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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103150
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】硬帆を備えた船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 9/061 20200101AFI20240725BHJP
【FI】
B63H9/061
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007333
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】391058082
【氏名又は名称】株式会社名村造船所
(74)【代理人】
【識別番号】110004059
【氏名又は名称】弁理士法人西浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】徳留 祐二
(57)【要約】
【課題】コスト高や推進力の低下や重量の増加を伴うことなくスムーズで短時間の昇降作業が可能な硬帆を備えた船舶を提供する。
【解決手段】角度増大抑制機構37は、硬帆27を支持し格納庫29内を昇降する装置本体35の上下方向VDのサイズL1よりも大きい上下方向VDのサイズL2を有する縦フレーム45A、45Bを備え、進行方向FDから透視して一対の縦フレーム45A、45Bが装置本体35と一部が重なる状態で装置本体35に対して上下方向VDにスライド可能に設けられた可動フレーム39と、可動フレーム39に装着され、装置本体35の進行方向FDの側面上を接触移動し且つ一対の隔壁板31A、31Bの内壁面と接触可能に対向する複数の転動ローラ43よりなる接触部41を備えて、装置本体35が昇降しているときの装置本体35の上下方向VDに延びる仮想中心線Cと鉛直線Vとの間の角度の増大を抑制する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時には上下方向に上昇して、甲板上に突出した状態で風を受けて推進力を発生し、不使用時には前記上下方向に下降して、前記甲板下に設けられた格納庫内に収納される硬帆と、前記硬帆を上下方向に昇降させる昇降装置と、前記硬帆を支持し且つ前記昇降装置により前記格納庫内を昇降する装置本体を含む1以上の風力推進装置を備え、
前記格納庫が、進行方向に対向する内面をそれぞれ有する一対の隔壁板により画定されている船舶であって、
前記装置本体の上下方向のサイズよりも大きい上下方向のサイズを有し且つ前記装置本体の進行方向両側に配置される一対の縦フレームを一体に備え、進行方向から透視して前記一対の縦フレームが前記装置本体と一部が重なる状態で前記装置本体に対して上下方向にスライド可能に設けられた可動フレームと、
前記可動フレームに装着され、前記装置本体が前記格納庫内の最上位位置にあるときには、前記一対の縦フレームが最下位位置にあり、前記装置本体が前記格納庫内の最下位位置にあるときには、前記一対の縦フレームが最上位位置にあるように、前記装置本体の前記進行方向の側面上を接触移動し且つ前記一対の隔壁板の内壁面とそれぞれ接触可能に対向する複数の接触部を備えて、前記装置本体が昇降しているときの前記装置本体の前記上下方向に延びる仮想中心線と鉛直線との間の角度の増大を抑制する角度増大抑制機構を備えたことを特徴とする硬帆を備えた船舶。
【請求項2】
前記角度増大抑制機構の前記各接触部は、上下方向に間隔を空けて前記可動フレームに回転可能に装着され、前記一対の隔壁板の一方の内面上を転動する複数の転動ローラよりそれぞれなる請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記可動フレームの前記装置本体に対するスライド可能な範囲は、前記装置本体が格納庫内の最下位位置にあるときは両者の下端が略同レベルになり、最上位位置にあるときは両者の上端が略同レベルになる範囲である請求項1に記載の船舶。
【請求項4】
前記可動フレームは、前記装置本体の進行方向の側面と前記一対の隔壁板の内面との間に、上下方向に前記サイズの長さを有してそれぞれ延び、それぞれ前記各接触部が装着された前記一対の縦フレームと、
進行方向に延びて前記一対の縦フレームの上端同士及び下端同士を連結し、それぞれ前記装置本体の上面及び下面に当接して前記可動フレームがスライド可能な範囲を限定する一対の進行方向フレームを有する請求項3に記載の船舶。
【請求項5】
