(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103189
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】ストッパ機構
(51)【国際特許分類】
E05B 65/08 20060101AFI20240725BHJP
E05C 7/02 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
E05B65/08 Z
E05C7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007385
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝口 麻美
(57)【要約】
【課題】操作方法を知る者だけが容易に着脱が可能となるストッパ機構。
【解決手段】ストッパ機構10Aのストッパ本体32Aは、板バネ56によって正面視の時計方向に付勢され、係合突起54cが係合切欠30dに係合することにより該固定台30Aからの抜けを防止するレバー54と、下方に変位することでレバー54を押圧する押圧突起58eを備え、捩りバネ60によって平面視の反時計方向に付勢されているキー操作部材58と、捩りバネ60によって付勢されている初期状態で押圧突起58eの下方方向への変位を規制する内部ストッパ58fとを備える。キー操作部材58は、平面視の時計方向に変位させることで内部ストッパ58fによる規制から解放され、さらに下方方向に変位させることでレバー54を押圧して正面視の反時計方向に変位させることで係合突起54cと係合切欠30dとの係合が解除される。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定台、および該固定台に対して着脱可能であって障子の変位を規制するストッパ本体を有するストッパ機構であって、
前記ストッパ本体は、
第1弾性体によって第1方向に沿った一方に付勢され係合部が前記固定台の被係合部に係合することにより該固定台からの抜けを防止する第1部材と、
第2弾性体によって前記第1方向とは異なる第2方向に沿った一方に付勢され、内部ストッパによって前記第2方向とは異なる第3方向への変位が規制されている第2部材と、
を備え、
前記第2部材は、前記第2方向に沿った他方へ変位させることで前記内部ストッパによる規制から解放され、さらに前記第3方向に変位させて前記第1部材を押圧して前記第1方向に沿った他方へ変位させることで前記係合部と前記被係合部との係合が解除される
ことを特徴とするストッパ機構。
【請求項2】
前記第1方向は前記障子の見込み方向を基準軸とする回転方向であり、
前記第2方向は前記障子の見付け方向を基準軸とする回転方向であり、
前記第3方向は下へ向かう方向である
ことを特徴とする請求項1に記載のストッパ機構。
【請求項3】
前記固定台および前記ストッパ本体は、前記障子の下端部を変位規制する位置に設けられており、
前記第2部材は、上方に露呈するキー係合部を備え該キー係合部に係合するキーによって前記第2方向に回転操作され、さらに前記第3方向に押し込み操作される
ことを特徴とする請求項2に記載のストッパ機構。
【請求項4】
前記障子は内障子であり、該内障子および見込み方向に隣接してスライドする外障子によって引き違い窓が構成され、
前記固定台は前記外障子の下端部に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のストッパ機構。
【請求項5】
前記下端部を構成する下框は、前記固定台が固定される側に露呈する樹脂框および該樹脂框によって覆われる金属框によって構成される複合材であり、
前記樹脂框と前記金属框との間には筒スペーサが設けられ、
前記固定台は、前記樹脂框の第1取付孔から前記筒スペーサを通り、さらに前記金属框の第2取付孔を通るターンナットに螺合する取付ネジによって固定されている
ことを特徴とする請求項4に記載のストッパ機構。
【請求項6】
前記固定台は、
固定対象の取付面に対して取り付けられる座板と、
前記座板の両端から見込み方向に短く折り曲げられ、さらに見付け方向で互いに離間する方向へと2段階に折り曲げられて突出するレール部と、
