(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010316
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】ガスセンサの排水構造
(51)【国際特許分類】
G01N 27/409 20060101AFI20240117BHJP
G01N 27/41 20060101ALI20240117BHJP
G01N 27/419 20060101ALI20240117BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
G01N27/409 100
G01N27/41 325H
G01N27/419 327H
G01N27/416 331
G01N27/416 376
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111583
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】古河 俊彦
【テーマコード(参考)】
2G004
【Fターム(参考)】
2G004BF19
2G004BF20
2G004BF27
2G004BF30
2G004BG15
(57)【要約】
【課題】プロテクタ内の凝縮水の排出を促すことができるガスセンサの排水構造を提供する。
【解決手段】ハウジング3に保持され、被測定ガスが接触することによって該被測定ガス中の特定成分を検出する検出部2aを先端部に有する検出素子2と、前記ハウジングに固定され、通気性を維持した状態で前記検出部を覆うプロテクタ4と、を備えるガスセンサ1の排水構造において、前記プロテクタに取付けられ、第1の端部が前記プロテクタ内に配置され、第2の端部が前記プロテクタ外に配置された、毛細管現象を生起させる長尺状の排水手段10を備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに保持され、被測定ガスが接触することによって該被測定ガス中の特定成分を検出する検出部を先端部に有する検出素子と、
前記ハウジングに固定され、通気性を維持した状態で前記検出部を覆うプロテクタと、を備えるガスセンサの排水構造において、
前記プロテクタに取付けられ、第1の端部が前記プロテクタ内に配置され、第2の端部が前記プロテクタ外に配置された、毛細管現象を生起させる長尺状の排水手段を備えたことを特徴とするガスセンサの排水構造。
【請求項2】
前記排水手段は、複数の柱状の線材を束ねて構成されることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサの排水構造。
【請求項3】
前記排水手段は、複数の毛細管を束ねて構成されることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサの排水構造。
【請求項4】
前記プロテクタは、同心状に配置された内外二重構造を有する内側プロテクタと外側プロテクタとを備え、
前記排水手段は、前記外側プロテクタに取り付けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のガスセンサの排水構造。
【請求項5】
前記排水手段は、筒状に形成された前記外側プロテクタの開口端部または側壁の少なくとも一方に取り付けられたことを特徴とする請求項4に記載のガスセンサの排水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定ガスの特定成分を検出するガスセンサの排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたエンジンから延びる排気管にはガスセンサが取り付けられており、排気管内を流れる排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOX)や酸素(O2)などの濃度がガスセンサによって検出されている。
【0003】
ガスセンサは、排気ガスが接触することによって該排気ガス中の窒素酸化物(NOX)などの特定成分の濃度を検出する検出部が先端部に設けられた検出素子を備えており、検出素子は、検出部が露出するようにハウジング(取付金具)に保持されている。検出素子の検出部は、ハウジングの先端部に固定されたプロテクタによって覆われている。プロテクタには、排気ガスなどの被測定ガスを内部に導入するとともに、導入した被測定ガスを外部に排出するための通気孔が形成されている。(例えば、特許文献1参照)
【0004】
