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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010317
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】リザーブタンクの気液分離機構
(51)【国際特許分類】
   F01P 11/00 20060101AFI20240117BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20240117BHJP
   C02F 1/20 20230101ALI20240117BHJP
【FI】
F01P11/00 C
B01D19/00 B
C02F1/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111584
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】小島 桃香
(72)【発明者】
【氏名】五味 啓太
(72)【発明者】
【氏名】橋本 洋平
(72)【発明者】
【氏名】吉川 卓爾
【テーマコード(参考)】
4D011
4D037
【Fターム(参考)】
4D011AA02
4D011AA03
4D011AA05
4D011AD01
4D037AA08
4D037BA23
4D037BB04
(57)【要約】
【課題】冷却液に含まれる気泡を簡単な構成によって効率良く且つ確実に分離することができるリザーブタンクの気液分離機構を提供する。
【解決手段】リザーブタンク10は、対向する一方の側壁下部に設けられた冷却液の入口開口14と、他方の側壁下部に設けられた出口開口15と、冷却液から分離した気泡を排出するために上壁13Dに形成された気泡排出口17と、入口開口14側から出口開口15側へと向かう方向と平行に延在してリザーブタンクを第1室18と第2室19とに画する隔壁16とを備え、第1室18には入口開口14と出口開口15とが設けられ、気泡排出口17は少なくとも第1室18に設けられ、隔壁16は、リザーブタンク10の出口開口15側の端部の下方位置に設けられた下流側連通孔16aと、リザーブタンク10の入口開口14側の端部の上方位置に設けられた上流側連通孔16bを有している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却液の循環経路の液体ポンプよりも上流側に設けられたリザーブタンクに流入する冷却液に含まれる気泡を分離するための気液分離機構において、
前記リザーブタンクは、
対向する一方の側壁下部に設けられた前記冷却液の入口開口と、
他方の側壁下部に設けられた前記冷却液の出口開口と、
前記冷却液から分離した気泡を排出するために上壁に形成された気泡排出口と、
前記入口開口側から前記出口開口側へと向かう方向と略平行に延在して当該リザーブタンクを左右の第1室と第2室とに画する隔壁と、
を備え、
前記入口開口と前記出口開口とは前記第1室に設けられ、
前記気泡排出口は少なくとも前記第1室に設けられ、
前記隔壁は、
前記出口開口側の端部の下方位置に設けられた下流側連通孔と、
前記入口開口側の端部の上方位置に設けられた上流側連通孔とを有することを特徴とするリザーブタンクの気液分離機構。
【請求項2】
前記隔壁の上端の所定位置に前記第1室と前記第2室とを連通させる上部連通孔を設けたことを特徴とする請求項1に記載のリザーブタンクの気液分離機構。
【請求項3】
前記上流側連通孔は、前記下流側連通孔よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項1に記載のリザーブタンクの気液分離機構。
【請求項4】
前記上流側連通孔は、前記隔壁の上方位置に加えて下方位置にも追加的に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のリザーブタンクの気液分離機構。
【請求項5】
前記第1室は、前記第2室よりも容積が大きく形成されたことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のリザーブタンクの気液分離機構。
【請求項6】