を有し、
一対の前記レール部は前記取付面との間で前記ストッパ本体に設けられる一対の係合片をスライド可能に挟持する
ことを特徴とする請求項1に記載のストッパ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障子の変位を規制するストッパ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
窓には老人や子供などが不用意に開くことを防止するため開度を制限するストッパ機構を設けることがある。このようなストッパ機構は必要に応じて着脱可能であることが望ましい。特許文献1に記載のストッパ機構では、キー孔に差し込んだキーを回す操作によって取り外しが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のストッパ機構は、キーをキー孔に差し込んで回すという一般的な操作によって取り外しが可能となっており、キーを入手した者は誰でもストッパ機構を容易に取り外すことができてしまう。一方、管理者にとっては過度に複雑な操作をすることなくストッパ機構が取り外し可能であることが望ましい。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、操作方法を知る者が容易に着脱可能となるストッパ機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるストッパ機構は、固定台、および該固定台に対して着脱可能であって障子の変位を規制するストッパ本体を有するストッパ機構であって、前記ストッパ本体は、第1弾性体によって第1方向に沿った一方に付勢され係合部が前記固定台の被係合部に係合することにより該固定台からの抜けを防止する第1部材と、第2弾性体によって前記第1方向とは異なる第2方向に沿った一方に付勢され、内部ストッパによって前記第2方向とは異なる第3方向への変位が規制されている第2部材と、を備え、前記第2部材は、前記第2方向に沿った他方へ変位させることで前記内部ストッパによる規制から解放され、さらに前記第3方向に変位させて前記第1部材を押圧して前記第1方向に沿った他方へ変位させることで前記係合部と前記被係合部との係合が解除される。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかるストッパ機構では、ストッパ本体を固定台から外すためには第2部材を第3方向へ変位させることにより第1部材を操作する必要があるが、各弾性体の付勢力による初期状態では第2部材は内部ストッパによる規制があるため、一度第2方向に沿った他方へ変位させてからでないと第3方向へ変位させることができない。このような構成により、操作方法を知らない者にとっては操作が困難である一方、操作方法を知る者は容易に着脱を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態にかかるストッパ機構が適用される引き違い窓を室内側から見た図である。
【
図2】引き違い窓におけるストッパ機構が適用されている箇所の拡大縦断面図である。
【
図3】第1の実施形態にかかるストッパ機構の分解斜視図である。
【
図4】第1の実施形態にかかるストッパ機構を構成する固定台およびストッパ本体の斜視図である。
【
図5】キーおよびストッパ本体の分解斜視図である。
【
図8】基準状態におけるストッパ機構の内部構成を示す正面図である。
【
図9】第1ブロックおよびキー操作部材の横断面図である。
【
図10】キー操作部材が下降した状態におけるストッパ機構の内部構成を示す正面図である。
【
図11】第2実施形態にかかるストッパ機構を構成する固定台およびストッパ本体を示す斜視図である。
【
図12】第3実施形態にかかるストッパ機構と該ストッパ機構が適用される縦滑り出し窓を室内側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明にかかるストッパ機構の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。第1の実施形態にかかるストッパ機構10Aは、例えば