このようなガスセンサにおいて、通気孔からプロテクタ内に導入された被測定ガスに含まれる水分が冷やされると、凝縮水がプロテクタ内に溜まる。そして、プロテクタ内に溜まった凝縮水が検出素子に触れると、熱衝撃に対して脆い検出素子にクラックが発生して該検出素子の耐久性が低下するとともに、検出精度が低下するという問題が発生する。プロテクタには、凝縮水を外部に排出するための排水孔が形成されてはいるが、この排水孔から凝縮水を重力のみでプロテクタ外に効率良く排出することは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、プロテクタ内の凝縮水の排出を促すことができるガスセンサの排水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態は、ハウジングに保持され、被測定ガスが接触することによって該被測定ガス中の特定成分を検出する検出部を先端部に有する検出素子と、前記ハウジングに固定され、通気性を維持した状態で前記検出部を覆うプロテクタと、を備えるガスセンサの排水構造において、前記プロテクタに取付けられ、第1の端部が前記プロテクタ内に配置され、第2の端部が前記プロテクタ外に配置された、毛細管現象を生起させる長尺状の排水手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のガスセンサの排水構造によれば、プロテクタ内の凝縮水の排出を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る排水構造を備えたガスセンサの排気管への取り付け状態を示す部分断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の変形例に係る排水構造を備えたガスセンサの排気管への取付状態を示す部分断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係る排水構造を備えたガスセンサの排気管への取り付け状態を示す部分断面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の変形例に係る排水構造を備えるガスセンサの排気管への取付状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
<第1実施形態>
本実施形態に係るガスセンサ1は、
図1に示すように、車両に搭載された不図示のエンジンから延びる排気管100に取り付けられ、排気管100内を
図1の矢印方向に流れる排気ガス(被測定ガス)に含まれる窒素酸化物(NO
X)の濃度を検出するものである。このガスセンサ(NO
Xセンサ)1は、検出素子2と、ハウジング3と、プロテクタ4と、排水手段10と、を備えている。プロテクタ4は、通気性を維持した状態で後述する検出素子2の検出部2aを覆っている。本実施の形態では、プロテクタ4が、内側プロテクタ5と外側プロテクタ6とを備えている。
【0012】
検出素子2は、熱衝撃に弱くて脆いセラミックなどの固体電解質体(図示せず)と白金を主体とする検出電極(図示せず)とを積層して構成される細長い矩形プレート状の部材である。検出素子2の先端部(
図1の右端部)には、排気ガスが接触することによって該排気ガス中の窒素酸化物(NO
X)の濃度を検出する検出部2aが形成されている。
【0013】
ハウジング3は、ガスセンサ1を排気管100に取り付けるための取付金具31と該取付金具31に連結された円筒状の不図示の外筒とを備えている。検出素子2は、略円筒状に形成された取付金具31の軸中心部に挿通されている。この検出素子2は、滑石粉末で構成された円筒状の充填部材38を介して取付金具31に保持されている。なお、取付金具31には、先端側から順に、円筒状のプロテクタ取付部32と、外周面に螺子溝が形成された雄ネジ部33と、スパナなどの工具が係合するための六角状の工具係合部34が一体に形成されている。プロテクタ取付部32は、雄ネジ部33及び工具係合部34よりも小径に形成されている。
【0014】
内側プロテクタ5及び外側プロテクタ6は、検出素子2の検出部2aを覆って、検出部2aを排気ガス中のデポジット(燃料灰分やオイル成分などの付着物質)による汚損や被水などから保護する部材である。内側プロテクタ5と外側プロテクタ6とは、同軸に配置された二重円筒構造を有している。
【0015】
内側プロテクタ5は、有底円筒状の部材であって、ハウジング3に取付けられる基端側から先端側に向かって順に、大小異径の連結部51、大径部52及び小径部53を備えている。外側プロテクタ6は同径のストレートな円筒状部材に形成されている。内側プロテクタ5は、連結部51が取付金具31のプロテクタ取付部32の外周に嵌め込まれ、この連結部51の外周に外側プロテクタ6の軸方向の一端部(
