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  • 特開-画像形成装置およびミスト捕集方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103172
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】画像形成装置およびミスト捕集方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20240725BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B41J2/17 103
B41J2/01 401
B41J2/01 301
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007361
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 隆弘
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EB06
2C056EB13
2C056EC13
2C056EC28
2C056JC17
2C056KD10
(57)【要約】
【課題】適切にノズルから放出されるミストを媒体に吸着させる。
【解決手段】インク16を用いて、液滴16a媒体Pに射出すると共にミストを放出するノズル15と、媒体Pを一定極性に帯電させる帯電器とを備え、インク16とノズル15とは、射出時に互いに摩擦帯電されるものであり、帯電器は、正極に摩擦帯電したインク16と逆極性の負極に媒体Pを帯電させるものである。これにより、正極に帯電した液滴16aと共にミストが媒体Pに静電吸着される。帯電器の帯電電圧は、媒体Pの種類や搬送速度によって変えられる。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを用いて、液滴を媒体に射出すると共にミストを放出するノズルと、
前記媒体を一定極性で帯電させる帯電器とを備え、
前記インクと前記ノズルとは、射出時に互いに摩擦帯電されるものであり、
前記帯電器は、摩擦帯電した前記インクと逆極性に前記媒体を帯電させるものである
画像形成装置。
【請求項2】
複数の前記ノズルによって、印字ユニットが構成されており、
前記帯電器は、前記印字ユニットの上流側に配設されている
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記帯電器の上流側にさらに除電器を設け、
前記除電器は、帯電前の前記媒体を除電する
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記除電器から前記印字ユニットまでの間において、前記媒体に接触する部材は、前記帯電器のみである
請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記帯電器と前記印字ユニットとの間に、前記媒体の表面電位を測定する表面電位計をさらに設け、
前記表面電位の測定値に応じて、前記帯電器の帯電電圧を設定変更する
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記印字ユニットの下流側にさらに除電器を設け、
前記除電器は、前記媒体を除電する
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記インクは、絶縁性インクであり、
前記ノズルは、絶縁性ノズルである
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記媒体の搬送速度が速いときには、前記帯電器の帯電電圧の絶対値を高くし、
前記媒体の搬送速度が遅いときには、前記帯電器の帯電電圧の絶対値を低くする
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記媒体の種類に応じて、前記帯電器の電圧を設定変更する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記印字ユニットの近傍空間にミスト濃度計をさらに設け、