前記装置本体と前記可動フレームは、一方に設けられた上下方向に延びるレールと、他方に設けられた前記レールに相補する形状のスリットとの組み合わせによりスライド可能に構成されている請求項1に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬帆を備えた船舶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バルク船等の大型船舶は、大量の化石燃料を消費するため、CO2の排出源となっている。化石燃料の消費を抑えるため、大型船舶に硬帆を設け、推進力を補助して、CO2の排出を削減する試みが進められている。特許第5828409号公報(特許文献1)に開示の船舶では、甲板上に複数の硬帆を設置し、風力を用いて、補助的に推進力を得るようにしている。図17には、甲板の下に配置された上下方向に延びる昇降装置によって硬帆が上下動して格納庫に収納され、暴風時や荷役時に対応する格納構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5828409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
硬帆の面積が広いほど高い推進力の得られることは明らかだが、硬帆が大規模になるにつれて、特に硬帆の昇降作業に影響が生じる。風を受けている場合、及び船舶の航行中には、硬帆には進行方向向きの荷重が生じ、硬帆が取り付けられたマスト及びマストを支持する装置本体が進行方向向きに傾斜する。この傾斜により装置本体と格納庫との間のスライド機構に偏った荷重がかかり、歪みが生じるため、短時間でのスムーズな昇降作業の実行が妨げられる。
【0005】
この不具合を解決する手段としては、単に昇降装置の定格を上げたりスライド機構のサイズや剛性を向上させることが挙げられるが、コスト面、硬帆による推進効率及び船舶の重量や構造や積載量等の制限を総合的に考慮すると実現が難しい。例えば装置本体の上下方向のサイズを大きくして荷重の支点を分散させ、傾斜角度を減少させようとすると、装置本体の重量が増加するのみならず、船舶の構造上格納庫を深くするには限界があるので、硬帆の高さを低くして推進力を犠牲にせざるを得ない。
【0006】
本発明の一つの目的は、コスト高や推進力の低下や重量の増加を伴うことなくスムーズで短時間の昇降作業が可能な硬帆を備えた船舶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の硬帆を備えた船舶は、使用時には上下方向VDに上昇して、甲板9上に突出した状態で風を受けて推進力を発生し、不使用時には上下方向VDに下降して、甲板9下に設けられた格納庫29内に収納される硬帆27と、硬帆27を上下方向VDに昇降させる昇降装置33と、硬帆27を支持し且つ昇降装置33により格納庫29内を昇降する装置本体35を含む1以上の風力推進装置25を備えている。格納庫29は、進行方向FDに対向する内面をそれぞれ有する一対の隔壁板31A、31Bにより画定されている。
【0008】
船舶はさらに、装置本体35の上下方向VDのサイズL1よりも大きい上下方向VDのサイズL2を有し且つ装置本体35の進行方向FD両側に配置される一対の縦フレーム45A、45Bを一体に備え、進行方向FDから透視して一対の縦フレーム45A、45Bが装置本体35と一部が重なる状態で装置本体35に対して上下方向VDにスライド可能に設けられた可動フレーム39と、可動フレーム39に装着され、装置本体35が格納庫29内の最上位位置にあるときには、一対の縦フレーム45A、45Bが最下位位置にあり、装置本体35が格納庫29内の最下位位置にあるときには、一対の縦フレーム45A、45Bが最上位位置にあるように、装置本体35の進行方向FDの側面上を接触移動し且つ一対の隔壁板31A、31Bの内壁面と接触可能に対向する複数の接触部41を備えて、装置本体35が昇降しているときの装置本体35の上下方向VDに延びる仮想中心線Cと鉛直線Vとの間の角度の増大を抑制する角度増大抑制機構37を備えている。
【0009】
本発明の硬帆を備えた船舶においては、装置本体35が格納庫29内を昇降する際に、角度増大抑制機構37の接触部41が、一対の隔壁板31A又は31Bの一方の内面に接して進行方向FD向きに生じる荷重を支持する。接触部41が固定されている可動フレーム39は、装置本体35の上下方向VDのサイズL1よりも大きい上下方向VDのサイズL2を有するので、荷重はL2のサイズで上下方向VDに分散され、装置本体35のL1のサイズで支持するよりも、装置本体35に進行方向FDの傾斜する角度の増大を抑制することができる。且つ、可動フレーム39は進行方向FDから透視して装置本体35と一部が重なる状態で上下方向VDにスライド可能で、装置本体35が格納庫29内の最上位位置にあるときには、一対の縦フレーム45A、45Bが最下位位置にあり、装置本体35が格納庫29内の最下位位置にあるときには、一対の縦フレーム45A、45Bが最上位位置にあるので、装置本体35が最上位位置まで上昇しても角度増大抑制機構37が甲板9上に突出することはなく、最下位位置まで下降しても角度増大抑制機構37が格納庫29の底面に干渉することはない。
