(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103193
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】香り見本容器
(51)【国際特許分類】
B65D 85/00 20060101AFI20240725BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B65D85/00 A
B65D83/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007391
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100177644
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 和樹
(72)【発明者】
【氏名】仲井間 祥吾
【テーマコード(参考)】
3E068
【Fターム(参考)】
3E068AA35
3E068AC08
3E068AC10
3E068BB02
3E068CC03
3E068CC09
3E068CD03
3E068CE02
3E068DD08
3E068DD09
3E068DD13
3E068DD40
3E068DE13
3E068EE19
(57)【要約】
【課題】芳香体から生じる芳香を長期間にわたって維持することができる香り見本容器を提供する。
【解決手段】
芳香体3を収容するための紙製の香り見本容器1は、天面開口部10Uを有する筒状に形成され、周面に第1貫通穴51が穿設されている第1筒部10と、芳香体3を収容可能な筒状に形成され、周面に第2貫通穴52が穿設され、天面開口部10Uから第1筒部10の内部に軸方向にスライド可能に挿設される第2筒部20と、蛇腹状に形成され、第2筒部20を第1筒部10の天面開口部10Uから突出させる方向に付勢する付勢部40と、を備えている。第2筒部20は、付勢部40に付勢されて一部を第1筒部10の外部に突き出され、第2貫通穴52を第1貫通穴51から上方に位置ずれさせた突出位置P1と、付勢部40の付勢力に抗して全部を第1筒部10の内部に押し込まれ、第2貫通穴52を第1貫通穴51に一致させた押込位置との間でスライドする。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香体(3)を収容するための紙製の香り見本容器(1)であって、
軸方向の一端に開口部(10U)を有する筒状に形成され、周面に第1貫通穴(51)が穿設されている第1筒部(10)と、
軸方向の両端を閉じられて前記芳香体を収容可能な筒状に形成され、周面に第2貫通穴(52)が穿設され、前記開口部から前記第1筒部の内部に軸方向にスライド可能に挿設される第2筒部(20)と、
蛇腹状に形成され、前記第1筒部と前記第2筒部との軸方向の他端間に架設され、前記第2筒部を前記第1筒部の前記開口部から突出させる方向に付勢する付勢部(40)と、を備え、
前記第2筒部は、
前記付勢部に付勢されて一部を前記第1筒部の外部に突き出され、前記第2貫通穴を前記第1貫通穴から軸方向に一方に位置ずれさせた突出位置(P1)と、
前記付勢部の付勢力に抗して一部または全部を前記第1筒部の内部に押し込まれ、前記第2貫通穴を前記第1貫通穴に一致させた押込位置(P2)との間でスライドすることを特徴とする香り見本容器。
【請求項2】
前記第1筒部と前記第2筒部との分離を規制する分離規制部(45)を更に備え、
前記分離規制部は、
前記第1筒部の前記開口部の縁部から内側かつ軸方向の他方に向かって延設される第1係合片(46)と、
前記第2筒部の軸方向の他端から外側かつ軸方向の一方に向かって延設され、前記第2筒部を前記突出位置に移動した場合に前記第1係合片に噛み合い、前記第2筒部を前記押込位置に移動した場合に前記第1係合片から軸方向の他方に離間する第2係合片(47)と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の香り見本容器。
【請求項3】
前記第1筒部の軸方向の他端には、他の開口部(10D)が開口し、
前記第1筒部の前記他の開口部の縁部には、折り重ねられて前記他の開口部を閉塞する複数の第1フラップ(15,16)が連設され、
前記付勢部の軸方向の他端部は、折り重ねた複数の前記第1フラップの間に挟まれることで前記第1筒部に連結されることを特徴とする請求項1または2に記載の香り見本容器。
【請求項4】
前記第1貫通穴と前記第2貫通穴のうち少なくとも前記第2貫通穴は、前記芳香体の挿通を規制するように形成され、
前記第2貫通穴は、前記第1貫通穴よりも軸方向に長く形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の香り見本容器。
【請求項5】
前記芳香体は、粒径2~4mmに形成され、
前記第1筒部の内周面と前記第2筒部の外周面との隙間(G)は、平均して、前記芳香体の粒径の半分以下に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の香り見本容器。
【請求項6】
前記第1筒部には、陳列台の被掛合部(4)に掛合するフック部(30)が連結されることを特徴とする請求項1または2に記載の香り見本容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香体を収容するための紙製の香り見本容器に関する。
【背景技術】
【0002】
香料保持部を支持したフラップ本体がケーシングの内部空間に配置された紙製の香り見本が知られている(特許文献1)。ケーシングには外部に通じる通気口が穿設され、フラップ本体の上部にはケーシングから外部に露出するタブが設けられている。タブを操作して、フラップ本体をケーシングの内面に衝突するように揺動させると、内部空間において風が発生し、香料保持部からの香りが通気口を通じてケーシングの外部に送り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した香り見本では、フラップ本体を揺動させるか否かに関わらず、ケーシングの内部空間と外部とは、通気口を介して常に連通しており、香料保持部から生じる香りは、常に通気口から外部に漏出していた。このように、常時、通気口から香りが逃げる香り見本では、香料保持部から生じる香りが短期間で弱くなる(または枯渇する)という問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮し、芳香体から生じる芳香を長期間にわたって維持することができる香り見本容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、芳香体を収容するための紙製の香り見本容器であって、軸方向の一端に開口部を有する筒状に形成され、周面に第1貫通穴が穿設されている第1筒部と、軸方向の両端を閉じられて前記芳香体を収容可能な筒状に形成され、周面に第2貫通穴が穿設され、前記開口部から前記第1筒部の内部に軸方向にスライド可能に挿設される第2筒部と、蛇腹状に形成され、前記第1筒部と前記第2筒部との軸方向の他端間に架設され、前記第2筒部を前記第1筒部の前記開口部から突出させる方向に付勢する付勢部と、を備え、前記第2筒部は、前記付勢部に付勢されて一部を前記第1筒部の外部に突き出され、前記第2貫通穴を前記第1貫通穴から軸方向に一方に位置ずれさせた突出位置と、前記付勢部の付勢力に抗して一部または全部を前記第1筒部の内部に押し込まれ、前記第2貫通穴を前記第1貫通穴に一致させた押込位置との間でスライドする。