前記気泡排出口は、前記第1室と前記第2室の双方に跨がって開口するように設けられたことを特徴とする請求項1に記載のリザーブタンクの気液分離機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却液の循環経路に設けられたリザーブタンクの気液分離機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両には、冷却液を循環させることによってエンジンや電力変換装置などの発熱機器を冷却する冷却システムが設けられている。この冷却システムにおいては、閉ループを構成する循環経路を冷却液が循環することによって発熱機器が冷却される。発熱機器の冷却に供されて温度が高くなった冷却液は、例えば、ラジエータなどの熱交換器における外気との熱交換によって冷却され、この冷却によって温度が下がった冷却液は、再び発熱機器の冷却に供される。このような作用が連続的に繰り返されることによって、発熱機器が冷却されてその温度を一定値以下に抑えるようになっている。
【0003】
ところで、冷却液の循環経路の液体ポンプの上流側には、冷却液を貯留するためのリザーブタンクが設けられている。このリザーブタンクは、冷却回路中に冷却液を補充するとともに、冷却液の熱膨張による体積変化を吸収する機能を果たす。このリザーブタンクには、冷却液中に含まれる気泡を分離して除去するための気液分離機構が設けられている。冷却液が液体ポンプに吸入される前に、冷却液中に含まれる気泡を気液分離機構によって冷却液から分離して除去することによって、液体ポンプによる気泡の吸い込みが防止され、気泡の吸い込みによる液体ポンプの不具合の発生が防止される。
【0004】
気液分離機構を備えたリザーブタンクとして、例えば、特許文献1には、リザーブタンク内部に、冷却液の流れに対して垂直の複数の隔壁が設けられ、各々の隔壁には貫通孔が形成されている気液分離構造を有するリザーブタンクが提案されている。このリザーブタンクは、各隔壁の貫通孔に隣接して、冷却液の流れ方向で見て後ろ側に、渦発生抑制手段として円弧状に曲げられた矩形翼片を設けて、貫通孔を通った後の冷却液の流れ中に渦が発生するのを防止するようになっている。ここで、この翼片は、隔壁と同じ高さであり、貫通孔の両側に貫通孔を挟むようにして徐々に広がる形状で設けられている。このリザーブタンクによれば、タンク内の貫通孔が形成された隔壁後面での渦の発生を抑制して、気液分離作用を改善することができる。
【0005】
また、特許文献2には、タンク本体部に、冷却液の流れ方向に対して垂直に構成された複数の内部隔壁を有しつつ、第1タンク流出口と第2タンク流出口が設けられたリザーブタンクが提案されている。このリザーブタンクの第2タンク流出口は、上記複数の内部隔壁を経由した第1流通経路の経路長よりも第2流通経路の経路長の方が短くなるように配置されている。これにより、経路長が長い方の第1流通経路を流れる冷却液の液量が抑えられ、それに応じてタンク本体内の液面の波立ちが小さくなる。その結果、冷却システムにおいて冷却液の循環流量が増加しても、タンク本体部内において冷却液への空気の巻込みを抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-120906号公報
【特許文献2】特開2017-166347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1において提案されたリザーブタンクは、冷却液の流れに対して垂直な複数の隔壁、および、この隔壁冷却液を誘導するための複数の翼片を形成しなければならず、製造工程の煩雑化と構造の複雑化を伴い製造コストが高くなるという問題がある。
【0008】
また、特許文献2において提案されたリザーブタンクは、冷却液の流れに対して垂直な複数の隔壁を形成しなければならず、製造工程の煩雑化と構造の複雑化を伴い製造コストが高くなるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、冷却液に含まれる気泡を簡単な構成によって効率良く分離し回収することができるリザーブタンクの気液分離機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態は、冷却液の循環経路の液体ポンプよりも上流側に設けられたリザーブタンクに流入する冷却液に含まれる気泡を分離するための気液分離機構において、前記リザーブタンクは、対向する一方の側壁下部に設けられた前記冷却液の入口開口と、他方の側壁下部に設けられた前記冷却液の出口開口と、前記冷却液から分離した気泡を排出するために上壁に形成された気泡排出口と、前記入口開口側から前記出口開口側へと向かう方向と略平行に延在して当該リザーブタンクを左右の第1室と第2室とに画する隔壁と、を備え、前記入口開口と前記出口開口とは前記第1室に設けられ、前記気泡排出口は、少なくとも前記第1室に設けられ、前記隔壁は、前記出口開口側の端部の下方位置に設けられた下流側連通孔と、前記入口開口側の端部の上方位置に設けられた上流側連通孔とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、冷却液に含まれる気泡を簡単な構成によって効率よく分離し回収することができるリザーブタンクの気液分離機構が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る気液分離機構を備えるリザーブタンク(サブタンク)の外観正面図である。
