図4では、ツール92として最初に用いられるボールエンドミルが取り付けられている。ツール92は、制御装置93の指示に従いY軸方向に移動し、回転および回転停止する。
【0021】
ステップS10では、加工装置180に、複数の輪列受4が面付された短尺基板41がセットされる。そして、操作者が制御装置93に対して、加飾プログラムを起動する操作を行う。これにより、加飾プログラムが起動し、以下のステップS11~ステップS14までの加工が行われる。
【0022】
ステップS11では、輪列受4の第1面4aに複数本の溝部7を形成する。詳しくは、ツール92としてボールエンドミルを用いて、複数本の溝部7を波状(
図1)に形成する。好適例では、R5mmのボールエンドミルを用いて、溝部7間の間隔pを約1.5mmとして形成する。なお、この寸法に限定するものではなく、デザインに応じて、適宜寸法を調整すれば良い。この工程は切削工程に相当し、加工が終了した時点では、
図6に示すように、隣り合う溝部7間の頂部は、鋭利なエッヂ状となっている。
【0023】
ステップS12では、隣り合う溝部7間における頂部を平滑化する。詳しくは、
図7に示すように、ツール92としてスクエアエンドミルを用いて溝部7間の頂部を削って平滑にする。好適例では、平滑化した平滑部17の幅wを約0.2mmとする。溝部7の最深部から平滑部17までの高さtは、約0.08mmとなる。この工程は平滑化工程に相当し、加工が終了した時点では、溝部7、平滑部17は、金属光沢面となっている。
【0024】
ステップS13では、溝部7および平滑部17を含む加飾部20を粗面化する。詳しくは、
図8に示すように、ツール92として研磨ブラシを用いて溝部7および平滑部17を研磨する。この工程は粗面化工程に相当する。好適例では、セラミックファイバーを研磨材に使用した研磨ブラシを用いて、溝部7の延在方向に沿って、研磨ブラシを回転させながら1本ずつ全ての溝部7、平滑部17を走査研磨する。なお、研磨は、溝部7の底部における面粗度が、平滑部17の面粗度よりも小さいか、略同じとなる度合いを目安とする。また、セラミックファイバーを用いた研磨ブラシに限定するものではなく、同様な研磨が可能なブラシであれば良く、例えば、真鍮製ワイヤーや、スチールワイヤーなどの金属製ワイヤーを用いたブラシを用いても良い。この工程は粗面化工程に相当し、この工程により加飾部20がマット調となり、つや消しで立体感のある加飾部20が形成される。
【0025】
ステップS14では、複数の石受孔5a、貫通孔5bが形成される。詳しくは、ツール92としてドリルを用いて石受孔5a、および、貫通孔5bを穿孔する。
図1に示すように、石受孔5a、貫通孔5bには複数の孔径があるため、孔径ごとに、ドリルを交換して穿孔する。この工程は穿孔工程に相当し、この工程まで加工装置180により一貫して加工が行われる。換言すれば、穿孔工程では、第1面4aから第1面4aとは反対側の第2面4bに貫通する石受孔5aを形成する。
なお、好適例では、この工程まで加工装置180により一貫して加工が行われるものとして説明したが、これに限定するものではなく、必要な加工が施されれば良く、例えば、粗面化工程、または、穿孔工程が、別の加工装置で行われることであっても良い。
【0026】
ステップS15では、複数の輪列受4が面付された短尺基板41を、レーザー加工装置(図示せず)にセットし、ロゴ19を彫刻する。好適例では、フェムト秒パルスレーザー照射を用いてロゴ19を彫刻する。この工程はレーザー照射工程に相当し、
図9に示すように、レーザー加工を用いることにより、溝部7や、平滑部17の凹凸形状に追従して鮮明な彫刻を施すことができる。なお、レーザー照射工程は、穿孔工程の前に行っても良い。
【0027】
ステップS16では、輪列受4にメッキ加工を施す。詳しくは、短尺基板41から輪列受4を切り出し、個別にした状態でメッキ処理を施す。好適例では、輪列受4の全面に電界ニッケルメッキ処理を施す。
【0028】
ステップS17では、輪列受4に受石9を埋め込む。この工程は埋込工程に相当し、
図10に示すように、専用治具の台座部96の上に、第1面4aを下にして輪列受4をセットした状態で、石受孔5aに第2面4bから受石9を押し込む。石受孔5aの直径は、受石9の外形よりも若干小さく設定されている。換言すれば、石受孔5aに対して受石9が締め代となっている。また、好適例では、受石9の挿入側の面には面取りが施されている。押込みは、専用治具の押込み棒97で行われる。好適例では、専用治具には複数本の押込み棒97が取付けられており、複数個の受石9を1回の作業で埋め込み可能となっている。
【0029】
***加飾部の態様***
図11は、加飾部の拡大写真図である。
図11は、上記の製造方法により加工した輪列受4の加飾部20の写真である。
図11に示すように、複数本の溝部7により枯山水の波が表現されている。そして、平滑部17を含む加飾部20は、粗面化処理されるため、つや消しで立体感のある枯山水の波が表現されている。
さらに、この波模様の中に、
図1に示すように、景色となる受石9や、貫通孔5、ネジ8が加味されることにより、川辺や、山の景色を含めた枯山水を模したデザインが表現される。
【0030】
なお、上記の粗面化工程において、溝部7の底部における面粗度が、平滑部17の面粗度よりも小さい場合は、溝部7の底部における金属光沢が強くなり、平滑部17はつや消し調となるため、変化のある模様とすることができる。このような面粗度を得るには、例えば、研磨ブラシの押し圧を弱くして溝部7の底部が研磨され過ぎないように調整すれば良い。