【0007】
この場合、前記第1筒部と前記第2筒部との分離を規制する分離規制部を更に備え、前記分離規制部は、前記第1筒部の前記開口部の縁部から内側かつ軸方向の他方に向かって延設される第1係合片と、前記第2筒部の軸方向の他端から外側かつ軸方向の一方に向かって延設され、前記第2筒部を前記突出位置に移動した場合に前記第1係合片に噛み合い、前記第2筒部を前記押込位置に移動した場合に前記第1係合片から軸方向の他方に離間する第2係合片と、を有してもよい。
【0008】
この場合、前記第1筒部の軸方向の他端には、他の開口部が開口し、前記第1筒部の前記他の開口部の縁部には、折り重ねられて前記他の開口部を閉塞する複数の第1フラップが連設され、前記付勢部の軸方向の他端部は、折り重ねた複数の前記第1フラップの間に挟まれることで前記第1筒部に連結されるとよい。
【0009】
この場合、前記第1貫通穴と前記第2貫通穴のうち少なくとも前記第2貫通穴は、前記芳香体の挿通を規制するように形成され、前記第2貫通穴は、前記第1貫通穴よりも軸方向に長く形成されているとよい。
【0010】
この場合、前記芳香体は、粒径2~4mmに形成され、前記第1筒部の内周面と前記第2筒部の外周面との隙間は、平均して、前記芳香体の粒径の半分以下に設定されているとよい。
【0011】
この場合、前記第1筒部には、陳列台の被掛合部に掛合するフック部が連結されるとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、芳香体からの芳香を長期間にわたって維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る香り見本容器(突出位置)を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る香り見本容器(押込位置)を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る香り見本容器の第1筒部のブランクを示す平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る香り見本容器の第2筒部および分離規制部のブランクを示す平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る香り見本容器の第1筒部を折り畳んだ状態を示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る香り見本容器の第2筒部を折り畳んだ状態を示す斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る香り見本容器を組み立てる手順を説明する斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る香り見本容器の第2筒部を第1筒部に挿設する手順を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、図面に示すFr、Rr、L、R、U、Dは、前、後、左、右、上、下を示している。前後方向、左右方向(幅方向)および上下方向(軸方向)は、互いに直交している。本明細書では方向や位置を示す用語を用いるが、それらの用語は説明の便宜のために用いるものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、方向や位置を示す用語は、香り見本容器(香り見本)を使用する状態での方向や位置を基準にしている。
【0015】
図1ないし
図4を参照して、香り見本容器1について説明する。
図1は香り見本容器1(突出位置P1)を示す斜視図である。
図2は香り見本容器1(押込位置P2)を示す斜視図である。
図3は香り見本容器1の第1筒部10のブランク5Aを示す平面図である。
図4は香り見本容器1の第2筒部20および分離規制部45のブランク5B,5Cを示す平面図である。
【0016】
香り見本容器1は、粒状に形成された芳香体3(後述する
図9等参照)を収容するための紙製の容器である。香り見本容器1は、複数粒の芳香体3を収容した状態で香り見本2として利用される。
図1および
図2に示すように、香り見本2は、例えば、店頭に設置された陳列台(図示せず)のプライスレール等の被掛合部4に掛けられた状態で展示される。香り見本2は、洗剤、芳香剤または香水等の商品の香りを、顧客が店頭で購入前に試香するものである。
【0017】
なお、香り見本2(香り見本容器1)は、顧客が片手で持てる程度の大きさであって、例えば、高さ(最大値)が50~100mm程度、前後・左右方向の寸法(最大値(フック部30含まず。)が20~40mm程度とされている。また、芳香体3は、例えば、粒径(粒子の平均直径)が4mm程度となる粒状(球状)に形成されたセルロースに、芳香剤を浸み込ませたものである。なお、芳香体3の粒径は、4mmに限らず、例えば2~4mmの範囲であるとよい。また、複数粒の芳香体3は、それぞれ、略同一の粒径とされてもよいし、異なる粒径とされてもよい(異なる粒径の芳香体3が混合してもよい)。また、香り見本2には、複数粒の芳香体3が収容されているが(
図9等参照)、1粒以上の芳香体3が収容されていればよい。また、芳香体3は、粒状(球状)に限らず、ペレット状(円柱状)に形成されてもよいし、キューブ状に形成されてもよい(いずれも図示せず)。また、芳香体3は、脱脂綿やスポンジ等の多孔質体に芳香剤を浸み込ませたものでもよい(図示せず)。
【0018】
香り見本容器1は、第1筒部10と、第2筒部20と、フック部30と、付勢部40(後述する
図7参照)と、分離規制部45(後述する