図1の左端部)が嵌め込まれている。内側プロテクタ5と外側プロテクタ6の嵌め込み部がスポット溶接またはレーザー溶接によって取付金具31に溶着されることによって、内側プロテクタ5と外側プロテクタ6とが同軸上に内外二重構造を構成して配置されている。
【0016】
内側プロテクタ5の大径部52の側壁(周壁)には、複数(図示例では、8つ)の円孔状の通気孔55が周方向に等角度ピッチ(45°ピッチ)で形成されており、この大径部52の内部に検出素子2の検出部2aが臨んでいる。また、内側プロテクタ5の大径部52から先端側(
図1の右側)に向かって絞り込まれた小径部53の底壁(蓋部)の中心部には円孔状の1つの通気孔56が形成されている。
【0017】
内側プロテクタ5の径方向外側に同心状に配置された円筒状の外側プロテクタ6の先端側部分は、内側プロテクタ5の先端の底壁よりも先端側(
図1の右側)に延びている。この先端側部分には、複数(図示例では、8つ)の円孔状の通気孔62が周方向に等角度ピッチ(45°ピッチ)で形成されている。本実施の形態では、外側プロテクタ6に形成された通気孔62の径は、内側プロテクタ5に形成された通気孔55の径よりも大きく設定されている。ここで、本実施の形態では、内側プロテクタ5と外側プロテクタ6にそれぞれ形成された通気孔55,62の数を共に8つとしたが、これらの通気孔55,62の数は同数である必要はない。また、通気孔55,62の数は、8つに限らず、一つ以上であればよい。本実施の形態において、通気孔55,56,62は、プロテクタ4内の凝縮水を外部へ排出可能な排出孔の役割を兼用している。
【0018】
以上のように取付金具31に同心状に取り付けられた内側プロテクタ5と外側プロテクタ6においては、内側プロテクタ5の内部に、内室S1が形成され、内側プロテクタ5と外側プロテクタ6との間には外室S2が形成されている。内室S1と外室S2とは、内側プロテクタ5に形成された複数の通気孔55と1つの通気孔56を介して互いに連通しており、外室S2は、外側プロテクタ6に形成された複数の通気孔62を介して排気管100の内部に連通している。
【0019】
なお、本実施の形態では、取付金具31や内側プロテクタ5及び外側プロテクタ6の材質として、耐熱性と耐食性が高いステンレス鋼(SUS304など)を使用しているが、これらの部材の材質には、ステンレス鋼(SUS)以外の金属を使用することができる。また、ガスセンサ1の他の構成は公知であるため、これについての図示及び説明は省略する。
【0020】
本実施の形態に係るガスセンサ1では、円筒状の外側プロテクタ6の先端部が、円孔状に開口している。この開口部には、毛細管現象を生起させて外側プロテクタ6内の凝縮水を排気管100内へと排水する排水手段10が取り付けられている。排水手段10は、長尺状に形成されており、第1の端部がプロテクタ4内に配置され、第2の端部がプロテクタ4外に配置される。
【0021】
本実施の形態において、排水手段10を柱状の線材11で構成しており、
図3に示すように、排水手段10は、この線材11を複数束ねて構成されている。本実施の形態では、線材11の一例として円柱状(丸棒状)の金属線材を用いているが、線材11は多角柱状であってもよく、金属以外の材料で形成されていてもよい。
【0022】
排水手段10は、さらに、取付具12と、結束具13とを備えている。取付具12は、複数の線材11の軸方向の第1の端部である基端部(
図1及び
図2の左端部)を束ねた状態で外側プロテクタ6に取付ける。本実施の形態において、取付具12は、金属製の円環状の帯状体で構成されている。結束具13は、複数の線材11の軸方向の第2の端部である先端部(
図1及び
図2の右端部)を束ねている。本実施の形態において、結束具13は、金属製であって、
図3に示すように、円柱状に形成されており、軸方向に貫通する複数の貫通孔13aを有している。各線材11の先端部は、結束具13の各貫通孔13aに挿入されている。なお、各線材11、取付具12及び結束具13の材質には、例えば、耐熱性と耐食性の高いステンレス鋼(SUS304など)等を選定することができる。
【0023】
排水手段10は、複数の線材11の先端部が結束具13に挿入されて結束され、複数の線材11の軸基端部が取付具12で束ねられることにより、全体として略円柱状に形成されている。排水手段10は、
図1~