図1に示す引き違い窓12に適用されるが、片開き窓などに適用してもよい。片開き窓に適用する場合にはストッパ機構10Aを固定壁下端に設けるとよい。
【0010】
図1は、ストッパ機構10Aが適用される引き違い窓12を室内側から見た図である。以下の説明において、見込み方向とは室内外に沿う方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、下枠等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0011】
引き違い窓12は枠体14の内部に室内側の内障子(障子)16及び室外側の外障子18を備える。内障子16と外障子18とは見込み方向に隣接しており、下枠のレール20に案内されてスライドするようになっている。内障子16は、下框22a、上框22b、右縦框22c、左縦框22dを四周框組みすることによって矩形状に構成した框体の内部に面材24を保持したものである。外障子18は、下框26a、上框26b、右縦框26c、左縦框26dを四周框組みすることによって矩形状に構成した框体の内部に面材24を保持したものである。各框は、樹脂材やアルミニウム合金の押し出し形材によって所定の横断面形状を有するように構成してある。
【0012】
本実施の形態では、各框はアルミニウム合金等の金属と樹脂との複合材となっており、強度および断熱性に優れるとともに好適な意匠が得られている。外障子18の下框26aを例にすると、金属框26aa(
図2参照)を樹脂框26abが覆う複合材となっている。本実施の形態においては、樹脂框26abは室内側に露呈しており、金属框26aaの少なくとも室内側を覆っているものとする。樹脂框26abの室内側は後述する固定台30Aが固定される側に相当する。樹脂框26abと金属框26aaとの間には隙間26acが形成されていて断熱性が確保されている。
【0013】
次に、ストッパ機構10Aについて説明する。ストッパ機構10Aは、スライドする内障子16が変位する経路上に配置されて変位を規制するものであり、具体的には外障子18の下端部である下框26aの室内側見込み面において、召し合せ部となる右側端近傍に設けられている。ストッパ機構10Aは建具の下部に設けられており、しかも小さいため目立つことがない。
【0014】
ストッパ機構10Aは、内障子16の左縦框22dの枠外側見込み面に当接することにより左側への変位を規制するとともに、外障子18の右側への変位を規制する。ストッパ機構10Aは、下框26aに対して取付位置を左右方向に多少ずらすことにより、内障子16または外障子18の変位許容量を0とし、または換気などを目的として多少の変位を許容するようにしてもよい。
【0015】
図2は、引き違い窓12におけるストッパ機構10Aが適用されている箇所の拡大縦断面図である。
図3は、ストッパ機構10Aの分解斜視図である。
図4はストッパ機構10Aを構成する固定台30Aおよびストッパ本体32Aの斜視図である。ストッパ機構10Aは、下框26aの室内側見込み面に設けられる固定台30Aと、該固定台30Aに対して着脱可能なストッパ本体32Aとを有する。
【0016】
固定台30Aは、固定対象の下框26aの室内側見込み面に対して左右一対の取付ネジ34によって取り付けられる座板30aと、座板30aの上下両端から2段階に折り曲げられて互いに対向するように形成された2つのレール部30bとを有する。固定台30Aは正面視で左右方向にやや長い矩形である。レール部30bと座板30aとの間には隙間30cが形成されている。2つのレール部30bのうち上方のものには、中央に下向開口で三角状の係合切欠(被係合部)30dが形成され、左端に面取部30eが形成されている。係合切欠30dは複数が左右方向に並列して形成されていてもよい。座板30aには取付ネジ34が通るネジ孔30fが形成されている。
【0017】
樹脂框26abと金属框26aaとの間の隙間26acには2つの筒スペーサ36が設けられている。筒スぺーサ36は適用条件により樹脂材または金属材から選択する。筒スぺーサ36は規格品を適用可能である。2本の取付ネジ34はそれぞれ、樹脂框26abの第1取付孔38から筒スペーサ36を通り、さらに金属框26aaの第2取付孔40を通るターンナット42に螺合することによって固定台30Aを固定している。