【0010】
角度増大抑制機構37の複数の接触部41は、上下方向VDに間隔を空けて可動フレーム39に回転可能に装着され、一対の隔壁板31A又は31Bの一方の内面上を転動する複数の転動ローラ43よりなるようにしてもよい。隔壁板31A又は31Bの内面と複数の転動ローラ43との組み合わせからなるスライド機構は、構造の単純さや荷重の大きさや移動距離等を考慮すると、リニアガイド等の他のスライド機構に比較して優れている。
【0011】
可動フレーム39の装置本体35に対するスライド可能な範囲は、前記装置本体35が格納庫29内の最下位位置にあるときは両者の下端が略同レベルになり、最上位位置にあるときは両者の上端が略同レベルになる範囲とすることができる。この範囲とすることにより、可動フレーム39が装置本体35から上下方向VDに突出することはなく、且つ角度増大抑制機構37が荷重を支持する上下方向VDの位置は、上端又は下端の少なくとも何れかが装置本体35の上端又は下端と進行方向FD向きに重なるので、装置本体35の傾斜する角度の増大を最小限に抑制することができる。
【0012】
可動フレーム39は、装置本体35の進行方向FDの側面と一対の隔壁板31A又は31Bの内面との間に、上下方向VDにサイズL2の長さを有してそれぞれ延び、それぞれ接触部41が固定された一対の縦フレーム45A、45Bと、進行方向FDに延びて一対の縦フレーム45A、45Bの上端同士及び下端同士を連結し、それぞれ装置本体35の上面及び下面に当接して可動フレーム39がスライド可能な範囲を限定する一対の進行方向フレーム部47A、47Bを有するように構成してもよい。
【0013】
このような構成によると、可動フレーム39のスライド可能な範囲を容易に限定することができる。また一つの可動フレーム39によって、装置本体35の進行方向FDの両側面から、幅方向WD及び進行方向FDに重なる位置で、装置本体35にかかる偏った荷重を支持することにより、傾斜する角度の増大を抑制する効果を高めることができる。
【0014】
装置本体35と可動フレーム39は、一方に設けられた上下方向VDに延びるレール49と、他方に設けられたレール49に相補する形状のスリット51との組み合わせによりスライド可能に構成することができる。この部分の機構はスライドする範囲が短いので、レール49とスリット51との組み合わせで高い精度と堅牢性を保持している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明を適用することができる硬帆を備えた船舶の一例である、ばら積み貨物船の斜視図である。
図2図1のばら積み貨物船の左側面図(右舷側から見た側面図)である。
図3図1のばら積み貨物船の平面図である。
図4】第7船倉~第9船倉が設けられた船体の後方部分を示した図である。
図5】(a)~(e)は、本発明の船舶に適用された硬帆の角度増大抑制機構の各昇降過程それぞれにおける作用を説明する斜視図であり、硬帆及び角度増大抑制機構に関連する部材以外は省略して示す(以下の図も同様)。
図6図5(a)及び(e)の昇降過程における角度増大抑制機構を拡大して示す斜視図である。
図7図5(b)の昇降過程における角度増大抑制機構を拡大して示す斜視図である。
図8図5(c)の昇降過程における角度増大抑制機構を拡大して示す斜視図である。
図9図5の角度増大抑制機構の転動ローラを中心軸に沿った水平面で切断して示す斜視図である。
図10図5の角度増大抑制機構を示す拡大平面図である。
図11】(a)及び(b)は、図5の角度増大抑制機構の作用を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の船舶の実施の形態を詳細に説明する。図1乃至図4を用いて本発明が適用可能な船舶の一例の構成を説明する。図1乃至図4に示した構造では、本発明の構成において必須要件である延伸帆部の保持構造は図に示されていない。図2は、図1のばら積み貨物船の左側面図(右舷側から見た側面図)であり、図3は、平面図である。また図4は、後述する第7船倉~第9船倉が設けられた船体の後方部分の一部切り欠き斜視図である。
【0017】
<全体構成>
図1の本実施の形態のばら積み貨物船1は、船舶の安全性確保のための規則を定める多国間条約「海上における人命の安全のための国際条約(International Convention for the Safety of Life at Sea)(SOLAS条約)」の対象となる、全長55m以上の大型船舶である。ばら積み貨物船1は、船体3の進行方向FDの一方の端部に船首5を有し、他方の端部に船尾7を有し、船体3上に甲板(上甲板)9を有している。ばら積み貨物船1は、船体3内が複数の区画に区切られており、甲板9の下に、図4に一部を示すように、貨物を積載する船倉11(第1船倉11A~第9船倉11I)が形成されている。なお、図1には、第1船倉~第9船倉が内部に存在する位置に、符号11A~11Iを付してある。第1船倉11A~第9船倉11Iのそれぞれは、甲板9に開口した開口部13A~13Iと、開口部13A~13Iの周囲を取り囲む縁材(ハッチコーミング)15A~15Iと、船体の幅方向WDにスライドし、開口部13A~13Iを閉じるハッチカバー17A~17Iを備えている。船尾7には、船橋19と、レーダーマスト21と、煙突23が設けられている。