図3に示すように、取付具12側の端部を外側プロテクタ6の開口端部6aから差し込み、取付具12側の端部が所定量だけ外側プロテクタ6内の外室S2に突出する状態で、外側プロテクタ6に取付けられている。取付具12の外周と外側プロテクタ6の開口端部6aの内周面とは、例えば、溶接等によって接合することができる。このように排水手段10が外側プロテクタ6の開口端部6aに取り付けられた状態では、
図3に示すように、隣接する線材11との間に微小隙間δが形成されている。
【0024】
次に、排気管100に対するガスセンサ1の取付方法について説明する。ガスセンサ1は、
図1に示すように、排気管100の側部に、その先端部が排気管100内に突出する状態で取り付けられる。すなわち、排気管100の側部には、ガスセンサ取付用の開口が形成されており、この開口を囲むように取付用ボス101が取り付けられている。この取付用ボス101に形成されたネジ孔101aに、ガスセンサ1の取付金具31の雄ネジ部34を螺合させる。雄ネジ部34の螺合は、取付金具31は、工具係合部34に係合するスパナなどの工具(図示せず)を用いて、ガスセンサ1をその軸心回りに回すことによって行うことができる。これにより、ガスセンサ1の先端部を排気管100内に突出させた状態で、ガスセンサ1を排気管100の側部に取り付けることができる。
【0025】
車両に搭載されたエンジンから排気管100へと排出される排気ガスは、
図1に矢印にて示す方向に排気管100内を流れるが、その過程で、排気ガスの一部が外側プロテクタ6に形成された通気孔62から外室S2内に流入する。外室S2内に流入した排気ガスは、内側プロテクタ5に形成された通気孔55,56から内室S1内に流入し、内室S1内に臨む検出素子2の検出部2aに触れ、これに含まれる窒素酸化物(NO
X)の濃度が検出される。
【0026】
上述のようにガスセンサ1の内室S1において検出素子2の検出部2aに触れて窒素酸化物(NOX)の濃度が検出された排気ガスは、内側プロテクタ5に形成された通気孔55,56から外室S2へと流入する。その後、外側プロテクタ6に形成された通気口62を通って外室S2から排気管100内へと流出し、そこを流れる他の排気ガスと合流して排気管100内を流れ、最終的には排気管100外へ排出される。
【0027】
このようなガスセンサ1では、排気ガスに含まれる水分がガスセンサ1内で凝縮温度以下に冷却されることによって、ガスセンサ1の外室S2内に凝縮水が発生することがある。また、排気管100内に生じた凝縮水が、車両の揺れ等により、ガスセンサ1の通気孔62から外室S2内に入り込むことがある。この凝縮水は、外側プロテクタ6に取り付けられた排水手段10における毛細管現象によって外室S2から排気管100内へと効率良く確実に排出される。すなわち、凝縮水は、排水手段10の複数の線材11の間に形成される微小隙間δ(
図3参照)を通過して毛細管現象によって線材11に沿って外室S2内から外室S2外への流れ出し、流れ出した凝縮水は、線材11に沿って流れる過程で、排気管100内を流れる高温の排気ガスによって加熱されて蒸発し、排気ガスと共に排気管100外へ排出される。
【0028】
上述したように、本実施の形態のガスセンサ1では、ガスセンサ1内に凝縮水が入り込んだ場合に、排水手段10による毛細管現象によって、凝縮水の排水を促すことができ、凝縮水を外室S2から排気管100内へ効率よく排出することができる。これにより、外室S2内の凝縮水の滞留を抑制することができる。また、これにより、検出素子2の検出部2aに凝縮水が付着することが抑制され、熱衝撃に対して脆い検出素子2が急冷されてクラックが発生することを防止することができ、検出素子2の耐久性や検出精度を向上することができる。
【0029】
以上の実施の形態では、排水手段10をガスセンサ1の外側プロテクタ6の開口部に差し込む状態で取り付けたが、
図4に示すように、排水手段10を外側プロテクタ6の側壁(周壁)の下部(重力方向下部)に形成した開口部に差し込んで取り付けるようにしてもよい。排気ガスの一部が冷却されて凝縮水が外側プロテクタ6内の外室S2で生成された場合、この凝縮水は、外室S2の下方側に滞留するため、滞留した凝縮水を排水手段10によって外室S2外へ排出することができる。
【0030】
<第2実施形態>
次に、
図5、
図6及び
図7を用いて、本発明の第2実施形態を説明する。なお、
図5~
図7では、
図1~
図3において示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての説明は省略する。
【0031】
