(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103153
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/533 20060101AFI20240725BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
H01R13/533 A
H01R13/52 301H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007336
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】西山 典孝
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE07
5E087GG15
5E087LL02
5E087LL12
5E087RR07
5E087RR12
(57)【要約】
【課題】熱膨張によって雄ハウジング及び雌ハウジング間の防水性が低下することを抑制できるコネクタを提供する。
【解決手段】雄ハウジング2は、筒状部21から突出した係合突起25を備えている。雌ハウジング5のフード部51には、ガイド溝55aと、凹部55bと、係合縁55cとが形成されている。雄コネクタ1と雌コネクタ4の嵌合状態では、本外部50とフード部51との間に筒状部21が位置付けられてパッキン6が本体部50の外周面と筒状部21の内周面との間を防水し、係合突起25がガイド溝55aと凹部55bの境界部分に位置付けられている。雄ハウジング2が熱膨張により筒状部21の前側の内径が拡大するように変形する際、係合縁55cが係合突起25の傾斜面25aを摺動することにより雄コネクタ1と雌コネクタ4とが近付く。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに嵌合する雄コネクタと雌コネクタを備え、
前記雄コネクタは、雄端子と、合成樹脂製の雄ハウジングと、を備え、
前記雌コネクタは、雌端子と、合成樹脂製の雌ハウジングと、環状のパッキンと、を備え、
前記雄ハウジングは、前記雄端子を囲んだ筒状部と、前記筒状部の外周面から突出したロック突起と、前記筒状部の外周面から突出した係合突起と、を備え、
前記雌ハウジングは、前記雌端子を収容した本体部と、前記本体部を囲んだフード部と、前記ロック突起に係止して前記雄コネクタと前記雌コネクタの嵌合状態を維持するロックアームと、を備え、
前記フード部の内周面には、当該フード部の前端から後方に延び、前記係合突起を位置付けるガイド溝と、前記ガイド溝の後端に連続して後方に延び、前記ガイド溝よりも深さが深い凹部と、が形成され、
前記ガイド溝と前記凹部の境界部分には、係合縁が形成され、
前記係合突起の後面は、傾斜面とされており、
前記パッキンは、前記本体部の外周面に装着されており、
前記雄コネクタと前記雌コネクタの嵌合状態では、前記本外部と前記フード部との間に前記筒状部が位置付けられて前記パッキンが前記本体部の外周面と前記筒状部の内周面との間を防水し、前記係合突起が前記ガイド溝と前記凹部の境界部分に位置付けられ、
前記雄ハウジングが熱膨張により前記筒状部の前側の内径が拡大するように変形する際、前記係合縁が前記係合突起の傾斜面を摺動することにより前記雄コネクタと前記雌コネクタとが近付く
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記雌ハウジングは、前記本体部の外周面から突出した立壁部と、前記立壁部の前端から後方に当該立壁部を切り欠いた切り欠き部と、を備え、
前記雄コネクタと前記雌コネクタの嵌合状態で、前記筒状部における前記ロック突起の前方に位置する先端部分が前記切欠き部に位置付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに嵌合する雄コネクタ及び雌コネクタを備えたコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記コネクタの一例として、
図9,10に示すものが公知である(特許文献1を参照)。
図9,10に示すコネクタ504は、互いに嵌合する雄コネクタ502及び雌コネクタ501を備えた防水型のコネクタである。