図7参照)と、を備えている。第1筒部10は、上端(軸方向の一端)に天面開口部10U(開口部)を有する略四角筒状に形成されている。第2筒部20は、上下方向(軸方向)の両端を閉じられて芳香体3を収容可能な略四角筒状に形成されている。また、第2筒部20は、天面開口部10Uから第1筒部10の内部に上下方向にスライド可能に挿設されている。第1筒部10の周面(正面)には第1貫通穴51が穿設され、第2筒部20の周面(正面)には第2貫通穴52が穿設されている(後述する
図7参照)。詳細は後述するが、第2筒部20がスライドして第2貫通穴52が第1貫通穴51と一致することで、第2筒部20に収容された芳香体3の香り(詳細には、香りの粒子と空気とが混合した気体)が外部に流出する。フック部30は、第1筒部10と一体に形成され、陳列台の被掛合部4に掛合する。付勢部40は、第2筒部20と一体に形成され、第2筒部20を第1筒部10の天面開口部10Uから突出させる方向(上方)に付勢する。分離規制部45は、第1筒部10と第2筒部20との分離を規制する。
【0019】
第1筒部10およびフック部30は、
図3に示すブランク5Aから組み立てられる。第2筒部20および付勢部40は、
図4に示すブランク5Bから組み立てられる。分離規制部45は、
図4に示すブランク5Cとブランク5Aの一部との組み合わせによって構成される。これらのブランク5A,5B,5Cは、1枚の板紙を抜型等で打ち抜いて形成されている。板紙は、例えば、表裏両面をコーティングした多層抄きの厚紙である。なお、芳香体3に接する第2筒部20(ブランク5B)の内面(裏面)には、撥水・撥油コーティングがされるとよい。また、
図3および
図4は、表面側を示している。本明細書では、紙目と平行な方向を「紙目方向」と呼び、紙目方向に直交する方向を「直交方向」と呼ぶこととする。図面に示す「X」は「紙目方向」を示し、「Y」は「直交方向」を示している。
【0020】
[第1筒部およびフック部のブランク]
図3に示すように、第1筒部10およびフック部30のブランク5Aは、第1正面板11と、第1背面板12と、一対の第1側面板13と、第1継代片14と、一対の第1内フラップ15と、第1外フラップ16と、第1接合片17と、第1係合片46と、掛合上板31と、掛合外板32と、掛合内板33と、掛合下板34と、掛合接合片35と、を備えている。第1正面板11、第1背面板12、一対の第1側面板13、第1継代片14、一対の第1内フラップ15、第1外フラップ16および第1接合片17が第1筒部10を構成し、掛合上板31、掛合外板32、掛合内板33、掛合下板34および掛合接合片35がフック部30を構成する。第1係合片46は、分離規制部45の一部を構成する。なお、
図3において、一対の第1側面板13および一対の第1内フラップ15は、それぞれ、略左右対称となる形状であるため、本明細書では、主に、1つの第1側面板13および1つの第1内フラップ15について説明する。
【0021】
<第1正面板、第1背面板、第1側面板、第1継代片>
紙目方向の一方から他方に向かって順に、第1背面板12、第1側面板13、第1正面板11、第1側面板13および第1継代片14が一列に並設され、第1折曲線L1を介して連設されている。第1正面板11、第1背面板12および第1側面板13は、それぞれ、直交方向(上下方向)を長辺とし、短辺を略同一幅とする略長方形状に形成されている。第1正面板11は、第1背面板12や第1側面板13よりも僅かに上下方向に長く形成され、第1背面板12や第1側面板13よりも僅かに下方に延びている。第1継代片14は、略台形状に形成されている。なお、第1正面板11や第1側面板13の表面には、芳香体3の芳香を有する商品(洗剤や芳香剤等)の広告や説明等として絵柄や文字等が印刷されるとよい(図示せず)。
【0022】
(第1貫通穴)
第1正面板11の紙目方向(左右方向)の略中央、且つ直交方向の一方(下側)には、第1貫通穴51が穿設されている。第1貫通穴51は、直径3mm程度の円形の穴であり、芳香体3の直径(4mm)よりも小径となるように形成されている。つまり、第1貫通穴51は、芳香体3の挿通を規制するように形成されている。
【0023】
<第1内フラップ>
一対の第1内フラップ15は、第2折曲線L2を介して一対の第1側面板13の直交方向の一端(下端)に連設されている。第1内フラップ15は、一辺の長さを第1側面板13の紙目方向の寸法よりも僅かに短い略正方形状に形成されている。なお、第1内フラップ15は、第1正面板11の側にずれた位置で第1側面板13に連設されており、角筒状の第1筒部10を構成した際に、第1背面板12との間に僅かに隙間が開くようになっている。
【0024】
<第1外フラップ、第1接合片>
第1外フラップ16は、第2折曲線L2を介して第1正面板11の直交方向の一端(下端)に連設されている。第1正面板11が第1側面板13よりも下方に延びているため、第1外フラップ16(第2折曲線L2)は、第1内フラップ15よりも僅かに下方にずれている。第1外フラップ16は、一辺の長さを第1正面板11の紙目方向の寸法と略同一とした略正方形状に形成されている。第1接合片17は、第3折曲線L3を介して第1外フラップ16の直交方向の一端(先端)に連設されている。第1接合片17は、第1外フラップ16よりも直交方向に短い略長方形状に形成されている。
【0025】
<第1係合片>
第1係合片46は、第4折曲線L4を介して紙目方向の一方(左方)の第1側面板13の直交方向の他端(上端)に連設されている。第1係合片46は、第1内フラップ15よりも一回り小さな略正方形状に形成されている。
【0026】
<掛合上板、掛合外板、掛合内板、掛合下板、掛合接合片>
掛合上板31は、第5折曲線L5を介して第1背面板12の直交方向の他端(上端)に連設されている。直交方向の一方から他方に向かって順に、掛合上板31、掛合外板32、掛合内板33、掛合下板34および掛合接合片35が一列に並設され、第5折曲線L5を介して連設されている。これらの板等31~35は、第1背面板12と紙目方向に同一幅となる略長方形状に形成されている。掛合上板31と掛合下板34との直交方向の寸法(延出寸法)は、第1外フラップ16の延出寸法の半分程度とされている。掛合外板32の延出寸法は、第1背面板12の直交方向の寸法(高さ)の半分程度とされている。掛合内板33の延出寸法は、掛合外板32の延出寸法の半分程度とされ、掛合接合片35の延出寸法は、掛合内板33の延出寸法よりも若干長くなっている。
【0027】
なお、第1~第5折曲線L1~L5は、板紙を表面から直線状に凹ませた汎用罫線である。詳細には、第5折曲線L5には、1つの切目が入れられている。第1~第5折曲線L1~L5は、汎用罫線に限らず、例えば、ミシン目や汎用罫線上にミシン目を形成したリード罫等、板紙を折り曲げるための線であれば如何なるものでもよい。なお、本明細書では、裏面を内側に向けるように板紙を折り曲げることを「正折り」と呼び、表面を内側に向けるように板紙を折り曲げることを「逆折り」と呼ぶこととする。