図2A】本発明の一実施形態に係る気液分離機構の構成を示すリザーブタンク(サブタンク)の上面図である。
図2B】本発明の一実施形態に係る気液分離機構の構成を示すリザーブタンク(サブタンク)の上面図である。
図2C】本発明の一実施形態に係る気液分離機構の構成を示すリザーブタンク(サブタンク)の上面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る気液分離機構の構成を示すリザーブタンク(サブタンク)の正面斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る気液分離機構の構成を示すリザーブタンク(サブタンク)の、第2室内の冷却液の流入出の様子を概念的に示す背面斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る気液分離機構の構成を示すリザーブタンク(サブタンク)の、第2室内の気泡の動きを概念的に示す背面斜視図である。
図6】本発明の第1変形例を示すリザーブタンク(サブタンク)の隔壁16の背面図である。
図7】車両に設けられた冷却システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図7は本発明の実施の形態に係る気液分離機構の適用対象となる例としての冷却システムを示しており、車両に設けられる場合を例に取った冷却液の循環経路を示すブロック図である。図に示した冷却システム100では、冷却液が、閉ループを構成する循環経路を循環する。この冷却液の循環によって、発熱機器である電力変換装置130とオイルクーラ140が冷却され、これらの温度を一定値以下に抑える。ここで、電力変換装置130には、インバータ(INV)、DC-DCコンバータ、オンボードチャージャ(OBC)などが含まれる。また、冷却液には、熱伝導率が高くて凍結しにくいエチレングリコールなどを主成分とする液体(不凍液)が用いられる。
【0015】
ここで、循環経路には、冷却液を循環させるための液体ポンプ110が設けられており、この液体ポンプ110から吐出される冷却液の流れ方向に沿ってラジエータ120、電力変換装置130、オイルクーラ140、リザーブタンク11のサブタンク10が順次配置されている。そして、液体ポンプ110の吐出側から延びる配管111はラジエータ120の入口側に接続されており、ラジエータ120の出口側から延びる配管112は電力変換装置130の入口側に接続されている。また、電力変換装置130の出口側から延びる配管113はオイルクーラ140の入口側に接続されており、オイルクーラ140の出口側から延びる配管114はサブタンク10の入口側に接続されている。さらに、サブタンク10の出口側から延びる配管115は液体ポンプ110の吸入側に接続されている。なお、ラジエータ120には、外気を当該ラジエータ120に通過させて冷却液と外気との熱交換を促進させるための電動式のラジエータファン121が設けられている。
【0016】
ところで、本適用例では、リザーブタンク11がメインタンク12とサブタンク10とに分割され、本発明に係る気液分離機構はサブタンク10に設けられている。ここで、サブタンク10は、前述のように循環経路に設けられており、このサブタンク10よりも上位にメインタンク12が配置されている。そして、メインタンク12とサブタンク10とは、連通管116によって互いに連通している。
【0017】
なお、上記適用例では、冷却対象である発熱機器として電力変換装置130とオイルクーラ140を挙げたが、冷却対象は、エンジンやその他の補器類などであっても良い。
【0018】
次に、サブタンク10と該サブタンク10に設けられた本発明の実施の形態に係る気液分離機構の構成を図1図4に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る気液分離機構を備えるサブタンク10の正面視構成を、図2A~2Cは、本発明の一実施形態に係る気液分離機構を備えるサブタンク10の上面視構成を、図3は、本発明の一実施形態に係る気液分離機構を備えるサブタンク10の正面斜視構成をそれぞれ示している。
【0020】