前記ミスト濃度計の測定値に応じて、前記帯電器の電圧を調整制御する
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記帯電器と前記ノズルを含む各印字部との間に、前記媒体の表面電位を測定する表面電位計をさらに設け、
各印字部の上流側に前記除電器、前記帯電器および前記表面電位計を設ける
請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記ノズルを含む最上流の印字部の前記帯電器が接触ローラ式である
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記インクの色彩ごとに前記帯電器の電圧を調整制御する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記帯電器は、非接触コロナ方式である
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項15】
インクを用いて、液滴を媒体に射出すると共にミストを放出するノズルと、前記媒体を一定極性で帯電させる帯電器とを備えた画像形成装置のミスト捕集方法であって、
射出時に、前記インクと前記ノズルとが互いに摩擦帯電される工程と、
前記帯電器が摩擦帯電した前記インクと逆極性に前記媒体を帯電させる工程と、
前記ミストが前記媒体に静電吸着される工程と、
を有するミスト捕集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置およびミスト捕集方法に関し、例えば、インクジェット方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像形成装置では、ノズルからインクを射出(吐出)させるときに、液滴以外にサテライト滴が生成され、ミストが放出されてしまう。特許文献1には、基材を負極に帯電させた状態で、インクをノズルから射出し、その後に、基材をサテライト滴(正極)と逆極性(負極)に帯電させ、サテライト滴およびその微小なものを基材に静電吸着させる、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-214880号公報(図3、段落0023)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、静電吸着させるときに、基材を負極に帯電させるので、ノズルを正極に静電誘導させている。しかしながら、インクを射出(吐出)させるときの摩擦帯電により、インクが正極に帯電し、ノズルが負極に帯電してしまう。つまり、ノズルは、静電誘導により正極に帯電するが、摩擦帯電により逆極性(負極)に帯電してしまう。そのため、サテライト滴等の誘導電荷が減少したり、帯電極性が反転したりする。これにより、サテライト滴等の基材(媒体)への静電吸着が不十分になったり、吸着しなくなったりする。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、適切にノズルから放出されるミストを媒体に吸着させることができる画像形成装置およびミスト捕集方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、下記の手段により解決される。
【0007】
(1)インクを用いて、液滴を媒体に射出すると共にミストを放出するノズルと、前記媒体を一定極性で帯電させる帯電器とを備え、前記インクと前記ノズルとは、射出時に互いに摩擦帯電されるものであり、前記帯電器は、摩擦帯電した前記インクと逆極性に前記媒体を帯電させるものである画像形成装置。
【0008】
(2)複数の前記ノズルによって、印字ユニットが構成されており、前記帯電器は、前記印字ユニットの上流側に配設されている、前記(1)に記載の画像形成装置。
【0009】
(3)前記帯電器の上流側にさらに除電器を設け、前記除電器は、帯電前の前記媒体を除電する前記(2)に記載の画像形成装置。
【0010】
(4)前記除電器から前記印字ユニットまでの間において、前記媒体に接触する部材は、前記帯電器のみである前記(3)に記載の画像形成装置。
【0011】
(5)前記帯電器と前記印字ユニットとの間に、前記媒体の表面電位を測定する表面電位計をさらに設け、前記表面電位の測定値に応じて、前記帯電器の帯電電圧を設定変更する前記(2)に記載の画像形成装置。