【0003】
雄コネクタ502は、車載機器の筐体509に設けられている。雄コネクタ502は、雄端子と、合成樹脂製の雄ハウジング508と、を備えている。雄ハウジング508は、雄端子を囲んだ筒状部582と、筒状部582の外表面に突設されたロック突起583と、を備えている。
【0004】
雌コネクタ501は、雌端子と、合成樹脂製の雌ハウジング505と、ゴム製のパッキン506と、雌ハウジング505に組み付けられて雌端子やパッキン506の抜け止めを行う合成樹脂製のリテーナ507と、を備えている。
【0005】
雌ハウジング505は、雌端子を収容した本体部551と、本体部551を囲んだフード部552と、本体部551に連なったロックアーム553と、を備えている。本体部551とフード部552との間に雄ハウジング508の筒状部582が挿入される。ロックアーム553は、雄ハウジング508のロック突起583に係止して、雄コネクタ502と雌コネクタ501の嵌合状態を維持する。
【0006】
パッキン506は、本体部551の外周面に装着されて、雄コネクタ502と雌コネクタ501の嵌合状態において、本体部551の外周面と筒状部582の内周面との間を防水する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記コネクタ504は、エンジンルーム等の高温環境下で使用される場合、
図10中の破線矢印に示すように3次元で熱膨張する。この3次元での熱膨張に伴い、筒状部582が軟化しつつパッキン506の圧縮による復元力を受けて変形することで、パッキン506の圧縮率が低下する。その結果、雄ハウジング508と雌ハウジング505間の防水性の低下が懸念されるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、熱膨張によって雄ハウジング及び雌ハウジング間の防水性が低下することを抑制できるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のコネクタは、互いに嵌合する雄コネクタと雌コネクタを備え、前記雄コネクタは、雄端子と、合成樹脂製の雄ハウジングと、を備え、前記雌コネクタは、雌端子と、合成樹脂製の雌ハウジングと、環状のパッキンと、を備え、前記雄ハウジングは、前記雄端子を囲んだ筒状部と、前記筒状部の外周面から突出したロック突起と、前記筒状部の外周面から突出した係合突起と、を備え、前記雌ハウジングは、前記雌端子を収容した本体部と、前記本体部を囲んだフード部と、前記ロック突起に係止して前記雄コネクタと前記雌コネクタの嵌合状態を維持するロックアームと、を備え、前記フード部の内周面には、当該フード部の前端から後方に延び、前記係合突起を位置付けるガイド溝と、前記ガイド溝の後端に連続して後方に延び、前記ガイド溝よりも深さが深い凹部と、が形成され、前記ガイド溝と前記凹部の境界部分には、係合縁が形成され、前記係合突起の後面は、傾斜面とされており、前記パッキンは、前記本体部の外周面に装着されており、前記雄コネクタと前記雌コネクタの嵌合状態では、前記本外部と前記フード部との間に前記筒状部が位置付けられて前記パッキンが前記本体部の外周面と前記筒状部の内周面との間を防水し、前記係合突起が前記ガイド溝と前記凹部の境界部分に位置付けられ、前記雄ハウジングが熱膨張により前記筒状部の前側の内径が拡大するように変形する際、前記係合縁が前記係合突起の傾斜面を摺動することにより前記雄コネクタと前記雌コネクタとが近付くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱膨張によって雄ハウジング及び雌ハウジング間の防水性が低下することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるコネクタを構成する雄コネクタの斜視図である。
【
図2】
図1の雄コネクタを別の角度からみた斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかるコネクタを構成する雌コネクタの分解図である。
【
図6】
図2の雄コネクタと
図3の雌コネクタが嵌合した状態を示す断面図である。
【
図7】
図2の雄コネクタと
図3の雌コネクタが嵌合した状態を示す断面図であり、
図6と別の断面を示す図である。
【
図10】