【0018】
固定台30Aは、見込み幅W1が適度に薄く形成されており、内障子16の下框22aがスライドする経路上に沿った位置で、且つ該下框22aとは干渉しないように配置されている。すなわち、ストッパ本体32Aが固定台30Aから取り外されている状態では、内障子16および外障子18は左右にスライド自在となる。
【0019】
図5は、キー70およびストッパ本体32Aの分解斜視図である。ストッパ本体32Aは、ベース板44および内カバー46が主筐体を構成しており、これらを外カバー48が覆う構成となっている。ベース板44および内カバー46は板金を屈曲加工およびドリル加工などすることで形成される。
【0020】
ベース板44は平面視で略L字形状であって、室外側の主板(係合片)44aと該主板44aの左端から室内側に突出する側板44bとを有する。固定台30A(
図4参照)は、隙間30cに主板44aの上下の縁部44aaが差し込まれるようになっており、一対のレール部30bが縁部44aaをスライド可能に挟持する。
【0021】
内カバー46は平面視でクランク形状であって、右板46aと左板46bとの間に段差板46cを有している。右板46aは上下および右側に室外側に突出する低いヒレ46aaを有している。このうち右側のヒレ46aaが主板44aに当接することで該主板44aとの間に比較的狭い第1部品収納室50(
図8参照)を形成する。右板46aには上下2つのピン孔46abが形成されている。
【0022】
左板46bは右板46aよりやや室内側にあり、段差板46c、主板44aおよび側板44bとともに第2部品収納室52(
図8参照)を形成する。第2部品収納室52は平面視で略正方形である。第1部品収納室50と第2部品収納室52とは連通している。
【0023】
外カバー48はベース板44および内カバー46の上下左右および室内側を覆っている。ただし、右側面に関しては主板44aが露呈されて固定台30Aのレール部30bを差し込み可能となっている。外カバー48における上面のやや左寄りの箇所には外キー孔48aが形成されている。外カバー48は正面から左面にかけて滑らかな円弧面を形成している。外カバー48は樹脂成型品である。
【0024】
ストッパ本体32Aはさらに、レバー(第1部材)54、板バネ(第1弾性体)56、キー操作部材(第2部材)58、捩りバネ(第2弾性体)60、第1ブロック62、第2ブロック64、および2つのピン66を有する。レバー54および板バネ56は概ね第1部品収納室50に収納されており、キー操作部材58、捩りバネ60、第1ブロック62および第2ブロック64は概ね第2部品収納室52に収納されている。2つのピン66は室外側からそれぞれ上下のピン孔46abに挿通されており、ヘッド66aが主板44aに当接することで室外側へ抜けないようになっている。
【0025】
レバー54は、軸支部54aと、軸支部54aから左方向に延在するアーム54bと、アーム54bの途中から上方に突出する三角状の係合突起(係合部)54cと、アーム54bの先端から室内側にやや突出する被押圧ヒレ54dとを有する。軸支部54aは中央に軸孔が形成されていて、2つのピン66のうち上側のものが挿通している。レバー54は軸支部54aを基準として回動可能となっている。
【0026】
板バネ56は、円弧部56aと、円弧部56aの上側端部から左方向に延在する上延在部56bと、円弧部56aの下側端部から左方向に延在する下延在部56cとを有する。円弧部56aには、2つのピン66のうち下側のものが挿通している。下延在部56cは上延在部56bの略半分の長さで、先端が下向きに屈曲しており、所定の係合部に当接している。上延在部56bはアーム54bの下面に当接している(
図8参照)。このような構成により板バネ56は、見込み方向のピン66を基準軸としてレバー54を正面視時計方向(第1方向に沿った一方)に弾性付勢している。また、係合突起54cに関しては上向きに弾性付勢されていることになる。
【0027】
図6は、キー操作部材58の斜視図である。キー操作部材58は上下方向の円柱部58aをベースに構成されており、上面のフランジ58bと、さらにその上方のキー係合部58cと、下面の押圧突起(押圧部)58eと、側面に設けられたバネ係合突起58dおよび内部ストッパ58fとを有する。