【0012】
(6)前記印字ユニットの下流側にさらに除電器を設け、前記除電器は、前記媒体を除電する前記(2)に記載の画像形成装置。
【0013】
(7)前記インクは、絶縁性インクであり、前記ノズルは、絶縁性ノズルである前記(1)に記載の画像形成装置。
【0014】
(8)前記媒体の搬送速度が速いときには、前記帯電器の帯電電圧の絶対値を高くし、前記媒体の搬送速度が遅いときには、前記帯電器の帯電電圧の絶対値を低くする前記(1)に記載の画像形成装置。
【0015】
(9)前記媒体の種類に応じて、前記帯電器の電圧を設定変更する前記(1)に記載の画像形成装置。
【0016】
(10)前記印字ユニットの近傍空間にミスト濃度計をさらに設け、前記ミスト濃度計の測定値に応じて、前記帯電器の電圧を調整制御する前記(2)に記載の画像形成装置。
【0017】
(11)前記帯電器と前記ノズルを含む各印字部との間に、前記媒体の表面電位を測定する表面電位計をさらに設け、各印字部の上流側に前記除電器、前記帯電器および前記表面電位計を設ける前記(3)に記載の画像形成装置。
【0018】
(12)前記ノズルを含む最上流の印字部の前記帯電器が接触ローラ式である(2)に記載の画像形成装置。
【0019】
(13)前記インクの色彩(色相、彩度、明度)ごとに前記帯電器の電圧を調整制御する(1)に記載の画像形成装置。
【0020】
(14)前記帯電器は、非接触コロナ方式である前記(1)に記載の画像形成装置。
【0021】
(15)インクを用いて、液滴を媒体に射出すると共にミストを放出するノズルと、前記媒体を一定極性で帯電させる帯電器とを備えた画像形成装置のミスト捕集方法であって、射出時に、前記インクと前記ノズルとが互いに摩擦帯電される工程と、前記帯電器が摩擦帯電した前記インクと逆極性に前記媒体を帯電させる工程と、前記ミストが前記媒体に静電吸着される工程と、を有する画像形成装置のミスト捕集方法。
【0022】
(16)インクを用いて、液滴を媒体に射出するノズルと、前記媒体を一定極性で帯電させる帯電器とを備え、前記インクと前記ノズルとは、射出時に互いに摩擦帯電されるものであり、前記帯電器は、摩擦帯電した前記インクと逆極性に前記媒体を帯電させるものであり、摩擦帯電された前記ノズルが帯電する摩擦電荷の方が前記媒体から前記ノズルに受ける誘導電荷よりも大きく、射出された前記液滴の落下に伴って、生成されるサテライト滴が前記媒体に静電吸着される画像形成装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、適切にノズルから放出されるミストを媒体に吸着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態である画像形成装置の構成図である。
図2A】ノズルから液滴が射出し始めた状態を示した図である。
図2B】射出した液滴がノズルから媒体に落下している状態を示す図(1)である。
図2C】射出した液滴がノズルから媒体に落下している状態を示す図(2)である。
図3】複数の液滴の射出に伴って発生するサテライト滴やミストの様子を示す図である。
図4】印刷ジョブの動作を説明するためのフローチャートである。
図5A】本発明の第1比較例であるノズルから液滴が射出し始めた状態を示した図である。
図5B】ノズルから液滴が媒体に落下し始めて、サテライト滴が生成し始めている様子を示す図である。
図5C】生成されたサテライト滴が媒体に落下している状態を示した図(1)である。
図5D】サテライト滴および主液滴が媒体に落下している状態を示した図(2)である。
図6】本発明の第2比較例である画像形成装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示しているにすぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素は、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0026】
本発明の画像形成装置は、インクを液滴にして、媒体に射出するノズルと、前記媒体を一定極性で帯電させる帯電器とを備え、前記インクと前記ノズルとは、射出時に互いに摩擦帯電されるものであり、前記帯電器は、前記媒体を前記液滴と逆極性に帯電させるものであり、前記液滴と共に前記ノズルから放出されるミストが前記媒体に静電吸着されることを特徴とする。