【0018】
本実施の形態のばら積み貨物船1は、8台の風力推進装置25として硬帆装置を備えている。本実施の形態では、具体的には、8台の風力推進装置25は、8台の硬帆装置25A~25Hである。8台の硬帆装置25A~25Hは、それぞれ風力推進力発生部である硬帆27A~27Hを備えている。図1乃至図3では、硬帆装置25A~25Hは、使用状態にあり、甲板9上において上下方向VD上方向きに硬帆27A~27Hが突出した状態になっている。8台の硬帆装置25A~25Hは、船舶の進行方向FDに並ぶ2つの船倉11の間(例えば、第1船倉11Aと第2船倉11Bの間、第2船倉11Bと第3船倉11Cの間・・・)に配置された格納庫(29A~29H)とセットになっている。なお図1には、格納庫が存在する位置に符号29A~29Hを付してある。後述のように、硬帆27A~27Hは、甲板9下に設けられた格納庫29A~29H内に格納可能な構成となっている。
【0019】
<硬帆装置の昇降機構>
図4には、第7船倉11G~第9船倉11Iが設けられた船体3の後方部分を示してある。図示したように、第7船倉11Gと第8船倉11Hの間や、第8船倉11Hと第9船倉11Iの間には、船倉同士を隔てる隔壁(30A~30H)が設けられている。なお図4には、隔壁30Gと隔壁30Hを示してあり、その他の図には隔壁30A~30Fは図示していない。この隔壁30A~30Hは、船舶の進行方向に間隔をあけて並ぶ2枚の隔壁板31によって構成されている。この2枚の隔壁板の間に硬帆を収納する格納庫29が設けられている。
【0020】
図4には全ては図示していないが、第1船倉11Aと第2船倉11Bの間には格納庫29A、第2船倉11Bと第3船倉11Cの間には格納庫29B・・・というように、船体3には計8個の格納庫29A~29H(図1参照)が設けられており、それぞれが風力推進装置25A~25Hとセットになっている。図4に示した例では、硬帆27Gは、格納庫29Gから出された使用状態であり、硬帆27Hは、格納庫29H内に格納された不使用状態である。必要に応じて硬帆を格納庫内に収納することができるため、風力が航行の妨げになる場合は全ての硬帆を格納庫に格納する事で通常の船舶として航行可能であり、また港にて硬帆を格納庫に格納すれば、硬帆が荷役クレーンの妨げにならない。
【0021】
以下では、説明の便宜上、特に区別する必要がある場合を除き、格納庫は符号29、硬帆は符号27、風力推進装置は符号25として説明し、他の格納庫、硬帆及び風力推進装置については、説明を省略する。
【0022】
<角度増大抑制機構の構成>
図5乃至10は、本発明の硬帆を備えた船舶の角度増大抑制機構の一つの実施形態の構成をそれぞれ示す。
【0023】
各図において、風力推進装置25は、硬帆27,昇降装置33及び装置本体を備えている。硬帆27は、使用時には上下方向VDに上昇して、甲板9上に突出した状態で風を受けて推進力を発生し、不使用時には上下方向VDに下降して、甲板9下に設けられた格納庫29内に収納される。昇降装置33(図8参照)は、硬帆27を上下方向VDに昇降させる。装置本体35は、硬帆27を支持し且つ昇降装置33により格納庫29内を昇降する。格納庫29は、進行方向FDに対向する内面をそれぞれ有する一対の隔壁板31A、31Bにより画定されている。
【0024】
船舶はさらに、一対の角度増大抑制機構37を備えており、角度増大抑制機構37はそれぞれ、可動フレーム39と、可動フレーム39に装着された複数の接触部41を備えている。一対の角度増大抑制機構37は、装置本体35の幅方向WDの両端近くに配置されている。
【0025】
可動フレーム39は、一対の縦フレーム45A、45Bと一対の進行方向フレーム47A、47Bを一体に備えており、各フレームの各端同士を接続した方形のフレームであって、フレーム内に装置本体35が上下方向VDに可動フレーム39に対してスライド可能に嵌められている。
【0026】
一対の縦フレーム45A、45Bは、装置本体35の上下方向VDのサイズL1よりも大きい上下方向VDのサイズL2を有し且つ装置本体35の進行方向FD両側に配置されている。一対の縦フレーム45A、45Bは、進行方向FDから透視して一対の縦フレーム45A、45Bが装置本体35と一部が重なる状態で装置本体35に対して上下方向VDにスライド可能に設けられている。
【0027】