【0028】
[第2筒部および付勢部のブランク]
図4に示すように、第2筒部20および付勢部40のブランク5Bは、第2正面板21と、第2背面板22と、一対の第2側面板23と、第2継代片24と、一対の第2下内フラップ25と、第2下外フラップ26と、第2下差込片26Aと、一対の第2上内フラップ27と、第2上外フラップ28と、第2上差込片28Aと、5つの付勢板41と、を備えている。5つの付勢板41を除く複数の板等21~28,26A,28Aが第2筒部20を構成し、5つの付勢板41が付勢部40を構成する。なお、
図4において、一対の第2側面板23、一対の第2下内フラップ25および一対の第2上内フラップ27は、それぞれ、略左右対称となる形状であるため、本明細書では、主に、1つの第2側面板23、1つの第2下内フラップ25および1つの第2上内フラップ27について説明する。また、5つの付勢板41は同一形状であるため、本明細書では、主に、1つの付勢板41について説明する。
【0029】
<第2正面板、第2背面板、第2側面板、第2継代片>
紙目方向の一方から他方に向かって順に、第2背面板22、第2側面板23、第2正面板21、第2側面板23および第2継代片24が一列に並設され、第6折曲線L6を介して連設されている。第2正面板21、第2背面板22および第2側面板23は、それぞれ、第1正面板11等よりも一回り小さな略長方形状に形成されている。詳細には、第2正面板21等は、第1正面板11等よりも紙目方向に約2~4mm短く、直交方向に約4~5mm短くされている。また、第2正面板21は、第2背面板22や第2側面板23よりも僅かに上下方向に長く形成され、第2背面板22や第2側面板23よりも僅かに上下両方に延びている。第2継代片24は、略台形状に形成されている。なお、第1正面板11の表面等と同様に、第2正面板21や第2側面板23の表面に、絵柄や文字等が印刷されるとよい(図示せず)。
【0030】
(第2貫通穴)
第2正面板21の紙目方向(左右方向)の略中央、且つ直交方向の一方(下側)には、第2貫通穴52が穿設されている。第2貫通穴52は、第2正面板21の下端から上方に向かって伸長する略楕円形の穴(またはスリット)であって、上記した第1貫通穴51よりも上下方向(軸方向)に長く形成されている。第2貫通穴52の直交方向(上下方向)の長さ(高さ)は、芳香体3の直径(4mm)の2倍以上となる約8.5mmとされている。第2貫通穴52の紙目方向(左右方向)の幅は、芳香体3の直径よりも狭い約3mmとされている。つまり、第2貫通穴52は、芳香体3の挿通を規制するように形成されている。また、上記した第1貫通穴51および第2貫通穴52は、互いに紙目方向(左右方向(軸方向に直交する幅方向)に同一寸法に形成されている。
【0031】
<第2下内フラップ>
一対の第2下内フラップ25は、第7折曲線L7を介して一対の第2側面板23の直交方向の一端(下端)に連設されている。第2下内フラップ25は紙目方向を長辺とする略長方形状に形成され、その直交方向の寸法(延出寸法)は第2正面板21の紙目方向の寸法の半分未満とされている。なお、一対の第2下内フラップ25の直交方向の両外角部は、自由端側を紙目方向に幅狭くするように切り欠かれている。
【0032】
<第2下外フラップ>
第2下外フラップ26は、第7折曲線L7を介して第2正面板21の直交方向の一端(下端)に連設されている。第2正面板21が第2側面板23よりも下方に延びているため、第2下外フラップ26(第7折曲線L7)は、第2下内フラップ25よりも僅かに下方にずれている。第2下外フラップ26は、一辺の長さを第2正面板21の紙目方向の寸法と略同一とした略正方形状に形成されている。第2下外フラップ26の中心付近(図心付近)には、第2補助穴53が穿設されている。第2補助穴53は、直交方向に伸長する略楕円形状とされ、第2貫通穴52と略同じ大きさ(直交方向:約8.5mm、紙目方向:約3mm)に形成されている。つまり、第2補助穴53も、芳香体3の挿通を規制するように形成されている。
【0033】
<第2下差込片>
第2下差込片26Aは、第8折曲線L8を介して第2下外フラップ26の直交方向の一端(先端)に連設されている。第2下差込片26Aは、第2下外フラップ26を直交方向に半分にしたような略長方形状に形成されている。なお、第2下外フラップ26と第2下差込片26Aとの境界には、紙目方向の両側から一対の切目が入れられており、第2下差込片26Aは紙目方向の中央部において第2下外フラップ26に連設されている。
【0034】
<第2上内フラップ>
一対の第2上内フラップ27は、第9折曲線L9を介して一対の第2側面板23の直交方向の他端(上端)に連設されている。第2上内フラップ27は、一辺の長さを第2側面板23の紙目方向の寸法と略同一とした略正方形状に形成されている。詳細には、一対の第2上内フラップ27の直交方向の両外側は、基端部を除いて、紙目方向に幅狭くするように切り欠かれている。
【0035】
<第2上外フラップ、第2上差込片>
第2上外フラップ28は、第9折曲線L9を介して第2正面板21の直交方向の一端(上端)に連設されている。第2正面板21が第2側面板23よりも上方に延びているため、第2上外フラップ28(第9折曲線L9)は、第2上内フラップ27よりも僅かに上方にずれている。第2上差込片28Aは、第10折曲線L10を介して第2上外フラップ28の直交方向の一端(先端)に連設されている。第2上外フラップ28および第2上差込片28Aは、第2下外フラップ26および第2下差込片26Aを直交方向(上下方向)に反転したような形状とされている。
【0036】
<付勢板>
5つの付勢板41は、直交方向に一列に並設され、第11折曲線L11を介して連設されている。紙目方向の他端(最上端)に位置する付勢板41は、第11折曲線L11を介して第2背面板22の直交方向の一端(下端)に連設されている。付勢板41は、一辺の長さを第2背面板22の紙目方向の寸法と同一とした略正方形状に形成されている。なお、最上端に位置する付勢板41の第2下内フラップ25に隣接する部分は、略台形状に切り欠かれている。
【0037】
[分離規制部のブランク]
図4に示すように、分離規制部45(の一部)のブランク5Cは、第2係合片47と、第2接合片48と、を有している。第2係合片47および第2接合片48は、それぞれ、第2下差込片26A等と略同等の大きさとなる略長方形状に形成されている。第2係合片47と第2接合片48とは、第12折曲線L12を介して連設されている。
【0038】