【0027】
(実施形態)
まず、図1の構成図を参照して、本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成について説明する。
画像形成装置100は、円筒形状の画像形成ドラム60の外周面に沿って、搬送される媒体Pに画像を形成する。この画像形成ドラム60は、媒体Pを吸着しながら、所定の回転速度ωで回転する。媒体Pの搬送速度vは、画像形成ドラム60の半径をrとして、v=rωである。また、媒体Pは、紙葉類であり、CD-ROM等の板材であっても構わない。画像形成装置100は、印字ユニット10と、帯電器20と、除電器25と、表面電位計30と、定着部40と、画像読取部45と、制御部50と、画像形成ドラム60と、分離ドラム70と、受け渡しドラム81と、爪部82と、搬送ベルト75,83とを備える。印字ユニット10は、複数の印字部(Kインクヘッド11、Cインクヘッド12、Mインクヘッド13、Yインクヘッド14)から構成される。
【0028】
図2A乃至図2Cは、ノズル15から液滴が射出し始めた状態から液滴が媒体Pに到達するまでの様子を示した図である。ここで、媒体Pは、帯電器20(図1)を用いて、負極に帯電させられている。
各々の印字部は、先端にノズル15を有しており、制御部50の制御によって圧力が加えられ、各色のインク16がノズル孔15aから媒体Pに向けて射出(吐出)する。これにより、回転体形状の液滴16aがノズル孔15aに形成される。インク16は、UV硬化型であり、顔料、樹脂ワニス、光重合開始剤、他、助剤から構成されている。また、ノズル15は、PI(Poly Imide)樹脂で形成されている。つまり、本実施形態では、インク16とノズル15との双方が絶縁性である。絶縁性インクおよび絶縁性ノズルを使用しているので、インク16がノズル孔15aから吐出するときに、ノズル15の内面とインク16とは、インク16の流動により互いに摩擦帯電する。このとき、帯電列にしたがって、ノズル15の内面が負に帯電し、インク16が正に帯電する。また、媒体Pが負極に帯電させられているので、静電誘導により、ノズル15の外面が正極に帯電する。
【0029】
図2Bは、液滴16a(図2A)の滴下により、液滴90が落下している状態である。この状態は、回転体形状の液滴16aの重力が表面張力に打ち勝ち、落下することにより、球形の液滴90に変形したものである。液滴16aの滴下に伴い、正極に帯電したミスト93がノズル孔15aから放出される。なお、インク16の吐出停止(流動停止)に伴い、ノズル15とインク16との摩擦帯電が停止する。一方、静電誘導によるノズル15の外面の正極電荷は保持される。
【0030】
図2Cでは、正極に帯電した液滴90が媒体Pに向けて落下し、負極に帯電した媒体Pに静電吸着すると共に、正極に帯電したミスト93も媒体Pに静電吸着する。これにより、ミスト93は、媒体Pに捕集される。
【0031】
図3は、複数の液滴91a,91bの射出に伴って発生するサテライト滴やミストの様子を示す図である。
まず、1滴目の液滴16a(図2)の滴下に伴い、ノズル孔15aから多数のミスト93aが放出される。そして、主液滴91aが形成されるときに、球状のサテライト滴92aも生成される。なお、サテライト滴92aは、涙滴型の尾部90c(図5B参照)が切断したもの(サテライト滴92c(図5C参照))である。また、主液滴91aは、頭部90b(図5B参照)および尾部90cの残部が球状に変形したものである。
【0032】
次に、2滴目の主液滴91bの滴下と共に、多数のミスト93bがノズル孔15aから放出され、サテライト滴92bが生成される。ミスト93a,93bは印字のための主玉(主液滴91a,91b)に比べて十分に小さく、直径0.1~1.0μmである。そのため、媒体Pに付着しても肉眼やルーペで確認することができず、印刷品質を損ねない。一方、サテライト滴92a,92bは、媒体Pに付着したとき、肉眼で確認できるので、印刷品質を低下させ得るものである。そのため、サテライト滴92a,92bは、質量が重く浮遊しないので、これらを発生させない射出制御やインク設計が重要な対策となる。
【0033】