図9の雄コネクタと雌コネクタが嵌合した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態にかかる「コネクタ」について、
図1~8を参照して説明する。
図6~8に示すコネクタ10は、互いに嵌合する雄コネクタ1及び雌コネクタ4を備えている。
【0014】
本明細書においては、雄コネクタ1に関して、
図2に示す嵌合方向の雌コネクタ4側を「前」と表現し、嵌合方向の雌コネクタ4から離れた側を「後」と表現する。また、嵌合方向と直交する高さ方向で
図2中の上方向を「上」と表現し、
図2中の下方向を「下」と表現する。さらに、これら前後方向(嵌合方向)・高さ方向と直交する方向を「幅方向」と表現する。また、雌コネクタ4に関して、
図3に示す嵌合方向の雄コネクタ1側を「前」と表現し、嵌合方向の雄コネクタ1から離れた側を「後」と表現する。また、嵌合方向と直交する高さ方向で
図3中の上方向を「上」と表現し、
図3中の下方向を「下」と表現する。さらに、これら前後方向(嵌合方向)・高さ方向と直交する方向を「幅方向」と表現する。
【0015】
雄コネクタ1は、車載機器の筐体に設けられるものであり、高温環境となるエンジンルームで使用される。
図1,2に示すように、雄コネクタ1は、複数(6つ)の雄端子3と、合成樹脂製の雄ハウジング2と、を備えている。
【0016】
雄ハウジング2は、複数の雄端子3を囲んだ筒状部21と、筒状部21の後方に配置された奥壁22と、筒状部21の外周面から突出したロック突起24と、筒状部21の外周面から突出した係合突起25と、を備えている。複数の雄端子3は、奥壁22に形成された端子挿通孔23に圧入され、保持されている。筒状部21の後方は奥壁22によって塞がれており、筒状部21の前方は開口している。筒状部21の内側の空間は、雌コネクタ4の本体部50を収容する収容空間となっている。ロック突起24は、筒状部21の上側かつ前方に設けられている。
【0017】
係合突起25は、筒状部21の上側前端に2つ、筒状部21の下側前端に2つ、合計4つ設けられている。筒状部21の上側の2つの係合突起25は、ロック突起24の左右両側に配置されている。各係合突起25の後面は、筒状部21の外方に向かうにしたがって前方に向かう方向に傾斜した傾斜面25aとされている。
【0018】
雌コネクタ4は、車両に配索されるワイヤハーネスの電線11群の端末に接続されるものである。
図3~5に示すように、雌コネクタ4は、複数(6つ)の雌端子7と、合成樹脂製の雌ハウジング5と、ゴム(合成ゴム、天然ゴム)製の環状のパッキン6と、を備えている。各雌端子7に接続された各電線11の外周面には、ゴム栓12が装着されている。ゴム栓12は、雌端子7とともに雌ハウジング5内に収容された状態において、電線11の外周面と雌ハウジング5の内周面との間を防水する。
【0019】
雌ハウジング5は、複数の雌端子7を収容した本体部50と、本体部50を囲んだフード部51と、ロック突起24に係止して雄コネクタ1と雌コネクタ4の嵌合状態を維持するロックアーム54と、解除アーム56と、立壁部57と、を備えている。
【0020】
本体部50には、複数(6つ)の端子収容室52が形成されている。本体部50には、雌端子7に係止する弾性変形可能なランス53(
図5,7参照)が設けられている。ランス53の係止突起53aは、端子収容室52内に位置付けられている。
【0021】
ロックアーム54は、雌ハウジング5の幅方向で対向する2つの内側アーム部54aと、ロック部54bと、で構成されている。2つの内側アーム部54aは、本体部50の外周面に連なり、前方に延びている。2つの内側アーム部54aの前端は、ロック部54bにより連結されている。
【0022】
解除アーム56は、雌ハウジング5の幅方向で対向する2つの外側アーム部56aと、連結部56bと、操作部56cと、で構成されている。2つの外側アーム部56aは、連結部56bを介してロック部54bに連設されており、後方に延びている。2つの外側アーム部56aの後端は、操作部56cにより連結されている。操作部56cが下方に押圧されると、ロックアーム54が弾性変形し、ロック部54bが上方へ変位する。
【0023】
立壁部57は、本体部50の外周面における嵌合方向中央部から突出し、2つの内側アーム部54aの間に配置されている。立壁部57には、その前端から後方に当該立壁部57を切り欠いた切り欠き部57aが形成されている。立壁部57における切り欠き部57aの上側部分を突出部57bと呼称する。