なお、第6~第12折曲線L6~L12は汎用罫線であるが、これに限らず、例えば、ミシン目等、板紙を折り曲げるための線であれば如何なるものでもよい。
【0039】
[香り見本容器の製造]
次に、
図5および
図6を参照して、第1筒部10および第2筒部20の製造について簡単に説明する。
図5は第1筒部10を折り畳んだ状態を示す斜視図である。
図6は第2筒部20を折り畳んだ状態を示す斜視図である。
【0040】
第1筒部10および第2筒部20は、それぞれ、自動製函機(図示せず)を用いて大量生産することが可能とされている。自動製函機は、ブランク5Aを適所で折り曲げたり接着したりすることで第1筒部10を製造し、ブランク5Bを適所で折り曲げたり接着したりすることで第2筒部20を製造する。
【0041】
第1筒部10を製造する場合、例えば、自動製函機は、右方の第1側面板13を第1折曲線L1に沿って折り返した後(正折りした後)、第1背面板12を第1折曲線L1に沿って折り返して(正折りして)第1継代片14に接着する。これにより、平坦に折り畳まれた第1筒部10が完成する(
図5参照)。
【0042】
第1筒部10と同様に、第2筒部20を製造する場合、例えば、自動製函機は、右方の第2側面板23を第6折曲線L6に沿って折り返した後(正折りした後)、第2背面板22を第6折曲線L6に沿って折り返して(正折りして)第2継代片24に接着する。これにより、平坦に折り畳まれた第2筒部20が完成する(
図6参照)。なお、自動製函機は、ブランク5Cの第2係合片47を左方の第2下内フラップ25上に重ねるように配置し、第2接合片48を左方の第2側面板23の下部に接着してもよい(後述する
図7参照)。
【0043】
[香り見本の組立]
次に、
図7ないし
図10を参照して、香り見本2を組み立てる手順の一例について説明する。
図7は香り見本容器1を組み立てる手順を説明する斜視図である。
図8は第2筒部20を第1筒部10に挿設する手順を説明する斜視図である。
図9は、
図1のIX-IX断面図である。
図10は、
図1のX-X断面図である。なお、
図10では、芳香体3および付勢部40の図示を省略している。
【0044】
<第1筒部の組立>
図7に示すように、作業者は、折り畳まれた第1筒部10を引き起こして角筒形状にする。第1筒部10の上下両端には、天面開口部10Uと底面開口部10D(他の開口部)が開口している。作業者は、第1係合片46を第4折曲線L4に沿って内側(下方)に折り返す。第1係合片46は、第1筒部10の天面開口部10Uの左縁部から内側かつ下方(軸方向の他方)に向かって延設される(
図10参照)。詳細には、第1係合片46は、折り目(第4折曲線L4)まわりの復元力によって、天面開口部10Uの左縁部から下方に向かって右方に傾斜した姿勢となる。
【0045】
<フック部の組立>
図7に示すように、作業者は、第1背面板12の上端から延びた掛合上板31等を第5折曲線L5に沿って適宜折り曲げてフック部30を形成する。具体的には、掛合上板31と掛合外板32は略直角に正折りされ、掛合内板33は略180度折り返されて(正折りされて)掛合外板32に接着され、掛合下板34と掛合接合片35は略直角に逆折りされ、掛合接合片35は第1背面板12に接着される。以上によって、陳列台の被掛合部4に掛合するフック部30が第1筒部10と一体に形成される。このフック部30では、掛合上板31と掛合下板34とが互いに離間して略平行に設けられ、掛合上板31と掛合下板34との間には空間が形成されている。また、掛合外板32と掛合内板33とは二重壁を構成し、掛合内板33(二重壁)と掛合接合片35(第1背面板12)との間には被掛合部4が嵌り込む掛合空間30Aが形成されている。
【0046】
<第2筒部の組立>
図7に示すように、作業者は、折り畳まれた第2筒部20を引き起こして角筒形状にし、一対の第2下内フラップ25と第2下外フラップ26をこの順に第7折曲線L7に沿って内側に折り曲げ、第8折曲線L8に沿って折り曲げた第2下差込片26Aを第2筒部20の内側に差し込む(
図9および
図10も参照)。これにより、第2筒部20の底面が閉塞される。なお、一対の第2下内フラップ25の先端同士は離間しており、第2下外フラップ26に形成された第2補助穴53は、一対の第2下内フラップ25の先端の間(隙間)に対向し、第2筒部20の内部空間と外部とを連通させる(
図10参照)。
【0047】
作業者は、天面の開口から第2筒部20内に複数の芳香体3を入れ、一対の第2上内フラップ27と第2上外フラップ28を順に第9折曲線L9に沿って内側に折り曲げた後、第10折曲線L10に沿って折り曲げた第2上差込片28Aを第2筒部20の内側に差し込む(
図9および
図10参照)。これにより、第2筒部20の天面が閉塞される。なお、第2筒部20は、平面(または底面)から見て、第1筒部10よりも一回り小さく(前後左右に僅かに短く)形成されている。
【0048】
図7に示すように、作業者は、左方の第2側面板23に固定されたブランク5Cの第2係合片47を第12折曲線L12に沿って外側(上方)に折り返す。第2係合片47は、第2筒部20(第2接合片48)の下端(軸方向の他端)から外側かつ上方(軸方向の一方)に向かって延設される(
図10参照)。詳細には、第2係合片47は、折り目(第12折曲線L12)まわりの復元力によって、左方の第2接合片48の下端から上方に向かって左方に傾斜した姿勢となる。
【0049】
<付勢部の組立>
図7に示すように、作業者は、第2背面板22の下端から延びた5つの付勢板41を第11折曲線L11に沿って適宜折り曲げて付勢部40を形成する。具体的には、5つの付勢板41は、交互に正折り・逆折りされて蛇腹状に形成される。更に具体的には、最上部の付勢板41は正折りされ、次の付勢板41は逆折りされ、残りの付勢板41も同様に正折りと逆折りが交互になされる。
【0050】
<第1筒部に対する第2筒部の挿設>
作業者は、第1筒部10の第1正面板11と第2筒部20の第2正面板21を前方に向けた姿勢とし、付勢部40を第1筒部10の天面開口部10Uから内部に挿入し、続けて、第2筒部20を第1筒部10の内部に挿入する(
図8ないし
図10参照)。第2筒部20を第1筒部10に挿入する際、第1係合片46と第2係合片47とは互いに干渉(接触)し、互いに折り畳まれて略平行になる。第2係合片47の挿入が進んで、第2係合片47が第1係合片46の下方に移動すると、第1係合片46と第2係合片47とは、互いに折り目まわりの復元力によって傾斜した姿勢に戻る。なお、第1係合片46および第2係合片47の折り目まわりの復元力は、第1筒部10の内部に挿設された第2筒部20を軽い力で右方に付勢する。
【0051】