図1(構成図)の説明に戻り、帯電器20は、印字ユニット10の上流側に配設されており、媒体Pを所定の表面電位に帯電させる。ここで、上流側とは、印字ユニット10が搬送される媒体Pの受入れ側を意味する。帯電器20には、直流高電圧電源を用いた非接触のコロナ放電方式(非接触コロナ方式)または帯電ローラ方式が採用される。なお、帯電プラテン方式は、媒体Pに擦り傷が生じ易いので、採用が控えられる。
【0034】
また、画像形成中の帯電器20には、一定の極性、所定電圧の帯電電圧Eが印加させられる。つまり、帯電器20の帯電電圧Eは、射出と同期して、昇降圧したり、極性が反転したりしない。なお、帯電器20の帯電能力は、印加電圧や媒体Pとの距離などで、調整することができる。帯電能力の調整により、帯電器20は、搬送速度や媒体の種類に応じて、媒体Pを過不足なく帯電させることができる。
【0035】
また、帯電器20は、媒体Pの搬送速度vが速いときには、帯電電圧Eの絶対値を大きくし、搬送速度vが遅いときには、帯電電圧Eの絶対値を小さくしている。また、帯電電圧Eは、媒体Pの種類や色彩(色相、彩度、明度)に応じて変更できることが好ましい。
【0036】
除電器25は、コロナ放電方式であり、帯電器20の上流側に配設されている。除電器25は、帯電器20による帯電前に予め、媒体Pを除電する。媒体Pの表面は、印字ユニット10に到達するとき、媒体同士や搬送経路と摩擦して面内不均一に帯電してしまう。媒体表面を予め除電した後で、帯電器20で帯電することで、媒体Pは、均一な表面電位になる。これにより、媒体Pは、安定してミスト93a,93b(図3)を吸着できる。
媒体Pの表面の帯電分布は紙サイズ、種類、搬送条件(片面両面、搬送力、搬送速度など)、湿度などに応じて異なる。そのため、除電器25は、最大搬送速度、最高表面電位に足りる能力を備え、最大紙幅に足りるサイズとする。また、除電器25から印字ユニット10までの間では、媒体Pに接触する部材は、帯電器20のみである。つまり、除電器25から印字ユニット10までの間には、押さえローラ等を配設していない。
【0037】
表面電位計30は、帯電された媒体Pの表面電位VSを測定する。媒体Pの表面電位VSは、-100V~-1000Vが適切であり、過剰な値だと、搬送経路や媒体同士でジャムし易い。帯電器20は、搬送速度vや媒体Pの種類に加えて、電極の汚れや劣化によっても帯電能力が変動しやすい。そのため、表面電位VSを測定して帰還制御した方が、帯電電圧Eを固定するよりも長期的に安定した表面電位に制御できる。
【0038】
定着部40は、UV光を照射する露光器を用いて媒体Pに吐出した液滴を定着したり、図示しないヒータ(加熱器)を用いて媒体Pに液滴を定着したりする。画像読取部45は、ラインセンサであり、定着した液滴で形成された画像を、媒体Pを搬送させながら読み取る。なお、定着部40および画像読取部45は、印字ユニット10の下流側に配設されている。
【0039】
受け渡しドラム81は、爪部82を介して搬送ベルト83から搬送された媒体Pを画像形成ドラム60に受け渡す。分離ドラム70は、画像形成ドラム60から媒体Pを分離し、搬送ベルト75に受け渡す。
【0040】
図4は、印刷ジョブの動作を説明するためのフローチャートである。この印刷ジョブは、1枚目の媒体Pの搬送によって、制御部50が実行する。
まず、制御部50は、媒体Pに対して、除電器25(図1)を用いた除電(S11)、帯電器20(図1)を用いた帯電(S12)、表面電位計30(図1)を用いた表面電位の測定(S13)を行い、1枚目の印刷を行う(S14)。
【0041】
S14の処理後、制御部50は、FB(Feed Back)帯電制御を開始する(S20)。具体的には、制御部50は、帯電器20を用いて、n(n=2,3,・・・)枚目の媒体Pを帯電させる(S21)。S21の処理後、制御部50は、除電器25を駆動し、帯電された媒体Pを除電する(S22)。S22の処理後、制御部50は、再び、帯電器20を用いて、除電された媒体Pを所定電位に帯電させる(S23)。S23の処理後、制御部50は、表面電位計30に対して媒体Pの表面電位VS(図1)を測定させる(S24)。
【0042】