本実施の形態に係るガスセンサ1Aでは、上述した柱状(中実上)の複数の線材11に代えて、中空状(管状)の複数の毛細管14を束ねて排水手段10Aを構成している。複数の毛細管14は、第1の端部である基端部が、取付具15を用いて束ねられた状態で、外側プロテクタ6の開口端部6aに取付けられている。取付具15は、外側プロテクタ6の開口端の内径とほぼ等しい外径を有する円柱状に形成されており、軸方向に貫通する複数の貫通孔15aを有している。各毛細管14は、取付具15の各貫通孔15aを貫通しており、毛細管14の基端14aは、取付具15から突出して外側プロテクタ6内に入り込んでいる。毛細管14及び取付具15は、例えば、ステンレス鋼等の金属製とすることができる。排水手段10Aは、外側プロテクタ6の開口端部6aに取付具15を差し込んで取り付けられている。
【0032】
本実施の形態では、排水手段10Aを構成する複数の毛細管14が平行に延びており、排水手段10Aが全体として略円柱状に形成されている。しかしながら、複数の毛細管14の結束形状はこれに限られない。例えば、複数の毛細管14は、基端側から先端側に向かって隣り合う毛細管14の間の隙間が大きくなるように束ねられ、排水手段10Aの全体が略円錐台状に形成されていてもよい。
【0033】
本実施の形態に係るガスセンサ1Aにおいても、その内部を排気ガスの一部が流れることによって、該排気ガスに含まれる水分が凝縮温度以下に冷却されることによって、ガスセンサ1Aの外室S2内に凝縮水が発生する。この凝縮水は、毛細管現象によって、外側プロテクタ6に取り付けられた排水手段10Aの複数の毛細管14内を通って外室S2内からガスセンサ1A外の排気管100内へと排出される。このとき、凝縮水が排気管100内へと排出される各毛細管14の先端部においては、その周囲を流れる排気ガスの流速がガスセンサ1Aの外室S2を流れる排気ガスの流速よりも大きいため、各毛細管14の先端部付近の圧力がガスセンサ1Aの外室S2内の圧力よりも相対的に低くなる。このため、ガスセンサ1Aの外室S2内の凝縮水は、差圧によって吸い出されて各毛細管14から排気管100内へと効率良く排出される。
【0034】
各毛細管14から排気管100内へと排出された凝縮水は、排気管100内を流れる高温の排気ガスによって加熱されて蒸発し、排気ガスと共に排気管100内を通って排気管100外へ排出される。
【0035】
上述したように、本実施の形態においても、排水手段10Aによって、ガスセンサ1Aのプロテクタ4内の凝縮水の排出を促すことができる。このため、検出素子2の検出部2aに凝縮水が付着することを抑制し、検出素子2の急冷によるクラックの発生を防止することができる。
【0036】
上述した実施の形態では、排水手段10Aをガスセンサ1Aの外側プロテクタ6の開口部に差し込む状態で取り付けたが、
図8に示すように、排水手段10Aを外側プロテクタ6の側壁(周壁)の下部(重力方向下方部)に取り付けるようにしてもよい。排気ガスの一部が冷却されて凝縮水が外側プロテクタ6内で発生した場合、この凝縮水は、外室S2の下部に滞留するため、滞留した凝縮水を排水手段10Aによって外室S2外へと排出することができる。
【0037】
なお、上述した実施の形態では、エンジンの排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOX)の濃度を検出するガスセンサ(NOXセンサ)に設けられた排水構造に適用した例について説明したが、本発明は、排気ガス中の他の成分を検出するガスセンサ、例えば酸素(O2)の濃度を検出するガスセンサ(O2センサ)に設けられる排水構造に対しても同様に適用可能である。
【0038】
また、本発明は、エンジンの排気ガス以外の任意の被測定ガスに含まれる任意の特定成分の濃度等を検出するガスセンサの排水構造にも適用することができる。
【0039】
さらに、上述した実施の形態では、排水手段を外側プロテクタ6の開口端部6aまたは側壁(周壁)の何れか一方に設けたが、排水手段を外側プロテクタ6の開口端部6aと側壁(周壁)の双方にそれぞれ設けてもよい。
【0040】
また、上述した実施形態では、長尺状の線材11や毛細管14を複数束ねて排水手段10,10Aを構成しているが、排水手段は、毛細管現象を生起させる長尺状の部材を少なくとも1つ有する構成であればよい。
【0041】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0042】
1,1A ガスセンサ
2 検出素子
2a 検出部
3 ハウジング
4 プロテクタ
5 内側プロテクタ
6 外側プロテクタ
6a 開口端部
10,10A 排水手段
11 線材
12,15 取付具
13 結束具
14 毛細管
100 排気管
S1 内室
S2 外室
δ 微小隙間