図8に示すように、作業者は、付勢部40の最下部の付勢板41を第1筒部10の底面開口部10Dから露出させ、一方の第1内フラップ15を第2折曲線L2に沿って略直角に正折りして底面開口部10Dを概ね塞ぐ。続いて、作業者は、底面開口部10D(正確には、一方の第1内フラップ15の後端と第1背面板12との隙間)から露出した最下部の付勢板41を第11折曲線L11に沿って折り曲げて一方の第1内フラップ15上に重ね、その後、他方の第1内フラップ15を第2折曲線L2に沿って略直角に正折りして付勢板41に重ねる。次に、作業者は、第1外フラップ16を第2折曲線L2に沿って略直角に正折りして他方の第1内フラップ15に重ね、第1接合片17を第3折曲線L3に沿って略直角に正折りして第1背面板12の表面に接着する(
図9参照)。これにより、最下部の付勢板41が一対の第1内フラップ15に挟持され、付勢部40が第1筒部10(の底面)に連結される(
図9参照)。また、同時に、第1筒部10の底面が形成される。
【0052】
以上によって、第1筒部10に対して第2筒部20が挿設され、香り見本2(香り見本容器1)が完成する(
図1および
図9参照)。香り見本2は、フック部30の掛合空間30Aに陳列台の被掛合部4を掛合させることで、陳列台に取り付けられる(
図1参照)。なお、以上の説明は、香り見本2の組立手順の一例であって、当該組立手順(順序)は矛盾の無い範囲で変更してもよい(入れ替えてもよい)。
【0053】
[香り見本の機能および使用法]
次に、
図1、
図2、
図9ないし
図12を参照して、香り見本2の機能および使用法について説明する。
図11は、
図2のXI-XI断面図である。
図12は、
図2のXII-XII断面図である。なお、
図12では、芳香体3および付勢部40の図示を省略している。
【0054】
図9に示すように、香り見本2(香り見本容器1)では、蛇腹状に形成された付勢部40が、第1筒部10と第2筒部20との下端間(軸方向の他端間)に架設され、付勢板41の折り目(第11折曲線L11)まわりの復元力によって上下方向(軸方向)に伸縮可能な圧縮バネとして機能する。したがって、付勢部40は、第1筒部10の底面(第1内フラップ15等)を台座として第2筒部20を上方に付勢している(押し上げている)。
【0055】
また、香り見本2(香り見本容器1)では、平面から見て、第2筒部20が第1筒部10よりも一回り小さく形成され、第1筒部10の内部に挿設されているため、第1筒部10の内周面(4面)と第2筒部20の外周面(4面)との間には僅かな隙間Gが形成されている(
図9および
図10参照)。第1筒部10の内周面と第2筒部20の外周面との隙間Gは、前後左右の4面において均一に開いているわけではないが、平均して、芳香体3の粒径(4mm)の半分以下(例えば2mm程度)に設定されている。具体的には、当該隙間Gは、1~2mmとされるとよい。なお、複数の芳香体3が異なる粒径である場合、当該隙間Gは、最小の粒径の半分程度とするとよい。
【0056】
以上の構成によって、香り見本2(香り見本容器1)では、第2筒部20が、第1筒部10に対して上下方向にスライド可能とされている。具体的には、第2筒部20は、付勢部40に付勢されて一部(第2筒部20の下部を除く上側部分)を第1筒部10の外部(上方)に突き出された突出位置P1(
図1、
図9および
図10参照)と、付勢部40の付勢力に抗して略全部を第1筒部10の内部に押し込まれた押込位置P2(
図2、
図11および
図12参照)との間でスライドする。
【0057】
図1、
図9および
図10に示すように、付勢部40が圧縮されていない自然状態では、第2筒部20は突出位置P1に配置されている。第2筒部20を突出位置P1に移動(配置)した場合、第2貫通穴52は第1貫通穴51から上方(軸方向に一方)に位置ずれ(離間)する。これにより、第2貫通穴52は、第1正面板11の裏面に対向する、このように、第2貫通穴52が第1正面板11によって塞がれるため、第2筒部20に収容された芳香体3の芳香が第2貫通穴52から漏出し難くなる。また、第2筒部20を突出位置P1に移動(配置)した場合、第2係合片47は第1係合片46に噛み合う(
図10参照)。これにより、第2筒部20が第1筒部10の内部から上方へ容易に引き抜けないようになっている。さらに、付勢部40の上端部が第2筒部20(第2背面板22)に連設され、付勢部40の下端部が第1筒部10の底面に連結されているため(
図9および
図10参照)、仮に、第1筒部10の内部から第2筒部20が引き抜かれたとしても、第1筒部10と第2筒部20とが完全に分離しないようになっている。
【0058】
一方で、顧客が芳香体3の香りを試す(試香する)場合、
図2、
図11および
図12に示すように、顧客は付勢部40の付勢力に逆らって第2筒部20を第1筒部10の内部に押し込み、第2筒部20を突出位置P1から押込位置P2に配置する。第2筒部20を押込位置P2に移動(配置)した場合、第2貫通穴52(の一部)は第1貫通穴51に一致(対向)する(
図11および
図12参照)。これにより、第2筒部20の内部空間と香り見本容器1の外部とが、第1貫通穴51および第2貫通穴52を介して連通するため、顧客は両貫通穴51,52を通じて流出する芳香体3の香りを確認することができる。また、第2筒部20を押込位置P2に移動(配置)した場合、第2係合片47は第1係合片46から下方(軸方向の他方)に離間する(
図12参照)。つまり、第1係合片46と第2係合片47との噛み合いが解除される。なお、第2筒部20を第1筒部10の内部に押し込む際、第2筒部20は、第1係合片46等の折り目まわりの復元力によって軽く右方に付勢されているため、右方の第1側面板13の内面をガイドにして、当該内面上を円滑に摺動する。
【0059】
なお、第2筒部20が突出位置P1にある場合において(
図9等参照)、芳香体3の香りは、第2筒部20の底面(第2下外フラップ26)に開口した第2補助穴53を通じて第1筒部10の内部空間(第1筒部10と第2筒部20との下端間の空間)に僅かに流出する(溜まる)。第2筒部20が突出位置P1から押込位置P2に押し込まれると、第1筒部10の内部空間に溜まった香りが第1貫通穴51から外部に押し出される(噴出する)。このため、顧客は、第2筒部20を突出位置P1から押込位置P2に押し込む動作に連動して第1貫通穴51から噴出する香りを感じることもできる。なお、第1筒部10や第2筒部20の上下両端には僅かな隙間が有るため、微量ではあるが、これらの隙間から芳香体3の香りが外部に流出することもある。
【0060】
以上説明した本実施形態に係る香り見本容器1(香り見本2)では、第2筒部20が付勢部40に付勢されて突出位置P1に移動すると、第2貫通穴52が第1貫通穴51から上方にずれる構成とした(