【0028】
フランジ58bは上方部58baが下方部58bbよりやや大径の二段構造となっている。キー係合部58cは後述するキー70が係合する低い六角柱形状である。キー係合部58cおよびそれに対応するキー70の係合部は六角形以外の非円形であってもよい。押圧突起58eはレバー54の被押圧ヒレ54dを押圧する小さい突起である。バネ係合突起58dは円柱部58aの下端の一部が径方向に突出する部分であり、中央の孔に捩りバネ60の一端が係合する。キー操作部材58はバネ係合突起58dを介して捩りバネ60から平面視反時計方向に弾性付勢されている。なお、捩りバネ60の他端はレバー54(
図8参照)の被押圧ヒレ54dの一部に係合している。
【0029】
内部ストッパ58fは円柱部58aの周面の一部が突出している部分であり、フランジ58bから上下方向に沿い、円柱部58aの略中間高さ部まで延在している。内部ストッパ58fは下方部58bbと連続する周面を形成する。本実施例の内部ストッパ58fは円柱部58aを基準として略15度程度である。バネ係合突起58dと内部ストッパ58fとは略180度ずれた位置にある。
【0030】
図7は、第1ブロック62の斜視図である。第1ブロック62はキー操作部材58におけるフランジ58bの下方部58bbと、それよりさらに下の部分を収納している。第1ブロック62には、下方から上方に向かって3段階に拡径する円形の中空部62aが形成されている。中空部62aの下方中空部62aa、中間中空部62abおよび上方中空部62acは、順に円柱部58a、下方部58bbおよび上方部58baが嵌合する径となっている。
【0031】
下方中空部62aa周面には中間中空部62abの周面まで達するストッパ切欠62bおよび貫通切欠62cが形成されている。ストッパ切欠62bと貫通切欠62cとは周方向に連続して形成されている。貫通切欠62cはストッパ切欠62bに対して平面視時計方向側にあり、下方中空部62aaを上下に貫通している。貫通切欠62cの周方向幅は内部ストッパ58fよりやや広くなっている。
【0032】
ストッパ切欠62bは下方中空部62aaの上端から略中間高さ部までに亘って形成されており、下端にストッパ座面62baを形成する。本実施例でストッパ切欠62bの周方向幅は内部ストッパ58fの2~3倍程度である。
【0033】
中空部62aの周面にはさらに補助切欠62dが形成されている。補助切欠62dは組み立て工程でバネ係合突起58dが通過する部分であり、中空部62aの上下全長に亘って形成されている。第1ブロック62の上部には、室外側段差部62eおよび室内側段差部62fが形成されている。室外側段差部62eによりベース板44の主板44aとの間に隙間が形成されレール部30bが進入可能となっている。
【0034】
図5に戻り第2ブロック64について説明する。第2ブロック64は第1ブロック62と組み合わされて見かけ上1つのブロックとなってキー操作部材58を収納する。第2ブロック64は、側面視で略L字形状を形成する上板64aと側板64bとを有する。上板64aにはキー孔64cが形成されている。上板64aはフランジ58bに当接することによりキー操作部材58の抜けを防止する。側板64bは第1ブロック62の室内側段差部62fと組み合わされるようになっている。キー孔64cの内部にはキー係合部58cが配置される。キー孔64cと上記の外キー孔48aとは同軸上にあってキー係合部58cを露呈させているが、キー係合部58cとの隙間は小さく、次に説明するキー70以外の工具等は差し込みにくくなっている。また、キー係合部58cは外カバー48の上面よりやや奥まった位置にあり、キー70以外の工具では実質的に操作不能となっている。
【0035】
キー70はストッパ機構10Aの付属物であり、ストッパ本体32Aの取り外し時に用いられる。
図5ではキー70を上下逆に示している。キー70はツマミ部70aと、該ツマミ部70aから下方に突出する筒部70bとを有する。筒部70bの中心には六角穴70cが形成されている。筒部70bはキー孔64cおよび外キー孔48aに嵌合可能である。六角穴70cにはキー係合部58cが嵌合および係合する。キー係合部58cは軸が鉛直向きであり、キー孔64cおよび外キー孔48aは該キー係合部58cの上面を露呈するように開口していることからキー70は上方から操作することになり、建具の下部にあるストッパ本体32Aに対して操作しやすい。