進行方向フレーム47A、47Bは、進行方向FDに延びて一対の縦フレーム45A、45Bの上端同士及び下端同士を連結し、それぞれ装置本体35の上面及び下面に当接して可動フレーム39がスライド可能な範囲を限定する。これにより可動フレーム39のスライド可能な範囲を容易に限定できる。また、一つの可動フレーム39によって、装置本体35の進行方向FDの両側面から、幅方向WD及び進行方向FDに重なる位置で、装置本体35にかかる偏った荷重を支持することにより、傾斜する角度の増大を抑制する効果を高めている。
【0028】
各接触部41A、41Bは、上下方向VDに間隔を空けて、可動フレーム39の各縦フレーム45A、45Bに回転可能に装着され、一対の隔壁板31A又は31Bの一方の内面上を転動する複数の転動ローラ43よりそれぞれなる。
【0029】
装置本体35が格納庫29内の最上位位置にあるときには、一対の縦フレーム45A、45Bが最下位位置にあり、装置本体35が格納庫29内の最下位位置にあるときには、一対の縦フレーム45A、45Bが最上位位置にあるように、装置本体35の進行方向FDの側面上を接触移動し且つ一対の隔壁板31A、31Bの内壁面と接触可能に対向する。
【0030】
隔壁板31A又は31Bの内面と複数の転動ローラ43との組み合わせからなるスライド機構は、構造の単純さや荷重の大きさや移動距離等を考慮すると、リニアガイド等の他のスライド機構に比較して優れている。
【0031】
図9に示すように、装置本体35と可動フレーム39は、装置本体35の進行方向FDの側面に設けられた上下方向VDに延びるレール49と、可動フレーム39に設けられたレール49に相補する形状のスリット51との組み合わせによりスライド可能に構成されている。この部分の機構はスライドする範囲が短いので、レール49とスリット51との組み合わせで高い精度と堅牢性を保持している。
【0032】
次に本実施の形態の作用について説明する。本実施の形態の硬帆を備えた船舶に設けられた角度増大抑制機構37は、図11に表されているように、装置本体35が昇降しているときの装置本体35の上下方向VDに延びる仮想中心線Cと鉛直線Vとの間の角度の増大を抑制することができる。
【0033】
装置本体35が格納庫29内を昇降する際に、角度増大抑制機構37の接触部41が、一対の隔壁板31A又は31Bの一方の内面に接して進行方向FD向きに生じる荷重を支持する。接触部41が固定されている可動フレーム39は、装置本体35の上下方向VDのサイズL1(図11(a)参照)よりも大きい上下方向VDのサイズL2(図11(b)参照)を有するので、荷重はL2のサイズで上下方向VDに分散される。そのため装置本体35の上下方向VDに延びる仮想中心線Cと鉛直線Vとの間の角度は、L1のサイズで支持したときの角度aよりも小さい角度bに増大を抑制することになる。
【0034】
また図5(a)~(e)に示した装置本体35の昇降過程を見ると、可動フレーム39は進行方向FDから透視して装置本体35と一部が重なる状態で上下方向VDにスライド可能で、装置本体35が格納庫29内の最上位位置にあるとき(図5(c)参照)には、一対の縦フレーム45A、45Bが最下位位置にあり、装置本体35が格納庫29内の最下位位置にあるときには(図5(a)及び(e)参照)、一対の縦フレーム45A、45Bが最上位位置にあるので、装置本体35が最上位位置まで上昇しても角度増大抑制機構37が甲板9上に突出することはなく、最下位位置まで下降しても角度増大抑制機構37が格納庫29の底面に干渉することはない。
【0035】
上記実施の形態は、一例として記載したものであり、その要旨を逸脱しない限り、本発明は本実施の形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、硬帆装置の重量の増加や格納庫の縮小や推進力の低下を伴うことなく、スムーズで短時間の昇降作業が可能な硬帆を備えた船舶を提供することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 ばら積み貨物船
3 船体
5 船首
7 船尾
9 甲板(上甲板)
11(11A~11I) 船倉
13(13A~13I) 開口部
15(15A~15I) 縁材
17(17A~17I) ハッチカバー
19 船橋
21 レーダーマスト
23 煙突
25(25A~25H) 風力推進装置(硬帆装置)
27(27A~27H) 風力推進力発生部(硬帆)
29(29A~29H) 格納庫
31A、31B 隔壁板
33 昇降装置
35 装置本体
37 角度増大抑制機構
39 可動フレーム
41A、41B 接触部
43 転動ローラ
45A、45B 縦フレーム
47A、47B 進行方向フレーム
49 レール
51 スリット
L1 装置本体の上下方向VDのサイズ
L2 可動フレームの上下方向VDのサイズ
VD 上下方向
FD 進行方向
WD 幅方向
C 仮想中心線
V 鉛直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11