図9等参照)。この構成によれば、第2筒部20の第2貫通穴52は、第1筒部10の内面によって概ね塞がれているため、第2筒部20に収容された芳香体3の香りが第2貫通穴52から漏出することを抑制することができる。一方で、本実施形態に係る香り見本容器1では、顧客が第2筒部20を付勢部40の付勢力に抗して押込位置P2に移動させると、第2貫通穴52が第1貫通穴51に一致する構成とした(
図11等参照)。この構成によれば、第2筒部20の内部空間が第2貫通穴52および第1貫通穴51を通して外気に開放され、第2筒部20に収容された芳香体3の香りを香り見本容器1の外部に流通させることができるため、顧客は香りを確認する(試香する)ことができる。以上のように、顧客が試香しない場合には、付勢部40が第2筒部20を突出位置P1に移動させた状態となるため、第2筒部20の内部空間と香り見本容器1の外部(外気)との連通を遮断することができる。これにより、第2筒部20に収容された芳香体3の香りが逃げにくい構造となり、芳香体3の香りを長期間にわたって維持することができる。
【0061】
また、本実施形態に係る香り見本容器1では、突出位置P1に移動した第2筒部20の第2係合片47が第1筒部10の第1係合片46に噛み合う構成とした(
図10参照)。この構成によれば、第1筒部10から第2筒部20が引き抜かれることが規制される。これにより、例えば、付勢部40の付勢力によって第2筒部20が第1筒部10から飛び出したり、顧客が誤って第1筒部10から第2筒部20を引き抜いたりすることを、抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態に係る香り見本容器1では、第1筒部10の底面開口部10Dの縁部に連設された一対の第1内フラップ15が折り重ねられて底面開口部10Dを閉塞し、且つ、付勢部40の下端部(軸方向の他端部)が、折り重ねた一対の第1内フラップ15の間に挟まれることで第1筒部10に連結される構成とした(
図9等参照)。この構成によれば、接着剤や粘着テープ等を用いることなく、底面開口部10Dを閉塞する第1内フラップ15等を利用して、付勢部40の下端部を第1筒部10に連結することができる。
【0063】
また、本実施形態に係る香り見本容器1によれば、第2筒部20の第2貫通穴52が第1筒部10の第1貫通穴51よりも上下方向に長いため、第2貫通穴52が第1貫通穴51に一致可能な範囲を広く確保することができる。これにより、第2貫通穴52が第1貫通穴51に対して上下方向に若干ずれていても、第2筒部20の内部空間を外気に開放することができる。
【0064】
また、本実施形態に係る香り見本容器1によれば、第1筒部10と第2筒部20との隙間Gが、概ね芳香体3の粒径の半分以下に設定されることで、第2筒部20を第1筒部10の内周面にガイドさせながら円滑にスライドさせることができる。また、当該隙間Gから芳香体3が飛び出すことを防止することができると共に、当該隙間Gから無駄に芳香が漏出することを抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る香り見本容器1によれば、第1筒部10にフック部30が連結されているため、フック部30を介して香り見本2を陳列台の被掛合部4に着脱可能に掛合させることができる。これにより、顧客は、香り見本2を手に取って試香することができる。
【0066】
なお、本実施形態に係る香り見本容器1では、第2筒部20が第1筒部10よりも若干低く形成されていたため、押込位置P2に移動された第2筒部20の略全部が第1筒部10の内部に押し込まれた状態となっていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2筒部20は第1筒部10よりも高くなるように形成されてもよく、この場合、押込位置P2に移動された第2筒部20は、上部を除く下側部分が第1筒部10の内部に押し込まれた状態になる(図示せず)。つまり、押込位置P2に移動されたとしても、第2筒部20の上部が第1筒部10の外部に突き出すこともある。
【0067】
また、本実施形態に係る香り見本容器1では、第1筒部10と第2筒部20とが、略四角形状の断面を有する角筒状に形成されていたが、本発明はこれに限定されない。第1筒部10と第2筒部20とは、例えば、四角形を除く多角形状の断面を有する角筒状に形成されてもよいし、円筒状に形成されてもよい(いずれも図示せず)。また、例えば、第1筒部10が四角筒状で、第2筒部20が円筒状等、第1筒部10と第2筒部20とが互いに異なる断面を有する筒状とされてもよい(図示せず)。しかしながら、第1筒部10と第2筒部20との隙間Gを小さくし、第2筒部20の円滑なスライドを担保すると共に、香りの無駄な漏出を抑制するためには、第1筒部10と第2筒部20とは同一断面を有する筒状に形成されることが好ましい。
【0068】
また、本実施形態に係る香り見本容器1では、第2貫通穴52が第1貫通穴51よりも上下方向に長く形成されていたが、本発明はこれに限定されない。第2貫通穴52は、例えば、第1貫通穴51と同一となる開口面積(形状は異なっていてもよい。)にされてもよいし、第1貫通穴51よりも小さな開口面積にされてもよい(いずれも図示せず)。また、第1貫通穴51と第2貫通穴52とは、例えば、同一の形状(開口面積は同一でも異なってもよい。)とされてもよいし、第1貫通穴51が円形(または多角形)に形成され、第2貫通穴52が多角形(または円形)に形成される等、互いに異なる形状とされてもよい(いずれも図示せず)。また、例えば、第1貫通穴51と第2貫通穴52とが同一形状、同一面積であった場合において、第2筒部20が押込位置P2に移動した状態で、第2貫通穴52が第1貫通穴51に一致するとは、完全に一致することを要求する意味ではなく、少なくとも第2貫通穴52の一部が第1貫通穴51に重なるように位置し、第2貫通穴52の内部空間と外部とを連通させることができればよいのであって、多少ずれることを許容する意味である。好ましくは、第2貫通穴52の中心(図心)が第1貫通穴51の範囲に重なるとよい。
【0069】
また、本実施形態に係る香り見本容器1では、第1貫通穴51と第2貫通穴52の両方が、左右方向に同一幅とされ、芳香体3の挿通を規制するように形成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1貫通穴51は芳香体3の挿通を許容するような大きさに形成され、第2貫通穴52が芳香体3の挿通を規制するように形成されていればよい(図示せず)。つまり、第1貫通穴51と第2貫通穴52のうち少なくとも第2貫通穴52が芳香体3の挿通を規制するように形成されていればよい。また、本実施形態に係る香り見本容器1では、第1貫通穴51および第2貫通穴52がそれぞれ1つ形成されていたが、これに限らず、第1貫通穴51と第2貫通穴52の少なくとも一方が複数形成されてもよい(図示せず)。