サブタンク10は、略矩形ボックス状に成形されており、一方の側壁13Aの下部には冷却液が流入する円形状の入口開口14が形成され、対向する側壁13Bの下部には、冷却液が流れ出る円形状の出口開口15が形成されている。これら側壁13Aと13Bは、これらに直交する2つの側壁13E,13Fで繋がれ、更に底壁13Cと上壁13Dによって密閉された矩形状のタンクとして構成されている。
【0021】
また、特徴的なことは、サブタンク10を冷却液の流れ方向に概略2分する隔壁16が設けられていることである。この隔壁16により、サブタンク10は第1室18と第2室19とに分割されている。
【0022】
ところで、入口流路を構成する一方のニップル14aのサブタンク10の上流側の側壁13Aへの接続部は、円形状の入口開口14として構成され、出口流路を構成する他方のニップル15aは、下流側の側壁13Bの下部に円形状の出口開口15として開口している。したがって、入口開口14と出口開口15は、冷却液の流れ方向に相対向して開口しており、それぞれ第1室18に設けられている。よって、冷却液の主流が入口開口14から第1室18へと流入し、出口開口15を経て第1室18から流出するように構成されている。また入口開口14と出口開口15には、入口流路と出口流路を構成する丸パイプ状のニップル14a,15aがそれぞれ水平に接続されている。そして、各ニップル14a,15aには、図7に示す配管114,115がそれぞれ接続されている。
【0023】
さらに、第1室18の上部であって、サブタンク10の上壁13Dの幅方向中央の上流側寄り(図3の右寄り、図4の左寄り)の位置には、丸パイプ状のニップル17aが垂直に接続されており(図2A参照)、このニップル17aには、図7に示す連通管116の長手方向の一端が接続されている。ここで、ニップル17aは、冷却液から分離した気泡を排出するための円形状の気泡排出口17としてサブタンク10の上壁13Dに開口している。そして、この気泡排出口17に対応するように、隔壁16の上端であって、気泡排出口17の設置箇所とリザーブタンク両側壁からの距離とが略同じ位置に、上部連通孔16dが設けられている。なお、ニップル17aの設置位置は、図2Bに示すように第2室19の上部であってもよく、または図2Cに示すように第1室18と第2室19とに跨った位置であってもよく、さらには第1室18の上部と第2室19の上部にそれぞれ設けられていてもよい。
【0024】
以上のように構成されたサブタンク10において、以上に説明した隔壁16と、隔壁16に設けられた下流側連通孔16a、上流側連通孔16b,16c、および上部連通孔16dによって本発明に係る気液分離機構が構成されている。なお、メインタンク12の構成については図および詳しい説明を省略するが、このメインタンク12の上端には、冷却液を補充するための開口部が開口しており、この開口部は、キャップによって閉じられている。そして、キャップには、弁(リリーフ弁)が設けられており、後述のようにサブタンク10に設けられた気液分離機構によって冷却液から分離した気泡BBが浮力によって連通管116を通ってメインタンク12へと導入される。そしてこれによってメインタンク12の内圧が所定値を超えると、弁が開いてメインタンク12内のエアが大気中に排出されるようになっている。
【0025】
次に、本発明に係る気液分離機構の作用を図3図5に基づいて以下に説明する。
【0026】
図3は、本発明に係る気液分離機構の作用を示すサブタンク10の正面斜視図である。前述のように発熱機器である電力変換装置130とオイルクーラ140の冷却に供された冷却液は、図3に示すように、上流側のニップル14aの入口開口14からサブタンク10内の下部に主流MFとして第1室18内に水平に流入する。そして、この第1室18内の下部に水平に流入した冷却液の主流MFは、下流側の出口開口15に向かって流れる過程で、その一部が下流側連通孔16aによって、隔壁16の裏側に相当する第2室19へと誘導される。なお、他の大部分の冷却液は、出口開口15から下流側のニップル15aを経て図7に示す配管115を通って液体ポンプ110の吸入側へと吸引される。
【0027】
ここで、第1室18はサブタンク10の1/2以上の容積を持つように構成されており、上流側のニップル14aの入口開口14および下流側のニップル15aの出口開口15の上方には広い空間が確保されている。そのため、第1室に流入する冷却液の主流MFの流量を充分に確保しつつ、主流MFが出口開口15へと流出するまでの間に、主流MFから比較的大きな気泡を効果的に分離させるための時間的、空間的余裕があり、第1室内の気泡は第1室18の上方に短時間だけ滞留する。そしてその一部は、浮力によって気泡排出口17からニップル17aおよび図7に示す連通管116を経て、図7に示すメインタンク12内へ流入して回収される。
【0028】