【0036】
図8は、基準状態におけるストッパ機構10Aの内部構成を示す正面図である。
図8(および
図10)では内カバー46、外カバー48を省略して内部を露呈させている。また第1ブロック62および第2ブロック64は仮想線で示している。基準状態ではレバー54が板バネ56によって正面視時計方向に付勢されており、係合突起54cが固定台30Aの係合切欠30dに係合している。これにより、ストッパ本体32Aは固定台30Aから抜けないようになっており、内障子16および外障子18の変位規制作用を奏する。係合突起54cと係合切欠30dとは凹凸が逆であってもよい。
【0037】
レバー54の被押圧ヒレ54dは押圧突起58eを上方に向けて付勢しており、キー操作部材58はフランジ58bが第2ブロック64(
図5参照)の上板64aに当接する上限位置となっている。なお、ストッパ本体32Aを固定台30Aに取り付ける際には、主板44aの上下の縁部44aaを隙間30c(
図3参照)に差し込むようにして左から右にスライドさせることにより、係合突起54cが一旦レール部30bにより押し下げられてレバー54が板バネ56に抗して反時計方向にやや回動し、その後係合突起54cが固定台30Aの係合切欠30dに係合して
図8に示す状態となる。このように、ストッパ本体32Aの装着は容易な操作によって行われる。
【0038】
次に、キー70を用いてストッパ本体32Aを固定台30Aから取り外す手順について説明する。
図9は、第1ブロック62およびキー操作部材58の横断面図である。
図10は、キー操作部材58が下降した状態におけるストッパ機構10Aの内部構成を示す正面図である。
【0039】
図9に示すように、キー操作部材58の円柱部58aは第1ブロック62の下方中空部62aaに嵌合している。キー操作部材58は捩りバネ60によって平面視反時計方向(第2方向に沿った一方)に付勢されていることから、内部ストッパ58fはストッパ切欠62bの反時計側の壁62bbに当接している。この基本状態において、内部ストッパ58fの下方にはストッパ座面62baがある。
【0040】
ストッパ本体32Aを固定台30Aから取り外すためには、レバー54を正面視で反時計方向に回動させて係合突起54cと係合切欠30dとの係合を解除しなければならない。しかしながら、内部ストッパ58fの下方にはストッパ座面62baがあることから動作制限がなされ、キー操作部材58は下方に変位不能となっておりレバー54を押圧することができない。
【0041】
そのため、ストッパ機構10Aにおいてストッパ本体32Aを固定台30Aから取り外すには、キー70をキー係合部58cに係合させた後に二段階の手順が必要となっている。まず、第1段階の手順としてはキー70を平面視時計方向に回動させる。キー操作部材58は捩りバネ60に抗してキー70とともに平面視時計方向(第2方向に沿った他方)に変位し、内部ストッパ58fは貫通切欠62cの領域に入る。なお、キーをキー孔に差し込んで回すという第1段階の手順は一般的な操作であるが、この手順だけではストッパ本体32Aを取り外すことはできない。
【0042】
そして、第2段階の手順としてそのままキー70を下方(第3方向)に押し下げる。貫通切欠62cは上下方向に貫通していることからキー操作部材58は内部ストッパ58fによる規制から解放されており、キー70とともに下方に変位する。これにより
図10に示すように、キー操作部材58の押圧突起58eがレバー54の被押圧ヒレ54dを押圧して板バネ56に抗して正面視反時計方向(第1方向に沿った他方)に回動して係合突起54cと係合切欠30dとの係合が解除される。この状態のままキー70を左方向に移動させると、ストッパ本体32Aは固定台30Aから取り外される。固定台30Aから取り外されたストッパ本体32Aは、キー70を抜くと板バネ56および捩りバネ60の弾性力によって
図8に示す基準状態に復帰する。
【0043】