【0070】
また、本実施形態に係る香り見本容器1では、第2筒部20の第2下外フラップ26に第2貫通穴52と略同じ大きさとなる第2補助穴53が穿設されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2筒部20が突出位置P1に配置された状態で、芳香体3の香りが無駄に流出しないように、第2補助穴53は第2貫通穴52よりも小さく形成されてもよい(図示せず)。また、第2補助穴53は省略されてもよい(図示せず)。第2補助穴53を省略する場合、第2下外フラップ26の延出寸法は、第2上内フラップ27の延出寸法と同等としてもよい(図示せず)。また、第2補助穴53を省略する場合、第2筒部20の底面は、ワンタッチ底や地獄底とされてもよい(図示せず)。
【0071】
また、本実施形態に係る香り見本容器1では、付勢部40の下端部(最先端に位置する付勢板41)が一対の第1内フラップ15の間に挟まれていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、先に一対の第1内フラップ15を折り重ねて底面開口部10Dを閉じ、最先端に位置する付勢板41が、外側に位置する第1内フラップ15と第1外フラップ16との間に挟まれることで第1筒部10に連結されてもよい(図示せず)。また、付勢部40の下端部は、例えば、第1内フラップ15や第1背面板12等の表面または裏面等、第1貫通穴51を塞がず、且つ第2筒部20のスライドを阻害しない位置に接着されてもよい(図示せず)。なお、付勢部40の下端部を第1背面板12の表面等に接着する場合には、第1内フラップ15や第1外フラップ16は省略されてもよい(図示せず)。
【0072】
また、本実施形態に係る香り見本容器1では、付勢部40が第2筒部20の第2背面板22と一体に形成されていたが、本発明はこれに限定されない。付勢部40は、例えば、第2側面板23と一体に形成されてもよいし、第1筒部10(第1背面板12や第1側面板13等)と一体に形成されてもよいし、第1筒部10と第2筒部20とは別体とされてもよい(いずれも図示せず)。付勢部40が第1筒部10と一体に形成された場合や別体の場合には、付勢部40の上端部(上端に位置する付勢板41)は、上記した付勢部40の下端部と同様に、例えば、一対の第2下内フラップ25と第2下外フラップ26との間に挟まれることで第2筒部20に連結されてもよいし、第2下外フラップ26の表面等、第2貫通穴52を塞がず、且つ第2筒部20のスライドを阻害しない位置に接着されてもよい(いずれも図示せず)。
【0073】
また、本実施形態に係る香り見本容器1では、付勢部40が5つの付勢板41を交互に折り曲げて蛇腹状に形成され、その上下両端を第1筒部10と第2筒部20とに連結していたが、本発明はこれに限定されない。付勢部40は、2つ以上の付勢板41で形成されてもよい(図示せず)。また、付勢部40は、第1筒部10と第2筒部20とに連結されずに、第1筒部10と第2筒部20との下端間の空間内に配置されるだけでもよい(図示せず)。この場合には、第1筒部10の底面は、ワンタッチ底や地獄底とされてもよい(図示せず)。
【0074】
また、本実施形態に係る香り見本容器1では、第1係合片46が左方の第1側面板13の上端に連設されていたが、これに限らず、第1係合片46は、左右両方の第1側面板13、第1正面板11および第1背面板12のうち少なくとも1つの上端に連設されていればよい(図示せず)。例えば、左右両方の第1側面板13の上端に一対の第1係合片46が連設されてもよい(図示せず)。なお、第1係合片46の数や位置に合わせて、第2係合片47の数や位置を変えることは言うまでもない。また、本実施形態に係る香り見本容器1では、第1係合片46が、第1筒部10と一体に形成されていたが、これに限らず、第2係合片47のように、別部材として構成され、第1側面板13、第1正面板11または第1背面板12のうち少なくとも1つの内面に接着されてもよい(図示せず)また、本実施形態に係る香り見本容器1では、第2係合片47が、第2筒部20とは別部材で構成されていたが、これに限らず、第1係合片46のように、第2筒部20と一体に形成されてもよい(図示せず)
【0075】
また、本実施形態に係る香り見本容器1では、第1筒部10にフック部30が設けられていたが、これに限らず、フック部30は省略されてもよい(図示せず)。例えば、香り見本容器1(香り見本2)は、陳列台上に置かれてもよいし、第1筒部10の背面等に通された紐等を介して陳列台等に吊り下げられてもよい(図示せず)。
【0076】
また、本実施形態に係る香り見本2(香り見本容器1)は、第1筒部10と第2筒部20とを上下方向に並べた姿勢で使用されていたが、これに限らず、例えば、第1筒部10と第2筒部20とを横向き(左右方向、前後方向)に並べた姿勢で使用されてもよい(図示せず)。また、本実施形態に係る香り見本2は、第2筒部20を上方に向けた姿勢で使用されていたが、これに限らず、第2筒部20を下方に向けた姿勢で使用されてもよい(図示せず)。また、本明細書では、第2筒部20が第1筒部10に対してスライドすると表現したが、第2筒部20は第1筒部10に対して相対的にスライドするのであって、第1筒部10が第2筒部20に対してスライドすると捉えることもできる。
【0077】
また、本実施形態に係る香り見本容器1は、板紙で形成されていたが、本発明はこれに限定されない。香り見本容器1は、例えば、紙製の段ボールシートで形成されてもよい。また、香り見本容器1の底面や天面を閉塞する型式、香り見本容器1の各部の寸法(幅、奥行き、高さ等)や形状、板紙等の厚みや紙目方向等は自由に変更してもよい。
【0078】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係る香り見本容器の一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよく、特許請求の範囲は技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様を含んでいる。
【符号の説明】
【0079】
1 香り見本容器
3 芳香体
4 被掛合部
10 第1筒部
10D 底面開口部(他の開口部)
10U 天面開口部(開口部)
15 第1内フラップ(第1フラップ)
16 第1外フラップ(第1フラップ)
20 第2筒部
30 フック部
40 付勢部
45 分離規制部
46 第1係合片
47 第2係合片
51 第1貫通穴
52 第2貫通穴
G 隙間
P1 突出位置
P2 押込位置