図4は、本発明に係る気液分離機構の作用を示し、第2室内の冷却液の流入出の様子を概念的に示す背面斜視図である。図4の手前に図示されているのは第2室19である。第2室19はサブタンク10の1/2未満の容積を持つように構成されているため、第1室8よりも容積が小さい。そして、前述のように、第1室18に主流MFとして流入する冷却液の一部が隔壁16の下流側連通孔16aによってこの第2室19に導入される。下流側連通孔16aから第2室19に導入された冷却液の亜流は、第2室19の下方から流入し、上流側連通孔16b,16cに向かうため、この第2室内において概ね上向きの流れを作り出す。
【0029】
図5は、本発明に係る気液分離機構の作用を示し、第2室内の気泡の動きを概念的に示す背面斜視図である。下流側連通孔16aから第2室19に導入された冷却液の亜流の上向きの流れは、冷却液に含まれる比較的小さな気泡bbを上昇させる作用を担う。また、この上向きの流れがサブタンク10の側壁13A,13B、上壁13Dおよび底壁13Cに衝突して、冷却液の縦回転の渦を発生させる。この縦回転の渦の作用により、冷却液に含まれる比較的小さな気泡bbは第2室の上方に滞留する。また、この構成によれば、第2室19の下方に流入した冷却液の亜流は、上方と下方の上流側連通孔16b,16cへと二手に分かれて向かう。上方側の上流側連通孔16bは、下流側連通孔16aからの冷却液の亜流を上方へと誘導する機能を、下方側の上流側連通孔16cは、気泡bbを第1室18へと再流出させることなく冷却液のみを第1室18へ流出させる機能を、それぞれ担っている。ここで、この上下の上流側連通孔16b,16cの合計面積は下流側連通孔16aよりも大きいところ、孔の面積と流速の積は一定であるから、連通孔の面積が大きければ流速は遅くなるので、上流側連通孔へ向かう流れの速度は遅くなる。この作用により、サブタンク10内に流入した冷却液(亜流)に含まれる気泡bbの冷却液からの分離が一層促進される。
【0030】
さらに、上記構成によれば、上流側連通孔16b,16cのそれぞれを経由して第2室19から第1室18へと流出する(戻る)冷却液の流速は、下流側連通孔16aから導入された冷却液の亜流の流速よりも相対的に遅くなる。これにより、第2室19の気泡bbが第1室18へと引き戻されてサブタンク10から流出してしまうことが防止される。
【0031】
さらに、隔壁16の、サブタンク10の上壁13Dと接する箇所のやや上流側には、上部連通孔16dが設けられている。第1室18および第2室19で上昇して上壁付近に滞留した気泡は、この上部連通孔16dを通って他方側の室空間に移動することが許容される。特に、上方の上流側連通孔16bによって亜流の速度が低下させられているため、上部連通孔16dを通過する気泡bbの流れの速度を十分に遅くすることができる。したがって、気泡排出口17が第1室18のみに設けられた場合でも、第2室19に溜まった気泡bbはこの上部連通孔16dを通って第1室18に移動する。そして第1室と第2室の気泡BBは、浮力によって気泡排出口17から効率よく排出され、ニップル17aおよび図7に示す連通管116を経て、図7に示すメインタンク12内へ流入して回収される。気泡排出口17を第1室18側に形成し、且つ当該上部連通孔16dの構成がない場合には、第2室上方に滞留した気泡bbは経時的に上流側連通孔16bから第1室側に移動して気泡排出口17から排出される。気泡排出口17を第1室と第2室の上部に跨るように形成すれば、当該上部連通孔16dを省略しても、気泡を気泡排出口17から排出することが可能となる(図2C参照)。代替的に、第2室側にも追加的に気泡排出口を形成した場合には、第2室の上方からも気泡bbが排出される。なお、メインタンク12内に気泡BBが回収される結果、該メインタンク12の内圧が所定値を超えると、前述のように、メインタンク12の図示していないキャップに設けられた弁(リリーフ弁)が開いて、エアが大気中に排出される。
【0032】
以上の作用が繰り返されることによって、サブタンク10内に主流MFとして流入した冷却液に含まれる気泡の冷却液からの分離が促進され、冷却液から分離した気泡BBがメインタンク12によって回収される。その結果、サブタンク10から図7に示す配管115へと流出して液体ポンプ110へと吸引される冷却液に気泡が含まれることが防止される。このため、液体ポンプ110のエア吸い込みによる不具合の発生が確実に防止され、該液体ポンプ110の安定した作動が確保される。
【0033】