S24の処理後、制御部50は、測定した表面電位VSが基準範囲か否か判定する(S25)。もし、基準範囲外であれば(S25で基準範囲外)、制御部50は、電圧設定を変更後(S26)、処理をS23に戻し、媒体Pを帯電させる。一方、測定した表面電位VSが基準範囲内であれば(S25で)、制御部50は、印字ユニット10および定着部40に対して、n枚目の媒体Pに印刷させる(S27)。S27の後、制御部50は、印刷ページの判定を行う(S28)。もし、印刷ページが途中ページであれば(S28で途中ページ)、制御部50は、処理をS21に戻し、帯電等を実行する(S21,S22,S23)。一方、最終ページであれば(S28で最終ページ)、制御部50は、FB帯電制御を終了すると共に(S29)、印刷ジョブも終了する。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の画像形成装置100によれば、ノズル15とインク16との双方が絶縁性なので、インク16の吐出と同時にノズル15とインク16とが摩擦帯電する。このとき、インク16が樹脂ワニスを主体とし、ノズル15がPI(Poly Imide)樹脂であれば、インク16が正に帯電し、ノズル15の内面が負極に帯電する。帯電器20を用いて、媒体Pを負極に帯電させておけば、液滴90(図2C)およびミスト93が媒体Pに静電吸着する。そのため、ミスト93の浮遊により、ノズル15が汚れることがない。
【0044】
(第1比較例)
前記実施形態では、液滴90(図2B)の滴下に伴って、ノズル孔15aから放出されるミスト93(図2B)の吸着について説明したが、本比較例では、液滴90の落下に伴って発生するサテライト滴92c(図5C図5D参照)の振る舞いについて説明する。
【0045】
図5A乃至図5Dは、第1比較例の画像形成方法を説明する図である。
また、図5A乃至図5Dにおいても、前記実施形態と同様に、媒体Pを負極に帯電させている。図5Aは、図2Aと同様に、摩擦帯電によって、ノズル15の内面が負に帯電すると共に、インク16が正に帯電する。そして、回転体形状の液滴16aがノズル孔15aに形成される。図5Bにおいて、正極の液滴16a(図5A)の重力が表面張力に打ち勝ったときに、液滴90aとして滴下する。このとき、液滴90aは、頭部90bと尾部90cとが連続形成された涙滴型等の流線型である。このとき、静電誘導によるノズル15の外面の正極電荷が維持される一方、インク16の吐出停止(流動停止)に伴い、ノズル15とインク16との摩擦帯電が停止する。これにより、頭部90bは、摩擦帯電による正極に維持されるが、尾部90cは、静電誘導によってノズル15の外面に発生する正極電荷の影響を受けて負極に帯電する。
【0046】
図5Cでは、尾部90cの一部(最上部)が頭部90bと離間し、負極に帯電したサテライト滴92cとなる。つまり、本比較例のサテライト滴92cは、液滴90aの尾部90cの一部が離間して形成される点で、ノズル孔15aから放出される前記実施形態のミスト93(図2B図2C)と異なる。なお、頭部90bおよび尾部90cの残部が主液滴91cとなり、主液滴91cが落下する。図5Dにおいては、主液滴91c(図5C)は、その落下に伴い、涙滴型から球状に変形し、主液滴91dとして媒体Pに落下し、吸着する。また、負に帯電したサテライト滴92cは、負に帯電した媒体Pと反発し、正に帯電したノズル15に吸着してしまう。
【0047】
なお、図5Bにおいて、インク16の吐出(流動)が停止しても、ノズル15とインク16とが摩擦帯電した摩擦電荷が残り得る。このとき、摩擦電荷が誘導電荷よりも大きければ、ノズル15の極性が全体として負極になるので、尾部90c(図5B)の極性は、正極に帯電する。つまり、サテライト滴92cは、負に帯電した媒体Pに吸着し、正に帯電したノズル15を汚さない。一方、摩擦帯電が静電誘導よりも小さければ、ノズル15の極性が全体として正極になるので、尾部90cの極性は、負極に帯電する。つまり、負に帯電したサテライト滴92cは、負に帯電した媒体Pと反発し、正に帯電したノズル15に吸着してしまう。
【0048】
(第2比較例)
前記実施形態では、媒体Pを負極に帯電させた状態で、正極に摩擦帯電したミスト93を負極に帯電した媒体Pに静電吸着させて捕集したが、印字ユニット10の下流側に配設されたミストキャッチ47(図6)でミスト93(図6)を捕集することもできる。
【0049】
図6は、本発明の第2比較例の画像形成装置の構成図である。