このように、本実施の形態にかかるストッパ機構10Aでは、基本的にキー70の管理者だけがストッパ本体32Aの取り外しが可能であるが、仮にキー70を入手した者がいてもキーをキー孔に差し込んで回すという一般的な操作だけでは取り外しができなくなっている。一方、キー70を回動して押し下げるという二段階の操作手順を知る管理者は、容易にストッパ本体32Aを取り外すことができる。
【0044】
このような作用は、レバー54が見込み方向を基準軸とした第1方向に回動可能となっているのに対して、キー70の動きをレバー54に伝達するための中継部品であるキー操作部材58は見付け方向を基準軸とする第2方向に回動可能となっており、双方の回動可能方向が異なっていて、第2方向とは異なる第3方向への操作を介してでないと変位伝達が不能となっていることに基づいている。
【0045】
なお、第1方向および第3方向は第2方向と異なっていれば足り、種々の態様を取り得る。これらの代表的方向としては見込み方向、見付け方向、または左右にスライドする方向、およびこれらを基準軸とした回転方向の合計6方向から任意に選択可能である。また、例えば第1方向としてレバー54を上下スライド式とすると、第1方向と第3方向とは等しくなり得る。
【0046】
次に、他の実施形態にかかるストッパ機構10B,10Cについて説明する。ストッパ機構10B,10Cについて上記のストッパ機構10Aと同様の構成要素について同符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0047】
図11は、第2実施形態にかかるストッパ機構10Bを構成する固定台30Bおよびストッパ本体32Bを示す斜視図である。ストッパ本体32Bにおけるレバー54、係合突起54cなどは図示を省略している。固定台30Bの座板30aは上記のものと同じである。2つのレール部30gは座板30aの上下両端から室内側見込み方向に短く折り曲げられ、さらに見付け方向で互いに離間する方向へと2段階に折り曲げられて突出している。2つのレール部30gのうち上側のものには下端部から座板30aにかけて係合切欠30dが形成されている。
【0048】
ストッパ本体32Bにおける縁部(係合辺)44abは、主板44aの上下両端から室外側見込み方向に短く折り曲げられ、さらに見付け方向で互いに接近する方向へと2段階に折り曲げられている。一対のレール部30gは取付面である下框26aの室内側見付け面で一対の縁部44abをスライド可能に挟持する。このようなストッパ機構10Bでは下框26aの室内側見付け面が縁部44abの挟持材の一方を兼ねることになり、その分だけ見込み幅W2が薄く形成されることになり、下框26aと内障子16との隙間が相当狭い場合にも適用可能となる。
【0049】
図12は、第3実施形態にかかるストッパ機構10Cと該ストッパ機構10Cが適用される縦滑り出し窓80を室内側から見た斜視図である。縦滑り出し窓80は枠体82の枠内部に障子84が配置されており、ハンドル86を操作することにより障子84の右側部分が室外側に変位して開口するようになっている。ストッパ機構10Cは固定台30Cおよびストッパ本体32Aを有する。ストッパ本体32Aは上記したものと同じである。固定台30Cは上記の固定台30Aとほぼ同様の構成であるが見込み幅W3がやや大きく設定されている。
【0050】
固定台30Cは下框84aの右端部分に設けられている。ストッパ本体32Aは障子84よりもやや右側に突出し、正面視では一部が枠体82と重なる。このようなストッパ機構10Cでは、障子84の右端部分が外側に変位することをストッパ本体32Aの室外側面が枠体82に当接することで規制することができる。ストッパ本体32Aの固定台30Cに対する着脱方法は、上記のストッパ機構10Aと同様である。
【0051】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0052】