そして、以上のように冷却液に含まれる気泡を該冷却液から分離させるための気液分離機構は、サブタンク10の上壁13Dに気泡排出口17を設け、冷却液の主流MFの流れる方向と略平行に下流側連通孔16a、2箇所の上流側連通孔16b,16c、および上部連通孔16dを備えた隔壁16を設けるだけの簡単な構造によって構成される。このため、当該気液分離機構の構造が単純化されるとともに、該気液分離機構を備えるサブタンク10の構造も単純化させることができ、その製造コストが低く抑えられる。なお、各連通孔の形状は図に示した形状に限らず、種々の形状を採用することができるのは言うまでもない。
【0034】
また、本実施の形態に係る図7に示す冷却システム100においては、リザーブタンク11をメインタンク12とサブタンク10に分割し、サブタンク10に気液分離機構を設ける構成を採用したため、メインタンク12の構造の単純化と小型化を図ることができる。また、それとともに、サブタンク10内を冷却液で満たすことができるため、液体ポンプ110へのエア吸い込みの問題を確実に解決することができる。
【0035】
次に、本発明の変形例について説明する。
【0036】
(変形例1)
以上の実施の形態においては、上流側連通孔を上方と下方の2箇所に設けているが、図6のように、上方側の上流側連通孔16bの面積を下流側連通孔16aの面積よりも大きく形成し、下方側の上流側連通孔16cを省略する構成にしてもよい。
【0037】
上述のように上方側の上流側連通孔16bを形成することにより、下流側連通孔16aから第2室に流入する冷却液の亜流の流れ方向を上方へと誘導することができる。そして、上方側の上流側連通孔16bの面積を下流側連通孔16aの面積よりも大きく形成することにより、上流側連通孔16bを経由して第2室19から第1室18へと流出する(第1室へ戻る)亜流の流速を、下流側連通孔16aから導入された冷却液の亜流の流速よりも相対的に遅くすることができる。上述のように、孔の面積と流速の積は一定であるから、孔が大きくなればなるほど亜流の速度は遅くなるためである。これにより、第2室19の気泡bbが第1室18へと引き戻されてサブタンク10から流出してしまうことが防止される。そして、このような構成を採用することで、該サブタンク10の構成がより簡素になって製造も容易になる。
【0038】
(変形例2)
以上の実施の形態においては、第1室18はサブタンク10の1/2以上の容積、そして第2室19はサブタンク10の1/2未満の容積をそれぞれ確保するように構成されているが、第1室18と第2室19の容積がほぼ等しくなるように構成してもよい。
【0039】
上述のように、第1室18と第2室19の容積がほぼ等しくなるように構成することにより、該サブタンク10の構成がより簡素になって製造も容易になる。
【0040】
(変形例3)
以上の実施の形態においては、サブタンク10は、略矩形ボックス状に成形されて構成されているが、該サブタンク10の上壁13Dを、切妻屋根形状(三角形状)に構成してもよい。
【0041】
上述のように、該サブタンク10の上壁13Dを切妻屋根形状(三角形状)に構成することにより、第1室18および第2室19の気泡をよりスムーズに上方へと誘導し、気泡排出口17(ニップル17a)から気泡BBを効果的に排出することが一層容易になる。
【0042】
なお、以上は本発明を車両の冷却システム100に備えられたリザーブタンク11(サブタンク10)の気液分離機構に対して適用した形態について説明したが、本発明は、車両以外の任意の冷却システムに備えられたリザーブタンクの気液分離機構に対しても同様に適用可能である。
【0043】
また、以上に説明した実施の形態では、リザーブタンク11をメインタンク12とサブタンク10とに2分割し、サブタンク10に気液分離機構を設けた例について説明したが、単体のリザーブタンクに設けられる気液分離機構に対しても本発明を適用することができることは言うまでもない。
【0044】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲および明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論のことである。
【符号の説明】
【0045】
10 サブタンク
11 リザーブタンク
12 メインタンク
13A サブタンクの上流側側壁
13B サブタンクの下流側側壁
14 入口開口
14a ニップル(入口流路)
15 出口開口
15a ニップル(出口流路)
16 隔壁
16a 下流側連通孔
16b 上流側連通孔(上方)
16c 上流側連通孔(下方)
16d 上部連通孔
17 気泡排出口
17a ニップル
18 第1室
19 第2室
100 冷却システム
110 液体ポンプ
116 連通管
120 ラジエータ
130 電力変換装置
140 オイルクーラ
BB, bb 気泡
MF 冷却液の主流
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7