【0024】
フード部51は、本体部50の外周面における嵌合方向中央部に連なっており、本体部50の前方側を覆っている。本体部50とフード部51との間の空間は、筒状部21を収容する収容空間となっている。パッキン6は、本体部50の外周面に装着されており、雄コネクタ1と雌コネクタ4の嵌合状態において、前記収容空間に収容された筒状部21の内周面と本体部50の外周面との間を防水する。
【0025】
フード部51の内周面には、当該フード部51の前端から後方に延び、係合突起25を位置付けるガイド溝55aと、ガイド溝55aの後端に連続して後方に延び、ガイド溝55aよりも深さが深い凹部55bと、が形成されている。ガイド溝55aと凹部55bの境界部分には、係合縁55cが形成されている。これらガイド溝55a、凹部55b、係合縁55cは、係合突起25と同数設けられている。即ち、フード部51の内周面の上側2箇所、フード部51の内周面の下側2箇所、合計4箇所に設けられている。
【0026】
続いて、雌コネクタ4の組み立て手順について説明する。雌ハウジング5の端子収容室52に、電線11の端末に接続されゴム栓12が組み付けられた雌端子7を挿入し、雌端子7をランス53の係止突起53aと係止させる。また、本体部50の外周面にパッキン6を装着する。以上により、雌コネクタ4の組み立てが完了する。
【0027】
図6,7に示すように、雄コネクタ1と雌コネクタ4が嵌合されると、コネクタ10となる。雄コネクタ1と雌コネクタ4の嵌合状態では、雄コネクタ1のロック突起24に雌コネクタ4のロックアーム54のロック部54bが係止していることで嵌合状態が維持されている。また、雄端子3と雌端子7が電気的に接続している。また、パッキン6が、筒状部21の内周面と本体部50の外周面により圧縮挟持されていることで、雄コネクタ1と雌コネクタ4との間の防水がなされている。また、係合突起25がガイド溝55aと凹部55bの境界部分に位置付けられている。また、筒状部21におけるロック突起24の前方に位置する先端部分が切欠き部57aに位置付けられている。また、嵌合した雄コネクタ1と雌コネクタ4間には、クリアランスC(
図7参照)が形成されている。
【0028】
上述したように、雄ハウジング2、雌ハウジング5は、合成樹脂材料により形成されており、パッキン6は、ゴム材料により形成されている。また、コネクタ10は、エンジンルームで使用される。これらのことから、コネクタ10が高温環境下に曝されると、コネクタ10は、
図7中の破線矢印に示すように3次元で熱膨張する。この3次元での熱膨張に伴って、筒状部21は、軟化しつつパッキン6の圧縮による復元力を受けて、
図8中の破線のように筒状部21の前側の内径が拡大するように変形する。即ち、筒状部21が、ラッパ状に変形する。
【0029】
この筒状部21の変形の際、係合縁55cが係合突起25の傾斜面25aを摺動することにより雄コネクタ1と雌コネクタ4とが近付く。それにより、パッキン6は、
図8中の間隔K1よりも狭い間隔K2で圧縮挟持されることとなる。つまり、パッキン6の圧縮率が低下しても、圧縮率が回復されるようになっている。したがって、コネクタ10が高温環境下に曝された状態でも、雄ハウジング2及び雌ハウジング5間の防水性の低下を抑制することができる。
【0030】
また、コネクタ10は、
図6に示すように、筒状部21の先端部分が切欠き部57aに位置付けられており、高温環境下に曝された状態では、筒状部21の先端部分が突出部57bに接触するようになっている。これにより、
図8中の破線のように筒状部21の前側の内径が拡大するように変形するが、ロックアーム54側での変形量を抑制でき、雄ハウジング2及び雌ハウジング5間の防水性の低下を抑制することができる。
【0031】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0032】
1 雄コネクタ
2 雄ハウジング
3 雄端子
4 雌コネクタ
5 雌ハウジング
6 パッキン
7 雌端子
10 コネクタ
21 筒状部
24 ロック突起
25 係合突起
25a 傾斜面
50 本外部
51 フード部
54 ロックアーム
55a ガイド溝
55b 凹部
55c 係合縁