本発明にかかるストッパ機構は、固定台、および該固定台に対して着脱可能であって障子の変位を規制するストッパ本体を有するストッパ機構であって、前記ストッパ本体は、第1弾性体によって第1方向に沿った一方に付勢され係合部が前記固定台の被係合部に係合することにより該固定台からの抜けを防止する第1部材と、第2弾性体によって前記第1方向とは異なる第2方向に沿った一方に付勢され、内部ストッパによって前記第2方向とは異なる第3方向への変位が規制されている第2部材と、を備え、前記第2部材は、前記第2方向に沿った他方へ変位させることで前記内部ストッパによる規制から解放され、さらに前記第3方向に変位させて前記第1部材を押圧して前記第1方向に沿った他方へ変位させることで前記係合部と前記被係合部との係合が解除されることを特徴とする。
【0053】
ストッパ本体を固定台から外すためには第2部材を第3方向へ変位させることにより第1部材を操作する必要があるが、各弾性体の付勢力による初期状態では第2部材は内部ストッパによる規制があるため、一度第2方向に沿った他方へ変位させてからでないと第3方向へ変位させることができない。このような構成により、操作方法を知らない者にとっては操作が困難である一方、操作方法を知る者は容易に着脱を行うことができる。
【0054】
本発明にかかるストッパ機構は、前記第1方向は前記障子の見込み方向を基準軸とする回転方向であり、前記第2方向は前記障子の見付け方向を基準軸とする回転方向であり、前記第3方向は下へ向かう方向であってもよい。このような方向を選択すると障子に対して好適に適用できる。
【0055】
本発明にかかるストッパ機構は、前記固定台および前記ストッパ本体は、前記障子の下端部を変位規制する位置に設けられており、前記第2部材は、上方に露呈するキー係合部を備え該キー係合部に係合するキーによって前記第2方向に回転操作され、さらに前記第3方向に押し込み操作されてもよい。このような下端部に設けられたストッパ機構は目立たず、上面側からの操作しやすくなっている。またキーの管理者以外は実質的に操作を行うことができず、管理者以外が不用意に障子を開くことが防止される。
【0056】
本発明にかかるストッパ機構は、前記障子は内障子であり、該内障子および見込み方向に隣接してスライドする外障子によって引き違い窓が構成され、前記固定台は前記外障子の下端部に設けられていてもよい。このような構成では、内障子と外障子の両方を変位制限することができる。外障子の下端部は目立たず、しかも室内側から操作が可能である。障子の下端部は一般的に框構成であり、ストッパ機構の固定に適する。
【0057】
本発明にかかるストッパ機構は、前記下端部を構成する下框は、前記固定台が固定される側に露呈する樹脂框および該樹脂框によって覆われる金属框によって構成される複合材であり、前記樹脂框と前記金属框との間には筒スペーサが設けられ、前記固定台は、前記樹脂框の第1取付孔から前記筒スペーサを通り、さらに前記金属框の第2取付孔を通るターンナットに螺合する取付ネジによって固定されていてもよい。このような構成により複合材に対してストッパ機構を適切に固定することができる。
【0058】
本発明にかかるストッパ機構は、前記固定台は、固定対象の取付面に対して取り付けられる座板と、前記座板の両端から見込み方向に短く折り曲げられ、さらに見付け方向で互いに離間する方向へと2段階に折り曲げられて突出するレール部と、を有し、一対の前記レール部は前記取付面との間で前記ストッパ本体に設けられる一対の係合片をスライド可能に挟持してもよい。これにより取付面と障子との隙間が狭い箇所にも適用可能となる。
【符号の説明】
【0059】
10A,10B,10C ストッパ機構、16 内障子、18 外障子、22a,26a,84a 下框、26aa 金属框、26ab 樹脂框、30A,30B,30C 固定台、30a 座板、30b,30g レール部、30d 係合切欠、32A,32B ストッパ本体、36 筒スペーサ(スペーサ)、38 第1取付孔、40 第2取付孔、42 ターンナット、44 ベース板、44aa,44ab 縁部(係合辺)、48 外カバー、54 レバー(第1部材)、54c 係合突起、54d 被押圧ヒレ、56 板バネ(第1弾性体)、58 キー操作部材(第2部材)、58a 円柱部、58c キー係合部、58e 押圧突起、58f 内部ストッパ、60 捩りバネ(第2弾性体)、62 第1ブロック、62aa 下方中空部、62ab 中間中空部、62ac 上方中空部、62b ストッパ切欠、62ba ストッパ座面、62c 貫通切欠、64 第2ブロック、70 キー