画像形成装置101は、前記第1実施形態の画像形成装置100(図1)と同様に、印字ユニット10と、定着部40と、画像読取部45と、制御部50と、画像形成ドラム60と、分離ドラム70と、受け渡しドラム81と、爪部82と、搬送ベルト83とを備える。しかしながら、画像形成装置101は、帯電器20(図1)と除電器25(図1)と表面電位計30(図1)とを備えておらず、ミストキャッチ47を備えている点で相違する。
【0050】
ミストキャッチ47は、印字ユニット10の下流側に配設されており、印字ユニット10から放出されたミスト93を捕集するものである。ミストキャッチ47は、不図示のファンで気流を発生してミスト93を吸引し、内部のフィルタ(不図示)でろ過して捕集する。なお、本比較例では、最終色の後に1個配設しているが、ミストキャッチ47は、Kインクヘッド11、Cインクヘッド12、Mインクヘッド13、Yインクヘッド14の各々に配設する場合もある。
【0051】
本比較例の画像形成装置101では、ミスト発生からミストキャッチ47に捕集されるまでの経路(画像形成ドラム60の外周表面に沿う、断面視円弧状の経路)は、ミスト93が付着して汚染され、機能低下が生じるおそれがある。また、ノズル15にもミスト93が付着してしまう。例えば、上流側のノズル15から放出されたミスト93が下流側のノズル15を通過したときに、下流側のノズル15にミスト93が付着してしまう。これにより、ミスト93は、ノズル孔15a(図22)を部分的に塞いで、印字部は、射出欠や曲がりを生じさせてしまう。
【0052】
これに対して、前記実施形態の画像形成装置100では、媒体Pがミスト93を静電吸着するので、画像形成ドラム60の外周表面に沿う、断面視円弧状の経路がミスト93で汚れることがない。また、上流側のノズル15から放出されたミスト93が下流側のノズル15を通過することが無いので、下流側のノズル15にミスト93が付着することがない。
【0053】
(変形例)
本発明は、前記各実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変形実施が可能であり、例えば、次の(a)~(e)のようなものがある。
(a)前記各実施形態では、ノズル15の材質をPI(Poly Imide)樹脂にして、主液滴91やミスト93を正極に帯電させ、正極に帯電したミスト93を負極に帯電した媒体Pに静電吸着させたが、ノズル15の材質をガラス材質等に変更することにより、ミスト93を負極に帯電させることもできる。このときには、帯電器20は、媒体Pを正極に帯電させる。
(b)前記実施形態では、印字ユニット10の上流側に表面電位計30、帯電器20および除電器25を配設したが、各印字部の上流部、つまり各印字部の間に表面電位計30、帯電器20、除電器25を配設しても構わない。これによれば、前段の印字部でベタ画像を形成したときでも、改めて、次段の表面電位を適切に設定することができる。
【0054】
(c)印字ユニット10や各印字部(Kインクヘッド11、Cインクヘッド12、Mインクヘッド13、Yインクヘッド14)の近傍空間にミスト濃度計を配設しても構わない。制御部50は、そのミスト濃度計の測定値に応じて、帯電器20の帯電電圧を調整することが好ましい。
(d)前記実施形態では、媒体Pを帯電させる帯電電圧を一定値にしていたが、インク16の色彩(色相、彩度、明度)ごとに帯電器20の帯電電圧を調整制御しても構わない。
(e)前記実施形態の帯電器20は、コロナ放電方式または帯電ローラ方式であったが、最上流の印字部(例えば、Yインクヘッド14)の帯電器は、接触ローラ方式であっても構わない。
【符号の説明】
【0055】
10 印字ユニット
11 Kインクヘッド(印字部)
12 Cインクヘッド(印字部)
13 Mインクヘッド(印字部)
14 Yインクヘッド(印字部)
15 ノズル
16 インク
16a 液滴
20 帯電器
25 除電器
30 表面電位計
40 定着部(露光部)
47 ミストキャッチ
50 制御部
90,90a 液滴
91,91a,91b,91c,91d 主液滴
92,92a,92b,92c サテライト滴
93,93a,93b ミスト
100,101 画像形成装置
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6