また、上記の粗面化工程において、溝部7の底部における面粗度が、平滑部17の面粗度と略同じである場合は、加飾部20における面粗度が略一定のため、デザインの均一感(均質感)を出すことができる。
【0031】
以上、述べた通り、本実施形態の輪列受4、輪列受4の加飾方法、時計100によれば、以下の効果を得ることができる。
輪列受4の加飾方法は、受石9を有する輪列受4の加飾方法であって、輪列受4の第1面4aに複数本の溝部7を形成する切削工程と、隣り合う溝部7間に生じる頂部を平滑化する平滑化工程と、溝部7および平滑化された平滑部17を含む加飾部20を粗面化する粗面化工程と、第1面4aから第1面4aとは反対側の第2面4bに貫通する石受孔5aを形成する穿孔工程とを含む。
【0032】
好適例において、複数本の溝部7は枯山水を表現した波状に形成される。そして、頂部を含めた加飾部20は、粗面化処理されるため、つや消しで立体感のある枯山水調の加飾部20を実現することができる。
さらに、加飾部20において最も突出した頂部が平滑化されているため、加飾部20が形成された第1面4aを下にして、第2面4bから受石9を打ち込む際に、頂部の潰れなどの加飾部20へのダメージを防ぐことができる。
従って、優れた美観の加飾部20を有する輪列受4の加飾方法を提供することができる。
【0033】
また、加飾方法は、石受孔5aに第2面4bから受石9を埋め込む埋込工程を、さらに含む。
これによれば、粗面化工程の後に埋込工程が行われるため、第1面4aを下にして、受石9を打ち込む際に、頂部の潰れなどの加飾部20へのダメージを防ぐことができる。
【0034】
また、切削工程は、ボールエンドミルを用いて行われ、複数本の溝部7は、略等間隔に形成される。
これによれば、複数本の溝部7により枯山水の波を表現することができる。
【0035】
また、平滑化工程は、スクエアエンドミルを用いて行われる。
これによれば、切削工程により鋭利な状態となっている溝部7間の頂部を、効率良く平滑化することができる。
【0036】
また、粗面化工程は、ブラシを用いて行われる。
これによれば、加飾部20の粗面化処理を効率良く行うことができる。
【0037】
また、加飾部20に、レーザー照射により彫刻を施すレーザー照射工程をさらに含む。
これによれば、凹凸がある加飾部20に対して、ロゴ19などを効率良く、かつ、鮮明に彫刻することができる。
【0038】
輪列受4は、第1面4aと、第1面4aとは反対側の第2面4bとを有し、第1面4aに形成された複数本の溝部7と、隣り合う溝部7間における頂部を平滑化した平滑部17と、第1面4aから第2面4bに貫通する石受孔5aと、石受孔5aに埋め込まれる受石9と、を備え、第1面4aにおいて、複数本の溝部7は、略等間隔に形成されており、溝部7の底部における面粗度は、平滑部17の面粗度よりも小さいか、略同じである。
【0039】
これによれば、輪列受4は、切削加工による金属光沢を抑えた、つや消しで立体感のある加飾部20を備える。
さらに、加飾部20において最も突出した頂部が平滑化されているため、加飾部20が形成された第1面4aを下にして、第2面4bから受石9を打ち込む際に、頂部の潰れなどの加飾部20へのダメージを防ぐことができる。
従って、優れた美観の加飾部20を有する輪列受4を提供することができる。
【0040】
また、第1面4aにおいて、複数本の溝部7は、枯山水を表現した波状をなしている。
これによれば、複数本の溝部7により枯山水の波を表現することができる。
【0041】
また、溝部7の底部における面粗度は、平滑部17の面粗度よりも小さい。
これによれば、溝部7の底部における金属光沢が強く、平滑部17はつや消し調となるため、変化のある模様とすることができる。
【0042】
また、溝部7の底部における面粗度は、平滑部17の面粗度と略同じである。
これによれば、加飾部20における面粗度が一定のため、デザインの均一感(均質感)を出すことができる。
【0043】
時計100は、上記の輪列受4を有する。
これによれば、優れた美観のデザインが施された輪列受4を備えた時計100を提供することができる。
【0044】
***変形例***
なお、上記ステップS15では、レーザー照射によりロゴ19を彫刻するものとして説明したが、これに限定するものではなく、加飾部20に彫刻を施すことができれば良く、例えば、手加工により彫刻を施しても良い。
また、上記では、加飾部20などにより輪列受4に枯山水を模したデザインを施すものとして説明したが、これに限定するものではなく、他のデザインを施しても良い。例えば、複数本の溝を交差させて複数の四角錘台が格子状に配置されるようなデザインとしても良いし、枯山水模様の一部に当該格子状の模様が組み込まれることでも良い。
【符号の説明】
【0045】
1…胴、2…裏蓋、3…地板、4…輪列受、4a…第1面、4b…第2面、5…貫通孔、5a…石受孔、5b…貫通孔、6…回転軸、7…溝部、8…ネジ、9…受石、10…ムーブメント、11…秒針、12…分針、13…時針、14…歯車、15…香箱、16…リュウズ、17…平滑部、18…文字板、19…ロゴ、20…加飾部、41…短尺基板、91…XYテーブル、92…ツール、93…制御装置、94…記憶部、96…台座部、97…押込み棒、100…時計、180…加工装置。